sokuhyo

Trademark Appeal Case

「キッズ」付加と商標の類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023890094
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6669227号商標(以下「本件商標」という。)は、「キッズ防災士」の文字を標準文字で表してなり、令和4年1月20日に登録出願、同5年1月25日に登録査定され、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,教育上の試験の実施,ノウハウの伝授(訓練),セミナーの企画・運営又は開催,研修会の手配及び管理,動物の調教,電子出版物の提供,図書の貸与,書籍の制作,コンサートの企画又は運営,インターネットを利用して行う映像の提供,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),録音済み記録媒体の貸与,写真の撮影,文化又は教育のための展示会の企画・運営,レクリエーション活動に関する情報の提供,技能訓練用シミュレーターの貸与,電子書籍リーダーの貸与,教育に関する研究」を指定役務として、同年2月6日に設定登録されたものである。

第2 引用商標及び引用使用商標

1 請求人が、本件審判の請求の理由(商標法第4条第1項第11号関連)において引用する登録第4833713号商標(以下「引用商標」という。)は、「防災士」の文字を横書きしたものであり、平成15年4月22日に登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授(防災専門知識及び技能・防災又は災害情報公表の知識及び技能・救急救命知識及び技能・避難誘導知識及び技能の検定試験,防災専門知識及び技能・防災又は災害情報公表の知識及び技能・救急救命知識及び技能・避難誘導知識及び技能の教授,防災専門知識及び技能・防災又は災害情報公表の知識及び技能・救急救命知識及び技能・避難誘導知識及び技能の質の証明を含む。),動物の調教,図書及び記録の供覧,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,映写フィルムの貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,録画済みビデオディスクの貸与」を指定役務として、同17年1月21日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

2 請求人が、本件審判の請求の理由(商標法第4条第1項第11号関連以外)において引用する商標は、請求人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識され、著名の程度に至っていると主張されている、「防災士」の文字よりなる商標(以下「引用使用商標」という。)である。

第3 請求人の主張

1 請求の趣旨

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由(商標法第4条第1項第6号、同項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号、同項第19号)を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第41号証(以下、「甲○」と表記する。)を提出した。

2 請求の理由(要旨)

(1)請求の利益について

請求人は、請求人ウェブサイトに掲載されている定款(甲2)記載のとおり「災害に対する減災と社会の防災力向上のための活動が期待される、相当程度の専門性を持った防災士と呼称する指導的役割を持つ人材の養成、確保、活用等により、わが国の防災と危機管理に寄与すること」を目的として(定款第3条)、「防災士の認証を行い、及び防災士の資格称号を附与し、並びに防災士登録台帳を備え付ける事業」等の事業(定款第5条)を行う、平成13年(2001年)に任意団体日本防災士機構として設立後、平成14年(2002年)に法人としての認証の申請がなされ、同年7月に内閣府から認証を受けた特定非営利活動法人であり、その後、平成30年(2018年)に東京都(東京都知事)から認定を受けた認定特定非営利活動法人である(甲3)。

請求人は、「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章」であって、「著名な標章」といえる「防災士」を、請求人の事業において、長きにわたって使用してきており、本件商標はこれと同一又は類似の商標である。

さらに、請求人は、本件商標の登録出願以前から、引用商標「防災士」及びその他「防災士」関連商標を複数所有し、その業務において長きにわたって使用してきている(甲4~甲8)。

その結果、本件商標の登録出願日より前から、請求人の使用に係る商標「防災士」は、その業務に係る商品、役務を表示するものとして、需要者、取引者に広く認識されるに至っており、これは、本件商標の登録査定の時点でも同様である。

本件商標の指定商品及び指定役務は、請求人の事業に係る商品、役務と同一、類似であり、本件商標と請求人の使用に係る商標「防災士」とは同一、類似であるため、本件商標をその指定商品、指定役務に使用すると商品、役務の出所の混同を生ずる。

以上より、請求人は本件審判を請求することについて、法律上の利害関係を有する。

(2)本件商標が商標法第4条第1項第6号に該当する具体的な理由

ア 「防災士」が「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって、著名なもの」に該当すること。

(ア)請求人について

様々な社会貢献活動を行い、団体の構成員に対し、収益を分配することを目的としない団体である非営利活動法人(「Non-Profit Organization」又は「Not-for-Profit Organization」)の中で特定非営利活動促進法に基づき法人格を取得した法人が、不特定かつ多数のものの利益に寄与することを目的とする事業を行う法人である「特定非営利活動法人」と呼ばれる。また、特定非営利活動法人の中で、実績判定期間(直前の2事業年度)において一定の基準を満たすものとして所轄庁(都道府県、指定都市)の「認定」を受けた法人が、認定特定非営利活動法人となる(甲9、甲10)。

この点、請求人は、任意団体であった「日本防災士機構」が、平成14年(2002年)4月に特定非営利活動法人認証申請を行い、同年7月に内閣府から認証を得た特定非営利活動法人であり、その後、平成30年(2018年)に東京都(東京都知事)から認定を受けた認定特定非営利活動法人である(甲3)。

なお、認定特定非営利活動法人は、その活動を支援するために、より高い税制優遇が適用されることになるが、実績判定期間(直前の2事業年度)において、一定の基準を満たす者のみが、所轄庁(都道府県、指定都市)から認定を受けることができるものである。比較的形式的にその認証がなされる「特定非営利活動法人」と比較すれば、より公益性を有する事業を行っているとの判断がなされた法人であるということができ、請求人についてもそのように判断された認定特定非営利活動法人である。

請求人は、定款第3条記載のとおり「災害に対する減災と社会の防災力向上のための活動が期待される、相当程度の専門性を持った防災士と呼称する指導的役割を持つ人材の養成、確保、活用等により、わが国の防災と危機管理に寄与すること」を目的としている(甲2)。

請求人は、この目的を達成するために、同定款の第5条のとおり「防災士の認証を行い、及び防災士の資格称号を附与し、並びに防災士登録台帳を備え付ける事業」、「防災士の資質向上を図る事業」、「防災士相互の連携を強める事業」、「公的機関、自主防災組織、及び企業内等において防災士の活用を図る事業」、「防災・危機管理・災害救援ボランティア・医療等を目的とする団体や個人との連携を計る事業」、「防災と危機管理に関わる情報発信事業、及び講演会・シンポジウム等の啓もう事業」等を特定非営利活動に係る事業として行っている(甲2)。

(イ)「防災士」とは

「防災士」とは“自助”“共助”“協働”を原則として、社会の様々な場で防災力を高める活動が期待され、そのための十分な意識と一定の知識、技能を修得したことを請求人が認証した人を指す語であり(甲11)、「防災士」には、災害からの被害を最小限にとどめる地域防災力の担い手としての活動、災害時の避難所運営やボランティア活動への取組、地域自治体と連携した防災意識の啓発活動等がその役割として期待されている(甲12)。

防災士は民間資格であり、これを称することができるのは、その資格を有する者に限定される。この資格を取得するためには、まず、請求人が認証した民間研修機関、大学等学校、自治体が開催する研修講座を受講し、その後、請求人が実施する「防災士資格取得試験」を受験して合格する必要がある。さらに、別途、消防署、日本赤十字社が実施する「救急救命講座」の受講終了証を取得する必要がある。その上で、請求人に対して、防災士認証登録申請を行い、日本防災士機構認証委員会の資格審査を受けた後に、請求人から「防災士認証状」、「防災士証(カード)」の交付が行われる資格が防災士である(甲12、甲13)。

「防災士」に関する各種事業は、「防災士」の資格の認証を行い、その事業を主導する請求人のみならず、「防災士」の資格取得の前提条件となる防災士養成のための研修を行う、地方自治体や学校並びに民間研修機関、「防災士」の資格を取得した者のうちの有志から構成され、会員相互の交流と親睦を図り、一人一人のスキルアップと地域防災力の向上を目指すことを目的として設立され、全国各地に支部を有する特定非営利活動法人日本防災士会(甲14)等が一体となって活動を行い、長年にわたる活動の結果として「防災士」に対する信用を蓄積してきたものである。

「防災士」の資格を有する者は、災害発生時における活動の担い手としての働きが期待されるとともに、平時においても防災や減災に関する啓もう活動等を広く行っている。当該資格は、民間の資格ではあるものの、その設立の経緯や防災や減災という公益的な目的の活動内容等を踏まえれば、単なる民間の資格にとどまるものではない。

(ウ)「防災士」の制度の成り立ち

阪神・淡路大震災、北海道・有珠山の噴火、東京都・三宅島の噴火、静岡県・伊豆地方の群発地震、新潟県中越地震など大きな災害にみまわれ、災害列島とも言われる日本において、「防災」は日本各地の防災関係者の情報交流と連帯が最も基本となるものであるから、防災関係者は従来から防災を所管とする国土庁防災局(現・内閣府防災部門)及び自治省(現・総務省)消防庁に対して、防災に関する基礎的な専門知識や技能を有する専門家としての資格が必要であると考え、これを「防災士」と命名した上で、「防災士」の創設、制度化に向けて具体的な運動を行っていた。しかし、国の基本方針である行財政改革及び規制緩和の観点から、「防災士」を国の制度として創設することが難しい状況にあった。

しかしながら、こうした状況に手をこまねいていることはできず、防災関係者の切実なる要望に応える形で、平成11年(1999年)10月に「防災情報機構特定非営利活動法人」(以下「防災情報機構」という。)が設立された。

この防災情報機構は、防災、災害救援、危機管理、環境並びにそれらに関係するボランティア活動に関する諸問題について、個人・団体・機関等を支援する事業、情報提供に関する事業、研究と啓発に関する事業及びそれに関連する事業を行い、国民の生命・財産の保全と安全で快適な生活に寄与することを目的とするもので、その目的の一つとして「防災士制度」の創設、事業を行うものであった。

防災情報機構の会長には、上記阪神・淡路大震災において総理官邸で救援、復旧作業の実務を指揮した元内閣官房副長官が就任し、この機構の評議員、顧問等には、消防、ライフライン、経済団体、労働団体、自治体の重要な任にある人々、歴代消防庁長官、気象庁長官の有志、防災専門の学識経験者等が就任した。

防災情報機構では、直ちに「防災士制度」の検討に着手するとともに、平成12年(2000年)6月には「防災士制度」の実現を定期総会において事業決定し、同年10月に「防災士制度研究会」を設置、発足させ、さらにこれを発展させて平成13年(2001年)3月には「防災士制度に関する検討委員会」を東京大学社会情報研究所長(当時)を委員長として設置、発足させた。

その後、平成13年(2001年)12月12日に「防災士制度に関する答申書」が委員長から防災情報機構の会長宛に出され、防災士制度に関する基本が示され、その中で「防災士」の資格と認定のために新たに「日本防災士機構」を結成し、早急に制度を発足させることが必要であるとの答申がなされた(甲15)。

この答申に基づいて、防災情報機構では直ちに「防災士制度推進委員会」を設置し、防災情報機構を母体として新たに「特定非営利活動法人日本防災士機構」(請求人)を設立することとした。その会長には阪神・淡路大震災当時の兵庫県知事が就任して、平成14年(2002年)7月に内閣府認証の下に発足した(甲16)。

そこで、「防災情報機構」は、「防災士」に関する事業全般を日本防災士機構へ全面的に移管することを決定し、これが実行された、この点は甲12の防災士制度のあゆみ(年表)等にも記載のとおりである。

このような経緯を経て、請求人は、防災情報機構から移管された「防災士」の事業について、その研修大綱、認証制度についてさらに検討を行い、研修機関の選定を進め、「防災士」の研修養成事業を開始した。

第1回の防災士資格取得試験は、平成15年(2003年)9月28日に東京で行われ、198名の合格者を出した。さらに、同年10月26日までの3回の試験で合計648名の合格者が出ている。そして、上記資格試験合格者について第一次の防災士認証を同年10月22日に行い、216名の防災士が初めて誕生したが、認証状授与式の模様はNHKによって全国ニュースとしても報道された(甲3)。

以降、その認証者数は年々増加し、平成18年(2006年)には1万人、平成27年(2015年)には10万人、平成30年に(2018年)には15万人、令和2年(2020年)には20万人、令和5年(2023年)には25万人を超えている状況である(甲3)。なお、防災士養成事業には、これまで32府県及び74市区町村の自治体が参加しており、350を超える自治体が住民を対象に資格取得助成を実施している状況にある(甲12)。

(エ)「防災士」が「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章」であること

請求人が不特定かつ多数のものの利益に寄与することを目的とする事業を行う法人「特定非営利活動法人」、さらに所轄庁から認定を受けた「認定特定非営利活動法人」であることは前述のとおりである。

請求人が実施している事業、すなわち、「防災士の認証を行い、及び防災士の資格称号を附与し、並びに防災士登録台帳を備え付ける事業」、「防災士の資質向上を図る事業」、「防災士相互の連携を強める事業」、「公的機関、自主防災組織、及び企業内等において防災士の活用を図る事業」、「防災・危機管理・災害救援ボランティア・医療等を目的とする団体や個人との連携を計る事業」、「防災と危機管理に関わる情報発信事業、及び講演会・シンポジウム等の啓もう事業」等の事業(甲2、定款第5条)は、「防災士」の資格自体は民間資格ではあるものの、防災や災害時に活躍することができる人材である「防災士」を育成等するという公益に資するものである。

また、請求人は、上述した公益に資する事業を行うにあたり、一貫して、「防災士」の語をその事業を表示する標章として使用している(甲12、甲17~甲24ほか)。

そこで、「防災士」は「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章」に該当する(以下、請求人の事業に係る標章「防災士」を「本件標章」ということがある。)。

(オ)「防災士」の著名性について

「防災士」が広く知られているものであることは、前述の資格認定者数のみならず、例えば公的機関との関係における「防災士」の位置づけや活動の内容、新聞・雑誌等への掲載事例等からもうかがい知ることができると考えられるため、以下この点について説明する。

a 請求人発行の「防災士REPORT」について

請求人は「防災士」に関する事業や取組、「防災士」の活動紹介するための「防災士REPORT」を毎年発行しており、その中では、防災士に関する自治体や大学及び企業等の取組などが紹介されている(甲17~甲24)。

これら「防災士REPORT」は、本件商標の登録査定が2023年1月であることから、これに近い年月の一部のものについての提出にとどめるが、各記事の内容からすれば、請求人のみならず、地方公共団体や学校などが「防災士」の育成やこれに関する活動に参画しており、「防災士」は、災害の多い我が国において、災害からの被害を最小限にとどめる地域防災力の強化の担い手としての活動、災害時の避難所運営やボランティア活動への取組、地域自治体と連携した防災意識の啓発活動等がその役割として期待されている有資格者(甲13)及びこれに関連する事業を指し示す語として広く知られていることがわかる。

b 「防災士」が取り上げられたその他の事例

既に述べたとおり、防災士の養成事業には、これまでに32府県、74市区町村の自治体が参加し、350を超える自治体が住民を対象に資格取得助成を実施している状況にある(甲12)。この点、一部の事例は前記の項においても紹介しているとおりである。

また、例えば、平成22年(2010年)年度版の「防災白書」において、「「新しい公共」の力を活かした防災力の向上」と題する特集において、民間における防災リーダーの育成の取組として既に「防災士」が取り上げられており(甲25)、国土交通省が「マイ・タイムライン」の普及、啓発を図るためとして、防災士向けの研修を開催している事例などもある(甲26)。

さらに「防災士」については、これまでの国会において度々言及された例もある。例えば、平成27年(2015年)2月23日「第189回国会衆議院予算委員会」(甲27)、平成29年(2017年)3月1日「第193回国会参議院予算委員会」(甲28)、平成31年(2019年)2月28日「第198回国会衆議院予算委員会」(甲29)、令和3年(2021年)3月10日「第204回国会衆議院予算委員会」(甲30)等であり、防災に関連し、防災士がより活用されるべきであることなどについて言及されている。

以上のような点からみても、国や地方公共団体の認識としても、「防災士」が、災害時の活動の担い手や、防災・減災に関する地域の防災力強化の担い手として育成され、活用されるべき人材であり、その人材育成及び資格取得者の増加が必要な資格であると認識されていることが明らかであり、また、「防災士」がこのように取り上げられていることから、これが広く知られていることを伺い知ることができる。

c 「辞典」の類への掲載例

インターネット上で、出版社などが提供する辞書・辞典・データベースを横断して検索できるウェブサイトである「コトバンク」において「防災士」の語を検索してみると、朝日新聞社が提供する現代用語事典「知恵蔵mini」及び小学館が提供する「デジタル大辞泉」に、「防災士」について、「NPO法人日本防災士機構が認定する民間資格」であることなどが掲載されている事実を確認することができる(甲31)。

ここから、「防災士」が民間資格であって、請求人が提供する事業に係るものであることが、辞典の類に掲載される程度に広く知られていることを伺い知ることができる。

d 新聞記事等への掲載例

「防災士」に関する記事が各種新聞やウェブサイト版ニュース記事として掲載された例は、毎年枚挙に暇がなく、これをすべてあげることは難しいが、その一例を以下に紹介する。

まず、平成25年(2013年)の1月から12月の掲載例であるが、甲32にまとめたとおり、請求人が記事内容を確認できているものだけでも防災士に関する記事が57件掲載されている。

次に、平成26年(2014年)の1月から12月の掲載例であるが、甲33にまとめたとおり、請求人が記事内容を確認しているものだけで防災士に関する記事が63件掲載されている。

また、平成16年(2004年)6月から平成22年(2010年)2月については、53件の掲載例が確認できている(甲34)。

これらの記事の内容は様々であるが、各地域において防災士の養成講座が開催され、防災士の取得が奨励されていることを示すもの、地方自治体が資格取得のための助成を行っていることを示すもの、防災士が講演会等や勉強会などを行ない、防災、減災についての講演や啓もう活動を行っていることを示すもの、学生などの若年層における資格取得の奨励がなされていることを示すもの等、「防災士」が地域社会における防災、減災に関する活動の担い手として、着実に浸透していることを表すものである。

e インターネットでの検索結果

さらに、インターネットで「防災士」の語を検索した結果を提出する(甲36、甲37)。

このように、「防災士」という語について非常に多くの検索結果が得られるとともに、それらが請求人の提供する事業及び事業に係る民間資格である「防災士」に関して使用されているものであり、他に「防災士」を冠した使用例がほとんど存在しないことや、それと同時に、数多くの地方公共団体や学校などが、防災士の養成研修や助成事業などを行っていることも確認できる。この点は、本件商標の登録査定の時点よりも前の検索結果においても同様である。

このような検索結果からは、資格としての「防災士」やこれに関連する事業が、国とともに特に災害時における地域住民の安全確保や支援を担う地方公共団体等を中心に、地域の防災や減災、災害時における専門的な知識を有する活動の担い手として活用されるべきものであるとして認識され、かつ、広く知られるに至っているということができる。

f まとめ

以上のように、地方公共団体や、大学、企業等が、その人材育成を重要視し、実際にその資格取得者が増加している「防災士」は、災害の多い我が国において、災害からの被害を最小限にとどめる地域防災力強化の担い手としての活動、災害時の避難所運営やボランティア活動への取組、地域自治体と連携した防災意識の啓発活動等がその役割として期待されている有資格者を指し示すとともに、請求人による「防災士」を育成し、普及させる事業等を指し示す語として広く知られ著名の程度に至っている。

イ 本件商標が請求人の標章「防災士」と同一又は類似であること

本件商標は標準文字で「キッズ防災士」を横書きしてなり、「キッズボウサイシ」、「ボウサイシ」の称呼を生じ、「キッズ防災士」という成語は存在しないため、全体としては造語であるが、「キッズ」は一般的な取引者、需要者であれば、「子供」程度の観念を有することを容易に理解できる自他商品役務の識別力の弱い語であることからすれば、「キッズ」と「防災士」からなる結合商標であり、「防災士」から「災害に関する資格(民間資格)である防災士」程度の観念を生ずる。

「キッズ」と「防災士」が結合した本件商標「キッズ防災士」は、その構成中の「キッズ」が「子供」程度の観念を有することを容易に理解できる自他商品役務の識別力の弱い語であるから、請求人の著名な標章である「防災士」とは識別力における軽重の差が大きい。そのため、本件商標全体を必ずしも一体不可分のものとしてのみ捉えなければならない特別な事情はなく、その要部である「防災士」の部分から「ボウサイシ」の称呼を生じ、「災害に関する資格(民間資格)である防災士」の観念を生ずる。したがって、「子供」を表す「キッズ」の語が付加されているとしても、「防災士」の語を含む本件商標が使用されると、請求人の標章「防災士」と相紛らわしく、混同を生ずるおそれがある。

よって、本件商標「キッズ防災士」は、請求人標章「防災士」と同一又は類似の商標である。

なお、仮に本件商標から全体として「子供(子供の)防災士」程度の観念を想起させる場合はあるとしても、「子供」は役務の内容等を表す自他商品役務の識別力の弱い語であるため、需要者、取引者はその構成中の強く支配的な印象を生ずる「防災士」の部分をもって、請求人標章「防災士」と混同を生ずる。この点からみても、本件商標は請求人標章と同一又は類似の商標である。

ウ 小括

以上のとおり、本件商標は、請求人が長きにわたって使用している、「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章」であって、「著名な標章」であるといえる「防災士」と同一、類似の商標であり、商標法第4条第1項第6号に該当する。

(3)本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する具体的な理由

請求人はその事業を行うに際して「防災士」を長きにわたり使用してきており、「防災士」は請求人の提供する事業及び役務に係る名称及びその事業に関連した民間資格の名称として広く知られるに至っている。また、「防災士」は、前記で述べたとおり、「防災に関する基礎的な専門知識や技能を有する専門家としての資格」を創設することを企図された際に命名された「造語」であって、従来から存在した成語ではなく、その後防災情報機構が「防災士」の制度の創設に関する事業に着手し、さらに請求人がその事業を引き継ぎ長きにわたって使用してきたものである。なお、請求人は引用商標「防災士」及び「防災士の語を含む関連商標」、すなわち「日本防災士機構」、「防災士手帖」、「日本防災士会」、「ジュニア防災士」等の関連商標を所有している(甲4~甲8)。

さらに「防災士」は、民間資格の名称として使用されているものの、この「防災士」は、災害の多い我が国において防災、減災に関する啓もう活動や災害時のボランティア活動など、地域の防災力強化の担い手として、地方公共団体や学校までもがその育成や資格取得助成に積極的に参画している等、いわば公的な場面も含めた活動が期待されている側面を持つものであり、これを名乗ることを許されるのは、一定の研修を受購した上で、資格試験を受験し、これに合格した後に請求人に対して申請し、その認定がなされた災害に関する一定の専門的知識及び技能を有する者のみに限られている。

このように、その名を称するためには一定の知識と技能を有することが前提で、さらに試験合格及び資格の取得が必要な名称である「防災士」という資格が存在している一方で、本件商標のように、「防災士」に、例えば「キッズ」のような自他商品役務の識別力が弱い語を付加したにすぎない「キッズ防災士」の語のような併存登録を認め、その両者の使用を異なる者に許容することは、その需要者、取引者に、当該商標が請求人の事業に係る「防災士」と何らかの関連を有するものであるかのごとき誤認を生じせしめることになる。

この点、本件商標の指定役務をみても、例えば「技芸・スポーツ又は知識の教授,教育上の試験の実施,ノウハウの伝授(訓練)」のような請求人の業務に係る役務と同一、類似の役務が含まれており、本件商標が使用されれば、混同を生ずることが明らかである。

また、「防災に関連する一定の知識や資格をもった者」等を表しうる語は、例えば「防災アドバイザー」、「防災プランナー」のように、他にも存在するにもかかわらず、そもそも請求人以外の無関係の第三者が、造語である「防災士」という語に、他の語を結合したにすぎない商標を採択する必然性は皆無である。本件商標のように「○○防災士」のような商標が、安易に請求人の「防災士」とは非類似商標であると判断され、これが多数登録されていく状況になり、このような商標が何ら制限なく使用されるとすれば、無用な混乱を生ずるおそれがあることが明らかであり、前記のように「防災士」を名乗ることが許される者を資格取得者に限定し、これまで防災、減災に携わる者としての信用を蓄積してきた「防災士」の信用を毀損することにつながるばかりか、公正な競業秩序も保たれないことにもなる。このような事態が起こることは、災害時における国民の安全の確保といった社会公共の利益にも反し、社会の一般的道徳観念に反するものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

(4)本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当する具体的な理由

請求人が長きにわたってその事業を行うに際して使用している「防災士」が造語であって、かつ、広く知られるに至っている点は既に述べているとおりである。この状況は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において変わるものではない。

また、民間資格としての「防災士」を称することができるのは、その資格を有する者に限定され、この資格を取得するためには、請求人に対して防災士認証登録申請を行う必要があるが、この申請を行うにあたっては、請求人が認定した民間研修機関・大学等学校・自治体が開催する研修講座を受講し、その後、請求人が実施する「防災士資格取得試験」を受験して合格し、さらに、消防署、日本赤十字社が実施する「救急救命講座」の受講終了証を取得することが要件になっている(甲5)。

また、資格授与後の防災士に対しても、請求人は、スキルアップのための研修等を提供し、その他、防災、減災等に関する各種セミナー、シンポジウムなども実施している。

この点は、既に提出した各種証拠資料からもわかるとおりである。これらは、本件商標の指定役務中の「セミナーの企画・運営又は開催,研修会の手配及び管理」と同一、類似の役務である。

また、本件商標は、標準文字で「キッズ防災士」と横書きしてなるものであるが、「キッズ」と「防災士」の語が結合した結合商標と考えるのが自然であり、「キッズ」の語が「子供」程度の役務の内容等を表すにすぎない自他商品役務の識別力の弱い語であることから、「キッズ」と「防災士」は識別力における軽重の差が大きい。そのため、本件商標を一体不可分のものとして捉えなければならない事情はなく、その構成中の要部である「防災士」の部分から「ボウサイシ」の称呼を生じ、「災害に関する資格(民間資格)である防災士」程度の観念を生ずるため、請求人が長きにわたって業務に使用している「防災士」と同一、類似の商標である。

なお、仮に本件商標から全体として「子供の防災士」程度の観念を想起させる場合はあるとしても、「子供」は役務の内容等を表す自他商品役務の識別力の弱い語であるため、需要者、取引者はその構成中の強く支配的な印象を生ずる「防災士」の部分をもって、請求人標章「防災士」と混同を生ずる。

したがって、本件商標は他人(請求人)の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至っている商標「防災士」と同一、類似の商標であって、その商品若しくは役務と同一、類似の商品若しくは役務に使用するものである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。

(5)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する具体的な理由

ア 本件商標の態様

本件商標は標準文字で「キッズ防災士」を横書きしてなり、「キッズボウサイシ」、「ボウサイシ」の称呼を生じ、全体としては造語であるものの、その構成中の「防災士」から「災害に関する資格(民間資格)である防災士」程度の観念を生ずる。また、「キッズ」は「子供」程度の観念を有し、商品役務の内容等を表すにすぎない自他商品役務の識別力の弱い語であると考えられるが、全体として「子供(子供の)防災士」程度の観念を想起させる場合はある(甲1)。

イ 請求人の所有する引用商標等の態様について

請求人の所有する引用商標は、漢字で「防災士」と横書きしてなり、「ボウサイシ」の称呼を生じ、「災害に関する資格(民間資格)である防災士」を想起させる語である(甲4)。当該引用商標は、本件商標の登録出願日より、15年以上前である平成15年(2003年)4月22日に登録出願され、平成17年(2005年)1月21日にその登録がなされ、平成27年(2015年)1月20日に商標権存続期間更新登録が行われており、現在も有効に存続しているものである。

なお、請求人はその他に「日本防災士機構」、「防災士手帖」、「日本防災士会」、「ジュニア防災士」といった「防災士」に関連する商標を複数所有しており、これらも引用商標と同じく、本件商標の登録出願前に設定登録がなされている(甲5~甲8)。

ウ 本件商標と引用商標の類否について

本件商標「キッズ防災士」について、「キッズ防災士」や「キッズ防災」という成語や広く知られた語はないため、「キッズ」と「防災士」の語からなる結合商標である。

結合商標である本件商標について考察するに、本件商標は、標準文字で「キッズ防災士」を横書きに表したものではあるものの、「キッズ」が片仮名、「防災士」が漢字で表され、さらに「キッズ」の語が、一般的な需要者、取引者であれば「子供」程度の観念を有することは容易に理解出来る平易な成語であり、かつ、「子供」程度の観念を生じ、商品役務の内容等を表すにすぎない自他商品役務の識別力の弱い語であると考えられる一方で、「防災士」は、元来、造語であって、請求人が古くから使用してきたことで広く知られるに至った語であり、識別力において軽重の差が大きい。また、「キッズ」と「防災士」とに観念上のつながりはなく、「キッズ防災士」の語が使用され広く知られている事情もないため、需要者、取引者がこれを常に一連一体の語であると認識すると理解すべき理由はない。

以上からすれば、本件商標については、これを一連一体不可分の結合商標であると判断すべき理由はないため、その構成中の要部である「防災士」の部分に相応した「ボウサイシ」の称呼を生じ「災害に関する資格(民間資格)である防災士」の観念を生ずる。

一方で、引用商標「防災士」(甲23)からは「ボウサイシ」の称呼が生ずることは明らかであり、「災害に関する資格(民間資格)である防災士」の観念を生ずる。

したがって、結合商標である本件商標と、引用商標とは、称呼、観念において相紛れるおそれがある、同一、類似の商標である。

なお、本件商標からは全体として「子供(子供の)防災士」程度の観念を想起させる場合はあるとしても、「防災士」が造語である一方で、「キッズ」が「子供」程度の観念を表す識別力の弱い語であることに鑑みれば、需要者、取引者はその構成中の強く支配的な印象を生ずる「防災士」の部分をもって、請求人の引用商標と混同を生ずる。

エ 本件商標と引用商標の役務の類否について

本件商標の指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授,教育上の試験の実施,ノウハウの伝授(訓練)」」と、引用商標の指定役務中「技芸・スポーツ又は知識の教授(防災専門知識及び技能・防災又は災害情報公表の知識及び技能・救急救命知識及び技能・避難誘導知識及び技能の検定試験,防災専門知識及び技能・防災又は災害情報公表の知識及び技能・救急救命知識及び技能・避難誘導知識及び技能の教授,防災専門知識及び技能・防災又は災害情報公表の知識及び技能・救急救命知識及び技能・避難誘導知識及び技能の質の証明を含む。)」とは、同一又は類似の役務である。

オ まとめ

以上のとおり、本件商標と引用商標は類似する商標であり、同一、類似の役務を指定するものである。さらに、引用商標は本件商標の登録出願前にその設定登録がなされ、本件商標の登録査定時に存在していた引用商標の商標権は今日まで有効に存続している。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(6)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する具体的な理由

請求人が「防災士」を目印として、その事業に係る役務を長きにわたって提供してきており、これが広く知られるに至っている点は前述のとおりである。この状況は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において変わるものではない。

また、「防災士」は、もともと存在していた成語等ではなく、「防災に関する基礎的な専門知識や技能を有する専門家としての資格」を創設することを企図された際に命名されたものであって、その後「防災情報機構」が、「防災士」の制度の創設に関する事業に着手し、さらに請求人がその事業を引き継ぎ長きにわたって使用してきた造語であって、かつ、請求人は、「防災士」の商標のみならず、「日本防災士機構」、「防災士手帖」、「日本防災士会」、「ジュニア防災士」等の「防災士」に関連する商標を複数所有してきている(甲4~甲8)。

このような状況において、「子供」の観念を有し、商品役務の内容等を表すにすぎない自他商品役務の識別力の弱い語である「キッズ」と、造語である「防災士」という語を結合したにすぎない本件商標がその指定役務に使用されると、その構成中に「防災士」の語を含むことから、請求人の業務に係る役務又は請求人と何らかの関連があるものの業務に係る役務であるかのごとく役務の提供の主体に混同を生ずるおそれがある。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(7)本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当する具体的な理由

「防災士」が、請求人が長きにわたって使用している、「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章」であって、「著名な標章」であるという点や、長年にわたり、その事業を行うにあたって、商標「防災士」を使用してきている点、請求人が「防災士」に関連する各種商標を所有していること等は既に述べたとおりである。

また、本件商標「キッズ防災士」と請求人の商標「防災士」が同一、類似の商標である点も既に述べたとおりである。

さらに、本件商標権者は、ウェブサイトによれば、少なくとも理事の2名については、請求人より認定を受けた防災士のようである(甲38)。それゆえ「防災士」という名称やこれがどのような意味を持つものであるか知らないとは考えられない。

このような状況において、「防災に関連する一定の知識や資格をもった者」を表し得る代替語は、例えば「防災アドバイザー」、「防災プランナー」のように他にも存在するにもかかわらず、もともと成語として存在したわけではなく、請求人が長きにわたり使用し広く知られるに至った造語である「防災士」の語に、「子供」程度の観念を有し、商品役務の内容等を表すにすぎない自他商品役務の識別力の弱い語といえる「キッズ」という平易な成語を付加したにすぎない本件商標「キッズ防災士」を使用することは、その商標の使用を採択した時点で「防災士」との混同を生じさせることを企図とした不正の目的があるといわざるを得ず、「防災士」の資格を付与するのに種々の要件を定め、資格取得者としての「防災士」を名乗ることができる者を、災害、防災に関して一定の専門的知識及び技能を有する者に限定し、請求人が長年にわたって事業を行ってきたことによって「防災士」に蓄積してきた信用を毀損させるものにほかならない。

仮に、「キッズ防災士」の使用により「防災士」との間において、出所の混同のおそれまではなくても、出所表示機能を稀釈化させたり、その名声等を毀損させる目的をもって出願したものといわざるを得ず、請求人商標「防災士」及び適式に資格を取得して「防災士」を名乗る者の信用を守るためには、このような登録が認められる状況を到底看過することはできない。

以上のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内において広く認識されている商標「防災士」と同一、類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。

3 令和6年8月7日付け上申書(要旨)

(1)商標法第4条第1項第7号について

ア 被請求人は、請求人とは無関係の団体であり、「防災士」の認定は受けていない(そもそも請求人は自然人以外に対して「防災士」の認定はしていない。)。

また、防災士の資格取得者が被請求人の経営や運営に携わっていたとしても、あくまで自然人である個人が、請求人から「防災士」の認定を受けたことで「防災士」を名乗ることが許されているにすぎず、被請求人が「防災士」の文字を含む「キッズ防災士」の文字からなる商標を出願して商標登録を受けること、すなわち、「キッズ防災士」の商標について独占排他的な効力を有する商標権を取得し、請求人が使用する「防災士」と混同を生じさせることまでが許されるものではない。

イ 「○○弁護士」といった同一の国家資格の中において、得意分野や専門性などのPRや区別化を示すために商標登録を行うことと、「キッズ防災士」のように「防災士」に類似する名称を使用すること、及び請求人から「防災士」の認定を受けていない者であっても「防災士」の語を含む「キッズ防災士」として被請求人によって認定されることになる民間資格に「防災士」の語を含む「キッズ防災士」の語を採択し、これを商標登録することでは、次元が異なる話である。

また、被請求人が挙げる「弁護士」等は「国家資格」であり、「防災士」は民間資格であるという大きな違いが存在する。

「国家資格」について、例えば文部科学省のウェブサイトを見ると、「国家資格とは、国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明される資格。法律によって一定の社会的地位が保証されるので、社会からの信頼性は高い。」との記述がある(甲39)。

一方、「民間資格」は民間団体・協会・公益法人や企業等が独自の基準を設けその資格を認定するものであり、これを保護するための個別の法律は存在せず、自助努力にかかっている。この点において、「国家資格」と「民間資格」はそもそもの前提条件が大きく異なっている。

その上で「防災士」という語が、国家資格として定めている「弁護士」等とは異なり、請求人が業務の移管を受けた前身の組織「防災情報機構特定非営利活動法人」(平成11年(1999年)10月設立)が、「防災に関する基磋的な専門知識や技能を有する専門家としての資格を有する者」を指し示す語として命名した造語で、それ以前には存在していなかった語であるということを踏まえれば、本件商標は「弁護士」等の例と同列に論ずることはできない。

ウ 被請求人を設立したY氏は「防災士」の認定を受けた者であるとしても、本件審判の被請求人、すなわち、本件商標の出願時、登録査定時の商標登録出願人は「防災士」の認定は受けていない(前述のとおり、請求人は自然人以外に対して「防災士」の認定をしていない。)。そうすると、本件商標は「防災士」以外の者が出願、登録して、所有及び使用をしているものである。また、仮に本件商標の出願人、権利者がY氏であったとしても、本件商標を使用した事業が遂行されると「防災士」の認定を受けていない者について、「キッズ防災士」の認定がなされ当該語が使用されることになるが、これにより「防災士」という名称を巡って混乱が生ずることは想像に難くない。また、商標法の目的が「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護すること」とされている点に鑑みても、先願・先登録、かつ長きにわたり事業を行ってきた請求人の業務上の信用の保護が図られるべきである。

このような点に、被請求人の事業を継続し、「子供向けの防災教育を行う」という目的を遂行するにおいて、その事業に係る資格名称に「防災士」という語を含め、これを商標登録する必要性が皆無であることからすれば、被請求人の主張は失当である。

(2)商標法第4条第1項第11号について

甲5から甲8は、請求人が「防災士の語を含む関連商標」を所有していることを立証するもので、甲4は、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとしている引用商標である。少なくとも、「請求人が提出した甲第4号証は本件とは別の事案である」との記載は誤記と思われる。

引用商標「防災士」は、請求人の前身である防災情報機構特定非営利活動法人(平成11年(1999年)10月設立)が、「防災に関する基礎的な専門知識や技能を有する専門家としての資格を有する者」を指し示す語として命名した造語で、それ以前には存在していなかった用語である。

そして、請求人がその事業を指し示す語として長年にわたって「防災士」という標章を使用していること、「防災士」が「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって、著名なもの」に該当し、強い自他商品役務識別カを有することは審判請求書に詳述したとおりである。

そこで、「相続法務士」等の商標出願での拒絶理由を参照した答弁書での主張は、引用商標「防災士」には当てはまらない。

なお、答弁書で指摘されている「ふじのくに防災士」、「コミュニティ防災士」、「マンション防災士」は、いずれも登録商標ではないので、本件商標「キッズ防災士」が引用商標「防災士」との関係で商標法第4条第1項第11号の無効理由を有しているか否かの検討、判断において検討、考慮する事情ではない。

また、これらの標章は、いずれも請求人及びその事業、また、請求人の事業を指し示す「防災士」という用語に関連を有するものである。

「コミュニティ防災士」及び「マンション防災士」は、「防災士」の資格を有している者が、「防災士」として活動するに際して、そのような名称を使用しているという例にすぎず、「防災士」を含む語を使用して、かつ、それを商標登録し、「防災士」とは無関係の者にまで資格を認定することに使用されることが想定される本件商標とは無関係の事例である。

なお、「日本食育防災士」(乙31)に関しては、本件商標と同じく、商標法第4条第1項第6号違反、同項第7号違反、同項第10号違反、同項第11号違反、同項第15号違反、同項第19号違反を理由として、請求人が商標登録無効審判を請求しているところである(無効2023-890093号)。

そこで、乙28から乙31による「本件商標の構成において殊更「防災」「士」部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとして認められるべきとはいえない。」との主張は当たらない。

なお、被請求人は本件商標と引用商標との類否を判断するのに際し、本件商標が全体とひとまとまりとして判断されるべきであると主張している。しかしながら、被請求人は商標法第4条第1項第6号の非該当性について言及した答弁書において、「キッズ」が「子供向けの事業であること」を認識させるとしており、これはすなわち被請求人が本件商標の構成中において、「キッズ」が役務の内容等を表すにすぎない自他商品役務の識別力の弱い語であると認めているものである。

この点もふまえれば、識別力において軽重の差のある「キッズ」と「防災士」の語からなる「キッズ防災士」について、これを一連一体不可分の商標であるとして類否判断をしなくてはならない理由は見当たらない。

(3)商標法第4条第1項第6号について

甲12の発行日は本件商標の登録査定後であるが、1999年(平成11年)以降の防災士制度のあゆみ等が掲載されているもので、本件商標の登録査定時より前の、1999年(平成11年)以降の防災士制度のあゆみ等は甲12に掲載されているとおりである。

甲13には「2023年度のお知らせ」とあるが、防災士として認定されるまでのプロセスを説明する資料であって、このプロセスは、本件商標の査定時より前から変更のないものである。

被請求人は「引用商標の資格の主な対象者は、防災に関する何らかの資格に興味を持つ成人である。」、「一方、本件商標は、・・・子ども向けサービスであることが一般的である。」等と主張し、本件商標は請求人の標章「防災士」に「同一又は類似の商標に該当しない」としているが、当たらない。また、被請求人は答弁書において「キッズ」が「子供向けの事業であること」を認識させるとしているが、これはすなわち被請求人が本件商標の構成中において、「キッズ」が役務の内容等を表すにすぎない自他商品役務の識別力の弱い語であると認めているものである。

(4)商標法第4条第1項第10号について

被請求人は答弁書において「キッズ」が「子供向けの事業であること」を認識させるとしており、本件商標の構成中において、「キッズ」が役務の内容等を表すにすぎない自他商品役務の識別力の弱い語であると認めているものであることは前述のとおりであり、ここからしても識別力において軽重の差のある「キッズ」と「防災士」の語からなる「キッズ防災士」について、「ひとまとまりで判断されるべき。」とする理由は見当たらない。

(5)商標法第4条第1項第15号について

本件商標の出願時、登録査定時の権利者は、「防災士」ではなく、請求人とは無関係の企業、団体である。

本件商標「キッズ防災士」がその指定役務に使用されると「請求人の業務にかかる役務又は請求人と何らかの関連がある者の業務にかかる役務であるかのごとく役務の提供の主体に混同を生ずるおそれがあると言わざるを得ない」ので、被請求人の主張は失当である。

(6)商標法第4条第1項第19号について

請求人の使用に係る「防災士」を知った上で、その資格の認定を受けている者が関係している団体(請求人とは無関係の団体であり、「防災士」の認定は受けていない(そもそも請求人は自然人以外に対して「防災士」の認定はしていない。)団体である被請求人が、「防災士」という語に、役務の内容等を表すにすぎない自他商品役務の識別力の弱い語である「キッズ」を付加したにすぎない本件商標をもって、「防災士」の資格を有しない者に対しても資格の認定を行うことになる事業に本件商標が使用されることにより「防災士」という名称を巡って混乱が生ずることは想像に難くない。商標法の目的が「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護すること」とされている点に鑑みても、先願、先登録かつ、長きにわたり事業を行ってきた請求人の業務上の信用の保護が図られるべきである。

このような点に、被請求人の事業の目的を達成するにおいて、その資格名称に「防災士」という語を含め、これを商標登録する必要性が皆無であることからすれば、「出所表示機能を希釈化させたり、その名声を毀損させたりする目的をもって出願したものと認定されるような事情はない。」という被請求人の主張は失当である。

第4 被請求人の答弁

1 答弁の趣旨

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証から乙第37号証(以下、「乙○」と表記する。)を提出した。

2 答弁の理由(要旨)

(1)商標法第4条第1項第7号について

本件商標「キッズ防災士」は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様ではない。

また、被請求人は、引用商標の「防災士」とは別異のものとして、自己の業務に係る役務について使用する商標として本件商標「キッズ防災士」を出願し登録を受けたものであり、本件商標をその指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできない。

また、本件商標及びその構成に含まれる「防災士」の文字は、他の法律によってその使用が禁止されているものでもない。なお、「災害を防止する一定の資格や役割」において、他の法律によってその使用が禁止されている国家資格としては、「救急救命士」、「消防設備士」、「防災管理者」、「防火管理者」等が挙げられる。

また、本件商標は、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。

また、本件商標の登録出願の経緯において、社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当するといった事情もない。ここで、被請求人の設立経緯とともに、本件商標「キッズ防災士」の出願経緯を以下に述べる。

ア 被請求人の設立経緯について

被請求人(乙1)は、被請求人ウェブサイトに掲載されている定款(乙2)に記載のとおり、「自然災害によって大切な命を失われない社会の実現を目指し、広く一般市民等を対象として防災及び減災に関する知識普及と啓発活動を行うとともに、地域防災力の向上と災害時における被災地市民等の支援活動に取り組む団体及び市民等への支援を行うことを目的とし(定款第3条)」、「(1)防災及び減災に関する講演、研修会等の企画及び開催。(2)防災及び減災意識の普及、啓発事業。(定款第3条)」等を行う一般社団法人であり、2019年6月に設立された(乙3)。

設立時から現在に至るまで代表理事を務めるY氏は、2014年1月に設立された任意団体「広島市防災士ネットワーク」の代表世話人でもあり、消防庁のアドバイザー等も務める(乙4)。Y氏は消防士として広島市消防局に奉職したのち、平成21年11月に「防災士」の資格を取得し、地域において消防、防災、減災の啓もうを行ってきた。そうした中、1999年に発生した「6.29広島豪雨災害」から15年のけじめの年となる2014年のこと、地域をあげて防災訓練に取り組みたいとの自主防災会の会長からの協力要請を受け全面的に協力することとなった。そして地域をあげた防災訓練は2014年6月29日、無事に終了した。しかしながら、それから2カ月もたたない2014年8月20日、「平成26年8.20広島市豪雨土砂災害」が発生し、15年前を超える77名が犠牲となった。Y氏は、「自然災害から命を守る防災活動は、声をかけるだけではだめだ」「人と人とのつながりを重視した人的ネットワークの構築を進めていかなければ住民の防災意識や防災力は向上しない」と強い危機感を覚え、自らが発起人となり、広島市内在住・勤務の防災士同士の情報共有、相互協力、研さん・活動機会の提供等を目的として「広島市防災士ネットワーク」を設立した。当該ネットワークにおいては主に、地域の防災リーダーの相互交流や自主防災組織などの住民組織における研修や訓練を行っていた。そうした活動を行っていた中、2018年7月、「西日本豪雨」が発生した。西日本を中心に、広域的かつ同時多発的に土砂災害が発生し、200名以上が犠牲となり、その多くが70代以上の高齢者であった。災害発生後いち早く現場に駆け付けたY氏は、災害による犠牲者を少なくするためには、自主防災組織などの住民組織だけでなく、事業所や学校など昼間多くの人が集まる場所での防災、減災活動も重要であることを再認識し、被請求人を新たに設立し、本格的に事業展開することとなった(乙5)。

イ 「キッズ防災士」事業の取組開始の背景について

Y氏は、「西日本豪雨」の被災地において被災者やその家族と接する中で、あることに気が付いた。子どもと比較して大人の方が相対的に防災知識を有しているはずであるが、大人が防災知識を習得しても実際の災害発生時においてはそれまでの経験等から「自分は大丈夫なはず」といった正常性バイアスが心理的に働いてしまい、行動に結び付かない傾向がある。このことは、請求人提出の甲23「防災REPORT」の「防災士ですら避難した人は僅かに3%です。危険が差し迫っている中、行政がいくら避難指示を出しても、それに従う人は本当に少数です」との記載からもうかがえる。一方それに対し、子ども達は大人と比較して経験値が低いため、学んだことを素直に真剣に受け止める。そして、子ども達から「おじいちゃん、危ないから行ったらだめ」「おばあちゃん、早く逃げよう」等と言われると、大人は正常化バイアスを超えて行動しやすくなる、ということである。また、子どもの時から防災教育を受けていれば、防災意識の高い大人に成長することができ、ひいてはその子達の住む地域における防災、減災につながる。そうした考えのもと、被請求人を主体とした公益的事業のひとつとして、子ども向けの防災教育を本格的に行うこととした(乙6)。

ウ 本件商標の選択に至った経緯について

子ども達に防災に関心を持ってもらうためには、ただ単に一方的な講義を行うのではなく、学びたいというモチベーションをまずは育むことが重要である。そのため、学びの程度に応じて子ども達が達成感を得られるよう、学びの証が認定される仕組みを取り入れることを考えた。主に小学生の子どもを対象とすることを意図していたため、学びの証となる認定名称は子ども達に伝わりやすいよう、出来るだけ短く平易な語とする必要があった。そこで、一般的に小学生位の子ども達を表し、かつ親しみやすい「キッズ」の語を用いるとともに、「災害を防ぐ」という学びの内容を直接的に表す「防災」の語と、認定や資格を示す語として親しみのある「士」を組み合わせた、「キッズ防災士」の語を選択した。

無論、被請求人の代表理事1名及び理事2名ともに、広島市及び周辺に住居するか勤務とする防災士である会員によって構成される「広島市防災士ネットワーク」としての防災、減災啓もう活動も行っていたことから、「防災士」の資格やその内容については知っていた。しかしながら、本件商標「キッズ防災士」はその対象や内容が全く異なる別異のものであるから、本件商標を用いて、地域の子ども達に防災・減災に関する教育を長く続けていくことができるよう、本件商標の登録出願に至ったのである。

エ 「キッズ防災士」の使用状況について

使用状況については、査定時より後に公開された情報も含まれているが、「キッズ防災士」の取組に関する被請求人の活動実績は一朝一タに蓄積されたものではなく査定時前の活動からつながっているものであり、公開のタイミングが査定時よりも後であることをもってそれまでの活動実績が否定されるものではないし、査定時において本号に該当するような事情がなかったことは、査定後の使用状況を踏まえても推認できるため、査定後の使用状況についても併せて申し述べる。

(ア)被請求人は、2022年から、広島県の「危機管理監 みんなで減災推進課」と連携し、広島市の小学校に出前授業を行い、修了した子ども達に「キッズ防災士」の認定証及び認定バッヂを授与する活動を行っている(乙7~乙10)。令和4年度の実施校は47校であり、「キッズ防災士」の認定証及び認定バッヂを授与した子どもは2,537名であった。また、令和5年度の実施校は23校であり、「キッズ防災士」の認定証及び認定バッヂを授与した子どもは1,132名であった(乙11)。県外からの視察も多く受けており、小学校や自治体に展開が広がりつつある。

(イ)「ぼうさいこくたい2022」(令和3年10月22日~10月23日開催)に出場し、「キッズ防災士」認定についてのプレゼンを行った(乙12)。

(ウ)総務省消防庁が主催する「第27回 防災まちづくり大賞」において、落合学区自主防災会連合会が最優秀賞にあたる「総務大臣賞」を受賞し、取組の内容として、「「キッズ防災士」の養成 小学4年生から6年生に対し、公民館や子ども会などを通じて防災学習を行っている」という防災教育が挙げられた。なお、「第27回 防災まちづくり大賞」事例集(乙13)の発行は、令和5年3月であるが、応募期間は令和4年7月29日(金)から同年10月14日(金)であり、この間に提出された、被請求人による「キッズ防災士」の取組についての実績も評価されて受賞に至ったものである。「キッズ防災士」の取組が子どもの防災意識を高め、小学校卒業後の「防災士」受験のきっかけとなった例もある。また、この防災教育に関する「キッズ防災士」の取組は、その後、令和6年2月6日付けで総務省消防庁において取りまとめられた、「消防団を中核とした地域防災力の充実強化取組事例集」(乙14)にも挙げられ、「地元小学生に対し「キッズ防災士」を育成する事業が、近隣小学校や公民館の社会教育講座へと広がる」と紹介された。この取組事例集は、同日の令和6年2月6日付けにて総務省消防庁から各都道府県知事及び各指定都市市長に向けて発出された通知に添付された。

(エ)内閣府の防災情報ページ「みんなで減災」サイトにおいて、「住民の適切な避難行動の促進に向けた好事例集」コンテンツページ(乙15)に、「7 ひろしまマイ・タイムラインの推進&キッズ防災士の育成」として「キッズ防災士」の取組が好事例として掲載された(乙16)。この好事例集が発行されたのは令和5年6月であるが、内閣府が設置した「令和3年7月からの一連の豪雨災害を踏まえた避難に関する検討会」の提言を踏まえて作成されたものであり、掲載された「キッズ防災士」の取組は、査定時においてもなされていたものである。

(オ)令和4年度(2022年)より、広島県の危機管理監みんなで減災推進課が発行する「ひろしま防災出前講座コースカタログ」に、「キッズ防災士」認定講座が設定された(乙17)。

(カ)広島テレビ「テレビ派」(2022年7月19日放送)にて、「キッズ防災士」の取組が紹介された(乙18)。

(キ)NHK「お好みワイドひろしま」(2022年9月6日放送)にて、「キッズ防災士」の取組が紹介された(乙19)。

(ク)中国新聞(デジタル版及び紙面、2022年8月5日発行)にて、「キッズ防災士」の取組が紹介された(乙20)。

このように、本件商標の登録出願の経緯が、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に当たらない。

オ 他の国家資格を含む語における判断について

なお、一般に知られていることが明白である、例えば「弁護士」、「弁理士」、「税理士」、「社労士」、「薬剤師」といった国家資格及びその略称を含む語についても、「AI弁護士(乙21)」「ブランド弁理土(乙22)」、「ロボット税理士(乙23)」、「リモート社労士(乙24)」といった登録が、各々国家資格等と誤認を生ずるおそれがないものとして認められているのであり、これらに鑑みても、本件商標が民間資格たる「防災士」と誤認を生ずるおそれがあるものではなく、本号に該当しない。

カ 小括

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

(2)商標法第4条第1項第11号について

請求人が提出した甲4から甲8は本件とは別の事案であるため、これらについての言及は省略する。

ア 外観

本件商標は「キッズ防災士」の語を一連に表して構成されており、一方、引用商標は「防災士」の語で構成されている。このように、両者は外観の識別上重要な要素である語頭において「キッズ」の文字の有無という差異を有するから、相紛れるおそれはない。

イ 称呼

本件商標からは「キッズボーサイシ」との称呼が生じる。一方、引用商標からは「ボーサイシ」との称呼が生じる。このように、両者は称呼の識別上重要な要素である語頭の「キッズ」の音の有無という差異を有するから、明確に聴別できる。

ウ 観念

本件商標を構成する「キッズ」の語は、「子供達。[広辞苑 第七版]」の意味を有する。また、「防災」の語は、「災害を防止すること。[広辞苑 第七版]」の意味を有し、「士」の語は、「一定の資格・役割をもった者。[広辞苑 第七版]」の意味を有する。よって、本件商標全体からは、「子ども達に関する、災害の防止についての資格や役割をもった者」程の意味合いが生じる。

一方、引用商標は「防災」及び「士」の語で構成されるため、全体より、「災害の防止についての資格や役割をもった者」程の意味合いが生じる。このように、両者は観念の識別上重要な要素である語頭において、「子ども達」の意味合いの有無という差異を有するから、相紛れるおそれはない。

エ 結合商標の類否判断について

本件商標は「キッズ」と「防災」と「士」からなり、また、引用商標は「防災」と「士」からなる結合商標である。

「防災」「士」の語は、前述のとおり、特定の意味を有する語として辞書等に掲載された成語であり、この点は否定のしようがない。そうすると、「防災」と「士」とを組み合わせた構成全体よりは、「災害を防止する一定の資格や役割をもった者」といった意味合いを生じるため、「防災士」の語自体は元来、その指定役務との関係において、識別力が弱い語といえる。

なお、近年の特許庁の審査においても、役務の内容を表す成語と「士」の組合せからなる結合商標について、同様の判断がなされている(乙25~乙27)。

このような判断状況に鑑みても、「防災」「士」との組合せからなる「防災士」は、「技芸・スポーツ又は知識の教授,教育上の試験の実施,ノウハウの伝授(訓練)」といった役務との関係において、識別力が弱い語である。

請求人は、「防災」と「士」との組み合わせによる「防災士」の語は、「元来、造語であって、請求人が古くから使用してきたことで広く知られるに至った語」であるとして、この部分のみを抽出して判断すべきと主張するが、特許庁の商標審査基準に示されているような独創性の高い造語であればまだしも、前記のとおり、「防災士」の語は、「防災」と「士」という平易な成語の組み合わせからなる独創性の低いもの、すなわち独占適応性の低いものであるから、仮に「防災士」の語が広く知られるに至ったとしても、それはあくまで「防災士」の語としてであって、本件商標のように一連一体にまとまりよく表され、観念的なつながりを有する構成のうち、後半の「防災士」部分のみを抽出して類否判断にあたるのは妥当とはいえない。

また、本件査定時において、「ふじのくに防災士(乙28)」「コミュニティ防災士(乙29)」「マンション防災士(乙30)」「日本食育防災士(乙31)」といった、請求人とは別の主体による使用事実もあり、本件商標の構成において殊更「防災」「士」部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではない。

オ それ以外の部分について

本件商標においてそれ以外の部分は、「キッズ」の部分となるところ、この部分からは「キッズ」の称呼が生じ、また、前述で述べたように、「子ども達」との観念が生じる。よって、「この部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じない」とはいえない。なお、請求人の主張においても、「キッズ」部分から「子供」程の観念が生じると認めている。

カ 小括

このように、一連一体に表され、観念的なつながりを有する本件商標は全体をひとまとまりとして判断されるべきものであり、引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標である。

(3)商標法第4条第1項第6号について

まず、請求人提出の甲12は、本件商標の査定後に発行されたものである。また、甲13も「2023年度のお知らせ」なので、査定後の情報と思われる。甲32から甲35は請求人が作成した一覧表であり、その使用主体等の事実を確認できない。

ア 「著名なもの」について

請求人は、引用標章「防災士」が公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章として「著名なもの」であると主張する。しかし、引用標章は、防災事業に携わる者の間において一定程度知られているとしても、「災害からの被害を最小限にとどめる地域防災力強化の担い手としての活動、災害時の避難所運営やボランティア活動への取組、地域自治体と連携した防災意識の啓発活動等がその役割として期待されている者を育成し普及させる事業」を表示する標章として広く一般に「著名なもの」に至っていたとまではいえない。

イ 「同一又は類似の商標」について

仮に引用標章が「著名なもの」であったとしても、本件商標「キッズ防災士」はこれと「同一又は類似の商標」には該当しない。

本件商標が引用標章と誤認を生ずるおそれがないこと、また、「同一又は類似の商標」に該当しないことについては、前述で述べたとおりである。

加えて、引用標章の資格の主な対象者は、防災に関する何らかの資格に興味を持つ成人である。主な対象者が成人であることは、「日本防災士機構」のウェブサイトにおいて、「研修内容が基本的に成人を想定していること」と掲載されていることからも明らかである(乙32)。

一方、本件商標は、子ども達の意味を表す「キッズ」の文字を語頭に冠した「キッズ防災士」からなるものである。「キッズ」を冠する事業は子ども向けのサービスであることが一般的である。このように、本件商標「キッズ防災士」は、その構成から一見して、子ども向けの事業であると認識されるものである。まして、「防災士」の語が広く知られていたとすれば、防災に関する資格を受けたい者が「防災士」と「キッズ防災士」とを聴取混同するおそれはない。乙号証の事例紹介等をみても、「キッズ防災士」と「防災士」とは別異のものとして認識されていることが分かる。

ウ 小括

このように、本件商標の登録をもって引用標章の信用を害したり、出所の混同を生じたりすることはないのであり、本件商標は商標法第4条第1項第6号に該当しない。

(4)商標法第4条第1項第10号について

前述のとおり、本件商標「キッズ防災士」は、引用商標「防災士」と類似する商標ではない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。

(5)商標法第4条第1項第15号について

ア 類似性の程度

本件商標と引用商標とは、前述のとおり類似するものではなく、類似性の程度は低い。

イ 引用標章の周知度

請求人が出所であるとして周知性を獲得しているかは不明であるが、「防災士」の語自体について著名性の獲得までは至らずとも、一定程度の周知性はある。

ウ 引用標章が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか

引用標章は、前述のように、平易な成語から構成されるものであり独創性は低く、顕著な特徴を有するものではない。

エ 引用標章がハウスマークであるか

引用標章は、請求人が独自の基準に基づいて付与する民間資格の名称であり、ハウスマークではない。

オ 企業における多角経営の可能性

引用標章の出所である請求人は、その名のとおり「防災」に関する特定非営利活動法人であるが、その性質上、多角経営の可能性は低い。

カ 役務間の関連性及び需要者の共通性

請求人が「防災士」について使用する「教育上の試験の実施」と、本件商標の前記指定役務のうち例えば、「セミナーの企画・運営又は開催,研修会の手配及び管理」といった役務は、一定程度の関連性がある。

キ その他の取引の実情

引用標章は、前述のとおり、平易な成語を組み合わせた独創性の低い構成であり、「災害の防止についての一定の資格や役割を持った者」といった意味合いを想起することができる。また、「防災」及び「士」の2語においては、「災害の防止についての一定の資格や役割を持った者」を意味するものとして、請求人とは別の主体により、その前後や間に他の語を付加して使用されている実情がある(乙28~乙31、乙33)。このように、「災害の防止についての一定の資格や役割を持った者」に関して、その事業の内容等を表示するために「防災」や「士」といった語が使用されることは特異なことではない。また、自然災害等の被害が深刻化する中、「防災」の語を用いて様々な組織、団体により防災教育に関する取組が提供されている(乙34、乙35)。このように、様々な組織、団体が、「防災」の語を用いて防災に関する研修やセミナーを開催したり、独自の資格を付与したりしている実情に照らすと、これらに接した需要者や取引者は、それぞれを注意深く見分けて認識する。

引用標章は、民間資格の名称であるところ、成人を主な対象者(需要者)とするものであり、合格率は90%を超えている。しかしその研修教材の内容は、小学生世代の子ども達にとっては難解なものとなっている(乙36)。また、通常のルートで資格を取得しようとすると、研修講座受講料が約50,000円必要とされ(乙37)、内容、金額ともに小学生世代の子ども達が取得するにはかなりハードルの高いものとなっている。一方、本件商標は「キッズ防災土」の構成からなり、「キッズ」の語を冠することからして、成人を主な対象とするものではないことが一見して把握できる。

また、資格を取得しようとする者は通常、その資格の内容や費用等を事前にきちんと調べるため、引用標章「防災士」と本件商標「キッズ防災士」とを混同したり取り違えたりすることはない。

ク 特許庁の判断事例

我が国で著名と思われる資格試験や資格名称を表す語と、それに他の語が付加されたものとについて、出所混同を生ずるおそれがないとして登録が認められている事例が、例えば「クリニック経営士」、「貸家経営土」、「モバイル販売士」、「在宅秘書検定」のように、多くある。

ケ 小括

このように、本件商標と引用標章との類似性の程度は低いものであり、引用標章は構成上顕著な特徴を有するものではなく、両者は別異のものとして認識されるものである。すなわち、本件商標に「防災」「士」の語が含まれているからといって、特定の事業者との具体的な関連性を認識させるものではなく、出所混同を生ずるおそれはない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(6)商標法第4条第1項第19号について

前述のとおり、本件商標「キッズ防災士」は、引用商標「防災士」と類似する商標ではない。

また、前述のとおり、出所表示機能を稀釈化させたり、その名声等を毀損させたりする目的をもって登録出願したものと認定されるような事情はない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

第5 当審の判断

1 利害関係について

請求人は、「防災士」を自己の事業において長きにわたって使用してきており、本件商標はそれと同一又は類似の商標であるから、本件審判を請求することについて、法律上の利害関係を有する旨を主張するところ、被請求人は当該利害関係については争っておらず、当事者間に争いがない。

したがって、当審は請求人が本件審判の請求について利害関係を有すると認める。

2 引用商標及び引用使用商標の周知性

(1)請求人の提出証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。

ア 請求人は、防災士と呼称する人材の要請、確保、活用等により、我が国の防災と危機管理に寄与することを目的として設立された特定非営利活動法人であり、その事業として、(ア)防災士の認証を行い、及び防災士の資格称号を附与し、並びに防災士登録台帳を備え付ける事業、(イ)防災士の資質向上を図る事業、(ウ)防災士相互の連携を強める事業、(エ)公的機関、自主防災組織、及び企業内等において防災士の活用を図る事業などを行うものである(甲2)。

イ(ア)「防災士」とは、地域の防災意識の啓発、防災力の向上に努め、災害発生時には避難誘導・救助にあたる人であり、請求人が認定する民間資格である(甲31)。

(イ)防災士資格を取得するには、一般的な方法と、消防、警察の現職及びOBなどが「特例制度」を使って取得する方法がある(甲13)。

一般的な方法としては、(a)請求人が認証した研修機関が実施する「防災士養成研修講座」を受講し、「研修履修証明」を取得、(b)請求人が実施する「防災士資格取得試験」を受験し、合格、(c)自治体、消防署、日本赤十字社等の公的機関、又はそれに準ずる団体が主催する「救急救命講習」を受け、その修了証を取得、そして、これら3項目を修了した者が請求人への「防災士認証登録申請」を行うことができる。

ウ 防災士養成研修と資格取得試験は、2003年に開始され、その後、認証された防災士の累計数は、2022年1月に22万人を超え、2023年6月末時点で約26万人である(甲11、甲12)。

また、防災士研修は、32府県、74市区町で実施され、防災士研修実施教育機関は全国各地に44校ある(2023年2月時点、甲12)。

エ(ア)請求人は、防災士養成・活動事業や実施事例を紹介する「防災士REPORT」と題する冊子を、2015年から2022年にかけて毎年発行している(甲17~甲24)。

(イ)「防災士」やその活動などを紹介する記事は、「平成22年版 防災白書」(甲25)に掲載されている。

(ウ)「知恵蔵mini」及び「デジタル大辞泉」には、「防災士」の項がある(甲31)。

(エ)2004年から2010年、2013年、2015年、2020年に発行された新聞には、「防災士」やその関連団体の活動などを紹介する記事情報が掲載されている(甲32~甲35)。

(2)上記認定事実によれば、請求人が認定する防災分野における民間資格である「防災士」は、2003年以降、本件商標の登録出願時まで約19年の活動実績があり、その研修の実施地域も我が国の広い地域を網羅しており、認証者数も22万人を超えて約26万人に達しているから、一定規模の活動実績があるもので、その活動内容も冊子や新聞記事等を通じて一定程度報道又は紹介されているから、引用商標及び引用使用商標「防災士」は、その専門分野や事業分野の特殊性や限定的な事業規模を鑑みれば、我が国の一般需要者の間において広く親しまれた著名な民間資格の一つとまではいえないが、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、少なくとも消防や警察などを中心とする防災関係者の間においては、ある程度の周知性を獲得していたものと認められる。

3 商標法第4条第1項第11号該当性

(1)本件商標と引用商標の類否

ア 本件商標について

本件商標は、「キッズ防災士」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ大きさ及び書体で、間隔なく、横一列にまとまりのよい構成よりなるから、一連一体の語を表してなると看取でき、それより生じる「キッズボウサイシ」の称呼も冗長ではない。

そして、本件商標の構成中、「キッズ」の文字部分は「子供達」の意味を有する外来語であり、「防災」の文字部分は「災害を防止すること」、「士」の文字部分は「一定の資格・役割をもった者」の意味を有する語(参照:「広辞苑 第7版」岩波書店)であるところ、構成文字全体としては、造語よりなる固有の民間資格を連想させるとしても、具体的な意味合いまでは認識できない。

そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「キッズボウサイシ」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。

イ 引用商標について

引用商標は、「防災士」の文字を横書きしてなるところ、その構成中「防災」の文字部分は「災害を防止すること」、「士」の文字部分は「一定の資格・役割をもった者」の意味を有する語(前掲書参照)であるところ、構成文字全体としては、各語の語義を結合した「防災を扱う資格をもった者」程度の意味合いを連想させる造語であり、具体的な観念は一般的には生じないが、防災関係者にとっては、「日本防災士機構の認定する民間資格」(甲31)を想起させ得る。

そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「ボウサイシ」の称呼を生じ、一般的には特定の観念は生じないが、防災関係者にとっては、「日本防災士機構の認定する民間資格」程度の観念が生じ得る。

ウ 本件商標と引用商標の比較

本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、語尾に「防災士」の構成文字を含む点を共通にするが、語頭の「キッズ」の文字の有無により、構成文字全体としては異なる語(資格名)を表してなるから、判別は容易である。また、称呼においては、語尾の5音を共通にするが、語頭の「キッズ」の構成音の有無において差違があるから、全体を一連に称呼するときは、語調、語感は異なるものとなり、聴別は容易である。さらに、観念においては、引用商標から「日本防災士機構の認定する民間資格」の観念が生じる場合であっても、本件商標からは特定の観念は生じない、又は造語よりなる固有の民間資格を連想させるから、相紛れるおそれはない。

したがって、両商標は、外観及び称呼において判別又は聴別は容易であり、観念において相紛れるおそれはないから、それらが与える印象、記憶、連想等を総合し全体的に考察すれば、役務の出所について誤認混同を生じるおそれはなく、類似する商標とはいえない。

(2)請求人の主張

請求人は、本件商標は、構成文字に観念上のつながりはなく、これを一連一体不可分の結合商標という理由はないため、その構成中の「防災士」の部分に相応した「ボウサイシ」の称呼が生じ、「災害に関する資格(民間資格)である防災士」の観念を生ずる旨を主張する。

しかしながら、本件商標「キッズ防災士」は、上記(1)アのとおり、まとまりのよい構成よりなるから、全体で一連一体の造語を表してなると看取できるため、それぞれの文字部分を分離して観察することは取引上不自然である。

また、その構成中「防災士」の文字部分は、「防災を扱う資格をもった者」程度の意味合いを連想させる造語ではあるが、防災関連資格の名称としては、その専門分野や業務の内容を記述する語を組み合わせたにすぎず、自他商品役務の出所識別標識としての機能は必ずしも高くはない。

そうすると、本件商標は、いずれかの文字部分を分離して観察することは取引上不自然であり、その構成中「防災士」の文字部分は、需要者、取引者に対して、自他役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部とはいえないから、当該文字部分だけを抽出して、引用商標との類否を判断することは適切ではない。

(3)小括

以上のとおり、本件商標は、引用商標とは同一又は類似する商標ではないから、その他の要件について言及するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第10号該当性

(1)本件商標と引用使用商標の類否

本件商標「キッズ防災士」は、上記3(1)アのとおり、その構成文字に相応して、「キッズボウサイシ」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。

また、引用使用商標「防災士」は、引用商標と同様に上記3(1)イのとおり、その構成文字に相応して、「ボウサイシ」の称呼を生じ、一般的には特定の観念は生じないが、防災関係者にとっては、「日本防災士機構の認定する民間資格」程度の観念が生じ得る。

そうすると、本件商標と引用使用商標は、上記3(1)ウと同様に、外観及び称呼において判別又は聴別は容易であり、観念において相紛れるおそれはないから、それらが与える印象、記憶、連想等を総合し全体的に考察すれば、類似性の程度は高くはなく、類似する商標とは認められない。

(2)小括

以上のとおり、本件商標は、引用使用商標とは同一又は類似する商標ではないから、その他の要件について言及するまでもなく、商標法第4条第1項第10号に該当しない。

5 商標法第4条第1項第15号該当性

(1)引用使用商標の周知著名性及び独創性

引用使用商標「防災士」は、上記2のとおり、少なくとも防災関係者の間においては、ある程度の周知性を獲得していたものといえても、我が国の一般需要者の間において広く親しまれた著名な民間資格とはいえない。

そして、引用使用商標である「防災士」は、上記3(2)のとおり、「防災を扱う資格をもった者」程度の意味合いを連想させる造語ではあるが、防災関連資格の名称としては、その専門分野や業務の内容を記述する語を組み合わせたにすぎないから、独創性の程度は低い。

(2)本件商標と引用使用商標の類似性

本件商標と引用使用商標は、上記4(1)のとおり、類似性の程度は高くない。

(3)検討

以上のとおり、引用使用商標「防災士」は、防災関係者の間においては、ある程度の周知性を獲得していたとしても、我が国の一般需要者の間において広く親しまれた著名な民間資格ではなく、また、防災関連資格の名称としては独創性の程度は低いから、それと類似性の程度が低い本件商標を、その指定役務について使用したとしても、これに接する需要者は、引用使用商標とは異なる固有の民間資格を連想するとしても、引用使用商標又は請求人を連想、想起し、当該役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれはない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

6 商標法第4条第1項第6号該当性

(1)引用使用商標の著名性

引用使用商標「防災士」は、上記2のとおり、防災関係者の間においては、ある程度の周知性を獲得していたとしても、我が国の一般需要者の間において広く親しまれた著名な民間資格ではない。

したがって、引用使用商標が、仮に公益に関する事業であって営利を目的としないものであるとしても、著名なものとはいえない。

(2)本件商標と引用使用商標の類否

本件商標と引用使用商標は、上記4(1)のとおり、類似する商標ではない。

(3)検討

以上のとおり、引用使用商標は、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものではなく、本件商標とは同一又は類似の商標ではないから、本件商標は、商標法第4条第1項第6号に該当しない。

7 商標法第4条第1項第7号該当性

(1)請求人は、「防災士」という資格が存在している一方で、本件商標のような併存登録を認め、両者の使用を異なる者に許容することは、需要者、取引者に、請求人の事業に係る「防災士」と何らかの関連を有するものであるかのごとき誤認を生じることになり、また、防災・減災に携わる者としての信用を蓄積してきた「防災士」の信用を毀損することになり、公正な競業秩序も保たれないから、災害時における国民の安全の確保といった社会公共の利益にも反し、社会の一般的道徳観念に反する旨を主張する。

しかしながら、上記5(3)のとおり、本件商標は、その指定役務について使用したとしても、これに接する需要者は、引用使用商標「防災士」とは異なる固有の民間資格を連想するとしても、引用使用商標又は請求人を連想、想起し、役務の出所について混同を生ずるおそれはないから、請求人の主張はその前提を欠くものである。

(2)その他、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく、また、その登録出願の目的及び経緯に何らかの不正があったことを示す証拠は提出されていない。

(3)以上によれば、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標ではないから、商標法4条第1項第7号に該当しない。

8 商標法第4条第1項第19号該当性

(1)引用使用商標の周知性について

引用使用商標は、上記2のとおり、本件商標の登録出願時において、防災関係者の間においては、ある程度の周知性を獲得していたとしても、我が国の一般需要者の間において広く親しまれた著名な民間資格ではないから、日本国内の需要者の間に広く認識されている商標とはいえない。

(2)本件商標と引用使用商標の類否について

本件商標と引用使用商標は、上記4(1)のとおり、類似する商標とはいえない。

(3)不正の目的について

請求人は、請求人が長きにわたり使用し広く知られるに至った造語である「防災士」に他の語を付加したにすぎない本件商標を使用することは、その採択の時点でそれと混同を生じさせることを企図した不正の目的があるといえ、また、出所表示機能を希釈化させたり、その名声等を毀損させる目的をもって登録出願したものといえるから、本件商標は不正の目的をもって使用するものである旨を主張する。

しかしながら、上記5(3)のとおり、本件商標は、その指定役務について使用したとしても、これに接する需要者は、引用使用商標「防災士」とは異なる固有の民間資格を連想するとしても、引用使用商標又は請求人を連想、想起し、役務の出所について混同を生ずるおそれはないから、請求人の主張はその前提を欠くものである。

なお、仮に引用使用商標を知りながら本件商標を登録出願したとしても、それだけで不正の利益を得る目的や、他人に損害を加える目的などの不正の目的があったと推し測ることはできない。

その他、本件商標の登録出願の目的及び経緯に何らかの不正の目的があったことを具体的に示す証拠は提出されていない。

したがって、請求人提出の証拠によっては、本件商標について、不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。

(4)小括

以上のとおり、引用使用商標は、日本国内の需要者の間に広く認識されている商標ではなく、本件商標とは同一又は類似する商標ではなく、また、本件商標は不正の目的をもって使用をするものではないから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

9 まとめ

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第6号、同項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号又は同項第19号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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