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Trademark Appeal Case

商標使用の同一性判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024300882
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第3239553号商標(以下「本件商標」という。)は、「センジュ」、「SENJU」及び「千寿」の文字を三段に書してなり、平成5年1月22日に登録出願、第35類「広告,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,職業のあっせん,輸出入に関する事務の代理又は代行」を指定役務として、同8年12月25日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

そして、本件審判の請求の登録日は、令和6年12月13日である。

なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和3年(2021年)12月13日から同6年(2024年)12月12日までを、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張

請求人は、本件商標の指定役務中、第35類「経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供」(以下「請求に係る役務」という場合がある。)についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び審判事件弁駁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲14号証(以下、証拠の記載にあたっては、甲第○号証を甲○、乙第○号証を乙○のように記載する。)を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、その指定役務中、請求に係る役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁

(1)請求に係る商標と使用標章の同一性について

本件商標は、「センジュ」「SENJU」「千寿」を三段に書した構成からなる。被請求人は、乙2ないし乙79の証拠を挙げて本件商標の使用であると主張している。しかしながら、以下のとおり、いずれの証拠も本件商標と同一の標章とはいえない。

ア 「SENjU」の表示(乙6~乙28、乙32~乙34、乙39~乙49、乙53、乙54、乙57、乙62~乙70、乙75~乙77、乙79)、「SENJU」の表示(乙29、乙30)、「Senju」の表示(乙31)、「SENJU」「SENSE」を二段に書した表示(乙53、乙55~乙62、乙70~乙72、乙74、乙77、乙78)について、「SENjU」「SENJU」「Senju」の文字(語)は、「千手、専修、先儒、千寿」等を表す日本語のローマ字表記である。「千手」は“千本の手、千手観音の略”、「専修」は“他の行を修めることなく、ひたすら特定の行を修すること”、「先儒」は“昔の儒者”、「千寿」は“千年の長寿を願う言葉”を意味する。したがって、「SENjU」「SENJU」「Senju」からは同一の観念を生じないから、「SENjU」「SENJU」「Senju」の文字を使用しただけでは、三段書きからなる本件商標と社会通念上同一の範囲にある商標を使用したものということはできない(甲2)。

なお、「SENJU」「SENSE」を二段に書した表示については、上下段まとまりよく一体的に構成されているため、当該表示の使用をもって、本件商標中「SENJU」部分の使用とはいえない。

イ 「千寿製薬からのご案内」の表示(乙6~乙11、乙13、乙15、乙17~乙28)、「千寿製薬株式会社」の表示(乙6~乙34、乙44、乙46~乙49、乙54、乙58、乙59、乙62、乙64、乙68~乙71、乙74~乙77、乙79)、「千寿製薬」の表示(乙31、乙39~乙45)、「千寿経営」及び「Webセミナー」の二段書きからなる表示(乙47、乙48)、「千寿マネジメントWEBセミナー」の表示(乙49)、「千寿製薬MMS」の表示(乙53~乙56、乙58~乙75)、「千寿製薬Webセミナー」の表示(乙53~乙61、乙63~乙65、乙67)、「千寿製薬WebセミナーLIVE配信予告」の表示(乙53、乙57、乙70、乙76、乙79)について、「千寿」の文字(語)は、“千年の長寿を願う言葉”の意味合いを有する漢字である。一方、本件商標の上段文字、中段文字の「センジュ」「SENJU」は、「千手、専修、先儒、千寿」等を表す片仮名文字、ローマ字であり、本件商標の下段文字「千寿」とは、同一の観念を生じないから、「千寿」の文字を使用しただけでは、本件商標と社会通念上同一の範囲にある商標を使用したものということはできない(甲2)。

なお、被請求人は、「各証拠において、「千寿製薬」等と表示されているところ、「製薬」等は、業種等を示す語であって、役務との関係において自他役務識別標識としての機能を有さず、自他役務の識別標識としての機能を有する部分は「千寿」の文字であるというべきであり、本件商標と社会通念上同一のものといえる。」及び「各証拠において、「千寿」単独のものの他に、「千寿経営」「千寿経営/Webセミナー」「千寿マネジメントWEBセミナー」など、「千寿」が他の語と一緒に使用されているものがあるが、「経営」「経営/Webセミナー」「マネジメントWEBセミナー」の部分は、役務の内容や役務形式を表す語と認識されるものであって、役務との関係において自他役務識別標識としての機能を有しないことから、自他役務の識別標識としての機能を有する部分は、「千寿」の文字にあるというべきであり、これらについても本件商標と社会通念上同一のものといえる。」と主張している。

しかしながら、当該指定役務において、商標「○○○」(以下、○○○は同一の文字を表す。)単独のものの他に、商標「○○○製薬」「○○○経営」「○○○マネジメント」が重複登録されている(甲3~甲14)。すなわち、前者と後者は出願人権利者が異なり、指定役務が抵触し、先後願関係にあるにもかかわらず適法に登録になっている事実からすると、両者は類似しないという特許庁の判断である。そうすると、商標中「製薬」「経営」「マネジメント」部分を省略すべきではなく、商標全体で商標の同一性を判断すべきであるから、「千寿経営」「千寿経営/Webセミナー」「千寿マネジメントWEBセミナー」は、「千寿」と社会通念上同一とはいえない。

(2)乙各号証について

ア 乙6ないし乙28

被請求人は、「商品の販売に関する情報の提供」の役務使用の事実として、乙6ないし乙28を提出している。しかしながら、第35類「商品の販売に関する情報の提供」は、他人の依頼に基づいて、経営の診断や経営に関する助言を行う「経営コンサルタント」等が行うサービスが該当する。証拠に記載されている商品は、商標権者の自社製品であるため、該役務が独立して商取引の対象となるものではなく、自社製品の指定商品の付随的な使用にすぎないため、第35類「商品の販売に関する情報の提供」には該当しない。

イ 乙29ないし乙32

被請求人は、「商品の販売に関する情報の提供」の役務使用の事実として、乙29ないし乙32を提出している。しかしながら、乙29ないし乙32の証拠は、いずれもセミナーの案内(広告チラシ)である。したがって、当該役務は第41類「セミナーの企画・運営又は開催」(類似群コード:41A03)に相当するものであって、第35類「商品の販売に関する情報の提供」には該当しない。

また、被請求人は、セミナーの中で、自社製品を紹介していると主張しているが、上記アのとおり、該役務が独立して商取引の対象となるものではなく、自社製品の指定商品の付随的な使用にすぎないため、第35類「商品の販売に関する情報の提供」には該当しない。

ウ 乙33ないし乙45

被請求人は、「経営の診断及び指導」「商品の販売に関する情報の提供」の役務使用の事実として、乙33ないし乙45を提出している。しかしながら、商標権者は、乙1のとおり、「経営コンサルタント」を事業とはしておらず、「眼科・耳鼻科用医薬品及びコンタクトレンズ用剤及び動物用医薬品の製造・販売、医療機器の販売・貸与、化粧品原料の製造・販売」を主たる事業とする株式会社であることから、商標権者のウェブサイト上で公開されている眼科専門会員制医療情報サイト「eye-square」は、該役務「経営の診断及び指導」「商品の販売に関する情報の提供」を独立して商取引の対象としているものではなく、自社製品の指定商品の付随的な使用にすぎないため、第35類「経営の診断及び指導」「商品の販売に関する情報の提供」には該当しない。

エ 乙46ないし乙79

被請求人は、「商品の販売に関する情報の提供」「市場調査」の役務使用の事実として、乙46ないし乙79を提出している。しかしながら、乙46ないし乙79の証拠は、いずれもセミナーの案内(広告チラシ)である。したがって、当該役務は第41類「セミナーの企画・運営又は開催」(類似群コード:41A03)に相当するものであって、第35類「商品の販売に関する情報の提供」「市場調査」には該当しない。

また、被請求人は、乙47については、その内容が「クリニックの診断圏分析」であり「市場調査」の役務の提供に関する広告に当たると主張している。しかしながら、同証拠はセミナーの案内(広告チラシ)であり、当該役務は第41類「セミナーの企画・運営又は開催」(類似群コード:41A03)に相当するものであって、第35類「市場調査」には該当しない。

(3)まとめ

以上のとおりであるから、乙各号証のいずれをもってしても、商標法第50条第2項で定める登録商標の使用を証明するに十分なものではなく、同項で定める登録商標の使用を証明したということはできないから、本件商標の商標登録は取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張

被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判事件答弁書、令和7年7月30日付け審尋に対する同年9月3日付け回答書(以下「回答書(1)」という。)及び同年9月30日付け審尋に対する同年11月4日付け回答書(以下「回答書(2)」という。)において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙116を提出した。

1 答弁書における主張

(1)本件商標が商標法第50条第1項に該当しない理由

ア 本件商標の使用の事実

商標権者である千寿製薬株式会社は、「眼科・耳鼻科用医薬品及びコンタクトレンズ用剤及び動物用医薬品の製造・販売、医療機器の販売・貸与、化粧品原料の製造・販売」を主たる事業とする株式会社(乙1)である。

そして、医薬品や医療機器という製品の専門性・特殊性ゆえ、商標権者は、医療機関や医師に対し、医療に関する事業の管理、運営などを援助するべく、商品の販売に関する情報の提供、市場調査、経営の診断・指導サービスを行っており、要証期間内に、本件商標と社会通念上同一の商標を、請求に係る役務に使用していた。

イ 証拠の説明

(ア)乙2ないし乙5

乙2及び乙3は、商標権者のウェブサイトトップページであり、乙4及び乙5は、医療関係者向けページである。これらは、非営利団体インターネットアーカイブのウェイバックマシンに保存されているウェブページであり、当該ページが要証期間に公開されていた事実と当該ページの構成を示すものである。

「医療関係者のみなさま」というメニューがあり、この中に「医療関係者向製品情報(医療用医薬品)」「医療関係者向製品情報(医療機器)」のサブメニューがあって、各メニューにおいて商品の販売に関する情報を提供している。

(イ)乙6ないし乙28

乙6及び乙28は、乙4ないし乙5の「医療関係者向製品情報(医療用医薬品)」で提供している商品の販売に関する情報である。医薬品は専門性が高く人命にかかわる上、日々進歩する商品であることから、医療機関や医師にとって、医薬品の販売開始、販売中止、包装変更、表示変更、製造元・販売元の変更、医薬品コードの変更、追加承認取得の事実、パッケージ変更といった情報は、医療に関する事業を管理・運営する上で極めて重要な情報であり、これらの情報の提供は、医療機関や医師の事業を援助する役務に該当する。よって、乙6及び乙28は、要証期間に「商品の販売に関する情報の提供」が提供された事実を証するものである。

これら商品の販売に関する情報は、商標権者が紙媒体で眼科医や薬剤師、特約店等に配布し、商標権者のウェブサイト上、及び後述する眼科専門会員制医療情報サイト「eye-square」においても公開される。

そして、乙6及び乙28には、「SENjU」の表示があり、「千寿」の表示も同紙面内に表示されている。

(ウ)乙29ないし乙32

商標権者は、専門性の高い商品について詳細な情報を提供するために、セミナーという提供形式で「商品の販売に関する情報の提供」を行っており、乙29ないし乙32は、この事実を示すチラシである。いずれも要証期間に提供された役務であり、チラシ内に、「SENJU」若しくは「Senju」、「SENjU」が表示され、「千寿」の表示も同紙面内に表示されている。

(エ)乙33ないし乙38

乙33及び乙34は、商標権者のウェブサイト上で提供されている眼科専門会員制医療情報サイト「eye-square」のトップ画面である。

同サイトは、眼科医を対象としたクローズドサイトであり、眼科診療に関する多彩な学術情報、講演会映像のオンデマンド配信、眼科経営情報、学会情報などのコンテンツを提供している。

乙33及び乙34は、同サイトが、非営利団体インターネットアーカイブのウェイバックマシンに保存されているウェブページであり、当該ページが要証期間に存在していた事実とサイトの構成を示すものである。トップページには、「SENjU」の表示があり、「千寿」の表示も同ページ内に表示されている。

なお、「eye-square」は会員のみがアクセスできるクローズドサイトであるため、ウェイバックマシンにはその内容が保存されていないが、参考に、現在のトップページを乙35として、「眼科経営情報」で掲載の項目を示す資料として乙36を提出する。

クリニック経営Q&Aには、クリニック経営に関する質問と回答を定期的に更新して掲載しており、乙37には掲載日が記載されていることから、要証期間内に商標権者が「経営の診断及び指導」の役務を提供していたといえる。また、「製品情報」(乙38)において、会員は、上記(イ)に記載の製品情報を得ることができ、同サイト経由でも「商品の販売に関する情報の提供」を行っている。

そして、このように商標権者が「経営の診断及び指導」及び「商品の販売に関する情報の提供」を行うウェブサイトのトップページには、「SENjU」の表示があり、「千寿」の表示も同ページに表示されていることから、これらの役務に「SENjU」及び「千寿」を使用していたということができる。

(オ)乙39ないし乙45

乙39ないし乙45は、商標権者が発行する季刊誌である。同誌は、眼科医、病院、病院薬剤部、国立国会図書館、日本医薬情報センター、研医会図書館などに、郵送、手渡し、PDFファイルでのメール送信、WEB上(眼科専門会員制医療情報サイト「eye-square」)での公開という方法で頒布された。各号の発行部数は約16,000部である。

要証期間中に発行された季刊誌において、「経営の診断及び指導」及び「商品の販売に関する情報の提供」を行う眼科専門会員制医療情報サイト「eye-square」の広告が掲載されており、この広告上には、「SENjU」の表示があり、「千寿」の表示も同ページにある。

乙39ないし乙44では、「新規開業から移転・継承・経営相談まで」、「眼科医院の経営をサポートします」といううたい文句で、「経営の診断及び指導」サービスの提供の広告に「SENjU」が使用されている。

(カ)乙46ないし乙52

乙46ないし乙49は、セミナーという提供形式で提供される「経営の診断及び指導」のチラシであり、乙47についてはその内容が「クリニックの診断圏分析」であり「市場調査」の役務の提供に関する広告にも当たる。いずれのチラシにも「SENjU」及び「千寿」が表示されている。乙46ないし乙48が実際に配布されたことを示すために、チラシを送付した送信メールの写しを提出する(乙50~乙52)。

乙53ないし乙75は、同じくセミナー形式で提供される「経営の診断及び指導」のチラシをメルマガで配布したメルマガのバックナンバーであり、「SENjU」及び「千寿」が表示されている。これらのメルマガが実際にメール配信された事実を示す証拠として、乙70ないし乙73の受信メールを乙76ないし乙79として提出する。

ウ 本件商標が、日本国内で要証期間内に使用されたことの説明

本件商標は、片仮名「センジュ」、欧文字「SENJU」及び漢字「千寿」を三段に配した商標である。

片仮名「センジュ」と欧文字「SENJU」、漢字「千寿」は、いずれも「センジュ」の称呼を生じ、商標権者である千寿製薬株式会社を意味することから、欧文字「SENJU」、「SENjU」及び「Senju」並びに漢字「千寿」は、本件商標と同一の称呼及び観念を生ずる社会通念上同一の商標といえる。

また、各証拠において、「千寿製薬」「千寿製薬株式会社」と表示されているところ、「製薬」や「製薬株式会社」は、業種や会社形態を示す語であって、役務との関係において自他役務識別標識としての機能を有さず、自他役務の識別標識としての機能を有する部分は「千寿」の文字にあるというべきであり、本件商標と社会通念上同一のものといえる(乙80~乙82)。

加えて、各証拠において、「千寿」単独のもののほかに、「千寿経営」「千寿経営/Webセミナー」「千寿マネジメントWEBセミナー」など、「千寿」が他の語と一緒に使用されているものがあるが、「経営」「経営/Webセミナー」「マネジメントWEBセミナー」の部分は、役務の内容や提供形式を表す語と認識されるものであって、役務との関係において自他役務識別標識としての機能を有しないことから、自他役務の識別標識としての機能を有する部分は「千寿」の文字にあるというべきであり、これらについても本件商標と社会通念上同一のものといえる(乙80~乙82)。

そして、上記の証拠に見られるとおり、商標権者は、要証期間に含まれる2022年2月から2024年11月の間に、「商品の販売に関する情報の提供」「市場調査」及び「経営の診断及び指導」の役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供するものに本件商標を付する行為、提供を受ける者の利用に供するものに本件商標を付したものを用いて役務を提供する行為、及び役務の広告に本件商標を付して提供する行為を行っていたことが明らかである。

(2)まとめ

以上のとおり、本件商標は、要証期間内に、日本国内において、商標権者により、請求に係る役務について使用されているものであるから、商標法第50条第1項に該当するものではない。

2 回答書(1)における主張

(1)「経営の診断又は経営に関する助言」について

商標権者が、要証期間内に、本件商標を「経営の診断又は経営に関する助言」に使用していた事実を示す証拠として下記季刊誌及び情報誌を追加して提出する。

乙39ないし乙45、及び乙83は、商標権者が発行する季刊誌であり、要証期間中に頒布されたものである。同誌は、眼科医、病院、病院薬剤部、国立国会図書館、日本医薬情報センター、研医会図書館などに、郵送、手渡し、PDFファイルでのメール送信、WEB上(眼科専門会員制医療情報サイト「eye-square」)での公開という方法で頒布された。

乙84は、商標権者のMMS(MEDICAL MANAGEMENT SUPPORTER)部が発行する情報誌であり、要証期間中に頒布された。

乙39ないし乙45、乙83及び乙84には、ほぼ同じ広告が掲載されており、継続して宣伝広告が行われた。この広告上では、「新規開業から移転継承経営相談まで」、「眼科医院の経営をサポートします」という説明と併せて、「SENjU」が表示されるとともに、「MMS/MEDICAL MANAGEMENT SUPPORTER」の表示がある。この、「MMS/MEDICAL MANAGEMENT SUPPORTER」とは、商標権者会社に存在する眼科医院のコンサルティング部署のMMS部のことであり、同部は眼科医院の経営をサポートする事業を展開している(乙85、乙86)。乙85及び乙86は、非営利団体インターネットアーカイブのウェイバックマシンに保存されている商標権者ウェブサイトの事業紹介ページ及び採用情報ページである。これにより、要証期間に、当該ページが存在していたこと、商標権者がMMS部を有していたことは明らかである。

さらに、商標権者の求人情報を掲載した職業紹介会社のウェブサイト該当ページを提出する(乙87)。この求人情報において、商標権者は要証期間にMMS部という部署をもち、同部署の事業を担当する人材を募集していることが理解できる。

以上より、MMS部は商標権者自身のことであることが明らかになった。

MMS部は、新規開業に関する相談のほか、収入分析や労務管理、税務対策、患者満足度向上のための相談、助言を提供している(乙85、乙86)。

乙85ないし乙89に示すように、新規開業のサポートとしては、開業スケジュールから、診療圏調査と収支計画、建築設計レイアウトに加えて、スタッフの募集、採用から教育のアドバイスを行い、広告・PRのサポートと、開業に要する保健所や厚生局などへの届出申請に必要な書類や施設基準等について助言を行う。また、クリニック経営のサポートとして、経営管理資料の作成分析、顧客満足向上戦略の策定、労務管理の提案、専門家と連携しての税務対策提案等を行っている。

これらのサポート業務は、医師や医院からの依頼に基づいて、商標権者が提供するサービスである。この事実を示す資料として、商標権者と眼科医院との間で締結したメディカルマネジメントサポート契約書の写しを提出する(乙90)。同契約書第1条に記載のとおり、眼科医院は、自らの医院の経営に関する情報提供、及びその他これに付帯する業務を商標権者に委託し、商標権者はこれらの業務を行う。商標権者はクリニックの経営管理資料を作成分析し、医院に提供して業務を遂行するものであり、かかる商標権者の業務は「経営の診断又は経営に関する助言」に該当する。そして、同第2条に記載のとおり、商標権者に業務を委託する医院は、金銭等による対価を支払うこととされている。よって、商標権者が提供する「経営の診断又は経営に関する助言」は独立した役務として提供されているといえる。

乙87の求人情報では、商標権者が長期にわたり眼科クリニックの経営コンサルティングや新規開院のサポートを事業として行っていることが記されている。

乙88及び乙89は、要証期間外の資料ではあるが、例えば乙90の内容理解のための参考資料として提出するものである。

(2)季刊誌及び情報誌の頒布の事実について

ア 季刊誌「銀海」(乙39~乙45、乙83)

商標権者は、季刊誌「銀海」の制作の一部と印刷をA社に委託している。乙91ないし乙94に見られるように、商標権者は、乙43として提出した「GINKAI/銀海2024新春」(銀海No.266)の制作をA社に委託し、15,900部の印刷を同社に依頼し、15,900部の「GINKAI/銀海2024新春」(銀海No.266)が納品されている。印刷された15,900部のうち14,818部は、B社が、商標権者からの依頼により、国立大学法人、公立大学法人、その他の大学、市立病院、その他の病院宛て、並びに、大学や病院に所属の研究者及び医師宛て、医師の個人宅宛てに発送した(乙95及び乙96)。

このほか、乙97に示すように、国会図書館には、同誌の1号(1964年2月)から最新号の272号(2025年夏)まで所蔵されており、受け入れの日付は確認できないが、乙39ないし乙45及び乙83の同誌も全て所蔵されている。

イ 情報誌「Medi-Net 2024.9 Vol.69」(乙84)

商標権者発行の情報誌「Medi-Net 2024.9 Vol.69」について、商標権者はC社に、同誌の制作の一部と印刷を委託し、印刷についてはD社が請け負った。商標権者は、C社に「Medi-Net 2024.9 Vol.69」及びその発送用封筒の制作印刷を発注し、印刷はD社が行い、C社から商標権者に同誌3,000部と封筒2,500部が納品された(乙98~乙103)。そのうちの、同誌2,550部は、ダイレクトメールの企画、制作、発送代行業務等を事業内容とするE社(乙104)により、大阪府内に302部、大阪府外に2,248部発送され、頒布された(乙105)。実際に医師が要証期間内に同誌を受領した事実を示すべく、乙106を提出する。

(3)社会通念上同一の商標であることについて

本件商標は、片仮名「センジュ」、欧文字「SENJU」及び漢字「千寿」を三段に配した商標である。

答弁書で述べたとおり、片仮名「センジュ」と欧文字「SENJU」、漢字「千寿」は、いずれも「センジュ」の称呼を生じ、いずれも商標権者である千寿製薬株式会社を意味することから、欧文字「SENJU」「SENjU」及び「Senju」並びに漢字「千寿」は、本件商標と同一の称呼及び観念を生ずる社会通念上同一の商標といえる。

千寿製薬株式会社なる名称の商標権者が使用する商標であることに鑑みれば、「千寿」は商標権者会社を意味し、「SENJU」、「SENjU」及び「Senju」についても商標権者を意味すると解するのが自然である。

また、乙84は、商標権者のMMS部が発行する情報誌であり、表紙には「MMS千寿製薬」の表示があり、宣伝広告内には「MMS/MEDICAL MANAGEMENT SUPPORTER」の表示があり、同じ構成の「MMS/MEDICAL MANAGEMENT SUPPORTER」の表示とともに「〒541-0048大阪市中央区・・・ 千寿製薬株式会社MMS部」と表示されていて、背表紙には「発行 千寿製薬株式会社」の表示があることからも、宣伝広告内の「SENju」は、会社名の「千寿」と同じく商標権者会社を意味するといえる。

したがって、「センジュ」「SENJU」「SENjU」「Senju」及び「千寿」は、社会通念上同一の商標の範囲にある商標である。

(4)まとめ

以上のとおり、商標権者は、要証期間内に眼科医院の新規開業のサポート業務及び経営のサポート業務を行っており、商標権者が提供するサポート業務は、医師やクリニックからの依頼に基づいて提供される「経営の診断又は経営に関する助言」に該当する。そして、乙39ないし乙45、乙83及び乙84のとおり、商標権者は要証期間内に「経営の診断又は経営に関する助言」に該当する前記サポート業務に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商標を付して頒布した(商標法第2条第3項第8号)。

3 回答書(2)における主張

(1)社会通念上同一の商標であることについて

商標権者発行の季刊誌「GINKAI/銀海」及び情報誌「MediNel」に掲載されている商標権者のMMS部による広告の左上には「SENjU」が表示されている。

ここで、前記広告が掲載されている季刊誌がいかなる内容及び構成の雑誌であるかを示すべく、証拠を追加して提出する。

乙109ないし乙116の季刊誌は、いずれも約45頁~60頁の雑誌であるところ、発行者は商標権者である千寿製薬株式会社自身であって、その内容は、眼科医療の技術に関する記事や、眼科医療に従事する医師を含む医療従事者及び眼科医療に関わる研究者に焦点を当てた記事、眼科医療のための医療機器や医薬品の記事や広告であり、全てが眼科医療に関わるものである。そして、発行者として商標権者の名称「千寿製薬株式会社」が記載され、商標権者会社そのものの宣伝広告ページや、商標権者の商品やサービスの宣伝広告が多数掲載され、季刊誌全体として、これに接する取引者、需要者に対し、商標権者との関わりを強く認識させる構成となっている。

加えて、乙109ないし乙116の季刊誌は、眼科医、病院、病院薬剤部、国立国会図書館、日本医薬情報センター、研医会図書館などに、本願人から手渡し、郵送、PDFファイルでのメール送信、WEB上(眼科専門会員制医療情報サイト「eye-square」)での公開という方法で頒布された。なお、回答書(1)で述べたとおり、郵送は、B社が、商標権者からの依頼により、代行して、国立大学法人、公立大学法人、その他の大学、市立病院、その他の病院宛て、並びに、大学や病院に所属の研究者及び医師宛て、医師の個人宅宛てに発送した(乙95、乙96)。

以上のように、乙109ないし乙116の季刊誌の内容及び構成、並びに頒布方法に鑑みれば、商標権者のMMS部の広告に表示された「SENjU」が、「千手観音 千寿陀羅尼の略」や「特定のひとつの行法だけを修すること」等の意味合いを理解させるものであると、取引者、需要者に認識させる余地はなく、使用商標である「SENjU」は商標権者を意味すると自然に解することができる。

既に述べたとおり、社会通念上同一の商標であるかどうかは、個々具体的な事実に基づき、実際の使用態様から総合的に判断されるべきであり、MMS部の広告に表示された「SENjU」は商標権者を意味すると解され、「SENjU」と「千寿」は同義であることから、使用商標「SENjU」は本件商標と同一の称呼及び観念を生ずる社会通念上同一の商標といえる。

(2)まとめ

以上のとおり、商標権者は要証期間内に「経営の診断又は経営に関する助言」に該当する眼科医院の新規開業のサポート業務及び経営のサポート業務に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商標を付して頒布した(商標法第2条第3項第8号)ことから、木件商標は商標法第50条第1項に該当するものではない。

第4 当審の判断

1 被請求人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。

(1)商標権者は、「眼科・耳鼻科用医薬品及びコンタクトレンズ用剤及び動物用医薬品の製造・販売、医療機器の販売・貸与、化粧品原料の製造・販売」等を事業とする会社である(乙1)。

(2)商標権者のウェブサイトの2024年2月24日付けアーカイブには、「千寿製薬では、眼科医院の経営をお手伝いするMMS(メディカル・マネージメント・サポーター)事業を展開しています。」の記載がある(乙85)。

(3)ア 商標権者の発行する季刊誌「銀海」No.266(2024年1月号、以下「本件雑誌」という。)の裏表紙とおぼしき頁には、発行者として「千寿製薬株式会社」の記載がある(乙113)。

イ 本件雑誌の46頁上段に掲載された広告(以下「本件広告」という。)には、左上部に別掲のとおりの商標(以下「使用商標」という。)の表示、下部右方に、図案化された「MMS」の文字、及び下部左方に「MMSは眼科医院の経営をサポートします。/MMSは過去30余年の実績から蓄積されたノウハウで、新規開業に関するご相談のほか、収入分析・労務管理・納税対策・患者満足度向上など、先生方のさまざまなご相談におこたえし、健全な医院経営のサポートを行なうことによって地域医療の発展に貢献しています。」の記載がある(乙113)。

ウ 本件雑誌の13頁には、右上に使用商標と同じ態様の標章が表示されるとともに、下方に「千寿製薬株式会社」の文字が記載された広告が掲載され、また、本件雑誌の21頁及び裏表紙とおぼしき頁にも、「千寿製薬株式会社」と表示された商品広告が掲載されている(乙113)。

(4)本件雑誌は、2023年12月に、A社によって15,900部印刷され、商標権者に納品された(乙91~乙94)。そして、そのうち14,818部が、同年同月に、商標権者の委託業者であるB社によって、大阪府内及び府外に発送された(乙95、乙96)。その送付先は、大学や病院、医師等とされる。

2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。

(1)使用商標について

本件商標は、前記第1のとおり、「センジュ」、「SENJU」及び「千寿」の文字を三段に書してなるところ、構成中の「センジュ」及び「SENJU」の文字は、「千寿」の漢字の読みを片仮名及び欧文字で表したものと容易に理解されるものである。そうすると、「千寿」の文字は、一般的な辞書類に掲載されている語ではないことから、特定の観念を生じるものではないが、これらの片仮名、欧文字及び漢字は、互いに観念において異なるものではない。

他方、本件広告に表示された使用商標は、別掲のとおり、「SENjU」の文字を、一文字ずつ異なる色彩をもって書してなるところ、これは、本件商標の構成中「SENJU」の欧文字部分とつづりを同一にするものである。

加えて、本件広告が掲載されている本件雑誌の発行者として、商標権者名である「千寿製薬株式会社」の文字が表示されていること、また、本件雑誌内において、「千寿製薬株式会社」と表示された広告や、使用商標と同じ態様の標章と、「千寿製薬株式会社」の文字がともに表示された広告などが複数掲載されていることを踏まえると、使用商標である「SENjU」の文字が、商標権者の商号の一部である「千寿」の文字を欧文字で表したものと認識されるとみることに、不自然な点はないというべきである。

そうすると、使用商標は、本件商標の欧文字部分とつづりを同一にし、その構成文字に相応して「センジュ」の称呼が生じる点でも一致し、観念においても異なるものではないと解されるから、両者は、社会通念上同一の商標といえる。

(2)使用者について

「MMS」は、商標権者のウェブサイトのアーカイブの記載からすれば、商標権者の部署名を表したものといえるものであって、使用商標が表示されたMMSに関する本件広告を本件雑誌に掲載したのは商標権者であるから、使用商標の使用者は、商標権者と認められる。

(3)使用役務について

本件広告中の記載によれば、商標権者は、その一部署であるMMSにおいて、新規開業に関する相談や労務管理等の、眼科医院の経営のサポート(以下「使用役務」という。)を行っているとみることができる。

そして、使用役務は、請求に係る役務のうち、「経営の診断及び指導」の範ちゅうに属する役務であるといえる。

(4)使用時期について

本件広告が掲載された本件雑誌は、要証期間内である2023年12月に、A社から商標権者に納品され、商標権者から委託されたB社により、顧客に向けて送付されたものと推認できる。

そうすると、使用商標は、要証期間内に使用されたものと認められる。

(5)使用行為について

本件雑誌における、使用商標が表示された本件広告には、上記1(3)イのとおりの文章の記載があり、これは、使用役務についての説明といえるから、本件広告は、使用役務に関する広告ということができる。

そして、本件雑誌は、A社から商標権者に納品され、商標権者から委託を受けたB社から、顧客に向けて送付されたものと推認できる。

そうとすると、商標権者は、本件雑誌において、使用役務に関する広告に使用商標を付し、それを頒布したということができ、この行為は、商標法第2条第3項第8号の「役務に関する広告に標章を付して頒布する行為」に該当する。

また、当該行為は、日本国内において行われたことが明らかである。

3 請求人の主張について

請求人は、「SENjU」等の文字は、それぞれ異なる意味合いを有する「千手」「専修」「先儒」及び「千寿」の漢字の欧文字表記であり、同一の観念を生じないから、「SENjU」等の文字を使用しただけでは、三段書きからなる本件商標と社会通念上同一の範囲にある商標を使用したものとはいえない旨主張する。

しかしながら、上記2(1)で述べたとおり、本件広告が掲載されている本件雑誌の発行者として、商標権者名である「千寿製薬株式会社」の文字が表示されていること、また、本件雑誌内において、「千寿製薬株式会社」と表示された広告や、使用商標と同じ態様の標章と、「千寿製薬株式会社」の文字がともに表示された広告などが複数掲載されていることを踏まえると、使用商標である「SENjU」の文字に接する需要者が、殊更、これと同じ読みを有する上記の各語を想起するというよりは、むしろ、商標権者の商号の一部である「千寿」の文字を欧文字で表したものと認識するとみるのが自然といえる。

したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標というべきであるから、請求人の上記の主張は、採用することができない。

4 まとめ

以上のとおり、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者が、本件商標と社会通念上同一の商標を、本件商標の指定役務中、請求に係る役務について使用していたことを証明したものと認められる。

したがって、本件商標の登録は、請求に係る役務について、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。

よって、結論のとおり審決する。

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