sokuhyo

Trademark Appeal Case

補正の独立特許要件

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024007738
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

本願は、2020年(令和 2年)12月 7日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2019年12月20日 (KR)大韓民国)を国際出願日とする出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和 4年 6月20日 手続補正書の提出

令和 5年 6月28日付け 拒絶理由通知

同年10月 4日 手続補正書及び意見書の提出

同年12月21日付け 拒絶査定

令和 6年 5月 9日 手続補正書(以下、同手続補正書によりなされた補正を、「本件補正」という。)及び審判請求書の提出

令和 7年 8月29日 上申書の提出

同年11月25日 面接

第2 本件補正についての補正の却下の決定

1 補正の却下の決定の結論

本件補正を却下する。

2 理由

(1)本件補正について

ア 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり補正された(下線は、補正箇所である。)。

「【請求項1】

水酸化リチウム水和物を過酸化水素と反応器内で反応させて過酸化リチウムを製造する方法で生成される過酸化リチウムの粒度を調節する方法であって、

前記過酸化リチウムの形状は球形であり、

粒度は反応器内攪拌機のチップ速度を

0.2m/sec.~20m/sec.の範囲で

調節して決定され、

前記チップ速度は、下記式:

V_tip=2pi×R_impellor*(RPM)/60

(上記式中、V-tipはチップ速度であり、Piは円周率であり、R-impellorは攪拌機ブレードの半径であり、RPMは攪拌機ブレードの分当り回転数である)

によって計算される、

過酸化リチウムの粒度を調節する方法。」

イ 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載

本件補正前、すなわち、令和 5年10月 4日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】

水酸化リチウム水和物を過酸化水素と反応器内で反応させて過酸化リチウムを製造する方法で生成される過酸化リチウムの粒度を調節する方法であって、

前記過酸化リチウムの形状は球形であり、

粒度は反応器内攪拌機のチップ速度を調節して決定され、

前記チップ速度は、下記式:

V_tip=2pi×R_impellor*(RPM)/60

(上記式中、V-tipはチップ速度であり、Piは円周率であり、R-impellorは攪拌機ブレードの半径であり、RPMは攪拌機ブレードの分当り回転数である)

によって計算される、

過酸化リチウムの粒度を調節する方法。」

(2)本件補正の目的要件について

本件補正は、請求項1において、「チップ速度を調節して」を、「チップ速度を0.2m/sec.~20m/sec.の範囲で調節して」とする補正を含むものである。

この補正は、「チップ速度」の調節について、「0.2m/sec.~20m/sec.の範囲で」行うことに限定するもので、いわゆる限定的減縮にあたるものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。

(3)本件補正の独立特許要件について

上記(2)のとおり、本件補正に係る請求項1の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、当該補正が適法にされたものであるというには、さらに、同法同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定(いわゆる独立特許要件)に適合する必要がある。

そこで、上記(1)アで記載した本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下、検討する。

ア 引用文献について

(ア)引用文献一覧

引用文献1:韓国公開特許第10-2018-0074071号公報

引用文献2:特開2007-246386号公報

引用文献3:特開2004-300577号公報

引用文献4:国際公開第2016/068263号

引用文献5:特開2007-95946号公報

引用文献6:特許第4841768号公報

なお、引用文献1、2は、拒絶査定で引用した引用文献1、2であり、引用文献3~6は、周知技術を把握するために新たに引用する証拠である。

(イ)引用文献1に記載された事項

なお、訳文は当審によるものであり、下線は当審において付したものである(以下、同様。)。

a 「

22

153

0001436582000001.jpg

([0008] 本発明の一実施例は、リチウムニッケル酸化物(Li

2

NiO

2

)の前駆体であるリチアの製造において、

リチアの前駆体である過酸化リチウム製造段階で均一な粒度を達成して

、安定性の高い洗浄溶媒を使用すると同時に洗浄溶媒の乾燥の時に発生する炭酸塩生成副反応などの副反応を最小化して、高純度のリチアを製造することができる

リチアの製造方法を提供する。

また過酸化リチウムを特定条件で焼成することで、リチアの純度をさらに向上させることができる。)

b 「

57

153

0001436582000002.jpg

([0067]

実施例1

[0068] 常温で雰囲気が制御された

フラスコ中に100mLの35wt%過酸化水素水を投与して、水酸化カリウムを過酸化水素水質量対比10%投与し

て、過酸化水素水の温度を45°Cに調節した。

[0069] その後100~200RPMで

撹拌しながら125gの水酸化リチウム水和物を一斉に投与した。以後、溶液中の固体が全て溶解されるまで、撹拌速度を上げて撹拌を実行した。

[0070] 固体が全て溶解された後、

100~400RPMの速度を維持して1時間反応を進行した。

反応直後、あらかじめ計量した100mLの

メタノールを一斉に投与して30分間未反応不純物が溶解するように反応させた。

[0071]

反応後、セルロース濾過紙で真空濾過をさせて、濾過紙の上に残った物質を真空オーブンで75°Cで7時間乾燥して過酸化リチウムを得た。

[0072] 得られた過酸化リチウムを素早く粉砕した後、10gをアルミナるつぼに移して入れた。このるつぼを焼成炉に投入した後、不活性雰囲気に整えられた。雰囲気が完壁に収まった後、熱処理を始め、昇温温度を分当たり5°Cで425°Cまで上げた後3時間、950°Cに上げた後2時間進行して

リチウムニッケル酸化物の前駆体であるリチアを製造した。

)

(ウ)引用文献2に記載された事項

「【0002】

AFI型鉄アルミノフォスフェート(以下、「FAPO-5」と適宜称する。)

・・・」

「【0006】

本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、

所定の水性出発原料を特定の攪拌線速で攪拌しながら水熱合成する

ことにより、粉砕することなく微粒子のFAPO-5が得られることを見出し、本発明を完成した。」

「【0008】

また、本発明の他の要旨は、上記の

FAPO-5の製造方法であって

、P源、Al源、Fe源およびテンプレートを含む水性出発原料を水熱合成するに際し、0.05m/s以上の攪拌線速で攪拌することを特徴とするFAPO-5の製造方法に存する。なお、撹拌速度は以下の式(1)により求める。

【0009】

【数1】

撹拌線速(m/s)=撹拌翼径(m)×π×回転数(rpm)÷60・・・(1)

「【0013】

本発明において、平均粒径とは、長径、短径のある場合はその平均を指し、粒径は、レーザー回折法により測定できる。

本発明に係る微粒子のFAPO-5の平均粒径は、好ましくは下限値が1μm以上であり、上限値が15μm以下である。

斯かる上限値は、更に好ましくは10μm以下、より一層好ましくは5μm以下である。平均粒径を上記の範囲に規定する理由は、平均粒径が1μmより小さい場合、ハンドリングが悪くなり、また、平均粒径が15μmより大きい場合、表面積が小さくなるために触媒活性が低くなり、しかも、粉砕工程を必要とするために構造の一部に破壊が生じるからである。

【0014】

上記の

粒径の制御は、水熱合成時の攪拌線速度

、水性出発原料調製の際の温度管理および水性出発原料の組成調整

により行う

。」

「【0028】

攪拌線速は、好ましくは0.05m/s以上であり

、更に好ましくは0.1m/s以上、

より一層好ましくは0.5m/s以上

である。攪拌線速の上限はモーターの能力により制限される。攪拌線速の下限を規定する理由は、

攪拌線速が0.05m/sより小さい場合は、得られる粒子の粒径が大きくなり、

表面積が小さくなるため、触媒活性が低くなり、しかも、粉砕工程を必要とするため、その際に構造の一部に破壊が生じるからである。」

「【0048】

実施例1:

水243.6gと85%リン酸110.1gの混合物に擬ベーマイト(25%水含有、コンデア製)58.4gをゆっくりと加えて1.5時間攪拌した。これに、硫酸第一鉄7水和物26.6gを水136.6gに溶かした水溶液を加え、更に、トリエチルアミン67.6gを混合して1時間攪拌した。温度管理を行わずにゲルの調製を行い、以下の組成を有する出発反応物を得た。

【0049】

【化1】

・・・

【0050】

次いで、テフロン(登録商標)製の内筒が装入された1リットルのステンレス製オートクレーブに上記の出発反応物を仕込み、

攪拌線速0.60m/s

、温度180°Cで12時間

反応させた。

反応終了後は、オートクレーブ中の蒸気をパージして冷却し、セントルろ過により固形分を回収した。固形分は、水200mlを振り掛け洗浄し、90°Cで乾燥した。収量は108.2gであった。続いて、得られたテンプレート含有のサンプルを1.5g採取し、縦型の石英焼成管に入れ、30ml/分で供給した5%O2/95%N

2

混合ガスの気流下、1.5°C/分の昇温速度で550°Cまで昇温し、550°Cを保持して6時間焼成を行った。こうして得られた結晶性アルミノフォスフェートのXRDを測定したところ、AFI型のいわゆるFAPO-5であった。

【0051】

上記のFAPO-5を水に分散させ、粒度分布計により平均粒径を求めた結果、

平均粒径は6.9μmであった

。また、吸着等温線測定装置として日本ベル株式会社製の「ベルソープ18」(商品名)を使用し、上記のFAPO-5の35°Cにおける水蒸気吸着等温線を測定した。その結果、相対湿度0.14と0.3での吸着量の差は0.155g/gであった。なお、吸着等温線の測定は、空気高温槽温度55°C、吸着温度35°C、初期導入圧力0.400kPa、導入圧力設定点数0、飽和蒸気圧5.622kPa、平衡時間500秒で行った。

【0052】

実施例2:

実施例1において、水と85%リン酸の混合物を50°Cに加温し、擬ベーマイトを加え、50°Cのままゲル調整を行った以外は同様の操作を行い、実施例1と同じ組成を有する出発反応物を得た。

【0053】

上記の出発反応物を

攪拌線速0.62m/sにて反応させた

以外は実施例1と同様の操作を行った(乾燥後のテンプレートが含まれたサンプルの収量は、105.2gであった)。得られた結晶性アルミノフォスフェートのXRDを測定したところ、AFI型のいわゆるFAPO-5であった。これを水に分散させ、粒度分布計により平均粒径を求めた結果、

平均粒径は6.3μm

であった。

【0054】

また、上記のゼオライトの35°Cにおける水蒸気吸着等温線を吸着等温線測定装置により測定した。その結果、相対湿度0.14と0.3での吸着量の差は0.163g/gであった。

・・・

【0057】

実施例4:

添加するトリエチルアミンを58.0gとした以外は実施例2と同様の操作を行い、以下の組成を有する出発反応物を得た。

【0058】

【化2】

・・・

【0059】

次いで、上記の出発反応物に対し、

攪拌線速0.94m/sとして反応を行った

以外は実施例2と同様の操作を行い、固形分を回収した。乾燥後のテンプレート含有のサンプルの収量は119.2gであった。そして、実施例1と同様に固形分を焼成し、結晶性アルミノフォスフェートを得た。得られた結晶性アルミノフォスフェートのXRDを測定したところ、AFI型のいわゆるFAPO-5であった。

【0060】

上記のFAPO-5を水に分散させ、粒度分布計により平均粒径を求めた結果、粒度分布は図1に示す通りであり、

平均粒径は4.0μmであった。

また、日立社製のSEM「S-4100」(商品名)を使用し、粒子を観察したところ、粒子の観察像(倍率×6000)は図2に示す通りであった。更に、実施例1と同様に、35°Cにおける水蒸気吸着等温線を測定した結果、水蒸気吸着等温線は図3に示す通りとなり、相対湿度0.14と0.3での吸着量の差は0.164g/gであった。」

(エ)引用文献3に記載された事項

「【請求項1】

攪拌槽内で分散媒とともに金属ナトリウムを攪拌してナトリウム粒子が前記分散媒中に分散されたナトリウム分散体を製造する製造方法において、ナトリウム粒子の平均粒子径d

32

(mm) と、攪拌翼の先端速度Vt(m/s)が次の関係式(1)

d

32

=(1.29+a)×Vt

-1.55+b

...(1)

(ただし、aは-0.5 ~0.5 の数であり、bは-0.2 ~0.2 の数である。またナトリウム粒子の

平均粒子径d

32

は0ではなく、且つ50μm 以下

(0.05mm以下)である)

を満たすように制御しつつ攪拌してナトリウム分散体を製造する

ことを特徴とするナトリウム分散体の製造方法。

・・・・

【請求項5】

攪拌槽内で分散媒とともに金属ナトリウムを攪拌してナトリウム粒子が前記分散媒中に分散されたナトリウム分散体を製造する製造方法において、

攪拌翼の先端速度が5~100m/sとなるように制御しつつ

攪拌してナトリウム分散体を製造することを特徴とするナトリウム分散体の製造方法。」

(オ)引用文献4に記載された事項

「[0039] (1-2)

ニッケル含有複合水酸化物の製造方法

・・・

[0049] [撹拌翼の大きさ、羽根の枚数、および撹拌速度]

撹拌翼の大きさ(直径)、羽根の枚数、および

撹拌速度(撹拌回転数)などの撹拌条件は、粒子形状、特に、一次粒子の平均粒径、ならびに、二次粒子の平均粒径、BET値、および球状性に与える影響が大きい。

しかしながら、目的とするニッケル含有複合水酸化物、具体的には、二次粒子の平均粒径が20μm~50μであり、一次粒子の平均粒径が0.01μm~0.4μmであり、かつ、大気中、800°Cで2時間焙焼した場合のBET値が12m

2

/g~50m

2

/gであるニッケル含有複合水酸化物を得るための最適な撹拌条件は、反応槽の形状や大きさ(容積)、アスペクト比(反応槽の直径と高さの比)などに応じて適宜選択する必要があり、一義的に定めることはできない。」

(カ)引用文献5に記載された事項

「【0119】

<砥粒(粒子)の調製>

アルコキシシランの加水分解から得られるコロイダルシリカの一般的な合成方法を用いて、コロイダルシリカを作製した。

即ち、メタノールとアンモニア、純水および分散剤を50°C以上の一定の温度下で攪拌しながら混合した溶液に、正珪酸メチルと有機溶媒の混合物の滴下させ、砥粒を作製した。

なお、

成分(1)及び(2)の粒子の粒径制御は、粒子の攪拌速度を調節することにより制御した。

その後、砥粒(1)及び(2)について、反応生成後に大量のメタノールを加えてクエンチさせ、必要に応じてエバポレーターにて水溶媒に置換し、成分(1)及び(2)の粒子の調製を完了した。

【0120】

上記のようにして調製した砥粒としては、

成分(1)の粒子として扶桑化学社製コロイダルシリカ

で、商品名:PL-7(体積平均粒径:70nm)、PL-10(体積平均粒径:100nm)、PL-20(体積平均粒径:180nm)を用い、

成分(2)が扶桑化学社製コロイダルシリカ

で、商品名:PL-07(体積平均粒径:7nm)、PL-1(体積平均粒径:15nm)、PL-2(体積平均粒径:25nm)、PL-3(体積 平均粒径:35nm)、PL-5(体積平均粒径:55nm)を用いた。」

(キ)引用文献6に記載された事項

「【0018】

本発明の

含クロム酸化物の製造法

の概略機構は以下の様に推定され、その生成機構モデルを図5に示す。

・・・

【0019】

本製造法は、用いるアルキルアミン中の炭素数によって細孔径が容易にコントロール可能なことはもとより、窒素酸化物吸着剤の前駆体となるメソ構造体を、常温常圧下、80分以内で製造できる。

また、

攪拌速度、

酸濃度あるいはアルコールの添加割合

により粒子径の制御が可能となる。

イ 引用文献1に記載された発明

引用文献1には、上記ア(イ)bによれば、実施例1として「リチウムニッケル酸化物の前駆体であるリチアを製造した」こと([0072])が記載され、「フラスコ中に100mLの35wt%過酸化水素水を投与して、水酸化カリウムを過酸化水素水質量対比10%投与し」、「撹拌しながら125gの水酸化リチウム水和物を一斉に投与し」、「以後、溶液中の固体が全て溶解されるまで、撹拌速度を上げて撹拌を実行し」、「100~400RPMの速度を維持して1時間反応を進行し」、「メタノールを一斉に投与して30分間未反応不純物が溶解するように反応させ」、「反応後、セルロース濾過紙で真空濾過をさせて、濾過紙の上に残った物質を真空オーブンで75°Cで7時間乾燥して過酸化リチウムを得た」こと([0068]~[0071])、及び「得られた過酸化リチウムを」「熱処理」して「リチアを製造した」こと([0072])が記載されている。

これらの記載を「過酸化リチウムを製造する方法」に着目して整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「フラスコ中に100mLの35wt%過酸化水素水を投与し、水酸化カリウムを投与し、125gの水酸化リチウム水和物を投与し、溶液中の固体が全て溶解するまで攪拌し、100~400RPMの攪拌速度で1時間反応を進行させ、メタノールを投与して未反応不純物を溶解させ、濾過により濾過紙の上に残った物質を真空オーブンで乾燥して過酸化リチウムを得る、過酸化リチウムを製造する方法。」

ウ 対比・判断

(ア)補正発明と引用発明との対比

補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「フラスコ」は、補正発明の「反応器」に相当する。

引用発明においてフラスコに「過酸化水素水を投与し」、「水酸化リチウム水和物を投与し」、「1時間反応を進行させ」「過酸化リチウムを得る」ことは、補正発明の「水酸化リチウム水和物を過酸化水素と」「反応させて過酸化リチウムを製造する」ことに相当する。

そうすると、補正発明と引用発明は、

「水酸化リチウム水和物を過酸化水素と反応器内で反応させて過酸化リチウムを製造する、方法。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>

補正発明では、過酸化リチウムの形状は「球形」であるのに対し、引用発明ではそのような特定はない点。

<相違点2>

補正発明は、「過酸化リチウムを製造する方法で生成される過酸化リチウムの粒度を調節する方法であって、粒度は反応器内攪拌機のチップ速度を0.2m/sec.~20m/sec.の範囲で調節して決定され、前記チップ速度は、下記式:V_tip=2pi×R_impellor*(RPM)/60(上記式中、V-tipはチップ速度であり、Piは円周率であり、R-impellorは攪拌機ブレードの半径であり、RPMは攪拌機ブレードの分当り回転数である)によって計算される、過酸化リチウムの粒度を調節する方法」であるのに対し、引用発明では「過酸化リチウムを製造する方法」である点。

(イ)相違点について

a 相違点1について検討する。

(a)本願明細書には、「球形」についての定義はなく、本発明によって製造されたLi

2

O

2

粉末のSEM写真である図2に示された形状を踏まえると、「球形」とは、撹拌などにより角が取れた形状であるという程度の意味であると解するのが自然である。そして、引用発明では、補正発明と同様に、撹拌された水溶液中で過酸化水素と水酸化リチウム水和物を反応させて過酸化リチウムを得ているのであるから、引用発明において得られる過酸化リチウムも、補正発明で得られる過酸化リチウムと同様に、撹拌によって角が取れた形状、すなわち「球形」となっているといえる。

したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

(b)上記(a)のとおり、引用発明の過酸化リチウムは「球形」であり、相違点1は実質的な相違点ではないが、念のため、以下、引用発明の過酸化リチウムの形状について、さらに検討する。

本願明細書には、「反応器インペラでの撹拌」工程において、「インペラ回転数が増加するにつれて、・・・形状は球形に近い粒子に」(【0026】)なること、「反応器温度が高いほど・・・形状は球形から非定型に変化」し、「反応器温度が低いほど・・・形状は非定型から球形に近く」(【0027】)なることが記載されている。

そこで、まず、インペラ回転数について検討する。本願明細書には、反応時に、「150~750rpm」(実施例1、2)、「150~500rpm」(実施例3)のインペラ回転数を採用することが記載されている(【0044】~【0056】)。他方で、引用発明の攪拌速度、すなわち、インペラ回転数は、「100~400RPM」である。そうすると、引用発明においても、本願明細書で過酸化リチウムの形状が「球形」に近くなるとされるインペラ回転数で反応が行われているのであるから、インペラ回転数によって「球形」に近くなる効果は、引用発明においても、補正発明と同程度に発揮されているといえる。

次に、反応器温度について検討する。本願明細書には、反応時に、加熱や冷却をすることについての記載はない。そして、過酸化水素水と水酸化リチウムの反応は発熱反応であるから、補正発明は、室温~室温より少し高い程度の温度で反応が行われているといえる。他方で、引用文献1では、過酸化水素水を45°Cとし、そこへ水酸化リチウム水和物を添加することが記載されている(上記ア(イ)b参照)。ここで、過酸化水素水に水酸化リチウム水和物を添加した後も45°Cを保持することは記載されていないため、引用発明でも、補正発明同様、反応時には加熱や冷却はなく、発熱反応による昇温により、室温~室温より少し高い程度の反応器温度で反応が行われていると理解される。なお、仮に、引用文献1の上記記載が45°Cを保持することを意味するとしても、45°Cは室温~室温より少し高い程度の温度であるといえるため、補正発明の反応器温度と同程度であるといえる。そうすると、引用発明においても、補正発明と同程度の反応器温度で反応が行われているのであるから、反応器温度によって「球形」に近くなる効果は、引用発明においても、補正発明と同程度に発揮されているといえる。

そうすると、本願明細書に記載されている、「非定型」ではなく「球形」に近づくための調整方法であるインペラ回転数、反応器温度は、補正発明と引用発明で同程度であるといえるため、引用発明においても、補正発明と同程度に「球形」の過酸化リチウムが得られているといえる。

したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

b 相違点2について検討する。

(a)引用文献1には、「リチアの前駆体である過酸化リチウム製造段階で均一な粒度を達成して・・・リチアの製造方法を提供しようとする。」(上記ア(イ)a[0008])と記載されており、引用発明は、過酸化リチウムを均一な粒度で得ること、すなわち、粒度を調節することも目指していることが理解される。

そうすると、引用発明の「過酸化リチウムを製造する方法」は、「過酸化リチウムの粒度を調節する」ことを包含する方法でもあるといえる。

(b)また、補正発明の「2pi×R_impellor*(RPM)/60(上記式中・・・Piは円周率であり、R-impellorは攪拌機ブレードの半径であり、RPMは攪拌機ブレードの分当り回転数である)」は、攪拌機ブレードの半径と、回転数から、攪拌機ブレード先端の速度を計算する式を記載したに過ぎないため、補正発明の「前記チップ速度は、下記式:V_tip=2pi×R_impellor*(RPM)/60(上記式中、V-tipはチップ速度であり、Piは円周率であり、R-impellorは攪拌機ブレードの半径であり、RPMは攪拌機ブレードの分当り回転数である)」との特定事項は、「チップ速度」は攪拌機ブレード先端の速度のことである、という、チップ速度の一般的な定義を記載しているものにすぎない。

(c)次に、本願優先日当時の周知技術について検討する。

引用文献2には、上記ア(ウ)によれば、FAPO-5(AFI型鉄アルミノフォスフェート)の水熱合成に際し、水熱合成時の攪拌線速度により粒径の制御が行われること、撹拌翼径(m)×π×回転数(rpm)÷60で表される撹拌線速(補正発明の「チップ速度」に相当する)が0.05m/sより小さい場合は得られる粒子が大きくなることが記載されており、引用文献3には、上記ア(エ)によれば、攪拌翼の先端速度Vt(m/s)(補正発明の「チップ速度」に相当する)と、得られるナトリウム粒子の平均粒子径d

32

は式(1)d

32

=(1.29+a)×Vt

-1.55+b

を満たすように制御されること、すなわち、撹拌翼の先端速度Vt(m/s)が大きくなれば、得られるナトリウム粒子の平均粒子径d

32

は小さくなり、撹拌翼の先端速度Vt(m/s)が小さくなれば、得られるナトリウム粒子の平均粒子径d

32

は大きくなることが記載されているといえる。

また、引用文献4には、上記ア(オ)によれば、ニッケル含有複合水酸化物を製造する際に、撹拌速度(回転数)により一次粒子及び二次粒子の平均粒径に与える影響が大きいことが記載されており、引用文献5には、上記ア(カ)によれば、アルコキシシランから加水分解によってコロイダルシリカを合成する際に、撹拌速度によって粒径制御が行えることが記載され、引用文献6には、上記ア(キ)によれば、含クロム酸化物の製造法において、撹拌速度によって粒子径の制御が可能となることが記載されている。そして、チップ速度は、撹拌速度(回転数)と撹拌翼の半径によって算出される値であるから、撹拌速度を調節することは、すなわち、チップ速度を調節することである。

したがって、チップ速度を調節することで、粒径が調節されること、チップ速度が増加すれば得られる粒子の粒径が小さくなり、チップ速度を減少させれば得られる粒子の粒径が大きくなることは、本願優先日当時に広く知られている周知技術であるといえる。

そして、引用文献2には、上記ア(ウ)によれば攪拌線速を0.05m/s以上、好ましくは0.5m/s以上とすることが記載され、攪拌線速0.60m/sで平均粒径は6.9μmとなったこと(実施例1)、攪拌線速0.62m/sで平均粒径は6.3μmとなったこと(実施例2)、攪拌線速0.94m/sで平均粒径平均粒径は4.0μmとなったこと(実施例4)も記載されており、引用文献3には、上記ア(エ)によれば攪拌翼の先端速度を5~100m/sとすることで、得られる粒子の平均粒子径d

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を50μm以下とすることが記載されている。

そうすると、チップ速度を0.05m/s~100m/sとすることは、通常採用されるチップ速度であるといえるし、当該チップ速度を調整することで、得られる粒子の粒径を数μm~百数十μmに調整できることも周知技術といえる。

(d)上記(a)のとおり、引用発明は「過酸化リチウムの粒度を調節する」ことを包含するところ、その粒度を調節するために、上記(c)の周知技術や上記(b)のチップ速度の定義を参酌して、「2pi×R_impellor*(RPM)/60(上記式中・・・Piは円周率であり、R-impellorは攪拌機ブレードの半径であり、RPMは攪拌機ブレードの分当り回転数である)」で定義されるチップ速度を調節し、そのチップ速度を0.2m/sec.~20m/sec.程度にすること、すなわち、相違点2に係る補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到しうることである。

そして、本願明細書の【0036】に「生成される過酸化リチウムの粒子大きさは1μm~130μmの範囲、好ましくは、5μm~50μmの範囲である。」と記載されているように、補正発明は、過酸化リチウムの粒子大きさを1μm~130μmの範囲で粒度調整できるとの効果を奏するものといえるが、その効果も上記(c)の周知技術から予測し得る程度のものであり、格別なものとはいえない。

(ウ)以上のとおりであるから、補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 審判請求人の主張について

(ア)審判請求人の主張

審判請求人は、審判請求書において、本願請求項1に係る発明は、反応器内の攪拌機のチップ速度を調節して過酸化リチウムの粒度を調節する構成を含むものであるのに対し、引用文献1には反応器内の攪拌機のチップ速度に関する内容が存在せず、過酸化リチウムを沈殿させる段階の撹拌速度に関する広範なRPMを開示しているに過ぎず、具体的な実施例は100~200RPMで撹拌が行われた例のみを開示しており、撹拌速度と過酸化リチウムの粒度との相関関係及びそれに対する具体的な実施例も存在していない旨主張している(審判請求書の「(2)理由1(特許法第29条第2項)について」欄参照)。

(イ)当審の判断

上記ウ(イ)bに記載したとおり、引用発明において、撹拌機の撹拌速度RPMを調節すれば、チップ速度はそれに伴って調節されるものであるし、引用文献2~6に記載されているとおり、チップ速度が増加すれば生成される粒子は小さくなり、チップ速度が減少すれば生成される粒子が大きくなることは、本願優先日当時の周知技術であるし、引用文献2、3には、本願発明と同程度のチップ速度で攪拌を行うことも記載されている。したがって、上記審判請求人の主張は採用できない。

なお、令和7年11月25日の面接において、補正発明のチップ速度に関する説明がなされたが、上記ウ(イ)bの判断を覆すものでなかった。

オ 本件補正の独立特許要件についてのまとめ

以上のとおり、補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、本件補正は独立特許要件に適合しない。

(4)本件補正についてのむすび

上記(3)で述べたように、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、本件補正は、上記1の補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和 5年10月 4日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の2(1)イに記載のとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由

原査定における拒絶の理由は、令和 5年 6月28日付け拒絶理由通知書に記載された理由1であって、その理由1は、要するに、本願発明は、本願優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない、というものである。

<引用文献等一覧>

引用文献1:韓国公開特許第10-2018-0074071

引用文献2:特開2007-246386号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献1に記載された事項及び引用発明

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1に記載された事項は、上記第2の2(3)ア(イ)に記載したとおりである。また、引用文献1に記載された発明(引用発明)は、前記第2の2(3)イにおいて認定したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、前記第2の2(3)にて、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討した補正発明において、「粒度は反応器内攪拌機のチップ速度を0.2m/sec.~20m/sec.の範囲で調節して決定され」から「0.2m/sec.~20m/sec.の範囲で」という発明特定事項を省いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その一部の発明特定事項がさらに限定されたものに相当する補正発明が、前記第2の2(3)ウで述べたとおり、引用発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたのであるから、本願発明も、補正発明と同様に、引用発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明、すなわち、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第49条第2号に該当するから、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり、審決する。

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