結論テキスト
特許第7550803号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~20〕について訂正することを認める。
特許第7550803号の請求項1~20に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025700294 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7550803号(以下「本件特許」という。)の請求項1~20に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)7月3日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2019年(令和元年)7月3日 フランス(FR))を国際出願日とする特許出願であって、令和6年9月5日に特許権の設定登録がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行され、その後、その全請求項に係る発明の特許に対し、令和7年3月12日付けで高橋 昌義(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。
令和7年 5月29日付け 取消理由通知
同年 7月22日 応対記録(日付は初回応対日)
同年 9月 1日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)
同年 9月24日付け 手続補正指令
同年10月22日 手続補正書(方式)の提出(特許権者)
同年12月 2日付け 訂正請求があった旨の通知
なお、令和7年12月2日付けの通知に対して申立人から応答はなかった。
以下では、特に注釈を付した場合を除き下線は当審合議体が付与したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。
令和7年10月22日付けの手続補正書によって補正された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は、
「特許第7550803号の明細書及び特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~20について訂正することを求める。」
というものである。
本件訂正の内容は、訂正請求書の記載及び訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲の記載からみて、次の訂正事項1~7からなるものであると認められる。
(1)訂正事項1
明細書の【0077】の第2行、【0079】の第2及び3行、【0080】の第1及び2行、【0193】の【表1A】(2箇所)、並びに【0198】の【表2】(2箇所)の「層状」との記載を、「
薄板状
」との記載に訂正する(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の「12~50質量%の少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相」との記載を、「12~50質量%の
、
少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相」との記載に訂正する。
請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~20も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1の「を含む固体化粧用組成物であって、」との記載の後に、「
前記金属石鹸で表面処理された球状充填剤が、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末であり、
」との記載を追加する。
請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~20も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3の「13~35質量%の少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相」との記載を、「13~35質量%の
、
少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相」との記載に訂正する。
請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~20も同様に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5の「請求項1から4のいずれか一項」との記載を、「請求項
2又は4
」との記載に訂正する。
請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~20も同様に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6の「請求項1から5のいずれか一項」との記載を、「請求項
5
」との記載に訂正する。
請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~20も同様に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7の「請求項1から6のいずれか一項」との記載を、「請求項
6
」との記載に訂正する。
請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8~20も同様に訂正する。
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、令和7年5月29日付け取消理由通知書における、「薄板状充填剤」という事項と「層状充填剤」という事項とがいかなる関係にあるのか判然としない旨の指摘に対して、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)の明細書の「層状」との記載を「薄板状」との記載に訂正して記載を統一し、明確な記載とするものであるから、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件特許明細書等の明細書の【0077】に「組成物は、金属石鹸で表面処理された
薄板状
充填剤(lamellar filler)を更に含んでもよい。
層状
充填剤の中でも、・・・」との記載があるから、本件特許明細書等において「薄板状」と「層状」は同一の意味を有すると解される。
したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2及び4について
ア 訂正の目的
訂正事項2及び4は、訂正前の請求項1及び3の「12~50質量%」及び「13~35質量%」との記載が、「脂肪相」に係る記載であることを明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件特許明細書等の明細書には、
「【0019】
脂肪相
本発明による組成物は、少なくとも1種の不揮発性液体脂肪相を含み、それは少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相を意味する。」(下線は原文どおり。)、及び
「【0011】
したがって、本発明の目的は、第1の態様によれば、12~50質量%の不揮発性液体脂肪相と・・・」
との記載があるから、「1種の不揮発性油を含む脂肪相」が「12~50質量%」であることが記載されているといえる。
訂正事項4は、訂正事項2と同様に「少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相」の含有量についての訂正であるから、同様に本件特許明細書等に記載されているといえる。
したがって、訂正事項2及び4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、請求項1の「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」を「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件特許明細書等の明細書には、
「【0073】
したがって、好ましい実施形態によれば、
金属石鹸
は、ラウリン酸亜鉛、
ステアリン酸マグネシウム
、
ミリスチン酸マグネシウム
、ステアリン酸亜鉛、及び
それらの混合物
から選択され、好ましくは、金属石鹸はステアリン酸マグネシウムである。」、及び
「【0076】
球状充填剤
は有利には以下のものから選択される:
・・・
-
セルロース粉末
、例えば、Daito社によって販売されているCellulobeads D5、D10、D50、及びD100、
並びに、それらの混合物。」
との記載があり、実施例1及び2において「ステアリン酸マグネシウムでコーティングされた球状充填剤(Cellulobeads)」を含有する組成物が記載されている(表1及び2)。
したがって、本件特許明細書等には、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤が、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」であることが記載されているといえる。
よって、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項5~7について
訂正事項5~7は、訂正前の請求項5~7において記載を引用する請求項番号を一部のものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項5~7は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)独立特許要件について
本件特許異議申立においては、訂正前の全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1~20に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
(6)一群の請求項について
本件訂正に係る訂正前の請求項1~20について、請求項2~20は直接的又は間接的に請求項1の記載を引用しているから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正される。
したがって、訂正前の請求項1~20は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
よって、訂正前の請求項1~20に対応する訂正後の1~20について訂正することを求める本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
(7)明細書の訂正と関係する請求項について
訂正事項1は、請求項1に記載された固体化粧用組成物が含有する成分について明細書の記載を訂正するものであるといえ、また、上記(6)で述べたとおり請求項1~20は一群の請求項であるから、訂正事項1は請求項1~20に関係するところ、本件訂正の請求は、当該請求項の全てについてされているから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
以上のとおり、訂正事項1~7による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項~第6項の規定に適合する。
したがって、訂正後の請求項〔1~20〕について訂正することを認める。
本件訂正により訂正された請求項1~20に係る発明(以下請求項の番号順に「本件発明1」等といい、併せて「本件発明」ともいうことがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定される次に示すとおりのものである(下線は本件訂正による訂正箇所を示す。)。
「 【請求項1】
- 12~50質量%の
、
少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相と、
- 金属石鹸で表面処理された球状充填剤を含む40~85質量%の粉末相と
を含む固体化粧用組成物であって、
前記金属石鹸で表面処理された球状充填剤が、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末であり、
前記の百分率(%)は組成物の総質量に対して質量で表される、固体化粧用組成物。
【請求項2】
粉末相が、さらに、金属石鹸で表面処理された薄板状充填剤を含む、請求項1に記載の固体化粧用組成物。
【請求項3】
- 13~35質量%の
、
少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相と、
- 50~80質量%の粉末相と
を含む、請求項1又は2に記載の固体化粧用組成物。
【請求項4】
粉末相が、金属石鹸で表面処理されているか又は金属石鹸で表面処理されていない真珠光沢粉末及び/又は顔料を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の固体化粧用組成物。
【請求項5】
金属石鹸が、12~22個の炭素原子を有する脂肪酸の石鹸である、請求項
2又は4
に記載の固体化粧用組成物。
【請求項6】
金属石鹸の金属が亜鉛又はマグネシウムである、請求項
5
に記載の固体化粧用組成物。
【請求項7】
金属石鹸が、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、及びそれらの混合物から選択される、請求項
6
に記載の固体化粧用組成物。
【請求項8】
粉末相が、薄板状充填剤及び球状充填剤を、1/10~10/1の範囲の薄板状/球状比で含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の固体化粧用組成物。
【請求項9】
0.1~15質量%の固体脂肪相を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の固体化粧用組成物。
【請求項10】
前記の少なくとも1種の不揮発性油が、炭化水素化油、フェニル化されていないシリコーン化油、及びそれらの混合物から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の固体化粧用組成物。
【請求項11】
不揮発性油が炭化水素化油から選択され、かつ、組成物の総質量に対して30質量%~50質量%の、金属石鹸によって表面処理された真珠光沢粉末を含む、請求項10に記載の固体化粧用組成物。
【請求項12】
不揮発性油が、フェニル化されていないシリコーン化油から選択される、請求項10に記載の固体化粧用組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の揮発性油を含む脂肪相を含まない、請求項1から12のいずれか一項に記載の固体化粧用組成物。
【請求項14】
水を含まない、請求項1から13のいずれか一項に記載の固体化粧用組成物。
【請求項15】
フィルム形成ポリマーを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の固体化粧用組成物。
【請求項16】
シリコーンエラストマーを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の固体化粧用組成物。
【請求項17】
30g~250gの間の硬度を有する、請求項1から16のいずれか一項に記載の固体化粧用組成物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の固体化粧用組成物の製造方法であって、
- 粉末相を構成するパウダーを予め混合する工程と、
- 少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相を含む脂肪性結合剤を調製する工程と、
- 押出によって、パウダーを脂肪性結合剤と共につぶし混ぜる工程と、
- 組成物をプレスによって成形する工程と
を含む、方法。
【請求項19】
請求項1から17のいずれか一項に記載の固体化粧用組成物を皮膚又は唇に適用する工程からなる、皮膚又は唇をメイクアップするための方法。
【請求項20】
金属石鹸がステアリン酸マグネシウムである、請求項7に記載の固体化粧用組成物。」
申立人は、証拠方法として、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付して下記(6)に示す甲第1号証~甲第8号証(以下「甲1」等ということがある。)を提出しているところ、申立書の全体の記載からみて、申立人が主張する本件訂正前の請求項1~20に係る特許についての特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)の概要は、下記(1)~(5)に示すとおりと認められる。
(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号))
本件特許発明1、3~8、10、13、14、17~20は、甲1に開示されている。
本件特許発明1~4、8~19は、甲2に開示されている。
(2)申立理由2(特許法第29条第2項(同法第113条第2号))
本件特許発明1~20は、甲1~甲8のいずれかに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
申立書の記載、特に7~27頁の記載からみて、主引用例(副引用例)と対象請求項の関係は次のとおりである。
甲1(甲2、甲4~甲6)/請求項1~20
甲2(甲4~甲7)/請求項1~20
甲3(甲2、甲4~甲6、甲8)/請求項1~20
(3)申立理由3(特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号))
本件特許明細書の記載には不備があり、本件特許発明1~20は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
具体的な理由の概要は次のとおりである。
(3-1)本件特許発明1との関係について
本件特許発明1では、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤を含む40~85質量%の粉末相」とあるが、本件特許明細書では、粉末相のうち「金属石鹸処理された球状充填剤」がどの程度含まれる場合に、本件特許発明で得られる効果が発揮されるかの記載がなく、「金属石鹸処理された球状充填剤」がどの程度含まれるかは、不明である。
また、本件特許発明1の「球状充填剤」の「球状」について、アスペクト比がいくつまでのものを「球状」と呼ぶのか、について一切記載がなく、どのような「球状」の充填剤で本件特許発明で得られる効果が発揮されるのか、が不明である。
よって、本件特許明細書は、当業者が本件特許発明1を実施しようとした場合に、どのように実施するのかを理解することができるように記載されていない。
(3-2)本件特許発明2との関係について
本件特許発明2では、「粉末相が、さらに、金属石鹸で表面処理された薄板状充填剤を含む」とあるが、本件特許明細書では、粉末相が「金属石鹸で表面処理された薄板状充填剤」をどの程度含む場合に、本件特許発明で得られる効果が発揮されるかの記載がない。
さらに、本件特許明細書の【0193】、【0198】に記載されている実施例では、「ステアリン酸マグネシウムでコーティングされた層状充填剤」と記載されているのみであって、具体的にどのような材料を用いた場合に本件特許発明の効果が得られたのかが開示されていない。
よって、本件特許明細書は、当業者が本件特許発明2を実施しようとした場合に、どのように実施するのかを理解することができるように記載されていない。
(3-3)本件特許発明4との関係について
本件特許発明4では、「粉末相が、金属石鹸で表面処理されているか又は金属石鹸で表面処理されていない真珠光沢粉末及び/又は顔料を含む」とあるが、本件特許明細書では、粉末相が金属石鹸によって表面された真珠光沢粉末が、組成物の総質量に対して30質量%~50質量%で含まれる点は開示されているが、その他の「金属石鹸で表面処理されていない真珠光沢粉末」、又は「顔料」をそれぞれどの程度含む場合に、本件特許発明で得られる効果が発揮されるかの記載がない。
よって、本件特許明細書は、当業者が本件特許発明4を実施しようとした場合に、どのように実施するのかを理解することができるように記載されていない。
(4)申立理由4(特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号))
本件特許の特許請求の範囲の記載には不備があり、本件特許発明1~20は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
具体的な理由の概要は次のとおりである。
(4-1)本件特許発明1について
A 金属石鹸で処理された球状充填剤の含有率について
本件特許発明1では、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤を含む40~85質量%の粉末相」とあるが「金属石鹸処理された球状充填剤」がどの程度含まれるか、が規定されていない。
特許権者は、2024年6月25日付で提出した提出した意見書の主張からは、「金属石鹸で表面処理をした球状充填剤」が本件特許発明の効果を得るためのキーとなる成分であると解釈していると考えられる。
しかし、本件特許発明1では、極めて微量の金属石鹸処理された球状充填剤を含むのみである場合も含まれる。このような場合に、特許権者の主張する効果が得られるのか不明である。
よって、本件特許発明1では、本件特許発明が得ようとする効果が得られない構成を含むものであって、本件特許発明1は、当業者が本件特許明細書の発明の詳細な説明から発明の課題が解決できると認識できる範囲を超えている。
B 「金属石鹸で処理された球状充填剤」について
「球状充填剤」として、本件特許明細書の【0193】、【0198】に記載されている実施例、2024年6月27日付で提出された手続補足書に記載の実験例は全て、「ステアリン酸マグネシウムでコーティングされた球状充填剤(Cellulobeads)」を用いた場合しか記載されていない。つまり、ステアリン酸マグネシウムで処理された球状セルロース粉末を用いた場合しか効果が確認されていない。
よって、明細書に開示されているシリカ粉末、アクリルポリマー粉末、ポリウレタン粉末等を使用した場合にまで本件特許発明の効果が得られることの具体的な根拠が本件特許明細書には記載されていないし、金属石鹸処理についてもステアリン酸マグネシウム以外のラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸を用いた場合にまで同様の効果が得られることの具体的な根拠が本件特許明細書には記載されていない。
よって、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」が、実際に効果が確認されている「ステアリン酸マグネシウムで表面処理された球状セルロース粉末」に特定されてない本件特許発明1は、当業者が本件特許明細書の発明の詳細な説明から発明の課題が解決できると認識できる範囲を超えている。
C その他のステアリン酸マグネシウムで表面処理された粉末を含む構成について
本件特許明細書の【0193】、【0198】に記載されている実施例、2024年6月27日付で提出された手続補足書に記載の実験例は全て、ステアリン酸マグネシウムで処理された球状セルロース粉末以外に、「ステアリン酸マグネシウムでコーティングされた層状充填剤」および/または「ステアリン酸マグネシウムでコーティングされた真珠光沢粉末」を含む構成であり、「ステアリン酸マグネシウムで処理された球状セルロース粉末」のみを含んだ場合に本件特許明細書に記載の効果が得られることの具体的な根拠が本件特許明細書には記載されていない。
よって、「ステアリン酸マグネシウムで処理された球状セルロース粉末」に加えて、「ステアリン酸マグネシウムで表面処理された層状充填剤」および/または「ステアリン酸マグネシウムで表面処理された真珠光沢粉末」を含むことも特定されていない本件特許発明1は、当業者が本件特許明細書の発明の詳細な説明から発明の課題が解決できると認識できる範囲を超えている。
(4-2)本件特許発明2について
本件特許発明2では、「粉末相が、さらに、金属石鹸で表面処理された薄板状充填剤を含む」とあるが、「金属石鹸で表面処理された薄板状充填剤」の含有率が特定されておらず、極めて低い含有率で含まれる場合も本件特許発明2の範囲に含まれる。
加えて、本件特許明細書の【0193】、【0198】に記載されている実施例、2024年6月27日付で提出された手続補足書に記載の実験例は全て、「ステアリン酸マグネシウム」でコーティングされた層状充填剤を含む構成であり、「ステアリン酸マグネシウム」以外の表面処理剤で処理された層状充填剤で本件特許明細書に記載の効果が得られることの具体的な根拠が本件特許明細書には記載されていない。
よって、本件特許発明2は、金属石鹸で処理された層状充填剤の含有率が特定されていない点、さらには金属石鹸が「ステアリン酸マグネシウム」に特定されていない点において、本件特許発明2は、当業者が本件特許明細書の発明の詳細な説明から、発明の課題が解決できると当業者が認識できる範囲を超えている。
(4-3)本件特許発明4との関係について
本件特許発明4では、「粉末相が、金属石鹸で表面処理されているか又は金属石鹸で表面処理されていない真珠光沢粉末及び/又は顔料を含む」とあるが、「金属石鹸で表面処理されているか又は金属石鹸で表面処理されていない真珠光沢粉末」、「顔料」の含有率はそれぞれ特定されておらず、極めて低い含有率で含まれる場合も本件特許発明4の範囲に含まれる。
よって、本件特許発明4は、本件特許発明の効果が得られない構成が含まれており、本件特許発明4は、当業者が本件特許明細書の発明の詳細な説明から発明の課題が解決できると当業者が認識できる範囲を超えている。
(5)申立理由5(特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号))
本件特許の特許請求の範囲の記載には不備があり、本件特許発明1~20は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
具体的な理由の概要は次のとおりである。
(5-1)本件特許発明1について
A 本件特許発明1に記載の「球状充填剤」の「球状」について
本件特許明細書には、「球状」がいかなる形状までを包含するのかが一切定義されておらず、本件特許発明1中にも何ら定義もなされておらず、真球状(つまり、アスペクト比1)のものに限られるのか、アスペクト比が1を超える略球状も含むものであるか、そして略球状のものを含むのであれば、アスペクト比がいくつまで許容されるのかが明確ではない。
B 本件特許発明1に記載の「金属石鹸で表面処理された球状充填剤を含む40~85質量%の粉末相」について
本件特許発明1では「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」が「粉末相」にどの程度含まれるかが規定されておらず、金属石鹸処理された球状充填剤を発明の効果が得られないような微量に含む場合も含まれる。
よって、金属石鹸で表面処理された球状充填剤は、どの程度含まれることによって所望とする効果が発揮されるのかが明確ではない。
C 本件特許発明1に記載の「少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相」について
本件特許発明1に記載の「不揮発性油を含む脂肪相」の「脂肪相」は不揮発性油に限られず、揮発性油等の他の油性成分も含むものと解釈される。
しかし、本件特許発明13には、「少なくとも1種の揮発性油を含む脂肪相を含まない」との記載があり、「少なくとも1種の揮発性油を含む脂肪相を含まない」のであれば、本件特許発明1の「少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相」も含まれないと解釈され、本件特許発明1に記載の「脂肪相」は、本件特許発明13に記載の「脂肪相」とどのような関係に立つのかを明確に把握することができない。
(5-2)本件特許発明13について
本件特許発明13に記載の「少なくとも1種の揮発性油を含む脂肪相を含まない」について、本件特許発明13に記載の「脂肪相」は揮発性油以外の不揮発性油も含むと認識される。一方、本件特許発明1では、「不揮発性油を含む脂肪相」と記載されており、不揮発性油以外の油性成分、例えば揮発性油を含むと認識される。
そうであると、「少なくとも1種の揮発性油を含む脂肪相を含まない」とすると、本件特許発明1に記載されている不揮発性油を含む脂肪相も含有されないこととなる。
よって、本件特許発明13に記載の「脂肪相」は、本件特許発明1に記載の「脂肪相」とどのような関係に立つのかが、不明確である。
(6)証拠方法
甲第1号証:特公昭63-39565号公報
甲第2号証:特開2002-302415号公報
甲第3号証:特開2003-146829号公報
甲第4号証:特許第3770536号公報
甲第5号証:光井武夫編、新化粧品学、株式会社南山堂、2009年3月20日2版5刷、165頁
甲第6号証:特開2019-73474号公報
甲第7号証:国際公開第2017/006488号
甲第8号証:特開2013-221000号公報
本件訂正前の請求項1~20に係る特許について、当審合議体が令和7年5月29日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
[取消理由1](明確性要件違反)
本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件請求項1~20に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
具体的な理由の概要は次のとおりである。
本件請求項1に記載された「球状充填剤」について、「球状」は充填剤の形状を特定する語であると解されるところ、「球状」がどの程度の「アスペクト比」の範囲のものまでが含まれるかなど、いかなる範囲の形状までが「球状」に包含されるのかが明確でない。
[取消理由2](新規性欠如)
本件請求項1~10、13~15、17及び19に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1又は甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1~10、13~15、17及び19に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
主引用例と対象請求項の関係は次のとおりである。
甲1/請求項1、3~8、10、13、14、17、19
甲2/請求項1~4、8~10、14、15、17、19
[取消理由3](進歩性欠如)
本件請求項1~17、19及び20に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1又は甲2に記載された発明、並びに、甲1又は甲2に記載された事項、及び、甲4~甲6に記載された周知技術に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~17、19及び20に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
主引用例(副引用例)と対象請求項の関係は次のとおりである。
甲1(甲4~甲6)/請求項1~8、10、13、14、17、19、20
甲2(甲1、甲4~甲6)/請求項1~17、19、20
取消理由2及び3について引用した甲1、甲2及び甲4~6は、上記1で示した甲第1、2及び4~6号証である。
当審合議体は、本件発明1~20に係る特許は、取消理由通知で通知した取消理由及び申立人が申し立てた申立理由によっては、取り消すことはできないものと判断する。その理由は以下のとおりである。
なお、以下の記載事項の摘記において、下線は当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。
(1)取消理由1(明確性要件違反)について
特許権者が令和7年9月1日に提出した意見書に添付した乙第1号証(日本化粧品技術者会編、化粧品事典、丸善株式会社、平成16年9月25日第2刷、412頁、「球状粉体」の項)には、
「
54
97
0001437365000001.jpg
」
と記載されている。
また、上記意見書、4~5頁に、
「「球状」(spherical)という用語の定義は、様々な辞書でも見つけることができます。例えば、ケンブリッジ辞書によれば、「球状」という用語は「丸い、ボールのような」という意味であると記載されています(https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/spherical)。
メリアム・ウェブスター辞典は、「球状の」(spherical)という用語を「球体またはその特性に関連する、または球体を扱うもの」と定義し、さらに「球状のものは、三次元的に丸い、あるいは多かれ少なかれ丸いという点で球体に似ています。例えば、リンゴとオレンジはどちらも球体ですが、完全に丸くはありません」と記載されています(https://www.merriam-webster.com/dictionary/spherical#:~:text=l,spherically)。
別の信頼できる辞典であるコリンズ辞典によると、「球状の」(spherical)という用語は「球のような形をした」または「球体の、または球体に関連する」という意味であると記載しています(https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/spherical)。
これらの異なる辞典はすべて、「球状の」(spherical)という用語に同じ定義をしており、これはこの「球状の」(spherical)という用語に、広く受け入れられている統一された定義が存在することを示しています。」と記載されているところ、上記各辞書及び辞典には概ねそのような事項が記載されている。
これらのことから、「球状」とは、文献によってその定義に多少の相違があるものの、概ね、比表面積が小さく、丸い、ボールのような形状をしたものであることを当業者は理解するといえる。
そして、甲2に、「一般に化粧料に用いられる粉体であれば、
球状
、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず」(【0005】)及び「(10)
球状
無水ケイ酸」(【0019】)と、甲3に、「
球状
ナイロン粉末、
球状
ポリメチルメタクリレート粉末、
球状
ポリエチレン粉末、
球状
ポリスチレン粉末、
球状
ベンゾグアナミン粉末、
球状
フッ素樹脂粉末等の
球状
有機粉末」(【0015】)と、甲7に、「
球状
セルロース粉末」([0043]及び[0044])と記載されるとおり、当該技術分野において「球状」との語は通常使用されている用語であるから、当業者はその形状を理解することができるといえる。
してみると、「球状」がどの程度の「アスペクト比」の範囲のものまでが含まれるか等の特段の定義がなくとも、当業者はどのような範囲の形状が「球状」に包含されるかを理解することができるといえる。
したがって、請求項1の「球状充填剤」との記載に不明確な点はなく、本件発明1~20は明確である。
よって、取消理由1は理由がない。
(2)取消理由2(新規性欠如)及び取消理由3(進歩性欠如)について
ア 引用文献の記載事項
以下では、取消理由で引用した文献及び申立理由1及び2の根拠とされた文献を併せて記載する。
(ア)甲1について
甲1には以下の記載がある。
甲1a)
「1 粒径1~30μの球状のシリカゲルに金属石けんをコーテングすることにより得られ且つ前記シリカゲルと金属石けんとの組成比が99:1~70:30である粉体を含有していることを特徴とする化粧料。」
(特許請求の範囲)
甲1b)
「本発明は斯る実情に鑑みてなされたものであつて、皮膚に塗擦した場合に充分に滑らかで伸びの軽い感触を得ることができるとともにカサ付き感がないばかりか適度のさつぱり感を有し、しかも皮膚との親和性がよく柔軟で湿潤な感触を得ることのできる化粧料を提供するものである。」
(2欄16~21行)
甲1c)
「次に、前記のようなシリカゲルをコーテングするための金属石けんは一般式(RCOO)nMで示される化合物(ここで、Rは炭素数6~8以上の脂肪族または環状炭化水素基、Mはアルカリ金属以外の金属、nはその金属の原子価を示す。)のうちで分散性、潤滑性、柔軟性、付着性に優れ且つ安全性の高いものが好ましく、例えばステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛など粉末状のもの或いはロウ状のものが挙げられる。」
(3欄18~27行)
甲1d)
「【製造例 4】
トルエン-オクタン混合液(2:1)2000mlに粒径1~25μの球形のシリカゲルの径の異なる混合物90gを加えて70°Cに加温し、緩やかに撹拌しながらラウリン酸亜鉛5gとオレイン酸亜鉛5gとを少量ずつ添加し60分間加温、撹拌を続け、減圧蒸溜(3mmHg、溜出温度70°C)により溶剤を留去する。次で、15~20°Cの温度に保ちながらエタノール1000mlを加えて60分間撹拌し濾過する。かかる操作を二回繰り返した後、洗浄して70°Cにて減圧乾燥し、ラウリン酸亜鉛-オレイン酸亜鉛混合物をコーテングした粉体(粒径約1~25μ)ほぼ100gを得た。
このようにして得られた粉体は球状のシリカゲルの表面に金属石けんの薄い膜によるコーテングが施されてシリカゲルの表面を完全に被覆するとともに密着し、単一体となつて水系、非水系のいずれにおいても分離することなく挙動するものである。また、通常はシリカゲル単体がきわめて飛散しやすいのに対し、本発明に用いられる粉体は飛散性がなく分散能が良好であるため、充填性、生産性においても優れている。」
(5欄8~29行)
甲1e)
「次に本発明の実施例を示す。尚、配合割合は重量部である。
・・・
【実施例2】(当審注:【】は原文では中抜き。) 油性コンパクトフアンデーシヨン
A 成分
カルナウバロウ 2.0
ベヘニルアルコール 9.0
固形パラフイン 3.5
セタノール 4.0
ラノリン 7.0
流動パラフイン 6.0
活性剤 2.0
着色顔料ペースト 26.5
B 成分
タルク 10.0
製造例4により得られた粉体 30.0
香 料 0.5
A成分を85°C以上に加温し、撹拌しながら65°Cまで放冷し、B成分を少しずつ加えてよく分散させ、次で香料を加えて65°C(±5°C)を保つて中皿容器に直接流し込み常温で放冷して製品を得る。」
(7欄3~41行)
(イ)甲2について
甲2には以下の記載がある。
甲2a)
「【請求項1】 粉体成分50~90重量%及び油性成分10~50重量%を含有する油性固型化粧料であって、油性成分中にHLB値が12以下のショ糖脂肪酸エステルを必須成分として含有すると共に、該ショ糖脂肪酸エステルを含む固形油の比率が油性成分全体に対して15~60重量%であることを特徴とする油性固型化粧料。」
甲2b)
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、塗布時ののび等の使用性を低下せず、溶融充填性、保型性の低下を招くことなく、マットな質感が得られる油性固型化粧料を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】・・・すなわち本発明は、粉体成分50~90重量%(以下単に「%」で示す)・・・」
甲2c)
「【0005】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。本発明で使用される粉体成分としては、一般に化粧料に用いられる粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、真珠光沢顔料類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等を用いることができる。より具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、無水ケイ酸、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、チタン酸リチウムコバルト、マイカ、合成マイカ、焼成マイカ、セリサイト、タルク、カオリン、硫酸バリウム、ベントナイト、窒化ホウ素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン等の真珠光沢顔料類、ステアリン酸亜鉛、N-アシルリジン、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリメチルシルセスキオキサン、シリコーンゴム等の有機粉体類、有機顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆ナイロンパウダー、ジルコニア被覆酸化チタン含有二酸化ケイ素等の複合粉体が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。またこれらの粉体は一種又は二種以上の複合化したものを用いてもよく、フッ素化合物、シリコーン系化合物、金属石けん、界面活性剤、高分子等を用いて公知の方法により表面処理を施したものであってもよい。
【0006】粉体成分の配合量は本発明の油性固型化粧料中に50~90%であり、好ましくは55~85%である。50%未満では、パウダリーな使用感が得られず、90%を超えて配合すると、溶融充填性が悪くなり好ましくない。これら粉体のうちでも真珠光沢顔料を、30~60%配合することがメイクアップ効果を高める上で特に好ましい。」
甲2d)
「【0008】本発明で使用される油性成分中の固形油は、通常化粧品用に使用されるものであれば、特に制限されず、炭化水素類、ロウ類、油脂類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、硬化油類、シリコーン系ワックス類、フッ素系ワックス類等を適宜使用することができる。より具体的には、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エチレンプロピレンコポリマー、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、ライスワックス、硬化ヒマシ油、ステアリン酸、パルミチン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、水添ホホバ油、ステアリル変性ポリシロキサン等が挙げられる。ショ糖脂肪酸エステルを含む固形油の比率は、全油性成分に対して15~60%であり、好ましくは、25~55%である。この比率が15%未満では充分な保型性が得られず、60%を越えて配合すると、溶融充填時に充分な流動性が得られず、使用時ののびも低下するため好ましくない。
【0009】油性成分中の固形油以外の油性成分としては、通常化粧品に用いられる任意の液状及び半固形油を使用することができる。液状及び半固形油としては、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、液状油には揮発性油分も含まれる。具体的には炭化水素類、ラノリン及びラノリン誘導体類、油脂類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類等が挙げられ、より具体的には、例えばワセリン、流動パラフィン、スクワラン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ラノリン、ヒマシ油、オリーブ油、2-エチルヘキサン酸セチル、トリオクタン酸グリセリル、イソステアリン酸、オレイルアルコール、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、フッ素変性シリコーン、パーフルオロポリエーテル等が挙げられ、揮発性油分としては、沸点260°C以下の低沸点イソパラフィン、低分子鎖状ジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0010】本発明の油性固型化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、各種成分、例えば、紫外線吸収剤、保湿剤、皮膜形成剤、退色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、防腐剤、香料、界面活性剤、動植物エキス、生理活性成分、水等を適宜配合することができる。」
甲2e)
「【0019】
実施例4:ファンデーション
(成分) (%)
(1)パラフィンワックス 3.0
(2)マイクロクリスタリンワックス 2.0
(3)キャンデリラロウ 2.0
(4)ショ糖脂肪酸エステル(HLB1) 5.0
(5)トリオクタン酸グリセリル 10.0
(6)ジメチルポリシロキサン 8.0
(7)シリコーン被覆酸化チタン 15.0
(8)シリコーン被覆酸化鉄(赤、黄、黒) 5.0
(9)ポリメチルメタクリレート 15.0
(10)球状無水ケイ酸 10.0
(11)金属石けん処理微粒子酸化チタン 5.0
(12)フッ素化合物処理セリサイト 20.0
【0020】(製造方法)成分(1)~(6)を加熱溶解した後、成分(7)~(12)を加え十分に加熱攪拌混合する。これを金皿に溶融充填して製品とした。本発明のファンデーションはのびの良さ、べたつきのなさ、マットな仕上がり、溶融充填性、保型性のすべての点において優れたものであった。」
(ウ)甲3について
甲3には以下の記載がある。
甲3a)
「【請求項1】 金属石鹸または水添レシチンで表面処理したことを特徴とする微結晶セルロース粉体」
甲3b)
「【0006】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、微結晶セルロース粉体を金属石鹸または水添レシチンで表面処理することにより、撥水、撥油性に優れ、かつ使用感、特に肌に対するソフトな感触に優れた化粧用粉体となり、固形メーキャップ化粧料に配合することにより、使用感、特に肌に対するソフトな感触に優れ、化粧崩れしにくい化粧料となることを見出し、本発明を完成させた。」
甲3c)
「【0009】微結晶セルロ-スの物性値(平均粒子径、L/D)は、下記の方法で評価した。微結晶セルロース微粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡観察((株)日立製作所社製、S-800A型)により、以下の方法で測定した値を採用した。微粉末試料を検鏡用試料台に載物し、イオンスパッタ装置等により金や白金等の金属を蒸着して検鏡試料とする。平均粒子径は、この検鏡試料を加速電圧5KVで拡大倍率3000倍で観察した画像から無作為抽出した50個の粒子の粒子径を測定して、重量平均粒子径を求めた。
【0010】また、微粒子の長径(L)と短径(D)との比(L/D)は、上述した平均粒子径の測定方法に準じて長径(L)と短径(D)を測定し、その平均値を採用した。本発明で使用される結晶セルロースの平均粒子径、形状については特に制限はなく使用可能であるが、平均粒子径30μm以下、L/D3以下が好ましい。さらに好ましくは、平均粒子径15μm以下、L/D 2~3である。理由は、肌につけた時のざらつき感がなく、かつ滑りも良好なためである。
【0011】さらに、微結晶セルロースを、金属石鹸または水添レシチンで表面処理する。金属石鹸とは、非アルカリ金属の高級脂肪酸塩である。金属石鹸の脂肪酸成分として例えばラウリル酸、ミルスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸が挙げられる。また、金属石鹸を構成する金属成分としては、アルカリ金属以外の金属ならば特に制限はなく、例えばアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、チタン等が挙げられる。これらの金属石鹸うち一種または二種以上選択し組み合わせて使用できる。」
甲3d)
「【0016】また、粉体以外の成分としては、結合剤や機能性成分として例えば液体油、固形脂(ワックス)、半固形油、紫外線遮蔽剤、ポリオール等の保湿剤、水溶性高分子、油溶性高分子、高分子ラテックス、各種界面活性剤、香料、酸化防止剤、ビタミン類、ホルモン類等を使用できる。結合剤として例えば、アラビアゴム、トラガントゴム、ステアリン酸グリセリン、グリセリン、ブドウ糖、ソルビット等が使用できる。
【0017】液体油としては、通常化粧料等に用いられる液体油であれば特に限定されず、例えばアボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ホホバ油等の植物油;オレイン酸、イソステアリン酸等の脂肪酸;ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類;2-エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸-2-オクチルドデシル、ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エ チルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸-2-オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、トリイソステ アリン酸グリセロール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸-2-オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、トリイソステアリン酸グリセロ ール、2-エチルヘキサン酸ジグリセリド、ジ-パラメトキシケイヒ酸-モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル等のエステル類;ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のシリコン油;流動パラフィン、スクワレン、スクワラン等の液状炭化水素油等が挙げられ、1種または2種以上を混合して用いることができる。これら液体油は、使用感、パフ等の用具への取れなどの点から、全組成中に5%以下の範囲で配合するのが好ましい。」
甲3e)
「【0019】以下、実施例を挙げて本技術を詳細に説明する。配合量は 重量%である。実施例に先立ち、評価方法について説明する。
(金属処理粉体の物性測定)
安息角:セイシン企業製マルチテスターにより測定した。
撥水角:粉体を錠剤成形器にて13mm程度のプレートに成形し、その上から水滴あるいは流動パラフィンを1滴落し、エルマ社製のゴニオメーター式接触角測定器G-1で接触角を測定した。
(化粧品としての官能評価)専門パネル10名により1~5の5段階の官能評価を下記のそれぞれの項目ごとに行なった。
取れ、のび
1:悪い
2:やや悪い
3:普通
4:やや良い
5:良い
もち(塗布してから2時間後判定した)
1:化粧くずれがひどい
2:化粧くずれしている
3:やや化粧くずれしている
4:ほとんど化粧くずれしていない
5:全く化粧くずれしていない
仕上りのきれいさ
1:非常にきたない
2:きたない
3:普通
4:きれい
5:非常にきれい
結果は10名の5段階評価の平均値で下記のように表した。
◎ :4.5以上 5.0以下
○ :3.5以上 4.5未満
△ :2.5以上 3.5未満
× :1.5以上 2.5未満
××:1.0以上 1.5未満」
甲3f)
「【0020】(金属石鹸処理微結晶セルロースの調製)結晶セルロース(商品名アビセルPHM06、旭化成株式会社製)500gを水4Lに投入し、ステアリン酸ソーダを35gを加え、十分攪拌し、スラリーとした。これに、攪拌しながら硫酸亜鉛の20%水溶液60mlを10分間で滴下混合する。その後、10分間攪拌する。その後、ヌッチェで吸引濾過し、乾燥機内で、60°Cで3時間乾燥し、乳鉢で粉砕して試料を得た。この試料について、物性を測定したところ表1の通りであった。金属石鹸処理の結果、撥水性、撥油性、流動性が向上した。」
甲3g)
「【0020】(金属石鹸処理微結晶セルロースの調製)結晶セルロース(商品名アビセルPHM06、旭化成株式会社製)500gを水4Lに投入し、ステアリン酸ソーダを35gを加え、十分攪拌し、スラリーとした。これに、攪拌しながら硫酸亜鉛の20%水溶液60mlを10分間で滴下混合する。その後、10分間攪拌する。その後、ヌッチェで吸引濾過し、乾燥機内で、60°Cで3時間乾燥し、乳鉢で粉砕して試料を得た。この試料について、物性を測定したところ表1の通りであった。金属石鹸処理の結果、撥水性、撥油性、流動性が向上した。
・・・
【0023】
【実施例3、比較例5】以下の配合で固形頬紅を調製した。
(調製方法)表7の各組成で、ブレンダーで混合する。その後、防腐剤、酸化防止剤を加え、香料を噴霧して均一に混ぜる。これを圧縮成形して頬紅とした。
実施例3と比較例5の評価結果を表8に示す。」
甲3h)
「【0032】
【表7】
44
153
0001437365000002.jpg
【0033】
【表8】
20
153
0001437365000003.jpg
」
(エ)甲4について
甲4には以下の記載がある。
甲4a)
「【請求項1】
窒化硼素100重量部に対して、0.1~20重量部の金属石けんを被覆した、金属石けん処理窒化硼素を0.1~50重量%含有するプレス成型して製造された粉体固形化粧料。」
甲4b)
「【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、先の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、表面を金属石けんで処理した窒化硼素を配合することにより、窒化硼素の滑りの良さ,光輝性等の長所を維持したまま、肌への付着性及び化粧持ちが良好で、仕上がりに自然な艶を付与し、しかもプレス成型性に優れた粉体固形化粧料が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
・・・
【0010】
本発明においては、窒化硼素の表面を金属石けんで処理して用いる。金属石けんとしては、炭素数10~20の飽和脂肪酸、例えばミリスチン酸,ステアリン酸,ラウリン酸等と、非アルカリ金属塩、特にカルシウム,亜鉛,マグネシウム,アルミニウム等の2価若しくは3価の金属との塩が好適に用いられる。具体的には、ラウリン酸亜鉛,ジミリスチン酸アルミニウム,ミリスチン酸マグネシウム,ミリスチン酸亜鉛,ジステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸マグネシウム,ステアリン酸亜鉛等が例示され、なかでも本発明の効果の点から、ミリスチン酸マグネシウムが好適に用いられる。」
(オ)甲5について
甲5には以下の記載がある。
甲5a)
「
70
153
0001437365000004.jpg
」
(「5-8 >> その他の原料」の「金属石けん Metallic soaps」の項目)
(カ)甲6について
甲6には以下の記載がある。
甲6a)
「【請求項1】
成分(A):金属石鹸処理粉体、
成分(B):α-D-グルコースを構成糖とし、かつ分子内に分岐がある糖高分子、および
成分(C):ジメチコノールおよびアミノシランの架橋生成物で表面処理された粉体、
を有する固形粉末化粧料。」
甲6b)
「【0015】
本願の成分(A)は、粉体表面が金属石鹸で被覆されていることで、粉体同士を緩やかに結合する。特に表面処理剤として金属石鹸を用いることで肌付着性が高まり、化粧料のなめらかな使用感が向上するため、肌上での化粧料の伸び広がりが向上する。これに、成分(B)を含有することで、成分(B)における糖構造が金属石鹸処理粉体同士を結合し、耐衝撃性が顕著に向上するとともに、成分(B)が分岐鎖を持つことで、結合の自由度が増し、とれが良好となり、またケーキングが抑制されるものと考えられる。」
(キ)甲7について
甲7には以下の記載がある。
甲7a)
「[0020] 前記特定の疎水化処理される粉体は、顔料級または微粒子の、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、雲母チタン、黒酸化鉄、黄酸化鉄、ベンガラ、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、シリカ、酸化セリウム等から選択される1種又は2種以上である。中でも、顔料級酸化チタン、顔料級酸化亜鉛、及び顔料級酸化鉄からなる群から選択される顔料級粉体に前記特定の疎水化処理を施した粉体と、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、及び微粒子酸化鉄からなる群から選択される微粒子粉体に前記特定の疎水化処理を施した粉体とを、化粧料に配合するのが好ましい。」
甲7b)
「[0023] 粉体の平均粒子径は特に限定されないが、平均一次粒子径が0.001μm~100μm、好ましくは0.001μm~10μmの粉体が用いられる。ただし、その平均粒子径は油相の乳化粒子より小さくするように調整するのが好ましい。なお、「微粒子」は平均一次粒子径が0.001~0.1μmの粉体を指し、「顔料級」は平均一次粒子径が0.2~0.4μmの粉体を指すものとする。」
(ク)甲8について
甲8には以下の記載がある。
甲8a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均一次粒子径が5μm以下で、全粒子の90体積%以上の粒子の一次粒子径が2~7μmの範囲にあり、球形の最長径と最短径の比率(最長径/最短径)が1.0~2.5の範囲にあり、20質量%のシリコンオイルペーストのヘイズ値が70%以上で、且つ全透過光率が95%以上であることを特徴とする球状セルロース粉体。」
イ 引用発明
(ア)甲1発明
甲1には、粒径1~30μの球状のシリカゲルに金属石けんをコーテングすることにより得られかつ前記シリカゲルと金属石けんとの組成比が99:1~70:30である粉体を含有していることを特徴とする化粧料について記載されているところ(摘記甲1a~甲1e)、当該化粧料の具体例である実施例2として、油性コンパクトフアンデーシヨンが記載されている(摘記甲1e)。
そうすると、甲1の記載、特に、上記実施例2の記載からみて、甲1には、次に示す発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「以下の処方からなる油性コンパクトフアンデーシヨン。
A 成分 重量部
カルナウバロウ 2.0
ベヘニルアルコール 9.0
固形パラフイン 3.5
セタノール 4.0
ラノリン 7.0
流動パラフイン 6.0
活性剤 2.0
着色顔料ペースト 26.5
B 成分
タルク 10.0
製造例4により得られた粉体 30.0
香 料 0.5
上記「製造例4」は次のとおり。
トルエン-オクタン混合液(2:1)2000mlに粒径1~25μの球形のシリカゲルの径の異なる混合物90gを加えて70°Cに加温し、緩やかに撹拌しながらラウリン酸亜鉛5gとオレイン酸亜鉛5gとを少量ずつ添加し60分間加温、撹拌を続け、減圧蒸溜(3mmHg、溜出温度70°C)により溶剤を留去する。次で、15~20°Cの温度に保ちながらエタノール1000mlを加えて60分間撹拌し濾過する。かかる操作を二回繰り返した後、洗浄して70°Cにて減圧乾燥し、ラウリン酸亜鉛-オレイン酸亜鉛混合物をコーテングした粉体(粒径約1~25μ)ほぼ100gを得る。」
(イ)甲2発明
甲2には、粉体成分50~90重量%及び油性成分10~50重量%を含有する油性固型化粧料であって、油性成分中にHLB値が12以下のショ糖脂肪酸エステルを必須成分として含有すると共に、該ショ糖脂肪酸エステルを含む固形油の比率が油性成分全体に対して15~60重量%であることを特徴とする油性固型化粧料について記載されているところ(摘記甲2a~甲2e)、当該油性固型化粧料の具体例である実施例4として、ファンデーションが記載されている(摘記甲2e)。
そうすると、甲2の記載、特に、上記実施例4の記載からみて、甲2には、次に示す発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認める。
「以下の処方からなるファンデーション。
(成分) (重量%)
(1)パラフィンワックス 3.0
(2)マイクロクリスタリンワックス 2.0
(3)キャンデリラロウ 2.0
(4)ショ糖脂肪酸エステル(HLB1) 5.0
(5)トリオクタン酸グリセリル 10.0
(6)ジメチルポリシロキサン 8.0
(7)シリコーン被覆酸化チタン 15.0
(8)シリコーン被覆酸化鉄(赤、黄、黒) 5.0
(9)ポリメチルメタクリレート 15.0
(10)球状無水ケイ酸 10.0
(11)金属石けん処理微粒子酸化チタン 5.0
(12)フッ素化合物処理セリサイト 20.0」
ウ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 甲1発明との対比・判断
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明におけるA成分のうち、「カルナウバロウ」、「ベヘニルアルコール」、「固形パラフイン」、「セタノール」、「ラノリン」及び「流動パラフィン」は、いずれも脂肪相を構成するものといえ、これらの成分のうち、少なくとも「流動パラフィン」は、本件発明1における「不揮発性油」に相当するから、これらの成分は、本件発明1における「少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相」に相当し、これらの成分の合計含有量は31.5重量部であって、A成分とB成分の合計含有量100.5重量部に対して約31.3重量%であるから、本件発明1において、脂肪相が「12~50質量%」であることに相当する。
甲1発明におけるA成分のうち、「着色顔料ペースト」について、本件訂正により訂正された明細書(以下「本件明細書」という。)には、顔料は粉末相を形成する物質として記載されているから(【0066】~【0088】)、本件発明1における「粉末相」を構成する成分に相当する。
甲1発明におけるB成分に含まれる成分のうち、「製造例4により得られた粉体」は、「球形のシリカゲル」を用いて製造された「ラウリン酸亜鉛-オレイン酸亜鉛混合物をコーテングした粉体」であるから、本件発明1における「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」に相当する。
甲1発明におけるB成分のうち、「タルク」は粉体であるから、当該B成分のうち、「タルク」及び「製造例4により得られた粉体」は、本件発明1における「粉末相」を構成する成分に相当する。
また、甲1発明におけるA成分のうちの「着色顔料ペースト」並びに甲1発明におけるB成分のうちの「タルク」及び「製造例4により得られた粉体」の合計含有量は66.5重量部であって、A成分とB成分の合計含有量100.5重量部に対して約66.2重量%であるから、本件発明1において、粉末相が「40~85質量%」であることに相当する。
甲1発明における成分についての上記含有量(重量%)は、組成物の総重量に対する重量で表したものであり、「重量%」と「質量%」が、組成物中の成分の割合を示す数値としては、同じ値になることは、技術常識であることから、本件発明1における「百分率(%)は組成物の総質量に対して質量で表される」ことに相当する。
甲1発明の「油性コンパクトフアンデーシヨン」は、「65°C(±5°C)を保つて中皿容器に直接流し込み常温で放冷して製品を得る」ものであるから(摘記甲1e)、常温で固体であるといえ、本件発明1の「固体化粧用組成物」に相当する。
なお、上記の含有量の検討において、甲1発明におけるA成分の「活性剤」及びB成分の「香料」の含有量を考慮していないが、それらの成分が「脂肪相」と「粉末相」のいずれに含まれる成分であったとしても、上記判断を左右するものではない。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、
「- 12~50質量%の、少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相と、
- 金属石鹸で表面処理された球状充填剤を含む40~85質量%の粉末相と
を含む固体化粧用組成物であって、
前記の百分率(%)は組成物の総質量に対して質量で表される、固体化粧用組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-甲1>
「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」について、本件発明1は、「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」であるのに対し、甲1発明は、「球形のシリカゲル」を用いて製造された「ラウリン酸亜鉛-オレイン酸亜鉛混合物をコーテングした粉体」である点。
そして、上記相違点1-甲1は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は甲1に記載された発明であるとはいえない。
また、上記相違点1-甲1について、甲1には、粒径1~30μの球状のシリカゲルに金属石けんをコーテングすることにより得られ且つ前記シリカゲルと金属石けんとの組成比が99:1~70:30である粉体を含有していることを特徴とする化粧料について記載されているところ(摘記甲1a~甲1e)、当該化粧料に、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」である「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」を配合することは記載も示唆もされていない。
また、甲4~甲6にも、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」である「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」は記載されていないから、甲4~甲6の記載を参酌しても、甲1発明に「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」である「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」を配合することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明、並びに、甲1に記載された事項及び甲4~甲6に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
b 甲2発明との対比・判断
本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明における成分のうち、「(1)パラフィンワックス」、「(2)マイクロクリスタリンワックス」、「(3)キャンデリラロウ」、「(5)トリオクタン酸グリセリル」及び「(6)ジメチルポリシロキサン」は、いずれも脂肪相を構成するものといえ、これらの成分のうち、「(1)パラフィンワックス」、「(2)マイクロクリスタリンワックス」、「(3)キャンデリラロウ」及び「(5)トリオクタン酸グリセリル」は、本件発明1における「不揮発性油」に相当するから、これらの成分は、本件発明1における「少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相」に相当し、これら成分の合計含有量は25.0重量%であるから、本件発明1において、脂肪相が「12~50質量%」であることに相当する。
なお、上記以外の甲2発明の成分のうち、(7)~(12)が脂肪相を構成しないことは明らかであり、(4)が脂肪相を構成するか否かは上記の認定を左右するものではない。
甲2発明における成分のうち、(7)~(12)は、いずれも粉体であるから、本件発明1における「粉末相」を構成する成分に相当する。
甲2発明における成分のうち、「(11)金属石けん処理微粒子酸化チタン」について、甲2には当該成分が球状であるとの記載はないが、甲2には、「本発明で使用される粉体成分としては、一般に化粧料に用いられる粉体であれば、
球状
、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、真珠光沢顔料類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等を用いることができる。」との記載があるから(摘記甲2c、【0005】)、甲2発明における「(11)金属石けん処理微粒子酸化チタン」は球状であることを含むものであるといえる。
また、甲2発明における「(11)金属石けん処理微粒子酸化チタン」は、甲2に「充填剤」であるとの記載はないものの、甲2発明のファンデーションに充填される成分であること、本件明細書に、二酸化チタン等の各種顔料が充填剤として記載されているから(本件明細書【0074】~【0087】)、本件発明1の「充填剤」に相当するといえる。
そうすると、甲2発明における「(11)金属石けん処理微粒子酸化チタン」は、本件発明1における「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」に相当する。
甲2発明における成分(7)~(12)の合計含有量は70.0重量%であるから、本件発明1において、粉末相が「40~85質量%」であることに相当する。
甲2発明における成分についての上記含有量(重量%)は、組成物の総重量に対する重量で表したものであるところ、上記aで述べたのと同じ理由により、本件発明1における「百分率(%)は組成物の総質量に対して質量で表される」ことに相当する。
甲2発明の「ファンデーション」は、甲2の請求項1に記載された油性固型化粧料(摘記甲2a)の具体例であるから、本件発明1の「固体化粧用組成物」に相当する。
なお、上記の含有量の検討において、甲2発明における「(4)ショ糖脂肪酸エステル(HLB1)」の含有量を考慮していないが、当該成分が「脂肪相」と「粉末相」のいずれに含まれる成分であったとしても、上記判断を左右するものではない。
そうすると、本件発明1と甲2発明は、
「- 12~50質量%の少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相と、
- 金属石鹸で表面処理された球状充填剤を含む40~85質量%の粉末相と
を含む固体化粧用組成物であって、
前記の百分率(%)は組成物の総質量に対して質量で表される、固体化粧用組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-甲2>
「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」について、本件発明1は、「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」であるのに対し、甲2発明は、「(11)金属石けん処理微粒子酸化チタン」である点。
そして、上記相違点1-甲2は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は甲2に記載された発明であるとはいえない。
また、上記相違点1-甲2について、甲2には、粉体成分50~90重量%及び油性成分10~50重量%を含有する油性固型化粧料であって、油性成分中にHLB値が12以下のショ糖脂肪酸エステルを必須成分として含有すると共に、該ショ糖脂肪酸エステルを含む固形油の比率が油性成分全体に対して15~60重量%であることを特徴とする油性固型化粧料について記載されているところ(摘記甲2a~甲2e)、当該化粧料に、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」である「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」を配合することは記載も示唆もされていない。
また、甲1及び甲4~甲6にも、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」である「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」は記載されていないから、甲1及び甲4~甲6の記載を参酌しても、甲2発明に「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」である「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」を配合することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明、並びに、甲2に記載された事項並びに甲1及び甲4~甲6に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件発明2~20について
本件発明2~20は、いずれも請求項1の記載を直接的又は間接的に引用して特定される発明である。
したがって、本件発明1と同様に、本件発明3~8、10、13、14、17及び19は、甲1に記載された発明であるとはいえず、本件発明2~4、8~10、14、15、17及び19は甲2に記載された発明であるとはいえない。
また、本件発明1と同様に、本件発明2~8、10、13、14、17、19及び20は、甲1に記載された発明、並びに、甲1に記載された事項及び甲4~甲6に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件発明2~17、19及び20は、甲2に記載された発明、並びに、甲2に記載された事項並びに甲1及び甲4~甲6に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、取消理由2(新規性欠如)及び取消理由3(進歩性欠如)は理由がない。
(1)取消理由で採用しなかった理由
取消理由で採用しなかった理由はつぎのとおりである。
ア 申立理由1(新規性欠如)のうち、甲1を引例とし、請求項18及び20を対象とする理由
イ 申立理由1(新規性欠如)のうち、甲2を引例とし、請求項11~13、16及び18を対象とする理由
ウ 申立理由2(進歩性欠如)のうち、甲1を主引用例とする理由について、請求項9、11、12,15、16及び18を対象とする理由、並びに甲2を副引用例とする理由
エ 申立理由2(進歩性欠如)のうち、甲2を主引用例とする理由について、請求項18を対象とする理由、及び甲7を副引用例とする理由
オ 申立理由2(進歩性欠如)のうち、甲3を主引用例とする理由(請求項1~20)
カ 申立理由3(実施可能要件違反)
キ 申立理由4(サポート要件違反)
ク 申立理由5(明確性要件違反)のうち、上記第4の1(5-1)B及びC、並びに(5-2)
以下、上記ア~クの理由について検討する。
(2)ア及びイの理由(申立理由1(新規性欠如))について
上記1(2)ウ(ア)で述べたとおり、本件発明1は甲1及び甲2に記載された発明であるとはいえないところ、請求項11~13、16、18及び20は、いずれも請求項1の記載を直接的又は間接的に引用して特定される発明である。
したがって、本件発明1と同様に、本件発明18及び20は、甲1に記載された発明であるとはいえず、本件発明11~13、16及び18は、甲2に記載された発明であるとはいえない。
よって、上記ア及びイの理由(申立理由1(新規性欠如))は理由がない。
(3)ウの理由(申立理由2(進歩性欠如:甲1を主引用例とするもの))について
上記1(2)ウ(ア)aで述べたとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明、並びに、甲1に記載された事項及び甲4~甲6に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、上記1(2)ウ(ア)bで述べたとおり、甲2には、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」である「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」を配合することは記載も示唆もされていない。
したがって、甲1に記載された発明、並びに、甲1に記載された事項及び甲4~甲6に記載された周知技術に加えて、甲2に記載された事項を参酌しても、甲1発明に「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」である「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」を配合することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1、甲2及び甲4~甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明2~20は、いずれも請求項1の記載を直接的又は間接的に引用して特定される発明であるから、本件発明2~20は、本件発明1と同様に、甲1、甲2及び甲4~甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、上記ウの理由(申立理由2(進歩性欠如:甲1を主引用例とするもの))は理由がない。
(4)エの理由(申立理由2(進歩性欠如:甲2を主引用例とするもの))について
上記1(2)ウ(ア)bで述べたとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明、並びに、甲2に記載された事項並びに甲1及び甲4~甲6に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そして、甲7には、疎水化処理される粉体は、顔料級又は微粒子の酸化チタン等が記載され、顔料級及び微粒子の粒径について記載されているが(摘記甲7a及びb)、甲7には、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」である「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」を配合することは記載も示唆もされていない。
したがって、甲2に記載された発明、並びに、甲2に記載された事項並びに甲1及び甲4~甲6に記載された周知技術に加えて、甲7に記載された事項を参酌しても、甲2発明に「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」である「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」を配合することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
よって、本件発明1は、甲2及び甲4~甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明2~20は、いずれも請求項1の記載を直接的又は間接的に引用して特定される発明であるから、本件発明2~20は、本件発明1と同様に、甲2及び甲4~甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、上記エの理由(申立理由2(進歩性欠如:甲2を主引用例とするもの))は理由がない。
(5)オの理由(申立理由2(進歩性欠如:甲3を主引用例とするもの))について
ア 甲3発明
甲3には、金属石鹸または水添レシチンで表面処理したことを特徴とする微結晶セルロース粉体について記載されているところ(摘記甲3a~甲3h)、実施例3として、当該粉体を含有する固形頬紅の具体例が記載されている(摘記甲3g及び3h)。
そうすると、甲3の記載、特に、上記実施例3の記載からみて、甲3には、次に示す発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認める。
「以下の処方からなる固形頬紅。
50
86
0001437365000005.jpg
表中の数値は重量%であり、「金属石鹸処理結晶セルロース」は、以下のとおりに調製されたものである。
結晶セルロース(商品名アビセルPHM06、旭化成株式会社製)500gを水4Lに投入し、ステアリン酸ソーダを35gを加え、十分攪拌し、スラリーとする。これに、攪拌しながら硫酸亜鉛の20%水溶液60mlを10分間で滴下混合する。その後、10分間攪拌する。その後、ヌッチェで吸引濾過し、乾燥機内で、60°Cで3時間乾燥し、乳鉢で粉砕して試料を得る。」
イ 本件発明1について
甲3発明との対比・判断
本件発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明における「流動パラフィン」は、脂肪相を構成するものといえ、かつ、本件発明1における「不揮発性油」に相当するから、本件発明1における「少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相」に相当する。また、その含有量は13重量%であるから、本件発明1において、脂肪相が「12~50質量%」であることに相当する。
甲3発明における「金属石鹸処理結晶セルロース」、「タルク」、「カオリン」、「ミリスチン亜鉛」及び「顔料」は、本件発明1における「粉末相」に相当する。
甲3発明における「金属石鹸処理結晶セルロース」は、金属石鹸で表面処理された充填剤であるといえ、かつ「セルロース粉末」であるから、本件発明1における「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」であって、「前記金属石鹸で表面処理された球状充填剤が、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」であることと、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」であって、「前記金属石鹸で表面処理された球状充填剤が、表面処理されたセルロース粉末」である点で共通する。
甲3発明における成分についての上記含有量(重量%)は、組成物の総重量に対する重量で表したものであるところ、上記1(2)ウ(ア)aで述べたのと同じ理由により、本件発明1における「百分率(%)は組成物の総質量に対して質量で表される」ことに相当する。
甲3発明の「固形頬紅」は、本件発明1の「固体化粧用組成物」に相当する。
なお、上記の含有量の検討において、甲3発明における「防腐剤」及び「香料」の含有量を考慮していないが、それら以外の成分の合計含有量が100重量%であるから、「防腐剤」及び「香料」はごく微量の含有成分であるといえ、上記判断を左右するものではない。
そうすると、本件発明1と甲3発明は、
「- 12~50質量%の、少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相と、
- 金属石鹸で表面処理された充填剤を含む粉末相と
を含む固体化粧用組成物であって、
前記金属石鹸で表面処理された球状充填剤が、表面処理されたセルロース粉末であり、
前記の百分率(%)は組成物の総質量に対して質量で表される、固体化粧用組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-甲3-1>
「粉末相」の含有量について、本件発明1は「40~85質量%」であるのに対し、甲3発明は「87重量%」(34+40+5+5+3)である点。
<相違点1-甲3-2>
「金属石鹸で表面処理された充填剤」について、本件発明1は「球状」であり、「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理された」ものであるのに対し、甲3発明は「結晶セルロース(商品名アビセルPHM06、旭化成株式会社製)500gを水4Lに投入し、ステアリン酸ソーダを35gを加え、十分攪拌し、スラリーとする。これに、攪拌しながら硫酸亜鉛の20%水溶液60mlを10分間で滴下混合する。その後、10分間攪拌する。その後、ヌッチェで吸引濾過し、乾燥機内で、60°Cで3時間乾燥し、乳鉢で粉砕して試料を得る。」ものである点。
事案に鑑みて、相違点1-甲3-2について検討する。
甲3発明における「金属石鹸処理結晶セルロース」は、結晶セルロースを水に投入し、ステアリン酸ソーダを加えた後、硫酸亜鉛の水溶液を混合して製造するものであるから、ステアリン酸亜鉛で表面処理された結晶セルロースであると認められ、その形状が「球状」であるかどうかは明らかではない。
甲3には、「金属石鹸処理結晶セルロース」の微結晶セルロースについて、使用される結晶セルロースの平均粒子径、形状については特に制限はなく使用可能であるが、平均粒子径30μm以下、L/D3以下が好ましく、さらに好ましくは、平均粒子径15μm以下、L/D 2~3であることが記載されている((L/D)は、微粒子の長径(L)と短径(D)との比である。)(摘記甲3c)。
したがって、甲3には、結晶セルロースの形状について特に制限はないとされ、L/D3以下が好ましいとされているのであるから、L/Dが約1である「球状」のものも含み得ることが示唆されているといえる。
しかし、甲3には、さらに好ましくは、L/Dが2~3であること、そのようにすることで、肌につけた時のざらつき感がなく、かつ滑りも良好であることが記載されている(摘記甲3c)のであるから、当業者は、甲3発明の「金属石鹸処理結晶セルロース」として、L/Dが2~3である結晶セルロースを採用するといえる。
ここで、上記1(1)で述べたとおり、一般的には「球状」とは、比表面積が小さく、丸い、ボールのような形状をしたものであると当業者は理解するから、長径が短径の2倍以上に及ぶL/Dが2~3である粉末の形状を「球状」と認識するとはいえない。
甲8に、球形の最長径と最短径の比率(最長径/最短径)が1.0~2.5の範囲にある、球状セルロース粉体が記載されており(摘記甲8a)、最長径と最短径の比率(最長径/最短径)は上記L/Dに相当するといえるから、甲8には、L/Dが1.0~2.5のものが「球状」であることが記載されているといえるが、上述のとおりであるから、長径が短径の2倍以上に及ぶL/Dを有する粉末の形状を「球状」と認識するとはいえない。
また、甲2及び甲4~甲6のいずれにも、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末である、金属石鹸で表面処理された球状充填剤は記載も示唆もされていない。
してみると、甲3発明における「金属石鹸処理結晶セルロース」を「球状」のものとすることは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
したがって、甲3発明において、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」であって、「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物で表面処理されたセルロース粉末」を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
よって、その余の点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3並びに甲2、甲4~6及び甲8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明2~20について
本件発明2~20は、いずれも請求項1の記載を直接的又は間接的に引用して特定される発明である。
したがって、本件発明1と同様に、本件発明2~20は、甲3並びに甲2、甲4~6及び甲8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、上記オの理由(申立理由2(進歩性欠如:甲3を主引用例とするもの))は理由がない。
(6)カの理由(申立理由3(実施可能要件違反))について
ア 実施可能要件の判断の前提
物の発明における実施とは、物の生産、使用等の行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載があれば、実施可能要件を満たすということができる。
また、物を生産する方法の発明における実施とは、その物を生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、物を生産する方法の発明について、例えば、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その物を生産する方法を使用することができ、その方法により生産した物を使用することができる程度の記載があれば、実施可能要件を満たすということができる。
さらに、方法の発明における実施とは、その方法の使用をする行為をいうから(特許法第2条第3項第2号)、方法の発明について、例えば、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その方法を使用することができる程度の記載があれば、実施可能要件を満たすということができる。
イ 発明の詳細な説明の記載
本件明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある(下線は訂正明細書に記載のとおり。)。
本a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、12~50質量%の不揮発性液体脂肪相と、金属石鹸で表面処理された球状充填剤を含む40~85質量%の粉末相とを含む、固体化粧用組成物に関する。本発明はまた、そのような固体化粧用組成物を調製するための方法、及びそれを使用する、皮膚又は唇をメイクアップするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体組成物のために従来から使用される配合物は、一般に、ルース又はコンパクトパウダーである。実例として、化粧品の分野においてとりわけ考慮される固体配合物に限定することなく、特に、顔色、頬紅、又はアイシャドウのためのパウダーを挙げることができる。
【0003】
前述のパウダーは、主に色を足す、光沢を除去する、又は被覆する機能を有する。一般に、パウダーは、大部分を占める粉末相と、結合剤を構成し、コンパクトパウダーの文脈において粉末相の良好な密着を確実にすることを可能にする、少なくとも部分的に液体の脂肪相とを併せ持つ。
【0004】
粉末相は、本質的に充填剤及び着色剤から形成され、それらの量は望ましいメイクアップ効果、つまり色、被覆、又は光沢除去をもたらすように調節される。製品の粉末相の百分率が高すぎる場合、品質及び生産性要件を考慮すると、その製造及びその圧縮は産業規模で行うことが複雑になるか、又は不可能にさえなる。加えて、粉末相を高い含有量で有するそのような固体組成物は、使い心地が悪い、乾燥し過ぎている、及び粉っぽ過ぎるという不利な点、並びに場合によっては、脆い、砕けやすい、及び耐衝撃性が不良であるという不利な点を有するおそれがある。最後に、コンパクトパウダー中の粉末相が大量であると、満足のいく知覚特性を与えず、パウダーをそのパッケージから集め取る場合に取り出すこと(「取り出し」(pick-up))、及び/又はメイクアップするために皮膚の表面に適用する場合に延ばすこと(「ペイオフ(pay-off)」)が困難になる。
【0005】
固体形態の組成物を得るために、粉末相及び脂肪相を混合すること、並びに得られた組成物を容器中で、高圧下で圧縮することからなる圧縮プロセス(「乾燥プロセス」)を実施することが公知である。それに代えて、「湿式プロセス」(又は「スラリー」)と呼ばれるプロセスを実施してそのような組成物を製造することができる。このタイプのプロセスにおいて、前記組成物の粉末相及び脂肪相は、懸濁液を形成するように揮発性溶媒にさらされ、次いでプレスされ、揮発性溶媒は除去される。
【0006】
検討したプロセスに関わらず、機械的手段を介したパウダーの良好な圧縮を得るように、また、容器から組成物があふれ出ることを回避するように、脂肪相の、特に油の量は一般に、組成物の10%を超えない。これらの理由から配合者は、これらの配合物のために、パウダーの適切な圧縮を確実にするように、脂肪相の、特に油の量を減らす必要があることが多い。
【0007】
脂肪性結合剤(fatty binder)の量を多くする場合には、したがって、圧縮によって固体組成物を成形することは不可能と言わないまでも複雑になる。この産業上の制約に応えて、例えば押出によって得られる、よりペースト状の固体製品が提案されている。しかしながら、過度に高い含有量の結合剤相が存在すると、組成物はワックス状になる、即ち、使用中に堅くなる傾向があり、過度に緻密になって製品を集め取ることを妨げ、適用した場合にその延び特性を変えるまでになる。
【0008】
良好な密着及び良好な耐衝撃性を示す固体化粧用組成物、特に、崩壊させること又は亀裂を入れることなく使用者が自由に保管し輸送することができ、そのテクスチャーにより、取り出しやすく適用しやすくなる、固体化粧用組成物のための探索が続いている。
【先行技術文献】
・・・
【発明の概要】
【0010】
出願人が期せずして発見したのは、原理上は相容れないように思われるそのような特性を示す組成物が、固体組成物において、特定の液体脂肪相のある決まった含有量、及び金属石鹸で少なくとも部分的に表面処理された粉末相を使用することによって得ることができることである。」
本b)「 【0013】
詳細には、本発明は、
- 13~35質量%の不揮発性液体脂肪相と、
- 金属石鹸で表面処理された球状充填剤及び/又は薄板状充填剤(lamellar filler)を含む50~80質量%の、好ましくは60~75質量%の粉末相と
を含む、固体化粧用組成物であって
上記百分率(%)が組成物の総質量に対して質量で表される、
固体化粧用組成物に関する。
・・・
【発明を実施するための形態】
【0016】
配合物
本発明による組成物は、自重によって流れないという意味で、固体である。それは、粉末相と脂肪相との混合物を、任意選択で場合によっては、蒸発することになる揮発性溶媒の存在下で(「スラリー」プロセス)、押出しすることによって得られるペースト状製品の形態であることが好ましい。
【0017】
特に、本発明による組成物は、30g~250gの間の、好ましくは50g~230gの間の、より好ましくは80g~200gの間の硬度を有する。
・・・
【0019】
脂肪相
本発明による組成物は、少なくとも1種の不揮発性液体脂肪相を含み、それは少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相を意味する。
【0020】
「不揮発性油」は、室温及び大気圧で少なくとも数時間ケラチン繊維上に残る、特に10
-3
mmHg(0.13Pa)未満の蒸気圧を有する油を意味することが理解される。
【0021】
不揮発性油は、特に、炭化水素化油及びフッ素化油、並びに/又は不揮発性シリコーン化油から選択されてもよい。
【0022】
不揮発性炭化水素化油に関して、特に、
- 動物由来の炭化水素化油;
・・・
- 本発明において使用することができるフッ素化油は、特に、文献EP-A-847752に記載のされているようなフルオロシリコーン化油、フッ素化ポリエーテル、フッ素化シリコーン、
を挙げることができる。
【0023】
1つの特定の実施形態によれば、不揮発性液体脂肪相は、炭化水素化油、フェニル化されていないシリコーン化油、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の不揮発性油を含む。
【0024】
別の更に特定の実施形態によれば、不揮発性油は、炭化水素化油から選択され、組成物は、組成物の総質量に対して30質量%~50質量%の、金属石鹸によって表面処理された真珠光沢粉末(nacre)を含む。あるいは、不揮発性油は、フェニル化されていないシリコーン化油から選択される。
【0025】
本発明による組成物はまた、揮発性液体脂肪相、即ち少なくとも1種の揮発性油を含む脂肪相を含んでもよい。
【0026】
本発明の目的のために、「揮発性油」という用語は、室温及び大気圧でケラチン繊維と接触して1時間未満で蒸発することが可能な油を意味することが理解される。・・・
【0027】
特に、揮発性液体脂肪相は、炭化水素化油、シリコーン化油、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の揮発性油を含む。
・・・
【0032】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、いかなる揮発性液体脂肪相も有さず、即ちいかなる揮発性油も有しない。「揮発性油」という用語は、3質量%未満の、好ましくは1質量%未満の揮発性油を含む、より好ましくは揮発性油を全く含まない組成物を意味することが理解される。
【0033】
本発明による組成物はまた、少なくとも1種のワックス及び/又はペースト状脂肪物質及び/又は親油性ゲル化剤を含む固体脂肪相を含んでもよい。
【0034】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、0.1~15質量%の、好ましくは0.5~10質量%の固体脂肪相を含む。
【0035】
ワックス
本発明による組成物は、少なくとも1種のワックスを含んでもよい。
・・・
【0049】
ペースト状脂肪物質
・・・
【0065】
親油性ゲル化剤
・・・
【0066】
粉末相
本発明による組成物はまた、金属石鹸で表面処理された球状充填剤を含む少なくとも1種の粉末相を含んでもよい。粉末相はまた、金属石鹸で表面処理された薄板状充填剤(lamellar filler)を含んでもよい。粉末相はまた、好ましくは、任意選択により金属石鹸で表面処理されていてもよい真珠光沢粉末及び/又は顔料を、好ましくは、任意選択により金属石鹸で表面処理されていてもよい真珠光沢粉末を少なくとも含んでもよい。
【0067】
表面処理
本発明による組成物において使用される粉末相は、少なくとも部分的に金属石鹸で表面処理されている。
【0068】
特に、粉末相は、少なくとも、金属石鹸で表面処理された球状充填剤を含む。
【0069】
特に、粉末相は、金属石鹸で表面処理された少なくとも球状充填剤を含み、かつ、金属石鹸で表面処理された薄板状充填剤を更に含む。
【0070】
好ましい実施形態によれば、真珠光沢粉末(nacre)の少なくとも30質量%、好ましくは30~50質量%は、金属石鹸で表面処理されている。この好ましい実施形態において、使用される不揮発性油は、炭化水素化油である。
【0071】
特に、金属石鹸は、12~22個の炭素原子、特に12~18個の炭素原子を有する脂肪酸の石鹸である。
【0072】
金属石鹸の金属は、好ましくは亜鉛及びマグネシウムから選択される。
【0073】
したがって、好ましい実施形態によれば、金属石鹸は、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、及びそれらの混合物から選択され、好ましくは、金属石鹸はステアリン酸マグネシウムである。
【0074】
充填剤
充填剤(フィラー)は無機物であっても有機物であってもよい。
【0075】
粉末相は、金属石鹸で表面処理された少なくとも1種の球状充填剤を含む。
【0076】
球状充填剤は有利には以下のものから選択される:
・・・
- セルロース粉末、例えば、Daito社によって販売されているCellulobeads D5、D10、D50、及びD100、
並びに、それらの混合物。
【0077】
組成物は、金属石鹸で表面処理された薄板状充填剤(lamellar filler)を更に含んでもよい。・・・
【0080】
好ましい実施形態によれば、粉末相は、
薄板状
及び球状充填剤を、1/10~10/1の、好ましくは1/5~9/1の範囲の
薄板状
/球状比で含む。この比は質量比である。
・・・
【0092】
本発明による組成物は、本発明による組成物の総質量に対して、40~85質量%の粉末相、好ましくは50~80質量%の粉末相を含む。
・・・
【0117】
シリコーン乳化剤は、0.1%~5%の、好ましくは1%~3%の範囲の含有量で本発明の化粧用組成物中に存在し、その百分率(%)は組成物の総質量に対する質量百分率である。
・・・
【0120】
フィルム形成ポリマー
本発明による組成物はまた、少なくとも1種のフィルム形成ポリマーを含んでもよい。
・・・
【0166】
シリコーンエラストマー
本発明による組成物はまた、シリコーンエラストマーを含んでもよい。
・・・
【0172】
水性相
本発明による組成物はまた、水、及び任意選択で場合によっては、上述のポリオール以外の少なくとも1種の水溶性溶媒を含む水性相を含んでもよい。
・・・
【0176】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、水を含まない。
【0177】
化粧用有効成分
・・・
【0190】
調製方法
本発明の目的はまた、本発明による固体化粧用組成物を調製するための方法であって、
- 粉末相を構成するパウダーを予め混合する工程と、
- 不揮発性液体脂肪相を含む脂肪性結合剤を調製する工程と、
- 押出によって、パウダーを脂肪性結合剤と共につぶし混ぜる工程と、
- 組成物をプレスによって成形する工程と
を含む、方法である。
【0191】
ケラチン性要素をメイクアップするための方法
本発明はまた、本発明による固体化粧用組成物を皮膚又は唇に適用する工程からなる、皮膚又は唇をメイクアップするための方法に関する。」
本c)「【実施例】
【0192】
実施例1:アイシャドウ
以下の表1に示す組成を有する固体アイシャドウを調製した。
【0193】
【表1A】
232
152
0001437365000006.jpg
【0194】
【表1B】
162
153
0001437365000007.jpg
【0195】
粉末相を構成するパウダーを予め混合した。
次いで、脂肪相(液体及び固体)を含む脂肪性結合剤を調製した。
押出によって、パウダーを脂肪性結合剤と共につぶし混ぜた。
次いで、組成物をプレスによって成形した。
【0196】
得られたアイシャドウは、良好な密着及び良好な耐衝撃性を示す。特に、それらは、崩壊させること又は亀裂を入れることなく、保管し、輸送することができる。それらのテクスチャーは、容易な採取と容易な適用(塗布)を可能にする。
【0197】
実施例2:頬紅-顔色ハイライター-ブロンザー-口紅
以下の表2に示す組成を有する固体組成物を調製した。
【0198】
【表2】
230
142
0001437365000008.jpg
【0199】
粉末相を構成するパウダーを予め混合する。
次いで、脂肪相(液体及び固体)を含む脂肪性結合剤を調製する。
押出によって、パウダーを脂肪性結合剤と共につぶし混ぜる。
次いで、組成物をプレスによって成形する。
【0200】
得られる組成物は、良好な密着及び良好な耐衝撃性を示す。特に、それらは、崩壊させること又は亀裂を入れることなく、保管し、輸送することができる。それらのテクスチャーは、容易な採取と容易な適用(塗布)を可能にする。」
ウ 判断
本件明細書には、12~50質量%の不揮発性液体脂肪相と、金属石鹸で表面処理された球状充填剤を含む40~85質量%の粉末相とを含む、固体化粧用組成物、そのような固体化粧用組成物を調製するための方法、及びそれを使用する、皮膚又は唇をメイクアップするための方法に関して記載されている(【0001】)。
また、本件明細書には、脂肪相における、不揮発性油、不揮発性油等について記載され(【0019】~【0032】)、粉末相における、表面処理、金属石鹸、球状充填剤、薄板状充填剤、真珠光沢粉末、顔料等について記載され(【0024】及び【0066】~【0091】)、不揮発性液体脂肪相と粉末相の含有量について記載され(【0013】)、固体脂肪相について記載され(【0033】~【0065】)、水を含まないことについて記載され(【0176】)、フィルム形成ポリマーについて記載され(【0120】~【0165】)、シリコーンエラストマーについて記載され(【0166】~【0171】)、硬度について記載され(【0017】及び【0018】)、固体化粧用組成物を調製するための方法について記載され(【0190】)、固体化粧用組成物を皮膚又は唇に適用する工程からなる、皮膚又は唇をメイクアップするための方法について記載されている(【0191】)。
さらに、実施例1として、固体アイシャドウを調製した具体例、実施例2として、頬紅-顔色ハイライター-ブロンザー-口紅を調製した具体例が記載され、いずれについても、良好な密着及び良好な耐衝撃性を示すし、特に、それらは、崩壊させること又は亀裂を入れることなく、保管し、輸送することができ、それらのテクスチャーは、容易な採取と容易な適用(塗布)を可能にすることが記載されている(【0192】~【0200】)。
したがって、発明の詳細な説明には、物の発明である本件発明1~17及び20について、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載があるといえ、物を生産する方法の発明である本件発明18について、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その物を生産する方法を使用することができ、その方法により生産した物の使用等をすることができる程度の記載があるといえ、方法の発明である本件発明19について、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その方法を使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本件発明1~20を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
エ 申立人の主張について
(ア)(3-1)の主張(上記第4の1(3)参照。)について
申立人は、本件特許明細書では、粉末相のうち「金属石鹸処理された球状充填剤」がどの程度含まれる場合に、本件特許発明で得られる効果が発揮されるかの記載がなく、「金属石鹸処理された球状充填剤」がどの程度含まれるかは、不明であること、また、どのような「球状」の充填剤で本件特許発明で得られる効果が発揮されるのかが不明であることを理由として、実施可能要件を満たさない旨主張する。
しかし、上記「ア 実施可能要件の判断の前提」に示したとおり、物の発明、物を生産する方法の発明及び方法の発明において、その発明で得られる効果が発揮されるかどうかは必ずしも実施可能要件を満たすために必要であるとはいえない。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明には、「金属石鹸処理された球状充填剤」の含有量に関し、当該充填剤を含む粉末相の含有量(【0092】)、充填剤の薄板状/球状比(【0080】)が記載され、実施例として、ステアリン酸マグネシウムでコーティングされた球状充填剤(Cellulobeads)を6.30~16.00質量%含有する化粧料が記載されている(表1及び2)から、当業者は、これらの記載を含む発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、「金属石鹸処理された球状充填剤」の配合量を理解することができ、本件発明を実施することができるといえる。
また、「球状」については、上記1(1)で述べたとおり、当業者は、どのような範囲の形状が「球状」に包含されるかを理解することができるといえるから、「金属石鹸処理された球状充填剤」を含むものとすることができ、本件発明を実施することができるといえる。
(イ)(3-2)の主張(上記第4の1(3)参照。)について
申立人は、本件特許明細書では、粉末相が「金属石鹸で表面処理された薄板状充填剤」をどの程度含む場合に、本件特許発明で得られる効果が発揮されるかの記載がないこと、また、実施例では、「ステアリン酸マグネシウムでコーティングされた層状充填剤」と記載されているのみであって、具体的にどのような材料を用いた場合に本件特許発明の効果が得られたのかが開示されていないことを理由として、実施可能要件を満たさない旨主張する。
なお、以下では、申立人の主張にある「層状充填剤」は「薄板状充填剤」と同じ意味であるとみなして検討する。
しかし、上記「ア 実施可能要件の判断の前提」に示したとおり、物の発明、物を生産する方法の発明及び方法の発明において、その発明で得られる効果が発揮されるかどうかは必ずしも実施可能要件を満たすために必要であるとはいえない。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明には、「組成物は、金属石鹸で表面処理された薄板状充填剤(lamellar filler)を更に含んでもよい。」との記載と共に、その材料について記載され(【0077】及び【0078】)、当該充填剤を含む粉末相の含有量(【0092】)、充填剤の薄板状/球状比(【0080】)が記載され、金属石鹸について記載され(【0071】~【0073】)、「ステアリン酸マグネシウムでコーティングされた薄板状」が配合されているアイシャドウ等についての実施例が記載されている(【0192】~【0200】)。
したがって、当業者は、これらの記載を含む発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、「粉末相が、さらに、金属石鹸で表面処理された薄板状充填剤を含む」ものとすることができ、本件発明を実施することができるといえる。
(ウ)(3-3)の主張(上記第4の1(3)参照。)について
申立人は、本件特許明細書では、粉末相が金属石鹸によって表面された真珠光沢粉末以外の「金属石鹸で表面処理されていない真珠光沢粉末」、又は「顔料」をそれぞれどの程度含む場合に、本件特許発明で得られる効果が発揮されるかの記載がないことを理由として、実施可能要件を満たさない旨主張する。
しかし、上記「ア 実施可能要件の判断の前提」に示したとおり、物の発明、物を生産する方法の発明及び方法の発明において、その発明で得られる効果が発揮されるかどうかは必ずしも実施可能要件を満たすために必要であるとはいえない。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明には、「粉末相はまた、好ましくは、任意選択により金属石鹸で表面処理されていてもよい真珠光沢粉末及び/又は顔料を、好ましくは、任意選択により金属石鹸で表面処理されていてもよい真珠光沢粉末を少なくとも含んでもよい。」と記載されているから (【0066】)、当業者は、金属石鹸で表面処理されていてもよい真珠光沢粉末及び顔料は任意成分であると理解するといえる。
したがって、当業者は、上記記載並びに金属石鹸で表面処理されていてもよい真珠光沢粉末及び顔料が配合されているアイシャドウ等が記載されている実施例の記載を含む、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、「粉末相が、金属石鹸で表面処理されているか又は金属石鹸で表面処理されていない真珠光沢粉末及び/又は顔料を含む」を含むものとすることができ、本件発明を実施することができるといえる。
(エ)まとめ
したがって、申立人の主張は採用できない。
オ まとめ
以上のとおりであるから、カの理由(申立理由3(実施可能要件違反))は理由がない。
(7)キの理由(申立理由4(サポート要件違反))について
ア サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、上記(6)イに記載したとおりの記載がある。
ウ 本件発明の課題
本件明細書の記載事項全体、特に【0008】の記載からみて、本件発明1~17及び20の課題は、「良好な密着及び良好な耐衝撃性を示す固体化粧用組成物、特に、崩壊させること又は亀裂を入れることなく使用者が自由に保管し輸送することができ、そのテクスチャーにより、取り出しやすく適用しやすくなる、固体化粧用組成物を提供すること」であり、本件発明18の課題は、「当該固体化粧用組成物の製造方法を提供すること」であり、本件発明19の課題は、「当該固体化粧用組成物を皮膚又は唇に適用する工程からなる、皮膚又は唇をメイクアップするための方法を提供すること」であると認める。
エ 判断
本件明細書には、上記(6)ウに記載したおとりの記載がある。特に、本件明細書の【0196】及び【0200】には、得られた組成物が、良好な密着及び良好な耐衝撃性を示すし、特に、それらは、崩壊させること又は亀裂を入れることなく、保管し、輸送することができ、それらのテクスチャーは、容易な採取と容易な適用(塗布)を可能にすることが記載されている。
してみると、当業者は、本件発明における固体化粧用組成物が、「良好な密着及び良好な耐衝撃性を示す固体化粧用組成物、特に、崩壊させること又は亀裂を入れることなく使用者が自由に保管し輸送することができ、そのテクスチャーにより、取り出しやすく適用しやすくなる、固体化粧用組成物」であることを理解するといえるから、本件発明は、本件発明の課題を解決できると認識できるといえる。
したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものである。
オ 申立人の主張について
(ア)(4-1)の主張(上記第4の1(4)参照。)について
A (4-1)Aの主張について
申立人は、本件特許発明1では、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤を含む40~85質量%の粉末相」とあるが「金属石鹸処理された球状充填剤」がどの程度含まれるか、が規定されておらず、極めて微量の金属石鹸処理された球状充填剤を含むのみである場合も含まれ、このような場合に、特許権者の主張する効果が得られるのか不明であり、よって、本件特許発明1では、本件特許発明が得ようとする効果が得られない構成を含むものであって、本件特許発明1は、当業者が本件特許明細書の発明の詳細な説明から発明の課題が解決できると認識できる範囲を超えている旨主張する。
申立人の主張するとおり、本件発明1において「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」の含有量は特定されていない。
しかし、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」を必須成分とする本件発明について、本件明細書には、「出願人が期せずして発見したのは、原理上は相容れないように思われるそのような特性を示す組成物が、固体組成物において、特定の液体脂肪相のある決まった含有量、及び金属石鹸で少なくとも部分的に表面処理された粉末相を使用することによって得ることができることである。」と記載されている(【0010】)ことから、当業者は、金属石鹸で表面処理された粉末相を使用することで本件発明の課題を解決することができることを理解するといえる。
そして、本件発明において、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤を含む」「粉末相」の含有量は「40~85質量%」と特定されるが、上述のとおり、金属石鹸で表面処理された粉末相を使用することで本件発明の課題を解決することができるのであるから、当業者は、金属石鹸で表面処理された粉末相を相当程度配合する必要があることを認識するといえる。
さらに、本件明細書には、「粉末相は、薄板状及び球状充填剤を、1/10~10/1の、好ましくは1/5~9/1の範囲の薄板状/球状比で含む」と記載されているから、相当程度配合する必要がある金属石鹸で表面処理された粉末相について、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」をどの程度配合すればよいかを理解することができるといえる。
したがって、本件発明は、本件発明が得ようとする効果(良好な密着及び良好な耐衝撃性等)が得られない構成を含むものであるとはいえず、本件発明は、当業者が本件明細書の発明の詳細な説明の記載から発明の課題が解決できると認識できる範囲を超えているとはいえない。
B (4-1)Bの主張について
申立人は、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」が、実際に効果が確認されている「ステアリン酸マグネシウムで表面処理された球状セルロース粉末」に特定されてない本件特許発明1は、当業者が本件特許明細書の発明の詳細な説明から発明の課題が解決できると認識できる範囲を超えている旨主張する。
本件訂正によって、本件発明における「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」の金属石鹸は、「ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、又はそれらの混合物」に特定された。
当該金属石鹸のうち、ミリスチン酸マグネシウム、並びにステアリン酸マグネシウム及びミリスチン酸マグネシウムの混合物は本件明細書において実際に効果が確認されていないが、ステアリン酸マグネシウムとミリスチン酸マグネシウムとは、いずれもいわゆる高級脂肪酸の金属塩であって、その金属種が同じであるから、類似する性質を有するといえる。そして、ステアリン酸マグネシウムにおいて、良好な密着及び良好な耐衝撃性等の効果が得られる場合に、ミリスチン酸マグネシウム又はそれらの混合物において、同様の効果が得られないという出願時の技術常識もない。
したがって、本件発明は、当業者が本件明細書の発明の詳細な説明の記載から発明の課題が解決できると認識できる範囲を超えているとはいえない。
C (4-1)Cの主張について
申立人は、「ステアリン酸マグネシウムで処理された球状セルロース粉末」に加えて、「ステアリン酸マグネシウムで表面処理された層状充填剤」および/または「ステアリン酸マグネシウムで表面処理された真珠光沢粉末」を含むことも特定されていない本件特許発明1は、当業者が本件特許明細書の発明の詳細な説明から発明の課題が解決できると認識できる範囲を超えている旨主張する。
上記Aで述べたとおり、本件明細書の記載からみて、当業者は、金属石鹸で表面処理された粉末相を使用することで本件発明の課題を解決することができることを理解するといえる。
そして、本件発明1において、実施例の組成物において配合されている「ステアリン酸マグネシウムで表面処理された薄板状充填剤」及び「ステアリン酸マグネシウムで表面処理された真珠光沢粉末」を含むことは特定されていないが、本件発明の「固体化粧用組成物」は、必須成分として、金属石鹸で表面処理された粉末相に相当する「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」を含むものである。
したがって、当業者は、さらに、本件明細書の実施例の記載も参酌することで、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」を含むことによって、本件発明の課題にある、「良好な密着及び良好な耐衝撃性」を示し、「崩壊させること又は亀裂を入れることなく使用者が自由に保管し輸送することができ、そのテクスチャーにより、取り出しやすく適用しやすくなる」性質を固体化粧用組成物に付与することを認識できるといえ、本件発明の課題解決に、「ステアリン酸マグネシウムで表面処理された薄板状充填剤」及び「ステアリン酸マグネシウムで表面処理された真珠光沢粉末」を含むことが必要であると認識するとはいえない。
よって、本件発明は、当業者が本件明細書の発明の詳細な説明の記載から発明の課題が解決できると認識できる範囲を超えているとはいえない。
(イ)(4-2)の主張(上記第4の1(4)参照。)について
申立人は、本件特許発明2は、金属石鹸で処理された層状充填剤の含有率が特定されていない点、さらには金属石鹸が「ステアリン酸マグネシウム」に特定されていない点において、本件特許発明2は、当業者が本件特許明細書の発明の詳細な説明から、発明の課題が解決できると当業者が認識できる範囲を超えている旨主張する。
しかしながら、上記(ア)Cで述べたのと同様に、当業者は、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」を含むことによって、本件発明の課題にある、「良好な密着及び良好な耐衝撃性」を示し、「崩壊させること又は亀裂を入れることなく使用者が自由に保管し輸送することができ、そのテクスチャーにより、取り出しやすく適用しやすくなる」性質を固体化粧用組成物に付与することを認識できるといえ、本件発明の課題解決に、「金属石鹸で処理された薄板状充填剤」を含むことが必要であると認識するとはいえない。
したがって、本件発明2において、金属石鹸で処理された薄板状充填剤の含有率が特定されておらず、金属石鹸が「ステアリン酸マグネシウム」に特定されていないことによって、本件発明2は、当業者が本件明細書の発明の詳細な説明の記載から発明の課題が解決できると認識できる範囲を超えているとはいえない。
(ウ)(4-3)の主張(上記第4の1(4)参照。)について
申立人は、本件特許発明4では、「金属石鹸で表面処理されているか又は金属石鹸で表面処理されていない真珠光沢粉末」及び「顔料」の含有率はそれぞれ特定されていないから、本件特許発明4は、本件特許発明の効果が得られない構成が含まれており、本件特許発明4は、当業者が本件特許明細書の発明の詳細な説明から発明の課題が解決できると当業者が認識できる範囲を超えている旨主張する。
しかしながら、上記(ア)Cで述べたのと同様に、当業者は、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」を含むことによって、本件発明の課題にある、「良好な密着及び良好な耐衝撃性」を示し、「崩壊させること又は亀裂を入れることなく使用者が自由に保管し輸送することができ、そのテクスチャーにより、取り出しやすく適用しやすくなる」性質を固体化粧用組成物に付与することを認識できるといえ、本件発明の課題解決に、「金属石鹸で表面処理されているか又は金属石鹸で表面処理されていない真珠光沢粉末」及び「顔料」の含有率を特定することが必要であると認識するとはいえない。
したがって、本件発明4において、「金属石鹸で表面処理されているか又は金属石鹸で表面処理されていない真珠光沢粉末」及び「顔料」の含有率が特定されていないことによって、本件発明4は、当業者が本件明細書の発明の詳細な説明の記載から発明の課題が解決できると認識できる範囲を超えているとはいえない。
(エ)まとめ
したがって、申立人の主張は採用できない。
カ まとめ
以上のとおりであるから、キの理由(申立理由4(サポート要件違反))は理由がない。
(8)クの理由(申立理由5(明確性要件違反))について
ア 明確性要件の判断の前提
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載のみならず、本件明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるかという観点から判断されるべきである。
イ 当審合議体は、特許請求の範囲の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、本件発明1~20は明確であると判断する。
ウ 申立人の主張について
(ア)(5-1)Bの主張(上記第4の1(5)参照。)について
申立人は、本件特許発明1では「金属石鹸で表面処理された球状充填剤」が「粉末相」にどの程度含まれるかが規定されておらず、金属石鹸処理された球状充填剤を発明の効果が得られないような微量に含む場合も含まれるから、金属石鹸で表面処理された球状充填剤は、どの程度含まれることによって所望とする効果が発揮されるのかが明確ではない旨主張する。
しかし、上記「ア 明確性要件の判断の前提」に示したとおり、特許請求の範囲に記載された発明について、その発明の所望とする効果が発揮されるかどうかは必ずしも明確性要件を満たすために必要であるとはいえず、「金属石鹸で表面処理された球状充填剤を含む40~85質量%の粉末相」との記載を含む請求項1の記載に不明確な点はない。
したがって、申立人の主張する点において、本件発明が明確でないということはできない。
(イ)(5-1)C及び(5-2)の主張(上記第4の1(5)参照。)について
申立人は、
本件特許発明1に記載の「不揮発性油を含む脂肪相」の「脂肪相」は不揮発性油に限られず、揮発性油等の他の油性成分も含むものと解釈されるが、本件特許発明13には、「少なくとも1種の揮発性油を含む脂肪相を含まない」との記載があり、「少なくとも1種の揮発性油を含む脂肪相を含まない」のであれば、本件特許発明1の「少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相」も含まれないと解釈され、本件特許発明1に記載の「脂肪相」は、本件特許発明13に記載の「脂肪相」とどのような関係に立つのかを明確に把握することができないこと、及び
本件特許発明13に記載の「少なくとも1種の揮発性油を含む脂肪相を含まない」について、本件特許発明13に記載の「脂肪相」は揮発性油以外の不揮発性油も含むと認識される一方、本件特許発明1では、「不揮発性油を含む脂肪相」と記載されており、不揮発性油以外の油性成分、例えば揮発性油を含むと認識されるところ、そうであると、「少なくとも1種の揮発性油を含む脂肪相を含まない」とすると、本件特許発明1に記載されている不揮発性油を含む脂肪相も含有されないこととなるから、本件特許発明13に記載の「脂肪相」は、本件特許発明1に記載の「脂肪相」とどのような関係に立つのかが、不明確である、
旨主張する。
申立人の主張の内容は必ずしも明瞭でないが、請求項1の「少なくとも1種の不揮発性油を含む脂肪相」とは、脂肪相が少なくとも1種の不揮発性油を含むことを特定しているから、請求項1に記載の「固体化粧用組成物」は、脂肪相が他の油性成分、例えば、揮発性油を含むことを許容している、すなわち、揮発性油を含む脂肪相であっても、揮発性油を含まない脂肪相であってもよいと解される。
一方、請求項13の「少なくとも1種の揮発性油を含む脂肪相を含まない、請求項1から12のいずれか一項に記載の固体化粧用組成物」との記載は、固体化粧用組成物が「少なくとも1種の揮発性油を含む脂肪相を含まない」ことを特定しているから、請求項13に記載の「固体化粧用組成物」は、脂肪相が揮発性油を含むことを禁止されていると解される。
したがって、請求項13の固体化粧用組成物は、請求項1に記載された「固体化粧用組成物」のうち、脂肪相が揮発性油を含まないものに限定していると解することができる。
よって、申立人が主張する点において、本件発明1及び13が明確でないということはできない。
(ウ)まとめ
したがって、申立人の主張は採用できない。
エ まとめ
以上のとおりであるから、クの理由(申立理由5(明確性要件違反))は理由がない。
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、請求項1~20に係る特許を取り消すことはできず、ほかに請求項1~20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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