結論テキスト
登録第6603435号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024890075 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理 由
本件登録第6603435号商標(以下「本件商標」という。)は、「REZERO」の文字を標準文字で表してなり、令和4年5月19日に登録出願され、第28類「卓上用ゲーム,セットおもちゃ,運動用具,遊戯用器具,家庭用テレビゲーム機,釣り具,カードゲーム用具,トレーディングカードゲーム用具,おもちゃ,ゲーム用トレーディングカード,盤ゲーム,電気通信機能が搭載された携帯可能なゲーム用具及びおもちゃ,ゲーム用具」を指定商品として、同年8月16日に登録査定、同月19日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を審判請求書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第28号証(枝番号を含む。)を提出した。
以下、証拠の記載に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように簡略して表記し、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略して記載する。
請求人は、N氏による人気ライトノベル等のシリーズ作品である引用タイトルの作品(以下「本作品」という。)の出版権・商品化権・知的財産権等を管理している。
本作品は、ライトノベルの読者間において人気を博し、その結果、アニメや映画へのメディアミックスにとどまらず、ゲーム、パチスロ、フィギュア、コラボイベント等、本作品をベースにした様々な分野への商品展開や事業が行われている。
このようにシリーズ化されている本作品の出版及び様々な分野における商品化等により、本作品の引用タイトルは需要者間に広く知られたタイトルである。
さらに、引用タイトルは、著者及び請求人の公式な略称として「リゼロ」が用いられており、正式タイトルのロゴの表記において「Re:ゼロ」部分が大きく表示されていることから、「Re:ゼロ」と略されて紹介される場合も多々ある。
したがって、本作品を認識している需要者にとって、引用略称についても、広く認識されているものであると言える。
本件商標は、請求人の本作品に係る11号引用商標や引用略称と類似性が極めて高く、その指定商品「卓上用ゲーム」等のおもちゃ関係の商品に使用された場合には、需要者間に出所の混同を生じさせるおそれのある商標であり、請求人の利益が著しく阻害されるおそれがある。
したがって、請求人は、本件無効審判請求をすることについて利害関係を有する者である。
(1)理由1(商標法第4条第1項第11号)について
本件商標は、11号引用商標と類似する商標であって、11号引用商標に係る指定商品・役務と同一又は類似の商品・役務について使用するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)理由2(商標法第4条第1項第15号)について
請求人は、長年、ライトノベル等のシリーズ作品及びそこから商品化された商品等のタイトルとして引用タイトルを使用しており、引用タイトルは需要者間に広く認識されているとともに、また、その略称である「Re:ゼロ」や「リゼロ」等も使用しており、引用略称も需要者間に広く認識されている(甲2の2の1・3)。引用略称は、本件商標と極めて類似性が高く、その指定商品「卓上用ゲーム」等に使用された場合には、需要者間に出所の混同を生じさせるおそれのある商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
なお、本作品の概要については「Wikipeda」にまとまっている(甲2の3の1・2)。
(3)理由3(商標法第4条第1項第19号)について
本件商標は請求人の11号引用商標及び引用略称と類似し、請求人の引用タイトル及び引用略称は、娯楽等の分野において周知・著名である。本件商標は、明らかに請求人の引用タイトルや引用略称を意識しており、商標権者が、そのことを認識していなかったとは考えられない。
そして、請求人が取得していなかった引用略称とほぼ同一視できる本件商標は、請求人の事業にフリーライドする意図がある、あるいは、請求人が使用している引用タイトルや引用略称の出所表示機能を希釈化させる意図があるものである。
すなわち本件商標は「不正の目的」を持って出願された商標であると言えるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(1)ライトノベル等のシリーズタイトルとしての使用について
ア 原作(小説・ライトノベル)について
N氏による本作品は、小説投稿サイト「小説家になろう」において2012年4月より連載が始まり、その後、請求人が同作品の書籍化を申し入れ、請求人のライトノベルレーベルの一つである「MF文庫」より2014年1月から刊行されている(甲3の1)。
本作品は主人公が「死に戻り」という能力を持ち、何度も死を経験しながら問題を解決していくという設定が斬新であり、本編のイラストはO氏が担当しているが、登場人物のイラストも人気を博するものであった。
このようなストーリーの斬新性や魅力的な登場人物の存在により、瞬く間に人気のライトノベルシリーズとなり、『このWeb小説がすごい!』全Web小説ベストランキングでは2位(甲10の1)、『このライトノベルがすごい!』2017年版では文庫部門第2位(甲10の2)、読売新聞社が主催し外務省・経済産業省が後援する『SUGOI JAPAN Award 2017』ではアニメ部門・ラノベ部門の2部門で1位を獲得した(甲10の3の1)。
シリーズ化されたライトノベルは、本件商標の登録までに2014年から30冊以上発行されており、その後も発行が継続されている。
このほか、本作品のスピンオフ作品や外伝も多数出版されている(甲3の2~5)。
また、外国語版も販売されており、そのタイトルは引用略称である「RE:ZERO」である(甲3の6)。
そして、2021年12月の時点で電子版を含めた累計発行部数は1100万部を超えている(甲20等)。なお、本件商標登録後の事情であるが、2023年3月時点で電子版を含めたシリーズ累計発行部数は1300万部を突破している。
イ マンガ化
本作品のライトノベルを原作とする漫画作品も出版されている(甲4の1~4)。
本作品の「第一章 王都の一日編」は請求人発行の『月刊コミックアライブ』にて2014年8月号から2015年4月号まで連載された。「第二章 屋敷の一週間編」は、スクウェア・エニックスが発行する『月刊ビッグガンガン』にて2014年12月号から連載し、2017年1月号で本編は最終回となった。その後2月号に特別編が掲載され、5月号から11月号まで短編シリーズが連載された。その後、「第三章 Truth of Zero」「第四章 聖域と強欲の魔女」は、第一章と同じく請求人発行の『月刊コミックアライブ』にて2015年7月号から連載されている。
また、これら連載されたストーリーはコミックス化されており、本件商標の登録日までに合計27巻発行されている。
このほか、「剣鬼恋歌~Re:ゼロから始める異世界生活 真銘譚~」、「Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆」といったスピンオフ作品も連載され、またコミックス化されている(甲4の5~6)。またアンソロジーコミック(短編集)も発売されている(甲4の7)。
また、原作のイラストレータによるO氏による「Re:ゼロから始める異世界生活」(甲4の8)のイラスト集も発売されている。
ウ アニメ化・映像化
2016年4月4日から9月19日まで、第1期がテレビ東京ほかにて放送され(甲2の3の2、甲5の1・2等)、その続編として第2期『Re:ゼロから始める異世界生活 2nd season』がAT-Xほかにて、前半クールが2020年7月8日から9月30日まで、後半クールが翌2021年1月6日から3月24日までそれぞれ放送された。また、2018年10月6日にはOVA(オリジナルビデオアニメーション)作品として、『Re:ゼロから始める異世界生活 Memory Snow』が、2019年11月8日にはOVA『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆』がそれぞれ劇場上映された(甲5の3・4)。
なお、登録後の事情であるが、これらのアニメ作品はいずれも好評であったことから、2024年10月から第3期のアニメ放送が始まっている。
さらに、アニメ作品を最初に見て原作のライトノベルのファンとなった需要者層も相当数存在する。例えば、「アニメでハマり原作読みした。」「アニメがきっかけで読み始めましたが面白かったです!」のような記載も多数存在している(甲10の2)。
したがって、原作・マンガ・アニメ作品が相互にミックスされ、相乗効果をもたらし、本件作品の周知・著名性を向上させていることは疑いない。
エ 小括
以上より、引用タイトルは永年にわたって複数種類の媒体(ライトノベル・マンガ・アニメ作品)においてシリーズ作品のタイトルとして使用されていることがわかる。このような複数種類の媒体に展開され、かつ、永年にわたってシリーズ化されている事実は、本作品が広く需要者に受け入れられているからに他ならず、人気ライトノベル作品として上位に挙げられ、また動画配信や登場キャラクタなども定期的に人気ランキング上位に入っていることもその証左である。
したがって、引用タイトルは、需要者間に広く知られたタイトルであることは明白である。
なお、個々の著作物に使用されるタイトルが商標の使用となるかについては議論の余地があるが、シリーズ化された一連の著作物を指すものとして使用されている場合は商標として認識される場合もある。この点は、過去の特許庁の審決においても同様の判断が多数なされている(甲23)。
したがって、このような一連のシリーズ作品の作品群を総称して「Re:ゼロから始める異世界生活」が一つの商標としても機能している場合があることを付言する。
(2)ゲーム化等の商品化及び他業種とのコラボレーションについて
一般にこのような人気のライトノベルやマンガの作品は、作品の世界観を再現してゲーム化されたり、登場人物がおもちゃ化されたりといった商品化されることが多く、他社の商品・役務の販売促進も兼ねたコラボレーション企画も頻繁に行われており、本作品も同様に多数の商品化やコラボレーションが行われている。
ア ゲームソフトウェアやゲームアプリについて
様々なゲームのタイトルに引用タイトルが使用されている(甲6)。
イ カードゲーム・ボードゲーム・おもちゃ・リアル体感ゲームについて
トレーディングカードゲームではブシロードから発売されている「ヴァイスシュヴァルツ」にも2017~2024年、継続して参加をしていた(甲7の1)。また、その関連でトレーディングカードを収納するケースなども2021年10月には販売されている(甲7の2)。
また、ボードゲームでは、「TRicK GEAR -Re:ゼロから始まる異世界生活-」が2021年2月に発売された(甲7の3)。
リアル体感ゲームとして、「Re:ゼロから始める異世界生活 謎解きゲーム エミリアの徽章を取り戻せ!」(2016年6月)、「Re:ゼロから始める異世界生活 謎解きゲーム 迷いの街の摩詞不思議」(2019年10月)、「Re:ゼロから始める異世界生活 謎ファイル」(2019年9月)が開催されている(甲7の4)。
さらに、本作品のキャラクタヘの根強いファンが多数存在していることは上述したとおりだが、これに伴い各種フィギュアもこれまで多数販売されている(甲7の5)。
また、需要者の年代層が幅広いことを示すものとして、同作品を題材としたパチンコ・パチスロも2019年から継続的に販売されており(甲7の6)、また多数のパチンコ・パチスロ雑誌で取り上げられている。
そしてこれらにおいてはいずれも引用タイトルが使用されている。
ウ 他のゲームとのコラボレーションについて
また、現在のゲームコンテンツにおいては、他のゲーム作品等とコラボレーションしてキャラクタやアイテムだけが参加することも頻繁にある。
本作品も他のゲームコンテンツに参加しており、他ゲームには必ず引用タイトルのキャラクタやアイテムであることが明示されているから、本作品を知らない需要者が存在するとしても、上記のゲームの需要者に引用タイトルが認知されることになる。
そして、他のゲームコンテンツの中には、幅広い需要者に受け入れられている「ぷよぷよ」シリーズや「モンスターストライク」シリーズなどもあり、多くの需要者が本作品及び引用タイトルの存在を認識できる状態にあることは疑いがない。
エ 異業種とのコラボレーションについて
このほか、飲食店、食品広告、交通事業者、テーマパークとコラボレーションを行い、他者の商品・役務の販売促進も担っているとともに、本件品の認知度向上に努めている。
このように娯楽施設から鉄道会社、飲食店と様々な分野の事業で本作品とのコラボレーションが実現されていることから、ライトノベル等に興味がない需要者にとっても、引用タイトルの存在が認知されることは明らかである。
オ 小括
以上のとおり、様々な分野(その中でもとりわけゲーム等の娯楽関連の商品・役務)において、本作品の商品化等が行われていることから、引用タイトルの露出は極めて大きいと評価できる。
したがって、引用タイトルは、ライトノベル等に興味がない需要者にとっても認知される状況にあり、また、少なくともゲーム等の娯楽関連の商品・役務の需要者間において極めて著名なタイトルであるといえる。
(3)雑誌・新聞記事等での紹介について
本作品及び引用タイトルは娯楽関連を主題とする雑誌等に頻繁に掲載されており、これも引用タイトルの周知・著名性獲得に寄与している。
紹介される雑誌記事には多様な情報や立証趣旨が含まれているため、請求人により雑誌記事の目録を作成している(甲11)。
アニメ雑誌「Newtype」(甲12)、「アニメージュ」(甲13)、「アニメディア」(甲14)、「メガミマガジン」(甲15)、ゲーム雑誌「ファミ通」(甲16)、パチスロ雑誌「パチスロ攻略マガジン」(甲17)、カードゲーム雑誌「月刊ブシロード」など(甲18)の記事には、アニメ放送の情報やランキング情報などが多数掲載されており、本作品及び引用タイトルの周知・著名性に寄与しているといえる。
(4)日本経済新聞の記事等
本作品は単なる一作品ではなく、コンテンツ産業大手の請求人の経営にも影響を与えるほどのものとなっており、請求人の業績を示す際に、本作品に関連する収益が大きく関係している事実がうかがい知れ、その収益が請求人ほどの上場企業の事業に大きな影響を与えるほどのものであることがわかる(甲19の8・11・13・16・17)。
(5)各種のランキング等について
本作品の原作は、『このWeb小説がすごい!』全Web小説ベストランキングでは2位、『このライトノベルがすごい!』2017年版では文庫部門第2位、『SUGOI JAPAN Award 2017』ではアニメ部門・ラノベ部門の2部門で1位を獲得している。
読売新聞社が主催し、外務省や経済産業省が後援となっている『SUGOI JAPAN Award 2017』ではアニメ部門・ラノベ部門の2部門で1位を獲得したことにより、読売新聞に全面広告も出している(甲10の3の2)。
また、公開された映画もランキングに入ることがあり、例えば、2018年10月6日にはOVA(オリジナルビデオアニメーション)作品として、『Re:ゼロから始める異世界生活 Memory Snow』が、2019年11月8日にはOVA『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆』がそれぞれ劇場上映された事実は上述したとおりであるが、前者は公開時期に第8位になっており、後者は第6位にランキングされている(ともに日経MJ調べ。甲19の3・5)。
また、日経エンタテインメントにおける2021年1月2日~2021年12月31日までの動画配信サービスのコンテンツ別ランキング(25歳以下)には第16位にランキングされている(甲19の19)。上位は「呪術廻戦」「鬼滅の刃」等、超著名タイトルが並ぶが、17位にも「クレヨンしんちゃん」、23位に「ジョジョの奇妙な冒険」などが並んでいることを考えれば16位という順位は広く若年層に本作品が受け入れられていることの証左である。
また、国内最大級のアニメ見放題サービス「dアニメストア」でも、本作品はたびたびランキングに入っており(甲21)、例えば、2016年春のアンケートによれば、「今期でもう一度最初から見たいアニメは?」をはじめ、軒並み上位にランクインされている。2020年冬のアニメ人気投票では、2位とダブルスコアの得票を得て、総合ランキングトップを獲得している。この「dアニメストア」のアンケートについて、「理想の兄」として国民的に認知のある「鬼滅の刃」の主人公である「竃門炭治郎」が入っている(甲21の2)ことからも、他のアンケートにおいても、幅広いアニメが存在する中において、本作品が選ばれているという事実がわかる。
(6)「リゼロ」「Re:ゼロ」等の略称について
本作品は、極めて周知著名なシリーズ作品であって、また同時に引用タイトルも広く需要者に認識されていると言える。
そして、この引用タイトルは全体として17文字という長いタイトルであることや正式ロゴにおいては上段の「Re:ゼロ」が下段の「から始まる異世界生活」のほぼ2倍の大きさで大きく表示されていることから、「リゼロ」や「Re:ゼロ」の略称を持って認知されているという実情がある。
実際に公式でも「リゼロ」を略称としており(甲2の3の1。その他、請求人によるプレスリリースの表示参照)、公式のツイッターのアカウントも「rezero」となっている(甲2の2の2)。また、著者自身も「リゼロ」と称している(甲2の2の3。その他、著者のインタビュー記事参照)。
このような実情もあって、プレスリリースや雑誌記事において紹介されるときも正式な作品名でなく「リゼロ」又は「Re:ゼロ」の表記で同作品を指称している場合も多数ある。
なお、これまでの主張及び証拠で示してきたプレスリリース等以外にも、「リゼロ」「Re:ゼロ」との表記でプレスリリースがある(甲22の1~24)。
また、海外版のタイトル(甲3の6)もまた「RE:ZERO」であり、日本のアニメをよく知る需要者や日本に在住する外国人にとっても「RE:ZERO」で認知されている(甲3の6)。
以上より、「Re:ゼロから始める異世界生活」のシリーズ作品は需要者間に広く認識されている以上、それと同様に引用略称も広く需要者に認識されているというべきである。
すなわち、引用略称も請求人の事業を示す周知・著名な略称ということが言える。
(7)引用タイトル等の著名性についてのまとめ
以上のとおり、本作品に使用されている引用タイトルはライトノベル等のシリーズ作品を示すもので極めて著名である。
そして、本作品をベースにしたゲーム、パチスロ、フィギュア、コラボイベント等、多種多様な事業においても広く使用されている。
このようにシリーズ化されている本作品の出版及び様々な分野における商品化等により、引用タイトルは需要者間に広く知られているものである。
同時に、引用タイトルの略称である引用略称も、需要者にとって広く知られている。
(1)商標法第4条第1項第11号の判断基準について
一般的な商標の類否については、「しょうざん事件」の最高裁判例に明確な基準が示され、結合商標の判断基準については「つつみのおひなっこや事件」の最高裁判例において明確な基準が示されており、商標の類否は、商標の有する外観・称呼・観念の全体観察により判断し、可能な限り取引実情を考慮して判断されるが、商標の構成要素が強く支配的な印象を与えるものか否かについても商標の構成のみならず、取引の実情も踏まえて考察すべきであるということがいえる。
(2)本件商標の特定
本件商標から生ずる称呼は、ローマ字読みをすれば「レゼロ」となるが、本件商標に含まれる「ZERO」が英語の「ゼロ」であることは容易に認識できることから、むしろ全体として英語風に称呼する需要者の方が一的であるといえる。そして「RE」の部分は、「RETURN」「REPLY」等の用例より「リ」と発音するため、「REZERO」全体として「リゼロ」と称呼する。
したがって、本件商標から第一に生ずる自然な称呼は「リゼロ」であり、「REZERO」の文字は辞書等に掲載されている語ではなく、特定の観念は生じないが、「REZERO」の表記及び「リゼロ」の称呼から、著名なシリーズ作品及びそれから商品化された「Re:ゼロから始める異世界生活」を想起する。
(3)11号引用商標の特定
11号引用商標は、上段に「Re:ゼロ」が下段の「から始める異世界生活」が併記されており、上段の「Re:ゼロ」の部分は下段の文字部分よりもほぼ2倍の大きさで表示されている。
このように複数の要素から構成される結合商標について一部分だけ要部を抽出することの可否については、「Re:ゼロ」の部分が強く支配的な印象を与える場合には許されることになるが、その判断基準は、商標の構成や取引実情を考慮して行うことになる。
ここでいう取引の実情については、他人の商標と出所の混同の生ずるおそれがある商標の登録を末然に防止するのが商標法第4条第1項第11号の趣旨であるから、11号引用商標の周知・著名の程度を考慮することも含まれるといえ、特許庁における商標審査基準においても、結合商標の分離判断において11号引用商標の著名性を考慮することは許される趣旨の基準が設けられている。
そうとすると、11号引用商標を構成する「Re:ゼロ」の部分が他の部分に比して大きく表示されていることに加え、11号引用商標の略称が「リゼロ」として本件指定商品の需要者層に広く認識されている実情からすれば、11号引用商標からは「Re:ゼロ」の部分が強く支配的な印象を与えるため、この部分を分離して商標の類否を判断することは許されるというべきである。
そうとすると、11号引用商標を構成する「Re:ゼロ」の部分からは、「リゼロ」の称呼が生ずるというべきであり、11号引用商標からは著名なシリーズ作品の「Re:ゼロから始める異世界生活」を想起する。
(4)指定商品の類否について
11号引用商標の指定商品は本件商標の指定商品を包含しているから、本件商品の指定商品と11号引用商標の指定商品は同一又は類似する。
(5)取引の実情
一般に玩具類は、玩具店や家電量販店などで販売されており、これらの商品の需要者の多くは、特別な専門的知識を有しない一般の消費者であるから、商品購入時に際して払われる注意力は高いものではない。とりわけ、商品によっては、注意力が十分備わっていない未成年が購入することもあるし、子どもから口頭で「●●のおもちゃを買ってきて欲しい」とお願いされた商品知識が全くない親が購入する場合もあるという実情もある。
(6)類否判断について
以上を踏まえて、本件商標と11号引用商標を対比する。
称呼において、本件商標から生ずる称呼「リゼロ」と11号引用商標の「Re:ゼロ」の部分から生ずる称呼「リゼロ」は同一であり、観念においても11号引用商標からは著名なシリーズ作品の「Re:ゼロから始める異世界生活」を想起する。
したがって、外観においては類似するものではないとしても、11号引用商標と同一又は類似する称呼・観念が生ずる本件商標が、需要者がそれほど高い注意力を払わない商品「おもちゃ」等に使用された場合、11号引用商標と出所の混同が生ずるおそれがあり、両者は類似するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(1)商標法第4条第1項第15号の判断基準について
「混同を生ずるおそれ」の有無の判断基準については、「レールデュタン事件」判決において示されている。
(2)他人の表示について
他人、すなわち請求人の表示は11号引用商標と同じ態様の引用タイトルのロゴ又は引用略称である。
なお、商品名として「リゼロ」や「Re:ゼロ」を使用している例はほとんどないが、作品群や商品群を紹介するウェブサイトのドメインやハッシュタグ等においては「リゼロ」や「rezero」等が使用されており、商標としても機能している場合がある。
(3)類似性の程度
本件商標と11号引用商標と同じ態様の引用タイトルのロゴとは称呼・観念において類似するものであるから類似性の程度は高いといえ、本件商標と引用略称についても同様に称呼・観念において類似するものであるから類似性の程度は極めて高いといえる。
(4)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度
請求人の引用タイトル及び引用略称の周知著名性は極めて高く、引用タイトル及び引用略称は原作者の創造した造語であり、独創性は極めて高い。
(5)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度、商品等の取引者及び需要者の共通性
引用作品や引用作品から商品化された分野は主として娯楽分野であって、本件商標の指定商品「卓上ゲーム」等と同一又は類似である。また、商品が同一又は類似するものであることから取引者・需要者は完全に共通である。
(6)その他取引の実情、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力
一般に玩具類の需要者は、玩具店などで販売されており、これらの商品の需要者の多くは、特別な専門的知識を有するわけではない一般の消贅者であるから、商品購入時に際して払われる注意力は高いものではないと言える。
なお、本件商標の出願経過における早期審査の事情説明書や甲第25号証の1及び甲第25号証の2によれば、本件商標は主にトレーディングカードのカードケースに使用されている実情があるが、引用タイトルを使用したトレーディングカードやカード用ケースが販売されている事実があることは上記したとおりであり、トレーディングカードケースもトレーディングカードと同じ店舗内で販売されていることが多いという実情がある(甲25の3)。そればかりか玩具を総合的に扱うトイザラスなどでもトレーディングカードのカードケースを扱っている実情がある(甲25の4)。
(7)総合的な判断
以上より、最高裁の判断基準に照らせば、本件商標がその指定商品「卓上用ゲーム」等のおもちゃ関係の商品に使用された場合、商標の類似性の程度及び同じ娯楽関係の商品に多数使用されている引用タイトルや引用略称の周知・著名性から、その商品が請求人や請求人の関連業者の事業と関わっている者から製造販売されているものと出所の混同が生ずるおそれがあることは必至である。
また、近年のライトノベル等は引用タイトルが長いものが多く、その一例を示すものとして請求人が出願しているライトノベル等のタイトルに関する商標の一覧を提出する(甲26)。そして、このようなタイトルは通常略称で呼ばれており、例えば「この素晴らしい世界に祝福を」、(甲26)であれば「このすば」(甲27の8)、「真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました」であれば、「真の仲間」(甲27の11)などがある。
このような著名な作品タイトルの略称を自由に登録させることを認めることとなると、第三者のフリーライドを容易に認めることになり、そのような状態を防止することこそが商標法第4条第1項第15号の趣旨であり、その趣旨に鑑みれば、本件商標は同号に該当し、その登録は無効にされるべきものである。
なお、正式な商標の略称も需要者に広く認識されている場合には、同略称と同一又は類似する商標が商標法第4条第1項第15号に該当すると判断された事例は過去に存在する(甲28の1・2)。
本件商標と引用タイトル及び引用略称とは同一又は類似し、請求人の引用タイトル及び引用略称は、娯楽等の分野において周知・著名である。
商標権者は、明らかに請求人のシリーズタイトルの略称を認識しているはずであり、全く意識せずに本件商標を採択したとは考えられない。
そして、請求人が取得していなかったシリーズタイトルの略称とほぼ同一視できる本件商標は、請求人の事業にフリーライドする意図がある、あるいは、請求人が使用している引用タイトルや引用略称の出所表示機能を希釈化させる意図があるものである。実際、商標権者は、販売サイトのテキストなどでは「REZERO(レゼロ)」などのように、引用略称とは異なる読み方をするかのようにカタカナを使用しつつ、実際の商品や商品プロモーション(甲25の1・2)などには一切カタカナを使用せずに、あたかも請求人の引用略称とのコラボ商品かのように見せているから、本件商標は「不正の目的」を持って出願された商標であると言える。
商標審査基準「十七、4.」によれば、商標法第4条第1項第19号は、「周知度、商標の同一又は類似性の程度、不正の目的のそれぞれの判断要素を総合的に勘案して判断する。」となっており、必ずしも商標同士の類否を比較する同項第10号や同項第11号と同じ判断になるわけではない。引用タイトル及び引用略称の著名性、本件商標と引用タイトル及び引用略称の類似性の程度、商標権者のフリーライド・希釈化の意図などを考慮すれば、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
上記第3の請求人の主張に対して、被請求人は何ら答弁していない。
請求人が本件審判を請求することについて利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判の請求について利害関係を有するものと認めるので、以下、本案に入って審理する。
請求人の主張及び提出証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)請求人について
請求人は、人気ライトノベル等のシリーズ作品である「Re:ゼロから始める異世界生活」(本作品)の出版権・商品化権・知的財産権等を管理している。
(2)引用タイトル及び引用略称の周知性について
ア 引用タイトルの周知性について
(ア)本作品について
本作品は、2012年4月に小説投稿サイトにおいて連載が開始されて以降、2014年1月に書籍の刊行、2014年からライトノベルを原作とする漫画作品の出版、2016年からアニメ化、2018年10月、2019年11月に劇場上映がされ、引用タイトルは、2014年から2024年にかけて、本作品のタイトルとして使用されている(甲2の3、甲3の1~4、甲4、甲5、甲20ほか)。
そして、本作品のライトノベルは、2014年から本件商標の登録時までに30冊以上発行され、2021年12月の時点で電子版を含めた累計発行部数は1,100万部を超え、本作品を原作とする漫画作品は、本件商標の登録時までに27巻発行された(請求人の主張、甲4の1の1~甲4の4の9、甲20ほか)。
(イ)本作品に係る商品化及びコラボレーション
本作品は、2016年から2024年にかけて、ゲームソフトウェア、カードゲーム、フィギュア、パチスロなどの分野における商品化、他ゲームや他業種とのコラボレーションなどが行われ(甲6、甲7の1~6、甲8、甲9)、本作品について、例えば、「2016年を代表する人気作「Re:ゼロから始める異世界生活」」(甲7の5の1)、「人気アニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」」(甲7の5の13)、「大人気TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』」(甲7の5の23)、(「大人気コンテンツ「Re:ゼロから始める異世界生活」とのタイアップパチンコ機・・・」(甲7の6の3)、「スマートフォン向けファンタジーRPG・・・が、大人気TVアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」とのコラボレーション企画を開催!」(甲8の18)、「大人気TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』とスイーツパラダイスのコラボカフェの開催・・・」(甲9の5)のように、人気作品として紹介されている。
(ウ)アニメ、ゲーム、パチスロ等の雑誌への掲載
本作品は、2016年ないし2021年に発行されたアニメ、ゲーム、パチスロ等の複数の分野の雑誌において、例えば、「人気アニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」」(甲12の5)、「小説やアニメで絶大な人気を誇る『Re:ゼロから始める異世界生活』」(甲16の6)、「大人気の「リゼロ」」(甲17の7)、「異世界を舞台にした人気アニメ」(甲18の1)のように人気作品として紹介されている。
(エ)新聞への掲載
本作品は、2017年ないし2022年に発行された新聞において、例えば、「大人気アニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」」(甲19の1)、「人気アニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」」(甲19の17)のように人気作品として紹介されている。
(オ)各種ランキング等
a ライトノベル分野でのランキング
本作品のライトノベルは、例えば、「このウェブ小説がすごい!ベスト30 2015年版」において2位(甲10の1)、「このライトノベルがすごい!2017」において第2位に位置付けられ、「SUGOI JAPAN Award 2017」において、アニメ部門とラノベ部門で2部門同時受賞している(甲10の3)。
b 映画分野でのランキング
本作品の映画は、2018年のランキングにおいて8位(甲19の3)、2019年のランキングにおいて第6位(甲19の5)に位置付けられている。
c 動画配信分野でのランキング
本作品は、2016年の動画配信TOP10において1位(甲12の6)、2020年の動画配信TOP10において2位(甲12の33)に位置付けられている。
d アニメ分野でのランキング
本作品は、2016年の人気作品TOP10において1位(甲12の6)、2017年の人気作品TOP10において2位(甲12の6)、2020年の人気作品TOP10において2位(甲12の31)に位置付けられている。
また、2016年の「今期でもう一度最初から見たいアニメは?」として1位(甲21の1)、2019年の総合ランキングとして1位(甲21の3)、2020年の総合ランキングとして1位(甲21の4)に位置付けられている。
e その他の分野でのランキング
本作品は、2019年のパチスロランキングにおいて、1位に位置付けられている(甲17の2)。
以上のとおり、本作品は、ライトノベル、映画、動画配信、アニメ分野及びパチスロのランキングにおいて人気ランキングの上位に位置付けられている。
イ 引用略称の周知性について
(ア)請求人の使用
請求人のウェブサイト又はプレスリリースにおいて、請求人は、例えば、「略称は「リゼロ」」(甲2の3の1)、「『Re:ゼロから始める異世界生活』(通称「リゼロ」)」(甲20の4)、「『Re:ゼロ』×『浮世絵』の異世界アート!」(甲22の6)、「『無職転生』×『リゼロ』書き下ろしコラボ小説も掲載!」(甲22の9)のように、引用略称を引用タイトルの略称として使用している。
また、請求人の公式サイトのURLとして「re-zero」、SNSのURLとして「Rezero」、「rezero」を使用している(甲2の3の1、甲9の11、甲12の21・28、甲22の17ほか)。
(イ)ゲーム関連や他業種での使用
ゲーム関連や他業種のウェブサイトにおいて、例えば、「渋スクフィギュアから発売中のリゼロ」(甲7の5の16)、「人気アニメ『Re:ゼロから始める異世界生活」(略称「リゼロ」)(甲7の5の30)、「人気TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』(公式略称「リゼロ」)」(甲7の5の36)、「Re:ゼロから始める異世界生活/(リゼロ)」(甲7の6の1)、「『オルガル2』×『リゼロ』コラボ・・・」(甲8の2)、「・・・「Re:ゼロ」コラボが開始。」(甲8の14)、「リゼロのキャラクターたち・・・」(甲8の25)、「『リゼロ』×ゴーゴーカレーのコラボ・・・」(甲9の1)、「「Re:ゼロ」がnicocafeとコラボレーション」(甲9の6)、「リゼロ公式スマホゲーム・・・」(甲9の14)、「『リゼロ』×富士急ハイランドコラボ・・・」(甲9の20)のように、引用略称が引用タイトルの略称として使用されている。
(ウ)アニメ、ゲーム、パチスロ等の雑誌での使用
アニメ、ゲーム、パチスロ等の分野の複数の雑誌において、例えば、アニメ雑誌「月刊ニュータイプ(2018年発行)」において、「「Re:ゼロ」ファン・・・」(甲12の22)、アニメ雑誌「アニメージュ(2020年発行)」において、「『リゼロ』公式スマホゲームに!」(甲13の13)、ゲーム雑誌「週刊ファミ通(2021年発行)」において、「『Re:ゼロから始める異世界生活』(以下、『リゼロ』)。」(甲16の5),パチスロ雑誌「パチスロ攻略マガジン(2019年発行)」において、「今回は大人気のパチスロ「リゼロ」・・・」(甲17の2)などのように、引用略称が、引用タイトルの略称として使用されている。
(エ)請求人商品の分野における取引の実情
請求人商品の分野においては、タイトルが長い作品が多く存在し、例えば、「この素晴らしい世界に祝福を」を「このすば」(甲27の8)、「真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフをすることにしました」を「真の仲間」などのように、当該タイトルが略称で呼ばれることが一般的となっている。
(3)判断
以上のとおり、本作品は、請求人商品の分野において、極めて多くの発行部数があり、ライトノベル分野及びラノベ部門の2部門において上位で同時受賞していることを踏まえれば、請求人商品の分野の需要者が引用タイトルを目にする機会は多いといえ、引用タイトルは、請求人商品の分野の需要者の間に高い認知度を得ていたといえる。
また、本作品は、ゲームソフトウェア、カードゲーム、フィギュア、パチスロなどの分野において、本作品に係る商品化や他ゲームや他業種とのコラボレーションが行われたことからすれば、請求人商品の分野の需要者にとどまらず、他ゲーム、フィギュア、他業種の需要者にとっても、引用タイトルを目にする機会は多いといえる。
さらに、アニメ、ゲーム、パチスロ等の分野の雑誌や新聞において、本作品が人気作品として紹介されていること、本作品は、ライトノベル、アニメ、映画、動画配信、パチスロ等の分野において、人気ランキングの上位に位置付けられていることからすれば、引用タイトルは、請求人商品の分野の需要者にとどまらず、アニメ、ゲーム、パチスロ等の需要者の間にも高い評価を得ていたといえる。
また、請求人及びゲーム関連や他業種のウェブサイト、アニメ、ゲーム、パチスロ等の分野の複数の雑誌、新聞等において、引用略称が引用タイトルの略称として使用されていたことからすれば、請求人商品の分野の需要者にとどまらず、他ゲーム、フィギュア、他業種の需要者にとっても、引用タイトルを目にする機会は多いといえ、請求人商品の分野において長いタイトルの作品が略称で呼ばれることが一般的となっていることも併せみれば、引用略称に接した需要者に引用タイトルを連想させる場合も少なくないといえる。
そうすると、引用略称は、引用タイトルと同様に、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示する引用タイトルの略称として、我が国の需要者の間に広く知られていたといえる。
(4)小括
以上からすると、引用タイトル及び引用略称は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く知られていたものと認められる。
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「REZERO」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、辞書等に載録のある成語でないことからすれば、特定の意味を有しない造語と理解されるものである。
そして、一般的に特定の意味を有しない欧文字の造語にあっては、我が国において親しまれた外国語である英語読み風又はローマ字読み風に称呼されるから、本件商標は、「リゼロ」又は「レゼロ」の称呼を生じる。
したがって、本件商標は、「リゼロ」又は「レゼロ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
(2)11号引用商標について
11号引用商標は、別掲のとおり、上段に、大きく「Re:ゼロ」の文字、中段に、極めて小さく「Re:Life is a different world from zero」の文字、下段に、上段の文字よりも小さく「から始める異世界生活」の文字を配した構成よりなるものである。
そして、上段及び下段の各文字は、文字の大きさはやや異なるものの、「Re:ゼロ」に続く「から始める異世界生活」の構成から見て、一つの熟語的な要素又は意味合いをもって、理解、把握されるとみるのが相当であるから、上段及び下段の各文字部分が一体のものとして、そこから生じる称呼及び観念をもって取引に当たるとみるのが相当である。
一方、中段の「Re:Life is a different world from zero」の文字部分は、極めて小さく、需要者が注意深く観察しなければ読み取ることが困難であるから、独立した出所識別標識としての機能を果たすとはいい難いものである。
そうとすると、11号引用商標は、上段の「Re:ゼロ」の文字部分及び下段の「から始める異世界生活」の文字部分が一体となって、独立した出所識別標識としての機能を果たす要部であるといえる。
また、11号引用商標から生じる「リゼロカラハジメルイセカイセイカツ」の称呼は、やや冗長であり、「Re:ゼロ」の文字部分に着目し、当該文字より「リゼロ」の称呼を生じる場合があるとみるのが相当である。
さらに、上記1のとおり、11号引用商標は、引用タイトルと同じ文字列からなるものであり、引用タイトルと同様に、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていたものといえるから、「(請求人に係るシリーズ作品としての)Re:ゼロから始める異世界生活」の観念を想起するものである。
そうすると、11号引用商標は、「リゼロカラハジメルイセカイセイカツ」又は「リゼロ」の称呼を生じ、「(請求人に係るシリーズ作品としての)Re:ゼロから始める異世界生活」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と11号引用商標の比較について
本件商標と11号引用商標は、それぞれ、上記(1)及び(2)のとおりの構成よりなるところ、本件商標と11号引用商標全体との比較においては、構成文字数、構成文字が明らかに異なるものであり、本件商標と11号引用商標との比較においては、「:から始める異世界生活」の文字の有無の差異により、外観上明確に区別し得るものである。
そして、本件商標から生じる「リゼロ」又は「レゼロ」の称呼と11号引用商標から生じる「リゼロカラハジメルイセカイセイカツ」又は「リゼロ」の称呼とは、「リゼロ」の称呼を共通にする場合があるとしても、その他の称呼における構成音数、構成音が明らかに異なるものであるから、明瞭に聴別し得るものである。
また、本件商標は、特定の観念を生じないのに対し、11号引用商標からは、「(請求人に係るシリーズ作品としての)Re:ゼロから始める異世界生活」の観念を生じるものであるから、観念において相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と11号引用商標とは、称呼において、その一部を共通にする場合があるとしても、外観及び観念が異なるものであるから、称呼、外観及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合すると、相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
(4)小活
上記(3)のとおり、本件商標と11号引用商標とは、非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(1)引用タイトル及び引用略称の周知性について
上記1のとおり、引用タイトル及び引用略称は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く知られていたと認められるものである。
(2)本件商標と引用タイトル及び引用略称の類似性の程度について
上記1の引用タイトル及び引用略称の著名性及び上記1(2)エの請求人商品の分野において長いタイトルの作品が略称で呼ばれることが一般的となっている取引の実情を踏まえれば、引用略称に接した需要者に引用タイトルを連想させる場合も少なくないものであり、本件商標を構成する「REZERO」の文字と、引用タイトル及び引用略称を構成する「Re:ゼロ」又は「リゼロ」の文字とは、いずれも「RE」「Re」又は「リ」と「ZERO」又は「ゼロ」の各文字を組み合わせた構成からなるものと理解し得るものであって、「Re:ゼロ」の文字との比較において、需要者の目に留まりやすい語頭の「RE(Re)」のつづりを共通にし、また、その構成文字に相応して生じる「リゼロ」の称呼も共通にする点において、構成や文字種が異なるとしても、両者は一定の類似性を有するといえる。
(3)引用タイトル及び引用略称の独創性について
引用タイトル及び引用略称の文字は、一般の辞書等に載録のない造語であるから、独創性は高いものである。
(4)本件商標の指定商品と請求人商品との関連性、需要者の共通性について
本件商標の指定商品であるゲームやおもちゃ等の商品と請求人商品であるライトノベル、マンガ、アニメ作品とは、いずれも娯楽用品であり、ライトノベル、マンガ、アニメ作品のゲーム化やその登場人物のフィギュアの商品化などが行われ、他ゲームとのコラボレーション等も一般的に行われていることからすれば、本件商標の指定商品と請求人商品とは、一定の関連性があるといえ、本件商標の指定商品と請求人商品の需要者は、幅広い年齢層の一般消費者であるから、これらの商品は、その需要者の範囲を共通にすることも多いものである。
(5)出所の混同のおそれについて
上記(1)ないし(4)のとおり、引用タイトル及び引用略称は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く知られていたものであり、本件商標と引用タイトル及び引用略称とは一定の類似性を有し、引用タイトル及び引用略称の独創性は高いこと、本件商標の指定商品と請求人商品とは一定の関連性があり、需要者の範囲を共通にすることが多いこと、請求人商品の分野における取引の実情を併せ考慮すれば、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者がこれをその指定商品に使用した場合、これに接する需要者に、引用タイトル及び引用略称を想起、連想させるものである。
(6)小活
以上を総合勘案すると、本件商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する需要者は、引用タイトル及び引用略称を連想又は想起し、その商品が請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生じるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
上記1のとおり、引用タイトル及び引用略称は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く知られたものであるとしても、請求人は、被請求人が不正の目的で本件商標を登録出願及び登録査定した旨を主張するのみであって、被請求人が不正の目的をもって、本件商標の登録出願を行ったことを客観的に証明し得る証拠の提出はない。
そして、上記3のとおり、本件商標と引用タイトル及び引用略称が一定の類似性を有することをもって、本件商標の登録出願に何らかの不正の目的があったと推し測ることはできない。
そうすると、本件商標は、引用タイトル及び引用略称の知名度や名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に該当しないとしても、同項第15号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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