sokuhyo

Trademark Appeal Case

周知商標の類否判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900127
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6916677号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

1 本件商標

本件登録第6916677号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和6年3月12日に登録出願、第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同7年3月14日に登録査定、同年4月8日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人の引用する商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、別掲3に記載の申立人の使用に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとする商標は、「KOBIDO」(以下「引用商標1」という。)の欧文字からなるもの、別掲2(以下「引用商標2」という。)のとおりの構成からなるもの、及び「古美道」(以下「引用商標3」という。)の漢字からなるものである。

なお、以下、上記商標をまとめていうときは、単に「引用商標」という。

3 登録異議申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきものである旨、要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第81号証を提出した(以下「甲第○号証」は「甲○」という。)。

(1)本件経緯及び申立人について

申立人は、日本及び欧州、米国等においてフェイシャルトリートメントに関連する商品・役務を提供する古美道株式会社(以下「申立人会社」という。)の代表取締役であり、当該商品の販売や役務の提供においては、引用商標を使用し、多くのフェイシャルトリートメントのトレンドを生み出してきた。

引用商標「古美道」の誕生は1472年、駿河(現在の静岡)において二人の最高のあん摩師が技を競い合ったことに遡り、数か月に渡り曲手を用いた顔面施術が行われ、競い合う中で二人の師は協力して古美道という新しい家(会社のようなもの)を設立し、あん摩とは異なる古美道の48の技法が確立された。

その後、数百年にわたり、古美道の技法は新たな師匠たちによって受け継がれ、1888年頃には独自の施術メニューを改良し、保湿、クレンジング、マスクトリートメント、その他のスキンケアを含む、より奥深いトリートメントを取り入れた。

第二次世界大戦後、古美道25代目伊藤師匠は拠点を静岡県清水市から東京・銀座に移転し、富裕層や著名人を対象とした高級フェイシャルクリニックを設立したが、当時の弟子は3名であった。

1990年、その弟子の一人である申立人が米国ミネアポリスでフェイシャルクリニックを開設、翌1991年に講習会及び教科書製作を始めた。

それ以降、米国大統領夫人やハリウッド女優、歌手、人気テレビホストまでのセレブ御用達の人気エステティシャンとなる。

申立人は「KOBIDO:The Art of Japanese Facial Massage」など53冊の書籍を著し、合計65万部を売り上げ、その後、申立人は2006年に古美道の26代目家元に就任し、現在に至っている(甲1、甲2)。

(2)引用商標の使用等について

ア 引用商標の使用(日本国内)

古美道による美顔術を普及させることを目的に、申立人は古美道国際認定のエステティシャンを育成し、過去30年間で約7,300人が世界43か国で活躍している。日本国内において、こうした世界で活躍するエステティシャンを育成するため、古美道エステティックカレッジを開催し、全くの初心者でも実際に古美道の施術が行えるようなトレーニングプログラムを提供している(甲3)。

この講習会では、個々のレベルに応じた内容を提供し、参加者のペースに合わせたレベルアップが可能となっている。

具体的には、レベル1は、講習会(クラス4回、1日6時間、合計24時間)、テキストブック(甲2)・練習用フェイスマネキン、練習、施術用古美道化粧品スターターセット付き、家元によるオンラインお手本ビデオ(レベル1)にて内容を習得できる。

レベル2は、講習会(クラス6回、1日6時間、合計36時間)、テキストブック(甲4)・フェイスマネキン用傾斜アダプター、練習、施術用古美道化粧品スターターセット付き、家元によるオンラインお手本ビデオ(レベル2)となっている。

レベル3は、講習会(クラス6回、1日6時間、合計36時間)、テキストブック(甲5号)練習、施術用古美道化粧品スターターセット付き、家元によるオンラインお手本ビデオ(レベル3)となっている。

上記講習会で使用する「家元によるお手本ビデオ」は、オンラインにて24時間いつでも場所、時間を問わずに視聴が可能であり、PC、タブレット、スマートフォンに対応している。

その他、「KOBIDO Summer Intensive Training in Tokyo」を開催し、レベル1、2及び3の受講生に対して申立人が直接指導するプログラムを提供している(甲6)。

イ 引用商標の使用(海外)

引用商標「KOBIDO」は、日本最高の技術として、世界70か国以上のエステティシャンやセラピストに愛され、この30年間世界トップクラスのホテル、スパ、リゾート、そしてエステサロンにおいて技術が導入され、世界でも知名度の高い日本のエステ技術までに成長している(甲2)。

以下、海外からの受講生が参加する研修プログラムの近時の実績について国名・参加人数を説明する。

(ア)2020年10月-7月 レベル1受講生 合計参加者22名(フランス8名、米国、英国、イタリア各2名、その他)

(イ)2020年10月-7月 レベル2受講生 合計参加者6名(フランス3名、アイルランド、イスラエル、ポーランド各1名)

(ウ)2020年10月-7月 レベル3受講生 合計参加者22名(フランス5名、カナダ、スペイン、イスラエル、ポーランド、米国、リトアニア、イタリア各1名、その他)

(エ)2021年7月実施 レベル1及び2のZoom受講生 合計8名(フランス4名、カナダ、イタリア、イスラエル、ルーマニア各1名)

(オ)2022年1月 クラスA及びB 受講生30名(フランス12名、イタリア4名、スイス3名、スペイン2名、その他)

(カ)2022年4月 クラスB 合計参加者17名(フランス、スペインほか)

(キ)2022年5月-7月 レベル3受講生 合計参加者25名

(ク)2022年6月 クラスA 合計参加者13名(イタリア4名、リトアニア2名、その他)

(ケ)2022年5月-7月 レベル3受講生 合計参加者25名

(コ)2022年6月 クラスA 合計参加者13名(イタリア4名、リトアニア2名、その他)

(サ)2023年7月 レベル3 Zoom受講生 合計34名

(シ)2023年秋 レベル3 ZOOM受講生 合計35名(フランス8名、米国、カナダ、ポーランド各2名、その他)

(ス)2024年4月-5月 レベル4 Zoom受講生 合計27名

(セ)2024年5月-6月 レベル3 Zoom受講生 合計15名

(ソ)2025年6月6-27日 レベル2 ZOOM受講生 合計18名(イタリア4名、フランス3名、米国、スイス、英国、ポーランド各2名、その他)

(タ)2025年5月9-30日 レベル1 ZOOM受講生 合計21名(イタリア4名、フランス、スイス、英国各3名、米国、ポーランド各2名、その他)

以上のとおり、2020年から2025年までの引用商標「KOBIDO」を使用した美顔施術の研修プログラムでは、少なくとも300名以上の参加者があり、参加国もフランス、イタリアを中心とした欧州地域、米国及びその他の国となっており幅広い地域からの参加の実績がある。

ウ 海外での古美道の施術を提供する店舗、古美道用のスキンケア化粧品の販売店店舗について

古美道の施術は一般的なフェイシャルマッサージと比較してかなり高度な技術となるため、古美道の施術をしっかりサポートする専用の化粧品が必要となる。

一般化粧品もしくは通常のエステ用化粧品はフェイシャルマッサージをするために開発されていないため、ほとんどが古美道の繊細な技術をサポートできないという問題があり、通常の化粧品はなめらかさがあっても油分が多くベトベトして動きにくく、マッサージで白く結晶化して皮膚を不必要に引っ張り指に負担がかかっていた。

こうした問題を試行錯誤しながら解決し、申立人は2002年にラスベガスのエステティック展示会にて専用のケア化粧品を発表するとともに、施術に適し、かつ安全な化粧品を開発し、全世界で販売している。

この古美道の施術の提供や古美道用のスキンケア化粧品の販売店店舗について、申立人が確認する範囲において、2023年以降少なくとも合計41店舗にて販売され、販売エリアは欧州全域から、米国、フィリピンをカバーしている。

具体的には以下のとおりである(ホームページを有する店舗についてはその内容を記載した。)。

(ア)フランス 12店舗 L’atelier des rouges(甲7)

(イ)イタリア 6店舗

(ウ)米国 5店舗 Ukinga Facial Spa(甲8)

(エ)ポーランド 4店舗

(オ)スイス 3店舗

(カ)ドイツ 2店舗

(キ)アイルランド(TaoMed-Taoist Medicine Clinic:甲9)、英国(Just Beauty Clinic:甲10)、マルタ、ハンガリー、ベルギー、スペイン、リトアニア、カナダ、フィリピン、各1店舗

エ 「KOBIDO」に使用するスキンケア化粧品は下記のとおり各国の販売店舗にて販売されている(甲11)。

(ア)Kobido Make Up Remover

(イ)Kobido Cleanser

(ウ)Kobido Exfoliator

(エ)Kobido Toners

(オ)Kobido Hydratation Serum

(カ)Kobido Moisturizers

(キ)Kobido Eye Treatment

(ク)Kobido Facial Mask

オ 申立人は、その他、引用商標がインターネット(国内外)にて紹介されている事例を挙げている(甲12~甲48)。

(3)引用商標の周知著名性について

上記(1)及び(2)で述べたとおり、「古美道」の誕生は今から約550年前に遡り、その後数百年にわたり、古美道の技法は新たな師匠たちによって受け継がれ、1888年頃には独自の施術メニューを改良し、保湿、クレンジング、マスクトリートメント、その他のスキンケアを含む、より奥深いトリートメントを取り入れた。

1990年、本件申立人が米国で施術の指導を始めるとともに、2006年に古美道の26代目家元に就任し、「KOBIDO」の商標を使用して、当該施術の現在に至っている。

そして、欧州をはじめとした世界各国のセラピストを対象にした研修プログラムの開催、オンライン講義の開催、施術に必要なケア商品の販売等を通じて、遅くとも申立人が26代家元に就任した2006年から現在に至るまで引用商標は使用商品・役務において国内外の取引者及び需要者に相当程度広く認識されているものである。

すなわち、引用商標は、申立人の日本古来の「古美道に基づく美顔の施術」を示すものとして、本件商標の登録出願日の時点において、本件商標の指定役務の取引者、需要者の間に広く認識されて、一定の周知性を有していたものであって、その周知性は、現在においても継続しているのである。

(4)申立人の国内外での商標登録の実績

申立人は、引用商標について日本を始め世界各地でこれまで使用することによって知名度を高めただけでなく、世界各国で商標登録することによって商標の保護に努めてきた。

日本での登録例は、「古美道」(登録第5332735号)(甲49)や「義KOBIDO\古美道」(登録第5782800号)(甲50)である。

海外においても、欧米を中心に多数の「KOBIDO」商標を申立人は保有(出願)している。

具体的には、以下のとおりである。

ア イタリア(甲51、甲52)

イ スイス(甲53)

ウ リトアニア(甲54)

エ 米国(甲55)

オ ドイツ(甲56)

カ スペイン(甲57)

キ マルタ(甲58~甲60)

ク 英国(甲61)

ケ オーストリア(甲62)

(5)本件商標権者及び不正の目的について

前記で述べたとおり、「古美道」は今年で553年続く日本の伝統美顔技術であり、申立人が古美道26代目家元を継承しているものである。

そして、この技術をマスターするためには、レベル1から5までの極めて難易度の高い技術を習得する必要があり、数日間のセミナーを受講して習得できるようなものではない。

しかるに、本件商標権者である「エコール デュ コビドー」(ECOLE DU KOBIDO S.A.S.U.として知られる)は、同社のホームページにおいて、「スクール 日本で唯一、本格的な古美道で研修できる認定校!」、「ロシュフォールに拠点を置く古美道学校の創設者であり、マスターティーチャーであるナタリー・メメトー(Nathalie Memeteau)(「M」の文字に続く「e」の文字にはアクサン記号が付されている)は、世界中で200人以上の生徒を訓練し、国際的な評判を得ています。2025年4月、古美道学校は、日本で古美道を教えることを日本当局から承認されました。」と記載している(甲63)。

上記のナタリー・メメトー氏は、申立人が主催する欧州での4日間の講習に参加しているが、当該講習を修了するだけでは、とても他人に古美道を教えられるような技術を習得できることは考えられず、またその後許可なく勝手に申立人の名前や写真を使って古美道を教え始めている。

本件商標権者のホームページにおいては、申立人との関係を利用して引用商標「KOBIDO」の使用を正当化するような記載を雑誌等において申立人の許諾なく意図的に行っている(甲64~甲71)。

加えて、近時「KOBIDO」関連商標を欧州世界各国で取得している。

ア ベネルクス(甲72)

イ フランス(甲73~甲77)

上記のように、本件商標権者又はその創設者は、申立人が経営する会社のホームページや生徒のホームページに掲載されている内容の無断使用などの嫌がらせを行っている。

こうした本件商標権者の出願登録行為や申立人の写真などの無断使用といった行為は、申立人が長年にわたって信用を構築してきた引用商標へのフリーライドであり、引用商標の剽窃的な出願登録であるとともに、商標の使用による業務上の信用を保護し、併せて需要者の利益を保護するという商標制度の根幹を揺るがす事態を招いており、申立人としては決して容認できるものではない。

こうした事態の拡大を防ぐため、申立人は様々な手段を講じて対応を行うこととしている。

(6)商標法第4条第1項第10号該当性について

ア 本件商標と引用商標の類似性について

本件商標は、前記のとおり、「KOBIDO」の欧文字と「古美道」の漢字とを二段に表してなるところ、これよりは、「コビドー」の称呼が生じる。

そして、上段「KOBIDO」の語尾「O」の文字には「内側に「道」の文字が配されているものの、下段の「古美道」の漢字の読みを特定していることから、この部分は引用商標「KOBIDO」と類似するものというべきである。すなわち、一般に欧文字の「O」は、その丸形の構成態様からデザイン化がされやすいものであるが、特許庁の審決ではそのように欧文字がデザイン化されている場合であっても「O」の文字を特定することは可能と判断している(甲78)。

また、知的財産高等裁判所においても、欧文字が特定の文字をデザイン化したものと認識される場合には、当該文字としての称呼が生じる旨判断されており(甲79)、本件商標においても欧文字部分は「KOBIDO」と認識・把握されるものである。

また、本件商標「KOBIDO」「古美道」からは、日本の伝統的な施術を行ってきた企業である「古美道」を観念させるものである。

他方、引用商標も、「KOBIDO」、「KOBIDO(ロゴ)」及び「古美道」の文字からなるから、本件商標と同様に、その構成文字に相応して、「コビドー」の称呼を生じ、日本の伝統的な施術を行ってきた企業である「古美道」を観念させるものである。

そこで、本件商標と引用商標を比較すると、両者は、ともに同じ綴りよりなるものであるから、両商標は、外観においてややデザイン化の有無があるものの、観念及び称呼において共通するものであるから、全体としてみれば相紛れるおそれのある類似の商標といえる。

イ 引用商標の周知性について

上記(3)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品・役務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものであり、また、引用使用商品・役務は本件商標の指定役務と類似するものである。

ウ 小括

以上からすると、本件商標と引用商標は類似の商標であり、本件指定役務と引用使用商品・役務は類似し、かつ、引用商標が我が国の需要者の間に広く認識されたものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。

(7)商標法第4条第1項第15号について

商標審査基準において、商標法第4条第1項第15号の該当性判断においては、両商標の類似性、両商品・役務の関連性、引用商標の周知性(全国的な周知性は要求されていない)、商品等の需要者の共通性その他取引の実情などを考慮するとされる。さらに、「外国において著名な標章が、我が国内の需要者によって広く認識されているときは、その事実を十分考慮して判断する。」とされている(甲80)。

以下上記基準に従って、商標法第4条第1項第15号に該当する理由を述べる。

ア 引用商標の周知性について

前記で述べたように、引用商標は日本及び欧州を中心として世界各国で需要者に広く知られているものである。

イ 本件商標と引用商標の類似性の程度について

上記(6)アのとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのある類似の商標であるから、類似性の程度は高いというべきである。

ウ 本件商標の指定役務と引用商標の使用役務との関連性及び需要者の共通性について

本件商標の指定役務は、第41類に属する「知識の教授」などを含むところ、引用商標の使用役務も第41類に属する「知識の教授」などであるから、それら関連役務において両者の役務の関連性及び需要者の共通性は高いといえる。

エ 出所の混同のおそれについて

上記イ及びウのとおり、本件商標と引用商標とは、類似性の程度が高く、本件商標の指定役務と引用商標の使用役務の関連性及び需要者の共通性が高く、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたものである。

そうすると、本件商標は、本件商標の商標権者がこれを指定役務について使用すると、これに接する需要者が、引用商標を連想又は想起するものであり、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(8)商標法第4条第1項第19号について

上記(6)アのように、本件商標は著名な商標である引用商標と類似するものであり、また、本件商標権者は申立人が「KOBIDO」の商標を長年使用し、世界中に施術の講義・印刷物の提供を通じてエステティシャンの養成を行っていることを承知しながら、引用商標権者の承諾を得ないまま「KOBIDO」商標を登録・使用するに及んでおり、加えて、前記のとおり本件商標権者のホームページにおいて、「KOBIDO」の認定を受けた者である虚偽の記載を行うなど、本件商標は、他人の著名な商標に便乗した不正の目的を有することは明らかであることから、商標法第4条第1項第19号に該当する。

(9)商標法第4条第1項第7号について

公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とは、商標審査基準によれば、例えば、(1)「商標の構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音である場合。」のみならず、(5)「当該商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合。」も含まれる(甲81)。

この観点から、本件商標は、引用商標と類似するものであり、また、引用商標が申立人の商標として施術の分野の取引者、需要者間で広く知られている状況において、本件商標権者は本件商標の登録出願を行っている。

そして、本件商標権者は在フランスの法人であることから、フランスにおいて周知な引用商標を当然知っており、またその代表者は引用商標権者が主催する養成講習にも参加していたものである。

こうした事情を勘案すれば、本件商標権者による本件商標の登録出願行為には、申立人が世界各国で行っている事業活動を阻害する目的及び申立人の顧客吸引力を利用する目的があるといわざるを得ない。

したがって、本件商標は、不正な目的をもって剽窃的に登録出願されたものであるから、公序良俗に反することは明らかであり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断

(1)引用商標の周知性

ア 申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。

(ア)申立人について

申立人は、約550年前(1472年)に日本で考案された美顔技術である「古美道」の26代家元に2006年頃就任し、現在に至るとされる(甲1~6、甲47)。

(イ)申立人及び申立人会社(以下これらをまとめて「申立人ら」という。)は、1991年初版の教本(レベル1(2021年創業550年記念版)(甲2)、レベル2(2024年第7版(英語・フランス語・日本語)(甲4)及びレベル3(2024年第7版(英語・フランス語・日本語)(甲5))を作成した。

a 教本(レベル1)(甲2)には、以下の記載がある。

(a)「古美道とは」の見出しの下、21頁に「「古美道」とは文明時代、約550年前(1472年)に富士の麓の港町で按摩の達人によって編み出された、日本伝統の美顔道(エステ技術)です。古美道が日本最高峰の技術として、世界70カ国以上のエステティシャンやセラピストに愛されてきました。そしてこの30年間世界トップクラスのホテル、スパ、リゾート、そしてエステサロンに技術を導入して頂き、世界で最も知名度の高い日本のエステ技術にまでに成長させて頂きました。」との記載がある。

(b)「古美道の歴史」の見出しの下、25頁に次の記載がある。

・「美道の誕生」の項に「古美道は文明4年(西暦1472年)に2人の古法按摩の達人によって編み出された技術です。流派として受け継がれている美顔道(フェイシャル技術)では日本最古となります。・・」との記載がある。

・「江戸・明治時代」の項に「江戸時代は比較的安定した時代で、清水港とその宿場は東海道の重要な宿場町であり、栄えている清水の宿場町で鍼灸、按摩、美顔道の提供を続けておりました・・明治初期に入り蒸気船が清水港と横浜との定期航路線を営業する事により清水の港町は栄え、貿易などで様々な西洋文化も港街に入り始めと同時にその影響を少なからず受け始めます。」との記載がある。

・「昭和時代」の項に「第二次世界大戦後、先代、弐拾伍代目伊藤師匠が拠点を静岡県清水市から、東京都中央区銀座へと移転します。昭和の高度成長期の間、銀座で弟子3人と共に隠れ家的、高級フェイシャルクリニックを平成初期まで営業します。」との記載がある。

・「平成・令和時代」の項に、「弐拾六代目が平成3年、1990年よりアメリカ合衆国、ミネアポリスでフェイシャルクリニックを開設、翌年1991年講習会、教科書製作を始める。エステ、マッサージ全米14校の講師となる。アメリカ合衆国大統領夫人から、ハリウッド女優、歌手、人気テレビホストまでのアメリカセレブ御用達の人気エステティシャンとなりました。「KOBIDO:The Art Of Japanese Facial Massage」など53冊の書籍を著し、合計65万部を売り上げました。2010年、弐拾五代目伊藤師匠の他界直前に、活動拠点をアメリカから東京へと移転しました。その後アメリカ、スペイン、フランスなど世界各地で講習会を継続しております。」との記載がある。

(ウ)申立人らのトレーニングプログラムについて

a 申立人会社のウェブサイトには、上記教本を使用した日本人女性向けトレーニングプログラム(甲3)や、東京で開催された、イタリア、フランス、米国等の海外からの参加者向けトレーニングプログラム(甲6)の提供に関する記載があり、引用商標が表示されているが、当該ウェブサイトの公開日は不明である。

b 申立人会社の日本語のウェブサイト(甲3)において、「古美道エステティシャン国際認定コース」の見出しの下、「古美道国際認定のエステティシャンは過去30年間で約7,300人、世界43カ国で活躍しております。」との記載がある。また、申立人は、2020年から2025年までの引用商標「KOBIDO」を使用した美顔施術のプログラムでは、フランス、イタリアを中心とした欧州地域、米国その他幅広い国々から少なくとも300名以上の参加者があったと国別に参加人数を説明している。しかしながら、上記エステティシャンの人数及び上記美顔施術のプログラムの参加人数を確認できる証拠の提出はない。

(エ)海外での古美道の施術を提供する店舗、古美道用スキンケア化粧品の販売店舗について

a 申立人は、古美道の施術の提供や古美道用スキンケア化粧品の販売が、2023年以降少なくとも合計41店舗にて行われ、提供・販売地域は欧州全域から、米国、フィリピンをカバーしていると説明しているが、これを確認できる証拠の提出はない。

b 申立人らの英語表記のホームページ(甲11)において、引用商標を付した化粧品が掲載されているが、当該ホームページの公開日は不明である。

(オ)英語やフランス語等外国語で表記された海外のウェブサイト(甲12~甲43)において、申立人及び「KOBIDO」が紹介された記事が掲載されているが、上記ウェブサイトにおいて本件商標の登録出願日前の日付が確認できるものは7件のみである。

(カ)日本語で表記されたウェブサイトにおいて、次のことがうかがえる。

a 「KOBIDO JAPAN Official Channel」との動画サイト(甲44)において、チャンネル登録者数は2.04万人、131本の動画との記載がある。また、2013年及び2015年の再生回数は約2.4万回~9万回である。

b 「ELLE Japan」(甲45)のウェブサイトにおいて、「2016年8月8日公開日・・近年ではフェイシャルマッサージの一種である「KOBIDO(古美道)」がアンチエイジングに効果的としてそのポジションを確立はじめているだとか。仏版エルの記事より、フランスで起きているブームの実情をリサーチしてみた。」との記載がある。

c 「kirei note」のウェブサイト(甲47)において、「BEAUTY」の見出しの下、「2023.02.09・・・ヨーロッパに到来した「KOBIDO」ブーム」の記載がある。

d 「WWD JAPAN」のウェブサイト(甲48)において、「2020/11/18 再ロックダウンのパリ、セルフマッサージの人気が高まり日本式「KOBIDO」やフェイスヨガがブームに」の記載がある。

イ 上記アによれば、「古美道」とは、約550年前(1472年)に編み出された、日本伝統の美顔技術の名称といえるところ、「古美道」の美顔技術については、昭和から平成初期において、先代の25代家元が銀座にて高級フェイシャルクリニックを営業し、1990年頃から申立人らがアメリカでフェイシャルクリニックを開設するとともに「古美道」の美顔技術に関する教本の制作を行い、申立人は、2006年頃26代家元に就任した後、2010年頃に活動拠点をアメリカから東京に移し、その後、申立人会社とともにフランスなどを含む国内外からの参加者に上記教本を用いたトレーニングプログラムや専用スキンケア化粧品販売を提供したこと、そして、2016年頃からフランスを中心とした欧州において「古美道(KOBIDO)」の美顔施術が流行し、各種ウェブサイトや動画サイトにおいて、申立人及び「KOBIDO」が紹介されたことがうかがえる。

しかしながら、引用商標を使用した申立人の業務に係る商品及び役務について、米国における書籍の販売実績、古美道国際認定のエステティシャンの人数、トレーニングプログラムへの海外からの参加人数及び出身国、海外における「古美道」の美顔施術を提供する店舗数及び「古美道」専用スキンケア化粧品の販売店舗数等については、申立人の作成又は説明によるものしかなく、これらを裏付ける客観的な証拠は見いだせない。

その他、引用商標に係る広告の方法、期間や規模といった広告・宣伝の詳細、及び「古美道」の施術に係る商品及び役務の売上高、顧客数、販売期間及び販売地域といった事業実績などを客観的に把握できる証拠は見いだせない。

したがって、申立人の主張及び同人提出の証拠によっては、引用商標が、申立人の「古美道」の美顔施術について使用する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又はフランスをはじめとする外国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。

(2)本件商標と引用商標の類否について

ア 本件商標

本件商標は、上段に「KOBID」の欧文字が横書きされ、その右側に2文字目の「O」の文字と同じ大きさの赤丸の中に「道」の漢字を書したもの(以下「道図形」という。)を配し、下段に灰色で「古美道」の漢字を配した、別掲1のとおりの構成からなるものである。

そして、上段部分については、道図形は、上段部分の欧文字の構成中の「O」の欧文字と同じ大きさであり、「O」の欧文字が図案化されることは広く行われていることからすれば、道図形は「O」の欧文字をデザイン化したものとみるのが相当であり、その全体から「コビドー」の称呼が生じ、また、下段部分については、「古美道」の文字が「コビドー」と読まれるのが自然であることから、当該文字に相応して「コビドー」の称呼が生じる。

そうすると、本件商標からは、「コビドー」の称呼が生じ、「古美道」の文字は、一般的な辞書に掲載のない語であって、指定役務との関係から一般に親しまれた意味合いを想起させるものでもないから、特定の観念を理解させない造語と認識されるものである。

したがって、本件商標からは、「コビドー」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。

イ 引用商標

引用商標1は「KOBIDO」の欧文字からなり、引用商標2は赤地の四角の中に、白抜きでデザイン化した「義」の漢字を書し、その右側に、ややデザイン化した「KOBIDO」の欧文字を配した別掲2のとおりの構成からなり、引用商標3は、「古美道」の漢字からなるものである。

そして、上記構成文字からなる引用商標からは、いずれも、その構成文字に相応し、「コビドー」の称呼を生じ、また、一般的な辞書に掲載のない語であって、指定役務との関係から一般に親しまれた意味合いを想起させるものでもないから、特定の観念を理解させない造語と認識されるものである。

したがって、引用商標からは「コビドー」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。

ウ 本件商標と引用商標の比較

本件商標と引用商標を比較するに、外観においては、本件商標と引用商標1及び引用商標2は、「KOBIDO」の欧文字を同じくし、また、本件商標と引用商標3とは、「古美道」の漢字を同じくするものであるから、本件商標と引用商標は、近似した印象を与えるものである。

そして、本件商標と引用商標は、称呼において、「コビドー」の称呼を同じくするものであり、また、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において比較できないものである。

したがって、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないものの、外観において近似した印象を与え、称呼を同じくすることから、類似の商標というべきものである。

(3)商標法第4条第1項第10号該当性について

上記(2)ウのとおり、本件商標と引用商標は類似の商標であるが、上記(1)イのとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されている商標とはいえないから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ず、同号に該当しない。

(4)商標法第4条第1項第15号該当性について

ア 引用商標等の周知性について

上記(1)イのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されている商標とはいえない。

イ 本件商標と引用商標等の類似性の程度について

上記(2)ウのとおり、本件商標は、引用商標等と類似の商標である。

ウ 本件商標の指定役務と引用商標の使用商品及び役務との関連性及び需要者の共通性について

本件商標の指定役務と引用商標の使用商品及び役務は、一部の役務を共通とし、需要者を共通とするものである。

エ 出所の混同のおそれについて

そうすると、本件商標と引用商標が類似する商標であって、本件商標の指定役務と引用商標の使用役務が一部の役務を共通とし需要者を共通とするとしても、本件商標は、アのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されている商標とはいえないから、本件商標をその指定役務に使用するときは、これに接する取引者、需要者が、申立人との関係を連想、想起するとは考えにくく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると誤認し、その役務の出所について混同を生じさせるおそれはない。

したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標ではないから、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(5)商標法第4条第1項第19号該当性について

上記(2)ウのとおり、本件商標と引用商標は、類似の商標であるとしても、上記(1)イのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(申立人)の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者等の間に広く認識されている商標とはいえない。

そして、申立人は、本件商標権者は申立人が「KOBIDO」の商標を長年使用し、世界中に施術の講義・印刷物の提供を通じてエステティシャンの養成を行っていることを承知しながら、引用商標権者の承諾を得ないまま「KOBIDO」商標を登録・使用するに及んでおり、加えて、前記のとおり本件商標権者のホームページにおいて、「KOBIDO」の認定を受けた者である虚偽の記載を行うなど、本件商標は、他人の著名な商標に便乗した不正の目的を有することは明らかである旨主張する。

しかしながら、申立人が提出した全証拠からは、本件商標権者がフランス等で「KOBIDO」の文字を含む商標を登録したこと(甲72~甲77)、本件商標権者のホームページに上記登録商標が掲載されていたものがあること(甲63~甲65、甲71)が把握できるのみであって、本件商標の登録出願の目的は明らかではなく、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的など)をもって本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠の提出はない。

そうすると、本件商標は、商標登録出願し、商標登録を行うことによって、本件商標権者が、我が国又は外国において、引用商標の周知性に便乗し、フリーライドを行い、又は稀釈化させる意図を有するなど不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認めることはできない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

(6)商標法第4条第1項第7号該当性について

ア 申立人は、本件商標は、引用商標と類似するものであり、また、引用商標が申立人の商標として施術の分野の取引者及び需要者間で広く知られている状況において、本件商標権者は本件商標の登録出願を行っていること、そして、本件商標権者は在フランスの法人であることから、フランスにおいて周知な引用商標を当然知っており、また、その代表者は引用商標権者(申立人)が主催する養成講習にも参加していた事情を勘案すれば、本件商標権者による本件商標の登録出願行為には、申立人が世界各国で行っている事業活動を阻害する目的及び申立人の顧客吸引力を利用する目的があるといわざるを得ず、本件商標は、不正な目的をもって剽窃的に登録出願されたものであるから、公序良俗に反することは明らかであり、商標法第4条第1項第7号に該当する旨主張している。

しかしながら、上記(1)イのとおり、引用商標が、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国又は外国において、広く認識されているものと認めることができないものであって、また、上記(5)のとおり、本件商標は、本件商標の登録出願の目的は明らかではなく、他人の著名な商標に便乗した不正の目的を有するものとはいえないところ、本件商標権者が、本件商標を利用して、申立人の事業活動を阻害したり、何らかの金銭的利益を要求するなど、具体的な行動に及んだことを示す証拠はない。

そうすると、申立人提出の証拠によっては、本件商標は、不正な目的をもって剽窃的に登録出願されたものとまで認めることはできない。

イ その他、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。

ウ 以上によれば、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ではない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

(7)むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。