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Trademark Appeal Case

周知商標と同一商標の登録可否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900176
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6937418号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

1 本件商標

本件登録第6937418号商標(以下「本件商標」という。)は、「LA FIOLE DU PAPE」の文字を標準文字で表してなり、令和6年11月4日に登録出願、第33類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同7年5月22日に登録査定され、同年6月12日に設定登録されたものである。

2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議申立ての理由において引用する商標は、「LA FIOLE DU PAPE」の文字からなり、商品「ぶどう酒,アルコール飲料(ビールを除く。)」に使用し、申立人の業務を表示するものとして、我が国のみならず世界的にも周知・著名な商標と主張するものである(以下「引用商標」という。)。

3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第32号証(枝番号を含む。)を提出した。

なお、以下、証拠の表記にあたっては、甲第1号証を「甲1」のように簡略して表記する場合があり、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。

(1)申立人について

申立人であるBROTTEは、フランス国ココート・デュ・ローヌ地方のシャトーヌフ・デュ・パプ所在のワイナリーであり、引用商標「LA FIOLE DU PAPE」のブランドを冠したぶどう酒を製造・販売している。

(2)商標法第4条1項第10号の該当性

ア 本件商標について

本件商標は「LA FIOLE DU PAPE」から構成されるところ、フランス語で「教皇の瓶」等の意味を有し、「ラ・フィオール・デュ・パプ」の称呼を生じる(甲2)。

イ 引用商標について

引用商標は、本件商標と同様に「LA FIOLE DU PAPE」から構成され、フランス語で「教皇の瓶」の意味を有すると共に、「ラ・フィオール・デュ・パプ」の称呼をも生じる。

ウ 引用商標の周知・著名性について

(ア)申立人は1931年創設の家族経営のワイナリーであり、1952年にシャルル・ブロット氏によって製造・販売が開始されて以来、現在に至るまで70年以上にわたって、引用商標は申立人の看板商品として製造・販売しているぶどう酒に用いられている。同ぶどう酒は、シャルル・ブロット氏、及びプロヴァンスの陶芸家であるルネ・コンティエによって制作された、独特の曲線から構成されるねじれた形状からなるオリジナルボトルで販売されている点でも特徴を有しており(甲3)、また、現在では世界80か国以上で流通し、世界中において人気を博している。

なお、一見すると「歪んでいる」ように見えるオリジナルボトルであるが、これはわざと不規則な形に作られており、「長い年月を経た古いワインボトル」をイメージし、熟成感と伝統を表現している。この独特なボトルデザインのおかげもあり、世界的にも非常に印象的なぶどう酒として認知されている。

(イ)各国における引用商標の登録状況

申立人はホームカントリーであるフランスはもちろんのこと、カナダ、中国、米国、オーストラリア、ベネルクス、韓国、モナコ、スペイン、スイス、及びナイジェリアの世界の様々な地域において引用商標を既に登録し、保護している(甲4~甲9)。

(ウ)フランス及びイギリスにおける引用商標に関する雑誌記事

引用商標は申立人の商標としてフランス及びイギリスの雑誌記事にも古くから多数取り上げられ、需要者等に認知されている(甲10~甲17)。特に、イギリスの最古の記事は1952年のものであり(甲10)、引用商標が製造販売開始時から注目されていたことが看取できる。

(エ)日本・韓国及び台湾の取引書類

引用商標が用いられたぶどう酒は、我が国はもちろんのこと、本件商標の権利者の住所又は居所である韓国などにおいても販売されて親しまれている。このことは、日本においては、洋酒など輸入会社5社への販売実績(甲18~甲22)があり、例えば、株式会社都光を通じて、全国に201店舗を有するリカーマウンテンにも商品を提供している(甲22)。さらに、本件商標の権利者の所在地である韓国や、台湾において、洋酒など輸入会社5社を通じた販売実績(甲23~甲27)を有している。

(オ)需要者などの引用商標の認識及び評価

以下のとおり、引用商標が付されたぶどう酒は我が国を含む世界各国の需要者に高くその品質を評価され、親しまれている。

a 世界最大級のワインマーケットプレイスである「VIVINO」では、引用商標のぶどう酒が紹介されており、4.1の高評価がされている(30,556件)(甲28)。

b 洋酒販売サイト「BCLIQUOR」では、引用商標のぶどう酒が紹介されており、3.7の高評価がされている(483件)(甲29)。

c ワインの共有・管理アプリである「vinica」では、引用商標のぶどう酒が3.04と評価されている(ロコミ25件)(甲30)。

d フリマアプリ「メルカリ」においても引用商標のぶどう酒は取引されている(甲31)。

e 引用商標について紹介している個人ブログ「Red Red Wine:「偉いワイン」探しの備忘録」にて引用商標が紹介されている(甲32)。

エ 両商標の類否について

前述のとおり、本件商標と引用商標は、称呼・観念・外観において完全に同一である。

オ 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否について

本件商標は、第30類「ぶどう酒」などをその指定商品とするものであるのに対し、引用商標は、「ぶどう酒」に使用されており、両商品は同一である。

カ 小括

以上のとおり、本件商標は、申立人の商標として、需要者の間において広く認識されている引用商標と全く同一であって、その商品も同一である。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第15号の該当性

本件商標は、引用商標と称呼・観念・外観が完全に同一であることに加え、引用商標の我が国及び世界における周知・著名性を考慮すると、本件商標に接した需要者は、申立人の商品であるとミスリードされ、出所混同を生じるのは明らかである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(4)商標法第4条第1項第19号の該当性

本件商標は、申立人の「ぶどう酒」の商標として、我が国だけでなく世界的に知られているところ、本件商標の権利者が、引用商標と完全に同一の商標を、引用商標の使用商品について出願した事実を単なる偶然の一致と認めることは断じてできず、極めて不自然である。

商標審査基準改訂第16版によれば、対象商標が「一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するもの」である場合、不正の目的をもって使用するものと推認するとも明示されている。

引用商標の権利者は韓国に居住しているところ、引用商標を用いた商品は我が国だけでなく、韓国においても販売されており、権利者は引用商標が我が国において登録されていないことを奇貨として、引用商標の存在を認識した上で、不正の目的を持って本件商標の出願をおこなったといえる。

よって、本件商標は、引用商標と同一の商標を、不正の目的をもって出願されたものであることから、商標法第4条第1項第19号に該当する。

(5)商標法第4条第1項第7号について

商標審査基準改訂第16版によれば、商標法第4条第1項第7号に定める「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」は、「商標の構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与える文字」等でなくても、「当該商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合」も該当すると明示されている。

本件商標は申立人の引用商標と完全に同一であり、引用商標と偶然に一致して採択したとは到底考えられず、本件商標を出願した際は既に引用商標にかかるブランドの存在を知っていた権利者が、申立人によって長きにわたって使用されていた商品と同一の商品について、同一の商標を意図的に出願したことは明白である。

すなわち、権利者は、引用商標に依拠し、引用商標を剽窃的に採択し、出願した蓋然性が極めて高いといえ、また、本件商標に係る出願に際し、申立人より承諾を受けていたと認める事実は一切ない。

したがって、本件商標は、引用商標の顧客吸引力に便乗し、不当な利益を得る目的で出願した商標であるといえる。

かかる状況にもかかわらず、本件商標の出願を正当化すれば、商標登録制度に対する信頼は損なわれ、また、市場流通秩序を乱し、需要者を混乱に陥らせることになりかねない。

そうすると、本件商標は、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くというべきであり、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものというべきである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断

(1)引用商標の周知性について

ア 申立人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。

(ア)申立人は、1931年に創設されたフランスのココート・デュ・ローヌ地方のワイナリーであり、「LA FIOLE DU PAPE」の文字を冠した特徴的な形状をしたボトルのワイン(以下「申立人商品」という。)を1952年から製造、販売しており、現在、世界80か国以上で販売している(甲3、申立人の主張)。

(イ)申立人は、「LA FIOLE DU PAPE」の文字からなる商標登録を、国際登録、並びにフランス、カナダ、中国、米国及びナイジェリアに有している(甲4~甲9)。

(ウ)申立人は、フランス及びイギリスの雑誌記事に申立人商品が取り上げられたとして、その写し(甲10~甲17)を提出しているところ、これらにおいて「LA FIOLE DU PAPE(La Fiole du Pape)」の文字の記載があるものの、これらの記事は外国で作成されたものであり、その一部(甲12)しか翻訳文の提出がないから、具体的な内容を把握することができない。

(エ)申立人は、日本の輸入会社5社、並びに韓国及び台湾へ申立人商品を販売したとしてインボイスの写し(甲18~甲27)を提出しているところ、そのうち、日本宛て(2社)の2012年の日付のもの(甲18、甲19)には、「LA FIOLE DU PAPE」の記載がある。

(オ)申立人は、申立人商品が紹介されたウェブサイト(甲28~甲32)を提出しているが、その印刷日は全て、本件商標の登録査定後の2025年11月17日である。

イ 上記アによれば、申立人は、1952年から申立人商品を製造、販売しており、外国の雑誌に申立人商品が掲載されたこと、及び我が国並びに韓国、台湾に申立商品が輸出されたことがうかがえるものの、申立人商品が我が国の輸入会社2社に販売されたことが確認できるのは、本件商標の登録出願日(令和6年(2024年)11月4日)の10年以上前の2012年のものであり、申立人は全国に店舗を有するリカーマウンテンにも商品を提供していると主張しているが、提出された証拠において、上記輸入会社への申立人商品の販売は確認できない。

また、申立人商品を紹介するウェブサイトはわずか数件にすぎず、これらの紹介記事は本件商標の登録査定後のものである。

さらに、引用商標が、諸外国で登録されているとしても、諸外国で商標登録された事例が直ちに、我が国又は外国における引用商標の周知著名性に結びつくものではない。

その他、引用商標を使用した申立人商品の我が国及び外国における引用商標を付した商品の販売数、売上高などの販売実績、広告宣伝の方法、規模、広告宣伝費など、その事実を客観的に把握することができる証拠は提出されていない。

よって、申立人提出の証拠からは、引用商標が、我が国及び外国の需要者の間にどの程度認識されているのか把握、評価することができない。

してみると、提出証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間で広く認識されていたものと認めることはできない。

(2)商標法第4条第1項第10号該当性

本件商標及び引用商標は、上記1及び2のとおり、いずれも「LA FIOLE DU PAPE」の欧文字からなるものであるから、両商標が同一又は類似することは明らかである。

しかしながら、引用商標は、上記(1)イのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間において広く認識されていると認められないものである。

そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものであるから、その他の要件について検討するまでもなく、同号に該当しない。

(3)商標法第4条第1項第15号該当性について

上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は同一又は類似する商標であるから、類似性の程度が高いものである。

しかしながら、引用商標は、上記(1)イのとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたとはいえないものである。

そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないと判断するのが相当である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(4)商標法第4条第1項第19号該当性について

上記(1)イのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内又は外国の需要者の間で広く認識されている商標とは認めることができないものである。

また、申立人が提出した証拠からは、本件商標が、引用商標の顧客吸引力や信頼にただ乗りし、不正の利益や申立人に損害を与え、不正の目的をもって使用することを認めるに足りる証左は見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

(5)商標法第4条第1項第7号該当性について

申立人は、本件商標は引用商標と完全に同一であり、引用商標と偶然に一致して採択したとは到底考えられず、本件商標を出願した際に既に引用商標にかかるブランドの存在を知っていた権利者が、申立人によって長きにわたって使用されていた商品と同一の商品について、同一の商標について意図的に出願したことは明白である旨主張している。

しかしながら、本件商標と引用商標が同一又は類似の商標であるとしても、上記(1)イのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間で広く認識されていたものとは認められないものである。

そうすると、本件商標をその指定商品に使用しても、需要者において、申立人及び申立人の取り扱う商品を連想、想起するということはできないものであるから、本件商標は、引用商標の知名度や名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。

また、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないことは明らかであり、さらに、申立人が提出した全証拠を勘案しても、本件商標が剽窃的に出願されたものであって、高額で買い取らせる又は申立人の事業活動を阻害する等の目的など、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る具体的な証拠の提出はない。

そうすると、本件商標は、引用商標の出所表示機能を希釈化するとか、その名声にフリーライドするなど不正の目的をもって使用するものということができないものであり、また、他に本件商標権者が本件商標をその指定商品に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す、あるいは国際信義に反するなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

(6)むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではないから、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

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