結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024009664 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本願は、令和2年5月28日(パリ条約による優先権主張 令和1年5月29日(US)米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 4年 1月 7日 :手続補正書の提出
同年11月10日付け:拒絶理由通知
令和 5年 2月14日 :意見書、手続補正書の提出
同年 3月13日 :刊行物等提出書の提出
同年 5月24日付け:拒絶理由通知
同年10月24日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月 1日 :刊行物等提出書の提出
令和 6年 2月 5日付け:拒絶査定
同年 同月 6日 :刊行物等提出書の提出
同年 6月10日 :審判請求書、手続補正書の提出
[補正の却下の決定の結論]
令和6年6月10日にされた手続補正を却下する。
[理由]
令和6年6月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び7である
「【請求項1】
タイヤトレッドゴム組成物であって、
(a)100部のエラストマー成分であって、
(i)少なくとも95%のシス結合含有量及び-101~-110°CのTgを有する60~70部のポリブタジエンと、
(ii)少なくとも-10~-20°CのTgを有する30~40部の少なくとも1種の非官能化スチレン-ブタジエンゴムと、
(iii)0~5部の天然ゴム、ポリイソプレン、又はこれらの組み合わせと、を含む、エラストマー成分と、
(b)150~300m
2
/gの表面積を有する、90~120phrの量の少なくとも1種の補強シリカ充填剤と、
(c)1~10phrのカーボンブラック充填剤と、
(d)30~50°CのTgを有する25~40phrの少なくとも1種の芳香族炭化水素樹脂と、
(e)10~30phrの液体可塑剤と、
(f)硬化パッケージと、を含む、成分から作製され、
前記(d)の少なくとも1種の炭化水素樹脂及び前記(e)の液体可塑剤の総量が、35~59phrである、タイヤトレッドゴム組成物。」
及び
「【請求項7】
前記ゴム組成物が、0.21~0.28の60°Cにおけるtanδの値を有し、かつ
(a)前記60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.5倍の-30°Cにおけるtanδの値を有すること、
(b)前記60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.8倍の0°Cにおけるtanδの値を有すること、及び
(c)前記60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.2倍の30°Cにおけるtanδの値を有すること、の各々を満たす、
ここで、前記tanδ値は、ASTM D5992-96(2011)のガイドラインに従って、動的機械熱分光計を用いて、170°Cで15分間硬化した試料に対する、以下の条件下における測定により決定する:
測定モード:引張試験モード;
測定周波数:52Hz;
-50~-5°Cの0.2%ひずみ及び-5~65°Cの1%ひずみを適用;
-30°C、0°C、30°C、及び60°Cの温度で測定を提供するために、1°Cごとにデータを収集;
試料形状:幅4.75mm×長さ29mm×厚さ2.0mm;
請求項1~6のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物。」
を、本件補正後の請求項1及び6である
「【請求項1】
タイヤトレッドゴム組成物であって、
(a)100部のエラストマー成分であって、
(i)少なくとも95%のシス結合含有量及び-101~-110°CのTgを有する60~70部のポリブタジエンと、
(ii)少なくとも-10~-20°CのTgを有する30~40部の少なくとも1種の非官能化スチレン-ブタジエンゴムと、
(iii)0~5部の天然ゴム、ポリイソプレン、又はこれらの組み合わせと、を含む、エラストマー成分と、
(b)150~300m
2
/gの表面積を有する、90~120phrの量の少なくとも1種の補強シリカ充填剤と、
(c)1~10phrのカーボンブラック充填剤と、
(d)30~50°CのTgを有する25~40phrの少なくとも1種の芳香族炭化水素樹脂と、
(e)10~30phrの液体可塑剤と、
(f)硬化パッケージと、を含む、成分から作製され、
前記(d)の少なくとも1種の炭化水素樹脂及び前記(e)の液体可塑剤の総量が、35~59phrであ
り、
前記(a)(ii)のスチレン-ブタジエンゴムが、油展性であり、かつ、ポリスチレン標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される、700,000グラム/モル~1,200,000グラム/モルのMwを有す
る、タイヤトレッドゴム組成物。」
及び
「【請求項
6
】
前記ゴム組成物が、0.21~0.28の60°Cにおけるtanδの値を有し、かつ
(a)前記60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.5倍の-30°Cにおけるtanδの値を有すること、
(b)前記60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.8倍の0°Cにおけるtanδの値を有すること、及び
(c)前記60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.2倍の30°Cにおけるtanδの値を有すること、の各々を満たす、
ここで、前記tanδ値は、ASTM D5992-96(2011)のガイドラインに従って、動的機械熱分光計を用いて、170°Cで15分間硬化した試料に対する、以下の条件下における測定により決定する:
測定モード:引張試験モード;
測定周波数:52Hz;
-50~-5°Cの0.2%ひずみ及び-5~65°Cの1%ひずみを適用;
-30°C、0°C、30°C、及び60°Cの温度で測定を提供するために、1°Cごとにデータを収集;
試料形状:幅4.75mm×長さ29mm×厚さ2.0mm;
請求項1~
5
のいずれか一項に記載のタイヤトレッドゴム組成物。」
とする補正を含むものである(補正する箇所に当審合議体において下線を付した。)。
以下、本件補正前の請求項1及び7に係る発明を「本件補正前発明1」及び「本件補正前発明7」といい、本件補正による本件補正前の請求項1についての補正を「本件補正事項」といい、本件補正後の請求項1及び6に係る発明を「本件補正発明1」及び「本件補正発明6」という。
本件補正は、特許法第17条の2第1項ただし書第4号に掲げる場合において特許請求の範囲についてする補正であるから、同条第5項の規定に基づいて本件補正事項の目的について検討する。
本件補正事項は、本件補正前発明1を特定するために必要な事項である「(ii)少なくとも-10~-20°CのTgを有する30~40部の少なくとも1種の非官能化スチレン-ブタジエンゴム」を「油展性であり、かつ、ポリスチレン標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される、700,000グラム/モル~1,200,000グラム/モルのMwを有する」ものに限定するものである。
また、本件補正前発明7は本件補正前の請求項1を引用し、本件補正発明6は本件補正後の請求項1を引用するから、本件補正事項は、本件補正前発明7を特定するために必要な事項を限定するものであるともいえる。
そして、本件補正前発明1及び7に係る発明と本件補正発明1及び6に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正事項は、本件補正前発明1及び7について、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。
(1)はじめに
本件補正事項は、上記2で検討したとおり、本件補正前発明1及び7について、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。そこで、同条第6項において準用する同法126条第7項の規定に基づいて、本件補正前発明1及び7に対応する本件補正発明1及び6が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。
(2)本件補正発明1及び6
本件補正発明1及び6は、上記1に記載したとおりのものである。
(3)本願明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、以下のとおりの記載がある(下線は当審合議体による。)。
(摘記a)背景技術について
「【背景技術】
【0002】
タイヤは、路面に接触するトレッドを含めて多くの構成要素を含んでいる。タイヤトレッドを含むゴム組成物を調製するために使用される特定の成分は、様々であり得る。
タイヤトレッドゴム組成物の配合は、1つの特性(例えば、湿潤性能)に改善をもたらす配合への変更が、別の特性(例えば、乾燥牽引摩擦)の劣化をもたらし得るので、複雑な科学である。
」
(摘記b)発明の概要について
「【0003】
本明細書では、タイヤトレッド用のゴム組成物及び関連方法が開示される。
【0004】
第1の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物が開示される。組成物は、(a)100部のエラストマー成分であって、(i)少なくとも95%のシス結合含有量及び-101°C未満のTgを有する60~70部のポリブタジエンと、(ii)好ましくは、少なくとも-20°CのTgを有する、より好ましくは、約-20~約-10°CのTgを有する30~40部の少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムと、(iii)任意選択的に、最大9部の天然ゴム、ポリイソプレン、又はこれらの組み合わせと、を含む、エラストマー成分と、(b)好ましくは、約150~約300m
2
/gの表面積を有する、81~120phrの量の少なくとも1種の補強シリカ充填剤と、(c)10phr以下のカーボンブラック充填剤と、(d)約30~約50°CのTgを有する25~40phrの少なくとも1種の炭化水素樹脂と、(e)5~30phrの液体可塑剤と、(f)硬化パッケージと、を含む、成分から作製され、(d)及び(e)の総量が、少なくとも30phrである。
【0005】
第2の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物が開示される。組成物は、(a)100部のエラストマー成分であって、(i)少なくとも95%のシス結合含有量及び-101°C未満のTgを有する60~70部のポリブタジエンと、(ii)好ましくは、少なくとも600,000グラム/モル、より好ましくは、600,000~1,200,000グラム/モルのMwを有する、31~40部の少なくとも1種の非官能化スチレン-ブタジエンゴムと、(iii)任意選択的に、最大9部の天然ゴム、ポリイソプレン、又はこれらの組み合わせと、を含む、エラストマー成分と、(b)約90~約120phrの量の少なくとも1種の補強シリカ充填剤と、(c)約5~約10phrのカーボンブラック充填剤と、(d)約30~約50°CのTgを有する約25~約35phrの少なくとも1種の炭化水素樹脂と、(e)約20~約30phrの液体可塑剤と、(f)硬化パッケージと、を含む、成分から作製され、(d)及び(e)の総量が、少なくとも45phrである。
【0006】
第3の実施形態では、タイヤトレッドを提供するための方法が提供される。より具体的には、
本方法は、タイヤトレッドゴム組成物を利用することによって、バランスのとれた湿潤、ウィンター、及び摩耗性能を有するタイヤトレッドを提供する方法
であって、タイヤトレッドゴム組成物が、(a)100部のエラストマー成分であって、(i)少なくとも95%のシス結合含有量及び-101°C未満のTgを有する60~70部のポリブタジエンと、(ii)好ましくは、少なくとも-20°CのTgを有する、より好ましくは、約-20~約-10°CのTgを有する30~40部の少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムと、(iii)任意選択的に、最大9部の天然ゴム、ポリイソプレン、又はこれらの組み合わせと、を含む、エラストマー成分と、(b)好ましくは、約150~約300m
2
/gの表面積を有する、81~120phrの量の少なくとも1種の補強シリカ充填剤と、(c)10phr以下のカーボンブラック充填剤と、(d)約30~約50°CのTgを有する25~40phrの少なくとも1種の炭化水素樹脂と、(e)5~30phrの液体可塑剤と、(f)硬化パッケージと、を含む、成分から作製され、(d)及び(e)の総量が、少なくとも30phrである。」
(摘記c)エラストマー成分のうちポリブタジエンについて
「 ポリブタジエンゴム(i)
【0029】
第1~第3の実施形態によれば、
エラストマー成分の(i)は、少なくとも95%
(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上)
のシス結合含有量、及び-101°C未満
(例えば、-102、-103、-104、-105、-106、-107、-108、-109°C以下)
のTgを有するポリブタジエンゴムからなる。特定のそのような実施形態では、ポリブタジエンゴム(i)のTgは、-101~-110°Cである。
シス結合含有量は、シス1,4-結合含有量を指す。本明細書で言及されるシス1,4-結合含有量は、FTIR(フーリエ変換赤外分光法)によって決定され、そこで、ポリマー試料は、CS
2
に溶解され、次いで、FTIRに供する。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(i)のポリブタジエンゴムは、少なくとも98%(例えば、98%、99%、又はそれ以上)又は少なくとも99%(例えば、99%、99.5%、又はそれ以上)のシス1,4-結合含有量を有し得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物に使用される任意のポリブタジエンゴムは、-105°C以下(例えば、-105、-106、-107、-108、-109°C以下)、例えば、-105~-110°C又は-105~-108°CのTgを有する。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物に使用される任意のポリブタジエンゴムは、3重量%未満(例えば、3%、2%、1%、0.5%、又はそれより下)、好ましくは1重量%未満(例えば、1%、0.5%、又はそれより下)又は0重量%のシンジオタクチック1,2-ポリブタジエンを含有する。一般に、第1~第3の実施形態によれば、少なくとも95%のシス結合含有量及び-101°C未満のTgを有する1種又は2種以上のポリブタジエンゴムが、(i)のために使用され得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(i)は、少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上)のシス結合含有量及び-101°C未満のTgを有する1種のポリブタジエンゴムのみからなる。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、高ビニル含有量を有する任意のポリブタジエンゴムの量(すなわち、約70%超)は、(トレッドゴム組成物全体において、)25部未満に限定されず、より好ましくは、10部未満、更により好ましくは、5部又は0部未満である。
【0030】
本明細書に開示される第1~第3の実施形態によるタイヤトレッドゴム組成物において、少なくとも95%のシス結合含有量及び-101°C未満のTgを有する特許請求される量のポリブタジエンの使用(好ましくは、第1~第3の実施形態によるタイヤトレッドゴム組成物の他の成分と組み合わせて)は、特定の実施形態において、特許請求される量未満のポリブタジエン(例えば、60~70部の代わりに50部)を使用し、かつ欠落した量のポリブタジエンを当量のスチレン-ブタジエンゴム(ii)で置き換える、対照ゴム組成物と比較して、摩耗及び雪性能の改善をもたらすことができる。
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、少なくとも5%(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、5~13%、5~10%など)、又は更に少なくとも10%(例えば、10%、11%、12%、13%、10~13%など)の摩耗の改善を呈する。更に論じられるように、以下、
摩耗の改善は、下限値(すなわち、より少ない材料損失)が良好な摩耗を示すDIN摩耗値によって測定することができる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、
(以下、より詳細に論じられるように、
-30°Cにおけるその値tanδによって証明されるように
)
少なくとも5%
(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、5~13%、5~10%など)、又は更に少なくとも10%(例えば、10%、11%、12%、13%、10~13%など)
の雪性能の改善を呈する。
」
(摘記d)エラストマー成分のうち非官能化スチレン-ブタジエンゴムについて
「 スチレン-ブタジエンゴム(ii)
【0031】
第1~第3の実施形態によれば、
(ii)で使用されるスチレン-ブタジエンゴム
のMwは、様々であり得る。第2の実施形態によれば、かつ第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(ii)で使用されるスチレン-ブタジエンゴムのMwは、少なくとも600,000グラム/モル、好ましくは、600,000~1,200,000グラム/モルである。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、エラストマー成分の(ii)
は、約-10~約-20°C
(例えば、-10、-11、-12、-13、-14、-15、-16、-17、-18、-19、若しくは-20°C)
のTg、又は700,000~1,200,000グラム/モル
(例えば、700,000、725,000、750,000、775,000、800,000、825,000、850,000、875,000、900,000、925,000、950,000、975,000、1,000,000、1,025,000、1,050,000、1,075,000、1,100,000、1,125,000、1,150,000、1,175,000、若しくは1,200,000グラム/モル)のMw、700,000~950,000グラム/モル(例えば、700,000、725,000、750,000、775,000、800,000、825,000、850,000、875,000、900,000、925,000、若しくは950,000グラム/モル)
のMw
、又は800,000~950,000グラム/モル(例えば、800,000、825,000、850,000、875,000、900,000、925,000、若しくは950,000グラム/モル)のMwのうちの少なくとも1つ
を有する少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムからなる。
特定のそのような実施形態では、(ii)は、1種のSBRのみを含み、前述の範囲のうちの1つ以内のTg及びMwを有する。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、エラストマー成分の(ii)は、約-10~約-20°CのTg及び700,000~1,200,000グラム/モル(例えば、700,000、725,000、750,000、775,000、800,000、825,000、850,000、875,000、900,000、925,000、950,000、975,000、1,000,000、1,025,000、1,050,000、1,075,000、1,100,000、1,125,000、1,150,000、1,175,000、若しくは1,200,000グラム/モル)のMw、700,000~950,000グラム/モル(例えば、700,000、725,000、750,000、775,000、800,000、825,000、850,000、875,000、900,000、925,000、若しくは950,000グラム/モル)のMw、又は800,000~950,000グラム/モル(例えば、800,000、825,000、850,000、875,000、900,000、925,000、若しくは950,000グラム/モル)のMwを有する少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムを含み、特定のそのような実施形態では、(ii)は、1種のSBRのみを含み、それは前述の範囲のうちの1つ以内のMwを有する。本明細書において言及されているMw値は、重量平均分子量であり、これは、スチレン-ブタジエン標準及び対象のポリマーに対してマルク-ハウインク定数により較正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用することにより決定することができる。
【0032】
第1~第3の実施形態によれば、(ii)で使用される少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムのMnは、様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、エラストマー成分の(ii)は、約-10~約-20°CのTg、又は少なくとも600,000グラム/モル、好ましくは、600,000~1,200,000グラム/モルのMwのうちの少なくとも1つを有し、かつ300,000~500,000グラム/モル(例えば、300,000、325,000、350,000、375,000、400,000、425,000、450,000、475,000、又は500,000グラム/モル)のMnを有する少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムを含み、特定のそのような実施形態では、(ii)は、1種のSBRのみを含み、それは前述の範囲内のMnを有する。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、エラストマー成分の(ii)は、約-10~約-20°CのTg及び350,000~450,000(例えば、350、000、375,000、400,000、425,000、又は450,000グラム/モル)のMnを有する少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムを含み、特定のそのような実施形態では、(ii)は、1種のSBRのみを含み、それは前述の範囲内のMnを有する。(ii)のSBRは、前述の範囲のうちの1つ以内のMnを、任意選択的に、以下に論じられるようにMw/Mn値と組み合わせて、前述の範囲のうちの1つ以内のMwと組み合わせて有することができる。本明細書において言及されているMn値は、数平均分子量であり、これは、スチレン-ブタジエン標準及び対象のポリマーに対してマルク-ハウインク定数により較正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用することにより決定することができる。
【0033】
本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、エラストマー成分の(ii)は、約-10~約-20°CのTg、又は少なくとも600,000グラム/モル、好ましくは600,000~1,200,000グラム/モルのMwのうちの少なくとも1つを有し、また、1.5~2.5のMw/Mn(多分散度)(例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、又は2.5、好ましくは、1.7~2.5も有する、少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムを含み、特定のそのような実施形態では、(i)は、1種のSBRのみを含み、それは前述の範囲のうちの1つ以内のMw/Mnを有する。
【0034】
第1~第3の実施形態によれば、上述のように、エラストマー成分の(ii)は、約-10~約-20°CのTg及び/又は少なくとも600,000グラム/モル、より好ましくは、600,000~1,200,000グラム/モルのMwを有する少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムからなる。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムは、油展性スチレン-ブタジエンゴムを含み、特定のそのような実施形態において、油展性SBRのTgは、約-10~約-20°Cである。
油展性スチレン-ブタジエンゴムが(ii)として使用される場合、SBRは、100部のスチレン-ブタジエンゴム当たり、様々な量の油、好ましくは、30~40部(例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40部)の油で伸展され得る。非限定的な例として、100部のスチレン-ブタジエンゴム当たり35部の油で伸展された油展性SBRは、ゴム組成物に使用される40部のSBRごとに14部の油を提供するであろう。上記で論じた少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムの量(部)は、スチレン-ブタジエンゴムのポリマー量を指し、油展性SBRが(ii)として利用される場合に寄与される油の量を含まない。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴム(ii)は、少なくとも20%(例えば、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、若しくはそれ以上)、より好ましくは、少なくとも25%(例えば、25%、30%、35%、40%、45%、50%、若しくはそれ以上)、又は20~50%(例えば、20%、25%、30%、35%、40%、45%、若しくは50%)、又は20~40%(例えば、20%、25%、30%、35%、又は40%)のスチレン含有量を有する。特定のそのような実施形態では、少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムはまた、30~60%(例えば、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、若しくは60%)、35~55%(例えば、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、若しくは55%)、40~50%(例えば、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、若しくは50%)、又は42~48%(例えば、42%、43%、44%、45%、46%、47%、若しくは48%)のビニル結合含有量を有する。本明細書で言及されるビニル結合含有量は、SBRポリマー鎖のブタジエン部分におけるビニル結合含有量ではなく、SBRポリマー鎖中の総ビニル結合含有量についてであるものとして理解されるべきであり、H
1
-NMR及びC
13
-NMRによって(例えば、300MHz Gemini 300 NMR Spectrometer System(Varian)を使用して)測定することができる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(ii)に使用されるスチレン-ブタジエンゴムは、上記のMw、Mn、及び/又はMw/Mn範囲のうちの1つ以上と任意選択的に組み合わせて、前述の範囲のうちの1つ内のビニル結合含有量及びスチレン含有量を有し得る。
【0035】
第1~第3の実施形態によれば、(ii)の少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムは、
官能化又は
非官能化され得る。
本明細書で使用されるとき、官能化という用語は、官能基及びカップリング剤の両方の使用を包含すると理解されるべきである。1種又は2種以上の官能基が各SBRに利用され得る。一般に、官能基は、ポリマーの先端部に、ポリマーの末端部に、ポリマー鎖の骨格に沿って、又はこれらの組み合わせで存在し得る。ポリマーの一方又は両方の末端に存在する官能基は、一般に、官能性開始剤、官能性停止剤、又はそれらの両方の使用の結果である。代替として又は更に、官能基は、カップリング剤を使用した複数のポリマー鎖の結合の結果として存在し得る(以下に記載される)。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(ii)の少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムは、官能化されており、好ましくは、シリカ反応性官能基で官能化されている。第1~第3の実施形態の特定のそのような実施形態では、(ii)は、シリカ反応性官能基で官能化されている、上記のような1種のスチレン-ブタジエンゴム(のみ)からなる。
第1~第3の実施形態の他の実施形態では、(ii)の少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムは、官能化されていない。第1~第3の実施形態の特定のそのような実施形態では、(ii)は、官能化されていない(すなわち、官能基も、カップリング剤も含有しない)、上記のような1種のスチレン-ブタジエンゴム(のみ)からなる。
第1~第3の実施形態の他の実施形態では、(ii)は、上述のような、2種以上(例えば、2種、3種、又はそれ以上)のスチレン-ブタジエンゴムからなり、特定のそのような実施形態では、スチレン-ブタジエンゴムのうちの少なくとも1種は、シリカ反応性官能基で官能化されている。シリカ反応性官能基の非限定例として、一般に、窒素含有官能基、ケイ素含有官能基、酸素又は硫黄含有官能基、及び金属含有官能基が挙げられ、以下でより詳細に記載する。
【0036】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態の(ii)において官能化SBRが使用される場合、官能化は、官能基をポリマーの一方若しくは両方の末端に付加することによって、官能基をポリの骨格に付加することによって(又は前述の組み合わせによって)、又は2つ以上のポリマー鎖をカップリング剤に結合することによって、又はこれらの組み合わせによって達成することができ、そのような効果は、リビングポリマーをカップリング剤、官能化剤、又はこれらの組み合わせで処理することによって達成することができ、これは、他の鎖を結合及び/又は官能化するのに役立つ。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(ii)の官能化SBRは、1つ以上の官能基を含むが、結合されていない(すなわち、いかなるカップリング剤も含んでいない)。カップリング剤及び/又は官能化剤は、様々なモル比で使用することができる。あるいは、第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(ii)の官能化スチレン-ブタジエンゴムは、単にカップリング剤の使用の結果に由来するシリカ反応性であり得る。本明細書においてカップリング剤及び官能化基(及びそのために使用される化合物)の両方の使用が参照されるが、当業者は、特定の化合物が両方の機能を果たし得ることを理解する。つまり、特定の化合物は、ポリマー鎖を結合すること、及び官能基と共にポリマー鎖を提供することの両方ができる。当業者はまた、ポリマー鎖を結合する能力はポリマー鎖と反応したカップリング剤の量に依存し得ることを理解する。例えば、反応開始剤のリチウムの当量とカップリング剤の脱離基(例えば、ハロゲン原子)の当量との1対1の比でカップリング剤を添加する場合、有利な結合を達成することができる。カップリング剤の非限定例としては、金属ハライド、半金属ハライド、アルコキシシラン、アルコキシスタンナン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。」
(摘記e)エラストマー成分のうち天然ゴム、ポリイソプレン、又はそれらの組み合わせについて
「 (iii)の天然ゴム、ポリイソプレン、又はそれらの組み合わせ
【0060】
第1~第3の実施形態によれば、エラストマー成分の(iii)は、
最大9部(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0部)の天然ゴム、ポリイソプレン、又はそれらの組み合わせからなる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(iii)の量は、0~9部、又は1~9部である。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、エラストマー成分の(iii)は、最大5部、
0~5部
、又は1~5部
の天然ゴム、ポリイソプレン、又はこれらの組み合わせからなる。
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(iii)は天然ゴム(のみ)からなる。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、(iii)はポリイソプレン(のみ)からなる。更に他の実施形態では、前述のように、天然ゴム又はポリイソプレンは、トレッドゴム組成物に存在せず、使用されない。エラストマー成分の(iii)に天然ゴムが存在する場合、天然ゴムは、パラゴムノキ天然ゴム、非パラゴムノキ天然ゴム(例えば、グアユール天然ゴム)、又はこれらの組み合わせを含み得る。天然ゴムが第1~第3の実施形態のトレッドゴム組成物中で利用されるとき、天然ゴムは、好ましくは、1,000,000~2,000,000グラム/モル(例えば、1百万、1.1百万、1.2百万、1.3百万、1.4百万、1.5百万、1.6百万、1.7百万、1.8百万、1.9百万、2百万グラム/モル)、1,250,000~2,000,000グラム/モル、又は1,500,000~2,000,000グラム/モル(ポリスチレン標準を使用してGPCによって測定される)のMwを有する。第1~第3の実施形態のトレッドゴム組成物に天然ゴムが利用される場合、天然ゴムのTgは様々であり得る。好ましくは、第1~第3の実施形態によれば、天然ゴムが利用される場合、それは、-65~-80°C(例えば、-65、-66、-67、-68、-69、-70、-71-、-72、-73、-74、-75、-76、-77、-78、-79、若しくは-80°C)のTg、より好ましくは、-67~-77°C(例えば、-67、-68、-69、-70、-71、-72、-73、-74、-75、-76、又は-77°C)のTgを有する。第1~第3の実施形態のトレッドゴム組成物にポリイソプレンが利用される場合、ポリイソプレンのTgは様々であり得る。好ましくは、第1~第3の実施形態によれば、ポリイソプレンが利用される場合、それは、-55~-75°C(例えば、-55、-56、-57、-58、-59、-60、-61、-62、-63、-64、-65、-66、-67、-68、-69、-70、-71、-72、-73、-74、又は-75°C)、より好ましくは、-58~-74°C(例えば、-58、-59、-60、-61、-62、-63、-64、-65、-66、-67、-68、-69、-70、-71、-72、-73、又は-74°C)のTgを有する。」
(摘記f)補強シリカ充填剤について
「 補強シリカ充填剤
【0062】
上記のように、
本明細書に開示される第1及び第3の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、81~120phr(例えば、
81、82、84、85、86、88、
90、92、94、95、96、98、100、102、104、105、106、108、110、112、114、115、116、118、又は120phr)の量で、好ましくは、約150~約300m
2
/g
、より好ましくは、約180~約250m
2
/g
の表面積を有する、少なくとも1種の補強シリカ充填剤を
含み、第2の実施形態によれば、約90~約120phr又は90~120phr(例えば、90、92、94、95、96、98、100、102、104、105、106、108、110、112、114、115、116、118、若しくは120phr)の少なくとも1種の補強シリカ充填剤であって、好ましくは、約150~約300m
2
/g、より好ましくは、約180~約250m
2
/gの表面積を有する、少なくとも1種の補強シリカ充填剤を
含む。
第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、トレッドゴム組成物は、150~300m
2
/g(例えば、150、160、180、200、220、240、260、280、又は300m
2
/g)の表面積を有する少なくとも1種の補強シリカ充填剤を含む。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、トレッドゴム組成物は、180~240、180~230、180~220、180~210、190~240、190~230、190~220、190~210などの中間範囲を含むものとして理解されるべきである,180~250m
2
/g(例えば、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、又は250m
2
/g)の表面積を有する少なくとも1種の補強シリカ充填剤を含む。第1~第3の実施形態によれば、上述の表面積を有する1つ又は2つ以上の補強シリカ充填剤を利用することができる。2種以上のこのような補強シリカ充填剤が利用されるそれらの実施形態では、前述の量は、全ての補強シリカ充填剤の総量を指す。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、上述のような表面積を有する補強シリカ充填剤が1種のみ利用される。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、トレッドゴム組成物に使用される補強シリカ充填剤は、上述のような表面積を有するものだけであり、そのような実施形態では、トレッドゴム組成物は、前述の範囲外の表面積を有する補強シリカ充填剤を含まない(すなわち、0phrのそれを含有する)ものとして理解することができる。
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、特許請求される範囲の上部にあるシリカの使用量
(すなわち、100phr超~約120phrの補強シリカ充填剤の量)
は、少なくとも5%
(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、5~13%、5~10%など)、
又は少なくとも10%
(例えば、10%、11%、12%、13%、10~13%など)
の0°Cにおけるtanδの増加によって証明され得るように、タイヤトレッドゴム組成物の湿潤トラクション性能を改善するのに有益であり得る。
【0063】
第1~第3の実施形態によれば、上述のような表面積を有する少なくとも1種の補強シリカ充填剤のために使用される特定の種類のシリカは、様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適な補強シリカ充填剤の非限定例としては、以下に限定されないが、沈殿非晶質シリカ、湿性シリカ(水和ケイ酸)、乾燥シリカ(無水ケイ酸)、フュームドシリカ、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適な他の補強シリカ充填剤としては、以下に限定されないが、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム(Mg
2
SiO
4
、MgSiO
3
など)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO
4
)、ケイ酸カルシウム(Ca
2
SiO
4
など)、ケイ酸アルミニウム(Al
2
SiO
5
、Al
4
.3SiO
4
.5H
2
Oなど)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al
2
O
3
.CaO
2
SiO
2
など)などが挙げられる。列挙された補強シリカ充填剤の中で、沈殿非晶質湿式プロセス、含水シリカ充填剤が好ましい。このような補強シリカ充填剤は、水中の化学反応により生成され、そこから凝集体へと強力に結合し、順次、集塊物へとわずかに強く結合する一次粒子を伴う超微粒の球状粒子として、沈殿される。BET法で測定される表面積は、様々な補強シリカ充填剤の補強特性を特徴付ける好ましい測定値である。本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、以下に論じられるように、(BET法によって測定される)表面積を有する補強シリカ充填剤を含む。本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、約5.5~約8、5.5~8(例えば、5.5、5.7、5.9、6.1、6.3、6.5、6.7、6.9、7.1、7.3、7.5、7.7、7.9、又は8)、約6~約8、6~8(例えば、6、6.2、6.4、6.6、6.8、7、7.2、7.4、7.6、7.8、又は8)、約6~約7.5、6~7.5、約6.5~約8、6.5~8、約6.5~約7.5、6.5~7.5、約5.5~約6.8、又は5.5~6.8のpHを有する補強シリカ充填剤を含む。第1~第3の実施形態の特定の実施形態で使用することができる市販の補強シリカ充填剤のいくつかとしては、PPG Industries(Pittsburgh,Pa.)によって製造された、Hi-Sil(登録商標)EZ120G、Hi-Sil(登録商標)EZ120G-D、Hi-Sil(登録商標)134G、Hi-Sil(登録商標)EZ 160G、Hi-Sil(登録商標)EZ 160G-D、Hi-Sil(登録商標)190、Hi-Sil(登録商標)190G-D、Hi-Sil(登録商標)EZ 200G、Hi-Sil(登録商標)EZ 200G-D、Hi-Sil(登録商標)210、Hi-Sil(登録商標)233、Hi-Sil(登録商標)243LD、Hi-Sil(登録商標)255CG-D、Hi-Sil(登録商標)315-D、Hi-Sil(登録商標)315G-D、Hi-Sil(登録商標)HDP 320Gなど、が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、複数の有用な商用の異なる補強シリカ充填剤もまた、Evonik Corporation(例えば、Ultrasil(登録商標)320 GR、Ultrasil(登録商標)5000 GR、Ultrasil(登録商標)5500 GR、Ultrasil(登録商標)7000 GR、Ultrasil(登録商標)VN2 GR、Ultrasil(登録商標)VN2、Ultrasil(登録商標)VN3、Ultrasil(登録商標)VN3 GR、Ultrasil(登録商標)7000 GR、Ultrasil(登録商標)7005、Ultrasil(登録商標)7500 GR、Ultrasil(登録商標)7800 GR、Ultrasil(登録商標)9500 GR、Ultrasil(登録商標)9000 G、Ultrasil(登録商標)9100 GR)及びSolvay(例えば、Zeosil(登録商標)1115MP、Zeosil(登録商標)1085GR、Zeosil(登録商標)1165MP、Zeosil(登録商標)1200MP、Zeosil(登録商標)Premium、Zeosil(登録商標)195HR、Zeosil(登録商標)195GR、Zeosil(登録商標)185GR、Zeosil(登録商標)175GR、及びZeosil(登録商標)165 GR)から入手可能である。」
(摘記g)カーボンブラック充填剤について
「 カーボンブラック充填剤
【0073】
本明細書に開示される第1~第3の実施形態によれば、トレッドゴム組成物に使用されるカーボンブラック充填剤の量は限定される。より具体的には、本明細書に開示される第1及び第3の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、10phr以下
(例えば、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は更には0phr)を含有し、本明細書に開示される第2の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、約5~約10phrのカーボンブラック又は5~10phr(例えば、5、6、7、8、9、又は10phr)
のカーボンブラックを含有する。
第1及び第3の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、1~10phr、1~9phr、1~8phr、8phr以下(例えば、8、7、6、5、4、3、2、1、又は更に0phr)、0~9phr、又は0~8phrのカーボンブラック充填剤を含有する。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、0phrのカーボンブラック充填剤を含有する。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、前述の限られた量のカーボンブラック充填剤は、補強カーボンブラック充填剤を指すと理解されるべきである。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、前述の限られた量のカーボンブラック充填剤は、非補強カーボンブラック充填剤を指すと理解されるべきである。第1~第3の実施形態の更に他の実施形態では、前述の限られた量のカーボンブラック充填剤は、全てのカーボンブラック充填剤(すなわち、補強及び非補強カーボンブラック充填剤の両方)を指すと理解されるべきである。
【0074】
カーボンブラック充填剤が存在する、第1~第3の実施形態のそれらの実施形態では、利用される特定の種類(複数可)のカーボンブラックは様々であり得る。一般に、第1~第3の実施形態の特定の実施形態のゴム組成物中の補強充填剤として使用するのに好適なカーボンブラックには、少なくとも約20m
2
/g(少なくとも20m
2
/gを含む)及び、より好ましくは、少なくとも約35m
2
/g~最大約200m
2
/g以上(35m
2
/g~最大200m
2
/gを含む)表面積を有するものを含めた、一般に入手可能な商用製造されたカーボンブラックのいずれかを含む。カーボンブラックについて本明細書において使用される表面積の値は、臭化セチルトリメチル-アンモニウム(CTAB)技法を使用するASTM D-1765によって決定される。有用なカーボンブラックの中には、ファーネスブラック、チャネルブラック、及びランプブラックがある。より詳細には、有用なカーボンブラックの例としては、超耐摩耗性ファーネス(SAF)ブラック、高耐摩耗性ファーネス(HAF)ブラック、良押出性ファーネス(FEF)ブラック、微細ファーネス(FF)ブラック、準超耐摩耗性ファーネス(ISAF)ブラック、半補強性ファーネス(SRF)ブラック、中加工性チャネルブラック、難加工性チャネルブラック、及び導電性チャネルブラックが挙げられる。利用され得る他のカーボンブラックとしては、アセチレンブラックが挙げられる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、上述のブラックの2種以上の混合物を含む。好ましくは、第1~第3の実施形態によれば、カーボンブラック充填剤が存在する場合、1つの種類(又は等級)の補強カーボンブラックのみからなる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適な典型的なカーボンブラックは、ASTM D-1765-82aによって表記されている、N-110、N-220、N-339、N-330、N-351、N-550及びN-660である。使用されるカーボンブラックは、ペレット化形状又は非ペレット化綿状塊とすることができる。好ましくは、一層均質な混合を行うため、非ペレット化カーボンブラックが好ましい。」
(摘記h)芳香族炭化水素樹脂について
「 炭化水素樹脂
【0078】
上述のように、第1~第3の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、(d)
約30~約50°C又は
30~50°C
(例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、42、44、45、46、48、又は50°C)
のTgを有する、25~40phr
(例えば、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40phr)
の少なくとも1種の炭化水素樹脂を含む。
また上述のように、第2の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、(d)約35~約50°C、又は35~50°C(例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、42、44、45、46、48、又は50°C)のTgを有する、約25~約35phr又は25~35phr(例えば、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35phr)の少なくとも1種の炭化水素樹脂を含む。炭化水素樹脂のTgは、エラストマーのTg測定について上述した手順に従って、DSCによって測定することができる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(d)の少なくとも1種の炭化水素樹脂は、約35~約50°C、35~50°C(例えば、30、32、34、35、36、38、40、42、44、45、46、48、又は50°C)、約35~約45°C又は35~45°C(例えば、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、又は45°C)のTgを有する。第1及び第3の実施形態の特定の実施形態では、(d)は、25~35phr(例えば、25、26、27、28、29、30phr)、又は30~40phr(例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40phr)の量で存在する。
以下でより詳細に論じられるように、第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(d)の少なくとも1種の炭化水素樹脂は、芳香族樹脂を含む。
【0079】
後に更に記載されるように、
第1~第3の実施形態によれば、トレッドゴム組成物に使用される炭化水素樹脂(d)の量を制御することに加えて、炭化水素樹脂(d)及び油(e)の総量(組み合わせた量)を、本明細書の他の箇所に記載される量の範囲内に制御することも望ましい。
【0080】
第1~第3の実施形態によれば、1種又は2種以上の炭化水素樹脂がトレッドゴム組成物に利用され得、炭化水素樹脂の特定の種類(複数可)は、様々であり得る。2種以上の炭化水素樹脂が利用される場合、上に記載の量は、全ての炭化水素樹脂の総量を指すと理解されるべきである。
【0081】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(d)の炭化水素樹脂は、芳香族樹脂を、任意追加的に、脂肪族樹脂、脂環式樹脂、及びテルペン樹脂から選択される1種以上の追加の樹脂と組み合わせて、含み、1種以上の追加の樹脂が存在する、第1~第3の実施形態のそれらの実施形態では、そのような追加の樹脂の総量は、好ましくは5phr以下、5phr未満、4phr未満、3phr未満、2phr未満、又は1phr未満(及び各場合において、(d)の炭化水素樹脂の全体量の10重量%以下、好ましくは5重量%以下)である。
第1~第3の実施形態の他の実施形態では、(d)の炭化水素樹脂は、芳香族樹脂からなる。
芳香族樹脂が使用される場合、1種又は2種以上の芳香族樹脂が利用され得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、炭化水素樹脂は、いかなるテルペン樹脂も除外する(すなわち、0phrのテルペン樹脂がトレッドゴム組成物中に存在する)。本明細書で使用されるとき、用語「芳香族樹脂」は、芳香族ホモポリマー樹脂及び芳香族コポリマー樹脂の両方を含むと理解されるべきである。芳香族コポリマー樹脂は、最大量の任意の種類のモノマーが芳香族である、1種以上の芳香族モノマーと1種以上の他(非芳香族)のモノマーとの組み合わせを含む炭化水素樹脂を指す。芳香族コポリマー樹脂は、25重量%の環式脂肪族モノマー及び30重量%の脂肪族モノマーに加えて、45重量%の芳香族モノマーを有する炭化水素樹脂、並びに、30重量%の環式脂肪族モノマー及び15重量%の脂肪族モノマーに加えて、55重量%の芳香族モノマーを有する炭化水素樹脂を含み得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(d)の炭化水素樹脂は、全モノマーの重量の大部分(例えば、51%、55%、60%、65%など)が芳香族である、1種以上の芳香族コポリマー樹脂を含む。第1~第3の実施形態の特定の実施形態において炭化水素樹脂(d)として使用するのに適した芳香族樹脂の非限定例としては、クマロン-インデン樹脂及びアルキル-フェノール樹脂、並びに、以下のモノマーのうちの1つ以上を含むものなど、ビニル芳香族ホモポリマー又はコポリマー樹脂が挙げられる:α-メチルスチレン、スチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、ビニルトルエン、パラ(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、又はC9留分若しくはC8~C10留分から得られる任意のビニル芳香族モノマー。ビニル芳香族コポリマー樹脂の非限定例としては、ビニル芳香族/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/C5留分樹脂(例えば、C5留分/スチレンコポリマー樹脂)、ビニル芳香族/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD/スチレンコポリマー樹脂、及びDCPD/スチレンコポリマー樹脂)が挙げられる。アルキル-フェノール樹脂の非限定例としては、p-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂(例えば、低重合度を有する樹脂)などのアルキルフェノール-アセチレン樹脂が挙げられる。例示的なそのような芳香族樹脂は、Chemfax、Dow Chemical Company、Eastman Chemical Company、Idemitsu、Neville Chemical Company、Nippon、Polysat Inc.、Resinall Corp.、及びZeonを含む様々な企業から様々な商品名で市販されている。
【0082】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、炭化水素樹脂(d)は、上述のビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン、α-メチルスチレン)のうちの1つ以上に基づく芳香族樹脂を含み、特定のそのような実施形態では、芳香族樹脂中のモノマーの少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、又は更に100重量%は、芳香族モノマーである。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、炭化水素樹脂(d)は、上述のビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン、α-メチルスチレン)のうちの1つ以上に基づく芳香族樹脂からなり、特定のそのような実施形態では、芳香族樹脂中のモノマーの少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、又は更に100重量%は、芳香族モノマーである。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(d)の芳香族樹脂は、上記の芳香族樹脂のうちの1つの水素添加形態(すなわち、水素添加芳香族樹脂)を含み得る。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、(d)の芳香族樹脂は、いかなる水素添加芳香族樹脂も除外し、言い換えれば、このような実施形態では、芳香族樹脂は水素添加されていない。
【0083】
上述のように、第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(d)の少なくとも1種の炭化水素樹脂は、(i)芳香族樹脂を(ii)脂肪族樹脂と組み合わせて含む。脂肪族樹脂の非限定例としては、C5留分ホモポリマー及びコポリマー樹脂が挙げられる。(d)で使用される任意の脂肪族樹脂の量は、好ましくは限定される。第1~第3の実施形態によれば、芳香族樹脂と組み合わせて使用される任意の脂肪族樹脂の総量は、好ましくは5phr以下、5phr未満、4phr未満、3phr未満、2phr未満、又は1phr未満(及び各場合において、(d)の炭化水素樹脂の全体量の20重量%以下、好ましくは15重量%以下又は10重量%以下)である。
【0084】
上述のように、第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(d)の少なくとも1種の炭化水素樹脂は、(i)芳香族樹脂を(ii)環式脂肪族樹脂と組み合わせて含む。環式脂肪族樹脂の非限定例としては、シクロペンタジエン(「CPD」)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン(「DCPD」)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、及びこれらの組み合わせが挙げられる。(d)で使用される任意の環式脂肪族樹脂の量は、好ましくは限定される。第1~第3の実施形態によれば、芳香族樹脂と組み合わせて使用される任意の環式脂肪族樹脂の総量は、好ましくは5phr以下、5phr未満、4phr未満、3phr未満、2phr未満、又は1phr未満(及び各場合において、(d)の炭化水素樹脂の全体量の20重量%以下、好ましくは15重量%以下又は10重量%以下)である。
【0085】
上述のように、第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(d)の少なくとも1種の炭化水素樹脂は、(i)芳香族樹脂を(ii)テルペン樹脂と組み合わせて含む。テルペン樹脂の非限定例としては、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂(例えば、L-リモネン、D-リモネン、L-異性体とD-異性体とのラセミ混合物であるジペンテン)、β-フェランドレン、δ-3-カレン、δ-2-カレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。(d)で使用される任意のテルペン樹脂の量は、好ましくは限定される。第1~第3の実施形態によれば、芳香族樹脂と組み合わせて使用される任意のテルペン樹脂の総量は、好ましくは5phr以下、5phr未満、4phr未満、3phr未満、2phr未満、又は1phr未満(及び各場合において、(d)の炭化水素樹脂の全体量の20重量%以下、好ましくは15重量%以下又は10重量%以下)である。上述のように、第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、炭化水素樹脂(d)は、テルペン樹脂を含まない(すなわち、0phr)。
【0086】
第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、炭化水素樹脂(d)は、約70~約100°C、70~100°C(例えば、70、75、80、85、90、95、又は100°C)、好ましくは約75~約95°C又は75~95°C(例えば、75、80、85、90、又は95°C)の軟化点を有する。一般に、炭化水素樹脂の軟化点は、Tgがその軟化点よりも低くなるような、かつTgが低いほど軟化点が低くなるような、そのTgとの関係を有する。非限定例として、70及び100°CのTgを有する2種の炭化水素樹脂の場合、70°CのTgを有する樹脂は、100°CのTgを有する樹脂よりも低い軟化点を有する。
【0087】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、炭化水素樹脂(d)は、以下のうちの少なくとも1つを満たす:(a)1000~約4000グラム/モル、1000~4000グラム/モル(例えば、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、又は4000グラム/モル)、約1000~約3000グラム/モル、1000~3000グラム/モル(例えば、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、又は3000グラム/モル)、約1000~約2500グラム/モル、1000~2500グラム/モル(例えば、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、又は2500グラム/モル)、約1000~約2000グラム/モル、1000~2000グラム/モル(例えば、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、又は2000グラム/モル)、約1100~約1800グラム/モル、若しくは1100~1800グラム/モル(例えば、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、又は1800グラム/モル)のMw、(b)約700~約1500グラム/モル、700~1500グラム/モル(例えば、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、又は1500グラム/モル)、約800~約1400グラム/モル、800~1400グラム/モル(例えば、800、900、1000、1100、1200、1300、又は1400グラム/モル)、約800~約1300グラム/モル、800~1300グラム/モル(例えば、800、900、1000、1100、1200、又は1300グラム/モル)、約900~約1200グラム/モル、若しくは900~1200グラム/モル(例えば、900、950、1000、1050、1100、1150、又は1200グラム/モル)のMn、又は(c)約1~約2、1~2(例えば、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2)、約1.1~約1.8、1.1~1.8(例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、又は1.8)、約1.1~約1.7、1.1~1.7(例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、又は1.7)、約1.2~約1.5、若しくは1.2~1.5(例えば、1.2、1.3、1.4、又は1.5)の多分散度(Mw/Mn)。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、炭化水素樹脂(d)は、上記の範囲のうちの1つによるMwを、上記の範囲のうちの1つによるMnと組み合わせて、更に上記の範囲のうちの1つによるMw/Mnと組み合わせて、有する。特定のそのような実施形態では、炭化水素樹脂(d)は芳香族樹脂である。
【0088】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、炭化水素樹脂(d)は、少なくとも約40重量%、少なくとも40重量%(例えば、40、45、50、51、55、60重量%、又はそれ以上)、約40%~約65重量%、40~65重量%(例えば、40、42、44、45、46、48、50、52、54、55、56、58、60、62、64、又は65重量%)、少なくとも約45重量%、少なくとも45重量%(例えば、45、50、51、55、60重量%、又はそれ以上)、約45%~約65重量%、45~65重量%(例えば、45、47、49、50、51、53、55、57、59、60、61、63、又は65重量%)、少なくとも51重量%(例えば、51、55、60、65重量%、又はそれ以上)、約51%~約65%(例えば、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、又は65%)、51~65%、約51%~約60%、51~60%(例えば、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、又は60%)、約51%~約55%、又は51~55%(例えば、51、52、53、54、又は55%)の芳香族モノマー含有量を有する(上述したような)芳香族樹脂を含む。芳香族モノマー含有量の量は、それぞれの炭化水素樹脂の総重量に基づく重量パーセントである。」
(摘記i)液体可塑剤について
「 液体可塑剤(油及び非油を含む)
【0089】
上述のように、第1及び第3の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、5~30phr(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30phr)の液体可塑剤、第2の実施形態によれば、約20~約30phr又は20~30phr(例えば、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、又は20phr)の液体可塑剤を含む。
第1及び第3の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、10~30phr
(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、若しくは30phr)
の液体可塑剤
、10~25phr(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、若しくは25phr)の液体可塑剤、15~30phr(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、若しくは30phr)、15~25phr(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、若しくは25phr)の液体可塑剤、又は20~30phr(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、若しくは30phr)の液体可塑剤
を含む。
液体可塑剤という用語は、室温で液体(すなわち、25°C以上の液体)である可塑剤成分を指し、かつ一般に室温で固体である炭化水素樹脂可塑剤を区別するために使用される。一般に、液体可塑剤は、0°C未満、一般にそれを大きく下回る-30°C未満、-40°C未満、又は-50°C未満などのTgを有することになる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、液体可塑剤は、0°C未満~-100°CのTg、-30°C~-100°CのTg、又は-50~-100°CのTgを有する。以下でより詳細に論じられるように、液体可塑剤は、油(例えば、石油油並びに植物供給油)と、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、リン酸可塑剤、及びスルホネート可塑剤を含むが、それらに限定されない他の非油液体可塑剤との両方を含む。その上、液体可塑剤という用語は、遊離油(通常、配合プロセス中に添加される)及び伸展油(ゴムを伸展させために使用される)の両方を包含することを意味する。したがって、トレッドゴム組成物が15~30phrの液体可塑剤を含むと言及することにより、任意の遊離液体可塑剤(油可塑剤及び非油液体可塑剤の両方)並びに任意の伸展油の総量が15~30phrであると理解されるべきである。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、前述の量(例えば、5~30phr、10~30、15~30phr、15~25phrなど)のうちの1つで遊離液体可塑剤のみを含有する。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、トレッドゴム組成物は、前述の量(例えば、5~30phr、10~30、15~30phr、15~25phrなど)のうちの1つで遊離油のみを含有する。第1~第3の実施形態の更に他の(好ましい)実施形態では、トレッドゴム組成物は、遊離液体可塑剤及び伸展油の両方を含み、トレッドゴム組成物中の少なくとも50重量%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%以上)、好ましくは、少なくとも60重量%の液体可塑剤は、油展性ポリマーからの油、例えば、(ii)の油展性SBRによって提供される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物中60~80重量%、60~90重量%、60~100%、70~80重量%、70~90重量%、70~100重量%、80~90重量%、80~100重量%、又は90~100重量%の液体可塑剤が、油展性ポリマー、例えば、(ii)の油展性SBRから提供される。油展性ゴムが使用される、第1~第3の実施形態のそれらの実施形態では、油展性ゴムを調製するために使用される油の量は、様々であり得、油展性ゴムが使用される、第1~第3の実施形態のそれらの実施形態では、油展性ゴムを調製するために使用される油の量は、様々であり得、特定のそのような実施形態では、油展性ゴム(ポリマー)中に存在する伸展油の量は、ゴム100部当たり10~50部の油(例えば、100部若しくはゴム当たり10、15、20、25、30、35、40、45又は50部の油)、好ましくは100部若しくはゴム当たり10~40部の油又はゴム100部当たり20~40部の油である。非限定例として、伸展油は、トレッドゴム組成物全体でSBRが40部の量(40部とは、前に論じたように、油展性SBRのポリマーの量である)で使用されている(ii)のSBR中にゴム100部当たり油40部の量で使用され得、したがって、油展性SBRによってトレッドゴム組成物に寄与する油の量は、16phrであろう。ゴム(特にスチレン-ブタジエンゴム)の油展は、SBRが比較的高いMw及び/又は比較的高いムーニー粘度を有する場合、加工又は混合の容易さに有益であり得る。本明細書に開示される第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、(ii)で使用されるスチレン-ブタジエンゴムは、100°Cで少なくとも100のポリマームーニー粘度ML1+4を有する油展性スチレン-ブタジエンゴムである。ポリマームーニー粘度は、油展前のゴム又はポリマーのムーニー粘度を意味する。油展性ゴムが、本明細書に開示されるトレッドゴム組成物のエラストマー成分中に使用されている場合、(i)、(ii)及び(iii)について指定された量は、油展性ゴムの量ではなく、ゴムのみの量を指すと理解されるべきである。本明細書で使用されるとき、油は、石油系油(例えば、芳香油、ナフテン油、及び低PCA油)及び植物油(野菜、木の実、及び種子から採取することができるものなど)の両方を指す。植物油は一般にトリグリセリドを含み、この用語は、合成トリグリセリド、及び実際に植物から供給されたものを含むと理解されるべきである。
【0090】
第1~第3の実施形態によると、芳香族、ナフテン系、及び低PCA油(石油由来又は植物由来)が挙げられるがこれらに限定されない、様々な種類の加工油及び伸展油を利用してもよい。好適な低PCA油としては、IP346法によって決定された場合、3重量パーセント未満の多環式芳香族含有量を有するものが挙げられる。IP346法の手順は、Institute of Petroleum(英国)発行のStandard Methods for Analysis&Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts,2003,第62版に見出すことができる。例示的な石油由来の低PCA油としては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)、TRAE、及び重ナフテン系が挙げられる。例示的なMES油は、CATENEX SNR(SHELL製)、PROREX 15及びFLEXON 683(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 200(BP製)、PLAXOLENE MS(TOTAL FINA ELF製)、TUDALEN 4160/4225(DAHLEKE製)、MES-H(REPSOL製)、MES(Z8製)、並びにOLIO MES S201(AGIP製)として市販されている。例示的なTDAE油は、TYREX 20(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 500、VIVATEC 180、及びENERTHENE 1849(BP製)、並びにEXTENSOIL 1996(REPSOL製)として入手可能である。例示的な重ナフテン系油は、SHELLFLEX 794、ERGON BLACK OIL、ERGON H2000、CROSS C2000、CROSS C2400、及びSAN JOAQUIN 2000Lとして入手可能である。例示的な低PCA油としてはまた、野菜、木の実、及び種子から採取することができるものなど、様々な植物由来の油も挙げられる。非限定例としては、以下に限定されないが、ダイズ油、ヒマワリ油(高オレイン酸ヒマワリ油を含む)、サフラワー油、コーン油、亜麻仁油、綿実油、菜種油、カシュー油、ゴマ油、ツバキ油、ホホバ油、マカダミアナッツ油、ココナツ油、及びヤシ油が挙げられる。前述の加工油を、伸展油として、すなわち、油展性ポリマー又はコポリマーの調製のために、又は加工油若しくは遊離油(free oil)として使用することもできる。
【0091】
上記のように、第1~第3の実施形態によれば、液体可塑剤は、非油可塑剤を含み得、その非限定的な例としては、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、リン酸可塑剤、及びスルホネート可塑剤が挙げられる。例示的なエーテル可塑剤としては、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールが挙げられる。例示的なエステル可塑剤としては、特に(カルボン酸のジ-及びトリエステル、リン酸のジ-及びトリエステル、又はスルホン酸のジ-及びトリエステル、並びにこれらのトリエステルの混合物からなる群から選択され得る)トリエステル及びジエステルが挙げられる。より具体的には、例示的なカルボン酸エステル可塑剤としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、フタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、アジド酸、アゼラート、セバケート、グリセロールトリエステル、及び前述の混合物からなる群から選択される化合物が挙げられる。より具体的には、グリセロールトリエステルに関して、これらは、50重量%超、より好ましくは、80重量%超の不飽和C18脂肪酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びそれらの混合物)を含み得る。他の例示的なカルボン酸エステル可塑剤としては、ステアリン酸エステル、リシノール酸エステル、フタル酸エステル(例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート及びジオソデシルフタレート)、イソフタル酸エステル、テトラヒドロフタル酸エステル、アジピン酸エステル(例えば、ジ(2-エチルヘキシル)アジペート及びジイソオクチルアジペート)、リンゴ酸エステル、セバイン酸エステル(例えば、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート及びジイソオクチルセバケート)、並びにフマル酸エステルが挙げられる。例示的なホスフェート可塑剤としては、トリヒドロカルビルホスフェート及びジヒドロカルビルホスフェート構造(各ヒドロカルビルが独立して、置換及び非置換の両方の(好ましくは芳香族C6が置換又は非置換のどちらかの場合の)、C1~C12のアルキル、好ましくは、C1~C8のアルキル、及びC6~C12の芳香族から選択される)を有するものが挙げられる。より具体的には、例示的なリン酸可塑剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレシルジフェニルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリトリルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、及びジフェニルモノ-o-キセニルホスフェートが挙げられる。例示的なスルホネート可塑剤としては、スルホンブチルアミド、トルエンスルホンアミド、N-エチル-トルエンスルホンアミド、及びN-シクロヘキシル-p-トルエンスルホンアミドなどのスルホン酸エステルが挙げられる。前述の非油液体可塑剤のうち、リン酸可塑剤、特に、リン酸誘導体(リン酸エステルであると理解され得る)が好ましい。
【0092】
第1~第3の実施形態によれば、使用される油(複数可)のTgは、様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、利用される任意の油は、約-40~約-100°C、-40~-100°C(例えば、-40、-45、-50、-55、-60、-65、-70、-75、-80、-85、-90、-95、又は-100°C)、約-40~約-90°C、-40~-90°C(例えば、-40、-45、-50、-55、-60、-65、-70、-75、-80、-85、又は-90°C)、約-45~約-85°C、-45~-85°C(例えば、-45、-50、-55、-60、-65、-70、-75、-80、又は-85°C)、約-50~約-80°C、又は-50~-80°C(例えば、-50、-55、-60、-65、-70、-75、又は-80°C)のTgを有する。
【0093】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、5phr未満(例えば、4.5、4、3、2、1、又は0phr)のMES又はTDAE油を含有する、又はMES又はTDAE油すら含有しない(すなわち、0phr)。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、石油系油を含有せず(すなわち、0phr)、代わりに、利用される任意の油は植物油である。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、上述の量のうちの1つでダイズ油を含有する。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、ヒマワリ油を含有しない(すなわち、0phr)。
【0094】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、1種以上のエステル系可塑剤を含む。好適なエステル系可塑剤は当業者に既知であり、リン酸エステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、及びオレイン酸エステル(すなわち、オレイン酸由来)が挙げられるが、これらに限定されない。エステルは少なくとも1つの-OHが-O-アルキル基で置換されている酸から誘導される化学化合物であることを考慮すると、トレッドゴム組成物中で使用する好適なエステル可塑剤では様々なアルキル基が使用され得、これには、C1~C20(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20)、又はC6~C12の概ね直鎖又は分枝鎖のアルキルが含まれる。前述のエステルのうちの特定のものは、2つ以上の-OH基を有する酸に基づき、したがって、1つ又は2つ以上のO-アルキル基(例えば、リン酸トリアルキル、フタル酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル)を収容することができる。好適なエステル系可塑剤の非限定例としては、リン酸トリオクチル、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジオクチル、オレイン酸ノニル、オレイン酸オクチル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。前述のうちの1つ以上など、エステル系可塑剤の使用は、エステル系可塑剤の比較的低いTgに少なくとも部分的に起因して、このようなエステル可塑剤を含有するトレッドゴム組成物から作製されるタイヤの雪又は氷性能に有益であり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、-40°C~-70°C(例えば、-40、-45、-50、-55、-60、-65、又は-70°C)、又は-50°C~-65°C(例えば、-50、-51、-52、-53、-54、-55、-56、-57、-58、-59、-60、-61、-62、-63、-64、又は-65°C)のTgを有する1種以上のエステル系可塑剤を含む。1種以上のエステル系可塑剤が利用される、第1~第3の実施形態のそれらの実施形態では、利用される量は様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、1種以上のエステル系可塑剤は、1~12phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12phr)、1~10、phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10phr)、2~6phr(例えば、2、3、4、5、又は6phr)又は2~5phr(例えば、2、3、4、又は5phr)の総量で利用される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、1つ以上のエステル可塑剤は、前述の量のうちの1つにおいて油と組み合わせて使用される。」
(摘記j)芳香族炭化水素樹脂と液体可塑剤の総量について
「【0095】
第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、炭化水素樹脂(d)の量は、液体可塑剤(e)の量よりも大きい。特定のそのような実施形態では、炭化水素樹脂(d)及び液体可塑剤(e)は、少なくとも1.5:1、好ましくは、1.5:1~4:1(例えば、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、若しくは4:1)、より好ましくは1.5:1~3:1(例えば、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.1:1、2.2:1、2.3:1、2.4:1、2.5:1、2.6:1、2.7:1、2.8:1、2.9:1、若しくは3:1)、又は1.5~2:1(例えば、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、又は2:1)の重量比で存在する。
【0096】
第2の実施形態によれば、並びに第1及び第3の実施形態の特定の実施形態では、炭化水素樹脂(d)及び液体可塑剤(e)の総量は、少なくとも45phrである。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、炭化水素樹脂(d)及び液体可塑剤(e)の総量は、59phr以下(例えば、59、55、54、50、49、45、44、若しくは40phr、又はそれより下)
である。
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、炭化水素樹脂(d)及び液体可塑剤(e)の総量は、55phr以下(例えば、55、54、50、49、45、44、若しくは40phr、又はそれより下)である。
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、炭化水素樹脂(d)及び液体可塑剤(e)の総量は、
25~59phr(例えば、25、29、30、34、35、39、40、44、45、49、50、54、55、若しくは59phr)、25~55phr(例えば、25、29、30、34、35、39、40、44、45、49、50、51、52、53、54、又は55phr)、30~59phr(例えば、30、34、35、39、40、44、45、49、50、54、55、若しくは59phr)、30~55phr(例えば、30、34、35、39、40、44、45、49、50、51、52、53、54、若しくは55phr)、
35~59phr
、35~55phr、40~59phr、40~55phr、45~59phr、又は45~55phr
である。
」
(摘記k)硬化パッケージについて
「 硬化パッケージ
【0097】
上述のとおり、
本明細書に開示される第1~第3の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、硬化パッケージを含む。
硬化パッケージの含有成分は、第1~第3の実施形態によって様々であり得るが、一般に、硬化パッケージは、加硫剤、加硫促進剤、加硫活性化剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸など)、加硫阻害剤、及びスコーチ防止剤のうちの少なくとも1つを含む。第1~第3の実施形態のうち特定の実施形態では、硬化パッケージは、少なくとも1つの加硫剤と、少なくとも1つの加硫促進剤と、少なくとも1つの加硫活性化剤と、任意選択的に、加硫阻害剤及び/又はスコーチ防止剤とを含む。加硫促進剤及び加硫活性化剤は、加硫剤のための触媒として働く。様々な加硫阻害剤及びスコーチ防止剤は、当分野で公知であり、所望の加硫特性に基づいて、当業者により選択され得る。
【0098】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適な加硫剤の種類の例としては、以下に限定されないが、硫黄、又は過酸化物をベースとする硬化性成分が挙げられる。したがって、特定のこのような実施形態では、硬化性成分としては、硫黄系硬化剤又は過酸化物をベースとする硬化剤が挙げられる。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、加硫剤は、硫黄系硬化剤であり、特定のそのような実施形態では、加硫剤は、硫黄系硬化剤(のみ)からなる。特定の好適な硫黄加硫剤の例としては、「ゴム製造業者(rubbermaker)」の可溶性硫黄、二硫化アミン、ポリマー性ポリスルフィド、又は硫黄オレフィン付加物などの硫黄供与性硬化剤、及び不溶性のポリマー性硫黄が挙げられる。好ましくは、硫黄加硫剤は、可溶性硫黄、又は可溶性硫黄ポリマーと不溶性硫黄ポリマーとの混合物である。硬化に用いられる好適な加硫剤及びその他の成分、例えば、加硫阻害剤、スコーチ防止剤の一般的な開示として、Kirk-Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,3rd ed.,Wiley Interscience,N.Y.,1982,Vol.20,pp.365 to 468、特に「Vulcanization Agents and Auxiliary Materials」、390~402頁、又はA.Y.Coran,Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Second Edition(1989.John Wiley&Sons,Inc.)を参照することができ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。加硫剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。一般に、加硫剤は、第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、1~7.5phrを含む、1~5phrを含む、好ましくは、1~3.5phr(例えば、1、1.5、2、2.5、3、又は3.5phr)の、0.1~10phrの範囲(例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10phr)の量で使用され得る。
【0099】
加硫促進剤は、加硫に必要な時間及び/又は温度を制御し、加硫物の特性を改善させるために使用される。本明細書において開示されている第1~第3の実施形態の特定の実施形態における使用に好適な加硫促進剤の例としては、チアゾール加硫促進剤、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)(MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(TBBS)、及び同様のものなど、グアニジン加硫促進剤、例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)など、チウラム加硫促進剤、カルバミン酸加硫促進剤などが挙げられるが、これらに限定されない。一般に、使用される加硫促進剤の量は、0.1~10phr(例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10phr)、好ましくは0.5~5phr(例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5phr)の範囲である。好ましくは、第1~第3の実施形態のトレッドゴム組成物に使用される任意の加硫促進剤は、一硫化チウラム及び多硫化チウラムなどの任意のチウラム(その例としては、TMTM(テトラメチルチウラムモノスルフィド)、TMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、DPTT(ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド)、TETD(テトラエチルチウラムジスルフィド)、TiBTD(テトライソブチルチウラムジスルフィド)、及びTBzTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)が挙げられる)を除外し、言い換えれば、第1~第3の実施形態のトレッドゴム組成物は、好ましくは、チウラム促進剤を含有しない(すなわち、0phr)。
【0100】
加硫活性化剤は、加硫を補助するために使用される添加剤である。一般的に、加硫活性化剤は、無機成分及び有機成分の両方を含む。酸化亜鉛は、最も広く使用されている無機加硫活性化剤である。ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、及びこれらのそれぞれの亜鉛塩を含む様々な有機加硫活性化剤が、一般的に使用されている。一般に、第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、使用される加硫活性化剤の量は、0.1~6phr(例えば、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、又は6phr)、好ましくは0.5~4phr(例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3 3.5、又は4phr)の範囲である。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、1種以上のチオ尿素化合物(前述の量で使用される)を含む1種以上の加硫活性化剤が使用され、任意選択的に前述の加硫活性化剤のうちの1つ以上と組み合わせられる。一般に、チオ尿素化合物は、構造(R
1
)(R
2
)NS(=C)N(R
3
)(R
4
)を有する化合物として理解することができ、式中、R
1
、R
2
、R
3
、及びR
4
のそれぞれは、H、アルキル、アリール、及びN含有置換基(例えば、グアニル)から独立して選択される。任意選択的に、前述の構造のうちの2つが、ジチオビ尿素化合物中でNを介して(R基のうちの1つを除去して)一緒に結合することができる。特定の実施形態では、R
1
又はR
2
のうちの1つ、及びR
3
又はR
4
のうちの1つは、それらの間の1つ以上のメチレン基(-CH
2
-)と一緒に結合することができる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、チオ尿素は、前述の基のうちの1つから選択されるR
1
、R
2
、R
3
及びR
4
のうちの1つ又は2つを有し、残りのR基は水素である。例示的なアルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、イソ-ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びシクロヘキシルなどのC1~C6直鎖、分枝鎖、又は環状基が挙げられる。例示的なアリールとしては、フェニル、トリル、及びナフチルなどのC6~C12芳香族基が挙げられる。例示的なチオ尿素化合物としては、ジアルキルチオ尿素及びジアリールチオ尿素などのジヒドロカルビルチオ尿素が挙げられるが、これらに限定されない。特定のチオ尿素化合物の非限定例としては、チオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素(DEU)、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジブチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’-ジイソプロピルチオ尿素、N,N’-ジシクロヘキシルチオ尿素、1,3-ジ(o-トリル)チオ尿素、1,3-ジ(p-トリル)チオ尿素、1,1-ジフェニル-2-チオ尿素、2,5-ジチオビ尿素、グアニルチオ尿素、1-(1-ナフチル)-2-チオ尿素、1-フェニル-2-チオ尿素、p-トリルチオ尿素、及びo-トリルチオ尿素のうちの1つ以上が挙げられる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、活性化剤は、チオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、及びN-N’-ジメチルチオ尿素から選択される少なくとも1種のチオ尿素化合物を含む。
【0101】
加硫阻害剤は、加硫プロセスを制御するため、一般的には、所望の時間及び/又は温度に達するまで加硫を遅らせるか又は阻害するために使用される。一般的な加硫阻害剤としては、以下に限定されないが、Santogard製のPVI(シクロヘキシルチオフタルミド)が挙げられる。一般に、第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、加硫阻害剤の量は、0.1~3phr(例えば、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、又は3phr)、好ましくは、0.5~2phr(例えば、0.5、1、1.5、又は2phr)である。」
(摘記l)タイヤトレッド特性について
「 タイヤトレッド特性
【0106】
タイヤにおける第1~第3の実施形態のタイヤトレッドゴム組成物の使用は、改善された又は望ましいトレッド特性を有するタイヤをもたらし得る。これらの改善された又は望ましい特性としては、転がり抵抗、雪若しくは氷牽引摩擦、湿潤牽引摩擦、乾燥操縦性、又は摩耗のうちの1つ以上を挙げることができる。追加の改善された又は望ましい特性には、破断時伸び(Eb)、破断時引張(Tb)、及びTbxEbが挙げられる。
これらの特性は、様々な方法によって測定され得るが、転がり抵抗、雪又は氷牽引摩擦、湿潤牽引摩擦、及び乾燥操縦性について本明細書で言及される値は、以下の温度において以下の手順に従って測定されるtanδ値を指す。tanδ値は、一般にASTM D5992-96(2011)のガイドラインに従って、動的機械熱分光計(Gabo Qualimeter Testanlagen GmbH(Ahiden,Germany)のEplexor(登録商標)500N)を用いて以下の条件下で測定することができる:測定モード:引張試験モード、測定周波数:52Hz、-50~-5°Cの0.2%ひずみ及び-5~65°Cの1%ひずみを適用、-30°C、0°C、30°C、及び60°Cの温度で測定を提供するために、約1°Cごとにデータを収集、試料形状:幅4.75mm×長さ29mm×厚さ2.0mm。測定は、硬化したゴムの試料(170°Cで15分間硬化)に対して行われる。
-30°Cにおけるゴム組成物のtanδは、タイヤトレッド内に組み込まれているときのその雪又は氷牽引摩擦(ウィンター性能とも称される)を示し、0°Cにおけるtanδは、タイヤトレッド内に組み込まれているときのその湿潤牽引摩擦を示し、30°Cにおけるtanδは、タイヤトレッド内に組み込まれているときのその乾燥操縦性を示し、60°Cにおけるそのtanδは、タイヤトレッド内に組み込まれているときのその転がり抵抗を示す。
【0107】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、0.21~0.28
(例えば、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、若しくは0.28)、0.22~0.27(例えば、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、若しくは0.27)、0.21~0.27(例えば、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、若しくは0.27)、又は0.22~0.28(例えば、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、若しくは0.28)
の60°Cにおけるtanδの値を有する。
前述の範囲のうちの1つ以内の60°Cにおけるtanδは、中等度の転がり抵抗を有するタイヤ(又はより具体的には、タイヤトレッド)(一般に60°Cにおける0.2以下のtanδで示されるであろう低い転がり抵抗を有するタイヤとは対照的に)を示すものとして理解することができる。
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの値は、(a)60°Cにおけるtanδの少なくとも1.5倍
(例えば、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、若しくはそれ以上)、好ましくは、60°Cにおけるtanδの1.5倍~2.4倍(例えば、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、又は2.4倍)
の-30°Cにおけるtanδの値、(b)60°Cにおけるtanδの少なくとも1.8倍
(例えば、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、又はそれ以上)、好ましくは、60°Cにおけるtanδの1.8~2.2倍、より好ましくは、60°Cにおけるtanδの1.9~2.2倍
の0°Cにおけるtanδの値、又は(c)60°Cにおけるtanδの少なくとも1.2倍
(例えば、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、若しくはそれ以上)、好ましくは、60°Cにおけるtanδの1.2倍~1.6倍
の30°Cにおけるtanδの値のうちの少なくとも1つと組み合わされ、特定のそのような実施形態では、60°Cにおけるtanδの値は、(a)、(b)、及び(c)のそれぞれと組み合わされる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ
(例えば、0.21~0.28、0.22~0.27など)
は、(a)60°Cにおけるtanδ値の1.5倍~2.4倍
(例えば、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、又は2.4倍)
の-30°Cにおけるδについての値と組み合わされる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ
(例えば、0.21~0.28、0.22~0.27など)
は、(b)60°Cにおけるtanδ値の1.8~2.2倍
(例えば、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、又は2.2倍)、より好ましくは、60°Cにおける値のtanδの1.9~2.2倍(例えば、1.9倍、2倍、2.1倍、又は2.2倍)
の0°Cにおけるδについての値と組み合わされる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ
(例えば、0.21~0.28、0.22~0.27など)は、(c)60°Cにおけるtanδ値の1.2~1.6倍(例えば、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、又は1.6倍)
の30°Cにおけるδについての値と組み合わされる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ
(例えば、0.21~0.28、0.22~0.27など)
は、-30°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ、0°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ、及び30°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つと組み合わされる。
【0108】
タイヤトレッドゴム組成物の摩耗性能は、様々な方法によって評価することができる。しかしながら、本明細書で提供される絶対摩耗値は、標準的な方法DIN ISO4649、2014版を使用して測定することができるDIN摩耗値を指す
。そのような方法によれば、値は、摩耗試験中に損失した材料の量(mm
3
単位で)を表す。2つのDIN摩耗値を比較すると、数値が少ないほど、材料が失われ、摩耗の改善に対応することが示される。摩耗の改善はまた、改善した耐摩耗性として説明することができ、一般に、より長い寿命を有する(例えば、より高い予測走行距離評価を有する)タイヤにつながるため、タイヤトレッドにおいて望ましい。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物は、100mm
3
以下(例えば、100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80mm
3
以下)、好ましくは、95mm
3
以下(例えば、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80mm
3
以下)、より好ましくは、90mm
3
以下(例えば、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80mm
3
以下)又は100~80mm
3
(100~95、100~90、100~85、95~90、95~85、95~80、90~85、90~80、及び85~80mm
3
などの前述の範囲を含む)のDIN摩耗(DIN ISO4649、2014版に従って)を有する。
【0109】
前述のように、第3の実施形態の方法は、バランスのとれた湿潤性能、ウィンター性能、及び摩耗性能を有するタイヤトレッドを提供するためのものである
。
湿潤、ウィンター、及び摩耗性能のバランスがとれていると言及することは、湿潤性能及びウィンター性能が各々、摩耗性能を維持しながら対照と比較して少なくとも5%改善され、この対照は、より少ないポリブタジエン(すなわち、50phr)を有し、かつ欠落した量のポリブタジエンを、当量のスチレン-ブタジエンゴム(ii)で置き換えるトレッドゴム組成物を指すことを意味する。摩耗性能が維持されると言及することは、摩耗性能(ISO23337:2016によって測定される)が、対照の少なくとも90%
(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、又はそれ以上)
であることを意味する
が、そのことは、
対照の100%だけでなく、
特定の実例では、対照と比較して、例えば、少なくとも5%(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%以上、例えば、前述のような5~15%及び5~10%などを包含する範囲を含む)、又は更には少なくとも10%(例えば、10%、11%、12%、13%、14%、15%以上、前述のような10~15%などを包含する範囲を含む)の
摩耗の改善を含むものとして理解されるべきである。
あるいは、前述の改善は、対照と比較して、少なくとも105%(105%が100%よりも5%高い)及び少なくとも110%(110%が100%よりも10%高い)であると説明することもできる。非限定的な例として、試料が0.0055mgの摩耗損失を呈し、その対照が0.0050の摩耗損失を呈した場合、試料は、その対照の95%である摩耗性能を有するものとして記載され得、試料が0.0054mgの摩耗損失を呈し、その対照が0.0060mgの摩耗損失を呈した場合、試料は、その対照と比較して10%改善された摩耗性能を有するものとして記載され得る。前述の説明によれば、その対照の100%である摩耗性能は、その対照に等しい摩耗性能を有すると理解されるべきで、対照との比較は、対照値を試料値で割って100%を掛けることによって計算される。湿潤及びウィンターの各々の性能が、対照と比較して少なくとも5%改善されると言及することは、(上述のように)5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%などの改善、又は(上述のように)更には少なくとも10%の改善を包含することを意味する。第3の実施形態の方法は、タイヤトレッド配合の技術分野でより典型的に達成される結果とは対照的であり得、1つの特性(例えば、湿潤性能)の改善は、別の特性(例えば、スノー性能)における性能の低下をもたらす。」
(摘記m)トレッドゴム組成物の配合例について
「【実施例】
【0113】
以下の予測実施例は、本開示の特定の及び例示的な実施形態、並びに/又は実施形態の特徴を例示するために提供される
。実施例は、単に例示の目的で提供されており、本開示を限定するものとして解釈すべきでない。本開示の実施形態の趣旨及び範囲を逸脱することなく、これらの特定の実施例に対する多くの変更が可能である。本開示によるタイヤトレッドゴム組成物は、一般に本明細書に提供される教示に関して、かつ前の段落に完全に開示されているものとは異なるSBR、異なるポリブタジエン、異なる天然ゴム(及び/又はポリイソプレン)、異なる補強シリカ充填剤、異なるカーボンブラック(又はなし)、異なる炭化水素樹脂、並びに異なる液体可塑剤を使用して作製することができることを具体的に理解されたい。前述の成分が、相対量、組成、又はそれらの両方において、実施例で使用されるもの(すなわち、前の段落に開示されるような完全なもの)とは異なり得ることも理解されたい。
【0114】
表1に提供されるように、トレッドゴム組成物は、実施例Aとして列挙される本発明の組成物を配合するために前の段落で開示される量及び種類に従って成分を使用して調製することができる。
比較トレッドゴム組成物もまた、対照B、対照C、対照D、及び対照Eとして表1に列挙される特定の成分の様々な種類及び/又は量を使用して調製することができる。特に、
対照B~Eの各々は、実施例Aのゴム組成物に列挙される量及び/又は種類外の少なくとも1つの成分を使用する。
量が、範囲(例えば、SBR-1の場合、30~40の範囲)内にあることが示されるとき、その成分は、反対に示されない限り、各組成物と同じ量であると理解され得る(すなわち、SBR-1の量は、実施例A、対照C、及び対照Dについて同じであるが、対照Bについては少なく、対照Eには存在しないが、SBR-2で置き換えられる)。表1の全成分は、phrの量で記載されている。
【表1】
85
153
0001436612000001.jpg
1
SBR-1は、非官能化であり、-20~-10°Cの範囲のTg、600,000~1.200万グラム/モルの範囲のMw、350,000~450,000グラム/モルの範囲のMn、20~40%の範囲のスチレン含有量、及び30~60%の範囲のビニル結合含有量を有する。このSBRもまた、100部のゴム当たり37.5部の量で油展される。表1に列挙された量は、油展性SBRによって寄与されたゴムの量であり、SBR-1の油寄与を含まない。
2
SBR-2は、官能化され、SBR-1に記載される範囲外のTg、Mw、Mn、及びスチレン含有量を有する。このSBRも官能化され、油展性ではない。
3
少なくとも95%のシス-1,4-結合含有量及び-105~-108°Cの範囲のTgを有する高シスポリブタジエン。
4
150~300m
2
/gの範囲のBET表面積を有する補強シリカ充填剤。
5
植物由来油
6
30~50°Cの範囲のTgを有する芳香族樹脂。
7
硫黄」
(摘記n)トレッドゴム組成物の配合例の予測された特性について
「【0115】
表2は、表1からのゴム組成物の各々について予測された特性を提供する。
特に、tanδ値は、上記の段落に記載されているGabo手順に従って測定することができる。室温Ebは、破断時伸び測定値(伸び%に関して)を表し、ゴム組成物の引裂抵抗の指標を提供する。略語Tbは、破断時引張を指し、この測定値(MPa単位で作製)は、破断前に耐えることができる最大応力を測定することによってゴム組成物の強度の指標を提供する。Eb及びTbは、ASTM D-412に記載される標準的手順に従うが、これには限定されないガイドラインに従って、幅の断面寸法4mm、中心部厚さ1.9mmを有するダンベル型試料を用いて測定することができる。測定中、試験片を一定速度(毎秒20%)で歪ませ、結果として得られた力を伸展(ひずみ)の関数として記録することができる。室温測定は、23°Cで取得された測定値を指し、熱間測定は、100°Cで取得された測定値を指す。
【表2】
70
153
0001436612000002.jpg
【0116】
表2のデータの検討として、本発明の実施例Aのゴム組成物と比較した場合、比較ゴム組成物B~Eの各々は、本発明の実施例Aに提示される範囲よりも悪い又はそれ以外の少なくとも1つの特性を呈する。」
(4)本願出願時の技術常識について
ア 当審合議体が引用する文献
本願出願時の技術常識を示すものとして当審合議体が引用する以下の文献
参考文献A:横浜ゴム株式会社,自動車用タイヤの研究,株式会社山海堂、1995年
参考文献B:渡邉徹郎,タイヤのおはなし,財団法人日本規格協会,第1版,第2刷,1997年
参考文献C:平山道夫,摩耗試験機を用いたタイヤ用ゴムの摩耗に関する研究,神戸大学博士論文,2014年,URL:https://hdl.handle.net/20.500.14094/D1005935
参考文献D:国際公開第2016/076422号
参考文献E:特開2009-286822号公報
には、以下のとおりの記載がある(下線は当審合議体による。)。
イ 参考文献Aの記載
(摘記o)7頁3行~8頁8行
「移動・輸送手段としての自動車の基本的役割を支えている
タイヤには、以下に示す4つの機能が必要とされる。
...
2
制動・駆動機能
トレッドゴムと路面との摩擦により、タイヤに制動力・駆動力が作用し、車の発進、加速および減速、停止などを可能にする動力伝達機能。
...
4
進路保持機能
トレッドゴムと路面との摩擦、ゴム膜の弾性により、カーブでも安定した走行ができる車のかじとしての機能。
...
タイヤの基本機能として、前節で挙げた4つ...
...
があるが、
これらの基本機能に加えて、
低ころがり抵抗性、
耐摩耗性などの要求がある。タイヤに要求される諸性能で、ある特定の性能を良くすると、他の性能が悪化するという二律背反的な関係が存在することが多い。
例えば、操安性志向のタイヤを設計する場合は、タイヤの構造面よりの変更とともに、一般にトレッドゴムに路面との摩擦係数の大きいゴム(ヒステリシスの大きいゴム)を用いているが、このようなゴムは、ころがり抵抗性を悪化させる傾向にある。」(当審合議体注:項番号の「1」~「4」は丸囲み数字)
(摘記p)109頁4~7行
「タイヤの基本機能である4項目のうち、
「車両を直進、旋回走行させる」「駆動力、制動力を車両に伝達する」ことができるのは、タイヤと路面との間に摩擦力が発生するからである。
だから車両の走行性能は、タイヤ/路面間の最大摩擦力からくる限界を超えることができないのは当然である。」
(摘記q)116頁8~14行
「
摩擦特性の場合、他の性能と異なるのは、いかなる路面状態(状況)の下においても常にベストであるタイヤはありえないという事実である。
したがって一般のタイヤは、どの路面でも比較的良い摩擦性能を有するように設計がされている。しかし、
ある特別な状況下において、最も良い摩擦性能を発揮する(その代わりに他の路面での摩擦性能をある程度犠牲にしている)タイヤも存在する(例:スタッドレスタイヤ、レーシングタイヤのスリックタイヤなど)
。」
ウ 参考文献Bの記載
(摘記r)100頁2行~102頁13行
「
タイヤが走行中,路面内でゴム片がはぎ取られたり,欠け落ちたりあるいは削り取られたりして,トレッドゴムが失われていくのが摩耗です.種々の形態がありますが,大別すると次の二つに分類できます.
(1)疲労摩耗(fatigue wear)
...めったにお目にかからない摩耗形態です....
(2)機械的摩耗(mechanical wear)
機械的摩耗には,
の2形態があります.二つとも機械的な力と滑りによって引き起こされる摩耗ですが,二つの間に基本的な違いがあります.引っかき摩耗は...
もう一方の摩擦摩耗は,1971年にイギリス人シャルマック(A.Schallamach;シャルマッハとも読む)が摩耗現象の詳細な観察と実験により見いだしたシャルマック波に基づいて説明されています....
シャルマックはこの応力と移動距離(スリップ量)の堰を“摩耗エネルギー”と呼び,ゴムの摩耗量は摩耗エネルギーに比例することを見いだしました.つまり摩耗の基本式は次のようになります.
摩耗量∝摩擦力×スリップ量
(4.7)
...
通常のタイヤ使用条件下で観察できる摩耗は大部分がこの摩耗に属する
もので,摩耗分はロール状のものが大部分です.」(当審合議体注:項番号の「1」及び「2」は丸囲み数字)
(摘記s)108頁8~14行
「
FF車は前輪の荷重負担が大きく,しかも制・駆動力もコーナリングフォースも伝えなければなりませんから,どうしても後輪より摩耗が早い
ので,位置交換をおすすめします.また,
高性能タイヤの寿命が意外に短いのは,優れた路面グリップを確保するために,摩擦係数が高くて,やや耐摩耗性の劣るゴム配合が使用され,かつハードコーナーリングで走行される可能性が高いため
です.」
(摘記t)161頁21行~162頁10行
「それでは
どのようなことをすれば氷上の摩擦を改良することができるのでしょうか.
まずはトレッドパターンですが...さらに
柔軟性をつけるために非常に柔らかいコンパウンドを使用します.
通常,コンパウンドは低温になると連続的に硬くなり,ついには極低温でガラス状態となり,この温度を“ガラス転移点”といいます.天然ゴムですとガラス転移点は-62°Cですが,合成ゴムでは-104°Cまでガラス転移点を下げることができ,低温でも柔軟性をもたせることができます.
ただしあまりガラス転移点を下げると今度はゴムのヒステリシスロスが小さくなり,ぬれた路面での摩擦力が劣るので望ましくなく,ガラス転移点を下げるのも限界があります.
」
エ 参考文献Cの記載
(摘記u)「第1章 緒論」(16頁9行~17頁11行)
「タイヤ走行時,トレッドゴムが受けるタイヤの転がりによる振動数は数十Hz程度の低周波数の振動であり,ウェット路面でのブレーキ時の振動数は接地路面のマクロな凹凸により,1万~100万Hzに達する高周波数の振動となる.従ってタイヤトレッドにおいて転がり抵抗を小さくし,
ウェット路面でのブレーキ性能を向上させるためには,
低周波数でのtanδを小さくし,
高周波数でのtanδを大きくすれば良い.ゴムの粘弾性測定では温度-周波数換算が成り立ち,実際のタイヤ入力周波数からラボ条件での粘弾性測定温度領域が決定されている.
粘弾性測定において数万Hzの条件下での測定は不可能なため,ラボでは数Hzの条件下で測定し高周波数粘弾性を低温条件粘弾性で評価している.
結果として
転がり抵抗改良には60°C近辺のtanδを小さく,
ウェット路面でのブレーキ性能の向上には0°C付近のtanδを大きくすれば良いと言われている
12)
.
...
タイヤのもう一つの重要な性能として耐摩耗性能がある.
今後の爆発的なモータリゼーションに対応するためには,耐摩耗性能を向上させ,タイヤの使用寿命を長くする必要がある.
しかしながら,耐摩耗性能は
燃費性能および
ウェットグリップ性能と背反の関係にある.Kienle
16)
らは
マクロおよびミクロ構造を異にする12種類のポリマーを用いたガラス転移温度(以下Tgと略す)を異にする配合について,実車摩耗テストを行い,
耐摩耗性能はウェットグリップ性能と背反の関係にあることを示した.
さらに,Tgと耐摩耗性能との間に高い相関を示すことを明らかにした.燃費性能およびウェットグリップ性能を両立させる一つの手段として,Tgを高く配合設計する方法がある.
Tgを高くすると
燃費性能と関連のある60°C近辺のtanδが小さくなり,
ウェットグリップ性能と関連のある0°C付近のtanδが高くなる.その一方で,Tgを高く設定してしまうと耐摩耗性能が低下してしまうことがある.
配合設計を行う際の重要なポイントとしては耐摩耗性能の要求レベルを確保しながら,燃費性能,ウェットグリップ性能を要求レベルまで向上させ,これら3つの要求性能が要求レベルに達しているかをいかに正確に評価するかにかかっている.」
オ 参考文献Dの記載
(摘記v)段落0003
「[0003] 氷雪路面では、一般路面に比べてタイヤの摩擦係数が著しく低下し、滑りやすくなるため、
スタッドレスタイヤには、低温特性のみならず、雪氷上性能(雪氷上グリップ性能)と耐摩耗性能とをバランス良く備えることが求められる。しかしながら、雪氷上性能は耐摩耗性能と背反することが多く、両性能を同時に改善することは一般的に困難である。
」
カ 参考文献Eの記載
(摘記w)段落0002及び0003
「【0002】
近年、氷雪路走行用のスタッドレスタイヤには、氷雪路上の氷上性能に優れることに加えて、非積雪路走行時のドライ性能/ウェット性能や耐摩耗性を兼備することが求められている。
一般に、氷上性能は、
ゴムの硬度を低くしたり、高硬度粒子の配合による引掻き効果や熱膨張性マイクロカプセルなどの配合による吸水効果に基づく
氷上摩擦力により決まる。
これに対して、
ドライ性能は、
ゴムの弾性率や強度を高くして乾燥路面の操縦安定性や
耐摩耗性を向上する。
また、
ウェット性能は、0°Cのtanδを大きくすることにより向上させる
ことができる。
【0003】
上述するように
スタッドレスタイヤの氷上性能を向上するには、トレッド部を構成するゴム組成物のゴム硬度を低くして低温時の柔軟性を維持したり、高硬度粒子を配合して引掻き効果を付与したり、熱膨張性マイクロカプセルを配合して水膜除去性能を向上したりすることにより氷上摩擦力を高くするようにしており
、多数の提案がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、
ゴム硬度を低くしたり、高硬度粒子や熱膨張性マイクロカプセルの配合量を多くすると、ゴム強度が低下するので、ドライ性能/ウェット性能としての操縦安定性が低下したり、耐摩耗性が悪化するという問題がある。また、氷上性能の低温時の柔軟性を与えるためシリカを高配合すると耐摩耗性が低下し、ドライ性能の耐摩耗性を向上するためカーボンブラックの配合量を増やすと、逆にゴムが硬くなるため氷上性能が悪化する。このように氷上性能とドライ性能/ウェット性能との特性は相反する関係にある。
」
キ 本願出願時の技術常識
上記イ~カから、本願出願時、以下の事柄が技術常識であったといえる。
(a)タイヤの基本機能には、トレッドゴムと路面との摩擦による、車の発進、加速及び減速、停止などを可能にする制動・駆動機能や、トレッドゴムと路面との摩擦やゴム膜の弾性による、カーブでも安定した走行ができる進路保持機能があり、これらの基本的機能のほか低ころがり抵抗性、耐摩耗性なども要求されるが、タイヤに要求される諸性能で、ある特定の性能を良くすると、他の性能が悪化するという二律背反的な関係が存在することが多い(摘記o)。
(b)通常の使用条件下でのタイヤの摩耗の大部分は機械的摩耗であり、機械的摩耗の量は摩擦力に比例するため(摘記r)、荷重負担が大きく、制・駆動力もコーナリングフォースも伝えなければならないFF車の前輪や、優れた路面グリップを確保するために摩擦係数が高くやや耐摩耗性の劣るゴム配合が使用される高性能タイヤは摩耗が早い(摘記s)。また、ウェットグリップ性能と耐摩耗性能は二律背反的な関係にあり(摘記u)、雪氷上グリップ性能と耐摩耗性能も二律背反的な関係にある(摘記v、w)。
(c)タイヤの基本機能である制動・駆動機能と進路保持機能にはタイヤと路面間の最大摩擦力からくる限界がある(摘記p)。また、摩擦特性についてはいかなる路面状態(状況)の下においても常にベストであるタイヤはありえず(摘記q)、スタッドレスタイヤのように、ある特別な状況下において最も良い摩擦性能を発揮する(その代わりに他の路面での摩擦性能をある程度犠牲にしている)タイヤも存在する。そして、ウェットグリップ性能と雪氷上グリップ性能は二律背反的な関係がある(摘記t、w)。
(5)本件補正発明1のサポート要件について
ア サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、サポート要件の存在は、特許出願人が証明責任を負うと解するのが相当である(知財高判平17.11.11平成17(行ケ)10042号参照。)。
イ 発明の課題
段落0002(摘記a)及び0006(摘記b)をはじめとする発明の詳細な説明の記載からみて、本件補正発明1の課題は「バランスのとれた湿潤、ウィンター、及び摩耗性能を有するタイヤトレッドゴム組成物を提供すること」(以下「本件課題」という。)であると認められる。
ウ 検討
(ア)発明の詳細な説明に記載された事項
発明の詳細な説明の段落0004~0006(摘記b)には、第1及び第2の実施形態として所定の組成のタイヤトレッドゴム組成物が、第3の実施形態として、これらと同様の組成のタイヤトレッドゴム組成物を利用することによって、バランスのとれた湿潤、ウィンター、及び摩耗性能を有するタイヤトレッドを提供する方法が記載され、段落0029~0101(摘記c~k)には、本件補正発明1における各成分及びその配合量についてそれぞれ記載されている。特に、段落0030(摘記c)には、第1~第3の実施形態によるタイヤトレッドゴム組成物において、少なくとも95%のシス結合含有量及び-101°C未満のTgを有する特許請求される量のポリブタジエンの使用は、特定の実施形態において、特許請求される量未満のポリブタジエン(例えば、60~70部の代わりに50部)を使用し、かつ欠落した量のポリブタジエンを当量のスチレン-ブタジエンゴム(ii)で置き換える、対照ゴム組成物と比較して、摩耗及び雪性能(当審合議体注:「ウィンター性能」に相当すると認める。)の改善をもたらすことができることが記載され、段落0062(摘記f)には、第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、特許請求される範囲の上部にあるシリカの使用量(すなわち、100phr超~約120phrの補強シリカ充填剤の量)は、少なくとも5%の0°Cにおけるtanδの増加によって証明され得るように、タイヤトレッドゴム組成物の湿潤トラクション性能(当審合議体注:「湿潤性能」に相当すると認める。)を改善するのに有益であり得ることも記載されている。
また、発明の詳細な説明の段落0106(摘記l)には、タイヤトレッド特性について、タイヤトレッドゴム組成物の-30°Cにおけるtanδはタイヤトレッドの雪又は氷牽引摩擦(当審合議体注:「ウィンター性能」に相当する。)を示し、0°Cにおけるtanδはタイヤトレッドの湿潤牽引摩擦(当審合議体注:「湿潤性能」に相当すると認める。)を示し、30°Cにおけるtanδはタイヤトレッドの乾燥操縦性を示し、60°Cにおけるそのtanδはタイヤトレッドの転がり抵抗を示すことが記載され、段落0107(摘記l)には、第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は0.21~0.28の60°Cにおけるtanδの値を有し、60°Cにおけるtanδの値は(a)60°Cにおけるtanδの少なくとも1.5倍の-30°Cにおけるtanδの値、(b)前記60°Cにおけるtanδの少なくとも1.8倍の0°Cにおけるtanδの値及び(c)前記60°Cにおけるtanδの少なくとも1.2倍の30°Cにおけるtanδの値と組み合わされることが記載され、段落0108(摘記l)には、タイヤトレッドゴム組成物の絶対摩耗値はDIN ISO4649、2014版を使用して測定することができるDIN摩耗値を指すことも記載されている。
さらに、発明の詳細な説明の段落0109(摘記l)には、湿潤、ウィンター、及び摩耗性能のバランスがとれているとは、より少ないポリブタジエン(すなわち、50phr)を有しかつ欠落した量のポリブタジエンを当量のスチレン-ブタジエンゴム(ii)で置き換えたトレッドゴム組成物を対照として、湿潤性能及びウィンター性能が各々少なくとも5%以上改善され、かつ、ISO23337:2016によって測定される摩耗性能が対照の少なくとも90%以上維持又は改善されたタイヤトレッドゴム組成物のことをいうことも記載されている。
そして、発明の詳細な説明の段落0114(摘記m)には、予測実施例として、表1に実施例A及び対照B~Eの組成が記載され、また、段落0115(摘記n)には、表1のゴム組成物の各々についての予測された特性として、表2に60°C、30°C及び0°Cにおけるtanδ、エラストマー成分のTg、室温及びホット状態における破断時伸びEb(摘記lの段落0106)、ホット状態における破断時伸びと破断時引張との積Tb×Eb(摘記lの段落0106)が記載されている。
(イ)判断
a 上記(ア)から、発明の詳細な説明には、第1~第3の実施形態に係る類似する組成のタイヤトレッドゴム組成物が記載され(段落0004~0006)、第3の実施形態に係るタイヤトレッドゴム組成物が「バランスのとれた湿潤、ウィンター、及び摩耗性能を有するタイヤトレッドを提供する」と形式的に記載され(段落0006)、また、少なくとも95%のシス結合含有量及び-101°C未満のTgを有する特許請求される量のポリブタジエンの使用が「ウィンター及び摩耗性能」の改善に関係すること(段落0030及び0106)、100phr超~約120phrの補強シリカ充填剤が「湿潤性能」の改善に関係すること(段落0062及び0106)などが記載されているといえる。
しかし、発明の詳細な説明には、本件補正発明1に係る各成分を本件補正発明1に係る配合量で配合したタイヤトレッドゴム組成物により本件課題を解決できることの作用機序は記載されていない。
また、発明の詳細な説明において、実施例として本件補正発明1に係る各成分を本件補正発明1に係る配合量で配合した具体的なタイヤトレッドゴム組成物を製造し、その湿潤、ウィンター及び摩耗性能を把握し、それらを上記(ア)で指摘した対照トレッドゴム組成物と比較することで、本件補正発明1により本件課題を解決できることが実証されているともいえない。
具体的には、発明の詳細な説明の表1(摘記m)は、段落0114の冒頭に「表1に提供されるように、トレッドゴム組成物は...前の段落で開示される量及び種類に従って成分を使用して調製することができる」と記載されていることから、そもそも実際に調製を行った結果であるとはいえない。その上、同表は、実施例A及び対照B~Eにおける各成分の構造や特性、配合量を抽象的に開示しているにとどまるという点で具体性を欠く(とりわけシリカカップリング剤、液体可塑剤としてどのようなものを使用したかを全く開示しておらず、炭化水素樹脂としてどのような構造の樹脂を使用したのかも全く開示しておらず、また、各成分の配合量も範囲として開示しているにとどまる。)。
発明の詳細な説明の表2(摘記n)は、段落0115の冒頭に「表1からのゴム組成物の各々について予測された特性を提供する」と記載されているとおり予測された特性に過ぎない。そして、どのような手法で予測したのかについては何ら説明されていないから、同表に開示された「予測された特性」が信頼できるものともいえない。さらに、仮にこの「予測された特性」が信頼できるとしても、同表は、-30°Cにおけるtanδ及びISO23337:2016によって測定された値すなわち実施例A及び対照B~Eにおけるウィンター及び摩耗性能を開示していないし、そのほかの特性についても60°Cにおけるtanδ以外は範囲で開示しているにとどまる。
そうすると、表1をもって、発明の詳細な説明に本件補正発明1に係る各成分を本件補正発明1に係る配合量で配合した具体的なタイヤトレッドゴム組成物を製造したことが記載されているとはいえないし、表2をもって、発明の詳細な説明に本件補正発明1に係る各成分を本件補正発明1に係る配合量で配合した具体的なタイヤトレッドゴム組成物の湿潤、ウィンター及び摩耗性能を把握し、それらを上記(ア)で指摘した対照トレッドゴム組成物と比較することで、本件補正発明1により本件課題が解決されることが実証されているとはいえない。
したがって、発明の詳細な説明の記載に基づいて、当業者が、本件補正発明1に係るタイヤトレッドゴム組成物により本件課題を解決できると認識するということはできない。
b また、タイヤには制動・駆動機能、進路保持機能といった基本的機能のほか低ころがり抵抗性、耐摩耗性なども要求されるが、タイヤに要求される諸性能で、ある特定の性能を良くすると、他の性能が悪化するという二律背反的な関係が存在することが多く(上記(4)キ(a))、いかなる路面状態(状況)の下においても常に摩擦特性がベストであるタイヤはありえず(上記(4)キ(b)及び(c))、ウェットグリップ性能と耐摩耗性、雪氷上グリップ性能と耐摩耗性能、ウェットグリップ性能と雪氷上グリップ性能はそれぞれ二律背反的な関係にある(上記(4)キ(b)及び(c))ということが本願出願時の技術常識である。一方、組成物とは複数の成分を混合した状態にある物であって、一般的に組成物においては、ある一成分が備えるありとあらゆる構造、特性等を把握することは困難であることに起因し、混合した状態にある複数の成分がどのように相互作用するかあるいはしないかを確実に予測することは困難であるところ、トレッドゴム組成物に配合される各成分の構造や特性、配合量からトレッドゴム組成物のこれらの性能を同時に正しく予測することができるとする本願出願時の技術常識は見当たらない。
したがって、本願出願時の技術常識に基づいて、当業者が、本件補正発明1に係るタイヤトレッドゴム組成物により本件課題を解決できると認識するということはできない。
c 以上から、本件補正発明1は、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に基づいて当業者が「バランスのとれた湿潤、ウィンター、及び摩耗性能を有するタイヤトレッドゴム組成物を提供すること」という本件課題を解決できると認識できる範囲のものではない。
エ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、本件補正により(a)(ii)の非官能化スチレン-ブタジエンゴムの特性が限定されたことを指摘し、本願明細書の表1及び表2の「更なる補足版」(第2の補足)として以下の表1及び表2を提示した上で、「請求項1に規定される限定範囲内にある成分を使用すると、従属項6及び7に記載の特性の好ましいバランスを有するタイヤトレッドゴム組成物を調製できる」から、補正後の請求項に係る発明はサポート要件を満たしていると主張する。
78
98
0001436612000003.jpg
1
SBR-1は、非官能化であり、-20~-10°Cの範囲のTg、600,000~1.200万グラム/モルの範囲のMw、350,000~450,000グラム/モルの範囲のMn、20~40%の範囲のスチレン含有量、及び30~60%の範囲のビニル結合含有量を有する。このSBRもまた、100部のゴム当たり37.5部の量で油展される。表1に列挙された量は、油展性SBRによって寄与されたゴムの量であり、SBR-1の油寄与を含まない。
2
SBR-2は、官能化され、SBR-1に記載される範囲外のTg、Mw、Mn、及びスチレン含有量を有する。このSBRも官能化され、油展性ではない。
3
少なくとも95%のシス-1,4-結合含有量及び-105~-108°Cの範囲のTgを有する高シスポリブタジエン。
4
150~300m
2
/gの範囲のBET表面積を有する補強シリカ充填剤。
5
植物由来油
6
30~50°Cの範囲のTgを有する芳香族樹脂。
7
硫黄
81
96
0001436612000004.jpg
しかし、(a)(ii)の非官能化スチレン-ブタジエンゴムの特性と本件課題との関係は、発明の詳細な説明(摘記(d))には記載も示唆もされておらず、また技術常識から当業者に自明であるともいえない。そのため、(a)(ii)の非官能化スチレン-ブタジエンゴムの特性が限定されていることをもって補正後の請求項に係る発明はサポート要件を満たしているとすることはできない。
そして、特許出願後に実験データを提出して発明の詳細な説明の記載内容を記載外で補足することによってサポート要件に適合させることは許されないから(知財高判平17.11.11平成17(行ケ)10042号参照。)、上記「第2の補足」を発明の詳細な説明の記載を補うものとして参酌することは適切ではない。
仮にこの「第2の補足」を参酌しても、「第2の補足」には発明の詳細な説明の段落0106(摘記l)においてウィンター性能を示すとされている-30°Cにおけるtanδは記載されていないし、同段落0109(摘記l)において摩耗性能を示すとされているISO23337:2016によって測定された値も記載されていない。そうすると、「第2の補足」によっても、本件補正発明1に係る各成分を本件補正発明1に係る配合量で配合した具体的なタイヤトレッドゴム組成物を製造し、その湿潤、ウィンター及び摩耗性能を把握し、それらを上記ウ(ア)で指摘した対照トレッドゴム組成物と比較することで、本件補正発明1により「バランスのとれた湿潤、ウィンター、及び摩耗性能を有するタイヤトレッドゴム組成物を提供すること」という本件課題を解決できることが実証されているとはいえない。
したがって、いずれにしろ請求人の主張を採用することはできない。
オ 本件補正発明1のサポート要件についてのまとめ
以上から、特許請求の範囲の記載は、本件補正発明1について、サポート要件に適合しない。
(6)本件補正発明6の実施可能要件について
ア 実施可能要件の判断手法
物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号)、物の発明について実施可能要件を充足するか否かは、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があるかどうかで判断すべきものであり、実施可能要件の充足は、特許出願人が証明責任を負うと解するのが相当である。
イ 検討
(ア)はじめに
上記アに照らして、本件補正発明6に係るゴム組成物について実施可能要件を充足するというためには、本件補正発明6が引用する請求項1(以下単に「請求項1」という。)に記載された各成分を請求項1に記載された配合量で配合することを前提として、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識に基づいて、過度な試行錯誤を要することなく、請求項6に記載の「0.21~0.28の60°Cにおけるtanδ」(以下単に「60°Cのtanδ」という。)と、「(a)前記60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.5倍の-30°Cにおけるtanδ」、「(b)前記60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.8倍の0°Cにおけるtanδの値」及び「(c)前記60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.2倍の30°Cにおけるtanδの値」(以下まとめて「(a)~(c)のtanδ比」という。)という特性を満たすタイヤトレッドゴム組成物を製造することができることが必要である。そこで、そのような観点から以下検討する。
(イ)発明の詳細な説明に記載された事項
発明の詳細な説明には、上記(5)ウ(ア)で指摘したとおりのことが記載されている。
(ウ)判断
a 上記(イ)から、発明の詳細な説明には、第3の実施形態として、「バランスのとれた湿潤、ウィンター、及び摩耗性能を有するタイヤトレッドを提供する方法」や(段落0006)、第1~第3の実施形態の「特定の実施形態」で、60°Cのtanδ及び(a)~(c)のtanδ比を満たすこと(段落0107)について形式的な記載があり、100phr超~約120phrの補強シリカ充填剤が「湿潤性能」の改善に関係すること(段落0062及び0106)、少なくとも95%のシス結合含有量及び-101°C未満のTgを有する特許請求される量のポリブタジエンの使用が「ウィンター及び摩耗性能」の改善に関係すること(段落0030及び0106)などが記載されているといえる。しかし、発明の詳細な説明には、請求項1に記載された各成分として具体的にどのようなものを選び、それを請求項1に記載された配合量の範囲内で具体的にどう調製すれば、60°Cのtanδ及び(a)~(c)のtanδ比を同時に全て満たすようになるのか、その具体的な指針となるような記載は全くない。
また、上記(5)ウ(イ)aにおける検討からすると、発明の詳細な説明の表1(摘記m)により実施例として請求項1に記載された係る各成分を請求項1に記載された配合量で配合した具体的なタイヤトレッドゴム組成物を製造したことが実証されているとはいえないし、発明の詳細な説明の表2(摘記n)によりタイヤトレッドゴム組成物が60°Cのtanδ及び(a)~(c)のtanδ比を同時に全て満たすことが実証されているともいえない。
そうすると、発明の詳細な説明の記載では、本願補正発明6に係るゴム組成物を製造するために必要な具体的な情報が余りにも不足しているといわざるを得ない。
b また、上記(イ)で指摘したとおり、発明の詳細な説明には-30°Cにおけるtanδはタイヤトレッドの雪又は氷牽引摩擦を示し、0°Cにおけるtanδはタイヤトレッドの湿潤牽引摩擦を示し、30°Cにおけるtanδはタイヤトレッドの乾燥操縦性を示すことが記載されているところ(段落0106)、上記(5)ウ(イ)bで指摘したとおり、いかなる路面状態(状況)の下においても常に摩擦特性がベストであるタイヤはありえず、特にウェットグリップ性能(0°Cにおけるtanδが示す湿潤牽引摩擦と相関)と雪氷上グリップ性能(-30°Cにおけるtanδが示す氷牽引摩擦と相関)は二律背反的な関係にあるということが本願出願時の技術常識である。一方、組成物とは複数の成分を混合した状態にある物であって、一般的に組成物においては、ある一成分が備えるありとあらゆる構造、特性等を把握することは困難であることに起因し、混合した状態にある複数の成分がどのように相互作用するかあるいはしないかを確実に予測することは困難であるところ、トレッドゴム組成物に配合される各成分の構造や特性、配合量からトレッドゴム組成物のこれらの性能を同時に正しく予測することができるとする本願出願時の技術常識は見当たらない。
そうすると、当業者が、本願出願時の技術常識を手掛かりとして、60°Cのtanδ及び(a)~(c)のtanδ比を同時に全て満たすようにゴム組成物の組成を調整できるともいえない。
c 以上から、本件補正発明6に係るタイヤトレッドゴム組成物を製造しようとする当業者は、発明の詳細な説明の記載や技術常識から、的確な手掛かりもないまま、請求項1に記載された各成分を請求項1に記載された配合量で配合することを前提として、各成分として具体的にどのようなものを選択するかということや、配合量として具体的にどのような量を選択するかという検討を迫られ、過度の試行錯誤をしなければならないといえる。
ウ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、本件補正により(a)(ii)の非官能化スチレン-ブタジエンゴムの特性が限定されたことを指摘し、本願明細書の表1及び表2の「更なる補足版」(第2の補足)として上記(5)エで引用した表1及び表2を提示した上で、「明細書(表1および表2を含む)と併せて補正された請求項を検討すれば、補正後の請求項1に特定された配合物を使用したタイヤトレッドゴム組成物が、従属請求項6及び7に特定された特性制限のすべてを満たすことが示されていることが理解できる」とし、「出願人は、補正後の請求項に係る発明の限定に従えば、当業者であれば、請求項6および7に記載された特性の好ましいバランスを有するタイヤトレッドゴム組成物を調製または配合することができることを申し述べる」と主張する。
しかし、(a)(ii)の非官能化スチレン-ブタジエンゴムの特性と60°Cのtanδ及び(a)~(c)のtanδ比との関係は、発明の詳細な説明(摘記(d))には記載も示唆もされておらず、また技術常識から当業者に自明であるともいえない。そのため、(a)(ii)の非官能化スチレン-ブタジエンゴムの特性が限定されていることをもって当業者が過度の試行錯誤なしに60°Cのtanδ及び(a)~(c)のtanδ比を同時に全て満たすようにゴム組成物の組成を調整できるとすることはできない。
そして、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすといえるためには、発明の詳細な説明自体に請求項に係る発明が実施可能なように記載する必要があり、その記載にない事項を後の実験等により補うことは許されないから、上記「第2の補足」を発明の詳細な説明の記載を補うものとして参酌することは適切ではない。
仮にこの「第2の補足」を参酌しても、「第2の補足」は実施例A及び対照B~Eにおける各成分の構造や特性を抽象的に開示しているにとどまるという点で具体性を欠く上、-30°Cにおけるtanδを開示していない。そうすると、「第2の補足」によっても、請求項1に記載された各成分を請求項1に記載された配合量で配合しさえすれば60°Cのtanδ及び(a)~(c)のtanδ比を同時に全て満たすことが開示されているとはいえないし、具体的にどのような実施形態において60°Cのtanδ並びに60°Cにおけるtanδ値に対する-30°Cにおけるtanδ値の比、60°Cにおけるtanδ値に対する0°Cにおけるtanδ値の比及び60°Cにおけるtanδ値に対する30°Cにおけるtanδ値の比が具体的にどの程度になるのかということが開示されているともいえない。
したがって、いずれにしろ請求人の主張を採用することはできない。
エ 本件補正発明6の実施可能要件についてのまとめ
以上から、発明の詳細な説明の記載は、本件補正発明6について、実施可能要件に適合しない。
(7)独立特許要件についてのまとめ
上記(5)で検討したとおり、特許請求の範囲の記載は、本件補正発明1について特許法第36条第6項第1号の規定に適合しないものであって、本件補正発明1は特許出願の際独立して特許を受けることができない。
また、上記(6)で検討したとおり、発明の詳細な説明の記載は、本件補正発明6について特許法第36条第4項第1号の規定に適合しないものであって、本件補正発明6は特許出願の際独立して特許を受けることができない。
以上のとおり、本件補正発明1及び6は特許出願の際独立して特許を受けることができない。したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
本件補正は上記第2の[補正の却下の決定の結論]のとおり却下されたので、本願の請求項1~7に係る発明は令和5年10月24日に提出された手続補正書による手続補正後の特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、その請求項1及び7に係る発明(以下「本願発明1」及び「本願発明7」という。)は、上記第2[理由]1で認定した本件補正前発明1及び7である。
原査定の拒絶の理由は、概要、
「1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
本願発明1は、当業者が発明の詳細な説明の記載及び技術常識に基づいて、バランスのとれた湿潤、ウィンター及び摩耗性能を有するタイヤトレッドを提供するという課題を解決できると認識できる範囲のものではないから、発明の詳細な説明に記載したものではない。」
という理由及び
「2.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
発明の詳細な説明には、本願発明7に係るタイヤドレッドゴム組成物の製造方法が具体的に開示されていないから、当業者が発明の詳細な説明の記載及び技術常識に基づいて本願発明7を実施するためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験を行う必要がある。」
という理由を含むものである。
本願明細書の発明の詳細な説明の記載は上記第2[理由]3(3)で述べたとおりである。
上記第2[理由]1で確認した本件補正事項の内容からみて、本願発明1は、上記第2[理由]3で検討した本件補正発明1から、「前記(a)(ii)のスチレン-ブタジエンゴムが、油展性であり、かつ、ポリスチレン標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される、700,000グラム/モル~1,200,000グラム/モルのMwを有する」という事項を削除するものであるといえる。
そして、上記第2[理由]3(5)で述べたとおり、特許請求の範囲の記載は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに上記事項を付加することで本願発明1を減縮したものである本件補正発明1について、サポート要件に適合しない。
したがって、特許請求の範囲の記載は、本願発明1についても、サポート要件に適合しない。
本願発明7は本件補正前の請求項1を引用し、本件補正発明6は本件補正後の請求項1を引用するから、上記4に照らして、本願発明7は、上記第2[理由]3で検討した本件補正発明6から、「前記(a)(ii)のスチレン-ブタジエンゴムが、油展性であり、かつ、ポリスチレン標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される、700,000グラム/モル~1,200,000グラム/モルのMwを有する」という事項を削除するものであるといえる。
そして、上記第2[理由]3(6)で述べたとおり、発明の詳細な説明の記載は、本願発明7の発明特定事項を全て含み、さらに上記事項を付加することで本願発明7を減縮したものである本件補正発明6について、実施可能要件に適合しない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、本願発明7についても、実施可能要件に適合しない。
上記第3の4で検討したとおり、特許請求の範囲の記載は、本願発明1について特許法第36条第6項第1号の規定に適合しないものである。
また、上記第3の5で検討したとおり、発明の詳細な説明の記載は、本願発明7について特許法第36条第4項第1号の規定に適合しないものである。
したがって、本願は原査定のとおり拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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