結論テキスト
特許第7704515号の請求項1~8に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2026700022 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7704515号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和2年10月30日に出願され、令和7年6月30日に特許権の設定登録がされ、同年7月8日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1~8に係る発明の特許に対し、令和8年1月6日に、鶴来 裕(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下「本件発明1」等といい、併せて「本件発明」ともいうことがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料、及びポリマー系油相増粘剤を含み、
前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0であり、
色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上であり、
増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満であり、
前記ポリマー系油相増粘剤が、(スチレン/イソプレン)コポリマー、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、(スチレン/ブタジエン)コポリマー、(スチレン/エチレン/ブチレン)コポリマー、(スチレン/プロピレン/ブチレン)コポリマー、及び(スチレン/ブチレン)コポリマーから選択される少なくとも一種を含み、かつ、
80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である、
油性化粧料。
【請求項2】
平均粒子径が70μm以下の第1の光輝性顔料、及びポリマー系油相増粘剤を含み、
前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0であり、
色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上であり、
前記第1の光輝性顔料の含有量が、3.0質量%以上であり、
増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満であり、
前記ポリマー系油相増粘剤が、エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマーを含み、かつ、
80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である、
油性化粧料。
【請求項3】
平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料、及びポリマー系油相増粘剤を含み、
前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0であり、
色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上であり、
前記ポリマー系油相増粘剤の含有量が、20.00質量%以上であり、
増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満であり、
前記ポリマー系油相増粘剤が、エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマーを含み、かつ、
80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である、
油性化粧料。
【請求項4】
前記第1の光輝性顔料の含有量が、2.0質量%以上である、請求項1又は3に記載の化粧料。
【請求項5】
炭化水素油をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項6】
色材を含み、かつ、前記第1の光輝性顔料が、無色又は白色の光輝性顔料である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項7】
口紅として使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項8】
前記第1の光輝性顔料、及び前記ポリマー系油相増粘剤を含む原料混合物を、80~150°Cの温度であって、前記混合物の粘度が、50mPa・s以上になる温度で溶融させ、そして型に注入することを含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の化粧料の製造方法。」
申立人は、証拠方法として、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付して下記(11)に示す甲第1号証~甲第12号証(以下「甲1」等という。)を提出し、本件請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由として、下記(1)~(10)に示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張している。
申立理由の概要は、申立書の記載全体からみて、以下のとおりであると認められる。
(1)申立理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)
本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由1-2(甲2に基づく新規性欠如)
本件特許の請求項2、6、7及び8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由1-3(甲3に基づく新規性欠如)
本件特許の請求項3~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由1-4(甲4に基づく新規性欠如)
本件特許の請求項3、5及び8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)
本件特許の請求項1、2、4、5及び7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(6)申立理由2-2(甲2に基づく進歩性欠如)
本件特許の請求項2、5、6、7及び8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲2に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(7)申立理由2-3(甲3に基づく進歩性欠如)
本件特許の請求項2~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲3に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(8)申立理由2-4(甲4に基づく進歩性欠如)
本件特許の請求項3、5、7及び8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された、甲4に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(9)申立理由3(拡大先願)
本件特許の請求項2~8に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲5の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、これらの出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこれらの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(10)申立理由4(サポート要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものでなく、本件請求項1~8に係る特許は、同法同条同項に規定する要件を満たしていない特許に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(11)証拠方法
甲第1号証:特表2010-530467号公報
甲第2号証:特開2002-154924号公報
甲第3号証:特開2020-164522号公報
甲第4号証:特開2002-128624号公報
甲第5号証:特願2019-150668号(特開2021-31416号)
甲第6号証:Chemie Alliance Official ウェブサイト,<https://www.alliance2u.com/products_chml.asp?cat=SPEC%20PIG>
甲第7号証:国際公開第2023/149245号
甲第8号証:令和7年3月10日提出の意見書(特願2020-182803号)
甲第9号証:株式会社マツモト交商作成,「PIONIER GEL 12 PAO」のカタログ,2007年
甲第10号証:Stobec Inc. ウェブサイト,2017年,Effect Pigments for cosmetics and personal care by BASF,<https://www.stobec.com/DATA/PRODUIT/2830
~
v
~
tds.pdf>
甲第11号証:堀金箔粉ウェブサイト,「メタシャインとは?」,<https://www.horikin.co.jp/uploads/pdf/metashine_catalog.pdf>
甲第12号証:大久保真吾,パール顔料の基礎と最近の技術,色材協会誌,2015年,88(5),p.132-136
当審合議体は、本件請求項1~8に係る特許は、申立人が申し立てた申立理由によっては、取り消すことはできないものと判断する。その理由は以下のとおりである。
(1)引用文献の記載事項
ア 甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている。
なお、摘記箇所に付した下線は、いずれも当審合議体によるものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。他の文献についても同様である。
摘記1a:
「【請求項51】
真珠光沢のある顔料を含む化粧品組成物であって、該顔料が基材と第1の層を含み、該第1の層が酸化鉄を含み、前記酸化鉄中の鉄は約1%~約30%のFe(II)、および約70%~約99%のFe(III)を有する、化粧品組成物。」
摘記1b:
「【0157】
(実施例36:透明ゲルのリップグロス調製物)
表25に示す透明ゲルのリップグロスベースの構成要素を均一に混合し、80°Cに加熱した。室温まで十分に冷却した後、実施例8から得た顔料を上記ベースゲルに対して
2重量%で加え
、十分に混合した。類似のリップグロス調製物は、実施例18、実施例19、実施例23、実施例24、実施例25、実施例27および実施例31から得た顔料を使用した。
【0158】
【表25】
52
130
0001436214000001.jpg
」
摘記1c:
「【0212】
(
実施例62:透明ジェルのリップグロス
)
【0213】
【表48】
57
96
0001436214000002.jpg
【0214】
手順:
SunPearl Iridescent Greenの代わりに
SunPearl Maroon
を使用したことを除いて、実施例6に記載したようにして、
真珠光沢のある顔料を調製した
。次いで、200°Cの温度で実施したことを除いて実施例8に記載した手順を使用して、この顔料を還元した。深くかつ強く着色した、不透明な、暗紫色の色調の真珠光沢のある顔料を得て、相Bとして使用した。
【0215】
水素化ポリイソブテン、エチレン/プロピレン/スチレン共重合体、ブチレン/エチレン/スチレン共重合体、パルミチン酸エチルヘキシル、ネオペンタン酸トリデシル、イソステアリン酸イソステアリル、および保存料をすべて秤量し、加熱した容器の中に入れた。温度を50±3°Cまで上げた。これらの成分が融解し均一になるまで、それらを撹拌した。室温で、相Bの真珠光沢のある顔料を相Aに加え、すべての真珠光沢のある顔料がよく分散するまで混合した。必要に応じて芳香剤を加えて一定の速度で撹拌しながら混合してもよい。この組成物を室温で注ぎ込んだ。
【0216】
透明な透明ジェルのリップグロスにおいて以下の結果を観察した。
【0217】
【表49】
14
151
0001436214000003.jpg
」
イ 甲2の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
摘記2a:
「【請求項1】 次の成分(a)及び成分(b);
(a)平均粒子径が20μm以上の光輝性粉体
(b)一般式(1)
【化1】
21
73
0001436214000004.jpg
(但し式中、R
1
は、炭素数1~10のアルキル基又はフェニル基、R
2
は、1~10のフッ素置換アルキル基を示し、mは0~3の整数、nは1~6の整数であり、(m+n)は3~6の整数である)で表わされる環状シリコーンとを含有することを特徴とする油性固形化粧料。」
摘記2b:
「【0007】
【発明の実施の形態】 以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる成分(a)平均粒子径が20μm以上の
光輝性粉体
は、
本発明の油性固形化粧料において
、化粧膜に艶を与える成分であり、通常化粧品においてパール、ラメ等として用いられるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には
雲母チタン
、
酸化鉄被覆雲母
、
酸化鉄被覆雲母チタン
、有機顔料被覆雲母チタン、合成金雲母、酸化チタン被覆合成金雲母、酸化鉄・酸化チタン被覆合成金雲母、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、オキシ塩化ビスマス、アルミニウム粉末、魚燐箔等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。」
摘記2c:
「【0010】 成分(b)の環状シリコーンは、具体的に下記一般式(2)~(9)で表わされる化合物を例示することができ、これらを一種又は二種以上用いることができる。また、成分(b)の環状シリコーンは、本発明の効果をより実感する為に、不揮発性のものが好ましい。
【化4】
30
104
0001436214000005.jpg
【化5】
30
104
0001436214000006.jpg
」
摘記2d:
「【0025】
【実施例】次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】 実施例1~8及び比較例1~4:スティック状口紅
表1及び表2に示す組成のスティック状口紅を下記製法により調製し
、「使用性」、「塗布直後の艶」、「二次付着防止効果」、「化粧膜の艶の持続性」の各項目について以下に示す評価方法により評価し、結果を併せて表1及び表2に示した。
【0027】
【表1】
181
148
0001436214000007.jpg
・・・
【0029】
(製造方法)
A:成分1~8を110°Cにて均一に溶解する。
B:Aに成分9~19を加えて、三本ローラーにて均一に分散添加し、ホモミキサーにて均一に混合分散する。
C:Bを脱泡し、容器に充填してスティック状口紅を得た。」
ウ 甲3の記載事項
甲3には、次の事項が記載されている。
摘記3a:
「【請求項1】
次の成分(A)~(E);
(A)ワックス
(B)糖脂肪酸エステル
(C)高級アルコール
(D)25°Cでペースト状の非極性油
(E)アミノ基を有する化合物で表面処理された粉体
を含有し、(C)と(D)の含有量の合計が10~45質量%であり、(C)と(D)の含有量の質量比(C):(D)が1:1~6である油性化粧料。」
摘記3b:
「【0004】
しかしながら、特許文献1や2のようなデキストリン脂肪酸エステルと特定のワックスを組み合わせることで塗布時の伸びや滑らかさを向上させる技術においては、ワックスの融点が低くなるにつれ、軽く滑らかな使用感や高温安定性が損なわれたり、またワックスの配合量が多くなるにつれ、伸び広がりが重く、負担感を生じる傾向があるなど、満足のいくものが得られなかった。
従って本発明の課題は、べたつきのない軽くなめらかな使用感を有し、色持ちに優れ、高温安定性が良い油性化粧料を提供することである
。
・・・
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味し、特に記載がない場合の「%」は「質量%」を指すものとする。
【0009】
本発明における成分
(A)ワックス
は、化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、合成炭化水素系、天然及び合成ロウ系のいずれでも良い。その融点はべたつきのない軽い使用感と高温安定性の点において、70°C以上のものが好ましく、更に好ましくは80°C以上である。具体的には、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライトワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、
エチレン・プロピレンコポリマー
、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ビーズワックス、ライスワックス、モクロウ、ゲイロウ、ジロウ、モンタンワックス、ステアリル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でもフィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、キャンデリラワックスがべたつきのない軽い使用感と高温安定性の点で好ましく用いられる。」
摘記3c:
「【0041】
実施例26:油性スティック状リップグロス
(成分) (%)
1.フィッシャートロプシュワックス※6 4
2.(エチレン/プロピレン)コポリマー(融点90~99°C) 3
3.マイクロクリスタリンワックス(融点76~82°C) 2
4.2-エチルヘキサン酸セチル 5.5
5.ポリブテン(98.9°Cでの粘度4600mm
2
/s) 5
6.重質流動イソパラフィン(98.9°Cでの粘度800mm
2
/s)
5
7.ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル
/フィトステリル/ベヘニル) 5
8.ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)
ジペンタエリスリチル 5
9.メチルフェニルポリシロキサン 5
10.ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル
/セチル/ステアリル/ベヘニル)※2 5
11.テトライソステアリン酸ジグリセリル 5
12.トリイソステアリン酸ジグリセリル 残量
13.リンゴ酸ジイソステアリル 9
14.オクチルドデカノール 5.5
15.ワセリン 10
16.パルミチン酸デキストリン 0.1
17.2,6-ジ-ターシャリーブチル-パラクレゾール 0.1
18.シリル化処理無水ケイ酸 1
19.赤色202号 0.5
20.赤色104号 0.5
21.酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al)※7 2.5
22.ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム
・エポキシ積層末※8 1
23.雲母チタン※9 2.5
24.ジメチコノール及びアミノプロピルトリエトキシシラン
5%処理マイカ※1 5
25.酢酸トコフェロール 0.1
26.香料 0.1
※6:CIREBELLE108(融点79~84°C、CIREBELLE社製)
※7:メタシャイン1080RC-Y(日本板硝子社製)
※8:アルミフレークシルバー0.15mm(角八魚燐箔社製)
※9:TIMICA EXTRA BRIGHT 1500(BASF社製)
(製造方法)
A:成分(1)~(16)を100~110°Cにて均一に溶解する。
B:Aに成分(17)~(26)を加え、均一に混合分散する。
C:Bを脱泡後、90°Cに加熱して口紅容器に直接流し込み、冷却後、リップグロスを得た。
実施例26のリップグロスは、軽い使用感、なめらかな伸び広がり、付着性の良さ、膜の均一性のすべての点で満足のいくものであった。」
エ 甲4の記載事項
甲4には、次の事項が記載されている。
摘記4a:
「【請求項1】 次の成分(a)および(b)
(a)ガラスフレークの表面を金属酸化物で被覆した、平均厚さが0.1~3.0μm、平均粒径が1~700μm、アスペクト比が5~500である真珠光沢顔料
(b)エチレン・プロピレンコポリマー及び/又はポリエチレンワックスを含有することを特徴とする油性化粧料。」
摘記4b:
「【実施例】
以下に、実施例及び参考例を挙げて本発明を更に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0026】参 考 例 1
表面処理真珠光沢顔料の調製:真珠光沢顔料の母材として、表1に示すCガラスを用い、これから以下の方法に従ってガラスフレークを製造した。このガラスフレークに対し、ルチル型チタニアを加え、以下の方法によりガラスフレーク表面を被覆して真珠光沢顔料1~4を得た。
・・・
【0029】
(2)真珠光沢顔料の製造
上記(1)で得た各ガラスフレークを塩化白金酸を添加した四塩化チタン溶液中に懸濁させ、この懸濁液を加熱して1時間沸騰させて、ガラスフレーク表面にチタニア被覆を設けた。濾過水洗後乾燥させ、その後600°Cで30分熱処理し、表2の物性の真珠光沢顔料を得た。
【0030】
真珠光沢顔料の物性
:
【表2】
81
105
0001436214000008.jpg
・・・
【0046】 実 施 例 3
リップベース
:以下に示す処方のリップベースを製造し、煌びやかさ、光輝性、顔料分散性に使用性、化粧持ちおよび経時安定性を評価したところ、いずれの項目に対しても良好なものであった。
【0047】
(処方)
成 分 質量%
1.エチレン・プロピレンコポリマー (m.p.96°C) 5.0
2.セレシンワックス 15.0
3.ジペンタエリトリット脂肪酸エステル 15.0
4.スクワラン 24.0
5.トリイソステアリン酸ジグリセリル 34.9
6.マカデミアンナッツ油 5.0
7.美容成分(シャクヤクエキス) 0.1
8.真珠光沢顔料2* 1.0
*: 参考例1で得たものである。
【0048】(製造方法)
A. 成分(1)~(6)を均一に加熱混合した後、成分(7)、(8)を加え、均一に混合する。
B.「A.」を容器に充填し、リップベースを得た。」
オ 甲5の記載事項
甲5には、次の事項が記載されている。
摘記5a:
「【請求項1】
次の成分(A)~(C);
(A)ワックス
(B)部分架橋型ポリエーテル変性シリコーンおよび/または部分架橋型ポリグリセリン変性シリコーン
(C)ポリエチレングリコール
を含有する口唇化粧料。」
摘記5b:
「【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味し、特に記載がない場合の「%」は「質量%」を指すものとする。
【0011】
本発明における成分(
A)ワックス
は、板状に形成された結晶のカードハウス構造の空隙に油剤を保持するものである。本発明における成分(A)は、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、合成炭化水素、天然ロウおよび合成ロウのいずれを用いても良い。具体的には、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライトワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、
エチレン・プロピレンコポリマー
、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ビーズワックス、ライスワックス、モクロウ、ゲイロウ、ジロウ、モンタンワックス、ステアリル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、安定性の観点から、合成炭化水素または合成ロウが好ましく、具体的には、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライトワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマーからなる群から選ばれる1種または2種以上が好ましい。さらにその中でも、フィッシャートロプシュワックス、エチレン・プロピレンコポリマーからなる群から選ばれる1種または2種がより好ましい。」
摘記5c:
「【0045】
実施例5
口紅(油性固型)皿容器
成分 (%)
1.(エチレン/プロピレン)コポリマー 2
2.ポリエチレンワックス(融点83~92°C) 1
3.セレシンワックス(融点76~82°C) 1
4.パラフィン 2
5.(ジメチコン/ポリグリセリン-3)
クロスポリマー※2 5
6.イソノナン酸イソトリデシル 25
7.2-エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13) 5
8.トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2 残量
9.重質流動イソパラフィン※11 5
10.ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)
ジペンタエリスリチル※17(IOB=0.3) 5
11.トリメリト酸トリトリデシル(IOB=0.28) 5
12.ポリエチレングリコール6000 1
13.ポリエチレングリコール400 5
12.2,6-ジ-ターシャリ-ブチル-パラ-クレゾール 0.1
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
14.シリル化処理無水ケイ酸※7 1
15.2%シリコーン処理タルク(平均粒子5μm) 1.5
16.ポリメタクリル酸メチル※18 2
17.赤色202号 0.1
18.硫酸バリウム(板状、平均粒子径7μm) 0.1
19.撥水撥油処理ベンガラ被覆雲母チタン※19 5
20.酸化チタン被覆合成金雲母(平均粒子径13μm) 0.3
21.ローズマリーエキス 0.1
22.1,2-ペンタンジオール 0.1
23.(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル
/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー 0.2
24.ポリクオタニウム-104 0.3
25.アボカド油 0.1
26.マカデミアナッツ油 0.1
27.ホホバ油 0.1
28.スクワラン 0.1
29.(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマー 0.5
※17:コスモール168ARV(日清オイリオグループ社製)
※18:ガンツパール GM-2800(アイカ工業社製)
※19:クロイゾネルージュフランベ(BASF社製)2%パーフルオロヘキシルエチルトリエトキシシラン
(製造方法)
A.成分(1)~(12)を100~110°Cにて均一に溶解する。
B.Aに成分(13)~(29)を加え、均一に混合分散する。
C.Bを脱泡後、100°Cに加熱して金皿状口紅容器に直接流し込み、室温に冷却後、口紅を得た。
実施例5の口紅は、外観のマットさ、マットな仕上がり、安定性、うるおい感の持続、すべての評価項目において優れた良好なものであった。」
カ 甲6の記載事項
甲6には、次の事項が記載されていると認める。(当審合議体は、アクセス制限のため申立人の記載するURLにアクセスできなかったが、提示された写しのとおりの内容が記載されていると解釈した。)
摘記6a:
「
17
153
0001436214000009.jpg
」
キ 甲7の記載事項
甲7には、次の事項が記載されている。
摘記7a:
「[0029] 炭化水素-スチレンコポリマーゲル化剤は、少なくとも1つのスチレンユニットと、ブタジエン、エチレン、プロピレン、ブチレンおよびイソプロペンから選択されるユニットとを含むコポリマー、並びに水添炭化水素コポリマー、並びにこれらの混合物を指す。
具体的には、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマーおよび(ブチレン/エチレン/スチレン)コポリマーの混合を挙げることができる。市販品としては、Versagel ME 2000(カルメット・ペンレコ社製)が挙げられる。
」
ク 甲10の記載事項
甲10には、次の事項が記載されている。
摘記10a:
「
29
123
0001436214000010.jpg
・・・
76
151
0001436214000011.jpg
」
摘記10b:
「
84
131
0001436214000012.jpg
」
ケ 甲11の記載事項
甲11には、次の事項が記載されている。
摘記11a:1~7頁
「
27
112
0001436214000013.jpg
・・・
77
102
0001436214000014.jpg
」
(2)申立理由1-1及び2-1(甲1に基づく新規性欠如及び進歩性欠如)
ア 甲1に記載された発明
甲1には、実施例62(摘記1c)の記載がからみて、以下の発明が記載されていると認められる。各成分の配合量が重量%であることは、実施例62(摘記1c)及び実施例36(摘記1b)の表の項目に、「重量%」もしくは「重量分率%」との記載があることから、明らかである。
「以下の相Aを融解及び攪拌し、相Bの真珠光沢のある顔料を相Aに加え、混合して得られる透明ジェルのリップグロス。
相A (重量%)
水素化ポリイソブテン、
エチレン/プロピレン/スチレン共重合体及び
ブチレン/エチレン/スチレン共重合体の混合物 73.35
パルミチン酸エチルヘキシル 9.00
ネオペンタン酸トリデシル 4.50
イソステアリン酸イソステアリル 2.70
保存料 適量
相B
真珠光沢のある顔料
(SunPearl Maroon) 10.00」
イ 本件発明1について
(ア)対比
a 甲1発明の「真珠光沢のある顔料」である「SunPearl Maroon」は、甲6(摘記6a)の記載からみて、その平均粒子径は10~60μmであると認められるので、本件発明1の「平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料」に相当する。
b また、甲1発明において、真珠光沢のある顔料として「SunPearl Maroon」のみを含み、他に光輝性顔料を含まないことは、本件発明1の「前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0である」ことに相当する。
c 本件発明1において「色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上」であることは、色材を含まない場合は、いかなる限定もされないことを意味すると解されるので、甲1発明が色材を含まないことは、上記事項に相当する。
d 甲1発明において、増粘性粒子を含まないことは、本件発明1において「増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満」であることに相当する。
e 甲1発明における「エチレン/プロピレン/スチレン共重合体」は、本件発明1おける「(スチレン/イソプレン)コポリマー、
(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー
、(スチレン/ブタジエン)コポリマー、(スチレン/エチレン/ブチレン)コポリマー、(スチレン/プロピレン/ブチレン)コポリマー、及び(スチレン/ブチレン)コポリマーから選択される少なくとも一種」に相当する。
f 甲1発明における「リップグロス」は、油性化粧料の一種であるから、本件発明1の「油性化粧料」に相当する。
よって、本件発明1と甲1発明は、次の一致点で一致し、相違点1-1及び相違点1-2において相違する。
<一致点>
「平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料を含み、
前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0であり、
色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上であり、
増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満であり、
(スチレン/イソプレン)コポリマー、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、(スチレン/ブタジエン)コポリマー、(スチレン/エチレン/ブチレン)コポリマー、(スチレン/プロピレン/ブチレン)コポリマー、及び(スチレン/ブチレン)コポリマーから選択される少なくとも一種を含む、
油性化粧料。」
である点。
<相違点1-1>
「(スチレン/イソプレン)コポリマー、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、(スチレン/ブタジエン)コポリマー、(スチレン/エチレン/ブチレン)コポリマー、(スチレン/プロピレン/ブチレン)コポリマー、及び(スチレン/ブチレン)コポリマーから選択される少なくとも一種」が、本件発明1においては、「ポリマー系油相増粘剤」として含まれるのに対し、甲1発明においては、そのような特定がされていない点。
<相違点1-2>
本件発明1は、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である」のに対し、甲1発明ではそのような特定がされていない点。
(イ)相違点の判断
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
甲1において、甲1発明の「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」については記載がない。
甲1発明は、「エチレン/プロピレン/スチレン共重合体及びブチレン/エチレン/スチレン共重合体」を含むものであるが、甲1には、当該成分の配合目的が記載されていないだけでなく、甲1発明における「エチレン/プロピレン/スチレン共重合体及びブチレン/エチレン/スチレン共重合体」は、いずれもモノマー組成、モノマー配列、分子量、若しくは商品名等はいずれも不明であるから、技術常識を考慮しても、増粘性を有するポリマーであるかを含め、それらの性質を理解することはできない。
また、甲1発明における「水素化ポリイソブテン、エチレン/プロピレン/スチレン共重合体及びブチレン/エチレン/スチレン共重合体の混合物」(以下「甲1発明の共重合体混合物」という。)中の各共重合体の濃度も不明であるから、上記共重合体が、甲1発明のリップグロス中にどの程度含まれるのかも不明である。
よって、甲1発明が、「甲1発明の共重合体混合物」を含むということから、甲1発明のリップグロスの「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」を推定することはできない。
さらに、甲1発明に含まれる「パルミチン酸エチルヘキシル」、「ネオペン炭酸トリデシル」及び「イソステアリン酸イソステアリル」についても、それらの「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」は不明である。
よって、甲1発明について、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上」であるとはいえず、上記相違点1-2は、実質的な相違点である。
さらに、甲1の記載を検討しても、甲1発明において、リップグロスの「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」を「50mPa・s以上」とする動機付けがあるとは認められず、甲1発明において、相違点1-2に係る構成を備えるものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、申立書8頁において、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の実施例3で用いられているポリマー系油相増粘剤である「VERSAGEL(商標)ME2000」は、エチレン/プロピレン/スチレン共重合体、ブチレン/エチレン/スチレン共重合体及び水添イソポリブテンの混合物であり、実施例3においては、これを組成物に対して50質量%配合して、90°Cでの粘度が7,200mPa・sであったことが示されており(【0078】、【表1】)、一方、甲1発明は、同じ油相増粘剤を73.35質量%配合しているから、その粘度が80~150°Cのいずれかにおいて50mPa・s以上であることは明らかである旨主張している。
甲7を参酌すると、「VERSAGEL(商標)ME2000」は、請求人の主張する組成を有すると解され、甲1発明の共重合体混合物は、その含有成分において一応一致する。
しかしながら、ポリマーは、モノマー組成、モノマー配列、分子量等によって、その増粘性は異なるものであり、甲1発明に含まれる「エチレン/プロピレン/スチレン共重合体及びブチレン/エチレン/スチレン共重合体」については、モノマー組成、モノマー配列、分子量はいずれも不明であるから、本件明細書の実施例に記載された、「VERSAGEL(商標)ME2000」に含まれる共重合体と同じ、あるいはそれよりも高い増粘性を有するとはいえない。
また、上記(イ)で述べたとおり、甲1発明における上記共重合体の含有量は不明であって、上記「VERSAGEL(商標)ME2000」における共重合体の含有量も不明である。
したがって、甲1発明が、甲1発明の共重合体混合物を本件明細書の実施例3におけるポリマー系油相増粘剤よりも多く含むからといって、実施例3における「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」より、必ず高くなるとはいえない。
よって、請求人の主張を検討しても、甲1発明について、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である」とはいえない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2は、本件発明1と、
・「第1の光輝性顔料」が、「平均粒子径が70μm以下」である点
・「1の光輝性顔料の含有量が、3.0質量%以上」である点
・「ポリマー系油相増粘剤」に含まれるポリマーが「エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマー」である点、
でのみ異なる発明である。
そこで、本件発明2と甲1発明を対比すると、甲1発明の「SunPearl Maroon」は、平均粒子径10~60μmであるから、本件発明2の第1の光輝性顔料に相当する。
甲1発明において、「真珠光沢のある顔料」である「SunPearl Maroon」を10質量%含むことは、本件発明2の「第1の光輝性顔料の含有量が、3.0質量%以上」であることに相当する。
甲1発明における「エチレン/プロピレン/スチレン共重合体及びブチレン/エチレン/スチレン共重合体」は、「
エチレンモノマーユニット
及びスチレンモノマーユニットから
選択される少なくとも一種を有するコポリマー
」に相当する。
その他の本件発明2に対応する甲1発明の発明特定事項については、上記イ(ア)b~d及びfで述べたものと同様である。
よって、本件発明2と甲1発明は、次の一致点で一致し、次の相違点1-3及び相違点1-4において相違する。
<一致点>
「平均粒子径が70μm以下の第1の光輝性顔料を含み、
前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0であり、
色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上であり、
前記第1の光輝性顔料の含有量が、3.0質量%以上であり、
増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満であり、
エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマーを含む、
油性化粧料。」
である点。
<相違点1-3>
「エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマー」が、本件発明2においては、「ポリマー系油相増粘剤」として含まれるのに対し、甲1発明においては、そのような特定がされていない点。
<相違点1-4>
本件発明2は、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である」のに対し、甲1発明ではそのような特定がされていない点。
(イ)相違点の判断
事案に鑑み、相違点1-4について検討すると、相違点1-4は、上記相違点1-2と同じものである。
よって、上記イ(イ)で述べたものと同様の理由により、相違点1-4は、実質的な相違点であるといえ、また、甲1に記載された発明において、相異点1-4に係る構成を備えるものとする動機付けがあるとはいえない。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 本件発明4、5及び7について
本件発明4、5及び7は、本件発明1及び2の油性化粧料について、さらに限定した発明である。
そして、上述のとおり、本件発明1及び2が甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1及び2がより限定された本件発明4、5及び7も、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは明らかである。
オ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由1-1及び申立理由2-1には理由がない。
(3)申立理由1-2及び2-2(甲2に基づく新規性欠如及び進歩性欠如)
ア 甲2に記載された発明
甲2には、実施例1(摘記2d)の記載からみて、以下の発明が記載されていると認められる。
「以下の組成を有するスティック状口紅。
(質量%)
エチレンプロピレンコポリマー 10
キャンデリラワックス 5
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 10
トリイソステアリン酸ポリグリセリル 残量
デカメチルシクロペンタシロキサン 20
シリコーン樹脂(注1) 7
成分(b)の環状シリコーン(注2) 0.1
成分(b)の環状シリコーン(注3) 0.1
赤色202号 1
黄色4号 2.5
酸化チタン 1.5
ベンガラ披覆雲母チタン(平均粒子径30μm) 5
雲母チタン(平均粒子径45μm) 5
カモミラエキス 0.1
バラメトキシケイ皮酸-2-エチルヘキシル 1
α-トコフェロール 0.1
香料 0.1
41
88
0001436214000015.jpg
」
イ 本件発明2について
(ア)対比
a 甲2発明の「ベンガラ披覆雲母チタン(平均粒子径30μm)」(「ベンガラ」は、酸化鉄である。)及び「雲母チタン(平均粒子径45μm)」は、甲2の【0007】(摘記2b)の記載からみて光輝性粉体であると認められるので、本件発明2の「平均粒子径が70μm以下の第1の光輝性顔料」に相当する。
また、「ベンガラ披覆雲母チタン(平均粒子径30μm)」及び「雲母チタン(平均粒子径45μm)」の合計量が10質量%であることは、本件発明2の「第1の光輝性顔料の含有量が、3.0質量%以上」であることに相当する。
b 甲2発明において、光輝性粉体として「ベンガラ披覆雲母チタン(平均粒子径30μm)」及び「雲母チタン(平均粒子径45μm)」のみを含み、他に光輝性粉体を含まないことは、本件発明2の「前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0である」ことに相当する。
c 甲2発明における、上記「赤色202号」、「黄色4号」、「酸化チタン」は、本件発明2の「色材」に相当する。
そして、甲2発明における、「赤色202号」、「黄色4号」、「酸化チタン」の合計量が5重量%であるのに対し、「ベンガラ披覆雲母チタン(平均粒子径30μm)」及び「雲母チタン(平均粒子径45μm)」の合計量は10質量%であり、その比が、2.0であることは、本件発明2において「色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上」であることに相当する。
d 甲2発明において、増粘性粒子を含まないことは、本件発明2において「増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満」であることに相当する。
e 甲2発明における「エチレンプロピレンコポリマー」は、本件発明2に
おける「エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマー」に相当する。
f 甲2発明は、甲2における油性固形化粧料(摘記2b)の実施態様として記載されたものであるから、甲2発明における「スティック状口紅」は、本件発明2の「油性化粧料」に相当する。
よって、本件発明2と甲2発明は、次の一致点で一致し、相違点2-1及び相違点2-2において相違する。
<一致点>
「平均粒子径が70μm以下の第1の光輝性顔料を含み、
前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0であり、
色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上であり、
前記第1の光輝性顔料の含有量が、3.0質量%以上であり、
増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満であり、
エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマーを含む、
油性化粧料。」
である点。
<相違点2-1>
「エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマー」が、本件発明2においては、「ポリマー系油相増粘剤」として含まれるのに対し、甲2発明においては、そのような特定がされていない点。
<相違点2-2>
本件発明2は、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である」のに対し、甲2発明ではそのような特定がされていない点。
(イ)相違点の判断
事案に鑑み、相違点2-2について検討する。
甲2において、甲2発明の「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」については記載がない。
甲2発明における「エチレンプロピレンコポリマー」について、甲2には、その配合目的が記載されていないだけでなく、そのモノマー組成、モノマー配列、分子量、若しくは商品名等はいずれも不明であるから、技術常識を考慮しても、増粘するのか否かも含め、その増粘特性を理解することはできない。
よって、甲2発明が、「エチレンプロピレンコポリマー」を含むということから、甲2発明のスティック状口紅の「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」を推定することはできない。
さらに、甲2発明に含まれる上記以外の成分についても「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」については不明である。
よって、甲2発明について、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上」であるとはいえず、上記相違点2-2は、実質的な相違点である。
また、甲2発明の「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」を「50mPa・s以上」とする動機付けがあるとは認められず、甲2発明において、相違点2-2に係る構成を備えるものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、申立書9~10頁において、ポリマー系油相増粘剤である「VERSAGEL(商標)ME2000」は、甲7の記載からみて、エチレン/プロピレン/スチレン共重合体、ブチレン/エチレン/スチレン共重合体及び水添イソポリブテンの混合物であって、ポリマーの純分が5%であり、これを組成物に対して5~20質量%配合して、上記コポリマーの含有量を0.25~2.5質量%とした、本件明細書の実施例1~4の組成物が、90°Cでの粘度が50mPa・s以上であり(【0078】、【表1】)、甲2発明は、油相増粘剤であるエチレンプロピレンコポリマーを10質量%含有しているので、90°Cにおいて50mPa・s以上の粘度であることは明らかである旨主張している。
しかしながら、ポリマーは、モノマー組成、モノマー配列、分子量等によって、その増粘性は異なるものあるところ、甲2発明に含まれる「エチレンプロピレンコポリマー」については、上記特性がいずれも不明である上に、本件明細書の実施例で用いられている「VERSAGEL(商標)ME2000」に含まれるポリマーとは、スチレンを含まない点でも異なるものであるから、「VERSAGEL(商標)ME2000」に含まれる共重合体と同じ、あるいはそれよりも高い増粘性を有するとはいえない。
よって、その含有量が、本件明細書の実施例1~4における上記共重合体の含有量より多いからといって、本件明細書の実施例1~4における「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」より、必ず高くなるとはいえない。
(なお、「VERSAGEL(商標)ME2000」に含まれる共重合体の純分が5%であるという根拠は不明であるが、上記判断においては、申立人の主張どおり解釈した。)
よって、請求人の主張を検討しても、甲2発明について、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である」とはいえない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明5~8について
本件発明5~7は、本件発明2の油性化粧料について、さらに限定した発明であり、また本件発明8は、その製造方法に係る発明である。
そして、上述のとおり、本件発明2が甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明2がより限定された本件発明5~7及びその製造方法である本件発明8も、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは明らかである。
エ まとめ
甲2に記載された発明を、実施例3、5及び7~8に基いて認定しても上記と上記イ及びウで述べたことと同様のことがいえる。
以上のとおりであるから、申立理由1-2及び申立理由2-2には理由がない。
(4)申立理由1-3及び2-3(甲3に基づく新規性欠如及び進歩性欠如)
ア 甲3に記載された発明
甲3には、実施例26(摘記3c)の記載、及び【0009】(摘記3b)における「「%」は「質量%」を指すものとする」との記載からみて、以下の発明が記載されていると認められる。
「以下の組成を有する油性スティック状リップグロス。
(成分) (重量%)
フィッシャートロプシュワックス※6 4
(エチレン/プロピレン)コポリマー(融点90~99°C) 3
マイクロクリスタリンワックス(融点76~82°C) 2
2-エチルヘキサン酸セチル 5.5
ポリブテン(98.9°Cでの粘度4600mm
2
/s) 5
重質流動イソパラフィン(98.9°Cでの粘度800mm
2
/s) 5
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル
/フィトステリル/ベヘニル) 5
ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)
ジペンタエリスリチル 5
メチルフェニルポリシロキサン 5
ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル
/セチル/ステアリル/ベヘニル) 5
テトライソステアリン酸ジグリセリル 5
トリイソステアリン酸ジグリセリル 残量
リンゴ酸ジイソステアリル 9
オクチルドデカノール 5.5
ワセリン 10
パルミチン酸デキストリン 0.1
2,6-ジ-ターシャリーブチル-パラクレゾール 0.1
シリル化処理無水ケイ酸 1
赤色202号 0.5
赤色104号 0.5
酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al)※7 2.5
ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム
・エポキシ積層末※8 1
雲母チタン※9 2.5
ジメチコノール及びアミノプロピルトリエトキシシラン
5%処理マイカ※1 5
酢酸トコフェロール 0.1
香料 0.1
※6:CIREBELLE108(融点79~84°C、CIREBELLE社製)
※7:メタシャイン1080RC-Y(日本板硝子社製)
※8:アルミフレークシルバー0.15mm(角八魚燐箔社製)
※9:TIMICA EXTRA BRIGHT 1500(BASF社製)」
イ 本件発明2について
(ア)対比
a 甲3発明の「雲母チタン」(TIMICA EXTRA BRIGHT 1500)は、甲10(摘記10b)の記載を参酌すると、平均粒子径が8~42μmの光輝性顔料であると認められるので、本件発明2の「平均粒子径が70μm以下の第1の光輝性顔料」に相当する。
b 甲3発明の「酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al)」(メタシャイン1080RC-Y(日本板硝子社製))は、甲11(摘記11a)の記載を参酌すると、光輝性顔料であって、平均粒子径が80μmであると認められる。
また、甲3発明の「ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末」(アルミフレークシルバー0.15mm(角八魚燐箔社製))は、アルミの光沢を有し、平均粒子径0.15mm、すなわち150μmであると認められるので、第2の光輝性顔料に相当する。
そうすると、甲3の光輝性顔料である「雲母チタン」と「ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末」の含有量の比は2.5:1であるから、本件発明2の「前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が70μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0である」ことに相当する。
c 甲3発明における、上記「赤色202号」及び「赤色104号」は、本件発明2の「色材」に相当する。
そして、甲3発明における、「赤色202号」及び「赤色104号」の合計量1重量%に対する、「雲母チタン」2.5重量%の比は、2.5であるから、本件発明2において「色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上」であることに相当する。
d 甲3発明において、「シリル化処理無水ケイ酸」を1重量%含むことは、本件発明2において「増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満」であることに相当する。
e 甲3発明における「(エチレン/プロピレン)コポリマー」は、本件発明2における「エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマー」に相当する。
f 甲3発明における「油性スティック状リップグロス」は、本件発明2の「油性化粧料」に相当する。
よって、本件発明2と甲3発明は、次の一致点で一致し、相違点3-1~相違点3-3において相違する。
<一致点>
「平均粒子径が70μm以下の第1の光輝性顔料を含み、
前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0であり、
色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上であり、
増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満であり、
エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマーを含む、
油性化粧料。」
である点。
<相違点3-1>
「エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマー」が、本件発明2においては、「ポリマー系油相増粘剤」として含まれるのに対し、甲3発明においては、そのような特定がされていない点。
<相違点3-2>
本件発明2は、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である」のに対し、甲3発明ではそのような特定がされていない点。
<相違点3-3>
第1の光輝性顔料の含有量について、本件発明2では、「3.0質量%以上」であるのに対し、甲3発明では、「2.5」重量%である点。
(イ)相違点の判断
a 相違点3-1について
本件明細書【0033】には、油相増粘剤について以下の記載がある。
「ポリマー系油相増粘剤としては特に制限はなく、例えば、エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマーを含む剤を使用することができる。ここで、例えば、スチレンモノマーユニット(スチレンセグメント)を有するコポリマーは、コポリマー中のスチレンセグメントが油相中で相互に引きつけられ、コポリマー間で3次元の網目構造を発現させることができ、それにより油相を増粘させることができる。」
そうすると、「油相増粘剤」であるといえるためには、本件明細書【0034】に記載されるポリマーであるというだけではなく、セグメント構造を有する等の、増粘性を発揮するための構造特性を有するものであることが必要があると解される。
そして、甲3に記載の「(エチレン/プロピレン)コポリマー」は、甲3の【0009】(摘記3b)を参酌するとワックスに分類されるものであり、油相において、増粘剤として機能するかどうかは不明であるから、増粘剤に該当するとは必ずしもいえない。
よって、甲3における「(エチレン/プロピレン)コポリマー」は必ずしも「ポリマー系油相増粘剤」であるとはいえないから、上記相違点3-1は、実質的な相違点である。
また、甲3発明において、「ポリマー系油相増粘剤」を採用する動機付けはなく、相違点3-1に係る事項とすることは当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
b 相違点3-2について
甲3において、甲3発明の「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」については記載がない。
ここで、甲3発明は、本件発明2でポリマー系油相増粘剤に含まれる成分である「(エチレン/プロピレン)コポリマー」を含むものである。
しかしながら、甲3発明における「(エチレン/プロピレン)コポリマー」は、いずれもモノマー組成、モノマー配列、分子量、若しくは商品名等はいずれも不明であるから、(2)イ(イ)で述べたものと同様の理由により、その増粘性能について特定することはできない。
よって、甲3発明が、「(エチレン/プロピレン)コポリマー」を含むということから、甲3発明の油性スティック状リップグロスの「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」を推定することはできない。
さらに、甲3発明においては、本件明細書の【0047】及び実施例7において増粘性材料とされている「シリル化処理無水ケイ酸」及び「パルミチン酸デキストリン」を含有するが、その増粘性能の発揮は、他の成分の影響もあるから、一概に上記成分を含有することのみをもって、組成物の「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」が、本願発明2において特定される範囲であるということはできない。
また、甲3においては、「ポリブテン(98.9°Cでの粘度4600mm
2
/s)」及び「重質流動イソパラフィン(98.9°Cでの粘度800mm
2
/s)」を含有しているが、その量は合計10質量%であって、当該粘度特性が、そのまま組成物の粘度特性となるものとは解されない。
その他、上記以外の成分についても「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」については不明である。
よって、甲3発明について、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上」であるとはいえず、上記相違点3-2は、実質的な相違点である。
さらに、甲3発明において、油性スティック状リップグロスの「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」を「50mPa・s以上」とする動機があるとは認められず、甲3発明において、相違点3-2に係る事項とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
c 相違点3-3について
甲3発明の課題は、べたつきのない軽くなめらかな使用感を有し、色持ちに優れ、高温安定性がよい油性化粧料の提供であると解されるところ(摘記3b)、甲3発明について、雲母チタンのみを3.0質量%以上とする動機付けはなく、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、申立書10頁において、以下の主張をしている。
a 甲3発明は、80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が50mPa・s以上であることについて記載されていないが、上記したとおり、本件明細書には、油相増粘剤の含有量0.25質量%以上で上記粘度範囲に調整されることが記載されているところ、
甲3発明は(エチレン/プロピレン)コポリマーを3質量%含有し、ポリブテン(98.9°Cでの粘度4600mm
2
/s)5質量%、重質流動イソパラフィン(98.9°Cでの粘度800mm
2
/s)5質量%を含有するから、
本件発明2で規定する粘度範囲に含まれる蓋然性が高い。
b 本件発明2では第1の光輝性粉体の含有量が3質量%以上であるのに対し、甲3発明では2.5質量%である点でのみ相違する。しかしながら、各構成成分の含有量を調整することは当業者の設計事項に過ぎないし、本件明細書の記載からみて、第1の光輝性粉体の含有量2.5質量%と3質量%との間で格別顕著な効果が生じるとも認められない。
しかしながら、以下のとおり申立人の主張は採用できない。
主張aについて
上記(イ)で述べたものと同様の理由により、甲3に記載の、「(エチレン/プロピレン)コポリマー」が、本件明細書の実施例4の共重合体の含有量より多いからといって、本件明細書の実施例4における「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」より、必ず高くなるとはいえない。
また、「ポリブテン(98.9°Cでの粘度4600mm
2
/s)5質量%」、「重質流動イソパラフィン(98.9°Cでの粘度800mm
2
/s)5質量%」を含有していても、その量は合計10質量%であって、当該粘度特性が、そのまま組成物の粘度特性となるものとは解されない。
よって、請求人の主張を検討しても、甲3発明について、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である」とはいえない。
主張bについて
甲3発明において、光輝性顔料に該当する成分として、「酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al)」、「ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末」、「雲母チタン」の3つがあるところ、仮に光沢性を向上させる目的があっても、「雲母チタン」のみを選択して3.0質量%まで増量させる動機付けがあるとは解されず、「雲母チタン」のみを選択して3.0質量%まで増量させることが当業者において適宜なし得たことであるとは解されない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明2は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明3について
(ア)対比
本件発明3は、本件発明2と、
・「第1の光輝性顔料」が、「平均粒子径が80μm以下」である点
・「1の光輝性顔料の含有量が、3.0質量%以上」であることが特定されていない点、
・「ポリマー系油相増粘剤の含有量が、20.00質量%以上」である点
でのみ異なる発明である。
そして、甲3発明の「雲母チタン」は、平均粒子径8~42μmであるから、本件発明2の「平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料」に相当する。
その他の本件発明3に対応する甲3発明の発明特定事項については、上記イ(ア)b~fで述べたものと同様である。
よって、本件発明3と甲3発明は、次の一致点で一致し、次の相違点3-4~3-6において相違する。
<一致点>
「平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料を含み、
前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0であり、
色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上であり、
増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満であり、
エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマーを含む、
油性化粧料。」
である点。
<相違点3-4>
「エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマー」が、本件発明3は、「ポリマー系油相増粘剤」として含まれるのに対し、甲3発明は、そのような特定がされていない点。
<相違点3-5>
本件発明3は、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である」のに対し、甲3発明ではそのような特定がされていない点。
<相違点3-6>
本件発明3は、「ポリマー系油相増粘剤の含有量が、20.00質量%以上」であるのに対し、甲3発明では、そのような特定がされていない点。
(イ)相違点の判断
a 相違点3-4及び相違点3-6について
相違点3-4は、上記相違点3-1と同じものである。
よって、上記イ(イ)で述べたものと同様の理由により、相違点3-4は、実質的な相違点であるといえ、また、甲3に記載された発明において、当該相異点に係る構成を備えるものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
また、上記のとおりであるから、甲3発明において、「ポリマー系油相増粘剤」は含まれていないといえるから、上記相違点3-6は実質的な相違点であり、また、甲3発明において、当該相異点に係る構成を備えるものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
b 相違点3-5について
相違点3-5は、上記相違点3-2と同じものである。
よって、上記イ(イ)で述べたものと同様の理由により、相違点3-5は、実質的な相違点であるといえ、また、甲3に記載された発明において、当該相異点に係る構成を備えるものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明3は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 本件発明4~8について
本件発明4~7は、本件発明2及び3の油性化粧料について、さらに限定した発明であり、また本件発明8は、その製造方法に係る発明である。
そして、上述のとおり、本件発明2及び3が甲3に記載された発明であるとはいえず、また、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明2及び3がより限定された本件発明4~7及びその製造方法である本件発明8も、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
オ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由1-3及び申立理由2-3には理由がない。
(5)申立理由1-4及び2-4(甲4に基づく新規性欠如及び進歩性欠如)
ア 甲4に記載された発明
甲4には、実施例3及び【表2】の真珠光沢顔料2の組成についての記載(摘記4b)からみて、以下の発明が記載されていると認められる。
「以下の組成を有するリップべース。
(質量%)
1.エチレン・プロピレンコポリマー(m.p.96°C) 5.0
2.セレシンワックス 15.0
3.ジペンタエリトリット脂肪酸エステル 15.0
4.スクワラン 24.0
5.トリイソステアリン酸ジグリセリル 34.9
6.マカデミアンナッツ油 5.0
7.美容成分(シャクヤクエキス) 0.1
8.真珠光沢顔料2 1.0
*真珠光沢顔料2は、チタニア16質量%、ガラスフレーク84質量%からなる、平均平均粒子径80μmの顔料である。」
イ 本件発明3について
(ア)対比
a 甲4発明の「真珠光沢顔料2」は、「チタニア16質量%、ガラスフレーク84質量%からなる、平均平均粒子径80μmの顔料」であるから本件発明3の「平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料」に相当する。
b 甲4発明において、真珠光沢顔料として「真珠光沢顔料2」のみを含み、他に光輝性顔料を含まないことは、本件発明3の「前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0である」ことに相当する。
c 甲4発明において、色材を含まないことは、上記(2)イ(ア)cで述べたのと同様の理由により、本件発明3において「色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上」であることに相当する。
d 甲4発明において、増粘性粒子を含まないことは、本件発明3において「増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満」であることに相当する。
e 甲4発明における「エチレン・プロピレンコポリマー」は、本件発明3おける「エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマー」に相当する。
f 甲4発明における「リップべース」は、本件発明3の「油性化粧料」に相当する。
よって、本件発明3と甲4発明は、次の一致点で一致し、相違点4-1~相違点4-3において相違する。
<一致点>
「平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料を含み、
前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0であり、
色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上であり、
増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満であり、
エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマーを含む、
油性化粧料。」
である点。
<相違点4-1>
「エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマー」が、本件発明3は、「ポリマー系油相増粘剤」として含まれるのに対し、甲4発明は、そのような特定がされていない点。
<相違点4-2>
本件発明3は、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である」のに対し、甲4発明ではそのような特定がされていない点。
<相違点4-3>
本件発明3は、「ポリマー系油相増粘剤の含有量が、20.00質量%以上」であるのに対し、甲4発明では、そのような特定がされていない点。
(イ)相違点の判断
事案に鑑み、相違点4-2について検討する。
甲4において、甲4発明の「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」については記載がない。
ここで、甲4発明は、本件発明3でポリマー系油相増粘剤に含まれる成分である「エチレンプロピレンコポリマー」を含むものである。
しかしながら、甲4発明における「エチレン・プロピレンコポリマー」は、いずれもモノマー組成、モノマー配列、分子量、若しくは商品名等はいずれも不明であるから、(2)イ(イ)で述べたのと同様の理由により、増粘するのか否かも含め、その増粘特性を特定することはできない。
よって、甲4発明が、「エチレン・プロピレンコポリマー」を含むということのみをもって、ただちには、甲4発明のリップべースの「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」が、本件発明3における範囲にあるということはできない。
よって、上記相違点4-2は、実質的な相違点である。
さらに、甲4発明において、リップべースの「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」を「50mPa・s以上」とする動機付けがあるとは認められず、甲4発明において、相違点4-2に係る構成を備えるものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、申立書12頁において、本件明細書の特に実施例4においては、コポリマーの含有量を0.25質量%とした組成物において、90°Cでの粘度が50mPa・s以上である結果が示されており(【0078】、【表1】)、甲4発明では油相増粘剤であるエチレン・プロピレンコポリマーを5質量%含有しているので、甲4発明が、90°Cにおいて50mPa・s以上の粘度であることは明らかである旨主張している。
しかしながら、上記(イ)で述べたものと同様の理由により、甲4に記載の、「エチレン・プロピレンコポリマー」が、本件明細書の実施例4の共重合体の含有量より多いからといって、本件明細書の実施例4における「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」より、必ず高くなるとはいえない。
よって、請求人の主張を検討しても、甲4発明について、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である」とはいえない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲4に記載された発明であるとはいえず、また、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明5、7及び8について
本件発明5及び7は、本件発明3の油性化粧料について、さらに限定した発明であり、また本件発明8は、その製造方法に係る発明である。
そして、上述のとおり、本件発明3が甲4に記載された発明ではなく、また、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明3がより限定された本件発明5及び7及びその製造方法である本件発明8も、甲4に記載された発明ではなく、また、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは明らかである。
エ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由1-4及び申立理由2-4には理由がない。
ア 甲5に記載された発明
甲5の願書に最初に添付された特許請求の範囲及び明細書(以下「甲5明細書」という。)には、実施例5(摘記5c)及び【0010】(摘記5b)の「「%」は「質量%」を指すものとする。」との記載からみて、次の発明が記載されていると認められる。
「以下の組成を有する口紅。
(成分) (質量%)
1.(エチレン/プロピレン)コポリマー 2
2.ポリエチレンワックス(融点83~92°C) 1
3.セレシンワックス(融点76~82°C) 1
4.パラフィン 2
5.(ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー 5
6.イソノナン酸イソトリデシル 25
7.2-エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13) 5
8.トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2 残量
9.重質流動イソパラフィン※11 5
10.ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)
ジペンタエリスリチル(IOB=0.3) 5
11.トリメリト酸トリトリデシル(IOB=0.28) 5
12.ポリエチレングリコール6000 1
13.ポリエチレングリコール400 5
12.2,6-ジ-ターシャリーブチル-パラ-クレゾール 0.1
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
14.シリル化処理無水ケイ酸※7 1
15.2%シリコーン処理タルク(平均粒子5μm) 1.5
16.ポリメタクリル酸メチル※18 2
17.赤色202号 0.1
18.硫酸バリウム(板状、平均粒子径7μm) 0.1
19.撥水撥油処理ベンガラ被覆雲母チタン※19 5
20.酸化チタン被覆合成金雲母(平均粒子径13μm) 0.3
21.ローズマリーエキス 0.1
22.1,2-ペンタンジオール 0.1
23.(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル/
メタクリル酸ジメチコン)コポリマー 0.2
24.ポリクオタニウム-104 0.3
25.アボカド油 0.1
26.マカデミアナッツ油 0.1
27.ホホバ油 0.1
28.スクワラン 0.1
29.(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマー 0.5
※19:クロイゾネルージュフランベ(BASF社製)2%パーフルオロヘキシルエチルトリエトキシシラン」
イ 本件発明2について
(ア)対比
a 甲5発明の「撥水撥油処理ベンガラ被覆雲母チタン」(クロイゾネルージュフランベ(BASF社製)2%パーフルオロヘキシルエチルトリエトキシシラン)は、甲10(摘記10a)の記載からみて光輝性の平均粒子径8~39μmの微粒子であると認められ、また、同「酸化チタン被覆合成金雲母(平均粒子径13μm)」は、甲2(摘記2b)で挙げられる光輝性粉体に該当するものであるから、いずれも、本件発明2の「平均粒子径が70μm以下の第1の光輝性顔料」に相当する。
また、両者の合計量が5.3質量%であることは、本件発明2の「第1の光輝性顔料の含有量が、3.0質量%以上」であることに相当する。
b 甲5発明において、「撥水撥油処理ベンガラ被覆雲母チタン」及び「酸化チタン被覆合成金雲母」以外の光輝性顔料を含まれないことは、本件発明2の「前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が70μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0である」ことに相当する。
c 甲5発明における、上記「赤色202号」は、本件発明2の「色材」に相当する。
そして、甲5発明における、「赤色202号」の含有量0.1重量%に対する、「撥水撥油処理ベンガラ被覆雲母チタン」及び「酸化チタン被覆合成金雲母」の合計量5.3質量%の比は、53であるから、本件発明2において「色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上」であることに相当する。
d 甲5発明において、「シリル化処理無水ケイ酸」を1質量%含むことは、本件発明2において「増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満」であることに相当する。
e 甲5発明における「(エチレン/プロピレン)コポリマー」は、本件発明2における「エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマー」に相当する。
f 甲5発明における「口紅」は、本件発明2の「油性化粧料」に相当する。
よって、本件発明2と甲5発明は、次の一致点で一致し、相違点5-1及び相違点5-2において相違する。
<一致点>
「平均粒子径が70μm以下の第1の光輝性顔料を含み、
前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0であり、
色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上であり、
増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満であり、
前記第1の光輝性顔料の含有量が、3.0質量%以上であり、
エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマーを含む、
油性化粧料。」
である点。
<相違点5-1>
「エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマー」が、本件発明2においては、「ポリマー系油相増粘剤」として含まれるのに対し、甲5発明においては、そのような特定がされていない点。
<相違点5-2>
本件発明2は、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である」のに対し、甲5発明ではそのような特定がされていない点。
(イ)相違点の判断
a 相違点5-1について
甲5における「(エチレン/プロピレン)コポリマー」は、その構造は不明であり、また、甲5【0011】を参酌するとワックスに分類されるものでるから、上記2(4)イで述べたのと同様の理由により、増粘剤に該当するとは必ずしもいえない。
よって、甲5における「(エチレン/プロピレン)コポリマー」は必ずしも「ポリマー系油相増粘剤」であるとはいえないから、上記相違点5-1は、実質的な相違点である。
b 相違点5-2について
甲5において、甲5発明の「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」については記載がなく、甲5発明が、「(エチレン/プロピレン)コポリマー」を含むということのみから、ただちに、甲5発明について、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上」であるということはできないから、上記相違点5-2は、実質的な相違点である。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、申立書14頁において、以下の主張をしている。
a 甲5発明は、80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が50mPa・s以上であることについて記載されていないが、上記したとおり、本件明細書には、油相増粘剤の含有量0.25質量%以上で上記粘度範囲に調整されることが記載されているところ、甲5発明はエチレンプロピレンコポリマーを2質量%含有するから、本件発明2で規定する粘度範囲に含まれる蓋然性が高い。したがって、本件発明2は甲5発明と同一である。
しかしながら、上記(イ)で述べたものと同様の理由により、甲5に記載の、「(エチレン/プロピレン)コポリマー」が、本件明細書の実施例4の共重合体の含有量より多いからといって、本件明細書の実施例4における「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度」より、必ず高くなるとはいえない。
よって、請求人の主張を検討しても、甲5発明について、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である」とはいえない。
(エ)小括
以上のとおりであるから本件発明2は、甲5明細書に記載された発明と同一であるとはいえない。
ウ 本件発明3について
(ア)対比
本件発明3は、本件発明2と、
・「第1の光輝性顔料」が、「平均粒子径が80μm以下」である点
・「1の光輝性顔料の含有量が、3.0質量%以上」であることが特定されていない点、
・「ポリマー系油相増粘剤の含有量が、20.00質量%以上」である点
でのみ異なる発明である。
そして、甲5発明の「撥水撥油処理ベンガラ被覆雲母チタン」及び「酸化チタン被覆合成金雲母」は、本件発明2の「平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料」に相当する。
そのほか、甲5発明は、本件発明3に対して、上記イ(ア)b~fで述べたものと同様の発明特定事項において相当する。
よって、本件発明3と甲5発明は、次の一致点で一致し、次の相違点5-3~5-5において相違する。
<一致点>
「平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料を含み、
前記第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0であり、
色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上であり、
増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満であり、
エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマーを含む、
油性化粧料。」
である点。
<相違点5-3>
「エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマー」が、本件発明3は、「ポリマー系油相増粘剤」として含まれるのに対し、甲5発明は、そのような特定がされていない点。
<相違点5-4>
本件発明3は、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である」のに対し、甲5発明ではそのような特定がされていない点。
<相違点5-5>
本件発明3は、「ポリマー系油相増粘剤の含有量が、20.00質量%以上」であるのに対し、甲5発明では、そのような特定がされていない点。
(イ)相違点の判断
a 相違点5-3及び相違点5-5について
相違点5-3は、上記相違点5-1と同じものである。
よって、上記イ(イ)で述べたものと同様の理由により、相違点5-3は、実質的な相違点である。
また、上記のとおりであるから、甲5発明において、「ポリマー系油相増粘剤」は含まれていないといえるから、上記相違点5-5はも、実質的な相違点である。
b 相違点5-4について
相違点5-4は、上記相違点5-2と同じものである。
よって、上記イ(イ)で述べたものと同様の理由により、相違点5-4は、実質的な相違点であるといえ、また、甲5に記載された発明に基いて容易になし得たことであるとはいえない。
(ウ)小括
以上のとおり、本件発明3は、甲5明細書に記載された発明と同一であるとはいえない。
エ 本件発明4~8について
本件発明4~7は、本件発明2及び3の油性化粧料について、さらに限定した発明であり、また本件発明8は、その製造方法に係る発明である。
そして、上述のとおり、本件発明2及び3が甲5明細書に記載された発明と同一であるとはいえないから、本件発明2及び3がより限定された本件発明4~7及びその製造方法である本件発明8も、甲5明細書に記載された発明と同一であるとはいえない。
オ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由3には理由がない。
(1)サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件明細書の発明の詳細な説明の記載
本件明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
摘記a:
「【0007】
口紅などの油性化粧料は、例えば、ワックスなどの固形剤を加熱溶融させ、そこに顔料等の添加剤を混合し、得られた混合物を型に注入し、冷却して調製される。このとき、添加剤として、例えば、有色の光輝性顔料を使用したり、或いは、無色若しくは白色の光輝性顔料と色材とを併用したりすると、図1(a)に示されるような、ムラ又はスジ状のフローマークのような模様が生じる場合があった。このような模様を有する油性化粧料を、例えば、口紅として使用し、それを唇に適用しても、図1(b)に示されるように、色味及び光輝性の質感は十分に得られるため、従来は、油性化粧料の外観にムラ又はスジ状のフローマークのような模様が存在する状態で製品化されることが多かった。
【0008】
しかしながら、近年、口紅等の油性化粧料は、単なる色持ち性又は良好な発色性等の性能以外に、油性化粧料自体の外観の審美性も重要視されるようになってきた。
【0009】
したがって、本開示の主題は、ムラ又はスジ状のフローマークのような模様が低減又は抑制され、かつ、外観の光沢性に優れる油性化粧料を提供することである。
・・・
【0015】
原理によって限定されるものではないが、このような油性化粧料が、ムラ又はスジ状のフローマークのような模様が低減又は抑制され、かつ、外観の光沢性に優れる作用原理は以下のとおりであると考える。
【0016】
例えば、スティック状の油性化粧料は、一般に、加熱溶融させたワックスなどの固形剤と光輝性顔料等の添加剤とを含む混合物を、型の上方から注入し、冷却して調製される。このとき、この注入に伴う対流が型内で発生し、その対流の流れに沿って光輝性顔料等が配向し、その状態で冷却固化されるため、ムラ又はスジ状のフローマークがスティックの外観に現れると考えられる。本開示の油性化粧料は、ポリマー系油相増粘剤を用いることによって、80~150°Cの少なくとも一部の温度下、例えば、スティック状油性化粧料用の原料混合物を溶融させ、型に注入してスティック状化粧料を成型する温度下において、50mPa・s以上の粘度を呈するように設計されているため、上述した対流による光輝性顔料の配向が低減又は抑制され、その結果、油性化粧料の外観のフローマークが低減又は抑制されると考えている。
【0017】
油性化粧料の外観の光沢に関しては、まず、光輝性顔料のサイズが影響していると考えている。例えば、薄片状の形状を有する光輝性顔料は、面積の大きい平板面が、光輝性に最も寄与している。スジ状のフローマークは、例えば、横縞模様などとして現れる。横縞模様の場合、サイズの大きい薄片状の光輝性顔料は、対流の流れに沿って、光輝性に寄与する光輝性顔料の平板面が、スティックでは、軸方向に対して略垂直方向になるように配向されやすいため、サイズの大きい光輝性顔料は、油性化粧料の外観の光沢性に寄与しづらいと考えられる。
【0018】
一方、平均粒子径が80μm以下の小さな光輝性顔料の場合、この光輝性顔料は、対流によってランダムに回転しながら化粧料中を移動する傾向を呈しやすいと考えられる。その結果、光輝性に寄与する光輝性顔料の平板面は、サイズの大きい光輝性顔料に比べ、スティックでは、軸方向に対して略平行方向にも配向されやすいため、平均粒子径が80μm以下の小さな光輝性顔料の使用は、油性化粧料の外観の表面光沢性を向上させ得ると考えている。
【0019】
次いで、平均粒子径が80μm以下の小さな光輝性顔料(第1の光輝性顔料)に加え、平均粒子径が80μm超のサイズの大きい光輝性顔料(第2の光輝性顔料)を併用すると、油性化粧料の表面外観が損なわれる場合があることが判明した。これは、平均粒子径が80μm超のサイズの大きい光輝性顔料における上述した配向によって、それよりも小さいサイズの光輝性顔料のランダムな回転移動が阻害されてしまうためであると考えている。本開示の化粧料は、このような構成で光輝性顔料を使用する場合には、平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比を、55:45~100:0とすることによって、このような問題を解決することができ、油性化粧料の外観の光沢性を向上させ得ると考えている。
【0020】
また、光輝性顔料のサイズが大きい場合には、光輝性に寄与する光輝性顔料の平板面に、色材及び/又は煙霧状無水ケイ酸等の増粘性粒子が付着しても、平板面の面積が大きいため、光輝性低減の影響は少ないと考えられる。しかしながら、平均粒子径が80μm以下の小さな光輝性顔料の場合には、平板面の面積が小さいため、そこに色材及び/又は増粘性粒子が付着すると、光輝性が発現しづらくなると考えられる。本開示の化粧料は、増粘性粒子の含有量を4.0質量%未満とし、また、色材を使用する場合には、色材に対する平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料の質量比を2.0以上とすることによって、このような問題を解決することができ、油性化粧料の外観の光沢性を向上させ得ると考えている。
【0021】
本開示の油性化粧料は、上述の構成を採用することによって、ムラ又はスジ状のフローマークのような模様を低減又は抑制し得ることに加え、新車のボディーのような、或いは、光輝性顔料を油性化粧料の表面に直接適用したような、これまでにない優れた光沢感を油性化粧料の外観に提供することができたと考えている。
【0022】
《油性化粧料》
本開示の油性化粧料は、80~150°Cの少なくとも一部の温度下、例えば、90°Cにおいて、50mPa・s以上の粘度を呈することができる。かかる粘度は、化粧料の外観の光沢性、フローマークの低減又は抑制等の観点から、例えば、50mPa・s以上、60mPa・s以上、70mPa・s以上、80mPa・s以上、90mPa・s以上、又は100mPa・s以上とすることができる。粘度の上限値としては特に制限はないが、例えば、35,000mPa・s以下、30,000mPa・s以下、25,000mPa・s以下、20,000mPa・s以下、15,000mPa・s以下、10,000mPa・s以下、8,000mPa・s以下、5,000mPa・s以下、3,000mPa・s以下、又は1,000mPa・s以下とすることができる。
【0023】
〈光輝性顔料〉
本開示の化粧料は、平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料を含んでいる。第1の光輝性顔料は、無色、白色、有色のいずれであってもよい。無色、白色、有色の第1の光輝性顔料は、それぞれ単独で使用してもよく、又はこれらを組み合わせて使用してもよい。
・・・
【0025】
第1の光輝性顔料の配合量としては特に制限はないが、例えば、化粧料の外観の光沢性、化粧料適用時の美粧性等の観点から、化粧料の全量に対し、2.0質量%以上、3.0質量%以上、4.0質量%以上、又は5.0質量%以上とすることができる。第1の光輝性顔料の配合量の上限値としては特に制限はないが、例えば、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、又は8.0質量%以下とすることができる。
【0026】
本開示の化粧料は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料を含んでもよいが、化粧料の外観の光沢性の観点から、平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比は、55:45~100:0の範囲にすることが有利である。かかる質量比は、60:40~100:0の範囲が好ましく、70:30~100:0の範囲がより好ましく、80:20~100:0の範囲がさらに好ましく、90:10~100:0の範囲が特に好ましい。サイズの大きい第2の光輝性顔料は、化粧料の外観の均一な光沢性を低下させるとともに、例えば、スティック状の化粧料の場合、ドット状の不自然な光輝感をスティック又は適用した唇などに対して発現させるおそれがある。したがって、この第2の光輝性顔料の配合量は少ないことが好ましく、第2の光輝性顔料は配合しないことがより好ましい。
【0027】
光輝性顔料の種類としては特に制限はなく、化粧料適用時の美粧性、化粧料の外観の光沢性等を考慮して適宜選定することができ、例えば、一般にパール剤と称する光輝性顔料を使用することができる。光輝性顔料は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
光輝性顔料としては、例えば、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、カルミン・コンジョウ被覆雲母チタン、酸化鉄・カルミン処理雲母チタン、コンジョウ処理雲母チタン、酸化鉄・コンジョウ処理雲母チタン、酸化クロム処理雲母チタン、黒酸化チタン処理雲母チタン、アクリル樹脂被覆アルミニウム末、シリカ被覆アルミニウム末、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆合成マイカ、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆アルミナ、酸化チタン被覆ガラス粉、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、マイカを酸化鉄と酸化チタンで被覆したベンガラ酸化チタン被覆マイカ等の酸化鉄酸化チタン被覆マイカ、マイカと酸化チタン被覆層との間にシリカをはさんだ粉体中空状の酸化チタン等を挙げることができる。これらは、典型的には、白色、又はそれ以外の色を呈している。
【0029】
無色の光輝性顔料としては、透明光輝性顔料として知られている公知のものを使用することができる。例えば、ガラス粒子を基材として、その表面に二酸化チタン等の高屈折率材料から構成される被膜を成形した光輝性顔料を挙げることができる。
【0030】
本開示において、「光輝性顔料」とは、後述する色材を包含せず、光輝性を呈する顔料を意図する。また、「有色の光輝性顔料」とは、無色又は白色以外の色を呈している光輝性顔料を意図する。また、光輝性顔料は、典型的には、薄片状又は鱗片状のような平板状の形態を呈している。」
摘記b:
「【0031】
〈ポリマー系油相増粘剤〉
本開示の化粧料は、ポリマー系油相増粘剤を用いて上述した粘度に調製することができる。化粧料の外観の光沢性等の観点から、ポリマー系油相増粘剤は、透明ポリマー系油相増粘剤であることが有利である。例えば、従来のスティック状化粧料の調製において使用されている増粘性粒子は、上述したように、光輝性顔料の平板面に付着して光輝性を失う原因となり得るが、ポリマー系油相増粘剤、特に、透明ポリマー系油相増粘剤は、増粘性粒子に比べ、光輝性顔料の平板面に付着しても光輝性を低下させにくい。
【0032】
ポリマー系油相増粘剤は、上述した粘度を呈し得るように適宜配合すればよく、その配合量としては特に制限はない。例えば、化粧料の外観の光沢性、使用性等の観点から、化粧料の全量に対し、0.5質量%以上、1.0質量%以上、3.0質量%以上、又は5.0質量%以上とすることができ、また、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、17質量%以下、15質量%以下、13質量%以下、又は10質量%以下とすることができる。
【0033】
ポリマー系油相増粘剤としては特に制限はなく、例えば、エチレンモノマーユニット及びスチレンモノマーユニットから選択される少なくとも一種を有するコポリマーを含む剤を使用することができる。ここで、例えば、スチレンモノマーユニット(スチレンセグメント)を有するコポリマーは、コポリマー中のスチレンセグメントが油相中で相互に引きつけられ、コポリマー間で3次元の網目構造を発現させることができ、それにより油相を増粘させることができる。
【0034】
このようなポリマー系油相増粘剤は、具体的には、(スチレン/イソプレン)コポリマー、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、(スチレン/ブタジエン)コポリマー、(スチレン/エチレン/ブチレン)コポリマー、(スチレン/プロピレン/ブチレン)コポリマー、(スチレン/ブチレン)コポリマー、及び(エチレン/プロピレン)コポリマーから選択される少なくとも一種を含むことができる。これらのコポリマーは、水素化(水添)されていてもよい。なかでも、化粧料の外観の光沢性等の観点から、ポリマー系油相増粘剤は、水添(スチレン/イソプレン)コポリマー、(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、(スチレン/エチレン/ブチレン)コポリマー、及び(エチレン/プロピレン)コポリマーから選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0035】
〈増粘性粒子〉
例えば、従来のスティック状油性化粧料には、典型的には、化粧料の粘度を調製するために、増粘性粒子が配合される。しかしながら、この増粘性粒子が第1の光輝性顔料の平板面に付着すると、光輝性を失う原因となり、化粧料の外観において良好な光沢を得ることが難しくなるおそれがある。
【0036】
したがって、本開示の化粧料では、増粘性粒子を、化粧料の全量に対し、4.0質量%未満、3.5質量%以下、3.0質量%以下、2.5質量%以下、2.0質量%以下、2.0質量%未満、1.5質量%以下、1.0質量%以下、又は0.5質量%以下含んでもよいが、化粧料の外観の光沢性の観点から、増粘性粒子は化粧料中に配合しないことが好ましい。
【0037】
このような増粘性粒子としては、例えば、煙霧状無水ケイ酸、有機変性粘土鉱物などの増粘性無機粒子を挙げることができる。これらは、疎水化処理が施されていてもよい。
【0038】
有機変性粘土鉱物としては、例えば、四級アンモニウム塩で処理した水膨潤性粘土鉱物等が挙げられる。」
摘記c:
「【実施例】
【0069】
以下に実施例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、配合量は質量%で示す。
【0070】
《実施例1~7及び比較例1~7》
表1に示す処方及び下記に示す製造方法により得た油性化粧料について、以下の評価を行い、その結果を表1~3に示す。ここで、実施例1~6及び比較例1~6における油性化粧料は、スティックタイプの油性化粧料の例であり、実施例7及び比較例7の油性化粧料は、中皿タイプの油性化粧料の例である。
【0071】
〈評価方法〉
(粘度の評価)
化粧料の粘度は、90°C、ローター番号M2又はH7、20rpmの条件で、B型粘度計(TVB形粘度計TVB-10、東機産業株式会社製)を用いて評価した。ここで、ローターは、実施例3ではH7を採用し、それ以外の実施例及び比較例ではM2を採用した。また、化粧料の粘度とは、型に注入する前の後述する油性組成物の粘度を意図している。
【0072】
(フローマークの評価)
後述の方法によって調製した油性化粧料のフローマークを、目視で観察し、以下の基準で評価した。ここで、A~C評価までが合格、D評価は不合格とみなすことができる:
A:ムラ又はスジ状のフローマークが確認されなかった。
B:ムラ又はスジ状のフローマークが極僅かに確認された。
C:ムラ又はスジ状のフローマークが僅かに確認された。
D:ムラ又はスジ状のフローマークが明らかに確認された。
【0073】
(表面光沢性の評価)
後述の方法によって調製した油性化粧料の外観の表面光沢を、目視で観察し、以下の基準で評価した。ここで、A~C評価までが合格、D評価は不合格とみなすことができる:
A:新車のボディーのような優れた表面光沢を有していた。
B:A評価の表面光沢に比べ、僅かにくすみが感じられた。
C:B評価の表面光沢に比べ、僅かにくすみが感じられた。
D:C評価の表面光沢に比べ、くすみが感じられた。
【0074】
(塗布後の仕上がりムラの評価)
後述の方法によって調製した油性化粧料を腕の内側に塗布し、その外観を目視で観察し、以下の基準で評価した:
A:仕上がりムラが全く感じられなかった。
B:仕上がりムラが僅かに感じられた。
C:仕上がりムラが明らかに感じられた。
【0075】
〈スティックタイプの油性化粧料の製造方法〉
(実施例1~6及び比較例1~6)
表1に示す処方を用い、以下に示す方法によって、実施例1~6及び比較例1~6のスティックタイプの油性化粧料を各々製造した。
【0076】
全ての材料を混合し、100°Cに加熱して溶融させた後、ホモディスパーで分散して油性組成物を調製した。
【0077】
90°Cに加熱して溶融させた油性組成物を、スティック状の金属製又はシリコーン樹脂製の型に注入した。室温まで冷却し、十分に固まったのを確認した後、型から化粧料を取り出して、スティックタイプの油性化粧料を得た。
【0078】
【表1】
210
96
0001436214000016.jpg
【0079】
【表2】
177
109
0001436214000017.jpg
【0080】
〈結果〉
表1の実施例1~4の結果から明らかなように、増粘性粒子の配合量が少ない処方でも、化粧料を高温下で増粘させることができ、また、化粧料の粘度が、50mPa・s以上であると、フローマークが低減又は抑制されることが確認できた。また、比較例1の結果、及び図1からも分かるように、化粧料がフローマークを有していたとしても、塗布後の仕上がりムラには影響しないことも確認できた。すなわち、たとえ種々の文献において、塗布後の仕上がりムラが改善されることが明記されていたとしても、その結果をもって、フローマークが必然的に改善されるとは言えないことが分かった。
【0081】
また、実施例1~4及び比較例1~4を比較すると分かるように、平均粒子径が80μm以下の比較的小さな第1の光輝性顔料を使用し、かつ、第1の光輝性顔料とそれよりも大きな第2の光輝性顔料との質量比;第1の光輝性顔料と色材との質量比;及び増粘性粒子の含有量を特定の範囲にすると、化粧料の外観の表面光沢性も向上することが確認できた。
【0082】
表2の比較例5の結果より、増粘性粒子の配合量が4.0質量%以上であると、化粧料の外観の表面光沢性が低下することが確認できた。
【0083】
表2の比較例6の結果より、増粘剤を使用せず、かつ、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料の割合が増えると、化粧料の外観の表面光沢性が低下するとともに、フローマークが発現しやすくなることも分かった。
【0084】
表1の実施例1~4の結果、及び表2の実施例5、6の結果より、種々のポリマー系油相増粘剤において、フローマークの低減又は抑制効果と、化粧料外観の表面光沢性の向上効果を奏し得ることが確認できた。
【0085】
〈中皿タイプの油性化粧料の製造方法〉
(実施例7及び比較例7)
表3に示す処方を用い、以下に示す方法によって、実施例7及び比較例7の中皿タイプの油性化粧料を各々製造した。
【0086】
全ての材料を混合し、100°Cに加熱して溶融させた後、ホモディスパーで分散して油性組成物を調製した。
【0087】
90°Cに加熱して溶融させた油性組成物を、中皿状の金属製容器内に投入し、室温まで冷却し、中皿タイプの油性化粧料を得た。
【0088】
【表3】
74
137
0001436214000018.jpg
【0089】
〈結果〉
実施例7及び比較例7の結果から明らかなように、本発明におけるフローマークの低減又は抑制効果と、化粧料外観の表面光沢性の向上効果は、スティックタイプに限らず、中皿タイプのような形態であっても同様に発揮し得ることが確認できた。」
(3)本件発明の課題
本件明細書の発明の詳細な説明の記載(特に【0009】(摘記a))からみて、本件発明の課題は、「ムラ又はスジ状のフローマークのような模様が低減又は抑制され、かつ、外観の光沢性に優れる油性化粧料を提供することである。」と認められる。
(4)判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明の詳細な説明には、本件発明の課題である、光沢性の改善について、以下の記載がある。
「【0018】
・・・
平均粒子径が80μm以下の小さな光輝性顔料の使用は、油性化粧料の外観の表面光沢性を向上させ得る
と考えている。
・・・
次いで、平均粒子径が80μm超のサイズの大きい光輝性顔料(第2の光輝性顔料)を併用すると、油性化粧料の表面外観が損なわれる場合があることが判明した。これは、平均粒子径が80μm超のサイズの大きい光輝性顔料における上述した配向によって、それよりも小さいサイズの光輝性顔料のランダムな回転移動が阻害されてしまうためであると考えている・・・、
平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比を、55:45~100:0とすることによって、このような問題を解決することができ、油性化粧料の外観の光沢性を向上させ得る
と考えている。
【0020】
・・・そこに色材及び/又は増粘性粒子が付着すると、光輝性が発現しづらくなると考えられる。本開示の
化粧料は、増粘性粒子の含有量を4.0質量%未満とし、また、色材を使用する場合には、色材に対する平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料の質量比を2.0以上とすることによって、このような問題を解決することができ、油性化粧料の外観の光沢性を向上させ得る
と考えている。」
「【0031】
〈ポリマー系油相増粘剤〉
本開示の化粧料は、ポリマー系油相増粘剤を用いて上述した粘度に調製することができる。化粧料の外観の光沢性等の観点から、ポリマー系油相増粘剤は、透明ポリマー系油相増粘剤であることが有利である。例えば、従来のスティック状化粧料の調製において使用されている増粘性粒子は、上述したように、光輝性顔料の平板面に付着して光輝性を失う原因となり得るが、
ポリマー系油相増粘剤、特に、透明ポリマー系油相増粘剤は、増粘性粒子に比べ、光輝性顔料の平板面に付着しても光輝性を低下させにくい
。」
(イ) 本件明細書の発明の詳細な説明には、フローマークの低減について以下の記載がある。
「【0016】
例えば、スティック状の油性化粧料は、一般に、加熱溶融させたワックスなどの固形剤と光輝性顔料等の添加剤とを含む混合物を、型の上方から注入し、冷却して調製される。このとき、この注入に伴う対流が型内で発生し、その対流の流れに沿って光輝性顔料等が配向し、その状態で冷却固化されるため、ムラ又はスジ状のフローマークがスティックの外観に現れると考えられる。本開示の油性化粧料は、ポリマー系油相増粘剤を用いることによって、
80~150°Cの少なくとも一部の温度下、例えば、スティック状油性化粧料用の原料混合物を溶融させ、型に注入してスティック状化粧料を成型する温度下において、50mPa・s以上の粘度を呈するように設計されているため、上述した対流による光輝性顔料の配向が低減又は抑制され、その結果、油性化粧料の外観のフローマークが低減又は抑制されると考えている。
」
(ウ) そして、本件明細書の実施例1~7においては、
a 平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0の範囲にあり、
b ポリマー系油相増粘剤を含み、
c 色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上であり、
d 増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満であり、
e 90°Cの粘度が50mPa・s以上である
油性化粧料において、フローマークの評価及び表面光沢性の評価がAかBであり、本件発明の課題である、フローマークの低減と、表面光沢性の改善がなされたことが示されている。
(エ) 本件発明の詳細な説明には、以上の記載があり、そして、本件発明1は、「油性化粧料」において、
a 「平均粒子径が80μm以下の」「第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比が、55:45~100:0であり」、
b 「ポリマー系油相増粘剤を含み」、
c 「色材を含む場合には前記色材に対する前記第1の光輝性顔料の質量比が、2.0以上であり」、
d 「増粘性粒子の含有量が、4.0質量%未満であり」、
e 「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である」
ことが特定されているから、本件発明1は、当業者が、フローマークの低減及び表面光沢性の改善といった本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3も、上記ア(エ)a~eの発明特定事項を備える(本件発明2「平均粒子径70μm以下の第1の光輝顔料」は、「平均粒子径80μm以下の第1の光輝顔料」に包含される。)から本件発明1同様に、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
ウ 本件発明4~8について
本件発明4~8も、本件発明1~3の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1~3と同様に、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
(5)申立人の主張について
申立人は、異議申立書において以下の主張をしている。しかしながら、以下で述べるとおり申立人の主張は採用できない。
ア 第1の光輝性顔料の平均粒子径、含有量及び色について(申立書16頁(ア))
申立人は、第1の光輝性顔料の平均粒子径、含有量及び色に関し、以下の主張をしている。
(ア)
本件発明では、第1の光輝性顔料の平均粒子径は70μmまたは80μm以下であると規定しているが、実施例においてフローマークの抑制や外観の光沢性について確認しているのは、
平均粒子径20μmの光輝性顔料のみである
。
本件明細書では、光輝性顔料のサイズがフローマークの抑制や外観の光沢性において重要とされ、そのサイズが小さい場合には、サイズの大きい光輝性顔料に比べ、軸方向に対して略平行方向にも配向されやすいため、油性化粧料の外観の表面光沢性を向上させ得ることが記載されている(本件明細書【0018】)。
しかるところ
、平均粒子径20μmの光輝性粉体のみの実施例をもって、平均粒子径がその3.5~4倍もの70~80μmの光輝性粉体を用いた場合にも同様に本件発明の課題を解決できるとは認識できない。
(イ)
本件発明では、
第1の光輝性顔料の含有量について何ら規定していないから、
あらゆる含有量の範囲が含まれるところ、本件明細書の実施例において、その効果を確認しているのは平均粒子径20μmの光輝性粉体を5質量%含有するもののみである。
平均粒子径が70~80μmに大きくしたうえに、その含有量を増加させた場合には、光輝性粉体相互間でランダムな回転移動を阻害することが予測される。
(ウ)
本件発明では、第1の光輝性顔料の色について規定していないため、有色、白色、無色のいずれも含まれるが(本件明細書、【0023】)、
本件明細書には、有色の酸化鉄・酸化チタン被覆マイカの実施例があるのみである。し
たがって、
第1の光輝性粉体の色について規定されていない本件発明1~3において、本件発明の課題を解決できるとは認識できない
。
しかしながら、以下のとおり申立人の主張は採用できない。
主張(ア)について
平均粒子径70~80μmの光輝性顔料であっても光輝性は有するのであるし、本件明細書【0018】(摘記a)には、80μm未満であれば、表面光沢性を向上させ得る旨の記載があることから、第1光輝性顔料が平均粒子径70~80μmのものについて、表面光沢性を向上させるという解決しないとまでいえる明確な根拠はない。
よって、第1の光輝性顔料の平均粒子径が70~80μmであったとしても、本件発明が、本件発明の課題を解決できない、とまではいえない。
主張(イ)について
本件発明においては、第1光輝性顔料が、光沢性を付与できる有効な含有量の範囲で課題を解決できるのであれば、当業者は、本件発明の課題を解決できると認識できると解される。
そして、本件明細書の実施例1~7においても、第1の光輝性顔料が、有効な含有量(5質量%)にて含まれる油性化粧料において課題を解決することが示されているのであるから、当業者は、本件発明の課題を解決できると認識できる。
主張(ウ)について
本件明細書【0023】(摘記a)においては、本件発明の光輝性顔料について有色及び無色のいずれも使用しうる旨の記載があり、無色の第1の光輝性顔料であっても光沢を有するから、申立人が表面光沢性を向上できないとする根拠は不明である。
したがって、無色の光輝性顔料についても、表面光沢性を向上させることができると解されるので、当業者は、本件発明の課題を解決できると認識できる。
イ 増粘性粒子の含有量について(申立書16頁(イ))
申立人は、本件明細書の比較例5(【0079】【表1】)において、増粘性粒子に該当する疎水化煙霧状無水ケイ酸を4質量%配合した場合に、表面光沢性が「D」となることが記載されており、
例えば、その含有量を3.9質量%としただけで、表面光沢性の評価が実施例と同様の「A」~「B」にまで改善されるとはおよそ考えられないから、増粘性粒子の含有量が4質量%未満のいずれの範囲においても、本件発明の課題を解決できるとは認識できない
旨主張している。
増粘性粒子を4質量%用いた特定の組成である比較例5においては評価はDであるが、本件明細書【0035】の記載を参酌すると、増粘性粒子により光沢が低下する原因は、増粘性粒子が光輝性顔料の平坦面に付着することであると解されるから、例えば、第1の光輝性顔料が、例えば10質量%と、比較例5の配合量の2倍程度である場合は、実施例4と同様に表面光沢性は向上する可能性があり、必ずしも増粘性粒子が4質量%であるからといって、本件発明が、本件発明の課題を解決できない、とまではいえない。
そうすると、当然に、増粘性粒子が4質量%未満である場合についても、本件発明が、本件発明の課題を解決できない、とまではいえない。
ウ ポリマー系油相増粘剤の含有量について(申立書17頁(ウ))
申立人は、本件発明において、ポリマー系油相増粘剤の含有量は特定されていないから、例えば
、本件発明は、透明性の低いパルミチン酸デキストリン(甲9参照)を主に使用して粘度を調整し、ポリマー系油相増粘剤をごく少量使用したような場合には、透明性が低いため表面光沢性が低下し、流動性が低いため充填時の光輝性粉体の配向性にも影響し、フローマークが生じやすくなることが予測され
、あらゆるポリマー系油相増粘剤の含有量の範囲において、本件発明の課題を解決できるとは認識できない旨を主張する。
しかしながら、フローマークの低減については、本件発明は、「80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上である」ことが特定されているから、当該課題を解決できるものと解される。
本件発明においては、ポリマー系油相増粘剤の配合量が、本件発明の課題の解決に有効な配合量である場合において課題を解決できるのであれば、当業者は、本件発明の課題を解決できると認識できると解される。
そして、本件明細書の実施例1~7においても、ポリマー系油相増粘剤の配合量が、10~30質量%である場合において(ちなみに、実施例7においては、パルミチン酸デキストリンが増粘剤として含まれている。)、フローマーク及び表面光沢性の評価がA~Bであって、課題が解決した結果が示されているから、当業者は、本件発明の課題を解決できると認識できる。
エ 油分の種類及び含有量について(申立書17頁(エ))
申立人は、ポリマー系油相増粘剤と組み合わせる
油分の種類によって透明性が変化することは技術常識であり
、(例えば、水添(スチレン/イソプレン)コポリマーと水添ポリデセンの混合物であるPIONIER GEL 12 PAOは、イソヘキサデカン、エチルヘキサン酸セチル等と組み合わせると透明性が高く滑らかな粘性のゲルが得られるのに対し、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、ジメチコン等と組み合わせた場合には
、透明性が低くなり、分離してしまうことが知られている(甲9))、実施例においては、特定のポリマー系油相増粘剤と特定の油分について、特定含量の結果しか示されておらず、
使用する油分の種類等に制限のない本件発明1~3のあらゆる範囲において、本件発明の課題を解決できるとは到底認識できない旨主張している。
これに対し、本件明細書の記載及び技術常識を考慮しても、組成物の透明性が低いと、表面光沢性が低くなるという明確な根拠はなく、実際、本願の願書に添付された図面における図2(b)(実施例の化粧料)の化粧料も透明ではない。 また、本件発明で特定される物の中には、偶発的に製品として不都合が生じる物も包含され得るとしても、本件明細書の実施例において用いられている油剤とポリマー系油相増粘剤の組み合わせを参酌すれば、有効な組み合わせは当業者が予測できるものであり、本件発明においては、有効なポリマー系油相増粘剤と油分の組み合わせについて課題を解決できるのであれば、当業者が課題を解決できると認識できると認められる。
オ 溶融及び型に注入するときの温度について(申立書17頁(オ))
申立人は、本件発明1~3では、80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上であることを特定しているのみであり、溶融及び型に注入する温度について規定しておらず、例えば、
80°Cでの粘度が50mPa・sだったとしても、溶融及び型に注入する温度が100°Cの場合には、その粘度は低くなり50mPa・s未満となり得
、その場合には、比較例1と同様に、充填時の光輝性粉体の配向性に影響し、フローマークが形成されることが予測される。したがって、溶
融及び型に注入する温度を規定していない本件発明1~3のあらゆる範囲において、本件発明の課題を解決できるとは認識できない
旨主張している。
本件明細書【0016】には、
「原料混合物を溶融させ、型
に注入してスティック状化粧料を成型する温度下において
、
50mPa・s以上の粘度を呈するように設計されているため
、上述した対流による光輝性顔料の配向が低減又は抑制され、その結果油性化粧料の外観のフローマークが低減又は抑制されると考えている」
と記載されているから、本件発明は、成型時に50mPa・s以上とすることによって、課題を解決することとした発明であるといえる。
よって、本件発明8は、成型時に50mPa・s以上とすることが特定され、また、本件発明1~7においては、成形時の温度は特定されていないが、上記記載に鑑みれば、当業者は、50mPa・s以上の溶融粘度となる温度において化粧料の成形をして、本件発明の課題を解決できることが示されれば、当業者は、本件発明の課題を解決できると認識できる。
そして、実施例においては、90°Cにおける溶融粘度が50mPa・s以上であって、100°Cの成形温度(溶融粘度は、90°Cにおけるものと同程度であると解される)において、フローマーク低減等の課題を解決できることが示されているから、当業者は、本件発明の課題を解決できると認識できる。
カ 粘度の上限について(申立書18頁(カ))
申立人は、本件発明1~3では、80~15°C少なくとも一部の温度下における粘度が50mPa・s以上であることを規定するだけで上限はなく、粘度が高すぎても、流動性が低くなって、光輝性顔料の配向性に影響を及ぼし、その結果フローマークが生じることが予測されるから、粘度の上限について制限のない本件発明1~3に含まれるあらゆる範囲において、本件発明の課題を解決できるとは認識できない旨を主張する。
しかしながら、本件明細書においては、80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が高すぎると光輝性顔料の配向性や、フローマークが生じることについて記載はされておらず、根拠がない。
仮に、そのような現象があるとしても、本件発明においては、80~150°Cの少なくとも一部の温度下における粘度が、50mPa・s以上であって、適切な粘度の範囲において、本件発明の課題を解決できるのであれば、当業者は、本件発明の課題を解決できると認識できると解される。
そして、本件明細書の実施例1~7においても、90°Cの粘度が、82~7200mPa・sの広い範囲で、本件発明の課題を解決できた旨の結果が示されているから、当業者は、本件発明の課題を解決できると認識できる。
キ 第1の光輝性粉体と第2の光輝性粉体の比について(申立書18頁(キ)) 申立人は、
本件明細書の比較例2では、
第1の光輝性顔料と第2の光輝性顔料の
質量比
が
50:50である場合に表面光沢性が「D」となっている(【0078】【表1】)から、その比を本件発明の範囲である「55:45」にしただけで、表面光沢性のから、
本件発明のあらゆる範囲において本件発明の課題を解決できるとは認識できない旨主張している。
ここで、本件明細書【0019】においては、
「
均粒子径が80μm超のサイズの大きい光輝性顔料における上述した配向によって、それよりも小さいサイズの光輝性顔料のランダムな回転移動が阻害されてしまうためであると考えている
。・・・平均粒子径が80μm以下の第1の光輝性顔料と、平均粒子径が80μm超の第2の光輝性顔料との質量比を、
55:45~100:0とすることによって、このような問題を解決することができ
、油性化粧料の外観の光沢性を向上させ得ると考えている。」
と記載されているから、第1の光輝性顔料と第2の光輝性顔料の質量比が50:50の場合に表面光沢性が「D」となっていることは、本件明細書の記載となんら矛盾がない。
そして、その近傍であるからといって、上記質量比が55:45である場合に、課題を解決できないとする明確な根拠はなく、第2の光輝性顔料の存在により回転移動が阻害されることを考慮すれば、上記質量比が55:45であると、第1の光輝顔料の方が多く、第2の光輝顔料による回転制限が抑制されるから、光沢性を向上させることができると解され、すなわち当業者は、本件発明の課題を解決できると認識できる。
(6)まとめ
以上のとおり、本件発明は、本件発明の詳細な説明記載したものであるといえるから、申立理由4には理由がない。
以上のとおりであるから、申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできず、ほかに請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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