結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024670057 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由
本件国際登録第990596号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、2008年(平成20年)5月21日にDenmarkにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年9月8日に国際登録出願、第1類「Chemicals used in industry; agricultural chemicals, except fungicides, weed killers, herbicides, insecticides and parasiticides; horticulture chemicals, except fungicides, herbicides, insecticides and parasiticides; chemicals for forestry, except fungicides, herbicides, insecticides and parasiticides; chemical substances for preserving foodstuffs; tanning substances; adhesives used in industry; cultures of microorganisms other than for medical and veterinary use; emulsifiers, proteins for industrial purposes, casein and caseinates for industrial purposes.」、第5類、第29類ないし第32類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成23年2月25日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和6年10月4日である。
なお、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、令和3年(2021年)10月4日ないし令和6年(2024年)10月3日である(以下「要証期間」という場合がある。)。
請求人は、本件商標の指定商品中、第1類「Chemicals used in industry; agricultural chemicals, except fungicides, weed killers, herbicides, insecticides and parasiticides; horticulture chemicals, except fungicides, herbicides, insecticides and parasiticides; chemicals for forestry, except fungicides, herbicides, insecticides and parasiticides; chemical substances for preserving foodstuffs; tanning substances; emulsifiers, proteins for industrial purposes, casein and caseinates for industrial purposes.」(以下「請求に係る指定商品」という場合がある。)について取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び令和7年1月22日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年4月24日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
本件商標は、その指定商品中、請求に係る指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
被請求人は、答弁書において、商標権者(被請求人)は、要証期間に、わが国において、その請求に係る指定商品中「proteins for industrial purposes」(参考訳:工業用たんぱく質、以下同じ。)について本件商標を使用している旨主張すると共に、乙第1号証ないし乙第10号証を提出しているが、これらの書証を以ってしても、本件審判請求は成り立たないとする被請求人の主張は失当である。
(1)乙第5号証及び乙第6号証は、そもそもこれらは英語の記事であって証拠として採用され得ないものであるものの、いずれにしても、被請求人が「proteins for industrial purposes」に該当すると主張している「functional milk proteins(機能性ミルクプロテイン)」及び「whey protein hydolysates(ホエイプロテイン加水分解物)」が日本で実際に製造販売等されている事実を確認できないばかりか、これらの商品はいずれも、第1類に分類される商品ではなく、第29類又は第5類に分類される商品である。
この点に関し、前者についてはニース分類に基づく商品表示として第29類「protein milk(プロテインミルク)」があり、「ミルクプロテイン」という表示も第29類で登録されていること(商標登録第5549920号や同第6423552号等)、また、後者については、いわゆる「たんぱく加水分解物」であるところ、これは一般的な分類上「食品」に分類されるものであって(甲3)、乙第6号証の2頁目1行目にも「Our whey protein hydolysates can be used for ready-to-drink,ready-to-mix and enteral nutrition formulas(我々のホエイプロテイン加水分解物は、すぐに飲むことができる栄養剤、調合済みの栄養剤、及び、経腸栄養剤に混ぜることができるものである)」との説明があるとおり、既製品である飲料や栄養剤等に混ぜてそのまま使用することができる商品であることを考慮すると、製品原材料としての性質を有する第1類の「工業用たんぱく質」ではなく、実体的には、「食用たんぱく」等をカバーする第29類、又は、「ホエイプロテインを主原料とする栄養補助食品」等をカバーする第5類に分類される商品であると考えられること、両者はいずれも第1類「proteins for industrial purpose」に該当しないことは明白である。
(2)乙第3号証、乙第9号証及び乙第10号証に係る請求書には、本件商標が表示されていると共に、商品欄に商品名として「NUTRILAC」及び「LACPRODAN」が記載されており、前者が「機能性ミルクプロテイン」(乙7)、後者が「ホエイプロテイン加水分解物」(乙8)の商品名で、「proteins for industrial purposes」に該当する商品であることから、本件商標が「proteins for industrial purposes」について使用されている旨を主張している。
しかしながら、商品商標の使用は、「商品又は商品の包装に標章を付する行為」(商標法第2条第3項第1号)、及び、「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為」(同条第1項第2号、審決注:商標法第2条第3項第2号の誤記と認める。)が予定されているところ、乙第3号証、乙第9号証及び乙第10号証からこのような使用の状況は確認できない。また、いわゆる「広告的使用」や「取引書類における使用」(同条第1項第8号、審決注:商標法第2条第3項第8号の誤記と認める。)という場合であっても、少なくともこれらの書類において請求に係る指定商品との関係で登録商標が使用されていることが把握できる必要があると解されるところ、これらの書証においては、「proteins for industrial purposes」との関係で本件商標を使用している状況は何ら認識し得ず、「NUTRILAC」又は「LACPRODAN」を名称とする「機能性ミルクプロテイン」又は「ホエイプロテイン加水分解物」が販売されている可能性があることを推認できるにすぎない。さらに、前述のとおり商標権者が取り扱っているという「機能性ミルクプロテイン」及び「ホエイプロテイン加水分解物」は実体的に第1類の「proteins for industrial purposes」には該当しないものであるから、上記各書証を以って本件商標が請求に係る指定商品について使用されているとは到底認められない。
(3)以上より、被請求人の提出する各書証によっては、本件商標が、請求に係る指定商品について使用されていたことは何ら立証されていない。
被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁書及び令和7年8月14日付け審尋に対する同年10月8日付け回答書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第28号証(枝番号を含む。なお、枝番号を全て引用するときは枝番号の記載を省略する。)を提出した。
(1)被請求人(商標権者)であるArla Foods ambaはデンマークを拠点とする乳製品メーカーであり、クリームチーズやカマンベールチーズなどの各種チーズ製品だけでなく、工業用のたんぱく質も製造販売しているところ、日本の企業に対しては子会社であるアーラフーズイングレディエンツジャパン株式会社(以下「アーラジャパン社」という場合がある。)を通じて商標権者の製品の販売を行っている。
乙第1号証は、アーラジャパン社が日本の税務署に提出した書類の写しであるが、アーラジャパン社が商標権者の子会社であることを示すものである。
乙第2号証は、商標権者がアーラジャパン社に対して、本件商標の使用を許諾していることを示す使用許諾書の写しであり、アーラジャパン社は商標権者の通常使用権者である。
(2)乙第3号証はアーラジャパン社が日本の企業に宛てて発行した2022年1月31日付の請求書である。当該請求書の右上部には、別掲2のとおりの標章(以下「使用商標」という。)が表示されている。
また、当該請求書には、取引対象である商品や取引先名その他取引の詳細が記載されているが、商品欄には商品名として「Nutrilac」及び「Lacprodan」の記載がある。これらの商品はいずれも商標権者の製造販売にかかる商品の商品名であり、商標権者の子会社であるArla foods ingredients group P/S(乙4、以下「ArlaP/S社」という場合がある。)のウェブサイトにおいてそれぞれ、前者は機能性ミルクプロテイン(乙5)の商品名、後者はホエイプロテイン加水分解物の商品名(乙6)であることが説明されている。また、これら商品はいずれも請求に係る指定商品中の「proteins for industrial purposes」に該当する商品である。
なお、「NUTRILAC」については商標権者の子会社であるArlaP/S社が、「LACPRODAN」については商標権者の子会社であるArla foods ingredients ambaが「Proteins for industrial purposes」等を指定商品として商標登録を受けていることからも(乙7、乙8)、機能性ミルクプロテイン及びホエイプロテイン加水分解物が「proteins for industrial purposes」に該当する商品であることは明らかである。
また、乙第9号証及び乙第10号証は、アーラジャパン社が日本の企業に宛てて発行した、上記「Nutrilac」及び「Lacprodan」の販売に係る2023年1月31日付及び2024年1月19日付の請求書であり、使用商標が右上部に表示されている。
(3)このように、商標権者の通常使用権者によって、要証期間において、本件商標はその請求に係る指定商品中の「proteins for industrial purposes」について使用されているものである。
(1)乙第3号証、乙第9号証及び乙第10号証(以下、請求書という。)に記載されている商品「Nutrilac」と乙第5号証に掲載されている「Nutrilac」という商品が同一の商品であることについて
ア 乙第5号証は、ArlaP/S社のウェブサイトの写しであり、同社が「our natural Nutrilac functional milk proteins(参考訳:当社のNutrilacブランドの天然機能性ミルクプロテイン)」として「Nutrilac」を紹介していることから、「Nutrilac」は機能性ミルクプロテインの製品ブランドであることがわかる。要証期間中に発行されたArlaP/S社からアーラジャパン社宛の請求書等(乙11~乙13)により、「Nutrilac」ブランドの具体的な製品(いずれもMilk Protein)を、日本法人であり、通常使用権者であるアーラジャパン社がArlaP/S社から輸入の形で購入している事実が確認できる。
イ 乙第14号証は「Nutrilac YO-8236」の流通形態を示す写真であるが、「Nutrilac YO-8236」の包装には本件商標が印字されており、製造年月日は2023年9月28日と印字されている。このように、乙第5号証に掲載されている「Nutrilac」という商品をアーラジャパン社がArlaP/S社から購入している。
そして、乙第11号証ないし乙第13号証に記載されている「Nutrilac YO-8236」、「Nutrilac QU-8302」、及び「Nutrilac CH-8313」は、アーラジャパン社から国内の企業へあてた請求書(乙3、乙9)に、商品名として記載されている。
したがって、乙第5号証に掲載されている「Nutrilac」という商品と請求書に記載されている商品「Nutrilac」は同一の商品である。また、乙第11号証ないし乙第14号証によって、アーラジャパン社が、本件商標を包装に付した商品「Nutrilac」を輸入という形で購入しているのであるから、本件商標が使用されていることは明らかである。
ウ なお、後記(3)で述べるとおり、ArlaP/S社は商標権者を親会社とする子会社であり、乙第15号証が示すように、商標権者は同社にも本件商標の使用を許諾している。したがって、ArlaP/S社は商標権者の通常使用権者である。このように、乙第11号証ないし乙第13号証により、取引書類上において本件商標が使用されていることが明らかであるので、商標法第2条第3項第8号における使用が確認できる。
(2)請求書に記載されている商品「Lacprodan」と乙第6号証に掲載されている「Lacprodan」という商品が同一の商品であることについて
ア 乙第6号証は、ArlaP/S社のウェブサイトの写しであり、「Product range for whey protein hydrolysates(参考訳:ホエイプロテイン加水分解物製品ラインナップ)」として、「Lacprodan DI-3065」、「Lacprodan DI-3091」、「Lacprodan DI-3092」など複数のLacprodanブランドのホエイプロテイン加水分解物が紹介されていることから、「Lacprodan」はホエイプロテイン加水分解物の製品ブランドであることがわかる。
イ 要証期間中に発行されたArlaP/S社からアーラジャパン社宛ての請求書(乙16)によって、要証期間中、アーラジャパン社がArlaP/S社より「Lacprodan」製品を購入している事実が確認できる。
このように、乙第6号証に掲載されている「Lacprodan」という商品をアーラジャパン社がArlaP/S社から購入している。そして、乙第16号証に記載されている「Lacprodan DI-3065」はアーラジャパン社から国内の企業へあてた請求書(乙3、乙9)に商品名として記載されている。
したがって、乙第6号証に掲載されている「Lacprodan」という商品と請求書に記載されている商品「Lacprodan」は同一の商品である。
ウ なお、ArlaP/S社は商標権者の通常使用権者であるから、乙第16号証により、取引書類上において本件商標が使用されていることが明らかであるので、商標法第2条第3項第8号における使用が確認できる。
(3)乙第4号証はデンマーク商務庁が発行したArlaP/S社の会社登録情報であり、同社が商標権者を親会社とする子会社であることを示す資料である。
(4)「Nutrilac」が「機能性ミルクプロテイン」であることについて
ア 乙第17号証及び乙第18号証によると、「ミルクプロテイン(乳たんぱく質)」とは、乳由来のタンパク質を抽出・濃縮したものであり(乙17)、栄養強化や機能付与の基材として食品業界において広く利用されている。形態としては粉末状、液状、濃縮液の形などとされるが、いずれにせよ食品の完成品そのものではなく、食品を製造・加工するための原料成分として利用されるものである(乙18)。
具体的には、プロテイン飲料や栄養補助食品におけるたんぱく質強化の基材、ヨーグルトやチーズ等の乳製品、パンやスナック菓子類における加工基材などに用いられ、食品の食感や機能を調整する役割を果たしている。ミルクプロテインはあくまでも食品を構成するための基材であり、一般消費者が直接摂取する一般的な食品とは性質を異にするものである。
そして「機能性ミルクプロテイン(functional milk proteins)」とは、機能性という語が示すように、単に乳由来のたんぱくを示すのではなく、特定の機能や栄養学的な付加価値を備えたものである。
イ 乙第19号証は、2024年5月30日付の分析証明書であり、アーラジャパン社がArlaP/S社から輸入購入し、同社へ発送された「Nutrilac YO-8236」というミルクプロテインの成分を示すものである。これによれば、当該製品にはプロテインが81~82%、ラクトース(乳糖)が4~5%、脂肪が3%含まれていることが確認できる。
一方、一般の牛乳に含まれる乳たんぱく質(ミルクプロテイン)は、100g中約3.3g、すなわち3.3%にすぎないことから(乙17)、「Nutrilac YO-8236」が極めて高たんぱくな製品であることは明らかである。高たんぱくであること自体が栄養学的な付加価値を備えていることを意味する。
以上より、「Nutrilac YO-8236」は単なる乳たんぱくではなく、栄養機能の強化を目的とした機能性ミルクプロテインである。
(5)「Nutrilac」が指定商品の範疇の商品であることについて
ア 「proteins for industrial purposes(工業用タンパク質)」とは、加工して製品を作るために用いるタンパク質であり、食品原料として使用されるタンパク質であっても、それに分類される。
イ 乙第19号証ないし乙第21号証はミルクプロテイン製品ブランドである「Nutrilac」の分析証明書であり、一般生菌数や酵母・カビ数など厳格な微生物規格が示されていることから、当該製品が消費者向けの完成食品ではなく、食品等を製造する際に利用される原料であることを示している。
ウ 「Nutrilac YO-6675」を紹介するパンフレット(乙22)には、「Easy to mix with other ingredients,Nutrilac YO-6675 keeps yoghurt texture smooth and silky with minimal impact on viscosity,even when added at a higher dosage.(参考訳:Nutrilac YO-6675は他の原料と混ざりやすく、高用量で添加しても粘度への影響を最小限に抑えながら、ヨーグルトの食感をなめらかでシルキーに保ちます。)」との記載があり、当該商品が他の原料と混合されることを前提としていることが明らかである。当該パンフレットには、「Your product/Our ingredient(貴社製品/当社原材料)」と記され、あくまで「他社の製品を構成するための原料」であることが強調されている上、「The information is not intended for end consumers.(参考訳:本情報は最終消費者を対象とするものではありません)」との免責事項も付されている。
エ 乙第5号証には「you can use Nutrilac on your existing production lines.(参考訳:既存の製造ラインでNutrilacを使用することができる)」との記載があり、使用場面として「製造ライン」が想定されていることからも、当該商品は消費者が直接摂取する完成食品ではなく、製造過程で他の食品を生産するための原料であることが示されている。
オ 乙第14号証に示すとおり、当該商品は大型のクラフト紙袋に充填された形態で輸出入・取引されている。このような包装は、消費者向け食品ではなく、食品メーカー等が利用する加工原料の流通形態に典型的に用いられるものであり、一般消費者が直接購入・摂取することを想定した包装ではない。さらに、当該商品は高たんぱく原料であり、家庭用や市販用に分包された製品形態とは異なる。
したがって、当該商品は「食品」そのものではなく、食品製造等に用いられる原材料=工業用たんぱく質であり、一般消費者が直接摂取する「食品」ではないことは明らかである。
カ 請求人は弁駁書において、第29類に「protein milk(プロテインミルク)」が例示されていること、さらには登録例に「ミルクプロテイン」が含まれていることを挙げ、当該商品が食品であると主張するが、そもそも第29類は、「主として、動物性食品及び野菜その他食用園芸作物であって、食用のために加工または保存加工したもの」を包含するものであり、すなわち流通段階において一般消費者が直接摂取する形態の商品を対象とする類である。実際に第29類の例示を見ると「プロテインミルク(アルブミン乳)」が挙げられており、これは乳飲料として加工された完成品を意味することが明らかである。
また、請求人が弁駁書で引用した登録例である商標登録第6423552号における指定商品「ミルクプロテイン」は、指定商品の並びを見ても「乳製品」「乳飲料」等と同列に置かれており、さらには「ミルクプロテインを含有する乳製品」といった表現も含まれている。これらからすれば、当該「ミルクプロテイン」という記載は、厳密な意味での原料たんぱく質を指すものではなく、「プロテインを強化した乳飲料」、すなわち「プロテインミルク」を指して用いられたものと解するのが合理的である。
したがって、請求人が「ミルクプロテイン」と「プロテインミルク」とを同一視して当該商品を第29類の「食品」と断ずるのは、原料と完成品を混同したものであり、分類趣旨を踏まえた解釈として失当である。むしろ、純粋な原料としての「ミルクプロテイン」を念頭に置くのであれば、その性質上、第1類の「工業用タンパク質」に該当すべきものである。
したがって、「Nutrilac」は指定商品「proteins for industrial purposes(工業用タンパク質)」の範疇の商品である。
(6)「Lacprodan」が「ホエイプロテイン加水分解物」であることについて
ア 乙第23号証によると、「たんぱく加水分解物」とは、たんぱく質を酸や酵素で処理し、分子レベルで分解することによって得られる生成物をいう。たんぱく質の場合には、ペプチドやアミノ酸に分解され、栄養学的な利用効率が高まり、また機能的にも溶解性や消化吸収性が改善される。
イ 商標権者の通常使用権者であるArlaP/S社が2022年11月1日に東京で開催したセミナー資料(乙24)のスライド8において、製品「LACPRODAN BLG-100」は、「COMPONENTS OF WHEY PROTEIN(ホエイプロテインの成分)」との見出しのもとで紹介されている。そして同資料のスライド13には、当該製品が疾病や手術の際、エクササイズ時の使用が想定されるほか、栄養不良に伴うサルコペニアの高齢者や腎臓病患者にも使用できる旨が説明されている。これらの記載からすれば、「LACPRODAN BLG-100」が単なる乳製品ではなく、栄養機能を付与したホエイプロテイン加水分解物として紹介されていることは明らかである。
ウ 2024年5月15日付の分析証明書(乙25)によれば、当該商品のタンパク質含量は85%と極めて高く、乳糖は2.5%、脂肪は0.1%にとどまり、水分もわずか5.3%である。加えて、一般生菌数や酵母・カビ数など厳格な微生物規格が示されていることは、当該製品が消費者向けの完成食品ではなく、食品等を製造する際に利用される原料であることを示すものである。
エ 以上から、「LACPRODAN BLG-100」はホエイプロテイン加水分解物として栄養的機能を有し、かつ完成食品ではなく工業用タンパク質(食品製造用原料)に該当することが裏付けられる。
(7)「Lacprodan」が指定商品の範疇の商品であることについて
ア タンパク質加水分解物は、一般に加工食品の製造において、うま味を強化したり、テクスチャーや栄養機能を調整するための原材料として広く使用されている(乙26)。例えば、調味料・スープ・ソース類の製造においてうま味やコクを増すために用いられるほか、乳製品や栄養補助食品の基材としても利用されており、基本的には食品加工用の原材料としての性質が強いものである。直接的に「食品」として一般消費者に販売される形態は例外的である。商標権者が取扱う「ホエイプロテイン加水分解物」も、まさにこのような原材料に該当する。
イ 乙第6号証では、1頁目5行目に「Whey protein hydrolysates are often used in formulating medical foods providing adequate protein nutrition for patients with impaired gastrointestinal function.(参考訳:ホエイプロテイン加水分解物は、消化機能が低下した患者に十分なタンパク質栄養を供給するための医療用食品を調製する際にしばしば使用される。)」と記載されており、「ホエイプロテイン加水分解物」が医療用食品等の調製に用いられる原材料であることが明示されている。
続いて、同7行目では「our highly hydrolysed whey protein ingredients are enzymatically treated for facilitating an efficient protein uptake」と記載されており、「ホエイプロテイン加水分解質」は吸収効率が高まるように酵素処理された機能性原料であることが説明されている。
これら乙第6号証の記載を総合すれば、当該商品の本質が「食品等の製造時に用いられる原材料=工業用たんぱく質」であることは明らかである。
確かに、乙第6号証の2頁目には、「Our whey protein hydrolysates can be used for ready to drink,ready to mix and enteral nutrition(参考訳:当社のホエイプロテイン加水分解物は、飲料タイプ、混合タイプ、および経腸栄養製剤など、さまざまな用途に使用可能)」との記載がある。
しかし、これは商品の二次的な使用態様を示したにすぎない。すなわち、一次的には食品や医療用食品の製造における「原材料」であるが、エンドユーザーの利便性を考慮し、最終製品の形態に応じて「ready to drink」「ready to mix」等の用途が可能であることを補足的に説明したものにすぎない。
ウ したがって、本件商標が使用されている「ホエイプロテイン加水分解質」は、請求人のいう「食品」そのものではなく、食品等の製造に用いられる工業用たんぱく質であることは明らかである。
(8)要証期間内に「Nutrilac」という商品が存在したことを明らかにする客観的な証拠として、ア 乙第22号証「2022年8月1日に発行されたパンフレット」、イ 乙第27号証「2023年6月29日付書簡(加工助剤に関するお知らせ)」、要証期間内に「Lacprodan」という商品が存在したことを明らかにする客観的な証拠として、ウ 乙第28号証「2022年8月23日付書簡(Lacprodan80 価格更新のお知らせ)」、エ 乙第24号証「2022年11月1日に東京で開催されたセミナーの資料)」を提出する。これらにより「Nutrilac」及び「Lacprodan」という商品が要証期間内に存在していたことがわかる。
以上の次第であるから、本件商標は商標法第50条第1項の規定に該当しない。
(1)乙第1号証は、平成30年12月28日にアーラフーズイングレディエンツジャパン株式会社(アーラジャパン社)が芝税務署長宛に提出した書類であり、「最終親会社等」の項に商標権者の名称「Arla Foods Amba」の記載がある。
(2)乙第2号証は、商標権者がアーラジャパン社に対して、本件商標の通常使用権を許諾するため、2018年2月26日に締結した「通常使用権許諾証書」であり、25年間、日本で本件商標を第1類の指定商品に使用すること(通常使用権)を許諾した旨を証した書面である。
(3)乙第4号証は、2024年12月13日付け(審決注:乙4の2の「2004年」は誤記と認める。)のデンマーク商務庁作成のArlaP/S社に関する会社登録情報であり、ArlaP/S社の記載の下に、「法的所有者」として商標権者の記載、「資本持分比率:100%(2011年4月1日以降)」「議決権比率:100%(2011年4月1日以降)」の記載がある。
(4)乙第5号証は、商標権者の子会社であるArlaP/S社のウェブサイトの写しであり、「Nutrilac」について、「Nutrilac機能性ミルクプロテイン・・・高いクリーミーさ、しっかりした食感、そしておいしい乳風味を実現します。」、「乳の再構成や粘度調整など、あらゆるニーズに柔軟に対応します。」「Nutrilacは既存の製造ラインでそのまま使用できることです。」「幅広い発酵乳製品で徹底的にテストされています。」との説明がある(乙5の2)。
(5)乙第11号証は、2024年4月11日付けInvoiceであり(以下「Invoice」という。)、ArlaP/S社からアーラジャパン社宛のもので、「品名・商品説明」として、「Nutrilac YO-8236 Milk Protein」(以下「Nutrilac」とする商品を「使用商品」という。)の記載がある。また、Invoiceの右上部には、「alra foods ingredients」の記載の下に使用商標(別掲2)が付されている。
(6)乙第15号証は、商標権者がArlaP/S社に対して、本件商標の通常使用権を許諾するため、2018年2月26日に締結した「通常使用権許諾証書」であり、25年間、日本で本件商標を第1類の指定商品に使用すること(通常使用権)を許諾した旨を証した書面である。
(7)ア 乙第17号証は、「乳たんぱく質って何?」という標題の記事であり、乳たんぱく質とは、乳に由来するたんぱく質であり、牛乳や乳製品に多く含まれているとの説明がある(株式会社明治のウェブサイト)。
イ 乙第18号証は、「濃縮ミルクたんぱく質(MPC)」を標題とする記事であり、濃縮ミルクたんぱく質(MPC)はろ過処理によって得られる成分で、プロセスチーズ、ヨーグルト、発酵乳製品等の製品の製造に使用されているとの説明がある(US Dairy Export Councilのウェブサイト)。
(8)乙第3号証、乙第9号証及び乙第10号証は、2022年1月31日付け請求書、2023年1月31日付け請求書及び2024年1月19日付け請求書(以下、これらの請求書をまとめて「請求書」という。)であり、アーラジャパン社から東京都及び京都府の株式会社宛てのもので、「商品」として「Nutrilac YO-8236」「Nutrilac HA-8014-HPH」等の記載がある。また、アーラジャパン社の名称記載の右上部分には、使用商標が付されている。
(1)使用商品について
使用商品「Nutrilac」は、上記1(4)によれば、乳の再構成や粘度調整等が可能な機能性ミルクプロテインであり、「製造ラインでそのまま使用できる」、「発酵乳製品で徹底的にテストされ」ているとの説明よりすれば、発酵乳製品等に使用される原料と推認されるものである。
そして、上記1(7)によれば、乳(ミルク)たんぱく質は、プロセスチーズ、ヨーグルト、発酵乳製品等の製品の製造に使用されることがうかがえる。
そこで、請求に係る指定商品中の「proteins for industrial purposes」(参考訳:工業用たんぱく質)についてみると、本件商標が適用される商品及び役務の分類は「類似商品・役務審査基準(国際分類第9版対応)」(https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/ruiji_kijun/ruiji_kijun9.htm)
であるところ、第1類の「化学品」に含まれる商品として「たんぱく質」の記載がある。また、「特許庁商標課編 商品・サービス国際分類表 第9版」の第1類の注釈には、「この類には、主として、工業用、科学用及び農業用の化学品(他の類に属する商品の製造に用いられるものを含む。)を含む。」と記載され、商品のアルファベット一覧表には、第1類の商品として「Protein[raw material](参考訳:たんぱく質(原料))が記載されている。
これを踏まえて、使用商品「機能性ミルクプロテイン」についてみると、使用商品は、発酵乳製品等の製造に使用される原材料と判断できるものであり、他の類に属する商品(発酵乳製品等)の製造に用いられるものといえる。そうすると、使用商品「機能性ミルクプロテイン」は、第1類の化学品の「たんぱく質(原料)」に含まれるものであって、そして、発酵乳製品等の食品の製造等に用いられる原料であるから「proteins for industrial purposes(工業用たんぱく質)」の範ちゅうの商品と判断するのが相当である。
(2)使用者及び使用行為について
ア 上記1(1)及び(2)によれば、平成30年12月28日時点において、アーラフーズイングレディエンツジャパン株式会社(アーラジャパン社)は、商標権者の子会社であり、そして、2018年2月26日に締結した「通常使用権許諾証書」によって、本件商標を第1類の指定商品に使用する許諾を受けた通常使用権者と認められる。そして、当該使用許諾の期間は、要証期間を含むものである。
イ 上記1(3)及び(6)によれば、ArlaP/S社は、2011年4月1日以降、商標権者の子会社であり、そして、2018年2月26日に締結した「通常使用権許諾証書」によって、本件商標を第1類の指定商品に使用する許諾を受けた通常使用権者と認められる。
ウ 上記1(5)によれば、ArlaP/S社からアーラジャパン社宛て、商品「Nutrilac YO-8236 Milk Protein」の取引に関する2024年4月11日付けInvoiceが作成されており、そのInvoiceの右上部には使用商標が付されている。なお、2024年4月11日は要証期間である。
エ 上記1(8)のとおり、2022年1月31日、2023年1月31日及び2024年1月19日の請求書からは、アーラジャパン社は、日本国内の企業に使用商品を販売していることが推認される。
オ 上記(1)のとおり、「機能性ミルクプロテイン」は、第1類の「工業用たんぱく質」の範ちゅうの商品であるから、その商品名である「Nutrilac」は、第1類の「工業用たんぱく質」の範ちゅうの商品と認められる。
カ 上記アないしオによれば、通常使用権者であるアーラジャパン社は、商品名を「Nutrilac」とする使用商品を、日本国内の企業に販売するために、通常使用権者であるArlaP/S社と取引していると推認され、使用商品に係る請求書(取引書類)に使用商標を付して日本国内の株式会社宛に送付していると推認される。
したがって、通常使用権者であるアーラジャパン社の上記行為は、要証期間に日本国内において、本件審判請求に係る指定商品中の「proteins for industrial purposes(工業用たんぱく質)」の範ちゅうの商品「機能性ミルクプロテイン」について、その使用商品の請求書(取引書類)に使用商標を付して頒布したこと(商標法第2条第3項第8号)が認められる。
(3)使用商標について
本件商標は、別掲1のとおり、緑色の楕円形の中に「Arla」の文字を白抜きで表し、「r」の文字の上に黄色い花の図形が配されているものである。使用商標は、別掲2のとおり、構成する文字、図形及び色彩が全て本件商標と同一であるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(4)小括
以上によれば、通常使用権者は、要証期間に日本国内において、請求に係る指定商品中、第1類「proteins for industrial purposes(工業用たんぱく質)」の範ちゅうの商品である「機能性ミルクプロテイン」(使用商品)の請求書(取引書類)に、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる使用商標を付して頒布した(商標法第2条第3項第8号)と認められる。
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を使用していたことを証明したというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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