sokuhyo

Trademark Appeal Case

立体形状の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024009630
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

理 由

1 手続の経緯

本願は、令和5年5月30日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和5年5月30日 :早期審査に関する事情説明書及び同補充書の提出

令和5年12月26日付け:拒絶理由通知書

令和6年2月9日 :意見書、手続補正書の提出

令和6年3月4日付け :拒絶査定

令和6年6月10日 :審判請求書の提出

令和7年5月8日付け :証拠調べ通知書

令和7年6月3日 :意見書の提出

2 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの立体的形状よりなるところ、第28類「ぱちんこ器具,スロットマシン,遊戯用器具」を指定商品として、立体商標として登録出願され、その願書には「商標の詳細な説明」が記載されており、その後、上記1の手続補正により、その商標の詳細な説明は、別掲2のとおりに補正された。

3 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、商標記載欄の記載、立体商標である旨の記載及び商標の詳細な説明の記載から把握されるところ、本願商標の立体的形状は、ランプ、回転灯、装飾灯などの形状と、基本的特徴(反射板、光源、カバーなど)を共通にするものである。そして、本願の指定商品を取り扱う業界において、ランプ、回転灯、装飾灯などが付された商品が取り扱われており、商品に各種の特徴的な変更又は装飾等が施されている実情があり、ランプ、回転灯、装飾灯などは、天井などから、カバーを下方に向けて配置されることも一般的であることからすると、本願商標の立体的形状は、それら商品の通常採用し得る形状の一形態を表したものと理解されるものである。そうすると、本願商標の立体的形状は、指定商品について機能に資することを目的として採用されたもの、又は、美感に資することを目的として採択されたものであり、その機能上又は美感上の理由による形状の選択で予測し得る範囲のものと判断するのが相当であるから、本願商標は、その指定商品との関係において、商品の一部の形状であることを認識させるにすぎないものであって、商品の一部の形状を普通に用いられる方法で表示するものというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているとは認められないものである。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

4 当審における証拠調べ通知

当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲3ないし別掲5の事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、上記1のとおり、証拠調べ通知書によって通知し、相当の期間を指定してこれに対する意見を求めた。

5 証拠調べ通知に対する請求人の意見(要旨)

(1)本願商標に係る指定商品である「パチンコ器具,スロットマシン,遊戯用器具」(以下「遊技機」という。)の業界では、カバー及び反射板を備えるランプについて、カバーを上方に向けた状態で配置することが通常となっているのに対して、本願商標は、カバー及び反射板を備えるランプについて、カバーを下方に向けた状態で配置した立体的形状から構成されており、通常の配置に対して逆さまに配置した立体的形状から構成されていることによって、本願商標の立体的形状は、遊技機の業界において、ランプについて通常採用し得る形状の一形態に該当するものではない。さらに、遊技機の分野では、カバーを下方に向けた状態で配置した反射板を備えるランプについて、請求人により初めて使用されたものであり、パチスロ機の分野では、当該ランプについて、請求人を除いた他の者による使用例はなく、パチンコ機の分野における当該ランプの使用例は、請求人により使用されている当該ランプをインスパイヤしたものとなっている。指定商品の補正により識別力が認められるのであれば、これを限定する補正の用意もある。

(2)遊技機の分野、少なくとも、パチスロ機の分野では、当該ランプを見た需要者等は、当該ランプについて、「パトロット」又は「パトランプ」と称呼して、当該ランプについて、請求人の識別標識として認識されるに至っているため、遊技機(特に、パチスロ機)の需要者においては、本願商標の立体的形状に基づいて、当該遊技機の出所を識別することが可能となるに至っている。したがって、本願商標は、商標法第3条第2項に該当するに至っており、指定商品の補正により使用による識別力が認められるのであれば、これを限定する補正の用意もある。

6 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号について

立体商標における商品の形状について商標法は、商標登録を受けようとする商標が、立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても、所定の要件を満たす限り、登録を受けることができる旨規定する(商標法第2条第1項、同法第5条第2項参照)。

しかしながら、以下の理由により、立体商標における商品等の形状は、通常、自他商品の識別機能を果たし得ず、商標法第3条第1項第3号に該当するものと解される。

ア 商品等の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美観をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品等の製造者、供給者の観点からすれば、商品等の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美観を際だたせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。そうすると、商品の形状は、多くの場合に、商品等の機能又は美観に資することを目的として採用されるものであり、そのような目的のために採用されると認められる形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、同号に該当すると解するのが相当である。

イ また、商品等の具体的形状は、商品等の機能又は美観に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品等について、機能又は美観上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状として、同号に該当するものというべきである。けだし、商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状は、同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から適切でないからである。

ウ さらに、需要者において予測し得ないような斬新な形状の商品等であったとしても、当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。けだし、商品等が同種の商品等に見られない独特の形状を有する場合に、商品等の機能の観点からは発明ないし考案として、商品等の美観の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有する点を踏まえると、商品等の形状について、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反するからである。

(以上、知的財産高等裁判所、平成19年6月27日判決同18年(行ケ)第10555号、平成20年5月29日判決同19年(行ケ)第10215号及び平成23年6月29日判決同22年(行ケ)第10253号参照。)

(2)本願商標の商標法第3条第1項第3号の該当性について

本願商標は、別掲1のとおり、立体商標であり、商標の詳細な説明(別掲2)によれば、透明又は半透明のカバーと、カバーの内部に配置された反射板(反射板の背面上部中央には、当該反射板の基部を構成する長方形の突出部が形成されている)と、を含むランプの構成を表した立体的形状からなるものである。

そして、別掲3のとおり、遊技機(本願の指定商品)の業界において、ランプ(回転灯、装飾灯などを含む。以下同じ。)が商品の様々な位置に設置され、商品の構成部分の一部として使用されている実情があり、別掲4のとおり、本願商標の立体的形状と類似の立体的形状のランプが取引されている実情があり、別掲5のとおり、ランプが下向きで使用されている実情も見受けられる。

上記実情を踏まえて本願商標の立体的形状を考察すると、当該立体的形状は、その指定商品の構成部分の一部に採用し得る形状の一形態を表したものと容易に認識されるものであり、これに接する取引者、需要者が、その商品の機能又は美観上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであるというべきであって、商品の機能又は美観に資することを目的とするために採用されたものといえる。

そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その商品の構成部分の一部に採用し得る形状の一形態を表したものとして理解するにとどまり、自他商品を識別するための標識としては認識し得ないものと判断するのが相当であるから、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(3)商標法第3条第2項について

商標法第3条第2項を適用して商標登録を認めたときは、存続期間の更新が繰り返されることにより、事実上、半永久的に当該形状を商標として使用し、当該形状に係る商品を独占販売することを認める結果となるのであるから、同項を適用する場合には、当該形状について、このような結果を許容するに足りる十分な自他商品識別力が、その商標としての使用により獲得されたことが認められる必要がある。

そして、立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは、当該商標の形状の斬新性、当該形状に類似した他の商品の存否、当該商標の使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品の販売数量、広告宣伝のされた期間・地域及び規模等の諸事情を総合考慮し、立体的形状が需要者の目につき易く、強い印象を与えるものであったかなどを総合勘案した上で、立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断するのが相当である。

(以上、知的財産高等裁判所、令和6年1月30日判決同5年(行ケ)第10076号、令和6年3月28日判決同5年(行ケ)第10119号及び令和6年12月25日判決同年(行ケ)第10058号参照。)

(4)本願商標の商標法第3条第2項の該当性について

請求人は、上記1の意見書及び審判請求書において、本願商標は、商標法第3条第2項に該当するに至っている旨主張しているところ、その前提として、本願商標が同法第3条第1項第3号に該当するものであることは、上記(2)のとおりである。

そこで、請求人の主張及び同人が早期審査に関する事情説明補充書で提出した資料1ないし資料13、審判請求書で提出した甲第1号証ないし甲第6号証(以下、甲各号証の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して表示する。)を参照し、以下、本願商標の使用による自他商品の識別性(本願商標の商標法第3条第2項該当性)について検討する。

ア 本願商標の使用態様

請求人の提出したランプに関する記載によれば、遊技機の構成部分の一部に赤色ランプが使用されている事実は確認できるが(資料1~資料13、甲3、甲6)、当該ランプの内部の形状が本願商標と同一のものであるかについては確認することができない。

イ 使用期間及び使用地域

請求人の提出した証拠によれば、使用期間について、2005年ないし2012年、2016年、2017年及び2022年に赤色ランプを構成部分の一部に使用した各種の遊技機を販売していることがうかがえるが(資料1~資料13)、使用地域については、提出された証拠からは確認できない。

ウ 販売数量、広告宣伝の方法・期間・地域及び規模等

提出された証拠からは、本願商標の立体的形状を構成部分の一部に使用した遊技機に関する販売数量、広告宣伝の方法・期間・地域及び規模等について確認することができない。

エ 請求人以外の者による本願商標と同一又は類似する標章の使用の有無

別掲3のとおり、遊技機の業界においてランプが構成部分の一部に使用されている商品があり、別掲4のとおり、本願商標の立体的形状と類似の立体的形状のランプが取り扱われており、別掲5のとおり、下向きで使用するランプも存在する。

オ 需要者の認識

請求人の提出した証拠によれば、請求人の業務に係るパチスロの構成部分の一部に使用された赤色ランプは、「パトランプ」又は「パトロット」等と称され、各種ウェブサイトにおいて紹介されているが(甲1~甲6)、使用時の色彩が不明な本願商標の立体的形状のみから当該赤色ランプを需要者に認識させるとはいい難く、本願商標の立体的形状に関する一般需要者の認識度を示したアンケート調査等に関する証拠も提出されていない。

カ 判断

上記アないしオによれば、遊技機の構成部分の一部に赤色ランプが使用されている事実は確認できるが、当該赤色ランプの内部が本願商標と同一のものであるかについては確認することができない。

また、構成部分の一部に赤色ランプを使用した遊技機の販売期間について、2013年ないし2015年、2018年ないし2021年、2023年以降の販売実績が確認できないから、本願商標は、その指定商品について、請求人により、永年の間、一貫して使用されてきたものとはいえないものである。

そして、本願商標の立体的形状を構成部分の一部に使用した遊技機の販売数量、広告宣伝の方法・期間・地域及び規模等について客観的に評価できる証拠が確認できないことに加え、本願商標の立体的形状と類似する立体的形状が、請求人以外の者が取り扱う遊技機の構成部分の一部の立体的形状又は商品の立体的形状として、普通に使用されている実情にある。

さらに、構成部分の一部に赤色ランプを使用した遊技機には、「OLYMPIA」又は「島唄」、「南国娘」等の遊技機名の文字が表示されている(資料1~資料6、甲3、甲6)ことよりすれば、需要者は、本願商標の立体的形状のみに着目したというより、「OLYMPIA」又は「島唄」、「南国娘」等の遊技機名の文字を含めて、同業他社の商品とを区別しているといえるものであり、本願商標の立体的形状が需要者の目につき易く、強い印象を与えるものであったというに足る事情は見いだせないから、本願商標の立体的形状とともに表示されている文字商標等の影響を排除し、遊技機の構成部分の一部である本願商標の立体的形状のみに着目するとはいえない。

また、本願商標の立体的形状の識別性の有無や認識の程度を判断するための資料、例えば、一般需要者の認識度を示したアンケート調査等の証拠の提出もない。

そうすると、請求人の主張及び同人が提出した証拠を参照しても、請求人が本願商標を指定商品に使用した結果、本願商標の立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているということはできず、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。

(5)請求人の主張について

ア 請求人は、遊技機の業界では、カバー及び反射板を備えるランプについて、カバーを上方に向けた状態で配置することが通常となっているのに対して、本願商標は、カバー及び反射板を備えるランプについて、カバーを下方に向けた状態で配置した立体的形状から構成されており、通常の配置に対して逆さまに配置した立体的形状から構成されていることによって、本願商標の立体的形状は、遊技機の業界において、ランプについて通常採用し得る形状の一形態に該当するものではない旨、さらに、パチスロ機の分野では、当該ランプについて、請求人により初めて使用されたものであり、請求人を除いた他の者による使用例はなく、パチンコ機の分野における当該ランプの使用例は、請求人により使用されている当該ランプをインスパイヤしたものとなっている旨主張する。

しかしながら、別掲3のとおり、遊技機の業界において、ランプが商品の様々な位置に設置され、商品の構成部分の一部として使用されている実情があり、別掲4のとおり、本願商標の立体的形状と類似の立体的形状のランプが取引されている実情があり、別掲5のとおり、ランプが下向きで使用されている実情も見受けられる。そうすると、本願商標の立体的形状は、その指定商品の構成部分の一部に採用し得る形状の一形態を表したものと容易に認識されるというべきであり、たとえ請求人が初めて使用したタイプのランプであったとしても、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、自他商品を識別するための標識としては認識し得ないものといわざるを得ない。その他、パチンコ機の分野における当該ランプの使用例が、請求人により使用されている当該ランプをインスパイヤしたものであることを立証する証拠の提出はない上、そのようにインスパイヤされたものであるか否かによって直ちに、上記判断を左右するものでもない。

イ 請求人は、遊技機の分野、少なくとも、パチスロ機の分野では、当該ランプを見た需要者等は、当該ランプについて、「パトロット」又は「パトランプ」と称呼して、当該ランプについて、請求人の識別標識として認識されるに至っているため、遊技機(特に、パチスロ機)の需要者においては、本願商標の立体的形状に基づいて、当該遊技機の出所を識別することが可能となるに至っており、本願商標は、商標法第3条第2項に該当するに至っている旨主張する。

しかしながら、上記(4)のとおり、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものと認めることはできない。

ウ なお、請求人は、指定商品を「パチスロ機」に限定する補正を行うことにより、識別力が認められるまたは使用による識別力の獲得が認められるのであれば、補正の用意がある旨主張するが、当該補正を行ったとしても、本願商標は、自他商品を識別するための標識としては認識し得ず、使用による識別力の獲得も認められるとはいえないものであるから、当合議体は指定商品の補正の機会を設ける必要はないと判断した。

エ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。

(6)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。