sokuhyo

Trademark Appeal Case

「Pingu」の著名性と称呼類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900151
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6924753号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6924753号商標(以下「本件商標」という。)は、「pingu・pongu」の文字を標準文字で表してなり、令和6年10月3日に登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,卓球の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),電子出版物の提供,書籍の制作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作,運動用具の貸与,おもちゃの貸与,運動施設の提供,娯楽施設の提供,インターネットを利用して行う映像の提供,ノウハウの伝授,資格の認定・付与,オンラインによる映像の提供(ダウンロードできないものに限る。),オンラインによる画像の提供(ダウンロードできないものに限る。),通信ネットワークを介した動画・画像・文字情報の提供」を指定役務として、令和7年4月21日に登録査定され、同年5月1日に設定登録されたものである。

第2 引用商標及び申立人商標

(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する登録第5316898号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、2007年8月30日に中華人民共和国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成20年2月29日に登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授(ゴルフに関するものを除く。),電子出版物の提供(ゴルフに関するものを除く。),書籍の制作(ゴルフに関するものを除く。)」を含む第9類、第16類、第18類、第41類及び第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成22年4月16日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

(2)申立人が、アニメーションの題号及びその主人公であるペンギンの名称として、我が国において広く知られているとする「Pingu」の文字からなる商標(以下「申立人商標」という場合がある。)

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第63号証を提出した。

1 「Pingu」表示の著名性について

(1)「Pingu」の概要と一般的な認知度

引用商標の要部「Pingu」は、スイスで制作された、ペンギンを主人公とするストップモーション・クレイアニメーションの題名である(甲29)。このアニメーションは、セリフを特定言語に依拠しない「ピングー語」で表現され、国・言語の壁を越えて広く受容されている(甲30)。日本国内でも、株式会社小学館のオンライン辞書「デジタル大辞泉プラス」に項目が立項されるなど、ペンギンをモチーフとするアニメーションの題名又はその主人公としての高い認知度が裏付けられている(甲31)。

(2)日本国内における長年の広範な展開

ア テレビ放送・映像配信:アニメーション「Pingu」は、1990年代以降、テレビ放送(「テレビ東京」「NHK教育テレビ」「スカパー!」等)で繰り返し放送されてきた実績があり(甲29、甲32~甲34)、DVD化(甲35)に加え、現在も「ひかりTV」「Amazonプライム・ビデオ」「U-NEXT」「AppleTV」「YouTube」等の動画配信サービスで視聴可能である(甲36~甲39)。

イ ソーシャルメディア活動:X(旧Twitter)、Instagram、TikTokなどのソーシャルメディアにおいて、公式アカウントによる情報・コンテンツの継続的な発信・共有が行われ、認知の拡大に寄与している(甲59~甲62)。

ウ 出版活動:公式サイトでの「Pingu」を主人公とするコミック連載(甲40)とその単行本化「ピングーコミック」(甲41)や、複数出版社による絵本の刊行(甲42、甲43)、及びキャラクターブックの出版(甲44)など、紙媒体・電子媒体の双方で継続的な出版活動が行われている。

エ イベント・商品化:「Pingu」は、2000年にはキャラクター商品販売額シェア13位に位置づけられるなど高い人気を有し(甲45)、その後も大規模イベントの継続的な開催(横浜、渋谷ほか)、ポップアップストア、各種キャンペーンなどの商業展開が現在まで活発に行われている(甲46~甲49)。また、国立極地研究所創立50周年記念では特別アンバサダーに就任し、札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、東京都特別区(23区)、横浜市、川崎市、相模原市、静岡市、浜松市、名古屋市、大阪市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市における「大都市減量化・資源化共同キャンペーン」にてメインビジュアルとして起用されるなど(甲63)、社会的認知の向上にも寄与している。加えて、公式オンラインストアでは多種多様な「Pingu」グッズが継続的に販売されており(甲50)、人気と商業的価値が裏付けられている。

(3)指定役務(第41類)との強い関連性

ア 知識の教授:「Pingu」を採用した幼児・児童向け教材が、プログラミング、キーボード操作、知育玩具、各種ドリルなど多分野で展開され(甲51~甲55)、また学童保育や英語教室での導入事例も確認されるなど(甲56、甲57)、教育分野におけるブランドとしての信頼が確立している。

イ 電子出版物の提供・書籍の制作:コミック、絵本、キャラクターブックに加え、学習書籍等、多様な出版物が継続的に制作・提供され(甲41~甲44)、紙に限らず電子コミック等の形態でも提供されている。これらの事実から、「電子出版物の提供」及び「書籍の制作」の役務においても、「Pingu」が出所表示として機能している。

(4)過去の周知性の認定

異議2008-900332(2009年9月24日決定)において、テレビ放送、ビデオ・DVD販売、キャラクター商品の展開等の事実を踏まえ、「ペンギンのキャラクター『ピングー』は、査定時(2008年6月24日)において、我が国で幅広い年齢層に広く認識されている」と認定している(甲58)。その後もイベント開催や教育分野での活用が継続・強化されており、周知性・著名性は現在に至るまで維持・増進されている。

以上から、引用商標の要部「Pingu」は、第41類に関連する分野において、極めて高い著名性を有する。そのため、本件商標と引用商標の類否は、商標審査の原則(全体観察)に照らしつつ、分離観察の可否を検討して判断されるべきである。

2 商標法第4条第1項第11号について

(1)分離観察の相当性

本件商標は、「pingu」と「pongu」という二つの欧文字の語を中黒「・」で連結した構成である。中黒は、語の区切りや並列を示す記号として一般に認識されるため、両語は一体不可分の造語ではなく、並列に表示された別個の語として看取される。また、両語の間に観念的な一体性を形成するほどの結合関係もないことから、需要者は各部分を独立して把握するものと考えられる。

さらに、「pingu」は周知・著名なキャラクター名と同一のつづりであり、強い自他識別力を有する一方、「pongu」は特定の意味内容も有しないため、識別力は弱い。したがって、取引の実情を鑑みれば、需要者の注意は「pingu」に集中し、この部分が本件商標の要部として支配的に把握されると解される。

他方、引用商標は、中央に著名なキャラクター「ピングー」の図形を配し、その外周に「Pingu’sEnglish」、腹部のプレート状部分に「Pingu」の文字を含む構成である。この構成では、文字と図形の双方が「Pingu」を想起させるため、引用商標においても「Pingu」が出所識別の中核をなす要部であると理解される。

以上のことから、本件商標が中黒によって語が分離して認識される構成であること、構成部分の識別力に顕著な差があること、取引上、需要者の注意が「pingu」に集中すること、といった事情に加え、引用商標においても「Pingu」が要部であることから、両商標の類否判断にあたり、本件商標から「pingu」の部分を分離して観察することには合理的な理由がある。

(2)外観・称呼・観念の比較

そこで、本件商標と引用商標を比較すると、本件商標の要部である「pingu」は、引用商標の要部である「Pingu」と、大文字・小文字の差異を除き文字構成が同一である。称呼においても、本件商標の要部から生じる「ピングー」は、引用商標から生じる称呼と同一である。観念においても、両者はその著名性から「著名なアニメーションのペンギン・キャラクター」という共通の観念を生じさせる。

他方、本件商標のもう一方の構成部分である「pongu」は、特段の意味を有しない造語であり、商標全体の印象に与える影響は小さい。

以上のとおり、両商標は要部において外観、称呼、観念を共通にするため、全体として互いに類似する。したがって、これらを同一又は類似の商品・役務に使用した場合、出所の混同を生じさせるおそれがあることから、両者は類似する。

(3)指定役務について

本件商標の指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授、電子出版物の提供、書籍の制作」は、引用商標の指定役務と同一・類似の関係にあることは明らかである。

(4)審査基準・異議決定について

異議2008-900332決定(甲58)は「ピングー」の国内周知性を認定しており、本件における要部性の評価を補強する。

(5)まとめ

以上より、本件商標と引用商標は、外観・称呼・観念において類似し、かつ、指定役務の一部は同一又は類似する。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。

3 商標法第4条第1項第15号について

(1)「Pingu」の著名性と指定役務の強い関連性について

前記のとおり、「Pingu」又は「PINGU」はスイスで制作されたペンギンを主人公とするストップモーション・クレイアニメーションの題名であり、このアニメーションは国・言語を越えて広く受容され、日本国内でも高い認知を獲得している(甲29~甲63)。

特許庁も、異議2008-900332(2009年9月24日決定)において、テレビ放送、ビデオ・DVD 販売、キャラクター商品の展開などの事実を踏まえ、ペンギンのキャラクター「ピングー」が査定時点(2008年4月23日)で「我が国において、子供から大人に至るまでの幅広い年齢層にわたり、アニメーションのキャラクターとして広く認識されている」と認定している(甲58)。

そして、その後もアニメーションの配信、イベントの継続開催や、教育分野における活用の拡大、電子出版・配信等の展開が続き(甲32~甲57、甲59、甲63)、著名性は維持・増進していると評価できる。特に、本件商標の指定役務である第41類のうち、「知識の教授」「電子出版物の提供」「書籍の制作」に加え、オンラインによる映像の提供、各種コンテンツ提供・興行の企画運営、教育・文化・娯楽用ビデオの制作等に係る役務は、申立人が教材、絵本・コミック、学習書籍、映像コンテンツ等を通じて継続的に事業展開してきた中核的分野と重なる。

したがって、「Pingu」の表示は、本件商標の出願、査定時において、当該指定役務に関連する役務の出所表示として、取引者・需要者の間に極めて広く認識されていたといえる。

(2)出所の混同のおそれについて

商標法第4条第1項第15号の判断要素である引用商標及び「Pingu」の著名性の程度、商標間の共通性・連想性、指定商品・役務の関連性、取引の実情等に照らすと、本件商標の使用は混同のおそれを高い程度で生ぜしめる。

ア 周知・著名性の程度

上記(1)に記載のとおり、「Pingu」は国内で長年の放送・配信、出版、商品化、イベントを通じて広く認識され、教育・出版分野との結び付きも強い。

イ 商標の共通性・連想性

本件商標は、「pingu」の文字を構成中に完全に包含し、さらに中黒「・」で「pongu」と並列表記する態様である。このような結合は、取引の実情上、「基幹ブランド名『Pingu』+サブシリーズ名『pongu』」というシリーズ化・派生企画のネーミングとして自然に理解され得る。したがって、仮に類似性の程度が高くないとしても、少なくとも強い連想・想起を惹起する。なお、欧文字の大小の差異は識別上通常軽微である。

ウ 指定役務の関連性

本件指定役務は、申立人の教育・出版・映像提供等の中核事業と同一又は密接に関連し、需要者層(児童・保護者・教育関係者・出版・教育関連事業者等)、提供チャネル(書店、ECサイト、配信サービス、イベント等)、及び利用態様が重なる。

エ 取引の実清

キャラクタービジネスの分野では、ブランドのシリーズ化、テーマ別ライン拡張、共同企画、ライセンス供与が広く行われており、需要者は「基幹ブランド+サブタイトル」型の商標から、公式の新シリーズ・派生企画を想起しやすい。中黒による語の連結はシリーズ名の接続にも一般的である。

以上の事情を総合すると、本件商標が第41類の上記役務に使用された場合、需要者は、これを申立人又はその許諾を受けたライセンシー等、経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると誤信する蓋然性が高い。

すなわち、出所の混同(広義の混同)を生じさせるおそれがある。

(3)まとめ

以上より、仮に本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当しないとしても、本件商標がその指定商品・役務について使用された場合、申立人の著名商標に係る商品・役務との間に出所の混同を生じさせるおそれが極めて高い。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 商標法第4条第1項第19号について

(1)「Pingu」の周知著名性について

「Pingu」又は「PINGU」は、単なる商品・役務の識別標識にとどまらず、国内外の需要者の間で広く認識され、長年にわたりライセンス事業や出版・教育関連分野でも展開されてきた著名なキャラクター名である(甲29~甲59、甲59~甲63)。申立人は日本においても多数の商標登録を取得し(甲2~甲26)、当該標章に化体した信用の維持・保護に継続的に努めてきたところであり、少なくとも本件出願時から登録査定時にかけて、「Pingu」が申立人の業務に係る商品・役務を表示するものとして広く認識されている。

(2)不正の目的について

本件商標は、「pingu」の文字を構成中に採択したことは、申立人の著名標章を想起・連想させ、その顧客吸引力・名声に便乗する効果を意図したものと強く推認される。

出願人と申立人との間に正当な関係を示す事情や、当該採択に合理的な必要性が見当たらないといった事情を総合すれば、本件出願は、申立人の名声及び顧客吸引力にフリーライドして営業上の利益を得る目的(不正の利益を得る目的)に基づくものといえる。さらに、当該分野における独占的地位の確保は、申立人の正当なライセンス展開や事業拡張を妨げ、著名標章の希釈化(ダイリューション)を通じて申立人に損害を与える危険を高める点で、「当該他人に損害を加える目的」又は少なくとも「その他不正の目的」に該当する。

(3)まとめ

本件商標は、著名なキャラクター名称である「Pingu」と類似する標章を、申立人の事業の中核であり親和性の高い教育・出版等の分野において使用するものである。

このような出願行為は、申立人が長年にわたり築き上げてきた信用及び名声に便乗して不正の利益を得る目的、さらには申立人の事業活動に損害を加える目的をもってなされたものと強く推認される。

したがって、本件商標は不正の目的をもって使用をする商標として、商標法第4条第1項第19号に該当する。

5 商標法第4条第1項第7号について

仮に上記商標法第4条第1項第19号の要件該当性が否定されるとしても、著名キャラクター名をその中核分野で模倣的に出願・独占しようとする行為は、商取引上の信義に著しく反し、社会的相当性を欠くものであって、公正な取引秩序を害する。

よって、本件商標は、予備的に商標法第4条第1項第7号にも該当する。

6 結論

以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に違反して登録されたものであり、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきである。

第4 当審の判断

1 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標について

本件商標は、上記第1のとおり、「pingu・pongu」の文字を標準文字で表してなるところ、中央に「・(中黒)」の記号を配しているものの、各構成文字は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔で横一連に表されており、その構成文字全体から生じる「ピングポング」又は「ピングーポングー」の称呼も、冗長ではなく一気一連に称呼し得るものである。そして、構成中の「pingu」の文字及び「pongu」の文字は、いずれも一般的な辞書類に掲載された語ではないことから、特定の意味合いを有しない造語として認識されるものであって、かつ、上記のとおりの本件商標の外観及び称呼における一体性からすれば、本件商標は、特定の文字部分に着目されることなく、構成文字全体をもって特定の意味合いを有しない一種の造語として看取されるとみるのが相当である。

したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「ピングポング」又は「ピングーポングー」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。

(2)引用商標について

引用商標は、別掲のとおり、多重に表された水色の円形内に、腹部に図案化された「Pingu」の文字を二段に表示したペンギンのキャラクターの図形を表し、当該キャラクターを囲うように、白抜きで「Pingu’s English」の文字を表してなるところ、これらの図形部分と文字部分とは、特別な関連性を有するものともいえず、それぞれ独立して自他商品又は役務の識別標識として機能を果たす要部と認識され得るとみるのが相当であるから、引用商標は、それぞれ要部の一つである「Pingu」及び「Pingu’s English」の文字部分に相応して、「ピング」又は「ピングー」及び「ピングイングリッシュ」又は「ピングーズイングリッシュ」の称呼を生じ、これらの文字は、一般的な辞書類に掲載された語ではないことから、特定の意味合いを有しない造語として認識されるものであるから、特定の観念を生じないものである。

(3)本件商標と引用商標の類否について

ア 外観について

本件商標と引用商標とは、図形の有無において明らかな差異を有することから、全体の外観が相違する。

また、本件商標の「Pingu’s English」の文字及び「Pingu」の文字と引用商標とを比較しても、両者は文字構成及び文字数において相違するから、外観上相紛れるおそれはない。

イ 称呼

本件商標から生じる「ピングポング」又は「ピングーポングー」の称呼と、引用商標から生じる「ピング」又は「ピングー」及び「ピングズイングリッシュ」又は「ピングーズイングリッシュ」の称呼を比較すると、両者は音数及び音構成が異なり、明確に聴別できるものであるから、称呼上相紛れるおそれはない。

ウ 観念

本件商標及び引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、両者の観念を比較することはできない。

(4)小括

以上のとおり、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができず、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、これらを総合して判断すれば、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。

したがって、両商標の指定役務の類否について比較するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

2 申立人商標の周知著名性について

申立人は、「Pingu」の文字(申立人商標)が、本件商標の指定役務中、第41類「知識の教授,電子出版物の提供,書籍の制作」の出所表示として、取引者及び需要者の間に広く認識されている旨主張するので、以下検討する。

(1)申立人の主張及び同人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。

ア 「Pingu」の文字は、1980年代にスイスで制作が開始された、ペンギンを主人公とするクレイ(粘土)アニメーションの題号及び当該主人公のペンギンのキャラクター名として使用されているものである(甲29~甲31)。

イ 我が国においては、1990年代以降、「Pingu」又はその読みを片仮名で表した「ピングー」の文字を使用した、上記クレイアニメーションに係るテレビ放送や書籍の出版、各種商品の販売等が展開された(甲29、甲33ないし甲44)。

ウ 雑誌「週刊ダイヤモンド」において、「初調査 キャラクター商品販売額シェア ベスト50」(2000年9月9日)の見出し記事におけるアンケートにおいて、「ピングー」が13位(シェア1.26%)に位置していた(甲45)。

エ 2023年以降、「ピングー」の文字を使用して、SNSの情報発信やイベントが行われた(甲46~甲49、甲59)。

(2)上記(1)によれば、1990年代以降、「Pingu」の文字又はその読みである「ピングー」の文字が、我が国において使用され、2000年代初め頃においては、需要者の間に一定程度知られていたといい得る。

しかしながら、それ以降、「Pingu(ピングー)」について、各種商品の販売や、SNSでの情報発信、イベントの開催等が行われていることは確認できるものの、「Pingu」の文字が使用された商品や役務の売上げやシェア等を明らかにする証拠の提出はなく、広告宣伝の程度や近年の需要者の認識の程度についても不明である。

加えて、「Pingu(ピングー)」の文字の使用に係るこれらの証拠が、申立人の業務に係るものであることを示す客観的な証拠の提出がない。

そうとすると、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「Pingu」の文字からなる申立人商標が、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者に広く認識されているものとは認められない。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について

上記2のとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国において、申立人の業務に係る商品もしくは役務を表示するものとして需要者に広く認識されているものとは認められないものである。

また、上記1のとおり、本件商標と、「Pingu」を要部の一つとする引用商標とは、非類似の商標であることから、本件商標と、「Pingu」の文字からなる申立人商標とを比較しても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであり、両者の類似性の程度は低い。

そうすると、本件商標をその指定役務に使用しても、需要者において、申立人の取り扱う役務を連想、想起するということはできず、よって、その役務が申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれがある商標とはいえない。

その他、本件商標が、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第19号該当性について

申立人は、本件商標権者が本件商標中に「pingu」の文字列を採用したことは、申立人の著名標章の顧客吸引力・名声に便乗する効果を意図したものと推認されるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する旨主張する。

しかしながら、上記2のとおり、「Pingu」の文字(申立人商標)は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間で広く認識されていたとは認められないものである。

また、上記3のとおり、本件商標と申立人商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。

そして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者が申立人商標にフリーライドするなど不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠の提出はない。

そうすると、本件商標は、本件商標権者が申立人商標の名声を毀損させることを認識し、あるいは、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものとはいえない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

5 商標法第4条第1項第7号該当性について

申立人は、著名キャラクター名をその中核分野で模倣的に出願・独占しようとする行為は、商取引上の信義に著しく反し、社会的相当性を欠くものであって、公正な取引秩序を害するから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する旨主張する。

しかしながら、上記2のとおり、「Pingu」の文字(申立人商標)は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間で広く認識されていたとは認められないものである。

また、上記3のとおり、本件商標と申立人商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。

そうとすると、本件商標の出願経緯や目的に不正があるとはいえず、著しく社会的相当性を欠くものともいえない。

さらに、その商標権により不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的などの不正の目的があったとはいえないから、その登録自体が適正な商道徳に反し、著しく社会的相当性を欠くとはいえない。

その他、本件商標は、その構成自体が非道徳的、きょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。

したがって、本件商標は、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標ではないから、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

6 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものでないから、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものとはいえず、ほかに同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。