結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024014303 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本願は、令和2年4月24日の出願であって、令和5年11月13日付け(発送日:令和5年11月17日)の拒絶理由の通知に対し、令和6年3月15日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年5月29日付け(発送日:同年6月7日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して、同年9月6日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がされ、令和7年7月29日付け(発送日:同年8月1日)で当審により拒絶理由が通知され、同年10月30日に上申書のみが提出されたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年9月6日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりであると認められる。
「【請求項1】
木質バイオマスを乾燥させる木質バイオマス乾燥手段と、
乾燥した木質バイオマスを加熱し熱分解ガスを排出する熱分解手段と、
前記熱分解手段から排出されて間もない熱分解ガスであって、650°Cから780°Cの熱分解ガスからタール成分を除去するタール成分除去手段と、
タール成分を除去した熱分解ガスを用いて発電を行う発電手段とを備えており、
前記タール成分除去手段は親水性のタール成分を前記熱分解ガスに水を吹きかけて除去する水スクラバを備え、
前記水スクラバは、前記熱分解手段から排出された熱分解ガスが発生後の温度をほぼ維持した状態で水スクラバに流れ込むよう配置されており、
前記水スクラバで用いる水は沈殿したスラッジを取り除く沈殿スラッジ除去機構を備えた水循環利用手段によって循環利用され、
前記木質バイオマスは木材に由来するあらゆる資源(広葉樹・針葉樹、植物の根・葉・茎・花等のあらゆる部位、木造家屋を構成する柱・壁・天井といった部位を含む)を対象としており、
当該木質バイオマスは大きさと水分量を揃えることなくペレット状にすることなく前記加熱が為されることを特徴とするバイオマス発電システム。」
令和7年7月29日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
理由1(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由2(明確性要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由3(進歩性)
本願の請求項1~9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1、5
・引用文献等 1~4
・請求項 2~4
・引用文献等 1~5
・請求項 6
・引用文献等 1~4、6
・請求項 7
・引用文献等 1~4、7
・請求項 8
・引用文献等 1~5、又は、1~6、又は、1~5、7
・請求項 9
・引用文献等 1~4、8
<引用文献等一覧>
1.特開2018-53197号公報(原査定における引用文献4)
2.中国特許出願公開第105238451号明細書(前置報告書における引用文献5)
3.特開2009-96895号公報(周知技術を示す文献、新たに引用された文献)
4.特開2016-44215号公報(周知技術を示す文献、新たに引用された文献)
5.日刊建設工業新聞、2016年8月8日、4面(原査定における引用文献1)
6.米国特許出願公開第2012/0167461号明細書(新たに引用された文献)
7.特開2016-65531号公報(原査定における引用文献2)
8.特開2012-57019号公報(原査定における引用文献3)
(1)記載事項(下線は当審が付与した。)
ア「【0007】
本願の熱分解システムにおける前記供給装置は、前記温度計が計測した温度が所定の温度である第2温度よりも上がったときに、前記熱分解装置への前記原料の供給を自動的に開始するようになっていてもよい。上述したように、本願の熱分解システムにおける供給装置は、温度計が計測した温度が所定の温度である第1温度よりも下がったときに、熱分解装置への原料の供給を自動的に停止するようになっている。
ここで、原料の供給の停止により熱分解装置が持つケース内の温度が上がったら、再度原料をケース内に供給しても原料から過剰なタールが発生することはなく、またケース内の温度が、タールが過剰に発生しない程度にある程度上がったのであれば原料を再び熱分解装置に供給した方が最終的に得られる気化成分の量を増やすことができる。上述の発明では、第2温度よりもケース内の温度が上がったことをきっかけに熱分解装置への前記原料の供給を自動的に開始することとすることにより、タールの過剰な発生を防止するとともに、最終的に得られる気化成分の量を増やすことを両立させている。 ここで、第1温度と第2温度は同じでも良いし、そうでなくても良い。第1温度は、熱分解装置への原料の供給を停止するときの温度、第2温度は、熱分解装置への原料の供給を再開するときの温度であるところ、熱分解装置への原料の供給を停止するタイミングは、その温度よりもケース内の温度が下がったときにはタールが過剰に発生する温度よりも僅かでもケース内の温度が高いタイミングでも良いが、熱分解装置への原料の供給を再開するタイミングは、その温度よりもケース内の温度が下がったときにはタールが過剰に発生する温度よりもわずかでもケース内の温度が高いタイミングでは、原料の供給を再開したとたんにケース内の温度が下がってケース内への原料の供給を再び停止しなければならなくなるおそれが高い。そのような点を考慮すると、熱分解装置への原料の供給を再開する閾値となる第2温度は、その温度よりもケース内の温度が下がったときにはタールが過剰に発生する温度に対して多少の余裕を持つのが好ましい。そのような観点からすれば、前記第1温度は、前記第2温度よりも低くするのが好ましい。
前記第1温度は、650°C~700°Cの中から選択できる。植物由来のバイオマスである原料の温度を650°C、好ましくは700°Cより高い温度に保つことにより、チャー及びタールの発生を抑制できることが本願発明者の研究により明らかになっているからである。
特に第1温度は690°C~700°Cの範囲から選択するのが好ましく、そうすることで原料からの気化成分の発生を安定して継続的に行えるようになる。
前記第2温度は、700°C~800°Cの間から選択することができる。
第2温度が700°Cということは、ケース内の温度が700°Cを超えたらすぐにケース内に原料の供給が行われるということを意味するが、ケース内の温度が700°Cを超えてすぐにケース内に原料が供給されるとケース内の温度が700°Cを下回って、上述の好ましい原料の熱分解温度である650°C~700°C以上という温度範囲からすぐに外れてしまうということが起こりうる。そのような事態を防ぐためには、第2温度は650°Cから多少余裕を持たせて上述の範囲とするのが好ましい。より好ましくは第2温度は750°C±10°Cの範囲から選択するのが良い。」
イ「【0009】
本願における熱分解システムは、気化成分を得て、それを気化成分貯留タンクに貯蔵するものとなっていれば足りる。貯蔵された気化成分は燃料として用いられるが、その燃料の使用目的は不問である。その燃料は、本願の熱分解システム内で使用されても構わないし、そうでなくても構わない。
本願における熱分解システムは例えば、前記気化成分貯留タンクに貯留された前記気化成分を燃料として発電を行う発電機を備えていてもよい。
このようにすれば、この熱分解システムは、発電を行えるものとなる。」
ウ「【0015】
熱分解装置1は、後述する原料を熱分解して、後述する気化成分を生じさせるためのものである。それが可能な限り、熱分解装置1の構成は従来技術に倣うことができる。 熱分解装置1は、より詳しくは図2に示したように構成されており、これには限られないがこの実施形態では、公知のロータリーキルンに倣った構造が採用されている。図2は熱分解装置1の断面図である。
熱分解装置1は、ケース11を備えている。
ケース11は、筒状である。ケース11は、その軸が水平か略水平になるように横置きされる。ケース11は、必ずしもこの限りではないが、この実施形態では、その長さ方向に沿う軸を中心として回転可能となっている。ケース11が回転するための仕組みについては追って述べる。 ケース11は、一定の太さのケース本体部11Aと、ケース本体部11Aよりも小径とされ、且つケース11の長さ方向の一端側(図2における左側)に位置するケース小径部11Bとを備えている。ケース本体部11Aと、ケース小径部11Bとはともに筒状、これには限られないが、この実施形態ではともに円筒形状であり、且つ同軸である。また、ケース本体部11Aの長さはケース小径部11Bの長さよりも相対的にかなり長くなっている。後述するように、
ケース小径部11Bの内側からケース本体部11Aの内部に原料が供給される。供給された原料は、後述のようにして加熱されるケース本体部11Aの中で加熱され、気化成分を生じるようになっている。
」
エ「【0020】
熱分解装置1の一端側には、供給管2Aを介して供給タンク2が接続されている。
供給タンク2は、供給管2Aを介して熱分解装置1に供給される原料を貯留するものである。この実施形態における原料は、植物由来のバイオマスであり、これには限られないが、この実施形態では少なくとも草を含む。これに限られるものではないが、この実施形態では、草及び木が原料となる。これには限られないが、草及び木であるこの実施形態における原料は、数mm~10数cm程度の大きさに破砕されている。
原料の破砕は、図示を省略の破砕機を供給タンク2に設けることで供給タンク2内或いはその前段において行われるようにしても構わないし、又はこの実施形態の熱分解システム外のどこかで予め破砕された原料が供給タンク2に供給され、供給タンク2がその予め破砕された原料を熱分解装置1に供給するようになっていても構わない。また、この実施形態における原料は、水分含有量を減らすために乾燥させられたものとするのが好ましい。
原料の乾燥は、供給タンク2で行われても良い
し、原料タンク2の前段で行われても構わない。 供給管2Aの下端は曲折し、熱分解装置1のケース小径部11Bの中に挿入されている。なお、図示を省略するが、供給管2Aのケース小径部11Bに挿入されている部分の外側面と、ケース小径部11Bの内側面との間には、ケース本体部11A内で生じた気化成分がその隙間から炉筒12の外へ漏れ出さないようにするための適当な工夫(例えば、耐熱性の素材でできたパッキンを噛ませる)がなされている。 供給管2Aの曲折された部分の内部には動力装置2A2が生じる動力によって回転するスクリューであるスクリューコンベア2A1が設けられている。動力装置2A2が生じる動力にしたがいスクリューコンベア2A1が回転を行うことによって、供給タンク2から供給管2Aの縦の部分を通って落ちてくる原料Mが、供給管2Aの曲折された部分から、ケース11の内部に供給されるようになっている。また、動力装置2A2が動力の発生を停止し、スクリューコンベア2A1が回転を止めると、供給タンク2から熱分解装置1への原料の供給も停止するようになっている。この実施形態では、供給タンク2とスクリューコンベア2A1とを併せたものが、本願発明でいう供給装置に該当する。」
オ「【0021】
熱分解装置1はその他端部において、熱分解装置1のケース11内で生じた気化成分を外部に排出するための気化成分排出管1Aと、ケース11内で生じた固体成分を外部に排出するための固体成分排出管1Bとに接続されている。
より詳しく説明すると、熱分解装置1が備えるケース11におけるケース本体部11Aの他端側のうちの炉筒12から食み出している部分は、ケース本体部11Aの当該部分を外側から包み込む円筒形の管である接続管1Cにより覆われている。そして接続管1Cの上側に、上述した気化成分排出管1Aの下端が、また接続管1Cの下側に、上述した固体成分排出管1Bの上端が、それぞれ接続されている。なお、接続管1Cの内側面と、ケース本体部11Aの外側面との間に、供給管2Aのケース小径部11Bに挿入されている部分の外側面と、ケース小径部11Bの内側面との間に設けられたのと同様の気化成分の炉筒12への外側への漏れ出しを防止するための工夫が設けられて良いのは当然である。 ケース本体部11Aの中で生じた気化成分は、ケース本体部11Aの他端側に設けられた孔11Eから、気化成分排出管1Aに至り、気化成分排出管1Aを介してケース11の外部へ導かれるようになっている。 他方、ケース本体部11Aの中で生じた固体成分は、ケース本体部11Aの他端側のドーナツ形状の縁を乗り越えたものから、固体成分排出管1B内を下方に落下するようになっている。固体成分は、要するに残渣であり、原料が加熱された結果生じたチャーがその主な成分である。また、原料に分解しない金属等が混入している場合には、そのようなものも固体成分に含まれることになる。 なお、かかる固体成分排出管1B内における固体成分の下方への移動をスムーズにするために、固体成分排出管1B内に固体成分を強制的に下方に移動させるためのスクリューコンベアを設ける等の適当な工夫を行って良いことは当然である。固体成分排出管1Bの下方には、固体成分を貯めるタンクである固体成分貯留タンク3が設けられており、固体成分排出管1B内を落下した固体成分は、固体成分貯留タンク3に貯留されるようになっている。」
カ「【0022】
かならずしもこの限りではないがこの実施形態では、ケース11内の、より詳細にはこの実施形態では
ケース本体部11A内の温度を計測するための温度計が設けられている。温度計は、図示を省略するが、接続管1Cをその他端側から貫く棒状の支持棒1Dの先端に設けられている。温度計で計測されたケース本体部11A内の温度の情報は、後述するように、供給タンク2から熱分解装置1へと原料を供給するのか、その供給を停止させるのかという制御に用いられる。
それを可能にするために、温度計で計測された温度の情報は例えば、略実時間で、或いは所定の時間毎(例えば1分毎に)に、動力装置2A2へと送られる。その情報を、動力装置2A2が有する図示を省略のコンピュータで受取った動力装置2A2は、受取った情報に基づく制御により、動力を発生させ、或いは動力を発生させるのを停止し、それに伴い、上述したスクリューコンベア2A1を回転させ、或いはその回転を停止させる。上述したように、スクリューコンベア2A1が駆動すれば、熱分解装置1への原料の供給が行われ、スクリューコンベア2A1が停止すれば熱分解装置1への原料の供給が停止されるから、温度の情報は事実上、原料の熱分解装置1への供給を行うか停止するかの制御に用いられると言える。動力装置2A2がどのような条件でスクリューコンベア2A1を回転させ、或いはその回転を停止させるかについては後述する。」
キ「【0023】
気化成分排出管1Aは最終的にタンクである気化成分貯留タンク4に接続されており、気化成分排出管1Aを介して熱分解装置1から排出された気化成分は、最終的に気化成分貯留タンク4に貯留されるようになっている。 他方、気化成分排出管1Aの途中には、湿式スクラバ5が設けられている。湿式スクラバ5は公知或いは周知のもので構わず、市販のものでも構わない。
例えば、株式会社ThyssenKrupp Ottoが製造する、Hタール液分離スクラバー及び乾ガス洗浄スクラバー(商標)をこの湿式スクラバ5として用いることができる。
湿式スクラバ5は循環系を構成する管である循環管5Aの中を循環する液体と気化成分とを接触させることにより、気化成分の中に混入したチャー及びタールを気化成分から分離するためのものである。液体は、例えば水である。
上述したようにチャーの大半は固体成分として固体成分排出管1Bから固体成分貯留タンク3へと向かうが、その一部は気化成分に混入する。また、原料を加熱すると特に原料に草が入っている場合には、微粉状のチャーのみならずタールの発生が不可避であるので
、高温では気体の状態ではあるがタールが気化成分に混入する。
それらを、
気化成分から分離するのが湿式スクラバ5の役割である。
液体は例えば、湿式スクラバ5の上部から湿式スクラバ5の中にシャワー状に散布される。それにより気化成分と液体が接触し、気化成分に混入していたチャー及びタールは液体に移るので、それらが気化成分から分離されることになる。熱分解装置1から出たばかりの気化成分は高温であり、それに含まれているタールも気体であるが、液体と接触することで気化成分の温度が下がることにより粘度の高い液体となる。そのような状態となったタールは液体に捕らえられ、気化成分から分離される。
」
ク「【0026】
次にこの熱分解システムの使用方法及び動作について説明する。 この熱分解システムを使用して原料から燃料となる気化成分を得て、そして発電を行うにあたっては、まず熱分解システムにおける熱分解装置1の予備加熱を行う。具体的には、第1開口12Aから炉筒12の内側の空間に熱風を供給する。なお、この実施形態では、予備加熱が始まって以降、熱分解システムが駆動している間は、炉筒12内の空間に熱風により供給される熱量は概ね一定である。 炉筒12内の空間に熱風が供給されると、炉筒12の空間の内部の温度が上昇し、それに伴いケース11の主にケース本体部11A内の温度が上昇する。そのときのケース本体部11A内の温度は、温度計にて測定されている。これには限られないが、この実施形態では、ケース本体部11A内の温度の情報は、温度計から動力装置2A2に対して1分毎に送られる。 動力装置2A2は、ケース本体部11A内の温度が所定の温度である第2温度を超えたことを条件に動力を生じさせ、スクリューコンベア2A1を回転させ始める。この場合における動力装置2A2に動力を生じさせるための基準となる第2温度は、原料を加熱した場合においてタールの発生が抑制されるような温度か、それよりも高い温度とする。図5に示したように、原料の加熱温度が概ね650°C~700°Cよりも高い温度を保つのであれば、特に700°Cよりも高い温度を保つのであれば、タール及びチャーの発生が明らかに抑制されるので、この第2温度は、700°Cよりも高い温度から選択されるのが良い。とはいえ、第2温度をあまりにも高くすると原料の供給の開始(或いは再開)がなかなかなされないことになり、また、
ケース11等の耐熱性能にも限界があるので、第2温度は700°C~800°Cの間から選択するのがよい。
また、例えば第2温度が700°Cちょうどであれば、原料の供給によってケース本体部11A内の温度が700°C或いは場合によっては650°Cをすぐに下回るという事態が生じうるので、第2温度は多少の余裕をもって例えば750°C±10°Cとすることができ、これには限られないがこの実施形態では750°Cとされている。 なお、この実施形態における動力装置2A2は、後述するようにケース本体部11A内の温度が所定の温度である第1温度を下回ったことを条件に動力の発生を停止させる。この場合の第1温度は、第2温度と同じでも良いが、この実施形態では第2温度よりも低い温度とされている。
第1温度は、上述のように、原料の加熱温度が概ね650°C~700°Cよりも高い温度を保つのであれば、特に700°Cよりも高い温度を保つのであれば、タール及びチャーの発生が明らかに抑制されるので、650°Cから700°Cの間から選択するのが良い。
必ずしもこの限りではないが、この実施形態では、第1温度は、690°C~700°Cの範囲から選択されており、具体的にはこれには限られないがこの実施形態では、750°Cとされている。なお、スクリューコンベア2A1の回転の開始と停止を司る動力装置2A2の動力の発生と停止の処理は、この実施形態ではケース本体部11A内の温度の情報に基づいて自動的に行われる。 いずれにせよ、動力装置2A2は、ケース本体部11A内の温度が第2温度を超えた場合に動力を生じさせ始める。これによりスクリューコンベア2A1は回転を始める。供給管2Aの縦方向の部分には、図2に示したように供給タンク2から原料Mが落ちてきている。供給管2Aの曲折された部分に位置するスクリューコンベア2A1が回転を始めると、スクリューコンベア2A1によって原料Mが、ケース本体部11A内に供給され始める。」
ケ「【0030】
また、気化成分は、ケース本体部11Aの上述の孔11Eからケース本体部11Aの外へ出て、気化成分排出管1Aに入る。そして、
気化成分排出管1Aの途中にある湿式スクラバ5に至る。
湿式スクラバ5の中で、気化成分は、循環管5内を循環し湿式スクラバ5の上方からシャワー状に降り注ぐ液体と接触する。そもそも固体であるチャーは、これにより液体に移り、気化成分から分離される。また、湿式スクラバ5に至った状態では気体であるタールは、液体と接触し冷やされることにより粘度の高い液体となり、液体に移ることにより気化成分から分離される。 これにより気化成分から、チャー及びタールが除去される。
」
コ「【0031】
気化成分から分離されたチャー及びタールを含むことになった液体は、循環管5内を移動し、循環管5の途中に設けられた遠心分離器である除去装置6に至る。
ここで、
チャー及びタールと液体とは、遠心分離器である除去装置6内で、その比重の差に基づいて分離される
。
分離された液体は、循環管5に戻され再び循環管5の中を循環して湿式スクラバ5に再び至る。
他方、液体から分離されたチャー及びタールは、循環管5に戻されることなく除去装置6から外部へ排出され廃棄される。」
サ「【0032】
湿式スクラバ5でチャー及びタールを除かれた気化成分は、気化成分排出管1Aを介して気化成分貯留タンク4に至り、そこで貯留される。
気化成分貯留タンク4に貯留された気化成分は、適当なタイミングで接続管4Aによって発電機7に送られ発電に用いられる。発電機7で作られた電力は、熱分解システムの内外で適当に利用される。
」
シ「図1
56
99
0001436704000001.jpg
」
ス「図2
62
106
0001436704000002.jpg
」
(2)認定事項
ア 図1からは、熱分解装置1と湿式スクラバ5は気化成分排出管1Aで直接連結されていることが看取できる。
イ 段落【0007】及び【0026】の記載から、
ケース本体11Aの内部は、
原料の供給を制御することで、第1温度から第2温度の間で保たれており、第1温度は、650°C~700°Cの中から選択でき、第2温度は、700°C~800°Cの間から選択できると認められる。
ウ 段落【0022】の「ケース本体部11A内の温度を計測するための温度計が設けられている。温度計は、図示を省略するが、接続管1Cをその他端側から貫く棒状の支持棒1Dの先端に設けられている。」いるという記載と、図2の図示内容から、棒状の支持棒1Dの先端に位置する
温度計は、ケース本体部11A内の気体の温度、すなわち気化成分の温度を計測
しているものと解される。
エ 上記イ及びウから、熱分解装置1内の気化成分の温度は、下限が650°C~700°Cの中から選択でき、上限が700°C~800°Cの間から選択できると認める。
(3)引用発明
(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「草及び木を原料とする植物由来のバイオマスを乾燥させる供給タンク2と、
乾燥した前記バイオマスを熱分解装置1のケース本体部11Aの内部へ供給し、ケース本体部11Aの中で加熱され、熱分解して気化成分を生じさせる熱分解装置1と、
熱分解装置1内の気化成分の温度は、第1温度から第2温度の間で保たれており、第1温度が650°C~700°Cの中から選択される温度で、第2温度が700°C~800°Cの間から選択される温度であり、熱分解装置から排出されて間もない気化成分からタール成分を除去する湿式スクラバ5と、
湿式スクラバ5でチャー及びタールを除かれた気化成分を用いて発電を行う発電機7と、を備えており、
気化成分排出管1Aの途中に設けられた湿式スクラバ5の上部から湿式スクラバ5の内部にシャワー状に散布される水により、気化成分と水が接触し、気化成分に混入していたチャー及び湿式スクラバ5に至った状態では気体であるタールは水に移るので、それらが気化成分から分離される湿式スクラバ5を備え、
湿式スクラバ5は、気化成分排出管1Aによって熱分解装置1と直接連結されており、熱分解装置1から排出された気化成分が湿式スクラバに流れ込むように配置されており、
気化成分から分離されたチャー及びタールを含むことになった水は、循環管5A内を移動し、循環管5Aの途中に設けられた遠心分離器である除去装置6に至り、遠心分離器である除去装置6内で、チャー及びタールと水とは分離され、分離された水は、循環管5Aに戻され再び循環管5Aの中を循環して湿式スクラバ5に再び至り、
前記バイオマスは、草及び木を原料としており、
草及び木を原料とする前記バイオマスは、供給タンク2に設けた破砕機により、数mm~10数cm程度の大きさに破砕され、供給タンク2で乾燥され、熱分解装置1のケース本体部11中で加熱される、
発電を行える熱分解システム。」
(1)記載事項
ア「
43
141
0001436704000003.jpg
」
(訳:【0021】図1を参照すると、高効率バイオマスガス化燃料冷却・精製複合システムは、ベンチュリ管1と水洗浄塔2とを備えている。ベンチュリ管1と水洗浄塔2は垂直に積み重ねられ、相互に接続されている。水洗浄塔の出口7の下には、噴霧水中のタールや灰を沈殿させるためのスクレーパー式沈殿槽3が設置されている。スクレーパー式沈殿槽3は、水封9の高さを設定することで、水封9とガス空間8に分割される。水封9内の廃水は、沈殿後、循環ポンプを介して循環配管15に再流入する。循環配管15は、第1分岐16と第2分岐18とを有する。第1分岐16はベンチュリ管1に接続され、第2分岐18は水洗浄塔2に接続されている。水洗浄塔2には噴霧装置17が備えられている。水洗浄塔の出口7は、スクレーパー型沈殿槽のガス空間8と接続管10を介してサイクロン分離器の入口に接続されている。12が接続され、サイクロン分離器の下方に排水管14が設けられている。排水管14の出口は、スクレーパー型沈殿槽の水封9に挿入されている。)
イ「
24
136
0001436704000004.jpg
」
(訳:【0022】この精製システムは、ベンチュリ管1と水洗浄塔2が垂直に接続された垂直複合構造を採用している。バイオマス原ガスはまずベンチュリ管1を通過して洗浄冷却され、灰とタールの一部が除去される。次に、水洗浄塔2に入り、噴霧冷却によってさらに灰とタールが除去される。スクレーパー式沈殿槽のガス空間8で初期ガス水分離を行った後、サイクロン分離器4に入りさらにガス水分離を行い、最終的にガス利用装置に送られる。沈殿槽内のタールと灰分は、沈殿後、スクレーパーコンベア20によって槽外に排出される。)
ウ「
48
136
0001436704000005.jpg
」
(訳:【0023】本発明の具体的な動作プロセスは以下のとおりである。高温の粗バイオマスガスは、ベンチュリ管入口5からベンチュリ管1に入り、そこで第1分岐16において噴霧水と十分に混合・接触される。冷却され、灰とタールが除去された後、ベンチュリ管出口6から水洗浄塔2に入る。水洗浄塔2では、噴霧装置17からの噴霧水と再び十分に混合・接触され、灰とタールがさらに除去される。その後、水洗浄塔出口7からスクレーパー沈殿槽のガス空間8に入る。スクレーパー式沈殿槽3では、ガスと水が予備分離される。次に、接続管入口11に入り、垂直に配置された接続管10とサイクロン分離器入口12を通ってサイクロン分離器4に入る。サイクロン分離器4では、ガスと水がさらに分離される。分離された水は排水管14を通ってスクレーパー式沈殿槽の水封9に排出され、精製されたガスはサイクロン分離器出口13を通ってガス利用装置に入る。スクレーパー沈殿槽3内のタールと灰は沈殿した後、スクレーパーコンベアのタールと灰の排出出口19を通って槽から排出される。沈殿した循環水は循環配管15に入り、その後、ベンチュリ管1に接続された第1分岐管16と、水洗浄塔2に接続された第2分岐管18に入る。)
エ「図1
54
95
0001436704000006.jpg
」
(2)引用文献2に記載された技術事項
引用文献2には、図面と共に以下の事項(以下「引用文献2の記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「高効率バイオマスガス化燃料冷却・精製複合システムのスクレーパー式沈殿槽3及び往復ポンプを持つ循環配管15において、沈殿したタールと灰を取り除くためにスクレーパー式沈殿槽3の底に設けたスクレーパーコンベア20、排出出口19を設ける技術。」
「【0033】
原料供給装置110は、原料としてのバイオマスを噴流床ガス化炉13に供給する。なお、本実施形態におけるバイオマスとは、具体的には、例えば、農業系バイオマス(麦わら、サトウキビ、米糠、草木等)、林業系バイオマス(製紙廃棄物、製材廃材、除間伐材、薪炭林等)、畜産系バイオマス(家畜廃棄物)、水産系バイオマス(水産加工残滓)、廃棄物系バイオマス(生ゴミ、ゴミ固形化燃料(RDF:Refused Derived Fuel)、庭木、
建設廃材
、下水汚泥等)などを指す。」(下線は当審が付与した。)
「【0027】
(第1実施形態)
図1を用いて、本発明の第1実施形態に係るバイオマス発電システム10について説明する。
図1に示すように、バイオマス発電システム10は、バイオマス原料12が投入されて炭化処理される、炭化装置14を有している。ここに、バイオマス原料12とは、例えば、可燃性の草木、紙、
廃材
、間伐材、可燃性廃棄物等である。」(下線は当審が付与した。)
(1)対比
ア 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「草及び木を原料とする植物由来のバイオマス」及び「前記バイオマス」は前者の「木質バイオマス」に相当し、以下同様に、「供給タンク2」は「木質バイオマス乾燥手段」に、「気化成分」は「熱分解ガス」に、「熱分解装置1」は「熱分解手段」に、「タール」は「タール成分」に、「湿式スクラバ5」は「タール成分除去手段」及び「水スクラバ」に、「発電機7」は「発電手段」に、「循環管5A」は「水循環利用手段」に、「発電を行える熱分解システム」は「バイオマス発電システム」に、それぞれ相当する。
上記相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
イ 後者の「草及び木を原料とする植物由来のバイオマスを乾燥させる供給タンク2」は前者の「木質バイオマスを乾燥させる木質バイオマス乾燥手段」に相当する。
ウ 後者の「乾燥した前記バイオマスを熱分解装置1のケース本体部11Aの内部へ供給し、ケース本体部11Aの中で加熱され、熱分解して気化成分を生じさせる熱分解装置1」は、前者の「乾燥した木質バイオマスを加熱し熱分解ガスを排出する熱分解手段」に相当する。
エ 後者の「熱分解装置1内の気化成分の温度は、第1温度から第2温度の間で保たれており、第1温度が650°C~700°Cの中から選択される温度で、第2温度が700°C~800°Cの間から選択される温度であり、熱分解装置から排出されて間もない気化成分からタール成分を除去する湿式スクラバ5」と、前者の「熱分解手段から排出されて間もない熱分解ガスであって、650°Cから780°Cの熱分解ガスからタール成分を除去するタール成分除去手段」とは、「熱分解手段から排出されて間もない熱分解ガスからタール成分を除去するタール成分除去手段」において共通する。
オ 後者の「湿式スクラバ5でチャー及びタールを除かれた気化成分を用いて発電を行う発電機7と、を備えて」いることは、前者の「タール成分を除去した熱分解ガスを用いて発電を行う発電手段90とを備えて」いることに相当する。
カ 後者の「気化成分排出管1Aの途中に設けられた湿式スクラバ5の上部から湿式スクラバ5の内部にシャワー状に散布される水により、気化成分と水が接触し、気化成分に混入していたチャー及び湿式スクラバ5に至った状態では気体であるタールは水に移るので、それらが気化成分から分離される湿式スクラバ5を備え、」は、前者の「前記タール成分除去手段は親水性のタール成分を前記熱分解ガスに水を吹きかけて除去する水スクラバを備え、」に相当する。
キ 後者の「湿式スクラバ5は、気化成分排出管1Aによって熱分解装置1と直接連結されており、熱分解装置1から排出された気化成分が湿式スクラバに流れ込むように配置されており、」と、前者の「前記水スクラバは、前記熱分解手段から排出された熱分解ガスが発生後の温度をほぼ維持した状態で水スクラバに流れ込むよう配置されており、」とは、「水スクラバは、前記熱分解手段から排出された熱分解ガスが水スクラバに流れ込むよう配置されて」いることにおいて共通する。
ク 後者の「気化成分から分離されたチャー及びタールを含むことになった水は、循環管5A内を移動し、循環管5Aの途中に設けられた遠心分離器である除去装置6に至り、遠心分離器である除去装置6内で、チャー及びタールと水とは分離され、分離された水は、循環管5Aに戻され再び循環管5Aの中を循環して湿式スクラバ5に再び至」ることと、前者の「前記水スクラバで用いる水は沈殿したスラッジを取り除く沈殿スラッジ除去機構を備えた水循環利用手段によって循環利用され」ていることとは、「前記水スクラバで用いる水はスラッジを取り除くスラッジ除去機構を備えた水循環利用手段によって循環利用され」ていることにおいて共通する。
ケ 後者の「前記バイオマスは、草及び木を原料として」いることと、前者の「前記木質バイオマスは木材に由来するあらゆる資源(広葉樹・針葉樹、植物の根・葉・茎・花等のあらゆる部位、木造家屋を構成する柱・壁・天井といった部位を含む)を対象として」いることとは、「前記木質バイオマスは木材に由来する資源を対象にして」いることにおいて共通する。
コ 後者の「草及び木を原料とする前記バイオマスは、供給タンク2に設けた破砕機により、数mm~10数cm程度の大きさに破砕され、供給タンク2で乾燥され、熱分解装置1のケース本体部11中で加熱される」ことと、前者の「当該木質バイオマスは大きさと水分量を揃えることなくペレット状にすることなく前記加熱が為されること」とは、「当該木質バイオマスは大きさを揃えることなくペレット状にすることなく前記加熱が為されること」において共通する。
そうすると、両者は、
「木質バイオマスを乾燥させる木質バイオマス乾燥手段と、
乾燥した木質バイオマスを加熱し熱分解ガスを排出する熱分解手段と、
前記熱分解手段から排出された熱分解ガスからタール成分を除去するタール成分除去手段と、
タール成分を除去した熱分解ガスを用いて発電を行う発電手段とを備えており、
前記タール成分除去手段は親水性のタール成分を前記熱分解ガスに水を吹きかけて除去する水スクラバを備え、
前記水スクラバは、前記熱分解手段から排出された熱分解ガスが水スクラバに流れ込むよう配置されており、
前記水スクラバで用いる水はスラッジを取り除くスラッジ除去機構を備えた水循環利用手段によって循環利用され、
前記木質バイオマスは木材に由来する資源を対象としており、
当該木質バイオマスは大きさを揃えることなくペレット状にすることなく前記加熱が為される、
バイオマス発電システム。」
の点において一致し、以下の各点において相違する。
<相違点1>
本願発明では、水スクラバは、熱分解手段から排出された熱分解ガスが発生後の温度をほぼ維持した状態で流れ込むように配置されており、当該水スクラバにより650°Cから780°Cの熱分解ガスからタール成分が除去されるのに対して、引用発明では、湿式スクラバ5は気化成分排出管1Aにより熱分解装置1と直接連結されているものの、熱分解装置1から排出された気化成分が発生後の温度をほぼ維持した状態で湿式スクラバ5に流入しているかは不明であり、熱分解装置1内の気化成分の温度は、下限が650°C~700°Cの中から選択される温度で、上限が700°C~800°Cの間から選択される温度であるものの、湿式スクラバ5に流入してタール成分を除去する際の気化成分の温度については特定がない点。
<相違点2>
スラッジ除去機構が、本願発明では、「沈殿している」スラッジを取り除く「沈殿スラッジ除去機構」であるのに対して、引用発明では、遠心分離機構である除去装置6である点。
<相違点3>
対象とする前記木質バイオマスは木材に由来する資源が、本願発明では、木材に由来する「あらゆる」資源であるのに対して、引用発明では、草及び木からなる原料を対象としているものの、それ以上の特定はされていない点。
<相違点4>
加熱対象の木質バイオマスが、本願発明では、大きさと「水分量」を揃えることなくペレット状にすることないものであるのに対して、引用発明では、「供給タンク2に設けた破砕機により、数mm~10数cm程度の大きさに破砕され」たものである点。
(2)相違点の判断
<相違点1について>
本願発明において、熱分解手段で発生した熱分解ガスを水スクラバへ送り込む際に、「発生後の温度をほぼ維持した状態」とすることの技術的意義は、本願明細書の段落【0027】の記載を踏まえると、ガスの温度低下に伴い液化又は固化したタールがガス経路を閉塞することを防止するとともに、ガスが高温を維持した状態で水のシャワーが吹きかけられることにより、多くのタール成分を取り除くことにある、と解される。しかしながら、「発生後の温度をほぼ維持した状態」とするための具体的な構成については、特許請求の範囲や明細書及び図面にはなんら記載がないことから、「発生後の温度をほぼ維持した状態」とすることは、高温ガスの熱損失を防ぐ際の一般的な対策としてガス管路の長さや断熱性を調整するといった技術常識を踏まえて実現するものと解される。
また、本願発明においては、熱分解ガスが、発生後の温度をほぼ維持した状態で、水スクラバへ流入したときに650°Cから780°Cの温度を有することから、熱分解手段により熱分解ガスが発生したときの温度も概ね650°Cから780°Cと解するのが相当である。
一方、引用発明では、熱分解装置1内の気化成分の温度は、下限が650°C~700°Cの間で、上限が700°C~800°Cの間で、それぞれ自由に選択し得るものであるから、熱分解装置1内で気化成分が発生したときの温度を650°Cから780°Cの範囲に設定することは設計的事項である。
そして、引用文献1の段落【0023】の「熱分解装置1から出たばかりの気化成分は高温であり、それに含まれているタールも気体であるが、液体と接触することで気化成分の温度が下がることにより粘度の高い液体となる。」という記載から、引用発明においても、本願発明と同様に、湿式スクラバに流入するまで気化成分を高温で維持する必要があることが理解できる。
以上を踏まえると、引用発明においては熱分解装置1と湿式スクラバ5は気化成分排出管1Aで直接連結されているところ、管路内での温度低下に伴うタールの液化を防止するために、気化成分排出管1Aの長さや断熱性を適宜調整することにより、気化成分の発生後の温度、すなわち「650°Cから780°C」をほぼ維持した状態で650°Cから780°Cの気化成分が湿式スクラバ5に流れ込むようにして、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点2について>
上記2(2)の引用文献2の記載事項の「沈殿したタールと灰」は本願発明の「沈殿しているスラッジ」に相当し、以下同様に、「スクレーパー式沈殿槽3の底に設けたスクレーパーコンベア20、排出出口19」は「沈殿スラッジ除去機構」に、「スクレーパー式沈殿槽3及び往復ポンプを持つ循環配管15」は「水循環利用手段」に、それぞれ相当する。
そして、引用文献2の記載事項を本願発明に倣って整理すると、以下の技術(以下「引用文献2の記載技術」という。)が記載されている。
「高効率バイオマスガス化燃料冷却・精製複合システムの水循環利用手段において、沈殿したスラッジを取り除く沈殿スラッジ除去機構を設ける技術。」
そうすると、引用発明と上記引用文献2の記載技術は、バイオマスガスの浄化システムの水循環利用手段にスラッジ除去機構を設ける点で共通するから、引用発明の遠心分離機構である除去装置6に代えて、引用文献2の記載技術を適用することにより、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点3について>
引用発明でも木質バイオマスの対象を草(植物)及び木(広葉樹、針葉樹を含む)としている。
また、バイオマスとして草木と共に製材廃材や建設廃材等の廃材や廃棄物を対象とすることは、引用文献3の段落【0033】や引用文献4の段落【0027】に記載があるように周知技術に過ぎないから、引用発明において、該周知技術を参酌して、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が適宜選択し得る設計的事項である。
<相違点4について>
相違点4に係る本願発明の発明特定事項は、当審が通知した拒絶理由の<理由2>に示したように、「大きさと水分量を揃えることなく」という記載の修飾箇所や、加熱前に「木質バイオマスを乾燥させ」る点と「水分量を揃えることなく」する点とは整合性がとれず不明確であるが、少なくとも「大きさと水分量が揃ったペレット状の木質バイオマス」を用いないと解されるところ、引用発明の「バイオマスは、供給タンク2に設けた破砕機により、数mm~10数cm程度の大きさに破砕され」との構成は、本願発明と同様に、大きさと水分量が揃ったペレット状の木質バイオマスを用いていないことから、相違点4による相違は、実質的な相違点とはいえない。
そして、本願発明の作用効果について検討しても、引用発明、引用文献2の記載技術、及び、上記周知技術に基いて予測されるもの以上の格別のものがあるともいえない。
そうすると、本願発明は、引用発明、引用文献2の記載技術、及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(1)請求人の主張
請求人は、令和7年10月30日に提出した上申書において、上申書内に記載された
補正案
に基いて以下の主張をする。
「審判官殿は引用1の「供給タンク2」は本願の「木質バイオマス乾燥手段」に相当すると指摘しておられます。なるほど引用1には「原料の乾燥は供給装置2で行われても良いし、原料タンク2の前段で行われても構わない」との記載があります(引用1明細書[0020])。しかし、引用1には乾燥のための具体的な手段について記載がありません。
一方、補正後の請求項1に係る発明では、「木質バイオマス乾燥手段」は「木質バイオマスを乾燥させる木質バイオマス乾燥手段であって木質バイオマスを80°C~100°Cの温風下で数日間さらす木質バイオマス乾燥手段」です。 請求項1に係る発明において上記のような乾燥手段を設ける理由は次の通りです。 請求項1に係る発明においては、木質バイオマスは、木材に由来する資源(広葉樹・針葉樹、植物の根・葉・茎・花等のあらゆる部位、木造家屋を構成する柱・壁・天井といった部位など)を対象としており、当該木質バイオマスは大きさと水分量の揃ったペレット状にすることなく乾燥が為されます。このため、80°C~100°Cの温度の風を、数日間あて続けることにより、木質バイオマスを乾燥させてカサカサの状態にすることができます(本願明細書[0024])。係る発明特定事項を備えることにより得られる効果は、本願明細書[0012]に記載の通りです。すなわち、本願発明では木質バイオマスをサイロに投入する際には、木質バイオマスどうしが互いに絡み合って搬送の妨げになることを防ぐための粉砕は行いますが、大きさを揃えることは不要です。また、大きさと水分量の揃ったペレットにする必要はありません。大きさと水分量の揃ったペレットにすることによりタールの発生を減じることができますが、本願発明では費用と労力のかかるペレット化をする必要がありません。熱分解炉から排出されて間もない熱分解ガスであって650°C~780°C程度の熱分解ガスからタールを除去することにより、タール成分を有効に除去できるためです。このため、本願発明が対象とする木質バイオマスは、水分量や大きさが区々であってもタールを取り除くことができ、木材に由来するあらゆる資源を対象とすることができます。また、災害時に大量に生じる倒壊家屋等を対象にすることができます(明細書[0012])。従って、請求項1にかかる発明は各引用発明との関係で、進歩性の特許要件を満たすと思料します。」
(2)請求人の主張の検討
請求人の主張は要するに、木質バイオマス乾燥手段において、乾燥条件を具体的に特定する補正をすること(木質バイオマスを80°C~100°Cの温風下で数日間さらすこと)で、進歩性に関する拒絶理由を回避できるというものである。
しかしながら、木質バイオマス乾燥手段においてそのような条件で乾燥させることは、周知技術である(例えば、特開平9-229555号公報の請求項1を参照)。
したがって、仮に上申書に記載された補正案のとおり補正がされても、進歩性に関する拒絶理由は回避することはできず、請求人の主張は採用できない。
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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