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Trademark Appeal Case

著名商標の類否判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024890042
審判種別記載はありません。
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

結 論
登録第6591004号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標及び本件審判

本件登録第6591004号商標(以下「本件商標」という。)は、「日本三菱軽工株式会社」の文字を標準文字により表してなり、令和4年1月31日に登録出願、第11類「照明用器具及び装置,加熱調理用の器具及び装置,冷却用機器,空気調和用ろ過器,バーナー,給水栓,シャワー器具,衛生器具及び装置,下水浄化装置,電気式ラジエーター」を指定商品として、同年7月4日に登録査定、同月22日に設定登録されたものである。

そして、本件商標は、大阪府寝屋川市所在の日本三菱軽工株式会社により登録出願され、同社を商標権者として設定登録されたものであり、これに対して、令和6年7月17日に同社を被請求人として本件審判の請求がされたが、同年8月20日に特定承継により中華人民共和国香港所在の三菱輕工(香港)科技有限公司へ本件商標に係る商標権が移転されたため、同有限公司を被請求人として本件審判の手続を続行した。

第2 引用商標

請求人らが、本件商標の登録の無効の理由において引用する商標は、「三菱」の文字からなる商標(以下「引用商標」という。)である。

第3 請求人らの主張

請求人らは、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証から甲第26号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同項第7号に該当し、その登録は、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。

2 請求人らについて

請求人の三菱商事株式会社は、石炭、石油、鉱石等の売買及び貿易業を主たる事業とする総合商社事業を行う企業である(甲2)。

請求人の三菱重工業株式会社は、エネルギー、機械、輸送用機器、環境関連事業を行う企業である(甲3)。

請求人の三菱電機株式会社は、電気機器、ICT関連事業を行う企業である(甲4)。

請求人らは、いわゆる「三菱グループ」に属する企業であり、その信用のシンボルとして三菱マークを使用している企業である。請求人らは、三菱マークを不正に使用したり、三菱各社が永年培ってきた三菱の信用や価値に便乗し、ひいてはこれを損ねてしまうような事態が、国内、海外、業種を問わず発生していることを認識しており、このような事態に対して、常時情報収集・検討を行い、適切な法的措置をとることにより、三菱に対する社会の信頼を損なわないよう行動を共にしている(甲5)。

3 被請求人について(審決注:請求人らの主張は、本件商標に係る商標権の移転前の段階における主張であり、当該移転前の商標権者を被請求人として主張している。)

被請求人の日本三菱軽工株式会社は、令和2年11月27日に設立された法人であり、会社の目的は、建築資材、住宅用設備機器の輸出入及び販売、貿易業等である(甲6)。

4 請求人らの商標について

(1)商標「三菱」について

商標「三菱」は、世界的に著名な商標であり、我が国において、登録第4233887号商標、登録第4319477号商標のほか多数の登録商標として権利化されており、請求人の三菱商事株式会社、又は三菱電機株式会社がこれら登録商標の商標権者となっている(甲7)。

商標「三菱」は、商標「MITSUBISHI」(登録第579190号商標等(甲8))、商標「THREE DIAMONDS」(登録第188919号商標等(甲9))及び商標「三菱の図案」(登録第98702号商標等(甲10))とともに請求人らの周知著名な商標である。

(2)標章「三菱重工」について

標章「三菱重工」は、請求人の三菱重工業株式会社の略称として、日本国内における需要者の間に広く認識されている周知の標章である。

5 本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性

(1)「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」について

請求人らの商標「三菱」は、「MITSUBISHI」「THREE DIAMONDS」「図案」とともに、従来「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN 日本有名商標集」(AIPPI・JAPAN)に掲載されており、日本国及び諸外国において周知著名の商標であることにつき多言を要するものではない(甲12、甲13)。

加えて、東京地判平成22年1月29日(平成21年(ワ)第9129号商号使用禁止等請求事件)及びその控訴審である東京高判平成22年7月28日(平成22年(ネ)第10021号商号使用禁止等請求控訴事件)において、「三菱」の標章が、遅くとも昭和43年までには、企業グループである三菱グループ及びこれに属する企業を表すものとして著名となり,その著名性は現在に至るまで継続しているものと認められるものであることが事実として認定されている(甲14)。

すなわち、商標「三菱」は、請求人らが、多年にわたって企業が努力を積み重ね、多大な宣伝広告費を掛けることにより、需要者間において広く知られ、高い名声、信用、評判を獲得するに至った周知、著名商標であり、請求人らの業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標であり、十分に顧客吸引力を具備し、それ自体が貴重な財産的価値を有するものであることは、明らかである。

(2)「同一又は類似の商標」について

本件商標「日本三菱軽工株式会社」は、その商標構成中に「需要者の間に広く認識されている」請求人の商標「三菱」と、他の文字「日本」「軽工」「株式会社」を結合した商標である。

本件商標を構成する語である「日本」は、「日本国」を意味する語であることは説明するまでもない。「軽工」とは、「軽工業」の略語すなわち、「(light industry)容積の割に重量の軽い製品、主として消費財を生産する工業。生産過程・生産技術が比較的単純で、投下資本量が少なくてすむ。繊維・衣服・食料品工業など。」を意味する語(甲16)であり、「重工業」((heavy industry)容積の割に重量の大きい財貨、主として生産財を生産する基礎的工業部門。鉄鋼業、造船業、車両・機械の製造業など。)(甲17)と対比される概念を示す語である。「株式会社」は、資本金が株式という均等な形式に分割され、出資者すなわち株主が組織する有限責任会社を意味する語である。

したがって、本件商標のうち、請求人の商標「三菱」を除く各語は、地名又は説明的、記述的な語であるところ、標準文字からなる商標であり、その外観構成がまとまりよく一体に表されているものといえるとしても、本件商標は、「需要者の間に広く認識されている」請求人の商標「三菱」と類似するものと判断されるべきものである。

(3)「不正の目的」について

ア 被請求人のウェブサイトにおけるホームページの記載について

被請求人の名称と同一の「日本三菱軽工株式会社」を冠したウェブサイト(以下、この「第3 請求人らの主張」において「本ウェブサイト」という。)には、「三菱軽工株式会社(本社:大阪府寝屋川市、社長:・・・)という記載があり、住所・代表者の表示が、日本三菱軽工株式会社の履歴事項全部証明書にある情報と一致する(甲18の1)。

また、本ウェブサイトには、「偉大なデータ」という文言に併せて「150年来、私達は無数の世界第一を持っています。350000以上の特許を持っています。」と記載されているが、被請求人の履歴事項全部証明書によれば、被請求人は設立されていまだ4年に満たない企業であるところ、虚偽の表示がなされているというべき状況にある。加えて、請求人が調査したところでは、被請求人の特許を発見することもできなかった。

さらに、本ウェブサイトのトップページからリンクされている「について三菱軽工」というウェブページ(甲18の2)には、「「三菱軽工業のロゴ」について、「世界600社以上の優秀企業を代表する大きな印として、「三菱」という名前はダイヤモンド3個のバッジを指していますが、現在は多様化しています。三菱軽工業は、年代の古い初期に「三どんぐりの葉」というマークを世界に広める会社の目印にしていま」」との記載がなされている。

ここに表示されている標章は、甲第5号証において示した「三ツ柏」の図案であるところ、三菱グループの構成員であることを誤解させるような表示がなされているというべきものである。

これらウェブページの記載からも明らかなとおり、被請求人は、三菱グループと同じく創業150年の歴史を有するかのような説明をしており、請求人らの登録商標「三菱」の英文表記に当たる「MITSUBISHI」を無断で使用しており、「三ツ柏」の図案をあたかも三菱マークと関連があるかのように使用しており、本件商標をウェブサイト左上のハウスマークに該当する標章として使用している。

商標「三菱」を使用した情報発信行為は、被請求人が三菱グループの所属企業であることを装いつつ、著名な標章である「三菱重工」に対応する「三菱軽工」の表示も併用して、あたかも三菱重工業株式会社の姉妹企業であるかのような誤解を生じさせようとする悪意に基づくものであることは明白である。

イ 被請求人のウェブサイトにおける商品(イメージ)の記載について

本ウェブサイトの「おみやげ」のウェブページには、本件商標に係る指定商品と関連する商品のイメージとして、「換気扇」「加熱調理用器具」「オーブン」等のCG図が掲載されている(甲18の3)。

これらの製品に対応するものとして、請求人の三菱電機株式会社も「換気扇」「加熱調理用器具」「オーブン」といった製品を製造・販売している(甲19)。

上記のとおり、被請求人は、請求人らと共通する商品を製造する事業者であるかのように本ウェブサイトにおいて商品イメージを掲載している。

ウ 被請求人のウェブサイトにおける建築物(イメージ)の記載について

本ウェブサイトには、三菱グループとグループ会社・団体を総合的に紹介する「三菱グループサイト」から転載されたと思われる文章や画像が複数掲載されている。

具体的には、本ウェブサイトのホームページからリンクされている「百年計画」のウェブページにおいて、「Celebrating 150 Years: Our Activities. The birth of a new cultural spot in Marunouchi: Relocating the Seikado Bunko Art Museum Exhibition Gallery」(和訳:150年を祝う。私達の活動。丸の内に新たな文化スポット誕生。静嘉堂文庫美術館の展示ギャラリーを移転)のタイトルとともにビルの写真が掲載されている(甲18の4)。

この点、三菱グループのウェブサイトには、前記記載のウェブページのタイトルと同じ「Celebrating 150 Years: Our Activities」(日本語サイトでのタイトルは、「創業150周年記念事業紹介」)というウェブページが存在している(甲20)。当該ウェブページには、本ウェブサイトに掲載された文章と全く同じ文章で「The birth of a new cultural spot in Marunouchi: Relocating the Seikado Bunko Art Museum Exhibition Gallery」(日本語サイトでのタイトルは、「丸の内に新たな文化スポット誕生。「静嘉堂文庫美術館の展示ギャラリー」を移転」)の紹介文と東京丸の内の明治安田生命ビルの写真が掲載されている。

本ウェブサイトに掲載されているビルの写真は、三菱グループのウェブサイトに掲載されている写真を左右反転した画像をトリミングしたものである。

すなわち、本ウェブサイトに掲載されているテキストとビルの画像は、三菱グループサイトの創業150周年記念事業を紹介するウェブページに記載のものを複製又は加工したものである。

上記の状況からも明らかなとおり、被請求人は、本ウェブサイト作成に当たり、「三菱グループ」のウェブサイトから著作物を無断で複製・加工した文章や画像を多数用いている事実がある。こうした行為は、被請求人が三菱グループの所属企業であるかのように装い、「三菱」に化体した信用、名声、顧客吸引力にただ乗りして不正の利益を得ようとする意図があることを示す証左にほかならないものである。

エ 被請求人のウェブサイトにおけるニュースの記載について

本ウェブサイトの「ニュース」のウェブページにおいて、被請求人は、「令和2年度全国発明表彰「朝日新聞社賞」を受賞」という見出しの下、「~バイオマス資源由来の汎用ポリエステル製造技術の発明~ 三菱軽工株式会社 三菱軽工株式会社は、公益社団法人発明協会が主催する令和2年度全国発明表彰において、「バイオマス資源由来の汎用ポリエステル製造技術の発明」(特許第4380654号。・・・)で「朝日新聞社賞」を受賞いたしました。(以下、略)」という記載を行っている(甲18の5)。

しかしながら、特許第4380654号は、発明の名称「ポリエステル及びその製造方法」を内容とする三菱ケミカル株式会社の特許発明に関するものであり(甲21)、令和2年度全国発明表彰「朝日新聞社賞」を受賞しているものである(甲22)。

このように、被請求人は、2020年9月28日付けの三菱ケミカル株式会社のプレスリリースを複製し、事業者名を「三菱軽工株式会社」に書き換えた上で、虚偽の記載を行っている。

オ 被請求人の中国ウェブサイトについて

中華人民共和国で利用されている大手検索サイトである「百度」において、自社紹介のブログ記事をアップロードしている様子がうかがえる(甲23)。

ところで、中国では、「企業名称登記管理規定」により、企業名称は、行政区名・屋号・業種又は経営上の特徴・組織形態により構成すべきとされている(甲24)。「日本三菱軽工株式会社」の名称は、行政区名である「日本」、業種として「軽工」、組織形態として「株式会社」の文字と、屋号を表す「三菱」から構成されているところ、本件商標は、中華人民共和国での事業活動を念頭に、中国の企業名称の登記の規則に則って採択されたと推察されるものである。

したがって、本件商標は、中国の需要者に対して「三菱」の文字へ着目させ、「三菱」を取引に資される部分として機能させようとする意図の下に採択・出願されたものであることは明らかである。

言い換えれば、被請求人は、日本で高い周知性を有する「三菱」の文字を商号(商標)の一部に含めることにより、中国の需要者に対し、「日本三菱軽工株式会社」が、あたかも日本を代表する企業グループである三菱グループの所属企業であるかのように見せかけ、「三菱」商標に化体した信用、名声、顧客吸引力にフリーライドする意図をもっていることは明らかである。

カ 被請求人の他の出願について

被請求人は、過去に、「三ツ柏」の図案に係る商願2021-008194及び文字「MITSUBISHILIGHTINDUSTRIES」に係る商願2021-008535を出願している(甲25の1、甲26の1)。商願2021-008194について、特許庁は、出願に係る商標が「三菱グループのマークであるスリーダイヤの由来」である「三ツ柏」であることから、社会公益的な観点に基づき商標法第4条第1項第7号に基づく拒絶理由を通知し(甲25の2)、拒絶査定を下しており(甲25の3)、商願2021-008535について、「三菱」「MITSUBISHI」を根拠として第4条第1項第11号に基づく拒絶理由を通知し(甲26の2)、拒絶査定を下している(甲26の3)。

上記の出願は、「三菱グループのマークであるスリーダイヤの由来」である「三ツ柏」と「三菱」に対応する「MITSUBISHI」及び「工業」に該当する「INDUSTRIES」を含む「MITSUBISHILIGHTINDUSTRIES」について、2021年1月26日付けで同日出願されたものである。このような過去の出願に鑑みても、日本三菱軽工株式会社が、三菱グループとの関係性を想起させる商標の出願を繰返していることは明らかであり、本件商標も、三菱マークについて不正の目的により出願されたものあることは明らかである。

(4)本号該当性の判断について

上記のとおり、請求人らの商標「三菱」は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」であり、本件商標は、「需要者の間に広く認識されている」請求人らの商標「三菱」と類似するものであって、「被請求人がその商標を使用した場合、その周知商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれがある」ことは明らかであり、不正の目的をもって使用するものというべきものである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。

6 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性

本件商標は、中国における被請求人のマーケティング活動において、三菱グループとの関連性を偽称するために使用することを目的として出願、登録されたものであると考えられる。

このような目的で商標を出願する行為は、著しく社会的妥当性を欠くものというべきであり、このような出願に基づいて被請求人を権利者とする商標登録を認めることは、公正な取引秩序の維持の観点からみて、著しく不当なものであって、商標法の目的にも反するものである。

よって、本件商標は、出願の目的に照らしてみても「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するものである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、請求人の主張に対し、何ら答弁していない。

第5 当審の判断

1 引用商標が、請求人らの業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているかについて

請求人らの主張及び同人の提出に係る証拠によれば、請求人らは、いわゆる「三菱グループ」に属する企業であり、引用商標を始め、「MITSUBISHI」又は「THREE DIAMONDS」の文字からなる商標及び三つの菱形の図形からなる商標を多数商標登録していること(甲7~甲10)、これらの商標は、AIPPI・JAPAN発行「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN 日本有名商標集」に採録されていること(甲12、甲13)、引用商標は、侵害訴訟において、遅くとも昭和43年までには、三菱グループ及びこれに属する企業を表すものとして著名となり、その著名性は現在に至るまで継続していると判示されていること(甲14)が認められる。

そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人らを始めとする三菱グループの業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内の需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。

2 本件商標と引用商標との類否について

本件商標は、「日本三菱軽工株式会社」の文字を標準文字により表してなるものであり、その構成文字及び意味合いから、「日本」、「三菱」、「軽工」及び「株式会社」の文字を結合させたものと容易に理解されるものである。

そして、本件商標の構成中「日本」、「軽工」及び「株式会社」の各文字は、それぞれ国名、業種及び組織形態を表すものであり、いずれも出所識別標識としての機能がないか弱いものと認められる。

一方、本件商標の構成中「三菱」の文字は、前記1のとおり、請求人らを始めとする三菱グループの業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内の需要者の間に広く認識されているものであるから、当該文字部分は、取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。

そうすると、本件商標は、その構成中「三菱」の文字部分を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。

そして、本件商標の構成中の「三菱」の文字部分は、「三菱」の文字からなる引用商標と構成文字を共通にするものである。

してみると、本件商標は、引用商標と類似の商標といわなければならない。

3 本件商標が、不正の目的をもって使用をするものであるかについて

(1)請求人らの提出に係る証拠によれば、次の事実が認められる。

ア 本件商標の出願人であり、かつ、設定登録時の商標権者である日本三菱軽工株式会社(以下「旧商標権者」という。)は、令和2年11月27日に成立した会社である(甲6)。

イ 旧商標権者のウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)には、「偉大なデータ/150年来、私達は無数の世界第一を持っています。350000以上の特許を持っています。」の記載があり、また、旧商標権者の名称と並んで、本件商標の現在の商標権者である被請求人の名称が記載されている(甲18の1)。

ウ 本件ウェブサイトには、請求人らの商標である三つの菱形の図形からなる商標の原型である「三ツ柏」のマークが掲載されており、その説明として「三菱軽工業のロゴ/世界600社以上の優秀企業を代表する大きな印として、「三菱」という名前はダイヤモンド3個のバッジを指していますが、現在は多様化しています。三菱軽工業は、年代の古い初期に「三どんぐりの葉」というマークを世界に広める会社の目印にしていま」と記載されている(甲5、甲18の2)。

エ 本件ウェブサイトには、「Celebrating 150 Years: Our Activities. The birth of a new cultural spot in Marunouchi: Relocating the Seikado Bunko Art Museum Exhibition Gallery」(仮訳:150年を祝う。私達の活動。丸の内に新たな文化スポット誕生。静嘉堂文庫美術館の展示ギャラリーを移転。)の記載とともに、ビルの写真が掲載されている(甲18の4)。

オ 本件ウェブサイトには、「令和2年度全国発明表彰「朝日新聞社賞」を受賞」の見出しの下、「~バイオマス資源由来の汎用ポリエステル製造技術の発明~ 三菱軽工株式会社 三菱軽工株式会社は、公益社団法人発明協会が主催する令和2年度全国発明表彰において、「バイオマス資源由来の汎用ポリエステル製造技術の発明」(特許第4380654号。・・・)で「朝日新聞社賞」を受賞いたしました。」と記載されている(甲18の5)。

カ 三菱グループのウェブサイトには、「Celebrating 150 Years: Our Activities」の見出しの下、「The birth of a new cultural spot in Marunouchi: Relocating the Seikado Bunko Art Museum Exhibition Gallery」の記載があるとともに、ビルの写真が掲載されている(甲20)。

キ 前記エにおけるビルの写真は、前記カのビルの写真を左右反転させ、周囲をトリミングしたものである(甲18の4、甲20)。

ク 三菱ケミカル株式会社は、特許第4380654号の特許権者であるところ(甲21)、同社は、当該特許発明により、公益社団法人発明協会が主催する令和2年度全国発明表彰において「朝日新聞社賞」を受賞した(甲22)。

ケ 旧商標権者は、2023年(令和5年)8月18日から同年9月28日までの間に、中国において利用されている検索サイトである「百度」において、自社紹介のブログ記事をアップロードしており、同年8月18日の記事には、「MITSUBISHI」の文字とともに、本件商標も掲載されている(甲23)。

コ 中国における「企業名登記管理規定」では、企業名は、通常、行政区画名、屋号、業種又は事業の特徴、及び組織形態から構成され、その順序で配列しなければならないと規定されている(甲24)。

サ 旧商標権者は、令和3年1月26日に、請求人らの商標である三つの菱形の図形からなる商標の原型である「三ツ柏」のマークからなる商標及び「MITSUBISHI」の文字を含んでなる商標を出願している(甲5、甲25の1、甲26の1)。

(2)判断

前記(1)で認定した事実によれば、旧商標権者は、令和2年に成立した会社であるにもかかわらず、本件ウェブサイトにおいて、「150年来、私達は無数の世界第一を持っています。350000以上の特許を持っています。」と記載するとともに、三菱グループの会社であるかのような記載や、三菱グループのウェブサイトと同様の記載をしたり、三菱ケミカル株式会社が受賞した賞を自らが受賞したかのような記載をしたりしていることが認められる。

また、旧商標権者は、請求人らの商標である三つの菱形の図形からなる商標の原型である「三ツ柏」のマークからなる商標及び「MITSUBISHI」の文字を含んでなる商標を出願しており、さらに、本件商標の登録査定後には、中国における検索サイトである「百度」において、自社紹介のブログ記事をアップロードしたり、「MITSUBISHI」の文字や本件商標を掲載したりしていることも認められる。

加えて、中国における企業名は、行政区画名、屋号、業種又は事業の特徴、及び組織形態から構成され、その順序で配列されるところ、本件商標は、そのような構成からなるものと認められ、また、本件ウェブサイトに旧商標権者の名称と並んで被請求人の名称が記載されていることから、両者の間には何らかの関係性があるものと認められる。

そして、前記1及び2のとおり、引用商標が、請求人らを始めとする三菱グループの業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内の需要者の間に広く認識されているものであり、本件商標は引用商標と類似の商標であることからすると、旧商標権者は、あたかも三菱グループに属する企業であるかのように偽り、引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等にただ乗りすることを意図し、引用商標に類似する商標を取得し、中国において、被請求人に使用させる、又は被請求人とともに使用することを目的として、本件商標を出願し、登録を受けたものと判断するのが相当である。

このような目的で出願し、登録を受けた本件商標は、不正の目的をもって使用をするものというべきである。

4 商標法第4条第1項第19号該当性について

前記1から3によれば、本件商標は、請求人らを始めとする三菱グループの業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内の需要者の間に広く認識されている引用商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

5 商標法第4条第1項第7号該当性について

前記3のとおり、本件商標は、旧商標権者が、あたかも三菱グループに属する企業であるかのように偽り、引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等にただ乗りすることを意図し、引用商標に類似する商標を取得し、中国において、被請求人に使用させる、又は被請求人とともに使用することを目的として、出願し、登録を受けたものである。

このような経緯に鑑みれば、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものといわなければならない。

そして、商標法第4条第1項第7号でいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」が含まれるというべきである(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10349号同18年9月20日判決)。

したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

6 まとめ

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は、同項の規定に違反してされたものである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項により、無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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