結論テキスト
登録第5749113号商標の指定商品中、第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025300362 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理 由
本件登録第5749113号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「エスカ」の片仮名と「ESCA」の欧文字を2段に書してなるものであり、平成26年6月11日に登録出願され、第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。),医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,防虫紙」のほか、第3類、第16類、第29類ないし第34類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同27年3月13日に設定登録され、その後、商標登録の取消し審判により、指定商品中、第5類「防虫紙」及び第16類「紙類」について取り消すべき旨の審決がされ、第5類「防虫紙」については令和3年5月11日に、第16類「紙類」については同2年8月27日にその確定審決の登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和7年5月14日である。
なお、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である令和4年5月14日から同7年5月13日までを、以下「要証期間」という。
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書、令和7年7月22日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年10月15日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)において、その理由を要旨次のように述べ、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
なお、以下、証拠の表示については、甲(乙)第1号証を「甲(乙)1」のように省略して表示する場合がある。
本件商標は、その指定商品中、第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(1)被請求人が提出した証拠によっては要証期間内の使用が本件商標の証明できないこと
被請求人が答弁書に添付した乙1ないし乙5のいずれにも、明確な日付の記載がなく、本件商標が要証期間内に使用されたとは確認できない。
また、被請求人は、乙1(令和7年8月7日付け手続補正書により乙1の差し替えとして提出されたもの。以下同じ。)を提出しており、2葉目の右下に、「掲載ページ2025年4月」という記載がうかがえるものの、日についての記載がなく、乙1により、本件商標が、薬剤について、本審判の請求の登録の日より前から使用されたのか判別ができない。
さらに、乙1には、それを構成する全ページの四隅に逆L字型の二重線が、その中央の上下に縦横のページ中央で交わる直線が表示されている。これら各線は、各ページの内容の位置をガイドする線であると考えられる。被請求人は、乙1を被請求人の商業施設のパンフレットと称しているが、需要者に頒布するパンフレットに、このようなガイド線を付したまま頒布することは考えられない。よって、乙1は、パンフレットの原稿と考えるのが妥当であり、紙などの物理的な形態においても、電子的な形態においても、乙1が要証期間内に、需要者に頒布された実物のパンフレットであると証明することは認められない。そのため、乙1に、例え「掲載ページ2025年4月」という記載がうかがえるとして、本件商標が要証期間内に、「第5類 薬剤(農薬に当たるものを除く。)」について使用されたということもできない。
したがって、乙各号証のいずれも、要証期間内に日本国内において商標権者等のいずれかが本審判請求に係る「第5類 薬剤(農薬に当たるものを除く。)」について本件商標を使用したことを証明していない。
(2)被請求人が提出した証拠は、「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」についての本件商標の使用を証明できないこと
仮に、乙1等が要証期間内に属する本件商標の使用例に該当したとしても、以下に示すとおり、乙号証のいずれも、本件商標が「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」について商標として使用されたことを証明できていない。
ア 被請求人の主張の要旨
被請求人(本件商標の商標権者。以下同じ。)は、「エスカ」、「ESCA」という商業施設において「薬剤」が販売されており、被請求人は、上記名称を冠した商業施設における商品の販売促進に寄与することを目的とした広告宣伝活動全般を行っているので、被請求人は指定商品の販売について、本件商標を使用している旨主張している。
イ 請求人の具体的反論
しかし、被請求人が主張する本件商標の使用は、被審判請求の対象である「薬剤」についての本件商標の使用には該当しないと考える。
以下に、乙各号証について、個別に主張する。
(ア)使用態様が本件商標と同一でない点について
乙1は、被請求人の商業施設のパンフレットであるところ、たしかに、多くのページに、「ESCA」や「エスカ」が表示されているが、本件商標が登録された態様で、つまり上段「エスカ」と下段「ESCA」が接近した態様での使用例はなく、これらが二段書きで表された本件商標そのものの使用に該当しない。どちらかの段の表示のみを使用する場合、社会通念上、本件商標と同一の表示が使用されていると判断できるのは、上段からみても、下段からみても、称呼及び観念上、相互に一義に定まる場合であるところ(甲2)、称呼「エスカ」からは、本件商標に含まれ、魚の誘引突起の一部を指す「ESCA」のみならず、氷河の下を流れる川の堆積物が作る筋状の地形を表す「ESKER」も生じることから(甲3)、「エスカ」のみの使用、もしくは「ESCA」のみの使用は、二段書きからなる本件商標の社会通念上同一の商標の使用に該当しない。
(イ)各乙号証における「薬剤」との非関連について
乙1は、被請求人の商業施設のパンフレットであり、どのような店舗が出店しているかを紹介するため、入居店舗の名称、各店舗の紹介文章、場合によってはその店舗の写真が掲載されている。乙1の2葉目は、商業施設ESCAのフロアマップ(FLOOR MAP)であり、ページの下半分には、入居店舗の名称が一覧されている。また、被請求人が主張する、入居店舗に薬局、ドラッグストアが存在する点については、乙1のパンフレット内のページ番号29の下段に、「27 マツモトキヨシ」、「55 おひさま薬局」の記載があるが、「27 マツモトキヨシ」の欄の写真に映される吊り看板に、「薬」の文字が見られる以外は、取消対象の指定商品たる「薬剤」についての表示はなく、乙1は、「エスカ」や「ESCA」なる商業施設に入居している個々の店舗を紹介するにすぎない。つまり、乙1には、指定商品「薬剤」を直接的かつ具体的商品として、本件商標を使用していることを示す表示は一切見当たらない。
乙2は、被請求人の商業施設のウェブサイトの写しであるところ、「薬剤」なる直接的表示は見当たらず、乙2の6葉目中央に、「薬 マツモトキヨシ」なる店舗の入り口と思われる写真と、その右横に、「薬や日用品を旅先でも」なる表示がうかがえる。しかし、薬剤との関係で直接的に使用されている識別標識は、「マツモトキヨシ」であり、審判の対象の本件商標ではない。また、横長のバナーには、「あらゆる用事がエスカで完結!」なる表示がされているものの、「エスカ」の表示は、商業施設の名称を指しているのであり、商品たる薬(薬剤)の名称として使用されていない。乙2の左上に表示された「エスカ」は、その商業施設に、マツモトキヨシなど、どのような店舗が入居しているかを紹介するために、店舗スペースの賃貸・管理を生業とする事業の名称として、「エスカ」を使用しているのであって、薬剤についての、商標法第2条第3項第1号、同項第2号及び同項第8号に該当する商標の使用行為のいずれにも該当しない。したがって、乙2も、本件商標が「薬剤」について使用されたことを証明していない。
乙3の1葉目は、被請求人の商業施設内にある店舗「マツモトキヨシ」を紹介するウェブサイトの写しであるところ、店舗である「マツモトキヨシ」の入り口の吊り看板に、「薬 マツモトキヨシ」と表示されている。「マツモトキヨシ」が、商標法上の役務、つまり、薬剤の小売業の名称として使用されていることはうかがえるが、本件商標の「エスカ」は「薬剤」の名称として使用されているということはできない。なぜなら、被請求人が主張するとおり、「エスカ」、「ESCA」は、名古屋駅地下街の多種多様な店舗が入居する商業施設の名称であり(乙1)、乙3の左上に表示された「エスカ」は、その商業施設に、マツモトキヨシなど、どのような店舗が入居しているかを紹介するために、商業施設の名称として表示されているからである。仮に薬剤がマツモトキヨシで販売されているのであれば、薬剤の小売業の名称、店舗名称として、「マツモトキヨシ」が使用されているのであり、「エスカ」はその店舗に店舗スペースを賃貸している商業施設名として使用されているのであって、「エスカ」は一切、薬剤についての名称として使用されているとはいえない。
また、乙3の2葉目は、「おひさま薬局」を紹介するウェブサイトの写しであるところ、「お買い物の間にお薬ご用意できます」と中央に太字で記載があり、薬局であるから、第44類の「調剤」を生業しており、そのために「お薬ご用意できます」と述べており、「調剤」なる役務についての直接的な商標や店舗名は、「おひさま薬局」であり、取消請求対象の本件商標ではない。このページ右上に配置された写真の中央下には、「名古屋駅エスカ店」と記載があるが、それは、この調剤を生業とする薬局である、おひさま薬局の所在地を指しているのであり、取消審判の対象である「薬剤」についての表示としては「エスカ」は使用されていない。さらに、ページ左上の「エスカ」の表示は、上記マツモトキヨシの例と同様であり、乙3も、本件商標が「薬剤」について使用されたことを証明していない。
乙4は、被請求人である株式会社エスカの事業内容が、地下街店舗の賃貸、駐車場の経営であることを説明している。その事業内容に薬剤の製造・販売事業が含まれていないことは明らかである。また、ここで表示されている商号「株式会社エスカ」は、法人の名称として使用されており、商品・役務の名称たる商標としては使用されていない。さらに、乙4の左上の表示「エスカ」は、被請求人を、自身が経営する商業施設の運営会社として、その会社概要を紹介するページに使用されており、被請求人の商標「エスカ」または「ESCA」は、商業施設の店舗の賃貸業の名称として表示されている。つまり、薬剤とは全く無関係に表示されており、乙4も、本件商標が「薬剤」について使用されたことを証明していない。
乙5は、「ESCA」、「エスカ」なる表示からなる事業が、商業施設であることを説明しているところ、ページ左上の表示「エスカ」は、薬剤についての商標として使用されているのではなく、商業施設名として使用されていることを表している。したがって、乙5も、本件商標が「薬剤」について使用されたことを証明していない。
以上から、乙号証のいずれも、被請求人が指定商品「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」について、本件商標ないしそれに含まれる「エスカ」または「ESCA」を使用していることを一切証明していない。
(3)結論
以上より、被請求人が提出した乙1ないし乙5によっては、本件商標が、指定商品「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」ついて、要証期間内に、商標として使用されている事実を見いだすことはできない。よって、審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者等のいずれによっても、指定商品「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」について本件商標を使用しているとはいえない。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする旨の審決を求め、その理由を答弁書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙5を提出した。
本件商標の商標権者(被請求人)である株式会社エスカは、昭和39年(1964年)の東海道新幹線開業に伴い設立され、昭和46年12月1日に愛知県名古屋市中村区椿町に所在する名古屋駅西口駅前広場の地下に設けられた商業施設「エスカ」を開業した。「エスカ(ESCA)」の名称は「Ekinishi Shopping Center Avenue」の頭文字から名付けられたものであり、商標権者は、開業以来長年にわたり、本件商標を名古屋駅の地下街の商業施設の名称として使用している。エスカ地下街は、名古屋駅新幹線口から最も近く、地元の住民及び通勤者だけではなく、観光や出張の際にも利用されることの多い商業施設である。エスカ地下街には、名古屋めしやファーストフード等の飲食店の他、お土産店、ファッション関連の商品を取り扱う店舗、ドラッグストア、クリニック、雑貨店等、様々なジャンルの店舗が入っている。本件商標は、本施設の名称として、本施設のウェブサイトやパンフレットに掲載されている他、本施設の入り口の看板、広告等にも掲載されている。
乙1は、本施設のパンフレットであり、表紙の右下に「エスカ」と本件商標と同じ書体で表示されている。また、上記1のとおり、本施設の中に「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」を販売しているドラッグストア、薬局等が入っていることを示すものである。
乙2は、本施設のウェブサイトを印刷したものであり、左上に「エスカ」と本件商標と同じ書体で表示されている。本施設のウェブサイトには、ショップリストの他、定期的にショップニュースが掲載され、各店舗の宣伝広告が掲載されている。
乙3は、上記ウェブサイトのショップガイドであり、ドラッグストア及び薬局を宣伝するものである。サイトの左上に「エスカ」と本件商標と同じ書体で表示されている。これは、本件商標に係る指定商品「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」に関する広告に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為であり、商標法第2条第3項第8号に規定する標章の「使用」に該当する。
乙4は、上記ウェブサイトの会社概要を示すものであり、本商業施設の名称が「エスカ」であり、事業主が商標権者であることを示すものである。サイトの左上に「エスカ」と本件商標と同じ書体で表示されている。
乙5は、上記ウェブサイトの印刷であり、本商業施設の入り口エスカレーター上に「ESCA/エスカ」と表示されていることを示すものである。本件商標とは片仮名と欧文字の上段下段の配置は異なるものの、本件商標と同一の書体で表示されており、本商業施設の入り口に大きく目立つ態様表示されている。
これらの乙号証が示すように、「エスカ」、「ESCA」という商業施設において「薬剤」が販売されており、商標権者は、上記名称を冠した商業施設における商品の販売促進に寄与することを目的とした広告宣伝活動全般を行っているので、商標権者は指定商品の販売について、本件商標を使用しているものというべきである。
以上のように、商標権者は、本件商標を指定商品について継続して使用しているので、本件商標は、商標法第50条第1項に該当するものではなく、請求人の主張は失当であり、本審判の請求理由は理由がない。
審判長は、令和7年12月22日付け審尋において、被請求人に対し、被請求人の主張及び同人が提出した証拠によっては、被請求人が商標法第50条第2項に規定する本件商標の使用をしている事実を証明したものとは認められない旨の合議体の暫定的見解及び請求人が提出した弁駁書に対する回答を求めた。
被請求人は、上記1の審尋に対し、何らの応答もしていない。
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その指定商品について登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。
すなわち、本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、その指定商品について、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることを全て証明する必要がある。
被請求人の主張及びその提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)被請求人(商標権者)は、事業内容を「地下街店舗の賃貸、駐車場の経営」とする法人であって、愛知県名古屋市に所在の名古屋駅西口の地下に設けられた商業施設「エスカ」(以下「本件商業施設」という。)を開業している(乙1、乙4)。
(2)乙1は、本件商業施設のパンフレットであり、本件商業施設のフロアマップ及び本件商業施設に出店しているテナント(ビルの一室などの不動産を店として借りる法人など)を紹介する記事などが掲載されている。
(3)乙1の15葉目には、本件商業施設のテナントとして出店しているドラッグストア及び薬局を紹介する記事が掲載されている。
(4)乙1の2葉目(当該パンフレットに記載のページ番号「1」の左側)に、四角囲みで「2025年4月」との記載がある。
(5)乙2ないし乙5は、本件商業施設のウェブサイトを印刷したものと被請求人が主張するものであって、そのうち、乙2及び乙3は、本件商業施設に出店しているテナントを紹介する記事が、乙4は、被請求人(商標権者)の会社概要の記事が、乙5は、本件商業施設である「エスカ(ESCA)」について紹介する記事が掲載されている。
(6)乙2の6葉目には、本件商業施設のテナントとして出店しているドラッグストアを紹介する記事が、乙3の1葉目及び2葉目には、本件商業施設のテナントとして出店しているドラッグストア及び薬局を紹介する記事が掲載されている。
(7)乙1の1葉目の下部中央及び乙2ないし乙5の各葉の左上には、いずれも「エスカ」の片仮名(その構成中「エ」の文字がやや太くデザイン化されている。)を含む別掲2のとおりの商標(以下「使用商標1」という。)が付されている。
(8)乙5の中央部やや左には、「ESCA」の欧文字と「エスカ」の片仮名(その構成中「E」及び「エ」の文字がやや太くデザイン化されている。)を上下2段に書した別掲3のとおりの商標(以下「使用商標2」といい、「使用商標1」とまとめて「使用商標」という場合がある。)が付されている。
上記2によれば、以下のとおり判断できる。
(1)本件商標の使用時期について
ア 本件商業施設のパンフレットについて(乙1)
乙1は、被請求人(商標権者)が開業した本件商業施設のパンフレットであるが、上記1(4)のとおり、四角囲みで「2025年4月」との記載があることから、2025(令和7)年4月時点における本件商業施設に関するパンフレットであると推認されるところ、当該パンフレットが実際に需要者などを対象に配布又はウェブサイト上に掲載されるなどした日付が明確にわかる記載等は見いだせないことから、乙1は要証期間内の証拠とは認められない。
イ 本件商業施設のウェブサイトについて(乙2~乙5)
乙2ないし乙5は、本件商業施設のウェブサイトを印刷したものと被請求人が主張するものであるが、乙2ないし乙5からは、当該ページに表された内容がウェブサイト上に掲載されていた日付などについて明確にわかる記載等は見いだせないことから、乙2ないし乙5は要証期間内の証拠とは認められない。
(2)本件商標と使用商標との社会通念上同一性について
ア 使用商標1について(乙1~乙5)
(ア)本件商標は、別掲1のとおり、「エスカ」の片仮名と「ESCA」の欧文字を上下2段に書してなるところ(その構成中「エ」及び「E」の文字がやや太くデザイン化されている。)、その構成中、上段の「エスカ」の片仮名は、一般の辞書等に載録されているものではなく、また、特定の意味合いを認識させるものとして我が国において広く知られているといった特段の実情も見いだせないことから、具体的な意味合いを認識させるものとはいえない。
一方、その構成中、下段の「ESCA」の欧文字は、その構成文字に相応して「エスカ」の称呼が生じるものであって、「アンコウなどの魚の誘引突起の先端部」(甲3)及び「光電子分光法による物質の分析法の一つ」(「広辞苑第七版」岩波書店参照)の意味を有するものである。
そうすると、上段の「エスカ」の片仮名と下段の「ESCA」の欧文字の称呼は共通するといえるものの、上記のとおり「エスカ」の片仮名は、具体的な意味合いを認識させるものとはいえないことから、上段及び下段の各部が観念を同一にするものとは認められない。
(イ)乙1の1葉目の下部中央及び乙2ないし乙5の各葉の左上には、いずれも「エスカ」の片仮名を含む商標(使用商標1)が付されているところ、その構成中「エスカ」の片仮名は、本件商標の構成中、上段の「エスカ」の片仮名と同一の書体で書されているといい得るものの、上記(ア)のとおり、本件商標は、その構成中の上段及び下段の各部が観念を同一にするものとは認められないことから、使用商標1の使用は、本件商標が二段併記の構成からなる場合であって、上段及び下段の各部の観念を同一とするときに、その一方の使用に該当するとはいえず、使用商標1は本件商標と社会通念上同一の商標とは認められない。
(ウ)したがって、乙1ないし乙5における使用商標1の使用は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用とは認められない。
イ 使用商標2について(乙5)
(ア)乙5の中央部やや左に表された「ESCA」の欧文字と「エスカ」の片仮名を上下2段に書した商標(使用商標2)は、本件商標と上下段の片仮名と欧文字の配置が逆であって、「ESCA」の欧文字が「エスカ」の片仮名に比して大きく表されていることから、本件商標と外観上同一とはいえないものの、同じ称呼が生じる欧文字と片仮名の組み合わせにおいて、上下を入れ替えたり、文字の大きさのバランスを変更したりすることなどは、これを付す対象の具体的な性状に応じ適宜変更するものとして取引において通常行われているものであるといえ、さらに、両商標は、その構成する文字綴りを共通にし、そのデザイン化された書体部分も共通するものであるといえることから、使用商標2の構成の変更は、本件商標の構成において基本をなす部分を変更するものではないというのが相当である。
(イ)したがって、乙5における使用商標2の使用は、本件商標と社会通念上同一と認められる。
(3)使用商標の使用に係る商品又は役務について
被請求人は、上記2(1)のとおり、事業内容を「地下街店舗の賃貸、駐車場の経営」とする法人であって、本件商業施設を開業しているところ、本件商業施設には、「薬剤」などを販売しているドラッグストア及び薬局がテナントとして出店しており、被請求人が作製している本件商業施設に関するパンフレットやウェブサイトには、そこに使用商標を付して、ドラッグストア及び薬局などの各店舗(テナント)を紹介する記事が掲載されていることが認められる(乙1~乙3)。
しかしながら、当該パンフレット及びウェブサイトに掲載のドラッグストア及び薬局の各店舗を紹介する記事は、本件商業施設にテナントとして出店している「薬剤」等に関する小売業を行っている店舗の宣伝、広告、すなわち、小売店の利用(役務の提供)の促進を目的としたものであると認められることから、テナントとして出店しているドラッグストア及び薬局の店舗の宣伝、広告とはいえるものの、商品(薬剤)の出所表示あるいは商品(薬剤)に関する広告として使用商標を付して使用されたものとは認められない。
したがって、乙1ないし乙3において使用商標を付してドラッグストア及び薬局などの各店舗(テナント)を紹介する記事を掲載する行為は、商品「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」についての使用であると認められない。
また、乙5は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標(使用商標2)が付されているものの、乙5からは商品「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」に関する記載は見いだせず、その他、請求人が提出した証拠によっても、本件商標が商品「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」について商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用がされたものと認めることはできない。
(4)小括
以上のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標を、その指定商品中「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」について、商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する行為を行っていたことを証明していない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定商品中「結論掲記の指定商品」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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