結論テキスト
登録第6957150号商標の商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025900218 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件登録第6957150号商標(以下「本件商標」という。)は、「明治の源泉」の文字を標準文字で表してなり、令和7年2月14日に登録出願、第3類「化粧品」及び第5類「サプリメント,薬剤」を指定商品として、同年8月1日に登録査定され、同月13日に設定登録されたものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、以下の1ないし3のとおりであり、これらの商標権はいずれも現に有効に存続しているものである。
商標の構成:「明治」(標準文字)
指定商品:第1類ないし第28類、第33類及び第34類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成13年4月20日
設定登録日:平成14年7月12日
商標の構成:「明治」(標準文字)
指定商品:第5類及び第29類ないし第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成18年12月12日
設定登録日:平成19年9月28日
指定商品:第1類ないし第5類、第7類ないし第11類、第16類、第17類、第20類、第24類、第25類、第28類ないし第33類、第35類、第36類及び第38類ないし第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
登録出願日:平成21年1月30日
設定登録日:平成24年9月14日
なお、以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは、「引用商標」という。
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第8号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証を提出した。
以下、証拠の表示については、甲第1号証を「甲1」のように省略して表示する場合がある。
(1)明治グループの沿革
明治グループは、1916年(大正5年)に設立された東京菓子株式会社(のちの明治製菓株式会社)に始まり、翌1917年には極東煉乳株式会社(のちの明治乳業株式会社)が設立された。その後、菓子、乳製品、栄養機能食品等の食品事業を拡充するとともに、医療用医薬品や動物用医薬品等の製薬分野にも進出し、100年以上にわたる企業の歴史を有している。
2009年には持株会社体制に移行し、申立人である明治ホールディングス株式会社が設立された。以降、食品事業を担う株式会社明治及び医薬品事業を担うMeiji Seika ファルマ株式会社を中心に、グループ全体を統括する経営体制を確立している(甲5)。
(2)明治グループの企業概要
申立人は、株式会社明治、Meiji Seika ファルマ株式会社、KMバイオロジクス株式会社等を中心に、国内外で67の子会社及び8の関連会社を有し、食品及び医薬品事業を幅広く展開している。
明治グループの連結売上は、2020年度、約1兆1910億円、2021年度は約1兆130億円、2022年度は1兆620億円、2023年度は1兆1050億円、2024年度は1兆1540億円となっており、連結売上高は1兆円を超える規模に達し、日本を代表する食品・医薬品企業グループの一つである(甲6)。
またグループ全体の従業員数は約17,000名であり、国内外において広範な事業活動を行っている。
(3)明治グループの事業内容及びシェア
明治グループは、乳製品、菓子、栄養食品や医療用医薬品を主要な事業領域としているところ、様々な分野において高いシェアを有している(甲6)。
ア 食品分野
(ア)乳製品(ヨーグルト・牛乳・チーズ等)
乳製品については、「明治ブルガリアヨーグルト」、「明治おいしい牛乳」、「明治北海道十勝チーズ」等を展開し、いずれも高い市場シェアを有する。
ヨーグルト市場においては国内シェア35.2%(第1位)を有し、牛乳飲料類では17.2%(第1位)のシェアを持つ。また、チーズ市場でも10.1%(第3位)のシェアを獲得している。
(イ)菓子(チョコレート・ガム・アイスクリーム等)
菓子の分野においては、「明治ミルクチョコレート」、「きのこの山・たけのこの里」、「アポロ」、「エッセルスーパーカップ」等、世代を超えて消費者に浸透している商品群を有する。
チョコレート市場においては国内シェア25.3%(第1位)を占めており、グミ市場では14.0%(第3位)。アイスクリーム分野では9.1%(第7位)のシェアを持つ。
(ウ)栄養補助食品(スポーツ栄養・プロテイン・乳幼児ミルク・流動食等)
スポーツ栄養食品分野における「ザバス(SAVAS)」シリーズ、高齢者・医療現場向け栄養補助食品「メイバランス」シリーズを中心に、栄養補給・健康維持の分野においても確固たる地位を築いている。
スポーツ栄養(プロテイン含む)領域では36.4%(第1位)のシェアを保持しており、乳幼児ミルク及び流動食(市販向けを除く分野)では37.3%(第1位)、並びに流動食(一般向けを含む形で)では30.9%(第1位)を占める。
イ 医薬品分野
医薬品事業は、Meiji Seika ファルマ株式会社及びKMバイオロジクス株式会社を中心に展開している。
(ア)医療用医薬品:
全身性抗菌剤分野においては国内シェア24.6%(第1位)を有し、抗うつ薬・非定型抗精神病薬分野でも8.9%(第4位)のシェアを持つ。
(イ)ワクチン:
インフルエンザワクチン市場においては38.4%(第1位)のシェアを獲得している。
(4)宣伝広告
申立人は、テレビ、ラジオ、新聞・雑誌、SNSなど様々なメディアを通じて、大規模な宣伝活動を継続的に行っており、2021年度には約320億円、2022年度には約340億円、2023年度には約340億円、2024年度には約380億円と毎年300億円以上の多額の拡売費・宣伝広告費を投下している。
(5)社会的認知(賞の受賞)
明治グループは、国内外において製品の革新性、市場における継続的成功等を高く評価されており、数々の賞を受賞している。特に以下の表彰は、「明治」ブランドの著名性を裏付けるものである。
ア 「アミノコラーゲンヨーグルト」が「ワールド・デイリー・イノベーション・アワード・2015 最優秀賞」を受賞(甲7)。
イ 「明治ザバス MILK PROTEIN 脂肪 0 シリーズ」が第34回「新技術・食品開発賞」を受賞(甲8)。
ウ 第36回食品ヒット大賞(2018年):「チョコレート効果」がロングセラー賞を受賞し、「エッセルスーパーカップ Sweet’s」が優秀ヒット賞を獲得(甲9)。
エ 明治ブルガリアフローズンヨーグルトデザート」が、ワールド・デイリー・イノベーション・アワード2022において、デザートカテゴリーの「Winner(最優秀賞)」を受賞(甲10)。
これらの受賞実績は、明治ブランドが国内外で評価される著名なブランドであることを示すものである。
(6)防護標章登録及び「日本有名商標集」
申立人は、以下のとおり商標「明治」及び商標「meiji」について、防護標章登録を得ている。
ア 防護標章 「明治」
登録番号 第496702号防護第37号(甲11)
出願日 平成13(2001)年4月19日
登録日 平成14(2002)年8月30日
イ 防護標章 「meiji」
登録番号 第5522267号の2防護第01号(甲12)
出願日 平成30(2018)年7月25日
登録日 令和2(2020)年1月10日
さらに、申立人の所有する商標「明治」及び「meiji」は、日本国際知的財産保護協会(AIPPI JAPAN)の発行する「日本有名商標集」に掲載されている(甲13)。
(7)小括
以上のとおり、明治ホールディングス株式会社を始めとする明治グループは、100年以上にもわたって商標「明治」及び商標「meiji」を長年継続的に使用しており、また、明治グループは、1兆円以上の売り上げを達成し、多額の宣伝広告費を掛けて引用商標の宣伝活動を行っていることなどを考慮すると、引用商標は、本件商標の出願より前から、本件商標の指定商品の分野において、申立人の「明治グループ」を表するものとして、需要者の間に全国的に広く知られていたといえるものである。
(1)本件商標について
本件商標は、「明治の源泉」の文字を標準文字にて表してなり、その構成中、語頭部分に「明治」の漢字を配してなるものである。そして、「明治」の文字は、上記のとおり、申立人の「明治グループ」を表するものとして需要者の間に広く認識されているものである。
一方、「源泉」の文字は、「物事の生ずるもと」又は「起源」を意味することから、全体としては「明治という企業の価値・力の起源」といった観念が生ずるものである。
そうすると、本件商標は、その構成中の「明治」の文字部分が申立人の商標として全国的に広く知られていること、また、構成文字全体から生ずる観念に照らせば、「明治」の文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。
してみると、本件商標は、その構成中「明治」の文字部分を抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。
したがって、本件商標は、その構成中「明治」の文字部分から、「メイジ」の称呼を生じるものであり、また、「明治」は申立人の「明治グループ」を表するものとして需要者の間に広く認識されているから、「申立人の明治グループ」という観念を生じるものである。
(2)引用商標について
引用商標1及び引用商標2は、「明治」の漢字を標準文字で表してなるものであり、また、引用商標3は、「meiji」の欧文字を表してなるものであるから、それぞれの構成文字に相応して、「メイジ」の称呼を生じるものである。
また、上記のとおり、「明治」又は「meiji」の文字は、申立人の「明治グループ」を表するものとして需要者の間に広く認識されているから、引用商標からは「申立人の明治グループ」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との対比
本件商標は、その構成中「明治」の文字部分を抽出し、この部分のみを他人の商標と比較することも認められる。
そして、本件商標の構成中「明治」の文字部分は、引用商標1及び引用商標2「明治」と構成文字が共通することから、当該文字部分は、引用商標1及び引用商標2と外観において類似するといえ、引用商標3は、「meiji」の欧文字からなるものであることから、本件商標の構成文字「明治」とは、構成文字が異なるため、外観においては区別できる。
また、称呼及び観念においては、本件商標と引用商標は、いずれも「メイジ」の称呼及び「申立人の明治グループ」の観念を生じるものであるから、両商標は称呼及び観念を共通にするものである。
そうすると、本件商標と引用商標1ないし引用商標3については、その外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合してみれば、両商標は称呼及び観念を共通にし、また引用商標1及び引用商標2とは外観も共通することから、両商標は、商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似する商標というべきものである。
(4)商標審査基準との整合性
商標法第4条第1項第11号に関する「特許庁商標審査基準」では、「結合商標の類否判断について「需要者の間に広く認識された商標を構成中に含む場合」、すなわち「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。ただし、その他人の登録商標の部分が既成の語の一部となっているもの等を除く。」と定められている。
本件商標は、需要者の間に広く認識されている引用商標をそのまま含みつつ、既成語の一部ではないため、この審査基準に照らしても引用商標と類似する商標と判断するのが妥当である。
(5)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否について
本件商標は、第3類「化粧品」及び第5類「サプリメント,薬剤」を指定商品として指定している。
引用商標1は、第3類「せっけん類,香料類,化粧品」及び第5類「薬剤」などを指定商品として指定していることから、本件商標の指定商品である第3類「化粧品」及び第5類「薬剤」が含まれる。
引用商標2は、第29類「ミネラル類・ビタミン類・アミノ酸類・タンパク質類・コラーゲンを主成分とする粒状・錠剤状・カプセル状・顆粒状・粉状・ペースト状・液体状の加工食品」及び第30類「糖類を主成分とする粒状・錠剤状・カプセル状・顆粒状・粉状・ペースト状・液体状の加工食品」を指定商品として指定しており、これらの指定商品は、本件商標の指定商品中、第5類「サプリメント」に含まれる。
引用商標3は、第3類「化粧品」、第5類「薬剤」及び第29類「たんぱく質類・アミノ酸類・脂質・糖質・食物繊維・ビタミン類・ミネラル類・コラーゲンを加味した顆粒状・粉末状・ゼリー状・液体状・ゲル状・ペースト状の加工食品」を指定商品として指定していることから、本件商標の全ての指定商品と同一又は類似すること明らかである。
(6)審決例
申立人の上記主張の妥当性は、異議2019-900293(甲14)からも裏付けられている。
(7)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標と類似する商標であって、かつ、その指定商品全てについて、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品である。
したがって、本件商標は、その指定商品について、商標法第4条第1項第11号に該当すると判断するのが相当である。
(1)本件商標と引用商標との類似性
本件商標「明治の源泉」は、引用商標と称呼及び観念において共通性を有し、外観も引用商標1及び引用商標2と共通する「明治」の文字を有しており、類似性の程度は極めて高いといえる。
また「源泉」は「物事の生ずるもと」又は「起源」を意味し、企業理念や価値の根源を象徴的に表す語としても使用されることが多い。例えば、株式会社資生堂は「価値創造の源泉」との表現で自社の歴史・強みを整理したコンテンツを公表している(甲15)。また、キリンホールディングス株式会社は「イノベーションの源泉」として発酵・バイオテクノロジー、人財、マーケティング、DXを掲げている(甲16)。
このような取引実情を踏まえると、本件商標は、「明治という企業の価値・力の起源」といった観念を容易に想起させるものであり、取引者・需要者はこれを申立人グループのスローガン又は関連事業に係る商標として理解し、申立人の「明治」、「meiji」を想起・連想するとみるのが相当である。
したがって、本件商標と引用商標との類似性の程度は高い。
(2)引用商標の周知著名性及び独創性の程度について
引用商標は、申立人の「明治グループ」を表するものとして全国的に広く認識されていることから、申立人の引用商標の周知著名性の程度は高いといえる。
また、「明治」は旧元号の一つであるが、本件指定商品分野において旧元号を採択する必然性は乏しく、むしろ当該分野における申立人の著名性を踏まえると、申立人の信用へのただ乗りの意図の下に「明治」を構成中に取り込んだ出願であると優に推認できる。
特にサプリメント、医薬品などの分野においては、「明治」といえば申立人グループを指示・連想させる程度にまで周知・著名性が及んでいる。
(3)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性の程度並びに取引者及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品中、第5類「サプリメント,薬剤」は、申立人の主たる業務である「食品、サプリメント、医薬品」と共通しており、関連性の程度が高く、需要者も共通にする。
また、本件商標の指定商品中、第3類「化粧品」については、申立人は、美容に関連した事業も行っていることから、関連性を有するものである。
例えば、申立人は、美しさをサポートするインナーケア商品として、コラーゲンやアミノ酸、ビタミン等を含んだサプリメント「アミノコラーゲン」を販売している(甲17)。
また、紫外線対策や肌の乾燥防止などを目的とした「明治Wのスキンケアヨーグルト」といった商品も販売している(甲18)。
さらに、申立人は、カカオ由来の保湿成分「カカオグルコシルセラミド」を素材化することに成功し、化粧品メーカーである株式会社アルビオンとコラボレーションし、グルコシルセラミドを配合したチョコレート「meiji×ALBION CACAO DRIP」やゼリー入りドリンク「meiji×ALBION CACAO DRIP JELLY DRINK」を販売した(甲19)。遊離型セラミドは化粧品などへの用途の拡大を計画している。
このように申立人は、「化粧品」の分野においても技術的・事業的に関与を有しており、本件商標の指定商品と申立人の商品との関連性は高いといえる。
加えて、いずれの商品も一般消費者を対象とする点で、需要者・取引者の共通性も顕著である。
(4)混同を生ずるおそれについて
上記(1)ないし(3)で述べたとおり、本件商標と申立人の引用商標との類似性の程度は高く、申立人の引用商標の周知著名性及び識別力の程度は高いといえ、また、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品との関連性の程度が高く、さらに、取引者及び需要者も共通するといえるものである。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品に使用された場合、需要者において普通に払われる注意力を基準にすれば、本件商標に接した需要者は、構成中の「明治」の部分に着目し、申立人の著名商標を想起、連想し、あたかも申立人又はそのグループ会社が取り扱う業務に係る商品であるかの如く認識して取引にあたる可能性が高いものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)審決例
異議2012-900127(甲20)、異議2015-900164(甲21)の審決では、引用商標を想起・連想を基軸に混同のおそれを判断しており、本件事案も同視できる。
すなわち、「明治の源泉」は、当該分野における申立人の著名性を背景として、需要者に申立人グループの強みの源を訴求するものと認識され、申立人の「明治」、「meiji」を想起・連想させる。
したがって、本件も上記審決と同様に商標法第4条第1項第15号に該当すると判断するのが相当である。
(1)本件商標は、「明治の源泉」の文字を標準文字にて表してなるところ、語頭部分の「明治」は、上記のとおり、本件商標の登録出願の日前及び登録査定日において、申立人「明治ホールディングス株式会社」及びそのグループ会社(株式会社明治など)を表すものとして全国的に広く知られている申立人の著名な略称「明治」と同一のものである。
そして、本件商標の構成文字「源泉」は「物事の生ずるもと」、又は「起源」を意味し、企業理念や価値の根源を象徴的に表す語としても使用されることが多い。
したがって、本件商標全体として「明治という企業の価値・力の源泉」といった観念を容易に想起させるものであり、取引者・需要者はこれを申立人グループのスローガン又は関連事業に係る商標として理解し、申立人の著名な略称「明治」を直ちに連想・想起するというのが相当である。
よって、本件商標は、その商標中に他人の著名な略称を含む商標であり、かつ、商標登録を受けることについて、その他人(申立人)の承諾を得ていないものであることから、商標法第4条第1項第8号に該当するものである。
(2)申立人の上記主張の妥当性は、他人の著名な略称を含む商標の登録が商標法第4条第1項第8号に該当するとされた無効2005-089158、無効2016-890003の審決例によっても裏付けられる。
(1)申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 申立人は、2009年に設立された持株会社であり、食品事業を株式会社明治、医薬品事業をMeiji Seika ファルマ株式会社(以下、これらをまとめて「申立人ら」という。)などのグループ会社が中心に行っており、申立人は、国内外で67の子会社及び8の関連会社を有し、その従業員数は、約17,000人であって、申立人らの連結売上は、2020年度、約1兆1910億円、2021年度は約1兆130億円、2022年度は1兆620億円、2023年度は1兆1050億円、2024年度は1兆1540億円である(甲5、甲6)。
イ 申立人らは、ヨーグルト市場では国内シェア35.2%(第1位)、牛乳類では17.2%(第1位)、チーズ市場でも10.1%(第3位)のシェアを獲得し、チョコレート市場では国内シェア25.3%(第1位)、グミ市場では14.0%(第3位)、アイスクリーム市場では9.1%(第7位)のシェアを獲得している(甲6)。
また、スポーツ栄養(プロテイン含む)領域では36.4%(第1位)のシェア、乳幼児ミルクでは37.3%(第1位)、流動食(市販向けを除く)では30.9%(第1位)である。
さらに、医療用医薬品分野では、全身性抗菌剤では国内シェア24.6%(第1位)、抗うつ薬・非定型抗精神病薬では8.9%(第4位)のシェアであり、インフルエンザワクチン市場では38.4%(第1位)のシェアを獲得している(甲6)。
ウ 申立人らの商品である「アミノコラーゲンヨーグルト」が「ワールド・デイリー・イノベーション・アワード・2015 最優秀賞」を受賞(甲7)、「明治(ザバス) MILK PROTEIN 脂肪 0 シリーズ」が令和2年度第34回「新技術・食品開発賞」を受賞(甲8)、「平成29年度 第36回 食品ヒット大賞・優秀ヒット賞」において、「チョコレート効果」がロングセラー賞を受賞、「エッセルスーパーカップ Sweet’s」が、優秀ヒット賞を受賞(甲9)、「明治ブルガリアフローズンヨーグルトデザート」が、ワールド・デイリー・イノベーション・アワード2022において、デザートカテゴリーの「Winner(最優秀賞)」を受賞した(甲10)。
エ 申立人は、商標「明治」(登録第496702号)及び商標「meiji」(登録第5522267号の2)について、防護標章登録を有している(甲11、甲12)。
オ なお、申立人らは、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌及びSNSなどの様々なメディアを通じて、2021年度ないし2024年度において、320億円ないし380億円の広告宣伝費を投下した旨主張しているが、これらの具体的な広告の内容については明らかではない。
(2)上記(1)によれば、申立人は、国内外に多数の子会社や関連会社を有し、ヨーグルト及び牛乳等の乳製品、チョコレート及びアイスクリーム等の菓子の市場シェアも高く、複数の賞を受賞していることなどからすれば、乳製品及び菓子を中心とした分野において、「明治」及び「meiji」の文字からなる商標(以下「使用商標」という。)は、申立人らの業務に係る商品を表すものとして、我が国の需要者の間に広く知られているものと認めることができる。
しかしながら、薬剤、サプリメントについては、申立人らの業務に係る特定の商品の市場シェアが高いとしても、薬剤及びサプリメント市場は、多種多様な商品が多数のメーカーから販売されていることからすれば、上記限定された商品の市場シェアのみをもって、薬剤及びサプリメントの分野において申立人らの商品を表すものとして広く知られているといえるほどの周知性を有するとまでいい難く、また、申立人が主張する広告宣伝費が使用されていることが認められるとしても、その使用商標の態様や対象商品などの具体的な広告の内容は明らかではない。
その他、申立人の提出に係る証拠を総合勘案しても、薬剤及びサプリメントの分野において、使用商標が申立人らの業務に係る商品を表示するものとして需要者の間で広く知られている実情は見いだせず、また、使用商標を使用した化粧品の分野における商品の販売数、売上高、市場シェア等の販売実績並びに宣伝広告の期間、費用、地域及び規模等の広告実績を客観的に把握することができる証拠も見いだせないことから、化粧品を取り扱う分野においても、使用商標が申立人らの業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間において広く知られていると認めることができない。
さらに、「明治」の文字は、「明治天皇在位期の年号(「広辞苑 第七版」岩波書店)」を意味する語として、一般に親しまれている語であり、「meiji」の文字は、そのローマ字表記と認識され得るものであるから、すべての商品の分野において、「明治」又は「meiji」の文字に接する需要者が、申立人らが使用する使用商標を直ちに想起するものとはいえない。
そうすると、「明治」及び「meiji」の文字からなる使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、乳製品及び菓子を中心とした分野の需要者の間では申立人らの業務に係る商品を表すものとして広く認識されているものであるとしても、上記分野の商品以外の商品の需要者の間に、申立人らの業務に係る商品を表すものとして、広く認識されていたものと認めることはできない。
(1)本件商標について
本件商標は、「明治の源泉」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成は、同じ書体及び同じ大きさをもって等間隔に、視覚上、全体としてまとまりよく一体的に表されているものであり、構成文字全体から生じる「メイジノゲンセン」の称呼も格別冗長ではなく無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標の構成中「明治」の文字は、「明治天皇在位期の年号」の意味を、「源泉」の文字は「水のわきでるみなもと。ものの生ずるみなもと。(いずれも「広辞苑 第七版」)」の意味を有し、これらの語を格助詞の「の」を介して結合した本件商標は、「明治(時代)の生ずるみなもと」ほどの意味合いを想起させ得るとしても、その意味合いは漠然としており、直ちに特定の観念を生じるものではない。
また、「明治」の文字が、上記1のとおり、乳製品及び菓子を中心とした分野において申立人らの業務に係る商品を表すものとして広く知られているとしても、本件商標の指定商品との関係において、申立人らの業務に係る商品を表すものとして広く知られていると認めることができないものである。
そうすると、本件商標の構成中の「明治」の文字は、申立人が主張する「申立人らのブランドとしての明治」を想起させるということはできないから、当該文字部分が、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということはできず、また、「源泉」の文字が、指定商品との関係において、商品の品質等を表すものとして一般に使用し、認識されているという実情は認められないから、当該文字が出所識別標識としての機能を果たし得ないということはできない。
よって、「明治の源泉」からなる本件商標は、その構成文字全体をもって、一体不可分の造語を表したものとして認識、把握されるというのが相当である。
したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「メイジノゲンセン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
引用商標1及び引用商標2は、「明治」の文字からなるものであり、その構成文字に相応し、「メイジ」の称呼を生じ、「明治天皇在位期の年号」の意味を有するから、「年号としての明治」の観念を生じるものである。
また、引用商標3は「meiji」の文字を太字でややデザイン化した別掲のとおりの構成からなるところ、その構成文字に相応して「メイジ」の観念を生じ、当該文字は、「年号としての明治」を認識させ得るものであるから、「年号としての明治」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の比較
本件商標と引用商標を比較してみれば、その構成する文字及び文字数が異なるものであることから、外観において、明確に区別できるものである。
また、本件商標から生じる「メイジノゲンセン」の称呼と引用商標から生じる「メイジ」の称呼を比較してみれば、その構成音及び構成音数が異なるものであることから、明瞭に聴別できるものである。
さらに、観念においては、本件商標からは特定の観念を生じないのに対し、引用商標からは、「年号としての明治」の観念を生じるから、観念において相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(4)小括
上記のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、両者の指定商品が同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
上記1のとおり、使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「乳製品」及び「菓子」を中心とした分野においては、申立人らの業務に係る商品を表すものとして需要者の間に広く認識されているとしても、本件商標の指定商品の分野において、申立人らの業務に係る商品を表すものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることができないものである。
また、上記2(3)と同様の理由から、本件商標と「明治」及び「meiji」の文字からなる使用商標とは非類似の商標といえるものであって、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれがないことから、本件商標と使用商標の類似性の程度は低いものである。
そして、「明治」の文字は、「明治天皇在位期の年号。」を意味するものとして我が国で一般に親しまれた語であり、また、「meiji」の欧文字は、上記漢字の欧文字表記と認識され得るものであるから、いずれも、独創性が高いとはいえない。
さらに、本件商標の指定商品「化粧品」、「サプリメント」及び「薬剤」と使用商標に係る商品「乳製品」及び「菓子」とは、一般的には、商品の製造者及び販売場所は一致するものではなく、需要者の範囲が一部重複する場合があるとしても、関連性が高いとはいい難いものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、需要者が、申立人らが使用する使用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人ら)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が申立人らの業務に係る商品と出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
商標法第4条第1項第8号における「著名な略称」に関して、「人の名称等の略称が同号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するについても、常に、問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく、その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものということができる。」と解されるものである(最高裁平成16年(行ヒ)第343号平成17年7月22日第二小法廷判決参照)。
そして、申立人は、本件商標は、申立人らの著名な略称である「明治」を含むものである旨主張している。
しかしながら、上記1のとおり、「明治」の文字が、乳製品及び菓子を中心とする分野の需要者に、申立人らの業務に係る商品を表すものとして広く認識されているとしても、上記分野以外の商品の需要者の間において、申立人らの業務に係る商品を表すものとして、広く認識されていると認めることができないものであり、また、「明治」の文字は「明治天皇在位期の年号。」の意味を有するものとして、一般に親しまれている語であることもあわせて考慮すれば、当該文字が申立人らの略称を指し示すものとして一般に受け入れられているとはいい難いものである。
そうすると、本件商標は、その構成中に他人の著名な略称を含むものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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