結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024020890 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
この出願(以下「本願」という。)は、2015年(平成27年)12月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年12月11日、2015年9月9日、いずれも(CN)中国)を国際出願日とする特許出願である特願2017-530277号の一部を、令和2年10月15日に新たな特許出願である特願2020-173951号とし、さらにその一部を令和4年9月26に新たな特許出願としたものであって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和4年10月20日 手続補正書の提出
令和5年 9月15日 手続補正書の提出
同年 9月11日付(9月19日発送) 拒絶理由通知書
同年11月 8日 意見書の提出
令和6年 2月 2日付 拒絶理由通知書
同年 5月13日 意見書及び手続補正書の提出
同年 8月23日付 拒絶査定
同年12月26日 手続補正書及び審判請求書の提出
令和7年 3月24日付 前置報告書
同年 6月20日 上申書の提出
[補正の却下の決定の結論]
令和6年12月26日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正前(令和6年5月13日提出の手続補正書)の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変サイズを有する患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)の治療において使用するための、抗VEGF剤を含む組成物であって、wAMD治療スキームにしたがって前記患者が治療され、かつ
前記wAMD治療スキームが、アフリベルセプトを含む抗VEGF治療を含む、組成物。
【請求項2】
最初の抗VEGF治療が、前記治療におけるそれぞれ4週間ごとの抗VEGF治療のための医薬組成物の少なくとも3回の投与を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
視力および/または網膜形態が安定化するまで患者を前記抗VEGF治療で治療し、続いて治療を中止し、視力および/または網膜形態の悪化時に治療を再開する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
治療および延長レジメンにしたがう前記抗VEGF治療で患者が治療される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記wAMD治療スキームにおいて抗VEGF療法の3回の投与が4週間ごとに投与され、続いて隔月または4週間ごとに投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
アフリベルセプトが硝子体内注射により投与される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
抗VEGF剤としてアフリベルセプトを含む、活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満であるwAMD患者の治療における使用のための医薬組成物。」
(2)本件補正後(令和6年12月26日提出の手続補正書)の特許請求の範囲の記載
上記(1)の本件補正前の特許請求の範囲の記載は、以下のとおり、本件補正後の特許請求の範囲の記載に補正された。なお、下線は補正箇所を示す。
「【請求項1】
全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変サイズを有する患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)の治療において使用するための、抗VEGF剤を含む組成物であって、wAMD治療スキームにしたがって前記患者が治療され、かつ
前記wAMD治療スキームが、アフリベルセプトを含む抗VEGF治療を含
み、
活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である
、組成物。
【請求項2】
最初の抗VEGF治療が、前記治療におけるそれぞれ4週間ごとの抗VEGF治療のための医薬組成物の少なくとも3回の投与を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
視力および/または網膜形態が安定化するまで患者を前記抗VEGF治療で治療し、続いて治療を中止し、視力および/または網膜形態の悪化時に治療を再開する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
治療および延長レジメンにしたがう前記抗VEGF治療で患者が治療される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記wAMD治療スキームにおいて抗VEGF療法の3回の投与が4週間ごとに投与され、続いて隔月または4週間ごとに投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
アフリベルセプトが硝子体内注射により投与される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
抗VEGF剤としてアフリベルセプトを含む、活動性CNV病変のサイズが全病変サイズの50%未満であるwAMD患者の治療における使用のための
医薬組成物であって、
活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である、
医薬組成物。」
本件補正は、補正前の請求項1において、「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」という記載を追加する補正事項(以下「本件補正事項」ということがある。)を含むものである。
上記2の補正事項によって、補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明1」という。)における「全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変サイズを有する患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)」が、どのような「wAMD」に特定されたかについて検討する。
(1)発明の詳細な説明の記載
補正発明1は、「全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変サイズを有する患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)」が、「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」ことを発明特定事項として含むものであるが、当該特定事項における「活動性CNV病変」、「全病変」及び「クラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変」が、それぞれがどのような病変であり、補正発明1ではどのような「wAMD」を対象とするのかが、請求項1の記載のみからでは直ちに明らかとはいえないため、本願明細書の発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)を参照すると、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を意味する。
「【技術分野】
【0001】
加齢黄斑変性(AMD)は
、通常、高齢者に影響を及ぼし、網膜の損傷のために視野の中心(黄斑)の視力を失う病状である。それは
「乾燥」および「湿潤」形態で生じる
。乾燥形態では、ドルーゼンと呼ばれる細胞破片が網膜と脈絡膜との間に蓄積し、網膜が剥離することがある。
より重篤な湿潤形態(wAMD)では、脈絡膜新生血管(CNV)とも呼ばれる網膜の背後の脈絡膜から血管が成長する
。CNVの結果、網膜も剥離することがある。
【背景技術】
【0002】
網膜における異常な血管の増殖は、血管内皮増殖因子(VEGF)によって刺激される。抗血管新生剤または抗VEGF剤は、異常な血管の退行を引き起こし、硝子体内投与されたときに視力を改善し得る。
いくつかの抗VEGF薬は眼内使用が認可されており
、以下の特許出願に記載されている:
【0003】
アフリベルセプト(Eylea(登録商標)
) WO 2000/75319
ベバシズマブ(Avastin(登録商標)) WO 9845331
ラニビズマブ(Lucentis(登録商標)) WO 9845331
ペガプタニブ(Macugen(登録商標)) WO 9818480 KH-902/conbercept(Langmu(登録商標)) WO 2007112675
・・・
【0005】
抗VEGF剤を用いて実施された臨床試験
では、
全病変の少なくとも50%を占めなければならないクラシック主体型活動性中心窩下CNV領域(active pred ominantly classic,subfoveal CNVarea)を有する患者を含める必要があった
[Rosenfeldら、N Engl J Med 2006,355:1419-1431;Brownら、N Engl J Med 2006,355:1432-1444;Heierら、
Ophthalmology 2012,119:2537-2548
;Regilloら、Am J Ophthalmol 2008,145:239-248]。したがって、
全病変の50%未満を占めるクラシック主体型活動性中心窩下CNV領域を有する眼の、抗VEGF療法に対する反応に関する情報は不足している
。
・・・
【0009】
本発明によれば、次の
wAMDの2つのサブタイプが存在する:(I)小さい活動性CNV病変-wAMDのタイプ、または(II)活動性主体型(predominantly a ctive)CNV病変-wAMDのタイプ
。
病変の位置は、中心窩に影響を及ぼす中心窩下または傍中心窩であり得る
。
病変のタイプは、クラシック主体、最小限のクラシックまたはオカルトを含むすべてのサブタイプであり得る
。
【0010】
2つのタイプのwAMDの用語は暫定的(preliminary)である。「
小さい活動性CNV病変-wAMDのタイプ」の代替用語は以下を含んでもよい
:
1)「
sCNV wAMD
」
2)「小さい活動性CNVを有するwAMD」
3)「活動性CNVが減少したwAMD」
4)「CNVがより少ないwAMD」
5)「非CNV関連のwAMD」
6)「wAMDタイプ1」
7)「wAMDタイプ2」
8)「wAMDタイプX」(Xは任意の数字、文字または両方の組み合わせ)。
・・・
【0012】
「
活動性主体型CNV病変-wAMDのタイプ」の代替用語は以下を含んでもよい
:
1)「
pCNV wAMD
」
2)「活動性CNVを主体とするwAMD」
3)「活動性CNVを有するwAMD」
4)「大きな活動性CNVを有するwAMD」
5)「CNV関連wAMD」
6)「wAMDタイプ1」
7)「wAMDタイプ2」
8)「wAMDタイプX」(Xは任意の数字、文字または両方の組み合わせ)。
・・・
【0015】
活動性CNV病変の存在およびそれによるwAMDの診断は、通常、蛍光血管造影(FA)によって確認される
が、
2つのwAMDタイプは、以下の通り区別することができる
:
1)
「sCNV wAMD」は、全病変サイズの50%未満を占める活動性CNV病変を特徴とする
2)
「pCNV wAMD」は、全病変サイズの少なくとも50%を占める活動性CNV病変を特徴とする
。
【0016】
病変の位置は、中心窩に影響を及ぼす中心窩下または傍中心窩であり得る
。
病変のタイプは、クラシック主体、最小限のクラシックまたはオカルトを含むすべてのサブタイプであり得る
。
【0017】
活動性CNV病変のサイズならびに全病変サイズは、MPSプロトコル[Macular Photocoagulation Study Group,Arch Ophthalmol 1991,109:1242-125 7]に記載の通り、蛍光血管造影(FA)を用いて測定される
。」
(2)本願優先日当時及び出願時における技術常識
ア 参考資料1:EYENET MAGAZINE,2017,p.61-62;https://www.aao.org/eyenet/article/how-to-use-the-icd-10-codes-for-amd
審判請求人が、審判請求書に添付して提出した本願出願後に発行された参考資料1は、本願優先日及び出願日当時においても広く一般的に受け入れられていたAMDの国際的分類法を記述する標準テキストであって、以下の事項が記載されている。なお、参考資料1は外国語の文献であるため、合議体による翻訳文で示す。また、下線は合議体が付したものであり、以下、他の文献についても同様である。
(参考1-1) 62頁中央欄12行~右欄10行
「
湿性加齢黄斑変性(AMD)の病期分類
に関するコード
湿性AMDのコード(H35.32xx)では、第6文字で左右別を、第7文字で病期を以下のように示す:
H35.32x1:
活動性脈絡膜新生血管(CNV)
を示す。これは以下のいずれかを指す:(1)
患者の視力障害に寄与する疾患活動性(すなわち網膜内液[IRF]又は網膜下液[SRF]の存在)
を示す加齢黄斑変性(AMD)関連CNV病変、又は(2)定期的な抗血管内皮増殖因子(VEGF)注射下で
疾患活動性(すなわちIRF/SRF)を示さない
が、
疾患活動性の再発(すなわちIRF/SRF)を示す
AMD関連CNV病変(IRF又はSRFなし)を示すもの。ただし、適切な間隔で抗VEGF療法が行われない場合に
疾患活動性(すなわちIRF/SRF)が再発する状態
を指す。
H35.32x2
非活動性CNV
:加齢黄斑変性(AMD)に関連するCNV病変であり、患者の視力障害に寄与する
疾患活動性を示さなくなった(すなわちIRF/SRFの欠如)
状態。
H35.32x3:
非活動性瘢痕
。加齢黄斑変性(AMD)に関連する脈絡膜新生血管(CNV)病変が円板状瘢痕化したもので、視力障害を引き起こす。CNV病変は
疾患活動性(すなわちIRF/SRF)を示す場合と示さない場合がある
が、基礎にある円板状瘢痕を考慮すると視力上無意味とみなされる。」
イ 参考資料2:Review of Ophthalmology, 2008, https://www.reviewofo phthalmology.com/article/fluorescein-angiography-in-neovascular-amd
審判請求人が、審判請求書に添付した提出した本願優先日前に発行された参考資料2は、「新生血管AMDにおける蛍光血管造影病変の組成と特徴の詳細におけるFAの役割の詳細な考察」と題する学術文献であって、以下の事項が記載されている。
(参考2-1) 1/15頁本文1~19行
「
蛍光血管造影は、脈絡膜新生血管病変とその関連病変からなる新生血管複合体の存在、位置、大きさを同定するための強力な画像診断法である
。FAは有用な診断法であると同時に、他では得られない病変形態データを表示する重要な臨床研究ツールでもある。
AMDの多くの臨床試験は、適格性と治療エンドポイントの両方においてFAの特徴付けに依存している
。FAによって決定される病変形態は、いくつかの治療法に対する治療反応性だけでなく、自然な病歴の転帰にも影響する。黄斑光凝固研究における治療プロトコルは血管造影所見に基づいており、レーザー治療の明らかな効果は中心窩外型クラシックCNV病変にのみ認められた
1
。Verteporfinを用いた光線力学的治療の臨床試験では、クラシック病変に対して最も有益であるという治療効果の乖離が示された
2
。病変の外観によるこの治療効果の差の認識は、その後、
FAの解釈に基づく患者の組み入れと除外の指定によって、新生血管AMDの多くの試験に織り込まれた
。多くの臨床試験において、適格性は臨床試験責任医師によって決定されるため、計算されたサンプルサイズで治療効果を検出 するために十分標準化された患者集団を登録するためには、FAに関する臨床試験責任医師の解釈が重要となる。あまりにも多くの不適格な眼が登録されると、試験で予測されるイベント発生率(視覚と形態学的アウトカムの両方に関して)に歪みが生じ、試験が統計的に主要エンドポイントの達成を逃す可能性がある。したがって、病変の構成とCNVの血管造影サブタイプの同定に特に言及した
AMDにおけるFAの標準化された解釈は、臨床治療と臨床研究の両方にとって重要である
。
この論文に記載されたガイドラインは、蛍光血管造影を評価するためのMPS
及びETDRS
プロトコル
3
から適応されたものであり
、ウィスコンシン州マディソンにあるUW Fundus Photograph Reading Centerで臨床試験に使用されている。」
(参考2-2) 5/15頁2~3段落
「評価手順
血管新生AMDにおけるFAの評価
には、様々な段階の画像ペアを並べて比較することが必要である。正確な解釈のためには、良好な立体視が可能な高画質画像が不可欠である。評価手順は以下のステップで行う:
1. CNVの評価:
血管造影サブタイプ
。
2. 新生血管複合体を構成する非CNV病変の評価。
3. 重要な測定:
CNV総面積、病変総面積、漏出面積
。
4. 新生血管病変複合体の一部とみなされない異常の評価。
CNVの評価
CNVは脈絡膜からBruch膜の外側の断裂を介した新生血管組織の浸潤である。FA上でのCNVの同定は、血管造影の様々な段階における漏出パターンに基づいて行われる。例えば、図2に示したシリーズでは、注入前、赤なし、40秒フレーム、2分フレーム、10分フレームである。漏出が始まる最も早いフレームがCNV病変を決定する。
漏れの出現時間と漏れの強さに基づいて、CNVはクラシックとオカルトの2つの主要なカテゴリーに分けられる
。
それぞれのCNVのタイプは、存在、黄斑の中心への近接性、関与する領域(適切なグリッド又はデジタル平板測定ツールを使用して推定)について評価される
。漏出は時間とともに増加し、その強さはサブタイプによって異なる。漏れ の面積は常に後期に評価される。」
(参考2-3) 9/15頁1段落
「
CNVの血管造影上のサブタイプ
CNVを合併した眼では、3つの血管造影サブタイプが同定される:
1.
クラシック(classic)サブタイプ
(図2参照)は、
全病変面積の50%以上がクラシック成分である
。
2.
最小限のクラシック(Minimally classic)
は、
全病変面積の1~50%(図6参照)がクラシックサブタイプである
。
3.
クラシックを含まないオカルト(occult)
は、
クラシック成分を含まない
(図4参照)。」
(参考2-4) 13/15頁
「
FAにおける重要な測定項目
新生血管性AMDの臨床試験で使用されるFA由来の主な有効性測定項目は3つある:
病変総面積、CNV総面積、漏出面積
である。臨床試験では適格基準として病変総面積の範囲を指定する場合がある。病変総面積、CNV総面積、漏出面積の時間経過に伴う変化は、臨床試験における重要な形態学的エンドポイントである。
・
病変総面積は、CNV総面積と非CNV病変構成要素各部の面積の合計である
。
CNV総面積は
CNVの境界を定義して算出され、
CNVが最初に現れる画像から測定される
。
クラシック病変ではこれは早期段階に、オカルト病変では早期~中期段階に相当する
。病変の最大線形寸法(GLD)は総病変面積ではなく総CNV面積から導出される。
・蛍光漏出領域はCNVの主要な特徴であるため、その発生の検出と血管造影の各段階における経過の評価が重要である。
・漏出の総面積(複数のCNVがある場合は全てを合算)は、血管造影の後期フレームから測定する。網膜色素上皮(RPE)、CNV、その他の構造物の蛍光染色は、強度が変化しても輪郭の鮮明さを失わない過蛍光を示す。軽度の漏出と染色の区別は主観的要素が強く、臨床医によって大きく異なる場合がある。漏出面積は必ずしも病変全体の面積やCNVの総面積と一致しない。
非活動性の線維化病変では染色は認められるが漏出は少なく
、漏出面積が病変全体の面積より大幅に小さくなる。逆に、
進行性のクラシックCNV病変では、漏出面積が病変の境界を超えて拡大し
、病変全体の面積よりも大きな測定値を示すことがある。」
(参考2-5) 14/15頁2段落
「要約すると、血管造影評価は、新生血管AMDの臨床試験において、適格性を決定し、患者を追跡するために重要である。新生血管複合体は、FA上、CNVと非CNV成分に区別できる。
クラシックCNV病変は早期に明瞭に検出され、強い漏出が見られる
が、
オカルトCNV病変は初期~中期に、強度の低い漏出が見られ、不明瞭に検出される
。CNV以外の成分としては、ブロック蛍光 の上昇、濃い血液、漿液性PEDがあり、これらはすべてCNVに連続している。
CNVの総面積とCNV以外の病変成分の面積を合計すると、総病変面積となる
。」
ウ 参考文献3:白神史雄ら編「打倒! 加齢黄斑変性」, 2005.11.10, p. 36-45(株式会社メジカルビュー社)
当審において新たに引用する、本願優先日当時の技術常識を示す参考文献3(本願を分割した親出願(特願2020-173951号)の審査経過において、令和4年10月25日受理の刊行物等提出書に添付して提出された刊行物4)には以下の事項が記載されている。
(参考3-1) 36頁 本文、2段落~37頁最終行
「戦略
(1)(原文は1の○囲い文字。以下同様。)AMDを治療する場合,まず
FAでCNVの位置を確認
しよう。
CNVが中心窩下にあるかいなかで,治療手段が違ってくる
からである。
(2)CNVの位置が決まったら,FAによってどのように造影されるかをつぶさに観察しよう。
classic CNVは臨床的に進行が急速で視力が急激に低下しやすく,occult CNVは進行が緩慢でおとなしいことが多いので,治療適応が変わってくる
のだ。
(3)CNVの基本的なFA所見がつかめたら,今度は
classic CNVが「病変」内に占める割合
を考えてみよう。欧米では,
この病変タイプ
によってPDT(合議体注:「光線力学的療法」の略。)の有効性が異なるとされている。どれくらい治療が効きそうなタイプであるかを治療前に見分けておくのだ。
(4)最後に,本当に通常のAMDであるかどうかを確認しておこう。AMDの特殊病型に分類されるポリープ状脈絡膜血管症(polypoidal choroidal vasculopathy;PCV)や網膜内血管腫状増殖(retinal angiomatous proliferation; RAP)では治療方針と有効性が違ってくるのだ。
ヒトの中心窩には網膜毛細血管のない無血管野がある。
CNVの位置は中心窩無血管野の幾何学的中心からCNVの端までの距離によって3種類に分類される
1,2,3)
。
中心窩外CNV(extrafoveal CNV)
はその距離が200μm以上あり中心窩から離れているもの,
傍中心窩CNV(juxtafoveal CNV)
は1~199μmであり,中心窩にきわめて近いが中心窩下には達しないもの,そして0μm(中心窩のど真ん中)の
中心窩下CNV(subfoveal CNV)である
【図1】。・・・現在のAMDの基本的な治療方針は,中心窩外なら通常のレーザー光凝固(熱凝固),中心窩下ならPDT,傍中心窩なら進行の具合によってそのどちらかが考慮されるのだ。」
(参考3-2) 40頁1行~41頁7行
「CNVの位置は決まった。さあ次は
FAによってCNVの造影態度を分類してみよう
。この分類はCNVがどのレベルにあるか,つまり網膜色素上皮の上にあるか下にあるかを同時に読み取る,とても重要な分類だ。
classic CNVは網膜色素上皮の上(網膜下)に発育したCNV(Gass分類での2型CNV)とほぼ等しく,occult CNVは網膜色素上皮の下に発育したCNV(Gass分類での1型CNV)とほぼ等しい
と考えてよい。以下にclassic, occultの定義を述べるが,
この定義は米国の黄斑光凝固スタディ(MPS)によって決められたものである
1)
。注意しなければならないのは,この
classic, occultという呼び名はあくまでFAの所見上の分類
であるということだ。つまり先に述べたCNVと網膜色素上皮との位置関係については例外があり,例えば
classic CNVの所見を示す例のなかに,実は網膜色素上皮下の病変であるPCVが混じっていても一向にかまわない
のだ。
◆classic CNV
classic CNVはFAで
、
(1)造影早期から境界鮮明で均一な強い過蛍光を示す
(2)
造影早期から旺盛な蛍光漏出が始まる
(3)造影中期から後期にかけて進行性の旺盛な蛍光漏出がみられ、
漏出した蛍光色素はしばしば網膜下あるいは網膜内に拡散して過蛍光が拡大する
といういかにも活きのよい造影所見だ【図3】。この造影所見では、
網膜下にCNVが露出
していて、そこから網膜下腔というフリースペースに自由に造影剤が漏出するイメージを描いてほしい。classic CNVでは、ほかの造影所見として、
(4)CNV周囲に低蛍光輪(dark rim)が見られる【図4】
(5)新生血管の編目模様が直接造影されることがあるが,AMDでは必ずしもみられなくてもよい【図5】
などの所見がみられる。通常、
classic CNVは活動性が高く、急速に拡大しやすく,視細胞を直接傷害して視力低下を進行させやすい
という性質をもつので治療を急がなければならない。
◆ occlut CNV
一方
occult CNVはFAで
,
(1)
造影早期にはCNVの存在は不明瞭で強い過蛍光はみられない
(逆に低蛍光を示すこともある)
(2)
造影後1~2分,あるいはもっと遅い時期に顆粒状または点刻状の過蛍光が集合した領域がみられる
ようになる
(3)さらに時間が経過して造影後期になると,顆粒状の過蛍光が増強して滲むような緩慢な蛍光露出(oozingといわれる)や強い組織染がみられる
(4)過蛍光の境界は鮮明であることも不鮮明であることもある
などの特徴を示す。特に,
蛍光漏出所見があるかどうかは,少なくとも造影10分程度まで経過した後期像を観察したうえで判定を下す必要がある
。このようなoccult CNVの造影態度は,CNVが障害された網膜色素上皮の下にあり,その障害された網膜色素上皮を通してCNVからの漏出が徐々に起こるイメージを描いてほしい。・・・
occult CNVは網膜色素上皮下にあるため,一般に拡大はゆっくりで,病状の進行もゆっくりであることが多い
ので,じっくりと病状を見きわめよう。
以上のようなclassic CNV,occult CNVのFA所見が1つの病変内に混在してみられるものは混合型CNVと呼ばれる【図8】。混合型CNVには次に示すような病変タイプ分類が行われる。」
(参考3-3) 43頁1~19行
「
病変タイプ分類
とは,最近よく耳にするようになった
predominantlyやminimallyなどという分類
である。この分類は,
欧米のPDTのガイドラインのなかに定められた分類
2,3)
で,
「病変」内にclassic CNVが何%であるかで病変タイプが決まる
。
classic CNVが病変の50%以上のものはpredominantly classic CNV,1~49%のものはminimally classic CNV,まったく認められないものはoccult with no classic CNVとよんでいる
【図9】。ただし,ここでいう「病変」という言葉にも定義があり十分な注意を要する。なぜならPDTではCNVを確実に閉塞に導くために,CNVを含む可能性のある構成要素すべてを含んで「病変」と定義しているためだ。つまり
「病変」には,(1)classic CNV,(2)occult CNVのほかに,(3)出血,(4)漿液性網膜色素上皮剥離,(5)色素沈着,線維組織,瘢痕などの蛍光ブロックをきたすもの,のすべてを含むと規定されている
【図10】。FA上,このようなCNV以外の構成要素は出血,色素沈着,瘢痕は蛍光ブロックや脈絡膜血管萎縮による低蛍光,漿液性網膜色素上皮剥離は境界鮮明,類円形で均一な過蛍光,線維組織は組織染によって過蛍光を示すので,それらすべてをしっかり読み込んで,そのなかでのclassic CNVの存在割合を判定してほしい。・・・
ちなみに欧米では,PDTの効果はpredominantly classic CNVに最も高く,次がoccult with no classic CNV,最も効きにくいのがminimally classic CNVという評価が下されている。・・・」
エ 湿潤加齢黄斑変性(以下「wAMD」ともいう。)に関する技術常識
前記ア~ウの記載事項に基づけば、本願優先日当時及び出願時において、wAMDにおける脈絡膜血管新生(以下「CNV」ともいう。)の分類に関し、以下の技術常識が存在していたものといえる。
(ア) wAMDには、患者の視力障害に寄与する疾患活動性(網膜内液[IRF]又は網膜下液[SRF]の存在)によって、漏出(IRF/SRF)が存在する「活動性CNV」の病期と、漏出のない「非活動性CNV」の病期がある(参考1-1、参考2-4)。「活動性CNV」の病期には、蛍光血管造影(以下「FA」という。)により、後述する「クラシック」又は「オカルト」に分類されるCNV病変が観察される(後記(エ)及び(オ))。
(イ) wAMDの診断では、CNV病変とその他の病変(出血、漿液性網膜色素上皮剥離、色素沈着、線維組織、瘢痕など)の存在、位置、大きさを同定するためにFAが用いられ、臨床研究ではFAの標準化された解釈に基づき、病変の構成とCNVの血管造影サブタイプを同定する方法が、MPSプロトコルで定められていた(参考2-1、参考3-2、参考3-3)。
(ウ) CNV病変の「位置」については、中心窩無血管野の幾何学的中心からCNV病変の端までの距離によって、中心窩外CNV(extrafoveal CNV)、傍中心窩CNV(juxtafoveal CNV)及び中心窩下CNV(subfoveal CNV)の3つに分類される(参考2-3、参考3-1)。
(エ) CNV病変の「血管造影サブタイプ」については、血管造影における漏れの出現時間と漏れの強さに基づいて分類され、造影早期から境界鮮明で、旺盛な蛍光漏出が見られる、活動性の高い「クラシック」と、造影早期には不明瞭で、造影後期に緩慢な蛍光漏出が見られる「オカルト」の2つのカテゴリーに分けられる。
さらに、「クラシックCNV病変」が全病変面積の何%であるかによって「病変タイプ」が分類され、50%以上のものは「クラシックサブタイプ(predominantly classic)」、1~49%のものは「最小限のクラシック(minimally classic)」、まったく認められないものは「オカルト(occult with no classic)」と呼ばれる(参考2-3~参考2-5、参考3-2、参考3-3)。
(オ) クラシックCNVは網膜色素上皮の上(網膜下)に発育したCNV(Gass 分類での2型CNV)とほぼ等しく、オカルトCNVは網膜色素上皮の下に発育したCNV(Gass分類での1型CNV)とほぼ等しいが、クラシック及びオカルトという呼び名はFAの所見上の分類であって、クラシックCNVの所見を示すなかに網膜色素上皮下の病変が混じることがある(参考3-2)。
(3)判断
ア 前記(1)の発明の詳細な説明を参照すると、補正発明1における「活動性CNV病変サイズ」及び「全病変サイズ」とは、「MPSプロトコルに従ったFAを用いて測定される」CNV病変及び全病変のサイズであること(【0017】)及びwAMDは「(I)小さい活動性CNV病変」と「(II)活動性主体型(predominantly active)CNV病変」の2つのサブタイプのwAMDに分類されること(【0009】)が説明されている。
ここで、AMDの「病期」は、漏出(網膜内液[IRF]又は網膜下液[SRF])の有無により、「活動性CNV」と「非活動性CNV」に分類されるが(前記(2)エ(ア))、「MPSプロトコルに従ったFAを用いて分類される」CNV病変の「血管造影サブタイプ」は、蛍光の漏れの出現時間と漏れの強さに基づいて、造影早期から境界鮮明で、
旺盛な蛍光漏出が見られる、活動性の高い
「クラシック」と、造影早期には不明瞭で、造影後期に
緩慢な蛍光漏出
が見られる「オカルト」の2つのカテゴリーに分類され、そのうちの「クラシックCNV病変」が全病変面積の何%であるかによって「病変タイプ」を分類するという本願出願時の技術常識(前記(2)エ(エ))を考慮すれば、補正発明1の「活動性CNV病変」における「活動性」は、AMDの病期分類における「疾患活動性」、すなわち「漏出(網膜内液[IRF]又は網膜下液[SRF])がある」ことを意味するものではなく、FAにおいて「旺盛な蛍光漏出」が見られ、「活動性が高い」ことを意味するものといえる。
したがって、補正発明1における「活動性CNV病変」は、wAMD技術分野において通常「血管造影サブタイプ」の「クラシック」と呼ばれるCNV病変に相当するものと解される。
イ また、発明の詳細な説明において、「病変のタイプは、クラシック主体、最小限のクラシックまたはオカルトを含むすべてのサブタイプであり得る」(【0009】、【0016】)こと、「小さい活動性CNV病変-wAMDのタイプ」の代替用語に含まれるとして記載される「sCNV wAMD」は、「全病変サイズの50%未満を占める活動性CNV病変を特徴とする」(【0010】、【0015】)ことが説明され、「活動性主体型CNV病変-wAMDのタイプ」の代替用語に含まれるとして記載される「pCNV wAMD」は、「全病変サイズの少なくとも50%を占める活動性CNV病変を特徴とする」(【0012】、【0015】)と説明されている一方で、wAMD技術分野において、「病変タイプ」は、クラシックCNV病変が全病変面積の50%以上のものはクラシックサブタイプ(predominantly classic)、1~49%のものは最小限のクラシック(minimally classic)、まったく認められないものはオカルト(occult with no classic)に分類されるという本願出願時の技術常識(前記(2)エ(エ))を考慮すれば、発明の詳細な説明における「小さい活動性CNV病変-wAMDのタイプ」及び「sCNV wAMD」とは、wAMD技術分野において、通常「最小限のクラシック(minimally classic)」及び「オカルト(occult with no classic)」と呼ばれる病変タイプを含むものに相当し、発明の詳細な説明における「活動性主体型CNV病変-wAMDのタイプ」及び「pCNV wAMD」とは、wAMD技術分野において、通常「クラシックサブタイプ(predominantly classic)」と呼ばれる病変タイプに相当するものと解される。
ウ 以上を踏まえると、補正発明1の「全病変サイズの50%未満の
活動性CNV病変
サイズを有する患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)」における「活動性CNV病変」は、通常「血管造影サブタイプ」の「クラシック」と呼ばれる「CNV病変」を意味し、補正発明1で特定する「全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変サイズを有する患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)」とは、発明の詳細な説明に「小さい活動性CNV病変-wAMDのタイプ」又は「sCNV wAMD」と説明されるwAMDであって、wAMDの技術分野において、通常「最小限のクラシック(minimally classic)」及び「オカルト(occult with no classic)」と呼ばれる病変タイプのwAMDを含むものを特定するものといえる。
エ 次に、補正発明1における「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」との記載についてみると、まず、当該記載に含まれる「クラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変」という用語は、文言上「クラシック主体型」の「活動性」の「中心窩下」にある「CNV病変」であるものと字義どおり理解し得る。
そして、上記記載における「活動性」については、後の「CNV病変」を修飾して「活動性CNV病変」であることを特定するものであり、これは、上記ウで説示したとおり、通常「血管造影サブタイプ」で「クラシック」と呼ばれるCNV病変であることを特定するものと理解し得る。
また、上記記載における「中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む」及び「中心窩下」については、「活動性CNV病変」の存在する「位置」を特定する記載であると理解される。
さらに、上記記載における「AMDに続発する」については、発明の詳細な説明における「加齢黄斑変性(AMD)は・・・『乾燥』および『湿潤』形態で生じ・・・より重篤な湿潤形態(wAMD)では、脈絡膜新生血管(CNV)・・・が成長する」(【0001】)という説明を踏まえると、CNV病変は、乾燥AMDには見られず、wAMDにおいて成長する病変であることから、上記記載における「AMDに続発する」とは、wAMDにおいて成長したCNV病変、すなわち、通常のwAMDのCNV病変であることを説明するものと理解される。
しかしながら、上記記載における「クラシック主体型」という用語に関しては、後の「CNV病変」を修飾する語であるとしても、発明の詳細な説明には「病変のタイプ」としての「クラシック主体」(【0016】)の説明はあるものの、「CNV病変」自体の分類としての記載はないから、前記(2)エの本願出願時のwAMDに関する技術常識を考慮しても、どのようなCNV病変を意味するものか、理解することができない。
オ 仮に、当該「クラシック主体型」が、【0016】に説明される「クラシック主体」の「病変タイプ」を意味するものと解釈した場合には、上記イで説示したとおり、当該病変タイプは「全病変サイズの少なくとも50%を占める活動性CNV病変を特徴とする」病変タイプ(通常の「クラシックサブタイプ(predominantly classic)」)であることを意味することになり、補正発明1における「活動性CNV病変が、」「クラシック主体型」「脈絡膜新生血管(CNV)病変(通常の「クラシックサブタイプ(predominantly classic)」と呼ばれる病変タイプ)である」という記載は、前記ウにおいて説示した、補正発明1における「全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変のサイズである患者」(通常の「最小限のクラシック(minimally classic)」及び「オカルト(occult with no classic)」と呼ばれる病変タイプを含むもの)」という記載と、明らかに矛盾することになる。
カ したがって、補正発明1における「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変であ」り、かつ「全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変サイズを有する患者の湿潤加齢黄斑変性(wAMD)」は、どのようなwAMDに特定しようとするものであるのか、明確に把握することができない。
キ そうすると、補正発明1におけるwAMDは、補正前の請求項1におけるwAMDに対して限定されたものとなっているか否かも不明であるから、本件補正は特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとはいえない。
また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明の何れを目的とするものでもない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
ク 他方、上記エで説示したとおり、補正発明1における「クラシック主体型」という用語について、発明の詳細な説明には、「CNV病変」自体の分類としての記載がないことから、前記(2)エ(ア)及び(オ)の本願出願時における技術常識を考慮して、補正発明1における「クラシック主体型」が、FAの所見上の分類である「血管造影サブタイプ」の「クラシック」を意味するもの、すなわち、網膜色素上皮の上(網膜下)に発育したCNV病変である「クラシックCNV病変」であると解した場合について以下に検討する。
補正発明1において特定する「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」という記載は、前記ウで説示したとおり、「活動性CNV病変」が「クラシックCNV病変」を意味し、「AMDに続発する」が通常のwAMDのCNV病変であること、さらに、「クラシック主体型」が「網膜色素上皮の上(網膜下)に発育したCNV病変」を意味するという前提を踏まえると、上記記載は、通常のwAMDで「クラシックCNV」と呼ばれる「網膜色素上皮の上(網膜下)に発育した」「活動性CNV病変」が「中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む」「中心窩下」の位置に存在することを特定するものといえる。
次に、当該「中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」「活動性CMV病変」と、補正発明1における「全病変サイズの50%未満の
活動性CNV病変
サイズを有する」という記載における「活動性CNV病変」との関係についてみると、下記i又はiiのいずれかに解釈することができる。
i 本件補正事項は、補正発明1における「全病変サイズの50%未満の
活動性CNV病変
サイズを有する」という記載における「活動性CNV病変」を特定し、当該記載は、「中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む」「中心窩下」の位置に存在する、通常のwAMDで「クラシック」と呼ばれる「網膜色素上皮の上(網膜下)に発育した」「活動性CNV病変」が「全病変サイズの50%未満である」ことを特定する。
ii 本件補正事項は、補正発明1における「全病変サイズの50%未満の
活動性CNV病変
サイズを有する」における「活動性CNV病変」を特定する記載ではなく、当該記載は、「活動性CNV病変」が「全病変サイズの50%未満である」こととは独立して、「中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む」「中心窩下」の位置に、通常のwAMDで「クラシック」と呼ばれる「網膜色素上皮の上(網膜下)に発育した」「活動性CNV病変」を有することを特定する。
そして、i又はiiのいずれの場合であっても、補正発明1では、「活動性CNV病変(クラシックCNV病変)」の「位置」について、「中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む」「中心窩下」であることが特定されたこととなり、本件補正は特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものといえるので、以下この解釈に基づいて、独立特許要件について検討する。
(1) 本件補正発明1
本件補正発明1は、前記1(2)に記載した、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変サイズを有する患者の湿潤加齢黄斑変性症(w AMD)の治療において使用するための、抗VEGF剤を含む組成物であって、wAMD治療スキームにしたがって前記患者が治療され、かつ
前記wAMD治療スキームが、アフリベルセプトを含む抗VEGF治療を含み、
活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である、組成物。」
(2)明確性要件について
前記3(3)クに説示したとおり、補正発明1における「クラシック主体型」という記載について、通常「クラシック」と呼ばれる「網膜色素上皮の上(網膜下)に発育した」「CNV病変」を意味するものと解釈した場合であっても、補正発明1における「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」という記載は、下記i又はiiのいずれとも解釈することができる。
i 本件補正事項は、補正発明1における「全病変サイズの50%未満の
活動性CNV病変
サイズを有する」という記載における「活動性CNV病変」を特定し、当該記載は、「中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む」「中心窩下」の位置に存在する、通常のwAMDで「クラシック」と呼ばれる「網膜色素上皮の上(網膜下)に発育した」「活動性CNV病変」が「全病変サイズの50%未満である」ことを特定する。
ii 本件補正事項は、補正発明1における「全病変サイズの50%未満の
活動性CNV病変
サイズを有する」における「活動性CNV病変」を特定する記載ではなく、当該記載は、「活動性CNV病変」が「全病変サイズの50%未満である」こととは独立して、「中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む」「中心窩下」の位置に、通常のwAMDで「クラシック」と呼ばれる「網膜色素上皮の上(網膜下)に発育した」「活動性CNV病変」を有することを特定する。
そうすると、補正発明1は記載が多義的であり、不明確である。
したがって、補正後の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしておらず、補正発明1は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(3)新規性・進歩性について
ア 引用文献
(ア) 引用文献1:Eye, 2013, Vol.27,P.663-668
A 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶理由で引用された、本願優先日前に発行されたEye, 2013, Vol.27,P.663-668(以下「引用文献1」という。)は、「ベバシズマブ及びラニビズマブに抵抗性を示す新生血管性加齢黄斑変性における硝子体内アフリベルセプト投与に対する網膜色素上皮剥離の迅速な反応」と題する学術文献であって、以下の事項が記載されている。
(摘記1-1)664頁 要旨
「目的 本研究の目的は、ベバシズマブ及びラニビズマブに対して難治性又は耐性を示す、網膜色素上皮剥離(PED)を伴う新生血管性加齢黄斑変性(AMD)の治療における、アフリベルセプトの短期有効性を報告することである。
方法 本法は、血管新生性AMD及び合併PEDを有する患者を対象とし、最近アフリベルセプト治療を受けたが、以前にベバシズマブ及びラニビズマブ治療歴のある患者の医療記録を後向きに検討したものである。
結果
オカルト脈絡膜新生血管並びに新生血管性AMDに伴う巨大漿液性PED及び網膜下液(SRF)が認められた
49歳、55歳、65歳の女性患者3名(計3眼)が、硝子体内ベバシズマブ及び/又はラニビズマブ投与後も病変が解消しなかったため、アフリベルセプトを投与した。3ヶ月間にわたる
アフリベルセプト注射後、全例でSRFが完全に消失し、PEDは完全又はほぼ完全に消失した。3眼全てで視力が改善した
。
結論
ベバシズマブ及びラニビズマブ治療が失敗した後の新生血管性AMD患者における漿液性PEDに対し、硝子体内アフリベルセプトは有効な治療選択肢となり得る
。新生血管性AMDにおけるPED治療におけるアフリベルセプトの役割を確定するには、より大規模で長期の追跡調査を伴う研究が必要である。」
(摘記1-2) 664頁右欄11行~665頁左欄10行
「はじめに
加齢黄斑変性(AMD)の進行例では、最大62%の眼に網膜色素上皮剥離(PED)が生じる
1
。AMDにおけるPEDの治療法としては、レーザー療法や血管内皮増殖因子(VEGF)抗体の硝子体内注射など、数多くの選択肢が用いられてきた
2
。しかしながら、
新生血管性AMDの治療に黄斑レーザー
3
、光線力学療法
4
、又はラニビズマブ
5,6
を用いた大規模臨床試験では、PEDを有する眼は除外されていた
。したがって、
脈絡膜新生血管(CNV)及びPEDを有する眼に対するこれらの治療法の有効性は依然として不明である
。
アフリベルセプトは
組換え融合タンパク質であり、VEGF-Aファミリー及び胎盤性成長因子の全異性体に結合する。VEGFに対する結合親和性が高く、
2つの大規模研究において新生血管性AMD治療においてラニビズマブと同等の臨床効果が示された
7
。
ベバシズマブ及びラニビズマブ治療に失敗した後、アフリベルセプトで治療に成功した新生血管性AMDに伴う巨大PEDを有する3症例を報告する。」
(摘記1-3) 665頁左欄12行~666頁左欄14行
「症例1
49歳白人女性。両眼の
新生血管性AMDの既往
があり、他院にて右眼に大型PED、左眼に複数個の小型PEDを認め、ベバシズマブを右眼1回、左眼2回投与した。最良矯正視力(BCVA)は右眼20/60、左眼20/25であった。右眼のPEDは3回のラニビズマブ注射後に消失した。しかし左眼では
網膜下液(SRF)を伴う単一の巨大PED
が発生した。
蛍光眼底造影(FA)及びインドシアニングリーン造影により、オカルトCNVを伴う新生血管性AMD
並びに黄斑部及び周辺部ドルーゼンが確認された。左眼PEDは、9か月間にわたる8回のラニビズマブ注射(うち2回は増加用量(1.0mg)の試験的投与を含む)にもかかわらず、SRFの増加に伴い悪化した。左眼BCVAは20/70に低下した。
単回のアフリベルセプトの硝子体内注射後、SRFは解消し、PEDはほぼ完全に消失した。追加で2回のアフリベルセプト注射を実施したところ、中心窩輪郭は正常化した
。初回アフリベルセプト注射後3ヶ月時点の左右眼の矯正視力は20/25であった(図1)。
症例2
55歳の白人女性。右眼に新生血管性AMDを呈し、5ヶ月間のラニビズマブ硝子体内注射治療後、CNVを伴う巨大PEDを呈した。
FAにより右眼ODのオカルトCNVを確認した
。初期のBCVAは右眼20/25、左眼20/20であった。右眼のPEDは、7ヶ月間にわたるベバシズマブ2回及びラニビズマブ1回の硝子体内注射により初期に改善を示したが、その後、2ヶ月間にわたりラニビズマブ注射を3回増量(1.5mg)投与したにもかかわらず、PEDは悪化した。右眼のBCVAは20/30に低下した。その後、
1回のアフリベルセプト注射が投与され、PEDはほぼ完全に消失した。その後、2ヶ月間隔で2回のアフリベルセプト注射を実施したところ、SRF及びPEDが完全に消失し、右眼のBCVAは20/20に回復した
(図2)。
症例3
65歳東インド系女性。新生血管性AMDの左眼に対しベバシズマブ3回投与後、左眼にSRFを伴わない巨大中心窩下PEDを呈した。BCVAは右眼OD20/20、左眼OS20/40。
FAにより左眼にオカルトCNVの存在を確認した
。月4回のラニビズマブ注射に切り替えたにもかかわらず、このPEDは持続性SRFを伴い拡大した。左眼のBCVAは20/40のままだった。
アフリベルセプトを1回注射したところ、PEDが著しく改善し、SRFが消失した。2か月後にアフリベルセプトを2回目の注射したところ、左眼のBCVAは20/25に改善した
。」
(摘記1-4) 図1
「
88
151
0001436867000001.jpg
図1 症例1の画像:両眼の新生血管性加齢黄斑変性の既往歴を有する49歳白人女性。(a-d) 左眼のハイデルベルクSPECTRALISスペクトル領域光干渉断層撮影(SD-OCT)。(a)初診時の
網膜下液(SRF)を伴う
巨大な網膜色素上皮剥離(PED)。患者は過去にベバシズマブ2回、ラニビズマブ1回の注射治療を受けていた。最良矯正視力(BCVA)は20/50であった。(b)7ヶ月間のラニビズマブ注射にもかかわらず、SRFを伴うPEDが拡大。直近2回の注射では投与量を1mgに倍増。BCVAは20/70に低下。(c)
アフリベルセプト単回注射1か月後、PEDがほぼ消失しSRFが完全に解消。BCVAは20/20に改善
。(d)
2か月間に追加2回のアフリベルセプト注射後、PEDが持続的に改善し中心窩輪郭が正常化
。BCVAは20/25。左眼の早期(e)及び
後期(f)フルオレセイン蛍光眼底造影像には
、複数の黄斑部ドルーゼン、脈絡膜新生血管(CNV)を示唆するPED基底部における
後期漏出
、及びPED内への色素貯留が認められる。(g)左眼のインドシアニングリーン造影像に脈絡膜循環由来の複数の高蛍光スポットが認められるが、ポリープを示唆する後期漏出は認められない。
後期のフレームでは、PED腔内への色素の拡散性漏出が認められ、CNVの存在を示唆する
。(h)左眼の自発蛍光像には、CNV付近に自発蛍光亢進が認められる。」
(摘記1-5) 図2
「
99
143
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図2 症例2の画像:右眼に新生血管性加齢黄斑変性を認める55歳白人女性。(a)右眼のハイデルベルクSPECTRALISスペクトル領域光干渉断層撮影画像。(a)中等度の網膜色素上皮剥離(PED)と隣接する網膜下硝子体液(SRF)。患者は、本診察までにラニビズマブ6回、ベバシズマブ1回の注射を受けた。最良矯正視力(BCVA)は20/20で経過観察中。(b)PED拡大とSRF増加。BCVAは20/25。ラニビズマブ治療を再開。(c)追加で月1回のラニビズマブ注射を3回実施したにもかかわらず、鼻側にSRFを伴うPEDが持続。BCVAは20/30に低下。(d)単回のアベルセプト注射1ヶ月後、PEDがほぼ完全に消失しSRFも完全に消失。BCVAは20/30。さらに1回のアベルセプト注射後、BCVAは20/20に回復。(e)右眼の
蛍光眼底造影像に
、複数の黄斑部ドルーゼン由来の染色、漿液性PED内への色素貯留、及びPEDより鼻側に
オカルト脈絡膜新生血管の可能性を示す領域が認められる
。(f)右眼の自家蛍光像に、ドルーゼン様変化と一致する低自発蛍光及び自発蛍光亢進領域が認められる。」
B 引用文献1に記載された発明
上記Aの摘記事項に基づけば、引用文献1は、「アフリベルセプトは」「2つの大規模研究において新生血管性AMD治療においてラニビズマブと同等の臨床効果が示され」ているが、「脈絡膜新生血管(CNV)及びPEDを有する眼に対するこれらの治療法の有効性は」「不明であ」ったという技術的背景の下(摘記1-2)、「最近アフリベルセプト治療を受けたが、以前にベバシズマブ及びラニビズマブ治療歴のある患者の医療記録を後向きに検討し」、「ベバシズマブ及びラニビズマブに対して難治性又は耐性を示す、網膜色素上皮剥離(PED)を伴う新生血管性加齢黄斑変性(AMD)の治療における、アフリベルセプトの短期有効性を報告」したものである(摘記1-1)。
そして、「オカルト脈絡膜新生血管並びに新生血管性AMDに伴う巨大漿液性PED及び網膜下液(SRF)が認められた」「患者3名」において、「アフリベルセプト注射後、全例でSRFが完全に消失し、PEDは完全又はほぼ完全に消失し」、「視力が改善した」ことから(摘記1-1、摘記1-3~摘記1-5)、「ベバシズマブ及びラニビズマブ治療が失敗した後の新生血管性AMD患者における漿液性PEDに対し、硝子体内アフリベルセプトは有効な治療選択肢となり得る」ことが結論づけられている(摘記1-1)。
ここで、アフリベルセプトが硝子体内注射に適した担体とともに組成物として投与されたことは技術常識からみて自明である。
そうすると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「オカルト脈絡膜新生血管(CNV)並びに巨大漿液性PED及び網膜下液(SRF)を伴う湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)の治療のための、アフリベルセプトを含む組成物。」
(イ) 参考文献4:「アイリーア
(R)
(原文では「R」の丸囲い文字。以下同様。)硝子体内注射液40mg/mL」 添付文書
発明の詳細な説明の背景技術(前記3(1)【0003】)に記載される「アフリベルセプト(Eylea(登録商標)」の日本国内において市販される製品「アイリーア
(R)
硝子体内注射液40mg/mL」の添付文書(以下「参考文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。
(参考4-1) 1頁
「
34
151
0001436867000003.jpg
」
(参考4-2) 1頁
「4.効能又は効果
○
中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性
・・・」
(参考4-3) 4~5頁
「17.臨床成績
17.1有効性及び安全性に関する試験
<
中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性
>
17.1.1 日本人を含む第III相国際共同試験(
VIEW2試験
)
滲出型加齢黄斑変性患者を対象に
、・・・無作為化二重遮蔽第III相試験を実施した。・・・
17.1.2 海外第III相試験(
VIEW1試験
)
滲出型加齢黄斑変性患者を対象に
、・・・無作為化二重遮蔽第III相試験を実施した。・・・」
(ウ) 参考文献5:Ophthalmology 2012,119:2537-2548
発明の詳細な説明(前記3(1)【0005】)に背景技術として記載される「Ophthalmology 2012,119:2537-2548」(以下「参考文献5」という。)は、「湿潤加齢黄斑変性におけるアフリベルセプト硝子体内投与(VEGF Trap-Eye)」と題する学術文献であって、以下の事項が記載されている。なお、図表については原文のまま示し、標題と脚注のみ翻訳文を付記する。
(参考5-1) 2537頁 要約
「目的:
血管新生加齢黄斑変性(AMD)を対象とした2つの類似デザインの第3相試験
(VEGF Trap-Eye:
湿潤AMD
における有効性と安全性の検討
[VIEW 1, VIEW 2]
)は月1回投与及び2ヵ月毎の
アフリベルセプト
硝子体内注射(VEGF Trap-Eye;Regeneron社、ニューヨーク州タリータウン、Bayer HealthCare社、ドイツ、ベルリン)を、月毎のラニビズマブの投与と比較した。
デザイン:二重盲検、多施設並行群間、実薬対照、無作為化試験。
参加者:
AMDに続発する活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変(又は中心窩に影響を及ぼす漏出を伴う傍中心窩病変)を有する患者
(n=2419)。
介入:患者は、アフリベルセプトを硝子体内に0.5mgを月1回投与する群(0.5q4)、2mgを月1回投与する群(2q4)、2mgを月1回を3回投与後、2月毎に投与する群(2q8)、及びラニビズマブ0.5mgを月1回投与する群(Rq4)に無作為に割り付けられた。
主要評価項目:一次評価項目は、52週目に視力を維持している患者の割合(早期治療糖尿病網膜症試験[ETDRS]チャートで15文字未満の視力低下)におけるラニビズマブに対するアフリベルセプトレジメンの非劣性(10%の限度)であった。その他の重要な評価項目は、最良矯正視力(BCVA)及び解剖学的測定値の変化であった。
結果:
すべてのアフリベルセプト群
は、一次評価項目において月1回投与の
ラニビズマブに対して非劣性であり、臨床的にも同等であった
(2q4、0.5q4及び2q8レジメンは、VIEW 1ではそれぞれ95.1%、95.9%、95.1%、VIEW 2ではそれぞれ95.6%、96.3%、95.6%であったのに対し、月1回投与のラニビズマブは両試験とも94.4%であった)。2試験の事前に規定された統合解析では、すべてのアフリベルセプトレジメンは、BCVAの平均変化量において、基準であるラニビズマブと0.5文字以内の差であり、すべてのアフリベルセプトレジメンは解剖学的指標においても同様の改善を示した。眼及び全身性の有害事象は治療群間で同様であった。
結論:アフリベルセプト硝子体内投与は、月1回を3回の初期投与後、月毎又は2月毎に投与され、ラニビズマブの月1回投与と同様の有効性と安全性を示した。
これらの試験は、アフリベルセプトがAMDの有効な治療法であることを示しており
、2月毎の投与は、月毎の硝子体内投与のリスクとモニタリングの負担を軽減する可能性がある。」
(参考5-2) 2540頁左欄2段落
「参加者
組み入れ対象及び除外基準は、非劣性試験に関する規制ガイドラインに従い、対照薬ラニビズマブの主要臨床試験との整合性を保つように設定され、
(1)AMDに続発する活動性の中心窩下CNV病変(サブタイプを問わない)を有する50歳以上の患者
;
中心窩に影響を及ぼす漏出を伴う傍中心窩病変も認められた
;(2)病変全体の50%以上を占めるCNV;(3)BCVAがETDRS(早期治療糖尿病網膜症試験チャート)の73~25文字(20/40~20/320スネレン等価視力)
が組み入れられた
。試験眼に(治験薬又は抗VEGF療法を含む)AMDの治療歴がある患者は除外された。
適格性は、読影センターで蛍光眼底造影を用いて決定された
。完全な適格性基準を付録2(http://aaojournal.org)に示す。」
(参考5-3) 2541頁 表1;赤枠は合議体が付したもの。
「表1: 患者の人口統計とベースライン特性
116
151
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0.5q4=毎月0.5mg投与;2q4=毎月2mg投与;2q8=毎月3回初期投与後、2月毎に2mg投与;BCVA=最高矯正視力;CNV=脈絡膜新生血管;ETDRS=早期治療糖尿病網膜症試験;NEI VFQ-25 = National Eye Institute 25-ltem Visual Functioning Questionnaire; SD = 標準偏差。」
イ 対比・判断
前記(2)で指摘したとおり、補正発明1における「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」という記載は二通りに解釈するできるため、それぞれの場合について検討する。
(ア) 「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」という特定が、補正発明1における「全病変サイズの50%未満の
活動性CNV病変
サイズを有する」という発明特定事項における「活動性CNV病変」を特定するものであり、当該特定によって「活動性CNV病変」が通常のwAMDで「クラシックCNV」と呼ばれる「網膜色素上皮の上(網膜下)に発育したCNV」が「中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む」「中心窩下」の位置に存在し、その病変のサイズが「全病変サイズの50%未満である」ことを特定する場合について
A 対比・判断
引用発明における「オカルト脈絡膜新生血管(CNV)」は、引用文献1(前記ア(ア)A 摘記1-3)に記載されるとおり、「蛍光眼底造影(FA)」によって確認されており、FAの早期画像における漏出、すなわち活動性CNV病変(クラシックCNV病変)は検出されていない(前記ア(ア)A 摘記1-4及び摘記1-5)。
そうすると、引用発明における「オカルト脈絡膜新生血管(CNV)並びに巨大漿液性PED及び網膜下液(SRF)を伴う湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)」は、補正発明1における「中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」「活動性CNV病変」をまったく含まないものであるから、補正発明1における「全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変サイズを有する患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)」であって、「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」に相当する。
また、引用発明における「湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)の治療のための、アフリベルセプトを含む組成物」は、補正発明1における「抗VEGF剤を含む組成物であって、wAMD治療スキームにしたがって前記患者が治療され、かつ前記wAMD治療スキームが、アフリベルセプトを含む抗VEGF治療を含」む「組成物」に相当する。
そうすると、補正発明1と引用発明とは、
「全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変サイズを有する患者の湿潤加齢黄斑変性症(w AMD)の治療において使用するための、抗VEGF剤を含む組成物であって、wAMD治療スキームにしたがって前記患者が治療され、かつ
前記wAMD治療スキームが、アフリベルセプトを含む抗VEGF治療を含み、
活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である、組成物。」で一致し、相違点はない。
B 請求人の主張について
請求人は審判請求書において、引用文献1には、「クラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変」のケースを開示しておらず、補正発明1が新規性を有する旨を主張している。
しかしながら、補正発明1は前記(2)のとおり多義的に解釈し得るものであり、引用発明のオカルト脈絡膜新生血管(CNV)を伴うwAMDを除外するものではないから、請求人の主張を採用することはできない。
C 小括
したがって、補正発明1は引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、補正発明1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
(イ) 「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」という特定が、補正発明1における「全病変サイズの50%未満の
活動性CNV病変
サイズを有する」における「活動性CNV病変」を特定するものではなく、「活動性CNV病変」が「全病変サイズの50%未満である(通常の「最小限のクラシック(minimally classic)」及び「オカルト(occult with no classic)」を含むものである)」こととは独立して、「活動性CNV病変」が通常のwAMDで「クラシック」と呼ばれる「網膜色素上皮の上(網膜下)に発育したCNV」が「中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む」「中心窩下」の位置に存在することを特定する場合(この場合は、活動性CNV病変がまったく認められない「オカルト」は除外され、「最小限のクラシック」に特定されることとなる)について
A 対比
前記(ア)における対比を踏まえると、補正発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
「全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変サイズを有する患者の湿潤加齢黄斑変性症(w AMD)の治療において使用するための、抗VEGF剤を含む組成物であって、wAMD治療スキームにしたがって前記患者が治療され、かつ
前記wAMD治療スキームが、アフリベルセプトを含む抗VEGF治療を含む、組成物。」
<相違点>
補正発明1では、「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」wAMDを治療するのに対し、引用発明ではそのように特定されていない点。
B 判断
上記相違点について検討する。
引用発明の技術的背景として、引用文献1(前記ア(ア)A 摘記1-2)にも記載されるように、アフリベルセプトは、脈絡膜新生血管(CNV)及びPEDを有する眼に対する有効性は不明であったものの、wAMDにおける有効性は従来の臨床研究で示されており、本願優先日当時において、アフリベルセプトは周知の市販薬であった(前記ア(イ)参考4-1及び前記3(1)【0003】)。
そして、市販製品の添付文書(前記ア(イ)参考4-3)において説明される臨床試験「VIEW 1, VIEW 2」(前記(ウ))では、「中心窩に影響を及ぼす漏出を伴う傍中心窩病変も認められた」「AMDに続発する活動性の中心窩下CNV病変(サブタイプを問わない)を有する50歳以上の患者」が組み入れられ、クラシック主体、最小限のクラシック及びオカルトを含む「すべてのアフリベルセプト群」において有効性が確認され、その結果を受けて、アフリベルセプトは、病変タイプの区別なく「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」を適用対象として認可され、市販されていた(前記ア(イ)参考4-2)。
このような本願優先日当時の技術水準を考慮すれば、引用発明における活動性CNV病変がまったく認められない「オカルト脈絡膜新生血管(CNV)」のwAMDに代えて、既に適用対象として認可されている「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」のうち、「活動性CNV病変」を含む「最小限のクラシック」のwAMDを治療することとして、上記相違点に係る構成とすることに、格別な困難性は認められない。
C 効果について
発明の詳細な説明の実施例では、「病変サイズの50%以上の活動性CNV病変を有する患者と比較して、全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変を有する患者において、より好ましい結果が観察された」ことが示されている。
しかしながら、引用発明のwAMD患者は、オカルトCNV病変のみを有し、「全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変を有する患者」に該当し、引用文献1にはこれらの患者において効果が奏されたことが示されているのであるから、上記実施例で示された効果は、引用発明に対して有利な効果を示すものではない。
さらに、補正発明1で特定する「全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変を有する患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)」であって、さらに「活動性CNV病変が、中心窩に影響を及ぼす傍中心窩病変を含む、AMDに続発するクラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変である」という、特定のwAMDの患者群における効果については、上記実施例にも示されてはいない。
したがって、補正発明1が引用発明から予測できない顕著な効果を有するものとは認められない。
D 請求人の主張について
請求人は審判請求書において、引用文献1は、補正発明1が対象とする患者集団を開示も示唆もしておらず、補正発明1は容易に想到できたものではない旨を主張している。
しかしながら、補正発明1の対象とする「クラシック主体型活動性中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)病変」の記載が不明確である点は措くとしても、病変タイプの区別なく「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」を適用対象としてアフリベルセプトが認可され、市販されていたという本願優先日当時の技術水準を考慮すれば、補正発明1が、このような従来公知の適用対象の中から一部の患者群を選択することによって、何らかの格別な効果を奏するのであればともかく、そのような格別な効果も示されていない補正発明1について、進歩性を認めることはできない。
E 小括
したがって、補正発明1は引用文献1に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、補正発明1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反し、また、補正発明1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。
上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、令和6年5月13日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変サイズを有する患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)の治療において使用するための、抗VEGF剤を含む組成物であって、wAMD治療スキームにしたがって前記患者が治療され、かつ
前記wAMD治療スキームが、アフリベルセプトを含む抗VEGF治療を含む、組成物。」
原査定の拒絶の理由は、本願発明1は、本願の優先日前に頒布された引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。
引用文献1の記載事項は、上記第2の4(3)ア(ア)Aに記したとおりである。また、引用発明についても、上記第2の4(3)ア(ア)Bに記したとおりである。
前記第2の4(3)イ(ア)Aの対比を踏まえて、本願発明1と引用発明とを対比すると、両発明は、
「全病変サイズの50%未満の活動性CNV病変サイズを有する患者の湿潤加齢黄斑変性症(wAMD)の治療において使用するための、抗VEGF剤を含む組成物であって、wAMD治療スキームにしたがって前記患者が治療され、かつ
前記wAMD治療スキームが、アフリベルセプトを含む抗VEGF治療を含む、組成物。」
で一致し、相違点はない。
したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明である。
本願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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