sokuhyo

Trademark Appeal Case

結合商標の類似性判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025685010
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結論
国際登録第1752936号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理由

第1 本件商標

本件国際登録第1752936号商標(以下「本件商標」という。)は、「ST.EDWARD’S OXFORD」の欧文字を横書きしてなり、2023年(令和5年)8月18日に国際商標登録出願、第41類「Education; providing of training; provision of educational courses; publication of printed matter and printed publications; the provision of on-line electronic publications; school services; boarding school services; day school services; tutoring; physical and sporting training and educational services; organisation and arranging of lectures, seminars, conferences and exhibitions; arranging and conducting examinations; entertainment; recreational activities; sporting activities; organization of exhibitions for cultural or educational purposes; library services; education academies; arranging and conducting of workshops (training); arranging and conducting of seminars; coaching (training); provision and operation of sporting and recreational facilities; educational services relating to career development; information, advisory and consultancy services relating to these services.」を指定役務として、2025年(令和7年)2月21日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する登録商標であり、いずれも現に有効に存続している。

なお、これらの商標をまとめていうときは「引用商標」という。

1 国際登録第927998号商標(以下「引用商標1」という。)

商標の態様:OXFORD

国際商標登録出願日:2010年(平成22年)11月29日(事後指定)

設定登録日:平成25年9月6日

指定商品及び指定役務:第9類及び第41類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務

2 登録第4496176号商標(以下「引用商標2」という。)

商標の態様:OXFORD

登録出願日:平成11年12月1日

設定登録日:平成13年8月3日

最新更新登録日:令和3年7月13日

指定商品及び指定役務:第16類、第35類及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務

3 登録第1769726号商標(以下「引用商標3」という。)

商標の態様:OXFORD

登録出願日:昭和57年5月7日

設定登録日:昭和60年5月30日(平成19年5月23日書換登録)

最新更新登録日:令和7年7月7日(第16類のみに区分減縮)

指定商品:第16類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第165号証を提出した(枝番号を含む。なお、以下、証拠の記載にあたっては、「甲第○号証」を「甲○」のように表記する。)。

なお、申立人は、登録異議申立書について補正できる期間(理由補充期間。商標法第43条の4第2項。)経過後に、令和8年1月27日付け及び同年3月16日付け上申書をもって、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する旨上申するとともに、甲第166号証及び甲第167号証を提出している。

1 申立人について

オックスフォード大学の正式名称は、「The Chancellor Masters and Scholars of the University of Oxford」(ザ チャンセラー マスターズ アンド スカラーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ オックスフォード)である。申立人である「The Chancellor Masters and Scholars of the University of Oxford,Trading as Oxford University Press」(ザ チャンセラー マスターズ アンド スカラーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ オックスフォード,トレイディング アズ オックスフォード ユニバーシティ プレス)(以下、「オックスフォード大学出版局」ともいう。)は、オックスフォード大学の一部門でありかつトレーディング・ネーム(事業を行う際に使用する名称)の1つであり、法人格としては同一・一体のものである。

すなわち、申立人は、オックスフォード大学と同じ法的主体であり、申立人による商標「OXFORD」の使用は、オックスフォード大学による使用であり、両者は一体として、商標「OXFORD」の国際的な名声・評判を築いている。

よって、以下においては、上記を前提に、申立人とオックスフォード大学の活動・名声等については同一法主体のものとして、記述する。申立人は、長年にわたり、「OXFORD」又はその表音である「オックスフォード」の語を、自らの教育・学術・研究・出版に係る業務の出所を示す標識として、世界各国で一貫して使用してきた。

このような継続的かつ広範な使用の結果、「OXFORD」又は「オックスフォード」の語は、教育・学術・研究・出版関連の商品及び役務において、オックスフォード大学ないし申立人の出所を表示するものとして、海外及び日本の需要者の間に広く認識されるに至っている。

以下においては、オックスフォード大学ないし申立人の国内外における実績を根拠として、商標「OXFORD」(「オックスフォード」)の周知・著名性について詳述する。

2 申立人の概要

オックスフォード大学は、英語圏で最も古い大学であり、少なくとも1096年頃には何らかの形で講義が行われており、1231年には大学としての存在が認められている(甲5、甲6)。1571年には「オックスフォード及びケンブリッジ法」に基づいて法人格を付与され(甲7、甲8)、以来、世界有数の教育・研究機関の一つとしての地位を築いてきた。2024年時点での在籍学生数は26,595名に上り、世界176の国・地域から学生を受け入れている(甲9)。さらに、2022年時点では、全学生数の約46%が英国国外からの学生であり、主な出身国としては、米国、中国、ドイツ、カナダ、インドなどがあげられる(甲10)。こうした実態は、同大学が世界的な教育・研究の中枢機関として国際的に高い評価と信頼を得ていることを示すものである。

申立人は、世界最古かつ最大規模の大学出版局であり、1586年に書籍印刷権を取得し(甲11)、1633年に出版監督委員が任命されて以降、オックスフォード大学の出版活動を展開してきた。1675年には欽定訳聖書の印刷権も付与された(甲12の1)。19世紀後半以降は国際展開を進め、1896年にニューヨークに最初の海外事務所を開設し、カナダ・オーストラリア・インド・南アフリカなどに事務所を設立している。現在では53か国以上に事務所を構え、それらを通じて200以上の国・地域で出版・教育サービスを提供している(甲12の1 )。

特に1928年に初版を刊行した『オックスフォード英語辞典(Oxford English Dictionary)』をはじめ(甲13)、近年では英語教育を中心にオンライン学術資料・教育コースの提供においても世界的に高い評価を受けている。このように、申立人は、世界的な活動を通じて、オックスフォード大学の「研究・学問・教育における卓越性の追求」という使命を体現する国際的出版機関として広く認知されている(甲12の2 )。

3 「OXFORD」の周知・著名性

(1)申立人の国際的な実績、活動

ア 第三者からの国際的評価(大学ランキング、受賞歴)からも、オックスフォード大学ないし申立人が国際的に高く評価され、学術的権威と信頼性を有していること

オックスフォード大学は、世界を代表する大学として国際的評価を受けており、たとえば「Times Higher Education(THE)世界大学ランキング」では、2017年から2025年にかけて9年連続で世界第1位に選出されている(甲14~甲16)。また、QS世界大学ランキングや英国国内の各種大学評価においても常に上位にランクインし、世界トップクラスの教育機関と認識されている(甲17 、甲19)。

イ 申立人の活動実績からも、オックスフォード大学ないし申立人が世界レベルで学術界を牽引してきており、著名性・卓越性を有していること

オックスフォード大学の卓越した研究活動は、英国における研究の質と影響力を全国的に評価する制度である「Research Excellence Framework(REF)2021」(リサーチ・エクセレンス・フレームワーク)において、高く評価されている。同大学は、REF2021において、29の研究分野にわたり、3,600人超(常勤換算で3,405人)の研究者を対象として申請を行い、学術論文から作曲作品に至るまで8,500件以上の研究成果物を提出したほか、大学の研究が学術界を超えて社会に及ぼす影響を示す220件の事例研究も提出した。

その結果、オックスフォード大学は、英国の全高等教育機関の中で最大規模の提出を行っただけでなく、「世界をリードする」と評価された研究の件数においても最高の実績を示した。これは、同大学の研究水準の高さと、広範な社会的影響力とを客観的に裏付ける評価結果である(甲19の1、甲19の2)。

さらに、オックスフォード大学は、その長い歴史において、世界的に著名な人材を多数輩出し、学術機関としての卓越した地位を築いてきた。実際に、これまでに28名の英国の首相、少なくとも30名の各国の指導者、55名のノーベル賞受賞者、及び120名のオリンピックメダリストが、同大学で学び、又は教鞭を執っている(甲20)。

さらに、卓越した研究・学術活動により、以下詳述するとおり、オックスフォード大学で学んだ、又は教鞭を執った人物が国際的に権威ある数々の賞を受賞してきた。その分野は自然科学から人文学、平和活動に至るまで多岐にわたり、名実ともに世界有数の学術機関としての地位を確立している。

(ア)ノーベル賞(Nobel Prizes)(甲21)

ノーベル賞は、化学・経済・文学・医学・平和・物理学の6部門において、世界的に最も権威ある賞である。同大学はこれまでに多数の教職員・卒業生が各分野で同賞を受賞しており、特に化学、医学、物理学の分野において顕著な実績を誇る。

(イ)フィールズ賞(数学)(甲21)

世界最高峰の数学賞であるフィールズ賞においては、オックスフォード大学はこれまでに4名の受賞者を輩出している(1966年~2022年)。

(ウ)バルザン賞(学際・人文・科学分野)

バルザン賞は、人文科学、自然科学、芸術、平和活動などの幅広い分野において、国際的に優れた業績を評価し授与される賞である。分野横断的な知的貢献を顕彰するこの賞において、オックスフォード大学は、1985年から2012年までの間に9名受賞している。

(エ)ロルフ・ショック賞(数学・哲学・芸術・音楽)(甲21)

ロルフ・ショック賞は、数学、論理学・哲学、視覚芸術、音楽の分野における傑出した業績に対して、隔年で授与される。オックスフォード大学は、1993年から2022年にかけて8名が受賞しており、特に数学・哲学分野において高い評価を得ている。

(オ)アーベル賞(数学)(甲21)

ノルウェー政府が授与する数学分野で最も権威ある賞の一つであり、生涯にわたる顕著な業績を顕彰する。オックスフォード大学は、2名(2004年、2016年)が受賞している。

(カ)その他の国際的評価・顕彰

王立協会フェロー(Fellow of the Royal Society):これまでにオックスフォード大学から90名以上が選出されている(甲10)。

英国学士院フェロー(Fellow of the British Academy):これまでにオックスフォード大学から100名以上が選出されている(甲10)。

女王記念賞(Queen’s Anniversary Prize):直近では2021年と2023年にオックスフォード大学が受賞している(甲22の1、甲22の2)。

申立人は、教育及び学術出版の分野において、各国の権威ある賞を多数受賞しており、その国際的評価と専門的信頼性は極めて高い。とりわけ、2018/19年度及び2019/20年度には、以下のとおり、世界各国における教育関連団体・出版業界から数多くの賞を受賞している。

a【2018/19年度】

「オーストラリア教育出版賞(Educational Publishing Awards Australia)2018」において「年間最優秀中等教育出版社賞」受賞(甲23)

後述のとおり、申立人は同賞を3年連続で受賞している(甲28)

Indian Education Awards 2019-Best K-12 Publisher of the Year2019年インド教育賞「K-12部門 最優秀出版社賞」(甲24)

India Didactics Association-Product/Solution/Service of the Yearインド教育学会優秀製品・ソリューション・サービス賞(甲25)

2018年度の国際的教育賞「Academics’ Choice Award」において、最優秀教材に贈られる「スマートブック賞」を受賞(甲26)

英語スピーキング連盟(English Speaking Union)より、2018年「英語教育賞(English Language Award)」を受賞(対象:幼児向け教材『Mouse and Me』)(甲27)

b【2019/20年度】

「オーストラリア教育出版賞(Educational Publishing Awards Australia)2019」において、「年間最優秀中等教育出版社賞」を受賞。3年連続の受賞となる(甲28)

2019年の南アフリカ・セフィカ賞において、「年間最優秀教育出版社賞」及び「年間最優秀学術出版社賞」の2冠を受賞(甲29)

c【その他】

Best All-round MPF Employer

香港でのMPF(Mandatory Provident Fund:強制退職積立金)制度に関して、特に優れた取り組みを行っている雇用者に与えられる「総合最優秀雇用者賞」を受賞 (甲30)

このように、長年にわたり、国際的に権威ある各種賞を多数受賞していることからも明らかなとおり、申立人は、教育及び出版に関連する商品・サービスの分野において、国際的に高い評価と信頼を確立しており、その著名性と卓越性は疑う余地がない。

ウ 申立人の出版分野における活動実績からも、申立人が教育・学術分野において中核的な役割を果たし、その国際的影響力と著名性を確立していること

上述のとおり、申立人は、教育・学術・研究などに関する出版活動を通じて、オックスフォード大学の学術的信頼と国際的名声の確立及び強化に寄与する中核的な役割を果たしている。

申立人が提供する学術研究プラットフォーム「Oxford Academic」では、2023/24年度に、世界250以上の国・地域から1億8,000万を超えるユニークビジター(特定の期間内にサイトを訪れた延べではない個別の訪問者数)を受け入れ、総訪問件数は14億件を超えている(甲31)。また、Oxford Academicでは現在、500誌以上の学術誌と300万本以上の論文、42,000冊上の書籍及び50万以上の章が提供されており、申立人が国際的な学術情報の中核としての地位を確立し、学術研究の分野において国際的に広く信頼と実績を有していることが明らかである(甲32の2頁)。

学術電子書籍サービス「Oxford Scholarship Online(オックスフォード・スカラシップ・オンライン)」では、2023/24年度に7,500冊の書籍が新たに追加され、提供コンテンツ量は前年比で30%増加した。これにより、同サービスは研究及び教育分野における資料提供の中核的役割を果たす存在として、国際的にも確固たる評価を得ている(甲31)。

教育分野では、申立人が提供する教材が180か国以上に展開され、35言語についてライセンス供与されているほか、辞書は45言語以上に翻訳されており、多言語対応とアクセシビリティの両面で、グローバルな教育インフラの形成に寄与している(甲33)。

さらに、申立人は、南アフリカの北ケープ州の教育省及びUNICEFと連携し、約120万ポンド規模の文学的介入プロジェクトを開始しており、123校に在籍する2万人以上の児童を対象に、600人を超える教員研修を実施するものである(甲34)。また、OECD(経済協力開発機構)が策定する「PISA2025科学フレームワーク」に貢献し、若年層の科学的リテラシー向上に資する国際的枠組みの構築にも参画している(甲35)。加えて、英国においては5歳から11歳を対象とする全国規模のストーリーライティングコンテスト「BBC 500 Words」において、申立人はパートナーとして参加し、本年には44,000編を超える応募作品を通じて児童の言語能力育成に貢献している(甲36)。

また、申立人は、Oxford Dictionariesのデータを他社製品に組み込むことを可能にするアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)「Oxford Languages」のライセンス提供事業を展開しており、Apple、Amazon、Google、Microsoftなどの世界的なテクノロジー企業と主要な更新契約を締結している。これらの契約には、ウルドゥー語、テルグ語、タミル語、中国語など、英語以外の多言語データセットも含まれており、多言語・多文化環境に対応した高度な辞書・言語データの提供に寄与している。さらに、Googleに新たに導入された出典表示機能においては、14言語にわたる検索体験を支える信頼性の高い情報提供元としてOxford Languagesの役割が明示されている(甲37の1)。

加えて申立人は、国際的な教育・学術機関との連携の下、研究成果の普及と教育機会の拡大にも積極的に取り組んでいる。たとえば、インドにおいては「One Nation,One Subscription」契約に署名し、今後3年間にわたり、同国の6,500の公的教育機関に対してジャーナルコレクションへのアクセスを提供する体制を構築しており、これにより最大1,800万人の学生、教員、研究者への情報提供が可能となっている(甲37の2の10頁)。さらに、カリフォルニア図書館連合(California Libraries Coalition)とは4年間のRead and Publish契約を締結し、60の大学に対してジャーナルの閲覧及びオープンアクセス出版の支援を行っている。2024年には、34,000本を超えるオープンアクセスの学術論文及び100冊を超えるオープンアクセス書籍を出版し、研究成果の広範な公開と教育へのアクセスの推進にも大きく貢献している(甲37の2の12頁)。

以上は申立人による数多くの活動等の一部にすぎないが、このように、申立人は、国際機関や各種組織からの高い評価と社会的信頼に裏付けられた多様な活動を展開しており、さらに家庭学習支援や言語教育の分野にも幅広く取り組むことで、社会との接点を着実に広げている。

エ 売上等の財務面においても、オックスフォード大学と申立人が国際的に教育・学術分野において中心的な役割を担っていることを裏付けられること

オックスフォード大学及び申立人の社会的影響力と国際的評価は、財務面においても裏付けられている。

オックスフォード大学の総収入は、2014/15年度には15億ポンド(1ポンド=約194円換算で約2,900億円)を超え、2022/23年度には約29億ポンド(約5,400億円)に達している(甲41)。

年度別総収入(2014/15~2022/23)

会計年度 総収入(百万ポンド) 日本円換算(億円)

2014-15 1523.9(甲38) 約2956.4億円

2015-16 1321.8(甲38) 約2564.3億円

2016-17 1400.4(甲38) 約2716.8億円

2017-18 2237.0(甲39) 約4339.8億円

2018-19 2450.1(甲39) 約4753.2億円

2019-20 2536.4(甲40) 約4920.6億円

2020-21 2449.5(甲41) 約4752.0億円

2021-22 2775.4(甲41) 約5384.3億円

2022-23 2924.7(甲41) 約5673.9億円

申立人の年間売上高は、2008年度以降、常に高水準を維持しており、特に2012年度以降は毎年7億ポンド(約1,358億円)を超える収入を記録している。

年間売上高(2008年~2025年)

年度 売上高(百万ポンド) 日本円換算(億円)

2008 492.3 約955.1億円

(中略)

2020 844.9(甲42) 約1639.1億円

2021 754.5(甲37) 約1463.7億円

2022 781.3(甲32) 約1515.7億円

2023 825.3(甲32) 約1601.1億円

2024 833(甲43) 約1616.0億円

2025 795.7(甲37の2) 約1543.7億円

申立人は、世界各国の学生、研究者、教育機関、政府機関、非政府組織(NGO)等との間で長年にわたり信頼関係を構築しつつ、教育・学術・出版分野において安定的かつ継続的に事業を展開してきた。その結果として、各国市場において継続的に高水準の売上実績を上げており、これらの実績は、申立人が国際的に教育・出版分野において中心的な役割を担っていることを裏付けるものである。

オ 申立人のSNSを通じた国際的な発信力も高く、これによっても「OXFORD」の名称が国際的に広く認知・想起されるに至っていること

オックスフォード大学及び申立人は、以下のとおりFacebook、YouTube、Instagram、X(旧Twitter)、LinkedInなど、主要なソーシャルメディア・プラットフォームを通じた宣伝広告活動を行っているが、オックスフォード大学及び申立人が管理運営する各アカウントはいずれも数多くのフォロワーを有しており、教育・学術機関として世界でも屈指の情報発信力を誇っている(甲44ないし甲55)。

オックスフォード大学のFacebookは約480万フォロワー、Instagramは約180万フォロワー、X(旧Twitter)は約100万フォロワー及びYouTubeは累計約5,358万回再生となっている。また、申立人のFacebookは約109万フォロワー、Instagramは約3万フォロワー、X(旧Twitter)は約3万7,400フォロワーなどとなっている。

(2)日本におけるオックスフォード大学及び申立人の実績・活動、並びに「OXFORD」、「オックスフォード」の使用実績

ア オックスフォード大学及び申立人が日本との間に長年にわたる歴史的・学術的関係性を築いてきたことからも、その学術的権威が我が国においても確立されていること

オックスフォード大学及び申立人は、長年にわたり日本との間で多様かつ深い関係を築いてきた。

19世紀に初の日本人学生がオックスフォード大学に入学して以降、同大学には岩倉具経、津田梅子、秩父宮、さらには現天皇(徳仁親王)など、皇族・政府高官を含む多数の日本人が留学しており、日本との学術的・文化的交流は非常に長い歴史を有している(甲56、甲57)。

また、2009年及び2016年~2017年には、オックスフォード大学に在籍する日本人学生が100名を超えており、現在に至るまで日本との結びつきは継続している(甲58、甲59)。さらに、オックスフォード大学には日本人向けのオックスフォード上廣大学院 奨学金、オックスフォード神戸奨学金など多様な奨学金制度が設けられている。2025年現在、日本国内には1,500人以上の卒業生が在住しており、「The Cambridge and Oxford Society」及び「Oxford Alumni Club of Japan」という2つの公認同窓会が、活発に活動を展開している(甲60~甲61の5)。

オックスフォード大学は、また、日本の主要研究機関・企業と幅広く連携も行っている。たとえば、NTTとの共同研究プロジェクトがその代表例であり、2004年にはオックスフォード大学の物理学部とともに、学習や記憶に関与する神経受容体の構造と機能に関する国際共同研究プログラムが立ち上げられている。また、京都大学、大阪大学、名古屋大学、金沢大学など日本の主要大学とも、物理学や生化学の分野における研究交流が活発に行われており、特にIRC(Ionics Research Centre)のライアン教授は、30年以上にわたり日本の研究者と共同研究を続けている(甲58)。

さらに、日本電子株式会社(JEOL)との次世代顕微鏡開発、武田薬品との新薬研究、野村ホールディングスとの金融・数学分野の研究、三菱重工業や三井グループによる奨学金提供、日本生命との人材育成連携など、民間企業との協働も幅広く展開されている。これらはいずれも最先端分野における国際共同研究の具体的な成果と言える(甲59)。

このように、オックスフォード大学は、学術・研究・人材育成の多方面にわたり、日本の大学や企業と緊密かつ持続的な関係を築いてきており、その国際的な研究ネットワークの中に日本が確固たる位置を占めていることが明らかである。

オックスフォード大学は20年以上前に日本事務所(東京都港区)を設立し、日本国内の企業・団体・卒業生・一般市民との協力関係の構築を推進してきた(甲60、甲61の1)。また、申立人も日本に事務所を有しており、現在のオックスフォード大学出版局日本支社には50名以上のスタッフが在籍している。日本の教育現場とも深く関わっており、英語教材の提供や教員向けの研修などを通じて、日本の教育に貢献している(甲62、甲57)。

特に学術部門においては、オックスフォード大学出版局は、日本の主要なジャーナルコンソーシアムである「大学図書館コンソーシアム連合(Japan Alliance of University Library Consortia for E―Resources:JUSTICE)」と連携し、日本国内の25機関とRead&Publish契約を締結しており、2025年版Academic Collection全体へのアクセスを提供している。この契約の総額は純額で150万ポンド(約2億9,100億円)を超え、2024年の利用件数は80万件を上回っている(甲63~甲65)。さらに、オックスフォード大学出版局が提供するジャーナルコレクションの購読契約は、日本国内の67機関に及び、契約総額は純額で170万ポンド(約3億2,980万円)を超える。2024年には21万件を超える利用があり、大学院生や教職員を中心とした約6万人の読者層によって活用されていると推定される。

また、医薬分野においても、オックスフォード大学出版局は日本医学図書館協会(JMLA)/日本薬学図書館協議会(JPLA)との契約に基づき、2022~2025年のLife Science/Medicine Collectionを30機関に提供しており、利用件数は46万件超、対象読者は医師・薬剤師・研究者・教員・大学院生など推定1万7500名以上とされている。

イ 日本国内の主要メディアにおいて、オックスフォード大学はノーベル賞受賞校や世界大学ランキング上位校として繰り返し紹介され、日本人学生や教育関係者の間で高く評価されていること

オックスフォード大学が世界的な学術的権威を有することは、前述のとおり、ノーベル賞やフィールズ賞等の国際的に著名な賞の多数の受賞実績からも明らかであるが、これらの受賞実績は、我が国の主要報道機関(例えば、朝日新聞、日本経済新聞、毎日新聞、産経新聞等)でも繰り返し紹介されている(甲67~甲72)。

また、前述のとおり、オックスフォード大学は、世界大学ランキングで常に上位に位置しているところ、日本国内の主要メディアにおいても、オックスフォード大学が世界大学ランキングの上位校として繰り返し紹介されており、その卓越した地位は我が国においても広く認知されている(甲73~甲88)。

加えて、地方紙でありながら全国的な配信力を有する琉球新報においても、オックスフォード大学が「世界大学ランキング1位の英国名門」として紹介され、同大学への現役合格を果たした日本人高校生に関する記事が大きく報じられている。このように、地方紙を含む日本各地のメディアにおいても、オックスフォード大学は「海外名門大学の筆頭」として繰り返し言及されており、日本人学生にとって特別な憧れと関心の対象であることがうかがえる(甲89)。

ウ 申立人が日本国内においても安定した売上実績を有しており、教育・学術市場における影響力を継続的に維持していること

申立人は、世界中の学生・研究者・教育機関・政府機関・NGO等との強固な信頼関係の下、教育・学術・出版活動を安定的かつ継続的に展開しており、その成果は、申立人の教育部門の日本における売上実績に明確に表れている。

たとえば、日本市場での売上は、2023/24年度においては約36万ポンド(約7億円(1ポンド=約194円換算))以上を記録し、2024/25年度には約31万ポンド(約6億円)を超える見込みとなっている。

また、販売構成としては、約15%が「Oxford International Primary product」シリーズ教材であり、約12~15%が国際バカロレア関連教材であり、日本の初等・中等教育分野においても確実に浸透していることがうかがえる。

さらに、申立人による日本での総売上は、2001/02年度に約20億円、2016/17年度には約15億円、そして2023/24年度には約10億円を超える規模となっている(なお、申立人の日本市場のみの売上に関する資料に関しては提出することができないが、申立人の日本における活動状況などを踏まえれば、当該金額の正確性については十分に信頼されるものと思料する。)。

以上のとおり、申立人は長年にわたって日本との多様かつ深い関係を築いており、教育・研究・文化・産業などあらゆる分野で日本社会において広く知られ、著名な教育・学術機関としての地位を確立している。

エ 「OXFORD」又は「オックスフォード」が「オックスフォード大学」を指称するものとして、日本国内の書籍、雑誌、新聞、テレビ等において多数使用されており、同大学の略称として「OXFORD」又は「オックスフォード」が我が国の需要者の間に広く認識されていること

オックスフォード大学は、長い歴史と卓越した学術的評価を背景に、日本においても広く知られ、極めて高い信頼と認知を得ている。とりわけ、教育・学術・研究・出版の分野において、「OXFORD」又は「オックスフォード」の語は、我が国において、古くから一貫してオックスフォード大学を指す語として使用されており、一般需要者においても、当然に同大学を想起・認識させるものとなっている。

このような実情は、文献、テレビ番組名、書籍タイトル、新聞・雑誌記事、講演タイトル等において、「OXFORD」又は「オックスフォード(オクスフォード)」が文脈上明確に「オックスフォード大学」を指して使用されている事実からも明らかである。以下において、その具体例の一部を示す。

(ア)「オックスフォード(オクスフォード)」が「オックスフォード大学」を意味する語として使用されている明治期から昭和初期の文献例(甲90~甲106)

(イ)「オックスフォード」が「オックスフォード大学」として認識されていることを示すテレビ番組名(甲107~甲110)

(ウ)「オックスフォード」が「オックスフォード大学」として認識されていることを示す書籍タイトル(甲111~甲126)

(エ)「オックスフォード」が「オックスフォード大学」として認識されていることを示す記事、文献の記載(甲75、甲127~甲146)

(オ)申立人の書籍における「OXFORD」の使用例

申立人は、長年にわたり出版物において、自らの出所を示す標識として、「OXFORD」単体、又は大きく顕著に表された「OXFORD」を要部とする態様に係る表示を一貫して使用してきた。例えば、出版物の主要箇所である表紙やタイトルにおいて、「OXFORD」が付されている(甲147~甲156)。

(カ)申立人のサービスにおける「OXFORD」又は「オックスフォード」の使用例

申立人は、日本における教育・出版関連のサービスにおいても、オックスフォード大学が提供するものとして「OXFORD」又は「オックスフォード」の語を積極的に冠しており、その出所を明確に表示している。 たとえば、英語学習支援プラットフォーム「Oxford Reading Club」、読書促進コンテスト「Oxford Big Read 2025」、段階別読本シリーズ「Oxford Graded Readers」、児童向け英語教材シリーズ「Oxford Discover」、教員支援サービス「Oxford Teachers’Club」、児童向け読書教材「オックスフォード・リーディング・ツリー」、総合英語学習支援プラットフォーム「Oxford English Hub」など、主要な教材・支援サービスにおいて「OXFORD」又は「オックスフォード」の語が明確に用いられている(甲157~甲162)。

さらに、英語能力評価プログラムにおいても、「OXFORD」の語を冠した複数のテストを世界的に展開しており、オックスフォード大学が認証する英語運用能力試験「Oxford Test of English」、学習者のレベル判定を目的とした「Oxford Placement Test」、及び児童向けの「Oxford Placement Test for Young Learners」などが提供されている(甲163)。

以上のとおり、我が国における書籍、新聞、雑誌、テレビ、ウェブサイト等の各種メディア媒体において、教育・学術・研究・出版分野に関する記述の際には、「OXFORD」又は「オックスフォード」の語が、一貫してオックスフォード大学を指すものとして使用され、同大学の出所を示す語として一般需要者に広く認識されていることは明らかである。

(3)過去の審決においても、オックスフォード大学の著名性が認定されていること

貴庁の過去の審査・審決において、オックスフォード大学が我が国において周知・著名であることが認定されている。例として、その一部を以下に挙げる。

ア 平成5年審判第14881号「OXFORD UNIVERSITY BOAT CLUB」(第21類)

当審の判断において、「本願商標は、別紙に示すとおりの欧文字を書してなるところ、その構成中「OXFORD UNIVERSITY」の文字部分は、ケンブリッジ大学と並ぶ英国最古の大学として我が国においてもよく知られているオックスフォード大学を認識させるものである。」旨認定されている。

イ 異議2019-900303号「図形+OXFORD」(第25類、第35類、第40類)

当審の判断において、「オックスフォード大学は、英国はもとより我が国においても、古くから英国の伝統と由緒ある大学として著名であり、本件商標の登録出願時及び登録査定時においても、需要者の間に広く知られていたものと認められる。」旨認定されている。

ウ 平成10年審判第20453号「OXFORD CLUB」(第25類)

原査定において「本願商標は、登録異議申立人(以下「申立人」という。)『オックスフォード大学』(The University of Oxford)の著名な略称と認められる『OXFORD』の文字を含むものであって、しかも他人である申立人の承諾を得ているものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨認定されている。

このような判断は、オックスフォード大学及びその略称である「オックスフォード」又は「OXFORD」が我が国においても広く認識され、著名な存在であることを示すものといえる。

なお、上記異議2019-900303号及び平成10年審判第20453号において、本件(本願)商標の登録は最終的に認められているが、これらの商標に係る指定商品・指定役務は、「被服」(第25類)やその小売等役務(第35類)等である。例えば、平成10年審判第20453号の当審の判断では、以下のとおり判断されている。

「商標法第4条第1項第8号は「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」とするものであって、同法条の趣旨は人格権保護にあると解される。また、著名な略称の場合も氏名等と同様に特定人の同一性を認識させる機能を有することから、他人の氏名・名称等と共にその保護対象とすべきであり、著名の程度の判断については、商品又は役務との関係、すなわち、当該商品又は役務の分野における需要者の注意力その他取引の実情を考慮する必要があると解するのが相当である。本願商標は、上記のとおり、「OXFORD CLUB」の欧文字を横書きしてなるところ、たとえ、その構成中の「OXFORD」の文字が英国のオックスフォード大学(The University of Oxford、イングランド中部、オクスフォードシャー州、オックスフォード所在)の略称として用いられる場合があるとしても、本願商標の指定商品は、上記のとおり「被服,ベルト,履物」であって、同大学に係る事業に直接関わるものでなく、もとより「OXFORD」の語が都市名としても知られていることとも相まって、その関係は希薄といわざるを得ない。」

上記判断を本件に当てはめると、本件商標の指定役務(第41類)である教育関連サービスは、オックスフォード大学が古くから一貫して提供し続けた結果、高い評価を得ている役務であり、まさに同大学に係る事業に直接関わるものであって、その関係は密接ないしは実質的に一致しているといわざるを得ない。

よって、上記判断は、少なくとも本件商標の指定役務(第41類)との関係においては、その需要者の注意力その他取引実情を考慮すれば、「OXFORD」は、申立人である「オックスフォード大学」を示すものとして容易に認識されることを裏付けるものといえる。

(4)小括

以上に述べた事実・証拠から明らかなとおり、「OXFORD」又は「オックスフォード」は、教育・学術・研究・出版分野において「オックスフォード大学」を示す語として世界的に高い著名性を有し、日本においても、オックスフォード大学を示す語として広く認識されている。

4 本件商標について

本件商標は「ST.EDWARD’S OXFORD」を一連に表した態様からなるものである。本件商標の構成中、前半部分の「ST.EDWARD(’S)」は、「St.」が「Saint(聖)」等を意味し、「Edward」が人名(固有名詞)を示す語であることから、両語を組み合わせると全体として聖人の名前などを想起させるものである(甲164、甲165)。一方、「OXFORD」は上述のとおり、申立人等が教育・学術・出版分野で長年にわたり一貫して使用してきた周知・著名な商標であって、とりわけ本件指定役務である第41類「教育,訓練の提供,教育講座の提供及び教育講座における知識の教授,印刷物及び印刷された出版物の制作,オンラインによる電子出版物の提供,学校における教育,全寮制学校における教育,昼間学校の提供,個人に対する知識の教授,身体及びスポーツのトレーニング訓練及び知識又は技芸の教授,講演会・セミナー・会議及び展示会の運営及び手配,試験の手配及び実施,文化又は教育のための展示会の企画・運営,図書の供覧及び貸与,専門学校における教育,研修会の手配及び管理,セミナーの手配及び運営,指導(訓練),職業開発に関連する教育,これらの役務に関する情報の提供・助言及び指導」等との関係においては、著名な教育機関であるオックスフォード大学を直ちに想起させる語である。

したがって、本件商標は、特に第41類の役務との関係においては「ST.EDWARD’S」と「OXFORD」との間で観念上の繋がりがあるとはいえず、これに接した取引者・需要者は周知・著名な「OXFORD」に着目し、出所識別標識(要部)として認識するものであって、本件商標は、引用商標とは類似する商標である。

5 商標法第4条第1項第8号の該当性について

商標法第4条第1項第8号の趣旨は、他人の氏名、名称、又は著名な略称等について、本人の承諾なく商標として使用されることがないよう、人格的利益を保護する点にあると解される。

本件商標は、その構成中にオックスフォード大学の著名な略称である「OXFORD」の語を含んでおり、登録査定時点においてもオックスフォード大学から承諾を得ているものではない。したがって、本件商標の登録は、オックスフォード大学の利益を損なうものであり、商標法第4条第1項第8号に該当する。以下にその理由を詳述する。

(1)「OXFORD」が「他人の著名な略称」に該当すること

「OXFORD」の語は、オックスフォード大学の略称として、教育・研究・出版など多様な分野において世界的に広く使用されてきたものである。特に我が国においては、文献、テレビ番組名、書籍タイトル、新聞・雑誌記事、講演タイトルなど、さまざまな媒体を通じて、「OXFORD」は一貫してオックスフォード大学を指す語として理解されている。

このように、「OXFORD」は教育サービス分野にとどまらず、社会一般においてもオックスフォード大学の略称として広く認識されており、「著名な略称」に該当することは明らかである。

(2)本件商標が他人の著名な略称を「含む」ものであること

商標法第4条第1項第8号に関する審査基準では、他人の名称等を「含む」商標か否かは、当該部分が他人の名称等として客観的に把握され、かつ当該他人を想起・連想させるかどうかによって判断されるとされている。

本件商標「ST.EDWARD’S OXFORD」には「OXFORD」が含まれており、特に本件指定役務との関係において、「OXFORD」はオックスフォード大学を示す略称として容易に想起・連想される。

よって、本件商標は、オックスフォード大学(他人)の著名な略称を含む商標に該当する。

以上の事情を総合すれば、本件商標は、オックスフォード大学の著名な略称である「OXFORD」を、その登録査定時にオックスフォード大学から承諾を得ることなく無断で本件商標中に使用したものであり、その登録はオックスフォード大学の利益を損なうものといえる。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当する。

なお、かかる主張は、上記で言及した平成10年審判第20453号の貴庁での判断などを踏まえれば、少なくとも、第41類を指定する本件商標との関係において、受け入れられるべきものと思料する。

6 商標法第4条第1項第11号の該当性について

(1)本件商標と引用商標1の対比

引用商標1は、第41類の教育関連などの役務を指定する、「OXFORD」から構成される登録商標であり、当該「OXFORD」は、教育・学術・研究分野において「オックスフォード大学」を示す語として世界的に高い著名性を有し、日本においても、オックスフォード大学を示す語として広く認識されていることは上述したとおりである。

したがって、引用商標1から、「オックスフォード」の称呼と「著名な教育機関であるオックスフォード大学」の観念が生じるものである。

一方、本件商標は、上述のとおり、特に第41類の役務との関係においては「ST.EDWARD’S」と「OXFORD」との間で観念上の繋がりがあるとはいえず、また教育分野における「OXFORD」の周知・著名性を踏まえれば、本件商標に接した取引者・需要者は「OXFORD」に着目し、これを要部として認識するものであるため、本件商標から「オックスフォード」の称呼及び「著名な教育機関であるオックスフォード大学」の観念も生じるものである。

さらに、本件商標中の「OXFORD」が要部として認識されることは、商標法第4条第1項第11号の審査基準の規定からも明らかである(商標審査基準 改訂第16版 十 第4条第1項第11号4.)。すなわち、同審査基準では、「結合商標の類否判断について」の項目にて、「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字と結合した商標」は、外観構成が一体的である場合や観念上のつながりがある場合を含めて、原則として、その他人の登録商標と類似する旨、規定されている。

当該基準の該当性について検討するに、本件商標は、「ST.EDWARD’S OXFORD」の欧文字からなる商標であるが、その構成中には「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標」である引用商標1と同一の文字列から成る「OXFORD」の文字が含まれており、本件商標中の「ST.EDWARD’S」と「OXFORD」は全体として観念上の繋がりもあるといえず、同審査基準の例外(「その他人の登録商標の部分が既存の語の一部となっているもの等を除く。」)にも該当しえない。

以上から、本件商標は、「オックスフォード」の称呼及び「著名な教育機関であるオックスフォード大学」の観念が生じるものであって、引用商標1と類似する商標である。

(2)本件商標と引用商標1の指定商品及び指定役務の類否について

本件商標の指定役務には、引用商標1の第41類の指定役務と同一又は類似する役務「教育,訓練の提供,教育講座の提供及び教育講座における知識の教授,印刷物及び印刷された出版物の制作,オンラインによる電子出版物の提供,学校における教育,全寮制学校における教育,昼間学校の提供,個人に対する知識の教授,身体及びスポーツのトレーニング訓練及び知識又は技芸の教授,講演会・セミナー・会議及び展示会の運営及び手配,試験の手配及び実施,文化又は教育のための展示会の企画・運営,図書の供覧及び貸与,専門学校における教育,研修会の手配及び管理,セミナーの手配及び運営,指導(訓練),職業開発に関連する教育,これらの役務に関する情報の提供・助言及び指導」が含まれる。また、第41類「電子出版物の提供」は第9類「電子出版物」と備考類似の関係にある(御庁類似商品・役務審査基準 備考類似商品・役務一覧表参照)。よって、本件商標の指定役務中「オンラインによる電子出版物の提供」は、引用商標1の第9類の指定商品「デジタル出版物,ダウンロード可能な電子出版物,データベースからオンラインで又はインターネットで提供されるファシリティから提供されたダウンロード可能な電子形式の出版物」とも類似するものである。

(3)結論

以上述べたとおり、本件商標は引用商標1と類似する商標であり、また指定役務についても、申立人の提供に係る役務・商品と誤認されるおそれがある同一又は類似する役務に当たるというべきであることから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。

7 商標法第4条第1項第15号の該当性について

本件商標は、その国際登録日の時点及び登録査定時において、申立人の引用商標と類似し、かつ本件商標の指定役務は、引用商標が使用されている商品・役務と密接な関連性を有している。したがって、本件商標をその指定役務について使用した場合には、取引者・需要者においてオックスフォード大学ないし申立人の業務に係る役務であるとの誤認・混同が生ずるおそれが高く、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。以下、その理由を詳述する。

(1)引用商標の周知・著名性

オックスフォード大学ないし申立人は、数百年にわたり、教育・研究・学術・出版の各分野において、引用商標を一貫して使用しており、その長年にわたる卓越した教育・研究活動の実績、並びに世界中の教育機関との広範な交流・連携により、当該表示は国際的に強固なブランド価値を確立している。とりわけ日本においては、引用商標は、教育・学術関連の文脈において、教育関係者、出版業界、研究者層はもとより、一般消費者を含む広範な需要者の間で、オックスフォード大学ないし申立人の出所表示として極めて高い周知性・著名性を有していることは疑いようがない。

(2)本件商標と引用商標の類似性及び混同のおそれ

貴庁における商標審査基準では、他人の著名な商標を一部に有する商標について、以下のように規定されている。

「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、商品等の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱うものとする。ただし、その他人の著名な商標が既成語の一部となっているもの、又は、指定商品若しくは指定役務との関係において出所の混同のおそれのないことが明白なものを除く。」(商標審査基準 改訂第16版 十三第4条第1項第15号 2.)

これを本件についてみると、本件商標は、「ST.EDWARD’S」と「OXFORD」との語から構成されているところ、「OXFORD」の語は、前述のとおり、教育・学術・研究・出版などの分野においてオックスフォード大学ないし申立人の周知・著名な商標であるため、「ST.EDWARD’S」と「OXFORD」の両語は、観念上の繋がりがあるといえず、また、識別標識としての軽重の差は容易に認識されるものである。

すなわち、取引者・需要者は、本件商標の構成中、「OXFORD」の語に外観・称呼・観念のいずれの観点からも強く着目し、当該部分に直ちにオックスフォード大学ないし申立人を想起・連想すると解されるのが相当である。

さらに、本件商標は第41類の役務を指定し、引用商標1と抵触するものである。加えて、引用商標2及び引用商標3が指定する第16類の出版物及び第42類の出版物に関する情報提供サービスは、申立人が長年にわたり教育・学術活動の一環として行ってきた出版・出版情報サービスに関する商品・役務である。申立人は、教育に密接に関連した出版物の発行や教育資源の提供を継続的に行っている状況に鑑みれば、本件商標を本件役務に使用した場合には、あたかもオックスフォード大学ないし申立人の業務に係る商品・役務であると誤認し、商品・役務の出所に関して混同を生ずるおそれがあるというべきである。

以上より、本件商標は、指定商品・役務との関係において出所の混同のおそれのないことが明白なものとは言えないため、上記基準の但し書きに該当するものではない。

したがって、上記審査基準に照らせば、本件商標は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」と認定されるべきものである。

したがって、オックスフォード大学ないし申立人と経済的又は組織的な関連性を誤信させる「広義の混同」のおそれが極めて高いといえる。

(3)混同可能性の判断基準

商標法第4条第1項第15号に規定されている混同のおそれの判断に関しては、平成16年(行ケ)第85号審決取消請求事件判決において、以下のように総合考慮の必要性が判示されている。

「当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、当該商標の指定商品・役務と他人の業務に係る商品・役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度、さらに商品・役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし、取引者・需要者において通常払われる注意力を基準として総合的に判断すべきであり(最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)、個別の事情を峻別して恣意的に判断するのではなく、これらの事情を総合して「混同のおそれ」の有無を決すべきものとされている。また、この要件の判断においては、当該商標と他人の表示との類似性が商標法第4条第1項第11号の要件を満たさない場合であっても、その程度を検討しつつ、他人の表示の周知著名性の程度等を総合考慮し判断されるべきである。」

これを本件に当てはめると、前述の教育・学術・研究・出版分野における「OXFORD」の語の著名性と本件役務との密接な関連性を考慮すると、当該表示がオックスフォード大学ないし申立人の業務に係る役務と誤認・混同される蓋然性は極めて高いといえる。

本件において、本件商標「ST.EDWARD’S OXFORD」は、その構成全体を一体として看取し得る可能性があるとしても、構成中の「OXFORD」の文字部分はオックスフォード大学ないし申立人の教育・研究・学術・出版等の商品・役務の出所表示として世界的に著名な商標であることは明らかである。そして、本件商標が有する取引者・需要者における認識の程度は、引用商標が有する著名性に遠く及ばず、取引者・需要者は本件商標に接した際、「OXFORD」の文字部分に強く印象付けられ、オックスフォード大学ないし申立人の著名な引用商標を想起・連想するものと考えられる。

さらに、平成13年(行ケ)第494号判決は、構成中の一部分が著名である場合にはその部分に着目して混同のおそれを肯定することができる旨判示している。

本件においても「OXFORD」の部分に強く印象づけられることにより、あたかも「オックスフォード大学」の系列校であるとか、組織として提携しているといった、オックスフォード大学ないし申立人の著名な商標との混同が生じるおそれが十分に考えられる。

(4)フリーライド及びダイリューション

商標法第4条第1項第15号は、狭義・広義の出所混同の防止にとどまらず、著名な商標に対する無断便乗(フリーライド)やブランド価値の希釈化(ダイリューション)を防止する趣旨を併せ有することは、最高裁平成10年(行ヒ)第5号審決取消請求事件及び前掲東京高裁平成16年(行ケ)第85号審決取消請求事件(各判決にも明らかにされている。

本件商標において「OXFORD」の文字を構成中に含むものであり、「OXFORD」のブランド価値に依拠することで自校の信用力・ブランド価値向上を図る行為、すなわちフリーライドに該当するといえる。

また、その結果として「OXFORD」の文字が本来有していた出所識別力が希薄化し、ブランドとしての一貫性や独自性が損なわれるおそれも極めて高く、ダイリューションの典型ともいえる。

(5)結論

以上のとおり、本件商標「ST.EDWARD’S OXFORD」は、その構成・使用態様・指定役務の内容等を総合的に考慮すれば、引用商標に便乗し、出所の混同を生じさせるとともに、その識別力及びブランド価値を毀損するものであり、商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかである。

8 むすび

以上述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、本件商標登録は商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。

第4 当審の判断

1 引用商標の周知性について

(1)申立人の主張及び同人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。

ア 甲6の「JSAF協定大学」のウェブサイトには、「オックスフォード大学」の見出しのもと、「オックスフォード大学は、英語圏で最古の大学で、建学の歴史は1096年まで遡ります。」の記載がある。また、「オックスフォード」の項には、「イングランド南東に位置するオックスフォード市は、(中略)、英国を代表する文化・芸術あふれる街です。世界有数の大学都市としても有名で、・・・」と記載されている。

イ 申立人は、世界50ケ国に拠点を有する、世界最大の大学出版局である。また、申立人は、オックスフォード大学の一部門として、世界中で出版活動を行っている(甲12、甲62)。

そして、申立人の提供する教材は、世界の184ケ国・地域で販売され、辞書は45言語に翻訳されている(甲33)。

さらに、申立人は、オックスフォード大学出版局日本支局(東京都港区所在)を、1957年に設立し、日本の教育の発展に資するため、世界水準の教材や指導法を紹介している(甲62)。

ウ 甲14ないし甲16によれば、オックスフォード大学は、2017年から9年連続で、イギリスのタイムズが発行する高等教育情報誌「Times Higher Education(THE)」において、世界大学ランキングの第1位となっている。

エ オックスフォード大学は、2025年8月2日現在、28名の英国の首相、少なくとも30名の各国の指導者及び55名のノーベル賞受賞者等を輩出している(甲20、甲21)。

そして、同大学には、岩倉具視をはじめ、現天皇(徳仁親王)など、皇族らを含む多数の日本人が留学している(甲56、甲57)。

オ オックスフォード大学の「財務報告書」によれば、大学の総収入は、2014/15年度には15億ポンド(1ポンド=約194円換算で約2,900億円)(甲38)となり、2022/23年度には約29億ポンド(約5,400億円)(甲41)となっている。また、申立人の「財務報告書」によれば、年間売上高 は、2019/20年度には、約8.4億ポンド(甲42)となり、2024/2025年度には約7.9億ポンド(甲37の2)となっている。

カ オックスフォード大学及び申立人は、Facebook、YouTube及びInstagramなど、主要なソーシャルメディア・プラットフォームを通じた宣伝広告活動を行い、オックスフォード大学及び申立人が管理運営する各アカウントはいずれも数万人のフォロワーを有している(甲44~甲55)。

キ 「オックスフォード」又は「OXFORD」の語が、「オックスフォード大学」を指称するものとして、日本国内の新聞・雑誌記事、テレビ、書籍等に記載されている(甲90~163)。なお、これらの例は、その大半が「(英)オックスフォード大」、「オックスフォード大学」のように記載されているものであり、また、「オックスフォード」の文字の使用例も、その多くが「オックスフォード大学」の文字を文章(記事)中に含むものである。

(2)上記(1)によれば、オックスフォード大学は、英語圏で最古の大学であり、世界大学ランキングにおいて9年連続で第1位となっている。そして、ノーベル賞のような国際的に権威のある賞を受賞する者を輩出してきた。また、同大学の2022/23年度の総収入は約29億ポンド(約5,400億円)であると報告されている。さらに、現天皇(徳仁親王)をはじめ、多くの日本人も留学しているなど、英国はもとより我が国においても、英国の伝統のある大学として著名であるといえることから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く知られていたものと認められる。

しかしながら、申立人が我が国において、広く認識され著名であると主張する「OXFORD」又は「オックスフォード」の文字は、「オックスフォード(イングランド南部、London北西方の都市)。Oxford大学の所在地。」(「プログレッシブ英和中辞典」株式会社小学館)などとして辞書に掲載されているものであるから、我が国においては、英国の地名又は都市の名称として認識されているものといえる。そして、提出された証拠によっては、申立人が我が国において、オックスフォード大学の一部門として教育・出版関連等の業務を行っている事実はうかがえるとしても、「オックスフォード」の文字を使用して、オックスフォード大学又は申立人の業務に係る商品及び役務を広告・宣伝した時期、回数、方法や、我が国において当該商品及び役務を、どのくらい販売、提供したのか、また市場占有率(販売シェア)などその周知性を客観的に判断するための具体的な資料の提出もないから、申立人提出の上記証拠によっては、引用商標の文字の使用状況などを把握することができず、その周知性を推し量ることはできない。

そのほか、申立人により提出された日本国内の新聞・雑誌記事、テレビ、書籍等に「OXFORD」又は「オックスフォード」の文字が使用されていると主張する点については、その大半が「(英)オックスフォード大」、「オックスフォード大学」のように記載されているものであり、また、「オックスフォード」の文字の使用例も、その多くが「オックスフォード大学」の文字を文章(記事)中に含んだものであるから、「OXFORD」又は「オックスフォード」の文字のみで、オックスフォード大学や申立人の略称を指称しているとまではいえない。

また、オックスフォード大学及び申立人のFacebookなど、主要なソーシャルメディア等において、多くのフォロワー数を有している事実は確認できるとしても、それはオックスフォード大学及び申立人の周知性に係る証拠であって、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く知られていたものと認めるに足りる証拠とはいえない。

したがって、提出された証拠によっては、引用商標が、我が国において、申立人及びオックスフォード大学の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたとは認められないものであり、かつ、「OXFORD」又は「オックスフォード」の文字がオックスフォード大学の著名な略称ということもできない。

2 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標について

本件商標は、上記第1のとおり「ST.EDWARD’S OXFORD」の欧文字を横書きしてなるところ、これは、同じ大きさ、同じ書体で、間隔を空けることなく、まとまりよく一連に表されているものであり、当該文字から生じる「セントエドワーズオックスフォード」の称呼も、やや冗長ではあるものの、よどみなく一連に称呼できるものである。

そして、本件商標を構成する「ST.」の文字は、「聖人」等を意味する「Saint」の略称であり、「EDWARD’S」の文字は、「エドワード(男子の名)」に「名詞の所有格」を表す「’S」を付加してなり、「OXFORD」の文字は、「オックスフォード(イングランド南部、London北西方の都市)。」を意味する(いずれも前掲書参照。)ものであるが、これらの文字を一連に表した本件商標に接する取引者、需要者が、いずれかの文字部分のみに着目するというよりは、むしろ、構成文字全体をもって、一体不可分のものと認識、把握するものとみるのが相当であるから、本件商標よりは、直ちに特定の意味合いを想起させるともいい難いから、造語として看取されるものである。

そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「セントエドワーズオックスフォード」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。

(2)引用商標1について

引用商標1は、上記第2の1のとおり「OXFORD」の欧文字で横書きしてなるところ、当該文字に相応して「オックスフォード」の称呼を生じる。

また、「OXFORD」の文字は、「オックスフォード(イングランド南部、London北西方の都市)。」を意味し、英国の地名又は都市の名称等として認識されている英語であるから、引用商標1からは、「オックスフォード(イングランド南部、London北西方の都市)。」の観念を生じる。

(3)本件商標と引用商標1の類否について

本件商標と引用商標1を比較するに、本件商標は、「ST.EDWARD’S OXFORD」の欧文字からなるのに対し、引用商標1は、「OXFORD」の欧文字からなるものであるから、両商標は、「ST.EDWARD’S」の文字の有無において明らかに相違するから、外観上、相紛れるおそれはない。

また、称呼においては、本件商標から生じる「セントエドワーズオックスフォード」の称呼と、引用商標から生じる「オックスフォード」の称呼は、「セントエドワーズ」の音の有無において明らかな差異を有するから、明瞭に聴別できる。

そして、観念においては、本件商標は、特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は、「英国の都市名であるオックスフォード」の観念を生じるものであるから、観念においても相紛れるおそれはない。

そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛れるおそれのない、非類似の商標である。

(4)申立人の主張について

申立人は、引用商標1は、オックスフォード大学を示す語として世界及び日本において広く認識されているから、「オックスフォード」の称呼及び「著名な教育機関であるオックスフォード大学」の観念が生じる旨、また、本件商標は、「ST.EDWARD’S」と「OXFORD」との間で観念上の繋がりはないこと及び「OXFORD」の周知著名性を踏まえれば、これに接した取引者、需要者は、「OXFORD」に着目し、要部として認識することから、本件商標から「オックスフォード」の称呼及び「著名な教育機関であるオックスフォード大学」の観念も生じるから、本件商標は引用商標1と類似する商標である旨主張する。

しかしながら、申立人の引用商標1は「OXFORD」の文字からなり、上記(2)のとおり、「英国の都市名であるオックスフォード」を認識させるものである。また、上記1のとおり、オックスフォード大学が需要者の間に広く認識されていたとしても、「OXFORD」の文字のみで、オックスフォード大学や申立人の略称を指称しているとまではいえない。

そうすると、本件商標は、上記のとおりの構成や称呼も相まって、構成全体で一体不可分の造語として看取されるものであり、本件商標をその指定役務に使用した場合に、殊更、構成中の「OXFORD」の文字のみが独立して認識されるとはいい難い。

したがって、申立人の上記の主張は採用することができない。

(5)小括

以上のとおり、本件商標は、引用商標1とは類似する商標ではないから、本件商標の指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似の役務であるとしても、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)引用商標の周知性について

上記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されているものではない。

(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について

本件商標と引用商標は、上記2のとおり、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標といえるから、類似性の程度は低い。

(3)引用商標の独創性について

引用商標は「OXFORD」の文字からなるところ、当該文字は、上記2(2)のとおり、「オックスフォード(イングランド南部、London北西方の都市)。」を意味し、地名又は都市の名称等として認識されている英語であるから、独創性の程度は低い 。

(4)役務の関連性、需要者の共通性について

本件商標の指定役務と、引用商標の指定商品及び指定役務とは、同一又は類似の商品及び役務を含むものであるから、その需要者は共通する場合がある。

(5)出所の混同のおそれについて

以上のとおり、引用商標は周知性を有するものではなく、本件商標と引用商標は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、かつ、類似性の程度は低いものであること、また、引用商標の独創性も低いものであることを踏まえれば、本件商標の指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務の需要者が共通する場合があるとしても、本件商標から引用商標との関連性を連想、想起し、申立人又はオックスフォード大学と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると誤認し、役務の出所について混同を生じるおそれはないというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第8号該当性について

申立人は、「OXFORD」の文字が、オックスフォード大学の著名な略称として、教育・研究・出版など多様な分野において世界的に広く使用されてきたこと、本件商標が「OXFORD」の文字を構成中に含むことを挙げ、本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当する旨主張する。

しかしながら、本件商標は、上記2(1)のとおり、その構成全体をもって一体不可分の造語と認識、把握されるものというべきであって、構成中の「OXFORD」の文字部分が看者の注意を引くような構成ではない。

また、引用商標は、上記1のとおり、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものではない。

さらに、「OXFORD」の文字が、我が国において「英国の都市名であるオックスフォード」として一般に理解されていることをあわせて考慮すれば、当該文字が、申立人又はオックスフォード大学の略称を表すものとして広く認識されているとはいい難い。

そうすると、本件商標は、他人の著名な略称を「含む」ものとはいえない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。

5 申立人の提出に係る上申書について

申立人は、令和8年1月27日付け上申書において、海外における「OXFORD」関連商標に関する判断を、追って補充する旨主張し、そして、同年3月16日付け上申書により、前記上申書に係る説明及び添付物件(甲166及び甲167)を提出しているが、これらは、異議申立て期間及び理由補充期間の経過後に提出されたものであるから、これを採用することはできない。

6 むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号、同項第11号及び同項第15号に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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