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Trademark Appeal Case

旧国名と商品名の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025017258
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

理 由

1 手続の経緯

本願は、令和6年7月29日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和7年 2月25日付け:拒絶理由通知書

令和7年 5月15日 :意見書の提出

令和7年 8月19日付け:拒絶査定

令和7年10月30日 :審判請求書、手続補正書の提出

2 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第31類に属する願書記載の商品を指定商品として、登録出願されたものであり、その後、指定商品については、上記1の手続補正書により、第31類「千葉県南部地域産のあわ,千葉県南部地域産のあわを使用した飼料用穀物,未処理の千葉県南部地域産のあわの種子」に補正されたものである。

3 原査定の拒絶の理由(要旨)

原審において、「本願商標は、「安房の粟」の文字を毛筆書体で普通に用いられる方法で縦書きしてなるところ、その構成中、「安房」の文字は「千葉県南部の旧国。東海道15国の一,関八州の一。」の意味を有し、「の」は格助詞であり、「粟」の文字は「イネ科の一年生作物。五穀の一つ。」の意味を有する。そうしますと、本願商標をその指定商品に使用したとしても、これに接する取引者、需要者は、「千葉県南部地域産のあわ」、「千葉県南部地域産のあわを使用した飼料用穀物」、「未処理の千葉県南部地域産のあわの種子」ほどの意味合いを理解するにすぎず、本願商標は、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示したものにすぎないと言わざるを得ない。したがって、本願商標を前記意味合いの商品に使用するときは、商標法第3条第1項第3号に該当し、それ以外の「穀物,飼料用穀物,未処理の穀物種子」に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、拒絶したものである。

4 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号について

商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が、商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、指定商品又は指定役務との関係で、その商品の品質、その役務の質等その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品又は自他役務の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される。

そうすると、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、本件審決時において、本願商標がその指定商品又は指定役務との関係で、商品の品質、役務の質等その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合に、将来を含め、指定商品又は指定役務の取引者、需要者によって商品又は役務の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される(最高裁昭和53年(行ツ)第129号判決、平成26年(行ケ)第10056号判決、平成27年(行ケ)第10107号判決、平成27年(行ケ)第10232号判決参照)。

(2)商標法第3条第1項第3号該当性について

本願商標は、別掲1のとおり、「安房の粟」の文字を毛筆風の書体で縦書きしてなるところ、その構成中の「安房」の文字は「旧国名。718年(養老2)、上総より分割。今の千葉県の南部。房州。」を意味する「安房」の語と、「イネ科の一年生作物。五穀の一つ。」を意味する「粟」(いずれも出典は「広辞苑 第七版」株式会社岩波書店)の語を、助詞「の」で結合してなるものであると容易に理解できるものである。

そして、原審提示の情報に加えて、別掲2のとおり、本願の指定商品を含む食品業界において、「安房」の文字が、千葉県の南部地域の地域名を表す語であって、商品の産地表示として、広く一般に使用されているものであり、また、別掲3のとおり、同業界において、「旧国名+商品名」のように、旧国名がその地域で生産された商品の産地を表す語として一般に使用されていることからもすれば、本願商標構成中の「安房」の語は、「千葉県南部地域(安房地域)」で生産された商品、すなわち、商品の産地を表すものとして認識、把握されるといい得るものである。

そうすると、本願商標をその指定商品に使用する場合、それに接する取引者、需要者は、「千葉県南部地域(安房地域)産のあわ,千葉県南部地域(安房地域)産のあわを使用した飼料用穀物,未処理の千葉県南部地域(安房地域)産のあわの種子」であること、すなわち、商品の品質を表したものとして理解、認識するにとどまり、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないとみるのが相当である。

また、本願商標のように、構成文字を毛筆風の書体で表示することは、一般に使用されており、商品に標章等を使用する際に様々なデザイン化が行われている現状にあっては、殊更特殊な態様であるともいえないから、本願商標の構成態様は、普通に用いられる方法の域を脱しない方法で表示するものといえる。

したがって、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(3)請求人の主張について

ア 請求人は、「安房」は旧国名に基づく歴史的呼称であり、現行の行政区画としては存在せず、農産物の産地表示は行政名で行われるのが通常であって、原審提示のウェブサイトは、地域紹介や観光的、または情報発信・教育的文脈の一部として用いられたものであって、「安房」という語が単独で産地表示として機能している実例は確認されず、直ちに現行の特定産地を具体的に想起するとはいえず、むしろ歴史的・文化的背景や地域イメージを喚起させる語として理解するのが自然である旨主張している。

しかしながら、上記(2)のとおり、「安房」の文字は「今の千葉県の南部。房州。」を意味する語として一般の辞書に載録されている語であり、また、本願の指定商品を含む食品業界において、「安房」の語が、旧国名であるとはいえ、現在においても千葉県の南部地域の地域名を表す語であって、商品の産地表示として、広く一般に使用されており、さらに、同業界において、旧国名がその地域で生産された商品の産地を表す語として一般に使用されていることも考慮すれば、該「安房」の語は、「千葉県南部地域(安房地域)」で生産された商品、すなわち、商品の産地を表示したものと認識するにとどまるというのが相当である。

イ 請求人は、本願商標の外観は、縦書きレイアウトと筆致の抑揚を効果的に組み合わせることで、文字情報よりも造形的印象が先行するという点で質的に異なることから、「特殊な態様」に該当する旨主張している。

しかしながら、上記(2)のとおり、商品に標章等を使用する際に様々なデザイン化が行われている現状においては、本願商標の書体や構成等を考慮したとしても、本願商標は、殊更特殊な態様からなるものと認めるべき特段の事情は見当たらない。

ウ 請求人は、「安房の粟」を地域おこし協力隊の活動の一環として開発し、竹筒容器や地域史料を組み合わせて販売しており、販売方法・パッケージ・報道記事の内容に照らすと、本願商標は単なる産地表示を超え、地域の歴史・文化背景を反映したブランドとして市場で把握されており、本願商標が実際にブランド名として使用されている事実は、需要者が本願を単なる品質表示としてではなく出所表示として認識していることを客観的に裏付ける資料である旨主張している。

しかしながら、上記(1)のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、審決時において、本願商標が、その指定商品との関係で、その商品の品質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標の取引者、需要者によって、本願商標がその指定商品に使用された場合に、将来を含め、商品の品質を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解されるところ、請求人が本願商標を使用しているとしても、上記(2)のとおり、本願商標は、その構成文字から生じる意味と、原審並びに別掲2及び別掲3の事実に照らせば、これに接する取引者、需要者をして、請求人の取扱いに係る商品の出所を表すものとして認識されるものではなく、むしろ、商品の品質を表すものとして認識されるとみるのが相当である。

エ したがって、請求人の上記アないしウの主張は、いずれも採用することができない。

(4)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3項に該当するものであるから、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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