結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025890058 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件登録第6915756号商標(以下「本件商標」という。)は、「気配り宅配食」の文字を標準文字で表してなり、令和6年7月2日に登録出願、第35類、第39類及び第43類に属する別掲のとおりの役務を指定役務として、同7年3月25日に登録査定、同年4月4日に設定登録されたものである。
請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する商標は、以下の4件の商標である。
商標の態様:「気くばり」の文字を横書きしてなるもの
登録出願日:昭和59年5月21日
設定登録日:昭和61年11月27日
指定商品:第29類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
書換登録日:平成18年11月8日
商標の態様:気くばり(標準文字)
登録出願日:平成24年2月15日
設定登録日:平成24年8月10日
指定商品:第5類、第29類及び第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
商標の態様:気くばり(標準文字)
登録出願日:平成25年9月10日
設定登録日:平成26年1月31日
指定役務:第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書において要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第114号証を提出した(枝番号を含む。なお、以下、証拠の記載にあたっては、「甲第○号証」を「甲○」、「乙第○号証」を「乙○」のように表記する。)。
(1)本件商標は分離観察が可能であること
ア はじめに
本件商標「気配り宅配食」は、「気配り」という語と「宅配食」という語とが結合した結合商標である。
そして、「宅配食」は、宅配弁当や弁当の配送の分野において一般に用いられる用語であり、出所識別標識としての称呼、観念が生じない。
したがって、本件商標は、商標の構成部分の一部以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じない場合に該当し、その構成部分の一部を抽出し、当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許される。
イ 「宅配食」が、宅配弁当や弁当の配送の分野において一般に用いられる用語であり、識別力を有さないこと
(ア)「宅配食」は、調理済みの弁当や惣菜セット(冷蔵または冷凍状態)を指定された日時に顧客の自宅に届けるサービスの一般名称であり、宅配弁当、宅配される惣菜や弁当の配送の分野において一般に用いられる用語である。そのため、「宅配食」からは、出所識別標識としての称呼、観念が生じない。
(イ)新聞・メディア、公的機関、宅配弁当サービスを提供する業者などが、「宅配食」を、弁当や惣菜の宅配サービス、宅配される弁当、惣菜などの一般名称として用いており、「宅配食」は、調理済みの弁当や惣菜セット(冷蔵または冷凍状態)を指定された日時に顧客の自宅に届けるサービスの一般名称として宅配弁当、宅配される惣菜や弁当の配送の分野において一般に用いられる用語であることが分かる(甲1~甲31)。
(ウ)したがって、飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、商品の配送又は宅配に関する事務処理の代行、商品の保管・輸送及び配達からなる物流管理並びにこれらに関する情報の提供、弁当の宅配及びこれに関する情報の提供、飲食物の輸送・梱包・保管及び配送並びにこれらに関する情報の提供、飲食物の提供及びこれに関する情報の提供、宅配を特徴とするレストランにおける飲食物の提供及びこれに関する情報の提供などを含む本件商標の指定商品及び指定役務との関係では、「宅配食」は、需要者、取引者は、商品の性質、サービスの内容等を表すものと理解すると考えられ、当該部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じるということはできない。
ウ 「気配り」の部分について
本件商標のうち、「気配り」の部分については、「不都合・失敗がないように、あれこれと気をつけること。相手を思いやって気をつけること」を意味する単語として理解される(甲32)。
エ 本件商標は分離観察が可能であること
本件商標は、「気配り」と「宅配食」からなる結合商標であるところ、上記のように、「宅配食」の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じるということはできない一方で、「気配り」については、指定商品及び指定役務の品質や内容を表すものとはいえず、指定商品及び指定役務との関係において、出所識別標識としての称呼、観念が生じ得るといえる。
そうすると、本件商標は、商標の構成部分の一部(「気配り」)以外の部分(「宅配食」)から出所識別標識としての称呼、観念が生じない場合に該当し、その構成部分の一部(「気配り」)を抽出し、当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されるものである。
(2)本件商標と引用商標1ないし3との対比
以上を踏まえて、本件商標における「気配り」の部分(以下「本件商標要部」という。)と、引用商標1ないし3とを比較する。引用商標1ないし3は、いずれも、一般的なフォントからなる「気くばり」である。
まず、外観について、本件商標要部は、「気配」という2文字の漢字と「り」という送り仮名からなるのに対して、引用商標1ないし3は、「気くばり」という1文字の漢字とひらがな3文字からなるが、両商標は、「気」と「り」が共通しており、外観は類似する。
次に称呼について、本件商標要部と引用商標1ないし3は、いずれも「きくばり」との称呼を生ずるから、称呼は同一である。
観念について、本件商標要部と引用商標1ないし3は、「気配り」の「配」を漢字で表記するか、平仮名で表記するかの違いしかなく、いずれも、「不都合・失敗がないように、あれこれと気をつけること。相手を思いやって気をつけること」との観念を有するから、観念は同ーである。
以上のとおり、本件商標要部と引用商標1ないし3とは、外観が類似し、称呼及び観念が同一であって、同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に商品及び役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるから、本件商標要部は、引用商標1ないし3と類似する。
したがって、本件商標と引用商標1ないし3は類似する。
(3)指定商品及び指定役務
引用商標1の指定商品は、べんとうやカレーなどの食料品を含む。引用商標2の指定商品は、食用油脂、乳製品、豆、茶、コーヒー、ココア、氷、菓子、パン、調味料、米、脱穀済みのえん麦、脱穀済みの大麦、食用粉類を含む。引用商標3の指定商品は日本酒などの酒類である。
したがって、飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、商品の配送又は宅配に関する事務処理の代行、商品の保管・輸送及び配達からなる物流管理並びにこれらに関する情報の提供、弁当の宅配及びこれに関する情報の提供、飲食物の輸送・梱包・保管及び配送並びにこれらに関する情報の提供、飲食物の提供及びこれに関する情報の提供、宅配を特徴とするレストランにおける飲食物の提供及びこれに関する情報の提供などを含む本件商標の指定商品及び指定役務と、引用商標1ないし3の指定商品は、同一ないし類似するものである。
(4)商標法第4条第1項第11号についてのまとめ
以上のように、本件商標と、引用商標1ないし3とは、商標及び指定商品及び指定役務とが、同ーないし類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条第1項1号により、無効にすべきものである。
(1)引用商標4が、請求人の業務にかかる商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていること
ア 請求人が「気配り宅配食」商標を使用しながら、冷凍弁当の宅配サービスを10年以上提供してきたこと
引用商標4(「気配り宅配食」との文字からなる標章)は、請求人が提供している冷凍弁当宅配サービスや、冷凍弁当に使用されている。請求人は、2015年以来10年以上にわたって、「気配り宅配食」のサービス名で冷凍弁当の宅配サービスを提供している。
「気配り宅配食」の売上げは、2015年以来増加し、2019年に19億円を超えた。直近の2024年では、約14億円の売上げとなっている(甲33)。
「気配り宅配食」は、後述するように、弁当の製造と消費者への配送を、被請求人に委託していたが、2023年に請求人・被請求人間の業務委託関係は解消され、以降、請求人は、他の業者に弁当の製造と消費者への配送を委託している。
請求人は、「気配り宅配食」の提供業者として、「気配り宅配食」の宣伝広告、注文受け付け、消費者との契約、弁当宅配サービスの提供、消費者への情報提供、顧客管理、商品の改良などの業務を担っている。
なお、「気配り宅配食」は、請求人代表者が考えた造語である。
イ 請求人による「気配り宅配食」のサービス提供地域は日本全国であること
「気配り宅配食」のサービス提供地域は日本全国である。甲34は、請求人の顧客管理システムから抜き出した「気配り宅配食」の配送先の一例である。個人情報保護の観点から、配送先の住所は市町村単位までの表記にとどめている。甲34から、「気配り宅配食」の配送先が日本全国にわたることが分かる。
ウ 請求人による引用商標4の使用
(ア)自社ウェブサイトにおける使用
請求人は、2015年から継続して自社ウェブサイトにおいて宅配弁当について、「気配り宅配食」との商標を使用している(甲35~甲49)。甲35は、ウェイバックマシンを用いて2015年8月時点での請求人ウェブサイトのトップページを表示したものである。甲35では、「からだ想いの」との小さな文字の下に「気配り宅配食」の大きな表示があり、紹介されている冷凍弁当の商品名ないし冷凍弁当の宅配サービスの名称が「気配り宅配食」であることが分かる。
また、甲35の下部には、「健康応援 気配り宅配食」、「カロリー制限(240kcal)気配り宅配食」、「塩分制限(2g以下)気配り宅配食」という表記があり、「気配り宅配食」の弁当には、健康応援タイプ、カロリー制限タイプ、塩分制限タイプなどといった種類があることが明示されている。
さらに、甲35の下部には、「ウェルネスな「気配り宅配食」ポイント」との表記があり、「気配り宅配食」の部分のみ着色されており、強調されている。
また、甲46は、ウェイバックマシンによる2022年5月5日時点の請求人ウェブサイトの「気配り宅配食」の説明ページである(トップページの「気配り宅配食」のボタンをクリックすると遷移する。)。こちらにも、「気配り宅配食」の文字が大きく表示され、商品名、サービス名としての表示であることが分かる。同ページの下部には、「塩分制限気配り宅配食」、「糖質制限気配り宅配食」といった表記があるが、「気配り宅配食」とそれ以外の文字とが色分けされており、「気配り宅配食」シリーズのうちの塩分制限タイプ、糖質制限タイプ等であることが分かる。
(イ)商品パッケージ及び添付文書における使用
甲51は、請求人の「気配り宅配食」を写真付きで紹介するウェブサイトである。甲51には、「気配り宅配食」の実際の商品写真が掲載されており、弁当パッケージの正面に栄養表示やバーコードとともに、「気配り宅配食」が他の表示よりも大きな文字で表示されていることが分かる。
また、甲52は、「気配り宅配食」の冷凍弁当に同封されるチラシである。甲52の上部には、「【定期お届け】のご案内」とのタイトルの左横に請求人の社名(ウェルネスダイニング)とともに、「気配り宅配食」との表示がある。
(ウ)宣伝広告における使用
a 新聞・雑誌の広告
請求人は、「気配り宅配食」の広告を、全国紙に複数回掲示している(甲53~甲56)。
b テレビCM
請求人は、「気配り宅配食」のテレビCMを複数回放送している(甲57~甲70)。
c YouTube動画・SNS
請求人は、「気配り宅配食」のYouTube動画を複数作成し、アップロードしている(甲71)。
d 雑誌
請求人は、各種雑誌にも、「気配り宅配食」の広告を掲出している(甲72~甲102)。
e 宣伝広告費
上記のように、請求人は、「気配り宅配食」の宣伝広告を積極的に展開してきた。その費用は、テレビCMについては2017年ないし2019年にかけて合計で6347万円であり(甲103)、新聞については、2015年ないし2019年にかけて合計で2億9020万7000円であった(甲104)。
(エ)メディアによる紹介
請求人が展開する「気配り宅配食」は、各種メディアに何度も取り上げられてきた(甲31、甲105)。
(オ)公的機関による紹介
請求人が展開する「気配り宅配食」は、公的機関による紹介もなされてきた。公的機関のうち、特に自治体は、高齢者・要介護者向け等に、管轄地域で展開されている宅配食の紹介を行っており、その中で請求人の「気配り宅配食」が紹介されることが多々あった(甲106~甲109)。
(カ)Google検索による表示
Googleにおいて、「気配り宅配食」との検索ワードを入力して検索を行うと、請求人が展開している「気配り宅配食」のみがヒットする(甲110)。このことから、請求人以外に、「気配り宅配食」のサービス名や商品名で、商品販売やサービス展開を行っている者はいないことが分かる。
エ 小括
以上のように、「気配り宅配食」(引用商標4)は、請求人が10年以上にわたり、冷凍弁当の宅配サービスや冷凍弁当の商品名ないしサービス名として使用してきたものであり、請求人が展開する冷凍弁当の宅配サービスのサービス名及び冷凍弁当の商品名として、弁当や惣菜の宅配の需要者・取引者において周知である。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当すること
引用商標4は、上記1で説明したように、2015年以来、請求人が使用を継続してきたため、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、既に、請求人の業務に係る様々な商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた商標である。
そして、本件商標は、引用商標4と実質的に同一である。
また、本件商標の指定商品及び指定役務は、請求人が引用商標4を使用している商品や役務と同一又は類似の商品及び役務を含む。
以上のように、本件商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、少なくとも、飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、商品の配送又は宅配に関する事務処理の代行、商品の保管・輸送及び配達からなる物流管理並びにこれらに関する情報の提供、弁当の宅配及びこれに関する情報の提供、飲食物の輸送・梱包・保管及び配送並びにこれらに関する情報の提供、飲食物の提供及びこれに関する情報の提供、宅配を特徴とするレストランにおける飲食物の提供及びこれに関する情報の提供などを含む本件商標の指定商品及び指定役務との関係では、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」に該当し、商標法第4条第1項第10号により商標登録を受けられない商標である。
(1)本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標は、上述したとおり、引用商標4と実質的に同一である。
(2)引用商標の周知度について
上記のように、引用商標4は、上記で説明したように、2015年以来、請求人が使用を継続してきたため、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、宅配弁当業界において、需要者、取引者の間で広く認識されていた商標であり、その周知度は非常に高いといえる。
(3)引用商標が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるかについて
「気配り宅配食」は、請求人による造語であり、請求人が使用を開始するまでは、世に存在しない言葉であった。
(4)商品間、役務間又は商品と役務間の関連性について
本件商標の指定商品と、請求人が引用商標4を使用している商品・サービスとは、同一であり、又は取扱店舗が共通するなど密接な関連性を有するものである。
(5)商品等の需要者の共通性その他取引の実情について
上記のように、本件商標の指定商品及び指定役務は、請求人が「気配り宅配食」のブランドのもとで引用商標4を付して販売している商品や提供しているサービスと同一の商品及び役務を含む。
したがって、本件商標の指定商品と、請求人が引用商標を使用している商品とは、需要者が共通する。
(6)小括
以上のように、本件商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、全指定商品について、商標法第4条第1項第15号により商標登録を受けられない商標であることが明らかである。
(1)上記のように、引用商標は、2015年以来、請求人によって大々的に商品展開され、多数のメディアで紹介されるなど、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、既に、請求人の業務に係る様々な商品を表示するものとして全国的に著名な商標であった。
よって、被請求人の「不正の目的」が推認されることが明らかである。
(2)上記のように、引用商標4は、上述したとおり、請求人による造語である。そして、本件商標は、上述したとおり、引用商標4と実質的に同一の商標である。
よって、被請求人の「不正の目的」が推認されることが明らかである。
(3)請求人と被請求人との関係及び本件商標の登録出願に至る経緯から不正の目的が推認されること
被請求人は、弁当の製造受託サービスを提供しており、2015年ないし2023年の間、請求人からの委託を受けて、「気配り宅配食」の冷凍弁当の製造及び消費者への配送業務を担っていた。甲110(売買基本契約書)は、請求人・被請求人間で平成27年(2015年)1月30日付けで締結された基本契約書である。この契約書では、売買契約となっているが、実際は、弁当の製造及び配送の製造委受託契約であった。甲112(秘密保持契約書)は、請求人・被請求人間で平成27年(2015年)2月9日付けで締結された秘密保持契約書である。この秘密保持契約書の第3条に「甲より委託された業務目的にのみ使用する」との文言があり、甲(請求人)から委託された弁当の製造及び宅配業務の目的のみに、請求人から受領した秘密情報(主には顧客情報)を使用することが規定されている。
なお、被請求人は、自社ブランドでの宅配弁当、配食サービスを提供しているが、被請求人のサービス一覧に、「気配り宅配食」はない(甲113 シルバーライフ事業紹介)。
そして、2023年7月28日(甲114)に、請求人と被請求人間の委受託関係は解消された。これは、被請求人からの単価の値上げ要求に対して請求人が応じなかったためであった。
その後、被請求人は、請求人の「気配り宅配食」が商標登録されていないことを奇貨として、本件商標の登録出願を行ったものである。
(4)小括
以上のように、本件商標は、引用商標4と実質的に同一であり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「不正の目的」をもって使用をするものであることが明らかであるから、商標法第4条第1項第19号により商標登録を受けられない商標であることが明らかである。
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判事件答弁書において要旨以下のように述べ、証拠方法として乙1ないし乙3を提出した。
(1)分離観察の可否
本件商標は、「気配り」、「宅配」及び「食」の各文字を組み合わせた結合商標と解されるところ、「気配り宅配食」の文字を、同一大、同一書体、同一色彩及び同一間隔にて外観上まとまりよく横一連に表されており、「気配り」、「宅配」及び「食」の各文字部分に何らの軽重の差も設けていない構成である。
それゆえ、本件商標の構成においては、「気配り」、「宅配」及び「食」の各文字部分のいずれかの部分が取引者及び需要者に対し商品及び役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える態様ではなく、「各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標」とはいえない。
そして、上記構成文字全体から生ずる「キクバリタクハイショク」もよどみなく一気一連に称呼し得る。
また、本件商標の構成中、「気配り」は「不都合・失敗がないように、あれこれと気をつけること。相手を思いやって気をつけること。心くばり。配慮。」の意味を有し(甲32)、「宅配」は「自宅配達の略。商品や新聞・雑誌・荷物などを家まで配達すること。」の意味を有し(岩波書店 広辞苑第七版)、「食」は「くうこと。たべること。たべもの。」等の意味を有するから(岩波書店 広辞苑第七版)、全体として「あれこれと気をつけて自宅配達する食べ物」程の観念を生ずる。
加えて、「宅配食」の文字は、本件商標の指定商品及び指定役務について、単に商品の品質、役務の質等を表すものとして一般に認識されているとする事情もない。実際に「Google」を用いて「宅配食」をキーワードとして検索した結果得られた情報を見ても、インターネット上にある膨大な量のホームページの中でのわずか201件検出されるにすぎず(乙1)、使用例としては決して多いとはいえないものであるばかりでなく、その使用例も具体的意味合いまでは不明であって、一定の意味合いの語として一般に認知されているとまではいい難い。
そうすると、本件商標は、その構成全体をもって一体不可分に把握される商品及び役務の出所識別標識として機能を発揮されるものとみるのが自然であるから、「気配り」、「宅配」及び「食」の各文字部分のいずれかの部分から商品及び役務の出所識別標識としての称呼、観念が生じない場合ともいえない。
したがって、本件商標と引用商標1ないし3との類否を判断するにあたって、本件商標の構成中の「気配り」を抽出し、この部分だけを引用商標1ないし3と比較して商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは許されない。
(2)本件商標と引用商標1ないし3との類否
上記に対し、引用商標1ないし3は、「気くばり」の文字を普通の書体で横書き又は標準文字にて表してなるところ、その構成文字に相応して、「キクバリ」の称呼、「気配り」の観念が生ずる。
そうすると、「気配り宅配食」の文字からなる本件商標と「気くばり」の文字からなる引用商標1ないし3とは、その構成を全く異にするものであるから、対比的観察においては勿論、異時別所におけるいわゆる離隔的観察においても全く相違するので、両者は外観上相紛れるおそれがない。
また、本件商標の「キクバリタクハイショク」の称呼と引用商標1ないし3の「キクバリ」とは、その構成音数及び音構成が顕著に相違し、十分聴別し得るものであるから、両者は称呼上相紛れるおそれがない。
加えて、本件商標からは「あれこれと気をつけて自宅配達する食べ物」程の観念を生ずるのに対し、引用商標1ないし3からは「気配り」の観念を生ずるため、両者は、観念において明確に区別し得るものであり、観念上相紛れるおそれがない。
加えて、前述のとおり、本件商標の構成においては、「気配り」の部分が指定商品及び指定役務の取引者及び需要者に強く支配的な印象を与える部分ということもできず、また、「宅配食」の部分が商品及び役務の出所識別標識としての機能を生じないともいえないから、本件商標と引用商標1ないし3との類否判断において、本件商標の構成中の「気配り」の部分のみを分離抽出しなければならない理由は全くない。
その他、両者の間に、商品及び役務の出所の誤認混同をきたすおそれを認めるに足りる取引の実情は一切存しない。
したがって、本件商標は、引用商標1ないし3とは外観、称呼、観念のいかなる点においても相紛れるおそれが全くなく、その外観、観念、称呼等によって取引者及び需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、商品及び役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがない非類似の商標というのが相当であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
引用商標4について、使用された結果、取引者及び需要者が請求人の業務にかかる商品及び役務の表示として需要者の間で広く認識されているほどに、その商標が周知・著名になっているかどうかは、その商標の具体的な使用実績(使用態様、使用数量、使用期間、使用地域、広告宣伝等)を踏まえて判断すべきである。
そして、引用商標4については、実際に「Google」を用いて「気配り宅配食」をキーワードとして検索した結果得られた情報を見ても、インターネット上にある膨大な量のホームページの中でのわずか141件検出されるにすぎず(乙2)、使用例としては決して多いとはいえないものであるから、少なくとも、インターネット公開情報からは、引用商標4の認知度は低い状況といわざるを得ない。
その他、引用商標4が、請求人の業務にかかる商品及び役務の分野において、需要者の間で広く認識されているほどに、その商標が周知・著名になっているといえる事情は見当たらない。
そうすると、引用商標4は、商標法第4条第1項第10号の「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」に該当せず、19号の「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」に該当しないものである。
また、商標法第4条第1項第15号の「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」といい得るためには、その商標の周知・著名性の程度の高さが重要な指標になるところ、引用商標4は、その周知・著名性の程度が低いものである以上、「混同を生ずるおそれ」もない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当しない。
(1)本件商標と引用商標1ないし3の類否
請求人は、「宅配食」の使用例(甲1~甲31)を示し、「宅配食」が宅配弁当や弁当の配送の分野において一般に用いられる用語であり、識別力を有さないことを理由に、本件商標の構成中の「気配り」の部分を抽出し、この部分だけを引用商標1ないし3と比較して商標の類否を判断することが許される旨主張する。
しかし、前述のとおり、「Google」を用いて「宅配食」をキーワードとして検索した結果得られた情報を見ても、インターネット上にある膨大な量のホームページの中でのわずか201件検出されるにすぎず、使用例としては決して多いとはいえない(乙1)。
請求人が指摘する新聞・メディアの記事(甲1~甲8)については、需要者による閲覧数などが全く不明であるだけでなく、その影響力も不明であり、直ちに需要者が「宅配食」が宅配弁当や弁当の配送の分野において一般に用いられる用語と認識することを示す事実ではない。
請求人が指摘する公的機関による表記(甲9~甲13)についても、それら情報に積極的に触れる者は限定的といわざるを得ず、これら情報に「宅配食」の用語が使用されている経緯も明確ではなく、これらにより、「宅配食」が宅配弁当や弁当の配送の分野において一般に用いられる用語として需要者に注目され、記憶にとどめるほどであったとはいえない。
請求人が指摘するその他の記事(甲14~甲31)についても、需要者による閲覧数などが全く不明であるだけでなく、その影響力も不明であり、直ちに需要者が「宅配食」が宅配弁当や弁当の配送の分野において一般に用いられる用語と認識することを示す事実ではない。
そして、仮に「宅配食」が宅配弁当や弁当の配送の分野において一般に用いられる用語であるとしても、本件商標は、その構成全体をもって一体不可分に把握される商品及び役務の出所識別標識として機能を発揮されるものとみるのが自然であるから、本件商標の構成において、「気配り」の部分が取引者及び需要者に対し商品及び役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではなく、「宅配食」の部分から商品及び役務の出所識別標識としての称呼、観念が生じないともいえない。
そうすると、本件商標と引用商標1ないし3の類否について、本件商標の「気配り」の部分を分離観察するべき旨の請求人の主張には理由がない。
したがって、上記分離観察を前提に本件商標と引用商標1ないし3とを類似する商標とする請求人の主張は前提において誤ったものである。
(2)引用商標4の周知・著名性
請求人は、引用商標4の具体的な使用実績に係る証拠(甲31、甲33~甲110)を示し、本件商標の登録に係る出願時及び登録査定時において、引用商標4が宅配弁当業界において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者、取引者の間で広く認識されており、その周知度が非常に高い旨を主張する。
しかし、売上高推移(甲33)は、請求人の社内資料にすぎず、作成者及び作成日が不明であり、客観性のない証拠である。仮に請求人が主張する「2015年以来増加し、2019年に19億円を超え・・・直近の2024年では、約14億円の売上げとなっている」ことを前提としたとしても、日本流通産業新聞本紙が実施した「食品宅配企業の売上高調査」によると、令和6年の主要16社の合計売上高は2169億9600万円であり、同年の代表的な企業の売上げについて、1位の企業が866億円、2位の企業が400億円、被請求人が88億円であることからすれば(乙3)、請求人の業務に係る商品についての食品宅配業界内におけるシェアは、大きなものではない。
発送顧客リスト例(甲34)は、請求人の社内資料にすぎず、作成者及び作成日が不明であり、客観性のない証拠である。商品が日本全国に配送されているとしても、具体的な商品の配送数等は不明であるし、配送の事実が、直ちに、請求人の業務に係る商品を表示するものとして全国の需要者、取引者の間で広く認識されていることを示すものでもないし、請求人の業務に係る商品についての食品宅配業界におけるシェアを把握、理解することもできない。
広告例(甲35~甲102)、第三者の紹介例(甲31、甲105、甲106~甲109)は、需要者、取引者による閲覧数などが全く不明であるだけでなく、その影響力も不明であり、直ちに請求人の業務に係る商品を表示するものとして全国の需要者、取引者の間で広く認識されていることを示す事実ではない。食品宅配業界内において、請求人が他社と比較して盛大な広告を実施し、第三者により紹介されていることを裏付ける事実もない。
広告宣伝費(甲103、甲104)については、仮に請求人が主張する「テレビCMについては2017年ないし2019年にかけて合計6347万円であり・・・新聞については、2015年ないし2019年にかけて合計で2億9020万7000円であった」ことを前提としたとしても、請求人が主張する売上げに対する広告宣伝費として、それが高いか低いかも全く不明である。請求人としては、高額な広告宣伝費を過去に支払ってきたと理解しているとしても、客観的な事実として、このことが需要者の認識にどのように影響するのかも不明である。
Googleの検索結果(甲110)は、請求人以外に「気配り宅配食」のサービス名や商品名で、商品販売やサービス展開を行っている者はいないことを示すものとして提出されているものの、インターネット上にある膨大な量のホームページの中でのわずか141件検出されるにすぎないことを考慮すると(乙2)、むしろ、インターネット上で引用商標4が左程紹介されるに至っていないことを示す証拠である。
そうすると、引用商標4は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人により請求人の業務に係る商品の出所識別標識として使用されているものであるとしても、各時点において、その需要者、取引者の間で広く認識されているほどに、その商標が周知・著名になっているといえる事情は全くないものである。
したがって、引用商標4が周知・著名であることを前提とする請求人の主張には理由がない。
(3)不正の目的
請求人は、過去の被請求人との間の書類(甲111、甲112、甲114)及び被請求人のウェブサイト(甲113)を示し、被請求人が請求人の「気配り宅配食」が商標登録されていないことを奇貨として、本件商標の出願を行った旨主張する。
しかし、被請求人が自己の業務に係る商品及び役務について今後使用をする本件商標について商標法による適切な保護を受けるべく、その出願を行うことは、先願主義の原則の下、極めて自然かつ正当な行為といわざるを得ず、かかる被請求人の行為につき非難をされる理由は全くない。
そうすると、本件商標は、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的で使用されるものではない。
したがって、本件商標が不正の目的で使用されるものである旨の上記請求人の主張は失当というほかない。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当せず、本件商標の登録は無効にされるべきではない。
以下、本案に入って審理する。
(1)本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、「気配り宅配食」の文字を標準文字で表してなるところ、各構成文字は、同じ大きさ、同じ書体、同じ間隔で横一連に表してなり、該文字から生じる「キクバリタクハイショク」の称呼も無理なく一連に称呼し得る。
そして、構成中の「気配り」の文字が「不都合・失敗がないように、あれこれと気をつけること。」(岩波書店 広辞苑第七版)の、「宅配」の文字が「自宅配達の略。」(前掲書)の、「食」の文字が「たべること。」(前掲書)の意味をそれぞれ有する語であるとしても、上記のとおりの外観及び称呼における一体性からすれば、本件商標に接する取引者及び需要者は、特定の文字部分のみに着目することなく、構成文字全体をもって、具体的な意味を有しない、一体不可分の造語を表したものとして認識するとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して「キクバリタクハイショク」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
(2)引用商標1ないし3
引用商標1ないし3は、上記第2のとおり、「気くばり」の文字を横書きないし標準文字で表してなるところ、当該文字は、「不都合・失敗がないように、あれこれと気をつけること。」の意味を有する語であるから、引用商標1ないし3は、これらの構成文字に相応して、「キクバリ」の称呼を生じ、「不都合・失敗がないように、あれこれと気をつけること。」の観念を生じる。
(3)本件商標と引用商標1ないし3の類否
本件商標と引用商標1ないし3を比較すると、両者の外観については、「配」の文字と「くば」の文字において相違するだけでなく、「宅配食」の文字の有無において明確な差異を有するから、両者は、外観において相紛れるおそれはない。
次に、称呼については、両者は「タクハイショク」の音の有無により、明確に聴別できるから、両者は、称呼において相紛れるおそれはない。
そして、観念については、本件商標が特定の観念を生じないのに対し、引用商標1ないし3は「不都合・失敗がないように、あれこれと気をつけること。」の観念を生じることから、両者は、観念において相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標1ないし3は、外観、称呼、観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない、非類似の商標である。
(4)請求人の主張について
請求人は、本件商標の構成中の「宅配食」の文字が、調理済みの弁当や惣菜セットを指定された日時に顧客の自宅に届けるサービスの名称として、宅配弁当(惣菜)や弁当の配送の分野において一般に用いられる語であるから、本件商標の一部の指定役務との関係では、サービスの内容等を表すものと理解され、出所識別標識としての称呼、観念が生じないから、本件商標から「気配り」の文字部分だけを抽出して、商標の類否を判断することが許される旨主張する。
しかしながら、当該「宅配食」の文字は、請求人提出の証拠(甲1~甲31)によれば、宅配弁当ないし弁当の配送に関する業界において相当程度使用されていることがうかがわれ、「宅配される食事」程の意味合いを想起させる場合があるといえるから、本件商標の指定役務中「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」や「弁当の宅配及びこれに関する情報の提供」等との関係において、直ちに識別力が強いとまではいえないが、上記(1)のとおりの本件商標の一体的な構成及び称呼からすれば、これに接する取引者、需要者が、あえて「宅配食」の文字を捨象し、「気配り」の文字のみを要部として抽出するというよりは、「気配り宅配食」の構成全体として一体のものとみるのが自然というべきである。
したがって、請求人の上記の主張は、採用することができない。
(5)小括
以上によれば、本件商標と引用商標1ないし3は、非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と、引用商標1ないし3の指定商品が類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(1)引用商標4の周知性について
ア 請求人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)請求人は、2015年から自身のホームページにおいて、冷凍弁当の宅配サービス及び冷凍弁当について、「気配り宅配食」の文字(引用商標4)を使用している(甲35~甲50)。
(イ)請求人は、請求人作成の顧客リスト(甲34)を提出し、引用商標4を使用した冷凍弁当の宅配サービス及び冷凍弁当(以下「請求人商品役務」という。)の提供先は、全国にわたると主張しているが、当該顧客リストは、2017年5月31日の一日分のみのものである。
(ウ)請求人作成の「気配り宅配食の売上高推移」(甲33)と題する資料によれば、請求人商品役務の売上高は、2019年に19億円を超え、2024年では、約14億円とされる。
(エ)請求人は、2021年から2022年にかけて、全国紙に請求人商品役務の広告を4回掲載している(甲53~甲56)。
(オ)請求人は、2016年から2019年にかけて、BSテレビ放送や地方テレビ局のテレビ放送等において、CMを複数回放映したとされる(甲57~甲70)。なお、これらの証拠は、請求人宛てのテレビCMの放送料の請求書であるが、これらのCMの内容は明らかでなく、引用商標4が使用されたCMであることを客観的に示す証拠の提出はない。
(カ)請求人作成の「広告代理店からの請求書に基づくテレビCM出稿費用額一覧表(商材:気配り宅配食)」(甲103)及び「新聞広告出稿費用額一覧(商材:気配り宅配食)」(甲104)と題する資料によれば、テレビCM出稿費用については、2017年ないし2019年の合計額が6347万円、新聞広告費用については、2015年ないし2019年の合計額が約2億9020万円とされている。
(キ)請求人は、2015年以降、複数の雑誌に請求人商品役務の広告を掲載している(甲72~甲102)。なお、これらの雑誌に掲載された広告において、引用商標4は、比較的小さく、目立たない態様で表されていたり、あるいは「健康応援気配り宅配食」のように、他の文字と結合して、同じ大きさ及び色彩をもって一体的に表されているものも少なくない。
(ク)請求人は、SNSに複数の動画を掲載しているところ、そのうち、動画のタイトルに引用商標4が含まれるものの再生回数は、数千回ないし約100万回とされるが、各再生回数がいつの時点のものかは明らかでなく、各動画の内容も不明である(甲71)。
(ケ)2016年ないし2023年にかけて、全国4か所の自治体等の公的機関やSNSにおいて、請求人商品役務が紹介されている(甲106~甲109)。
イ 上記アによれば、請求人は、2015年以降継続して、引用商標4を請求人商品役務に使用しており、請求人は、自身のウェブサイトのほか、全国紙や雑誌、テレビ、SNS等において、引用商標4を使用した請求人商品役務についての広告を行っていること、及び、公的機関等において、請求人商品役務が紹介されていることがうかがえる。
しかしながら、引用商標4を使用した請求人商品役務の提供地域は、請求人作成の顧客リストに記載されたものであって、これを裏付ける証拠の提出がないことに加え、当該顧客リストは、2017年5月31日の一日分のものにすぎないから、これによって、提供地域が明らかであるとはいい難い。
また、自身のウェブサイトの閲覧者数は明らかでなく、全国紙における広告は、掲載期間が短く、掲載回数も多いものとはいえない。
そして、請求人商品役務についての広告が掲載された各雑誌は、その発行部数が不明であることに加え、これらの雑誌広告において、引用商標4は、比較的小さく、目立たない態様で表されている上、他の文字と結合して一体的に表されているものも少なくないことから、これらの広告において、引用商標4が独立して、需要者の印象に残るものともいい難い。
さらに、テレビCMについては、その内容が明らかでなく、CMにおいて引用商標4がどのように使用されていたかを把握することができない。
加えて、SNSにおける、タイトルに引用商標4が含まれる動画の掲載やその再生回数については、その再生回数に至った時期が明らかでない上、それぞれの動画の具体的な内容も不明であるから、これが請求人商品役務の周知性を具体的に裏付けるものとはいえない。
また、請求人の挙げる上記ア(ウ)のとおりの請求人商品役務の売上高は、作成者及び作成日が不明であり、当該費用を裏付ける証拠の提出もなく、客観性に欠けるものである。そして、仮に請求人商品役務の売上高が上記ア(ウ)のとおりであるとしても、「食品宅配企業の売上高調査」(日本流通産業新聞、乙3)によれば、令和6年の主要16社の合計売上高は2169億9600万円であり、このうち1位の企業が約866億円、2位の企業が400億円であるところ、これらの売上高と比較して、同年に約14億円とする請求人商品役務の売上高は、決して大きいとものとはいえない。
さらに、請求人の挙げる、上記ア(カ)のとおりのテレビCMや新聞広告の費用についても、請求人作成の一覧表に記載されたものであって、当該費用を裏付ける証拠の提出もなく、客観性に欠ける。そして、仮に宣伝広告費が上記ア(カ)のとおりであるとしても、それがどの程度の規模であるかを正確に把握することができない。
また、公的機関により請求人商品役務が紹介されていたことについても、わずか4か所の市町村や地域の例にすぎず、引用商標4の周知性を裏付けるものとはいえない。
以上によれば、請求人の提出した証拠によっては、引用商標4が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品役務を表すものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く知られていたものと認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性について
本件商標は、上記第1のとおり「気配り宅配食」の文字を標準文字で表してなり、引用商標4は、上記第2のとおり、「気配り宅配食」の文字よりなるところ、両者は構成文字を同一にすることから、類似の商標と認められる。
しかしながら、上記(1)のとおり、引用商標4は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品役務を表すものとして、我が国の需要者の間に広く知られていたものとは認められないものである。
そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものであるから、その他の要件について検討するまでもなく、本件商標は、同号に該当しない。
上記3(2)のとおり、本件商標と引用商標4は類似の商標と認められるから、両者の類似性の程度は高いといえる。
しかしながら、上記3(1)のとおり、引用商標4は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品役務を表すものとして、我が国の需要者の間に広く知られていたものとは認められない。
さらに、引用商標4である「気配り宅配食」の文字は、構成全体としては造語とはいえるものの、「気配り」、「宅配」及び「食」のそれぞれ平易な成語を組み合わせたものと容易に理解されるから、さほど独創性が高いものともいい難い。
そうすると、仮に本件商標の指定役務と、引用商標4に係る請求人商品役務とが関連性を有し、需要者を共通にする場合があるとしても、本件商標をその指定役務に使用した場合に、これに接する取引者、需要者が、引用商標4を連想又は想起するとは考えにくい。してみれば、本件商標がその指定役務に使用された場合、これが請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係のある者の業務に係る役務であると誤認し、その役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
上記3(2)のとおり、本件商標と引用商標4は類似の商標と認められる。
しかしながら、上記3(1)のとおり、引用商標4は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品役務を表すものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く知られていたものとは認められない。
そして、請求人は、不正の目的の証拠として、請求人と商標権者との間で平成27年に締結された売買基本契約書(甲111)及び同年に締結された秘密保持契約書(甲112)を提出し、当該契約において、商標権者は、請求人から受領した顧客情報等の秘密情報を、請求人から委託された弁当の製造及び宅配業務の目的のみに使用することが規定されているところ、当該契約は、その後2023年に、商標権者からの値上げ要求に請求人が応じなかったため解消され、その後、商標権者は、引用商標4が商標登録されていないことを奇貨として、本件商標の登録出願を行った旨主張している。しかしながら、上記の各契約により、商標権者が請求人の顧客の個人情報を知り得たとしても、商標権者がその情報をどのように扱ったかは明らかでない。また、商標権者による値上げ要求の金額等の詳細は不明であるが、値上げを要求すること自体が一概に不当な要求であるともいい難い。さらに、請求人が、引用商標4を登録出願する機会は十分にあったというべきであって、自ら登録出願しなかった責めを商標権者に求めるべき事情を見いだすこともできない。そうすると、請求人の主張及び提出に係る証拠によっては、商標権者が本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものということはできないから、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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