結論テキスト
特許第7554893号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
特許第7554893号の請求項2~13に係る特許を維持する。
特許第7554893号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025700320 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7554893号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、令和5年9月28日(優先権主張 令和5年3月28日)を出願日とする出願(特願2023-168860)であって、令和6年9月11日にその特許権の設定登録(請求項の数13)がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和7年3月19日に、本件特許の請求項1~13に係る特許に対して、特許異議申立人 宮崎 和幸(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされた(以下「特許異議申立書」を「申立書」という。)。
以後の手続は以下のとおりである。
令和7年 7月15日付け 取消理由通知
同年 9月 9日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 同月16日付け 訂正請求があった旨の通知
(特許法第120条の5第5項)
(申立人宛て)
同年10月17日 意見書の提出(申立人)
令和8年 1月21日付け 訂正拒絶理由通知
同年 2月24日 訂正請求書を補正する手続補正書、訂正明細書
を補正する手続補正書、及び意見書の提出(特
許権者)
令和8年2月24日に提出された、訂正請求書を補正する手続補正書による補正は、訂正事項15についての記載を削除するものであり、訂正明細書を補正する手続補正書は、訂正事項15に係る訂正をしないものとする補正を行うものであるところ、当該補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではないから、上記補正は適法に行われたものである。
令和8年2月24日に提出された手続補正書によって補正された、令和7年9月9日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、「特許第7554893号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求める。」ことを請求の趣旨とするものであって、その内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を表し、当審において付した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記澱粉含有樹脂組成物に含まれる澱粉粒の平均粒子径が3μm以上、25μm以下であり、
前記平均粒子径が、前記澱粉粒の長径の平均値より算出される平均粒子径である、
請求項1記載の澱粉含有樹脂組成物。」
とあるのを、
「
澱粉含有樹脂組成物であって、
澱粉、熱可塑性樹脂、及び相容化剤を含み、
前記澱粉含有樹脂組成物全体の重量を100重量%として、
前記澱粉の含有量が、55~85重量%であり、
前記熱可塑性樹脂の含有量が、10~44.5重量%であり、
前記相容化剤の含有量が、0.5~5重量%であり、
前記相容化剤は、前記相容化剤(b)とJIS K 6922-1に準拠したメルトフローレートが70g/10minである高圧重合法低密度ポリエチレン(a)とを「a/b=8/2」の重量比で混合した混合物の、JIS K 7210に準拠した温度170°C及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが、40g/10min以上である相容化剤であり、
前記相容化剤として、酸無水物基を有する高分子化合物、カルボキシル基を有する高分子化合物、エポキシ基を有する高分子化合物、イミノ基を有する高分子化合物、イソシアネート基を有する高分子化合物、オキサゾリン基を有する高分子化合物、及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含み、
前記澱粉含有樹脂組成物に含まれる澱粉粒の平均粒子径が3μm以上、25μm以下であり、
前記平均粒子径が、前記澱粉粒の長径の平均値より算出される平均粒子径である
、
澱
粉含有樹脂組成物。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記熱可塑性樹脂がポリオレフィンである、請求項1又は2記載の澱粉含有樹脂組成物。」
とあるのを、
「前記熱可塑性樹脂がポリオレフィンである、請求
項2
記載の澱粉含有樹脂組成物。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1又は2記載の澱粉含有樹脂組成物を含むペレット。」
とあるのを、
「請求
項2
記載の澱粉含有樹脂組成物を含むペレット。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1又は2記載の澱粉含有樹脂組成物を含むフレーク。」
とあるのを、
「請求
項2
記載の澱粉含有樹脂組成物を含むフレーク。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1又は2記載の澱粉含有樹脂組成物を含む樹脂成形物。」
とあるのを、
「請求
項2
記載の澱粉含有樹脂組成物を含む樹脂成形物。」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に、
「前記澱粉、前記熱可塑性樹脂、及び前記相容化剤を含む原料を混合する混合工程を含む、
請求項1又は2記載の澱粉含有樹脂組成物の製造方法。」
とあるのを、
「前記澱粉、前記熱可塑性樹脂、及び前記相容化剤を含む原料を混合する混合工程を含む、
請求
項2
記載の澱粉含有樹脂組成物の製造方法。」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に、
「澱粉含有樹脂組成物を押出成形してストランドを形成するストランド形成工程と、
前記ストランドを切断してペレット又はフレークを形成するストランド切断工程と、を含み、
前記澱粉含有樹脂組成物は、請求項1又は2記載の澱粉含有樹脂組成物である、ペレット又はフレークの製造方法。」
とあるのを、
「澱粉含有樹脂組成物を押出成形してストランドを形成するストランド形成工程と、
前記ストランドを切断してペレット又はフレークを形成するストランド切断工程と、を含み、
前記澱粉含有樹脂組成物は、請求
項2
記載の澱粉含有樹脂組成物である、ペレット又はフレークの製造方法。」に訂正する。
(9)訂正事項9
願書に添付した明細書の段落【0007】に、
「 前記目的を達成するために、本発明の澱粉含有樹脂組成物は、
澱粉、熱可塑性樹脂、及び相容化剤を含み、
前記澱粉含有樹脂組成物全体の重量を100重量%として、
前記澱粉の含有量が、55~85重量%であり、
前記熱可塑性樹脂の含有量が、10~44.5重量%であり、
前記相容化剤の含有量が、0.5~5重量%であり、
前記相容化剤は、前記相容化剤(b)とJIS K 6922-1に準拠したメルトフローレートが70g/10minである高圧重合法低密度ポリエチレン(a)とを「a/b=8/2」の重量比で混合した混合物の、JIS K 7210に準拠した温度170°C及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが、25g/10min以上である相容化剤である。」
とあるのを、
「 前記目的を達成するために、本発明の澱粉含有樹脂組成物は、
澱粉、熱可塑性樹脂、及び相容化剤を含み、
前記澱粉含有樹脂組成物全体の重量を100重量%として、
前記澱粉の含有量が、55~85重量%であり、
前記熱可塑性樹脂の含有量が、10~44.5重量%であり、
前記相容化剤の含有量が、0.5~5重量%であり、
前記相容化剤は、前記相容化剤(b)とJIS K 6922-1に準拠したメルトフローレートが70g/10minである高圧重合法低密度ポリエチレン(a)とを「a/b=8/2」の重量比で混合した混合物の、JIS K 7210に準拠した温度170°C及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが、
40
g/10min以上である相容化剤であり、
前記相容化剤として、酸無水物基を有する高分子化合物、カルボキシル基を有する高分子化合物、エポキシ基を有する高分子化合物、イミノ基を有する高分子化合物、イソシアネート基を有する高分子化合物、オキサゾリン基を有する高分子化合物、及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含み、
前記澱粉含有樹脂組成物に含まれる澱粉粒の平均粒子径が3μm以上、25μm以下であり、
前記平均粒子径が、前記澱粉粒の長径の平均値より算出される平均粒子径であ
る。」
に訂正する。
(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0022】に、
「 前記澱粉は、例えば、製造コストの観点からコーンスターチ、タピオカ澱粉が好ましく、更に好ましくはコーンスターチである。また、分散性の観点から、好ましくは澱粉の平均粒子径が25μm以下であると良く、平均粒子径の観点からはトウモロコシ、タピオカから得られる未加工澱粉、又はトウモロコシ、タピオカを原料とする加工澱粉が良い。」
とあるのを、
「 前記澱粉は、例えば、製造コストの観点からコーンスターチ、タピオカ澱粉が好ましく、更に好ましくはコーンスターチである。また、分散性の観点から
、澱
粉の平均粒子径が25μm以下であると良く、平均粒子径の観点からはトウモロコシ、タピオカから得られる未加工澱粉、又はトウモロコシ、タピオカを原料とする加工澱粉が良い。」
に訂正する。
(11)訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0024】に、
「 本発明の澱粉含有樹脂組成物は、熱可塑性樹脂中に澱粉粒が分散した構造を有する澱粉含有樹脂組成物である。前記澱粉粒のサイズは特に限定されないが、前記澱粉に含まれる水分含有量や前記澱粉含有樹脂組成物全体に含まれる水分含有量、後述する澱粉用可塑剤の添加量の調整、又は前記澱粉用可塑剤を使用しないことで、前記澱粉粒の崩壊を抑制し、前記澱粉粒を一定範囲のサイズにすることができる。これらにより前記澱粉を実質的に可塑化させないことができる。」
とあるのを、
「 本発明の澱粉含有樹脂組成物は、熱可塑性樹脂中に澱粉粒が分散した構造を有する澱粉含有樹脂組成物である
。前
記澱粉に含まれる水分含有量や前記澱粉含有樹脂組成物全体に含まれる水分含有量、後述する澱粉用可塑剤の添加量の調整、又は前記澱粉用可塑剤を使用しないことで、前記澱粉粒の崩壊を抑制し、前記澱粉粒を一定範囲のサイズにすることができる。これらにより前記澱粉を実質的に可塑化させないことができる。」
に訂正する。
(12)訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0026】に、
「 熱可塑性樹脂に配合された澱粉粒の平均粒子径は、例えば、3μm以上である。澱粉を実質的に可塑化させない特徴を鑑みると、5μm以上であってもよく、より好ましくは、7μm以上である。前記平均粒子径の上限は、特に制限されないが、例えば、分散性の観点から、25μm以下、より好ましくは20μm以下である。なお、前記澱粉粒の平均粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、倍率と視野を、長径を測定可能な澱粉粒が10個以上となるように調整し、得られたSEM像から測定されたそれぞれの澱粉粒の長径の平均値を平均粒子径とすることができる。なお、例えば、前記澱粉含有樹脂組成物の形態が後述する本発明のペレットの場合、上記平均粒子径の測定は、基本的には任意に取りだした1つのペレットについて行えばよいが、ペレット毎に数値が大きくばらつく場合には、ランダムに搾取したペレット10個の平均値を平均粒子径とすることができる。また、前記倍率と前記視野において撮像されたSEM像において、いずれか一ヵ所でも前記平均粒子径を満たす場合には、本発明における前記平均粒子径を満たすものとする。」
とあるのを、
「 熱可塑性樹脂に配合された澱粉粒の平均粒子径は
、3
μm以上である。澱粉を実質的に可塑化させない特徴を鑑みると、5μm以上であってもよく、より好ましくは、7μm以上である。前記平均粒子径の上限は
、分
散性の観点から、25μm以下
であり、好
ましくは20μm以下である。なお、前記澱粉粒の平均粒子径は、
澱粉粒の長径の平均値より算出される平均粒子径である。前記澱粉粒の平均粒子径は、
例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、倍率と視野を、長径を測定可能な澱粉粒が10個以上となるように調整し、得られたSEM像から測定されたそれぞれの澱粉粒の長径の平均値を平均粒子径とすることができる。なお、例えば、前記澱粉含有樹脂組成物の形態が後述する本発明のペレットの場合、上記平均粒子径の測定は、基本的には任意に取りだした1つのペレットについて行えばよいが、ペレット毎に数値が大きくばらつく場合には、ランダムに搾取したペレット10個の平均値を平均粒子径とすることができる。また、前記倍率と前記視野において撮像されたSEM像において、いずれか一ヵ所でも前記平均粒子径を満たす場合には、本発明における前記平均粒子径を満たすものとする。」
に訂正する。
(13)訂正事項13
願書に添付した明細書の段落【0035】に、
「[相容化剤]
前記相容化剤は、特段の制限はなく、例えば、一般的な公知の相容化剤を用いることができる。例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸等の酸無水物基を有する化合物、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸等のカルボキシル基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、イミノ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、シランカップリング剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むものがあげられる。またリアクティブプロセッシングにより、前記相容化剤を自己生成するものも含む。酸無水物基、カルボキシル基、エポキシ基、イミノ基及びイソシアネート基は、ヒドロキシ基と反応し得る官能基であり、かかる官能基を有する化合物は、本発明における相容化剤として好ましい。前記相容化剤として用いることができる化合物としては、例えば、上述のような官能基を有するポリオレフィン系、アクリル系、スチレン系等の高分子化合物をあげることができ、配合する樹脂との親和性を確保する観点から、上述のような官能基を有するポリオレフィン系高分子化合物が好ましい。」
とあるのを、
「[相容化剤]
本発明の澱粉含有樹脂組成物は、前記相容化剤として、酸無水物基を有する高分子化合物、カルボキシル基を有する高分子化合物、エポキシ基を有する高分子化合物、イミノ基を有する高分子化合物、イソシアネート基を有する高分子化合物、オキサゾリン基を有する高分子化合物、及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む。
前記相容化剤は
、例
えば、一般的な公知の相容化剤を用いることができる。例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸等の酸無水物基を有する化合物、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸等のカルボキシル基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、イミノ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、シランカップリング剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むものがあげられる。またリアクティブプロセッシングにより、前記相容化剤を自己生成するものも含む。酸無水物基、カルボキシル基、エポキシ基、イミノ基及びイソシアネート基は、ヒドロキシ基と反応し得る官能基であり、かかる官能基を有する化合物は、本発明における相容化剤として好ましい。前記相容化剤として用いることができる化合物としては、例えば、上述のような官能基を有するポリオレフィン系、アクリル系、スチレン系等の高分子化合物をあげることができ、配合する樹脂との親和性を確保する観点から、上述のような官能基を有するポリオレフィン系高分子化合物が好ましい。」
に訂正する。
(14)訂正事項14
願書に添付した明細書の段落【0038】に、
「 前記相容化剤は、前記相容化剤(b)とJIS K 6922-1に準拠したメルトフローレートが70g/10minである高圧重合法低密度ポリエチレン(a)とを「a/b=8/2」の重量比で混合した混合物の、JIS K 7210に準拠した温度170°C及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(以下、単に「樹脂混合物のメルトフローレート」という場合がある。)が、25g/10min以上である相容化剤である。JIS K 6922-1に準拠したメルトフローレートが70g/10minである高圧重合法低密度ポリエチレン(A)は、特に制限はないが、例えば、東ソー株式会社が製造販売する「ペトロセン(登録商標)249」があげられる。前記樹脂混合物のメルトフローレートは、特に制限はないが、例えば、下限値が30g/10min以上、35g/10min以上、40g/10min以上、45g/10min以上、50g/10min以上、55g/10min以上、60g/10min以上、65g/10min以上、70g/10min以上、75g/10min以上、80g/10min以上、85g/10min以上、90g/10min以上、95g/10min以上、又は100g/10min以上であってもよく、上限値が250g/10min以下、240g/10min以下、230g/10min以下、220g/10min以下、210g/10min以下、200g/10min以下、190g/10min以下、180g/10min以下、170g/10min以下、160g/10min以下、150g/10min以下、140g/10min以下、130g/10min以下、120g/10min以下、又は110g/10min以下であってもよい。前記樹脂混合物のメルトフローレートは、例えば、後述する実施例記載の測定方法によって求めことができる。」
とあるのを、
「 前記相容化剤は、前記相容化剤(b)とJIS K 6922-1に準拠したメルトフローレートが70g/10minである高圧重合法低密度ポリエチレン(a)とを「a/b=8/2」の重量比で混合した混合物の、JIS K 7210に準拠した温度170°C及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(以下、単に「樹脂混合物のメルトフローレート」という場合がある。)が、
40
g/10min以上である相容化剤である。JIS K 6922-1に準拠したメルトフローレートが70g/10minである高圧重合法低密度ポリエチレン(A)は、特に制限はないが、例えば、東ソー株式会社が製造販売する「ペトロセン(登録商標)249」があげられる。前記樹脂混合物のメルトフローレートは、特に制限はないが、例えば、下限値
が4
5g/10min以上、50g/10min以上、55g/10min以上、60g/10min以上、65g/10min以上、70g/10min以上、75g/10min以上、80g/10min以上、85g/10min以上、90g/10min以上、95g/10min以上、又は100g/10min以上であってもよく、上限値が250g/10min以下、240g/10min以下、230g/10min以下、220g/10min以下、210g/10min以下、200g/10min以下、190g/10min以下、180g/10min以下、170g/10min以下、160g/10min以下、150g/10min以下、140g/10min以下、130g/10min以下、120g/10min以下、又は110g/10min以下であってもよい。前記樹脂混合物のメルトフローレートは、例えば、後述する実施例記載の測定方法によって求めことができる。」
に訂正する。
なお、訂正事項1~8による特許請求の範囲の訂正について、本件訂正前の請求項2~13は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~13は一群の請求項であって、訂正事項1~8による特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項〔1~13〕に対してなされたものである。
また、訂正事項9~14による明細書の訂正は、訂正事項1~8による特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と整合させるために行う訂正であり、訂正前の請求項1~13と関係するものである。
したがって、訂正事項9~14は、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項〔1~13〕について行うものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項2において、請求項1を書き下して独立形式に改めたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3~8について
訂正事項3~8は、本件訂正前の請求項3、5~9がそれぞれ「請求項1又は2記載の」と請求項1を引用していたものを、訂正事項1によって訂正前の請求項1が削除されたため、それぞれが引用する請求項から請求項1を削除し、「請求項2記載の」とするというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項9~14について
訂正事項9~14は、願書に添付した明細書の段落【0007】、【0022】、【0024】、【0026】、【0035】、【0038】の記載を、訂正後の請求項2の記載と整合させるために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的としたものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
本件においては、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~14に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
以上のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
上記第2のとおり、本件訂正が認められたため、本件特許の請求項1~13に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明13」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。
また、本件訂正後の本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
澱粉含有樹脂組成物であって、
澱粉、熱可塑性樹脂、及び相容化剤を含み、
前記澱粉含有樹脂組成物全体の重量を100重量%として、
前記澱粉の含有量が、55~85重量%であり、
前記熱可塑性樹脂の含有量が、10~44.5重量%であり、
前記相容化剤の含有量が、0.5~5重量%であり、
前記相容化剤は、前記相容化剤(b)とJIS K 6922-1に準拠したメルトフローレートが70g/10minである高圧重合法低密度ポリエチレン(a)とを「a/b=8/2」の重量比で混合した混合物の、JIS K 7210に準拠した温度170°C及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが、40g/10min以上である相容化剤であり、
前記相容化剤として、酸無水物基を有する高分子化合物、カルボキシル基を有する高分子化合物、エポキシ基を有する高分子化合物、イミノ基を有する高分子化合物、イソシアネート基を有する高分子化合物、オキサゾリン基を有する高分子化合物、及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含み、
前記澱粉含有樹脂組成物に含まれる澱粉粒の平均粒子径が3μm以上、25μm以下であり、
前記平均粒子径が、前記澱粉粒の長径の平均値より算出される平均粒子径である、
澱粉含有樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂がポリオレフィンである、請求項2記載の澱粉含有樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレン及びポリエチレンの少なくとも一方である、請求項3記載の澱粉含有樹脂組成物。
【請求項5】
請求項2記載の澱粉含有樹脂組成物を含むペレット。
【請求項6】
請求項2記載の澱粉含有樹脂組成物を含むフレーク。
【請求項7】
請求項2記載の澱粉含有樹脂組成物を含む樹脂成形物。
【請求項8】
前記澱粉、前記熱可塑性樹脂、及び前記相容化剤を含む原料を混合する混合工程を含む、
請求項2記載の澱粉含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
澱粉含有樹脂組成物を押出成形してストランドを形成するストランド形成工程と、
前記ストランドを切断してペレット又はフレークを形成するストランド切断工程と、を含み、
前記澱粉含有樹脂組成物は、請求項2記載の澱粉含有樹脂組成物である、ペレット又はフレークの製造方法。
【請求項10】
ペレットを含む原料を樹脂成形して樹脂成形物を製造する樹脂成形工程を含み、
前記ペレットは、請求項5記載のペレットである、樹脂成形物の製造方法。
【請求項11】
フレークを含む原料を樹脂成形して樹脂成形物を製造する樹脂成形工程を含み、
前記フレークは、請求項6記載のフレークである、樹脂成形物の製造方法。
【請求項12】
さらに、前記ペレットと、他の熱可塑性樹脂を含む原料とを混練する混練工程を含み、
前記樹脂成形工程が、前記混練工程で得られた混練物を樹脂成形して樹脂成形物を製造する工程である、
請求項10記載の製造方法。
【請求項13】
さらに、前記フレークと、他の熱可塑性樹脂を含む原料とを混練する混練工程を含み、
前記樹脂成形工程が、前記混練工程で得られた混練物を樹脂成形して樹脂成形物を製造する工程である、
請求項11記載の製造方法。」
(1)申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載された申立ての理由は、以下のとおりである。
ア 申立理由1(甲第1号証に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1~13に係る発明は、本件特許の優先日前の特許出願であって、その優先日後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲第1号証の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が甲第1号証の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、本件特許の出願人が甲第1号証の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
イ 申立理由2(甲第10号証を主引例とする新規性及び進歩性)
本件特許の請求項1、3~5、7~10、12に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第10号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1、3~13に係る発明は、甲第10号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
ウ 申立理由3(甲第11号証を主引例とする新規性及び進歩性)
本件特許の請求項1~5、7~10、12に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第11号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1~13に係る発明は、甲第11号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
エ 申立理由4(甲第15号証を主引例とする新規性及び進歩性)
本件特許の請求項1~5、7~10、12に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第15号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1~13に係る発明は、甲第15号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものであり、同法第153条第2号に該当し取り消すべきものである。
オ 申立理由5(サポート要件)
本件特許の請求項1~13に係る特許は、下記の(ア)及び(イ)の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(ア)熱可塑性樹脂の観点
成形性を向上させる(換言すると、ストランドを安定的に押し出す)ためには、熱可塑性樹脂自体のMFR、分子量分布、他樹脂と複合化する場合における他樹脂との相溶性等の特性が重要であるところ、本件明細書の実施例において、「熱可塑性樹脂」は、MFR=30~60のPP(ポリプロピレン)、MFR=42のPE(ポリエチレン)しか使用されていない。実施例以外のMFRを有する熱可塑性樹脂や他の種類の熱可塑性樹脂を採用した場合にも、本件特許の「安定的にストランドを得る」という課題が解決できるとはいえない。このため、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、「熱可塑性樹脂」の特性について何ら特定されていない本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2~13の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(イ)相溶化剤の観点
熱可塑性樹脂に対して、適切な相溶化剤の官能基や分子量等を選択することが重要であるところ、本件明細書の実施例では、相容化剤として、「前記相容化剤(b)とJIS K 6922-1に準拠したメルトフローレートが70g/10minである高圧重合法低密度ポリエチレン(a)とを「a/b=8/2」の重量比で混合した混合物の、JIS K 7210に準拠した温度170°C及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレート」(以下「本件MFR」という。)が21~124g/10minのマレイン酸変性ポリプロピレン(相容化剤A~F)と、本件MFRが57g/10minのエチレンーグリシジルメタクリレート系共重合体(相容化剤G)しか使用されておらず、実施例以外の本件MFRを有する相容化剤や、他の種類の化合物からなる相容化剤を採用した場合にも、本件特許の「安定的にストランドを得る」という課題が解決できるとはいえない。このため、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2~13の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(2)申立人が提出した証拠方法
申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
ア 申立書に添付したもの
甲第1号証:特開2024-093227号公報(特願2022-209464号:令和4年12月27日出願)
甲第2号証:特開2014-031493号公報
甲第3号証:特開2011-219516号公報
甲第4号証:特開2023-014492号公報
甲第5号証:独立行政法人農畜産業振興機構HP 「でん粉原料作物の特性について」
https://www.alic.go.jp/joho-d/joho07_000060.html#:~:text=%E3%81%A8%E3%81%86%E3%82%82%E3%82%8D%E3%81%93%E3%81%97%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%82%93%E7%B2%89%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B,%E3%81%AF%E5%AE%89%E5%AE%9A%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82 (平成22年5月10日)(当審注:「~」は半角)
甲第6号証:特開2021-113312号公報
甲第7号証:特開2022-76172号公報
甲第8号証:特開2016-196536号公報
甲第9号証:特開2003-002998号公報
甲第10号証:特開2016-210824号公報
甲第11号証:特開2004-002613号公報
甲第12号証:三洋化成工業株式会社 酸変性ポリオレフィン樹脂 樹脂改質剤 ユーメックスシリーズ パンフレット
https://www.sanyo-chemical.co.jp/products/pdf/JS20000025A.pdf (令和3年7月29日)
甲第13号証:特開2015-071682号公報
甲第14号証:特開2010-111738号公報
甲第15号証:特開2020-122111号公報
甲第16号証:特開2010-095671号公報
甲第17号証:ゴムタイムス 「滑剤 プラスチック添加剤」https://www.gomutimes.co.jp/?p=156214 (令和2年8月2日)
甲第18号証:「高溶融張力PPのメルトレオロジー挙動と発泡成形」、第13巻、第2号、2001、p76-82
https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikeikakou1989/13/2/13_76/_pdf/-char/ja (平成13年2月20日)
甲第19号証:「相容化剤」、成形加工、第23巻、第8号、2011、p494-497
https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikeikakou/23/8/23_494/_pdf/-char/ja (平成23年7月20日)
以下、甲第1号証に係る特許出願を「先願」といい、先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面を、「先願明細書等」といい、「甲第1号証」~「甲第19号証」を、それぞれ「甲1」~「甲19」という。
イ 令和7年10月17日提出の意見書に添付したもの
参考資料1:特開2011-026538号公報
参考資料2:再表2019/131755号公報
参考資料3:「PTFE の添加が PP/コーンスターチ複合材料のレオロジー特性及び機械的特性に及ぼす影響」、只野 広樹 他、成形加工、第26巻、第12号、2014、p573-577
参考資料4:「生分解性プラスチック」, 山下 岩男, 日本ゴム協会誌, 1991年 64巻 1号 p.16-24
参考資料5:「澱粉系の生分解性プラスチック」, 工藤 謙一, 応用糖質科学, 1994年 41巻 4号 p.457-464
参考資料6:Abstract of "Processing and characterization of thermoplastic starch/polyethylene blends", N. St-Pierre, et al., Polymer, Volume 38, Issue 3, February 1997, Pages 647-655
参考資料7:特開平06-184358号公報
参考資料8:特表2003-518541号公報
以下、「参考資料1」~「参考資料8」を、それぞれ「参1」~「参8」という。
当審において令和7年7月15日付けの取消理由通知書に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)取消理由1(甲1に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1、3~13に係る発明は、本件特許の優先日前の特許出願であって、本件特許の優先日後に出願公開がされた下記の特許出願(甲1)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、本件特許の出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)取消理由2(甲10を主引例とする進歩性)
本件特許の請求項1、3~13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲10に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、これらの請求項に係る発明の特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
本件訂正により、請求項1は削除されたため、申立人による請求項1に係る特許についての特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなった。
請求項1に係る特許についての申立人による特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
以下に述べるとおり、当審において通知した取消理由及び申立書に記載された申立理由によっては、本件発明2~13に係る特許は取り消すことはできない。
(1)取消理由1(甲1に基づく拡大先願)及び申立理由1(甲1に基づく拡大先願)について
上記第4の2(1)の取消理由1及び上記第4の1(1)アの申立理由1は、いずれも甲1に基づく拡大先願についてのものであるので、まとめて検討する。
ア 先願明細書等に記載された事項及び発明
(ア)先願明細書等に記載された事項
先願明細書等には以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
デンプンと、ポリエチレン、アイオノマー樹脂およびアクリレート共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂とを含み、190°C10kgfでのMFRが3.3~4.2g/10minであり、かつ、デンプンの含有比率が60重量%超である、バイオマスマスターバッチ。」
「【0014】
(デンプン)
本発明の一態様のバイオマスマスターバッチは、デンプンを含み、その含有比率はバイオマスマスターバッチにおいて60重量%超である。」
「【0048】
本発明の一実施形態において、添加剤は、市販品を用いてもよく、具体的には、リケエイドMG-440P(理研ビタミン株式会社社製)、MG-441P(理研ビタミン株式会社製)、MG-250P(理研ビタミン株式会社製)、ポエム J-4081V(理研ビタミン株式会社製)、ユーメックス1001(三洋化成工業株式会社製)ユーメックス1010(三洋化成工業株式会社製)、チラバゾールVR-01(太陽化学株式会社製)、チラバゾールVR-07(太陽化学株式会社製)、バイオサイザー(理研ビタミン社製)等が挙げられる。」
「【0078】
(排出部80)
排出部80は、図1等に示すように第1収容部10の下流側における外側に隣接して設けている。排出部80は、第1収容部10の第1収容空間S1において脱気された材料(以下、混練物とも称する)を紐状に形成するために設けられる。排出部80は、本実施形態において第1収容部10の長手方向Xにおける端部であって第1収容部10の第1収容空間S1と外部とを繋ぐ部位に設けた複数の穴形状を設けた部材を備えるように構成している。排出部80は、第1収容部10に配置された回転部材31~39、41、42等と同様にヒーター等の加熱装置を設けることによって加温することができる。
【0079】
(冷却部90)
冷却部90は、第1収容部10から排出された紐状の混練物を冷却するために設けられる。冷却部90は、図1に示すようにコンベヤー91と、液体供給部92と、気体供給部93と、を備える。
【0080】
コンベヤー91は、排出部80に隣接して設けている。コンベヤー91は、図2に示すように排出部80から排出された混練物を切断部110まで搬送するように構成している。コンベヤー91は、本実施形態において図2に示すように長手方向Xから高さ方向Zの正の方向に向かって傾斜した斜め方向に沿って延在するように構成している。ただし、コンベヤー91の延在方向は一例であって混練物を切断部110に搬送できれば、コンベヤーの具体的な搬送方向は図2等に限定されない。
【0081】
液体供給部92は、コンベヤー91上で搬送される混練物に比較的温度の低い冷却水を供給するように構成している。液体供給部92は、ホース等によって冷却水の供給源と接続された噴射ノズルをコンベヤー91の搬送方向に複数配置することによって構成している。
【0082】
気体供給部93は、所定の温度に調整された空気等の気体をコンベヤー91上で搬送される混練物に供給するように構成している。気体供給部93は、不図示のダクトと、ダクトに接続され、気体をコンベヤー91上の混練物に向けて噴射可能なブロワーを備えるように構成している。
【0083】
(切断部110)
切断部110は、排出部80から排出され、冷却部90において冷却された混練物を所定の長さにて切断するように構成している。切断部110は、図1に示すように混練物を送る送りローラー111と、送られた混練物を切断する刃物を備えた切断ローラー112と、を備えることができる。また、冷却された混練物は、乾燥を行うチャンバー等の設備(乾燥部と呼ぶことができる)において乾燥工程を実施することができる。
【0084】
切断部110を経てペレット状になったバイオマスマスターバッチの平均直径は、0.5~30mm、0.5~20mm、0.5~10mm、1~8mm、2~6mm、あるいは、2~5mmである。なお実施例で得られたバイオマスマスターバッチの平均直径は4~5mmであった。バイオマスマスターバッチの平均直径の測定方法はデンプンの平均直径の測定方法と同じでありうる。」
「【0093】
本発明の一実施形態において、希釈用樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、あるいは、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレンでありうる。ポリエチレンの市販品は、特に制限されないが、プライムポリマー社のエボリュー(登録商標)SP1510でありうる。」
「【0120】
<バイオマスマスターバッチの作製>
(実験例1)
材料として、
デンプンとして平均直径5mmの精米(新潟ケンベイ社製、中白米、含水率11重量%)を78.7重量部(米固形分重量:70重量部)、
樹脂AとしてMFR(190°C/2.16kgf)が3.4g/10minのポリエチレン(日本ポリエチレン社製、カーネルKS340T)を19.7重量部、
樹脂CとしてMFR(190°C/2.16kgf)が30g/10minのポリエチレン(日本ポリエチレン社製、カーネルKJ640T)を8重量部、
添加剤Aとして無水マレイン酸変性ポリプロピレン(理研ビタミン社製 MG-441P)4質量部(MAPP3wt%/全量(固形物換算))、および、
添加剤Bとしてグリセリン脂肪酸エステル(アセチル化モノグリセライド;グリセリンジアセトモノラウレート、理研ビタミン社製、バイオサイザー、日本バイオプラスチック協会(JBPA)のポジティブリストに掲載済み)を2重量部(固形物換算)、
を用いた。
【0121】
上記の材料を、図1等に示される、同方向に回転する二軸混練装置100を使用して混練し、切断部110で切断された実施例1のバイオマスマスターバッチを作製した。」
「【0126】
(実施例2、3及び比較例1~10)
材料およびその含有量を表1に示したものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2、3及び比較例1~10のバイオマスマスターバッチを作製した。」
「【0132】
<成形性評価>
実施例1で得られた米の配合率が70重量%のバイオマスマスターバッチ43重量部と、希釈用樹脂としてエボリュー(登録商標)SP1510(プライムポリマー社製)57重量部とをタンブラーミキサーを用いて均一に攪拌混合することでデンプンの含有比率が30重量%である樹脂混合物を得た。樹脂混合物を、インフレーション成形機を用いて成膜した。」
「【0138】
【表1】
195
118
0001437366000001.jpg
」
(イ)先願明細書等に記載された発明
先願明細書等の【0120】には「実験例1」と記載されている。
一方、【0126】には「(実施例2、3及び比較例1~10)材料およびその含有量を表1に示したものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2、3及び比較例1~10のバイオマスマスターバッチを作製した。」と記載されるものの、【0126】以前に「実施例1」は記載されておらず、【0120】の「実験例1」は【0126】の「実施例1」と同義と解される。
そして、【0120】には「実験例1」として、「デンプンとして平均直径5mmの精米(新潟ケンベイ社製、中白米、含水率11重量%)を78.7重量部(米固形分重量:70重量部)、
樹脂AとしてMFR(190°C/2.16kgf)が3.4g/10minのポリエチレン(日本ポリエチレン社製、カーネルKS340T)を19.7重量部、
樹脂CとしてMFR(190°C/2.16kgf)が30g/10minのポリエチレン(日本ポリエチレン社製、カーネルKJ640T)を8重量部、
添加剤Aとして無水マレイン酸変性ポリプロピレン(理研ビタミン社製 MG-441P)4質量部(MAPP3wt%/全量(固形物換算))、および、
添加剤Bとしてグリセリン脂肪酸エステル(アセチル化モノグリセライド;グリセリンジアセトモノラウレート、理研ビタミン社製、バイオサイザー、日本バイオプラスチック協会(JBPA)のポジティブリストに掲載済み)を2重量部(固形物換算)、
を用いた。」と記載されている。
一方、【0138】【表1】には「実施例1」として、米の配合率(固形分換算)を70重量%、樹脂Aを16重量%、樹脂Cを8重量%、添加剤Aを4重量%、添加剤Bを2重量%含むことが記載されている。
そうすると、【0120】の「実験例1」の「重量部」を単位とする記載と、【0138】【表1】の「実施例1」の「重量%」を単位とする記載は、「樹脂A」の数値だけが異なり、他の成分の数値は一致する。
そして、【0138】【表1】の「実施例1」の記載は、成分の合計は100重量%となり、他の例においても成分の合計は100重量%であり、記載が整合することから、【0138】【表1】の「実施例1」の記載が正しいものであり、【0120】の「実験例1」の「樹脂A」の配合割合について、「19.7重量部」は「16重量部」の誤記であると解される。
上記を踏まえて、先願明細書等の【0120】、【0121】、【0138】【表1】に記載される実施例1に着目すると、以下の発明が記載されていると認める。
「デンプンとして平均直径5mmの精米(新潟ケンベイ社製、中白米、含水率11重量%)を78.7重量部(米固形分重量:70重量部)、
樹脂AとしてMFR(190°C/2.16kgf)が3.4g/10minのポリエチレン(日本ポリエチレン社製、カーネルKS340T)を16重量部、
樹脂CとしてMFR(190°C/2.16kgf)が30g/10minのポリエチレン(日本ポリエチレン社製、カーネルKJ640T)を8重量部、
添加剤Aとして無水マレイン酸変性ポリプロピレン(理研ビタミン社製 MG-441P)4質量部(MAPP3wt%/全量(固形物換算))、および、
添加剤Bとしてグリセリン脂肪酸エステル(アセチル化モノグリセライド;グリセリンジアセトモノラウレート、理研ビタミン社製、バイオサイザー、日本バイオプラスチック協会(JBPA)のポジティブリストに掲載済み)を2重量部(固形物換算)
を、同方向に回転する二軸混練装置を使用して混練し、切断部で切断されて作製した、
バイオマスマスターバッチ。」(以下「先願発明1」という。)
イ 対比・判断
(ア)本件発明2について
a 対比
本件発明2と先願発明1とを対比する。
先願発明1の「デンプンとして平均直径5mmの精米(新潟ケンベイ社製、中白米、含水率11重量%)」は、本件発明2の「澱粉」に相当する。
ポリエチレンは通常、熱可塑性樹脂であるから、先願発明1の「樹脂AとしてMFR(190°C/2.16kgf)が3.4g/10minのポリエチレン(日本ポリエチレン社製、カーネルKS340T)」、「樹脂CとしてMFR(190°C/2.16kgf)が30g/10minのポリエチレン(日本ポリエチレン社製、カーネルKJ640T)」はいずれも、本件発明2の「熱可塑性樹脂」に相当し、その合計量は16+8=24重量部であり、組成物全体に占める割合は24重量%であるから、本件発明2の「10~44.5重量%」を満たす。
先願発明1の「添加剤Aとして無水マレイン酸変性ポリプロピレン(理研ビタミン社製 MG-441P)」について、「理研ビタミン社製 MG-441P」は、本件明細書【0087】において、本件発明2の測定方法における「樹脂混合物のメルトフローレート」が「111g/10min」であることが記載されており、「無水マレイン酸変性ポリプロピレン」は「酸無水物基を有する高分子化合物」であることから、先願発明1の「添加剤Aとして無水マレイン酸変性ポリプロピレン(理研ビタミン社製 MG-441P)」は、本件発明2の
「前記相容化剤は、前記相容化剤(b)とJIS K 6922-1に準拠したメルトフローレートが70g/10minである高圧重合法低密度ポリエチレン(a)とを「a/b=8/2」の重量比で混合した混合物の、JIS K 7210に準拠した温度170°C及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが、40g/10min以上である相容化剤であり、
前記相容化剤として、酸無水物基を有する高分子化合物、カルボキシル基を有する高分子化合物、エポキシ基を有する高分子化合物、イミノ基を有する高分子化合物、イソシアネート基を有する高分子化合物、オキサゾリン基を有する高分子化合物、及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む」
を満たす「相容化剤」に相当し、その重量は4重量部であり、組成物全体に占める割合は4重量%であるから、本件発明2の「0.5~5重量%」を満たす。
先願発明1の「バイオマスマスターバッチ」は澱粉を含む樹脂組成物であるから、本件発明2の「澱粉含有樹脂組成物」に相当する。
以上から、本件発明2と先願発明1とは、
「澱粉含有樹脂組成物であって、
澱粉、熱可塑性樹脂、及び相容化剤を含み、
前記澱粉含有樹脂組成物全体の重量を100重量%として、
前記熱可塑性樹脂の含有量が、10~44.5重量%であり、
前記相容化剤の含有量が、0.5~5重量%であり、
前記相容化剤は、前記相容化剤(b)とJIS K 6922-1に準拠したメルトフローレートが70g/10minである高圧重合法低密度ポリエチレン(a)とを「a/b=8/2」の重量比で混合した混合物の、JIS K 7210に準拠した温度170°C及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが、40g/10min以上である相容化剤であり、
前記相容化剤として、酸無水物基を有する高分子化合物、カルボキシル基を有する高分子化合物、エポキシ基を有する高分子化合物、イミノ基を有する高分子化合物、イソシアネート基を有する高分子化合物、オキサゾリン基を有する高分子化合物、及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む、
澱粉含有樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
澱粉含有樹脂組成物全体の重量を100重量%とした場合の澱粉の含有量が、本件発明2では、「55~85重量%」であるのに対し、先願発明1では、「デンプンとして平均直径5mmの精米(新潟ケンベイ社製、中白米、含水率11重量%)を78.7重量部(米固形分重量:70重量部)」である点
<相違点1-2>
澱粉含有樹脂組成物に含まれる澱粉粒の平均粒子径であって、前記平均粒子径が、前記澱粉粒の長径の平均値より算出される平均粒子径について、本件発明2では「3μm以上、25μm以下」と特定されているのに対し、先願発明1ではそのような特定がない点
b 相違点の検討
事案に鑑み、まず、相違点1-2について検討する。
先願明細書等には澱粉粒の平均粒子径を調整することについて記載も示唆もない。
また、甲2~甲19及び参1~8には、先願発明1で具体的に用いられた平均直径5mmの精米(新潟ケンベイ社製、中白米、含水率11重量%)についての記載がなく、その澱粉粒の平均粒子径が「3μm以上、25μm以下」であることを示す記載もない。
そうすると、先願発明1が、相違点1-2に係る構成を有すると認めることはできず、また、相違点1-2に係る構成を有することが、課題解決のための具体化手段における微差に過ぎないともいえない。
c 先願明細書等の実施例1以外の例について
先願明細書等に記載の実施例2、3、比較例1、8においても、実施例1と同じく「デンプンとして平均直径5mmの精米(新潟ケンベイ社製、中白米、含水率11重量%)」が用いられており、その澱粉粒の平均粒子径は特定されていないから、実施例2、3、比較例1、8に着目して先願明細書等に記載された発明を認定した場合も、少なくとも相違点1-2で相違し、その判断も上記bにおいて述べたとおりである。
d 小括
したがって、相違点1-1について検討するまでもなく、本件発明2は、先願明細書等に記載された発明と同一ないし実質同一ではない。
(イ)本件発明3~13について
本件発明3~13は、本件発明2を直接又は間接的に引用しており、本件発明2の発明特定事項を全て含むものであるから、先願明細書等に記載された発明とは、少なくとも相違点1-2において相違し、上記(ア)b、cで説示したのと同様の理由により、本件発明3~13は、先願明細書等に記載された発明と同一ないし実質同一ではない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は申立書の72~81頁において、上記相違点1-2につき、概略以下の主張をしている。
a 甲1の【0127】では、「デンプンの凝集粒(直径0.lmm以上)」という表現を行っていることから、デンプンの一次粒子の粒子径は、約50μm以下であることが推察される。また、甲1における実施例1~3では、可塑剤を1.重量%又は2重量%しか含んでおらず、当該量は本件明細書【0048】における「澱粉を実質的に可塑化させない量」であるし、甲1における比較例1、8では可塑剤を含んでいない。そうすると、甲1における実施例1~3、比較例1、8において、澱粉粒の平均粒子径は少なくても3μm以上である蓋然性が高い。
b 甲2~甲7から、樹脂中における澱粉粉末の均一分散性等の観点において、原料の澱粉の平均粒子径として3μm以上25μm以下という数値範囲は、一般的に周知の技術的事項であるといえて、甲1の発明において、デンプン粒子の長径の平均値である平均粒子径を「3μm以上25μm以下」とすることは、分散性を確保するという課題を解決するために、周知技術、慣用技術を単に付加、転換等したものに該当し、何ら新たな効果を奏するものではない。
まず、上記申立人の主張aについて検討する。
上記(ア)bで説示したとおり、先願明細書等には澱粉粒の平均粒子径について記載されていない。また、仮に、甲1の【0127】の「凝集粒(直径0.lmm以上)」という記載から、澱粉粒の平均粒子径が約50μm以下であることが推察されるとしても、それが澱粉粒の平均粒子径が3μm以上25μm以下の範囲内にあることの根拠にはならない。
そして、本件明細書【0048】の記載から、可塑剤が全く使われていないか、わずかにしか使われていない場合には、デンプンが実質的に可塑化されないことがあると認められるとしても、甲1では、そもそも原料として用いられたデンプンの澱粉粒の平均粒子径が不明であるから、そのことも澱粉粒の平均粒子径が3μm以上25μm以下の範囲内にあることの根拠にはならない。
そうすると、本件明細書【0048】の記載を参酌したとしても、甲1における実施例1~3、比較例1、8において、澱粉粒の平均粒子径が3μm以上25μm以下の範囲内にあるとは認められず、その蓋然性が高いともいえない。
次に、上記申立人の主張bについて検討する。
上記(ア)bで説示したとおり、甲2~甲19及び参1~8には、先願発明1で具体的に用いられた平均直径5mmの精米(新潟ケンベイ社製、中白米、含水率11重量%)についての記載がなく、その澱粉粒の平均粒子径が「3μm以上、25μm以下」であることを示す記載もないため、甲2~甲7を参酌したとしても、先願発明1に含まれる澱粉粒の平均粒子径が明らかにはならない。
また、甲2~甲7で示されている澱粉粒の平均粒子径の範囲は「0.5~50μm」(甲2の【0023】)、「5~50ミクロン」(甲3の【0022】)、「10~20μm」(甲4の【0024】)、「6~25μm」(甲5の5.(3))、「2~10μm」(甲6の【0018】)、「1~100μm」(甲7の【0025】)と、互いに異なり、かつ、3μmよりも小さい場合や25μmよりも大きい場合も含まれており、甲2~甲7の記載は、3μm以上25μm以下という数値範囲が一般的に周知の技術的事項であることの根拠にはならないし、先願発明1に含まれる澱粉粒の平均粒子径を3μm以上25μm以下とする動機付けともならない。
そうすると、甲2~甲7から、樹脂中における澱粉粉末の均一分散性等の観点において、原料の澱粉の平均粒子径として3μm以上25μm以下という数値範囲は、一般的に周知の技術的事項であるとは認められず、先願発明1において、原料の澱粉の平均粒子径を3μm以上25μm以下という数値範囲に調整することが課題解決のための具体化手段における微差に過ぎないともいえない。
したがって、上記申立人の主張は採用できない。
ウ 取消理由1及び申立理由1についてのまとめ
以上より、本件発明2~13は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、取消理由1及び申立理由1によっては、本件発明2~13に係る特許を取り消すことはできない。
(2)取消理由2(甲10を主引例とする進歩性)及び申立理由2(甲10を主引例とする新規性及び進歩性)について
上記第4の2(2)の取消理由2及び上記第4の1(1)イの申立理由2は、いずれも甲10を主引用文献とするものであるため、まとめて検討する。
ア 甲10に記載された事項及び発明
(ア)甲10に記載された事項
甲10には以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
デンプン(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、常温で液体の多価アルコール(C)、界面活性剤(D)、及び相溶化剤(E)を必須成分として含有して成る、樹脂成形用組成物。
【請求項2】
前記デンプン(A)の含有量に対する前記常温で液体の多価アルコール(C)と前記界面活性剤(D)の合計含有量が10重量%~42重量%であり、
樹脂系組成成分である前記ポリオレフィン系樹脂(B)と界面活性剤(E)の合計含有量に対する前記常温で液体の多価アルコール(C)と前記界面活性剤(D)の合計含有量が10重量%~28重量%である請求項1に記載の樹脂成形用組成物。」
「【0002】
・・・デンプンに適当な可塑剤を配合して溶融加工が可能な熱可塑化デンプン(Thermoplastic Starch(TPS))とし、これと汎用の熱可塑性合成樹脂を溶融混練したいわゆるポリマーブレンドの検討が進んでいる。」
「【0013】
本発明では、常温で液体の多価アルコール(C)を熱可塑化デンプン(TPS)の必須可塑剤として用いる。」
「【0018】
ポリオレフィン系樹脂とTPSとの相溶性は極めて不十分であるため、本発明では相溶化剤(E)を必須成分として用いる。相溶化剤としては、従来から既知の、例えばエチレン/アクリレート/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体又はエチレン/メタクリル酸共重合体、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたポリオレフィン等のいずれをも使用できるが、比較的低分子量のポリオレフィンに無水マレイン酸を付加したものが、低添加量でも相溶化作用を発現できるため、特に好ましく使用することができる。このような低分子量ポリオレフィンへの無水マレイン酸付加物は市販されており、例えば、三洋化成工業株式会社製の「ユーメックス1001」及び「ユーメックス1010」(商品名)、三菱化学株式会社製の「モディック-AP P908」(商品名)等が挙げられる。低分子量ポリオレフィンへの無水マレイン酸付加物における酸変性基の量は特に限定されないものの、酸価が15~80程度の比較的高いものが好ましい。また、低分子量ポリオレフィンの分子量は特に限定されないが、重量平均分子量において10,000~200,000、更には、10,000~100,000と比較的低分子量であることが好ましい。このような低分子量ポリオレフィンへの無水マレイン酸付加物を用いることにより、相溶化剤の添加量を抑制しつつ高い添加効果を得ることができる。相溶化剤の配合量は、樹脂成形用組成物に対して1~15重量%であり、低分子量の相溶化剤のみを配合する場合は、樹脂成形用組成物に対して1~5重量%である。
【0019】
TPSはデンプン(A)と可塑剤である常温で液体の多価アルコール(C)を、また必要に応じて常温で固体の多価アルコールを追加して80°C~230°Cで混練することによって製造することができる。デンプンは非晶領域を成すアミロースと結晶構造を作るアミロペクチンを主体とする顆粒を形成している。デンプン顆粒を可塑剤とともに加熱混練すると、可塑剤がデンプン顆粒の内部に進入してその規則正しい構造を壊し、均質で熱流動する熱可塑化デンプン(TPS、Thermoplastic starch)となる。このようにして製造されたTPSとポリオレフィン系樹脂(B)、界面活性剤(D)、相溶化剤(E)、その他添加物を溶融混練することにより本発明に係る樹脂成形用組成物が形成されるが、上述した、デンプンと可塑剤の混練時の加熱温度(80°C~230°C)は一般的なポリオレフィン系樹脂の溶融温度であるため、あらかじめTPSを製造するのではなく、TPSの構成成分であるデンプン(A)と常温で液体の多価アルコール(C)を、また必要に応じて常温で固体の多価アルコールを追加して、ポリオレフィン系樹脂(B)、界面活性剤(D)、相溶化剤(E)、その他添加物と共に溶融混練することにより本発明に係る樹脂成形用組成物を製造しても良い。後者の方法では、TPSの製造と樹脂成形用組成物の製造が一つの工程で行われるため、工程を簡略化でき、工程時間を短縮できる点で好ましい。
本発明の樹脂成形用組成物に占めるTPSの割合は70~20重量%、好ましくは65~25重量%、更に好ましくは60~30重量%である。この割合が70重量%以上では成形物の機械的特性が不十分であり、20重量%以下では成形物の良好な帯電防止特性を得ることが困難となる。」
「【0025】
以下、本発明に係る樹脂成形用組成物の具体的な製造例について説明する。
まず、樹脂成形用組成物(デンプン質系材料配合ポリオレフィン系樹脂成形用組成物)の成分に使用した製品の名称や品番、製造会社等を表1、表2および以下に示す。また、各成分の配合比率を表1および表2に示す。
【0026】
【表1】
158
96
0001437366000002.jpg
」
「【0028】
[デンプン(A)]
(A1)日本コーンスターチ(株)製 コーンスターチ「Y-3P」
(A2)日本コーンスターチ(株)製 リン酸化デンプン「馬澱のかわり」
(A3)日本コーンスターチ(株)製 PO付加デンプン「HTP-1」
【0029】
[ポリオレフィン系樹脂(B)]
(1)ポリプロピレン樹脂(PP)
(B1)日本ポリプロ(株)製:メタロセンPP「WINTEC WSX4T」、Clariant社製:「リコセンPP2602」
(B2)ExxonMobil社製:プロピレン系エラストマー「Vistamaxx 6102」
【0030】
(2)ポリエチレン樹脂(PE)
(B3)(株)プライムポリマー社製:メタロセンLLDPE「エボリュー(登録商標)SP1510」
(B4)日本ポリエチレン(株)製:メタロセンLLDPE「カーネルKF370」、ExxonMobil社製:メタロセンLLDPE「Exceed 1018HA」、「Exceed 3518CB」、「Exceed 2018HA」
(B5)日本ポリエチレン(株)製:エチレン-酢酸ビニル共重合体「ノバテックEVA LV342」
【0031】
[常温で液体の多価アルコール(C)]
(C1)阪本薬品工業(株)製:精製グリセリン
[常温で固体の多価アルコール]
(C2)物産フードサイエンス(株)製:「ソルビトールFP」
【0032】
[界面活性剤(D)]
(D1)理研ビタミン(株)製:ソルビタンラウレート(HLB 7.4)「リケマールL-250A」
(D2)松本油脂製薬(株)製:カルボキシベタイン(33重量%水溶液)「マーポビスターMLS」
(D3)松本油脂製薬(株)製:アルキルスルホン酸ナトリウム「TB-160」
【0033】
[相溶化剤(E)]
(E1)三洋化成(株)製:酸無水物変性PP「ユーメックスU1001」、「ユーメックスU5202」
(E2)三井-デュポンポリケミカル(株)製:エチレン/メタクリル酸共重合体「ニュクレルN0903HC」
【0034】
なお、上記した成分のうち成分(B1)は、メタロセンPP「WINTEC WSX4T」と「リコセンPP2602」のいずれか一方、あるいは両方を混合したものを用いた。成分(B4)は、メタロセンLLDPE「カーネルKF370」、メタロセンLLDPE「Exceed 1018HA」、「Exceed 3518CB」、「Exceed 2018HA」の中から選択した1種ないし複数種を混合したものを用いた。成分(E1)は、「ユーメックスU1001」、「ユーメックスU5202」のいずれか一方を用いた。
【0035】
[デンプン質系材料配合ポリオレフィン系樹脂組成物の製造例]
混練装置として二軸押出機((株)テクノベル製KZW25TWIN、スクリュー径48mm、L/D=60、ベントポート2箇所(水蒸気解放機構、大気圧へ水蒸気を解放するタイプ))を用いて、シリンダー温度120~160°C、スクリュー回転数150回転にて原料を混練し、混練組成物(本発明に係る樹脂成形用組成物に相当)とした。原料であるデンプン、ポリオレフィン系樹脂、可塑剤、界面活性剤、相溶化剤、並びに、水の投入には、定量フィーダ、及び定量ポンプを用いた。
混練に続いて、150°Cに設定されたストランドダイより前記混練組成物を直径約3mmのチューブ状に押出し、約4mm長にペレタイズ化し、デンプン質系材料配合ポリオレフィン系樹脂組成物ペレット(以下「樹脂ペレット」という。)の製造例を得た。
・・・
【0037】
・・・樹脂ペレットの製造例を、プレスフィルムに成形した。」
(イ)甲10に記載された発明
甲10の実施例2に着目すると、甲10には以下の発明が記載されている。
「混練装置として二軸押出機を用いて
デンプン(A)として(A1)日本コーンスターチ(株)製 コーンスターチ「Y-3P」42.5重量%、
ポリプロピレン樹脂(PP)として(B1)日本ポリプロ(株)製:メタロセンPP「WINTEC WSX4T」、Clariant社製:「リコセンPP2602」31.0重量%、
ポリエチレン樹脂(PE)として(B3)(株)プライムポリマー社製:メタロセンLLDPE「エボリュー(登録商標)SP1510」15.0重量%、
常温で液体の多価アルコール(C)として(C1)阪本薬品工業(株)製:精製グリセリン5.0重量%、
常温で固体の多価アルコールとして(C2)物産フードサイエンス(株)製:「ソルビトールFP」1.5重量%、
界面活性剤(D)として(D1)理研ビタミン(株)製:ソルビタンラウレート(HLB 7.4)「リケマールL-250A」2.0重量%、
相溶化剤(E)として(E1)三洋化成(株)製:酸無水物変性PP「ユーメックスU1001」、「ユーメックスU5202」3.0重量%、
水5.0重量%
を混練し、150°Cに設定されたストランドダイより前記混練組成物を直径約3mmのチューブ状に押出し、約4mm長にペレタイズ化して得た、デンプン質系材料配合ポリオレフィン系樹脂組成物ペレット。
なお、成分(B1)は、メタロセンPP「WINTEC WSX4T」と「リコセンPP2602」のいずれか一方、あるいは両方を混合したものを用いた。
成分(E1)は、「ユーメックスU1001」、「ユーメックスU5202」のいずれか一方を用いた。」(以下「甲10発明」という。)
イ 対比・判断
(ア)本件発明2について
a 対比
本件発明2と甲10発明とを対比する。
甲10発明の「デンプン(A)として(A1)日本コーンスターチ(株)製 コーンスターチ「Y-3P」」は、本件発明2の「澱粉」に相当する。
ポリエチレン、ポリプロピレンは通常、熱可塑性樹脂であるから、甲10発明の「ポリプロピレン樹脂(PP)として(B1)日本ポリプロ(株)製:メタロセンPP「WINTEC WSX4T」、Clariant社製:「リコセンPP2602」」、「ポリエチレン樹脂(PE)として(B3)(株)プライムポリマー社製:メタロセンLLDPE「エボリュー(登録商標)SP1510」」はいずれも、本件発明2の「熱可塑性樹脂」に相当する。
甲10発明の「相溶化剤(E)として(E1)三洋化成(株)製:酸無水物変性PP「ユーメックスU1001」、「ユーメックスU5202」」は、本件発明2の「相容化剤」に相当し、その割合は3.0重量%であるから、本件発明2の「0.5~5重量%」を満たし、また、「酸無水物変性PP」は、「酸無水物基を有する高分子化合物」に相当するから、本件発明2の「前記相容化剤として、酸無水物基を有する高分子化合物、カルボキシル基を有する高分子化合物、エポキシ基を有する高分子化合物、イミノ基を有する高分子化合物、イソシアネート基を有する高分子化合物、オキサゾリン基を有する高分子化合物、及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む」を満たす。
甲10発明の「デンプン質系材料配合ポリオレフィン系樹脂組成物ペレット。」は澱粉を含む樹脂組成物であるから、本件発明2の「澱粉含有樹脂組成物」に相当する。
以上から、本件発明2と甲10発明とは、
「澱粉含有樹脂組成物であって、
澱粉、熱可塑性樹脂、及び相容化剤を含み、
前記澱粉含有樹脂組成物全体の重量を100重量%として、
前記相容化剤の含有量が、0.5~5重量%であり、
前記相容化剤として、酸無水物基を有する高分子化合物、カルボキシル基を有する高分子化合物、エポキシ基を有する高分子化合物、イミノ基を有する高分子化合物、イソシアネート基を有する高分子化合物、オキサゾリン基を有する高分子化合物、及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む、
澱粉含有樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点10-1>
組成物全体に占める澱粉と熱可塑性樹脂の割合について、本件発明2においては、
「前記澱粉の含有量が、55~85重量%であり、
前記熱可塑性樹脂の含有量が、10~44.5重量%」
であるのに対し、甲10発明においては、デンプン(A)は42.5重量%、ポリプロピレン樹脂(PP)とポリエチレン樹脂(PE)の合計は46.0重量%である点
<相違点10-2>
相容化剤の本件MFRについて、本件発明2では「40g/10min以上」であるのに対し、甲10発明にはそのような特定がない点
<相違点10-3>
澱粉含有樹脂組成物に含まれる澱粉粒の平均粒子径であって、前記平均粒子径が、前記澱粉粒の長径の平均値より算出される平均粒子径について、本件発明2では「3μm以上、25μm以下」と特定されているのに対し、甲10発明にはそのような特定がない点
b 相違点の検討
事案に鑑み、まず、相違点10-3について検討する。
甲10にはデンプン(A)の澱粉粒の平均粒子径を調整することについて記載も示唆もない。
また、甲10発明に含まれる「デンプン(A)として(A1)日本コーンスターチ(株)製 コーンスターチ「Y-3P」」は、「相溶化剤(E)として(E1)三洋化成(株)製:酸無水物変性PP「ユーメックスU1001」、「ユーメックスU5202」」などとともに「混練し、150°Cに設定されたストランドダイより前記混練組成物を直径約3mmのチューブ状に押出し、約4mm長にペレタイズ化」されるものであり、「相溶化剤(E)」などとともに混練、押出及びペレタイズ化された後の澱粉粒の平均粒子径は不明というほかなく、甲2~9、甲11~19及び参1~8を参照したとしても、甲10発明と原料、組成及び製造方法が同じ事例がないため、当該平均粒子径は依然として不明である。また、甲2等には、当該平均粒子径を調整する動機付けとなるような記載もない。
そうすると、甲10発明が、相違点10-3に係る構成を有すると認めることはできず、また、デンプン(A)の澱粉粒の平均粒子径を相違点10-3に係る構成を有するように調整することは当業者が容易になし得たこととはいえない。
c 甲10の実施例2以外の例について
甲10に記載の実施例1においても、実施例2と同じく「デンプン(A)」は「相溶化剤(E)」などとともに混練、押出及びペレタイズ化されるものであるから、その澱粉粒の平均粒子径は不明というほかなく、実施例1に着目して甲10に記載された発明を認定した場合も、少なくとも相違点10-3で相違し、その判断も上記bにおいて述べたとおりである。
d 小括
したがって、相違点10-1及び相違点10-2について検討するまでもなく、本件発明2は、甲10に記載された発明ではなく、また、甲10に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明3~13について
本件発明3~13は、本件発明2を直接又は間接的に引用しており、本件発明2の発明特定事項を全て含むものであるから、甲10に記載された発明とは、少なくとも相違点10-3において相違し、上記(ア)b、cで説示したのと同様の理由により、本件発明3~13は、甲10に記載された発明ではなく、また、甲10に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、上記相違点10-3につき、申立書では何ら主張していないが、令和7年10月17日付けで提出した意見書の27~31頁において、概略以下の主張をしている。
a 甲10の比較例3、4(【0025】、【0026】表1、【0028】~【0036】)は、甲10発明(実施例2)と比較して、デンプン(A)及び常温で液体の多価アルコール(C)の配合量だけが異なる。甲10の比較例3、4では、可塑剤(C)として、(C1)のグリセリンに加え(C2)のソルビトール1.5重量%を含む。従って、比較例3、4は、可塑剤(C)の配合量がそれぞれ4重量%及び1.5重量%であり、デンプン(A)に対する可塑剤(C)の割合は重量比でそれぞれ9%及び3%である。
ここで、参1の比較例7において、原料のコーンスターチの平均粒径が15μmであるのに対し、樹脂組成物における澱粉相の平均粒子径(樹脂組成物のペレットから切り出した切片のTEM像における澱粉相の円相当径(面積を測定し、その面積をもつ真円を描いたときの直径)の平均値(【0116】))は10μmである(【0141】、【0146】表1)ところ、甲10の比較例3、4は、参1の比較例7と同一のコーンスターチ(平均粒径:15μm)を原料とし、デンプンに対する可塑剤の割合が同程度以下であるから、コーンスターチが十分に可塑化されずコーンスターチの性状は原料のコーンスターチから著しく変化しない(本件明細書【0047】、【0048】)。
また、参2(【0018】、【0093】、【0102】、【0113】、【0114】、【0120】、【0122】~【0124】、図2、図5参照)は、甲10の比較例3、4、及び参1の比較例7で使用されたコーンスターチの粒子が概ね球状であることを示し、参3(2.1 試料と調整条件、表1、3.3 複合材料中でのPTFE、図10、図11参照)の平均粒径15μmのコーンスターチを含み可塑剤を含まない樹脂組成物においては、平均粒子径が10μmである。
参1~3より、甲10の比較例3、4の樹脂組成物におけるデンプンの平均粒子径は10~15μm程度であり、本件発明2の相違点3(上記相違点10-3に相当)に係る平均粒子径の数値範囲(3μm以上、25μm以下)を満たす蓋然性が高い。
b 仮に、相違点3(上記相違点10-3に相当)が実質的な相違点であったとしても、参1~参3の記載事項を考慮すると、平均粒径15μm程度のコーンスターチ、熱可塑性樹脂、5質量%以下の可塑剤を原料とする樹脂組成物におけるコーンスターチの平均粒子径が3μm以上25μm以下の数値範囲を満たすように構成することは、本件特許の優先日前において周知の技術である。
また、参4(p.7)、参5(P.3)に記載されているように、可塑剤を含まない澱粉含有樹脂組成物は、本件特許の優先日前である1994年以前から生分解性樹脂の一例として研究、開発されていた周知の技術に過ぎず、産業の発展に特段寄与するものでもない。
さらに、参6~参8の記載事項を考慮すると、澱粉、熱可塑性樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物において、可塑剤の含有量に拘わらず、澱粉粒の平均粒子径を3μm以上25μm以下とすることは、本件特許の優先日前に周知の技術である。
まず、上記申立人の主張aについて検討する。
甲10で用いられている可塑剤はグリセリン及びソルビトール(実施例1、2、比較例3)、又はソルビトールのみ(比較例4)であるのに対して、参1の比較例7で用いられている可塑剤はグリセリンのみであるところ、通常、可塑剤の種類が違えば、混合する割合が同じであっても、可塑化される度合いは変わるものであるから、デンプンとして用いた原料が同じであり、かつ、デンプンに対する可塑剤の割合が同程度以下であることは、甲10の実施例1、2及び比較例3、4における「デンプン(A)」の平均粒子径が、参1の比較例7の澱粉相の円相当径の平均粒子径と同じであることの根拠にはならないし、甲10の実施例1、2及び比較例3、4においてコーンスターチが十分に可塑化されずコーンスターチの性状は原料のコーンスターチから著しく変化しないと推認する根拠にもならない。
そして、参2には、コーンスターチの粒子が概ね球状であることは示されているものの、可塑剤を用いることは記載されておらず、可塑化した後の澱粉粒の平均粒子径についても記載されていない。
また、参3には、平均粒径15μmのコーンスターチを含み可塑剤を含まない樹脂組成物においては、澱粉粒の平均粒子径が10μmであることは示されているものの、可塑剤を用いることは記載されておらず、可塑化した後の平均粒子径についても記載されていない。
そうすると、甲10の実施例1、2及び比較例3、4における「デンプン(A)」の平均粒子径が、参1の比較例7の澱粉相の円相当径の平均粒子径と同じであることの根拠はなく、甲10の実施例1、2及び比較例3、4においてコーンスターチが十分に可塑化されずコーンスターチの性状は原料のコーンスターチから著しく変化しないと推認する根拠もないのであるから、参1~参3の記載を参酌したとしても、甲10で用いられた原料のコーンスターチの平均粒径が15μmであるからといって、甲10における実施例1、2、比較例3、4において、澱粉粒の平均粒子径が3μm以上25μm以下である蓋然性が高いとはいえない。
次に、上記申立人の主張bについて検討する。
参1には、「引裂き強度や引張弾性率などの物性を向上させる観点から、樹脂組成物中での澱粉島相の平均粒子径が1μm以下であるように澱粉を用いることが好ましく」(【0065】)及び「澱粉の可塑剤(D)の含有量は、澱粉(C)を基準(100質量%)として、好ましくは10質量%以上55質量%以下である。」(【0068】)と記載されている。
参2には、可塑剤を用いることは記載されておらず、可塑化した後の澱粉粒の平均粒子径についても記載されていない。
参3には、平均粒径15μmのコーンスターチを含み可塑剤を含まない樹脂組成物においては、澱粉粒の平均粒子径が10μmであることは示されているものの、可塑剤を用いることは記載されておらず、可塑化した後の平均粒子径についても記載されていない。
そうすると、参1~参3に記載されているのは、可塑剤の含有量を10質量%以上55質量%以下とすることか、可塑剤を用いないことであって、平均粒径15μm程度のコーンスターチ、熱可塑性樹脂、5質量%以下の可塑剤を原料とする樹脂組成物におけるコーンスターチの平均粒子径が3μm以上25μm以下の数値範囲を満たすように構成することは記載されていない。したがって、参1~参3は、そのような構成とすることが本件特許の優先日前において周知の技術であったとする根拠にはならない。
また、参4及び参5に、可塑剤を含まない澱粉含有樹脂組成物が記載されているとしても、甲10には、「本発明では、常温で液体の多価アルコール(C)を熱可塑化デンプン(TPS)の必須可塑剤として用いる。」(【0013】)と記載されているから、甲10発明において可塑剤は必須の原料であり、甲10発明において可塑剤を含まないようにする動機にはならない。
そして、参6~参8で示されている澱粉粒の平均粒子径の範囲は「3~8μm」(参6のAbstract)、「一般に、10~30μm、特に10~20μm」(参7の【0112】)、「10μmから50μmより大なる範囲」(参8の【0058】)と、互いに異なり、かつ、25μmよりも大きい場合も含まれており、参6~参8の記載は、澱粉粒の平均粒子径を3μm以上25μm以下とすることは、本件特許の優先日前に周知の技術であることの根拠にはならない。
そうすると、参6~参8から、澱粉、熱可塑性樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物において、可塑剤の含有量に拘わらず、澱粉粒の平均粒子径を3μm以上25μm以下とすることは、本件特許の優先日前に周知の技術であるとは認められない。
したがって、上記申立人の主張は採用できない。
ウ 取消理由2及び申立理由2についてのまとめ
以上より、本件発明2~13は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、取消理由2及び申立理由2によっては、本件発明2~13に係る特許を取り消すことはできない。
(3)申立理由3(甲11を主引例とする新規性及び進歩性)について
ア 甲11に記載された事項及び発明
(ア)甲11に記載された事項
甲11には以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
熱可塑性樹脂、澱粉質系材料および相溶化剤を含むものであることを特徴とする澱粉質系複合樹脂組成物。
【請求項2】
相溶化剤が、不飽和ジカルボン酸および/またはその酸無水物で変性された酸変性ポリオレフィン樹脂である請求項1に記載の澱粉質系複合樹脂組成物。」
「【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の澱粉質系複合樹脂組成物を成形したものである成形物。」
「【0004】
また、澱粉質系材料を熱可塑性樹脂に配合した組成物は、押出機、射出成形機等での流動特性が低く、シリンダー内で焦げるという問題がある。更に流動性・分散性等が低いため、樹脂の均一性が保てず、希望する特性の成形物が得られないという問題もある。」
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、樹脂を均一にして優れた機械的特性を発揮することができると共に、流動性や成形加工性に優れ、必要によって、耐水性、成形物の臭い、色合い等の特性をも良好にすることのできる澱粉質系複合樹脂組成物、およびこうした樹脂組成物を成形して上記の特性を発揮することのできる成形物を提供することにある。」
「【0016】
【発明の実施の形態】
本発明者は、機械的特性が良好な樹脂成形物を得ることができる澱粉質系複合樹脂組成物を目指して様々な角度から検討した。そしてまず、これまで提案されている澱粉質系複合樹脂組成物では、希望する特性の成形物が得られないのは、熱可塑性樹脂と澱粉質系材料の親和性が悪く、均一化された混合物を形成する性質(以下、この性質を「相溶性」と呼ぶ)が良好とは言えないことが原因しているという着想が得られた。
【0017】
そこで、本発明者が更に検討した結果、熱可塑性樹脂と澱粉質系材料との相溶性を良好にするもの(以下、これを「相溶化剤」と呼ぶ)を組成物中に含有させることによって、従来の樹脂組成物における欠点を是正して良好な特性を発揮する澱粉質系複合樹脂組成物が実現できることを見出し、本発明を完成した。
【0018】
本発明の澱粉質系複合樹脂組成物では、少なくとも相溶化剤を含有させることが重要な要件であるが、こうした相溶化剤としては、不飽和ジカルボン酸および/またはその酸無水物で変性された酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましいものとして挙げられる。こうした酸変性ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂を熱減成して得られる数平均分子量500~20000程度の低分子量オレフィン樹脂で、その炭素数1000当り二重結合を0.1個以上含む低分子量化したポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸および/またはその無水物を付加反応することによって得られる。またこのとき用いる不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、フマール酸およびマレイン酸等を挙げることができる。不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸および無水ナジック酸等を挙げることができる。
【0019】
相溶化剤として用いる酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸価:5~50、軟化点:75~150°C、数平均分子量:500~20000の低分子量オレフィン樹脂からなる酸で変性された低分子量ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
【0020】
上記酸変性ポリオレフィン樹脂は、熱可塑性樹脂と澱粉質系材料等との相溶性を良好にする他、両者の密着性、分散性、成形加工性、加工性等を向上させる作用をも発揮する。また澱粉質系複合樹脂組成物の流動特性等を改善することで、押出成形や射出成形等の成形加工温度を下げることができ、澱粉質系材料の褐変することがなく均一な樹脂が得られる。
【0021】
相溶化剤の配合量は、澱粉質系材料100質量部に対して0.5~30質量部であることが好ましく、より好ましくは1~15質量部程度である。相溶化剤の配合量が0.5質量部未満になると、澱粉質系複合樹脂組成物の流動性、相溶性等を改善することができず、また30質量部を超えて配合した場合は、加工された樹脂製品の機械的強度が低下し脆くなり、耐熱性も低下し好ましくない。
【0022】
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂および/または自然環境下で消化分解、崩壊や不腐化等の作用を受ける生分解性樹脂であれば特に限定されるものではない。環境汚染等を考慮すると有害ガスが発生せず、焼却炉を傷めないような生分解性樹脂が好ましい。」
「【0024】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレンとα-オレフィン変性樹脂、エチレン-アクリル酸あるいはメタクリル酸等のコポリマーあるいはホモポリマー樹脂、ポリブテン樹脂等を挙げることができる。所望の特性並びに用途に応じて、単独あるいは2種類以上併用または生分解性樹脂と併用して用いることができる。その添加率は所望の特性並びに用途に応じて任意に添加される。
【0025】
一方、澱粉質系材料としては、水溶性高分子物質である生澱粉(トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉および蛋白質成分を含む未精製澱粉、馬鈴薯の加工製品製造時に発生する馬鈴薯の皮、未精製馬鈴薯澱粉等)、変性澱粉(α化澱粉、酸化処理澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等)、セルロース粉末、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム,メチルセルロース、酢酸セルロース等)、キトサン、製麺生地(製麺過程で発生する不良品も含む)およびパン屑等を挙げることができる。これらのうち、所望の特性並びに用途に応じて、単独あるいは2種類以上併用して用いることが出来る。」
「【0028】
尚、本発明の澱粉系複合樹脂組成物においては、熱可塑性樹脂と澱粉系材料の配合割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して澱粉質系材料50~1000質量部程度であることが好ましく、より好ましくは100~800質量部程度である。澱粉系材料の配合量が50質量部未満になると、機械的強度や流動性等が低下し、また1000質量部を超えて配合されると、耐水性や成形加工性が低下して好ましくない。
【0029】
本発明の澱粉質系複合樹脂組成物には、必要によって(a)改質剤、(b)カップリング剤、(c)界面活性剤等を含ませることも有効であり、含有される種類に応じて樹脂組成物の特性が更に改善される。
【0030】
上記改質剤としては、エポキシ化油脂(エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチル、エポキシ化大豆油)、尿素、尿素誘導体、脂肪族アミン(大豆アルキルアミン、牛脂アルキルアミン、オクタデシルアミン、アルキル牛脂プロピレンジアミン等)よりなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。所望の特性や用途等に応じて、複合樹脂組成物の特性を阻害しない範囲で改質剤を任意に配合することができる。
【0031】
上記改質剤は、複合樹脂組成物と反応し複合樹脂組成物の相溶化作用を改選する改質材および成形・加工等によって得られた製品の脆さや機械的強度を改善する可塑化剤を併用することもできる。こうした改質剤は、複合樹脂組成物の相溶化作用を改善するもので、複合樹脂組成物と反応するアミノ基、エポキシ基等の官能基を有する化合物である。押出機等による高温・高圧下で澱粉質系材料、酸変性ポリオレフィン樹脂等が糊化・可塑化されるとともに該複合樹脂組成物と反応し2次変性する作用を発揮する。
【0032】
可塑化剤としては、澱粉質系複合樹脂組成物の分子構造中に取り込まれ、相溶化され柔軟性や流動性等を付与し、複合樹脂組成物を可塑化する化合物であればよい。水は澱粉質系材料の効果的な可塑化剤であるが、水は揮発性のため澱粉質系材料の老化が早く、得られた樹脂は脆くなるため使用が困難である。このため相溶性のある複合樹脂組成物の脆さを改善する可塑化剤としては、グリセリン、1,3-プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、油脂(ヤシ油、パーム油、大豆油、ヒマシ油等)、油脂硬化油(ヤシ油硬化油、パーム極度硬化油等)等を挙げることができる。尚、こうした改質剤の配合量は、樹脂組成物全体に対して0.1~5質量%程度であることが好ましい。
【0033】
カップリング剤は、有機物とメタルから構成されている化合物で、分子中に無機材料と化学結合する反応基と有機材料と化学結合する反応基を2種類以上の異なった反応基を持った化合物である。この特性を利用して、澱粉質系複合樹脂組成物の界面に存在する水酸基とカップリング剤とが反応して化学結合し、熱可塑性樹脂と密着した相溶化剤と反応することで密着性が更に向上し、強固に接着することで成形物の機械的強度、耐熱性が高められるのに有効である。
【0034】
こうしたカップリング剤としては、分子中に無機質材料と化学的に結合する反応基と、澱粉質等の有機材料と化学反応する反応基を有するタイプがある。カップリング剤のメタル部分によって、チタネート系、シラン系、アルミネート系等を挙げることができ、反応基としてはビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、アルコキシル基(メトキシ基、エトキシ基等)等を挙げることができるが、本発明ではいずれのカップリング剤を用いることができる。
【0035】
例えば、シラン系のカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、テトラメトキシシランおよびメチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。また、チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリ(N-アミノエチルーアミノエチル)チタネートを挙げることができる。アルミネート系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートを挙げることができる。」
「【0056】
実施例5
コーンスターチ:50kg、グリセリンモノステアレート:1kgおよびグリセリンジアセトモノラウレート:1.5kgをヘンシェルミキサーにて10分間混合して混合物Aを製造した。一方、タルク:10kgに3-アミノプロピルトリメトキシシラン70gをヘンシェルミキサーにて80°Cで10分間混合し、混合物Bを製造した。
【0057】
次いで、ポリプロピレン樹脂:36.5kg、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂:1kgを秤量し、これに混合物AとBに投入し、均一に混合して樹脂組成物とした。得られた樹脂組成物をニ軸押出機に投入し、100kg/時間の押出速度、温度:160~180°C、吐出圧:5~20kgf/cm
2
(ゲージ圧)の条件で、ダイ内径:2.5mmの吐出開口部より連続的に常圧下に吐出させて澱粉質複合樹脂組成ペレットを得た。」
「【0065】
実施例7
食パン製造工程からでた食パンの耳を乾燥し、粉砕したパン屑:40kg、コーンスターチ:10kgに、ソルビタンステアレート:1kgをヘンシェルミキサーにて10分間混合して混合物Aを製造した。次いで、タルク:10kg、ポリプロピレン樹脂:37kg、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂:1.5kgを秤量し、これを混合物Aに投入して均一に混合し、樹脂組成物とした。
【0066】
得られた樹脂組成物をニ軸押出機に投入し、100kg/時間の押出速度、130~160°C、吐出圧5~10kgf/cm
2
(ゲージ圧)の条件で、ダイ内径:2.5mmの吐出開口部より連続的に常圧下に吐出させて澱粉質複合樹脂組成ペレットを得た。
【0067】
実施例8
食パン製造工程からでた食パンの耳を乾燥し、粉砕したパン屑:40kg、コーンスターチ15kg、ソルビタンステアレート1kgとグリセリンジアセトモノラウレート:1kgをヘンシェルミキサーにて10分間混合し、混合物Aを製造した。次いで、タルク:10kg、ポリプロピレン樹脂:33kg、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂:1kgを秤量し、これを混合物Aに投入して均一に混合し、組成物とした。
【0068】
得られた樹脂組成物をニ軸押出機に投入し、100kg/時間の押出速度、130~160°C、吐出圧:5~10kgf/cm
2
(ゲージ圧)の条件で、ダイ内径:2.5mmの吐出開口部より連続的に常圧下に吐出させて澱粉質複合樹脂組成ペレットを得た。」
(イ)甲11に記載された発明
甲11の実施例5に着目すると、甲11には以下の発明が記載されている。
「コーンスターチ:50kg、グリセリンモノステアレート:1kgおよびグリセリンジアセトモノラウレート:1.5kgをヘンシェルミキサーにて10分間混合して混合物Aを製造し、一方、タルク:10kgに3-アミノプロピルトリメトキシシラン70gをヘンシェルミキサーにて80°Cで10分間混合し、混合物Bを製造し、次いで、ポリプロピレン樹脂:36.5kg、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂:1kgを秤量し、これに混合物AとBを投入し、均一に混合して樹脂組成物とし、得られた樹脂組成物をニ軸押出機に投入し、100kg/時間の押出速度、温度:160~180°C、吐出圧:5~20kgf/cm
2
(ゲージ圧)の条件で、ダイ内径:2.5mmの吐出開口部より連続的に常圧下に吐出させて得た、澱粉質複合樹脂組成ペレット。」(以下「甲11発明」という。)
イ 対比・判断
(ア)本件発明2について
a 対比
本件発明2と甲11発明とを対比する。
甲11発明の「コーンスターチ」は、本件発明2の「澱粉」に相当する。その割合は約50重量%(=50÷(50+1+1.5+10+0.07+36.5+1)×100)である。
ポリプロピレン樹脂は通常、熱可塑性樹脂であるから、甲11発明の「ポリプロピレン樹脂」は、本件発明2の「熱可塑性樹脂」に相当する。その割合は約36.5重量%(=36.5÷(50+1+1.5+10+0.07+36.5+1)×100)であるから、本件発明2の「10~44.5重量%」を満たす。
甲11発明の「無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」は、甲11の【0018】によれば「相溶化剤」であるから、本件発明2の「相容化剤」に相当する。また、甲11発明の「3-アミノプロピルトリメトキシシラン」は、甲11の【0035】によれば「シラン系のカップリング剤」であるから、本件明細書【0035】より、本件発明2の「相容化剤」に相当する。それらを合計した割合は約1.1重量%(=(1+0.07)÷(50+1+1.5+10+0.07+36.5+1)×100)であるから、本件発明2の「0.5~5重量%」を満たし、また、「無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」及び「3-アミノプロピルトリメトキシシラン」は、それぞれ「酸無水物基を有する高分子化合物」及び「シランカップリング剤」に相当するから、本件発明2の「前記相容化剤として、酸無水物基を有する高分子化合物、カルボキシル基を有する高分子化合物、エポキシ基を有する高分子化合物、イミノ基を有する高分子化合物、イソシアネート基を有する高分子化合物、オキサゾリン基を有する高分子化合物、及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む」を満たす。
甲11発明の「澱粉質複合樹脂組成ペレット」は澱粉を含む樹脂組成物であるから、本件発明2の「澱粉含有樹脂組成物」に相当する。
以上から、本件発明2と甲11発明とは、
「澱粉含有樹脂組成物であって、
澱粉、熱可塑性樹脂、及び相容化剤を含み、
前記澱粉含有樹脂組成物全体の重量を100重量%として、
前記熱可塑性樹脂の含有量が、10~44.5重量%であり、
前記相容化剤の含有量が、0.5~5重量%であり、
前記相容化剤として、酸無水物基を有する高分子化合物、カルボキシル基を有する高分子化合物、エポキシ基を有する高分子化合物、イミノ基を有する高分子化合物、イソシアネート基を有する高分子化合物、オキサゾリン基を有する高分子化合物、及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む、
澱粉含有樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点11-1>
組成物全体に占める澱粉の割合について、本件発明2では、「55~85重量%」であるのに対し、甲11発明では、「コーンスターチ」は約50重量%である点
<相違点11-2>
相容化剤の本件MFRについて、本件発明2では「40g/10min以上」であるのに対し、甲11発明にはそのような特定がない点
<相違点11-3>
澱粉含有樹脂組成物に含まれる澱粉粒の平均粒子径であって、前記平均粒子径が、前記澱粉粒の長径の平均値より算出される平均粒子径について、本件発明2では「3μm以上、25μm以下」であるのに対し、甲11発明にはそのような特定がない点
b 相違点の検討
事案に鑑み、まず、相違点11-3について検討する。
甲11には、甲11発明の「コーンスターチ」の澱粉粒の平均粒子径について何ら記載されていない。
また、甲11発明の「コーンスターチ」について、甲11には具体的な商品名等が記載されておらず、甲2~甲19及び参1~8を参酌したとしても、その澱粉粒の平均粒子径が「3μm以上、25μm以下」であるものとは認められない。
さらに、甲2等には、当該平均粒子径を調整する動機付けとなるような記載もない。
そうすると、甲11発明が、相違点11-3に係る構成を有すると認めることはできず、また、相違点11-3に係る構成を有するように調整することは当業者が容易になし得たこととはいえない。
c 甲11の実施例5以外の例について
実施例7、8に着目して甲11に記載された発明を認定した場合も、少なくとも相違点11-3で相違し、その判断も上記bにおいて述べたとおりである。
d 小括
したがって、相違点11-1及び相違点11-2について検討するまでもなく、本件発明2は、甲11に記載された発明ではなく、また、甲11に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明3~13について
本件発明3~13は、本件発明2を直接又は間接的に引用しており、本件発明2の発明特定事項を全て含むものであるから、甲11に記載された発明とは、少なくとも相違点11-3において相違し、上記(ア)b、cで説示したのと同様の理由により、本件発明3~13は、甲11に記載された発明ではなく、また、甲11に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は申立書の84~87、90~92頁において、上記相違点11-3につき、概略以下の主張をしている。
a 甲11では、原料の澱粉質系材料の平均粒子径について言及されておらず、このことは、原料の澱粉質系材料の平均粒子径については、技術常識を適用可能であることを意味する。甲2~甲7の記載によれば、本件特許の出願時において、原料の澱粉の平均粒子径として3μm以上25μm以下という数値範囲は一般的に周知の技術的事項と言わざるを得ず、甲11における原料の澱粉質系材料の長径の平均値である平均粒子径は、3μm以上25μm以下である蓋然性が高い。
b 甲11の【0004】等には、成分の分散性及び樹脂の均一性を向上させることが解決課題の1つとして記載されている。してみると、本件特許の出願時において、甲11における原料の澱粉質系材料として、成分の分散性及び樹脂の均一性を向上させる目的で、甲2~甲7に記載の事項を参照して、長径の平均値である平均粒子径が3μm以上25μm以下の澱粉質系材料を原料とすることは想到容易である。
c 甲11の【0029】~【0032】には、澱粉質系複合樹脂組成物が可塑化剤等の改質剤を含有してもよく、配合量は0.1~5質量%程度であることが好ましいと記載され、甲11の実施例5(【0056】)、実施例7(【0065】)、実施例8(【0067】)では、【0032】に例示された可塑化剤を含まず、可塑化剤の含有量は0重量%である。すなわち、澱粉用可塑剤の含有量を上述の「澱粉を実質的に可塑化させない量」である5重量%以下とすることは、甲11に記載されている。従って、本件発明2は、甲11に記載された発明であるか、又は、甲11に記載された発明に甲2~甲7に記載の事項を組み合わせて想到容易である。
まず、上記申立人の主張aについて検討する。
上記(ア)bで説示したとおり、甲11には、甲11発明の「コーンスターチ」の澱粉粒の平均粒子径について記載されていない。
また、仮に、平均粒子径について言及されていないことが、技術常識を適用可能であることを意味するとしても、上記(1)イ(ウ)で説示したとおり、甲2~甲7で示されている澱粉粒の平均粒子径の範囲は、互いに異なり、かつ、3μmよりも小さい場合や25μmよりも大きい場合も含まれており、甲2~甲7の記載は、3μm以上25μm以下という数値範囲が一般的に周知の技術的事項であることの根拠にはならず、原料の澱粉の平均粒子径として3μm以上25μm以下という数値範囲であることが技術常識であるとは認められない。
そうすると、甲2~甲7の記載を参酌したとしても、甲11発明の「コーンスターチ」の澱粉粒の平均粒子径が3μm以上25μm以下であるとは認められない。
次に、上記申立人の主張bについて検討する。
甲11の【0004】等に記載された成分の分散性及び樹脂の均一性を向上させるという課題について、甲11の【0017】には、「本発明者が更に検討した結果、熱可塑性樹脂と澱粉質系材料との相溶性を良好にするもの(以下、これを「相溶化剤」と呼ぶ)を組成物中に含有させることによって、従来の樹脂組成物における欠点を是正して良好な特性を発揮する澱粉質系複合樹脂組成物が実現できることを見出し、本発明を完成した。」と記載されており、甲11の【0004】等に記載された上記課題は、相溶化剤を組成物中に含有させることによって解決するものと当業者は認識すると認められる。
他方、甲2~甲7には、相溶化剤を組成物中に含有させることに加えて、澱粉粒の平均粒子径を調整することも、それによって同程度の成分の分散性及び樹脂の均一性の向上が得られることも記載されていない。
そうすると、甲2~甲7の記載を参酌したとしても、甲11発明において、「コーンスターチ」の澱粉粒の平均粒子径を調整する動機付けがない。
さらに、上記申立人の主張cについて検討する。
本件明細書【0048】の記載から、可塑剤が全く使われていないか、わずかにしか使われていない場合には、デンプンが実質的に可塑化されないことがあると認められるとしても、甲11では、そもそも原料として用いられた「コーンスターチ」の澱粉粒の平均粒子径が不明であるから、そのことが澱粉粒の平均粒子径が3μm以上25μm以下である根拠にはならない。
そうすると、甲11発明において、本件明細書【0048】の記載を参酌したとしても、「コーンスターチ」が実質的に可塑化されるかどうかに関わらず、甲11発明の「コーンスターチ」の澱粉粒の平均粒子径が3μm以上25μm以下であるとは認められない。
また、甲11発明において、「コーンスターチ」が実質的に可塑化されないようにすることが当業者にとって容易に想到し得る事項であるとしても、それによって澱粉粒の平均粒子径が3μm以上25μm以下になるとは認められないから、甲11発明の「コーンスターチ」の澱粉粒の平均粒子径を3μm以上25μm以下に調整することが、当業者にとって容易に想到し得る事項であるとは認められない。
したがって、上記申立人の主張は採用できない。
ウ 申立理由3についてのまとめ
以上より、本件発明2~13は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由3によっては、本件発明2~13に係る特許を取り消すことはできない。
(4)申立理由4(甲15を主引例とする新規性及び進歩性)について
ア 甲15に記載された事項及び発明
(ア)甲15に記載された事項
甲15には以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
バイオマス材料と、ポリオレフィン系樹脂と、酸化分解促進剤とを含み、
前記酸化分解促進剤が、カルボン酸金属塩及び希土類化合物の組み合わせである、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記バイオマス材料が、澱粉又は澱粉変性物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記バイオマス材料が、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉の変性物、タピオカ澱粉の変性物、及びトウモロコシ澱粉の変性物から選ばれる1つ又は2以上の組み合わせである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」
「【0020】
前記バイオマス材料は、前記樹脂組成物100質量部当たり、例えば5質量部~85質量部、好ましくは20質量部~80質量部、より好ましくは30質量部~75質量部、さらにより好ましくは40質量部~70質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれる。」
「【0025】
前記ポリオレフィン系樹脂は、前記樹脂組成物100質量部当たり、例えば10質量部~90質量部、好ましくは10質量部~70質量部、より好ましくは15質量部~60質量部、さらにより好ましくは20質量部~50質量部の含有割合で、前記樹脂組成物に含まれる。」
「【0034】
[相溶化剤]
【0035】
前記相溶化剤は、前記ポリオレフィン系樹脂と前記バイオマス材料との相溶性をより向上させるために用いられうる。前記相溶化剤の種類は、前記ポリオレフィン系樹脂の種類に応じて選択されてよい。
前記相溶化剤として、例えば無水カルボン酸変性ポリオレフィン、オレフィン系のグラフト変性物、及びオレフィン系のコモノマーなどを挙げることができる。
当該無水カルボン酸変性ポリオレフィンを構成する無水カルボン酸は、好ましくは無水マレイン酸でありうる。前記相溶化剤は、例えば無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、及び無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体からなる群から選ばれる1つ又は2以上の組み合わせであってよい。
当該オレフィン系のグラフト変性物は、酸変性ポリオレフィンであってよく、より具体的には不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性したポリオレフィンでありうる。グラフト変性に用いられる(未変性の)ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、又はエチレン・α-オレフィン共重合体(エチレン・プロピレン共重合体)であってよく、特にはポリプロピレンでありうる。例えば、特開2010-095671に記載された酸変性ポリオレフィンが用いられてよい。
【0036】
[滑剤]
【0037】
前記滑剤として例えば金属石鹸系滑剤、炭化水素系滑剤、及び脂肪酸系滑剤を挙げることができる。本発明において、好ましくは金属石鹸系滑剤が前記樹脂組成物に含まれうる。前記金属石鹸系滑剤の例として、炭素数が少なくとも10個以上の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩を挙げることができ、前記金属石鹸系滑剤として例えばステアリン酸金属塩などの脂肪酸系のものが好適に使用できる。さらにより具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン鎖アルミニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、及びフマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられ、これらのうち少なくとも1種類が金属石鹸系滑剤として用いられてよい。前記炭化水素系滑剤としてはパラフィンを挙げることができる。前記脂肪酸系滑剤としてステアリン酸を挙げることができる。」
「【0049】
(実施例1)
【0050】
以下表1中の実施例1の列に示されるように、澱粉(コーンスターチ)60質量部、ポリプロピレン29質量部、金属石鹸7質量部、無水マレイン酸変性ポリプロピレン3質量部、及び酸化分解促進剤(P―Life、ピーライフ・ジャパン・インク株式会社) 1質量部を、ミキサーによって均一に混合した。なお、これら成分の合計量は100質量部である。
【0051】
【表1】
52
147
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【0052】
当該混合によって得られた混合物を、二軸押出混錬機(PCM30、株式会社池貝)に投入し、当該押出混錬機内で溶融混錬して樹脂組成物を得た。当該樹脂組成物は、ストランドダイから排出されて、ストランド状に成形された。当該ストランド状に成形された樹脂組成物は、冷却後にカッターによって切断されて、円柱状ペレットが得られた。
前記二軸押出混錬機のシリンダ温度、アダプタ温度、及びダイス温度はそれぞれ、180°C~190°C、195°C、及び195°Cであった。
【0053】
前記ペレットを、Tダイを備えられた単軸押出試験機(Labtech社)に供給した。当該試験機のシリンダ温度は195°Cであった。当該試験機内のシリンダ内で前記ペレットは溶融され、そして、溶融物が、Tダイから押し出されてシート(以下、「実施例1のシート」という)が成形された。」
(イ)甲15に記載された発明
甲15の実施例1に着目すると、甲15には以下の発明が記載されている。
「澱粉(コーンスターチ)60質量部、ポリプロピレン29質量部、金属石鹸7質量部、無水マレイン酸変性ポリプロピレン3質量部、及び酸化分解促進剤(P―Life、ピーライフ・ジャパン・インク株式会社)1質量部を、ミキサーによって均一に混合し、当該混合によって得られた混合物を、二軸押出混錬機(PCM30、株式会社池貝)に投入し、当該押出混錬機内で溶融混錬して樹脂組成物を得て、当該樹脂組成物は、ストランドダイから排出されて、ストランド状に成形されて、当該ストランド状に成形された樹脂組成物は、冷却後にカッターによって切断されて得られた、円柱状ペレット。
前記二軸押出混錬機のシリンダ温度、アダプタ温度、及びダイス温度はそれぞれ、180°C~190°C、195°C、及び195°Cであった。」(以下「甲15発明」という。)
イ 対比・判断
(ア)本件発明2について
a 対比
本件発明2と甲15発明とを対比する。
甲15発明の「澱粉(コーンスターチ)」は、本件発明2の「澱粉」に相当する。その割合は、60重量%(=60÷(60+29+7+3+1)×100)であるから、本件発明2の「55~85重量%」を満たす。
ポリプロピレンは通常、熱可塑性樹脂であるから、甲15発明の「ポリプロピレン」は、本件発明2の「熱可塑性樹脂」に相当する。その割合は29重量%(=29÷(60+29+7+3+1)×100)であるから、本件発明2の「10~44.5重量%」を満たす。
甲15発明の「無水マレイン酸変性ポリプロピレン」は、甲15の【0035】によれば「相溶化剤」であるから、本件発明2の「相容化剤」に相当する。その割合は3重量%(=3÷(60+29+7+3+1)×100)であるから、本件発明2の「0.5~5重量%」を満たす。また、「無水マレイン酸変性ポリプロピレン」は、「酸無水物基を有する高分子化合物」に相当するから、本件発明2の「前記相容化剤として、酸無水物基を有する高分子化合物、カルボキシル基を有する高分子化合物、エポキシ基を有する高分子化合物、イミノ基を有する高分子化合物、イソシアネート基を有する高分子化合物、オキサゾリン基を有する高分子化合物、及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む」を満たす。
甲15発明の「円柱状ペレット」は澱粉を含む樹脂組成物であるから、本件発明2の「澱粉含有樹脂組成物」に相当する。
以上から、本件発明2と甲15発明とは、
「澱粉含有樹脂組成物であって、
澱粉、熱可塑性樹脂、及び相容化剤を含み、
前記澱粉含有樹脂組成物全体の重量を100重量%として、
前記澱粉の含有量が、55~85重量%であり、
前記熱可塑性樹脂の含有量が、10~44.5重量%であり、
前記相容化剤の含有量が、0.5~5重量%であり、
前記相容化剤として、酸無水物基を有する高分子化合物、カルボキシル基を有する高分子化合物、エポキシ基を有する高分子化合物、イミノ基を有する高分子化合物、イソシアネート基を有する高分子化合物、オキサゾリン基を有する高分子化合物、及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む、
澱粉含有樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点15-1>
相容化剤の本件MFRについて、本件発明2では「40g/10min以上」であるのに対し、甲15発明にはそのような特定がない点
<相違点15-2>
澱粉含有樹脂組成物に含まれる澱粉粒の平均粒子径であって、前記平均粒子径が、前記澱粉粒の長径の平均値より算出される平均粒子径について、本件発明2では「3μm以上、25μm以下」であるのに対し、甲15発明にはそのような特定がない点
b 相違点15-2についての判断
事案に鑑み、まず、相違点15-2について検討する。
甲15には甲15発明の「澱粉(コーンスターチ)」の澱粉粒の平均粒子径について記載されていない。
また、甲15発明に含まれる「澱粉(コーンスターチ)」について、甲15には具体的な商品名等が記載されておらず、甲2~甲19及び参1~8を参酌したとしても、その澱粉粒の平均粒子径が「3μm以上、25μm以下」であることを示す記載はない。
さらに、甲2等には、当該平均粒子径を調整する動機付けとなるような記載もない。
そうすると、甲15発明が、相違点15-2に係る構成を有すると認めることはできず、また、相違点15-2に係る構成を有するように調整することは当業者が容易になし得たこととはいえない。
c 小括
したがって、相違点15-1について検討するまでもなく、本件発明2は、甲15に記載された発明ではなく、また、甲15に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明3~13について
本件発明3~13は、本件発明2を直接又は間接的に引用しており、本件発明2の発明特定事項を全て含むものであるから、甲15に記載された発明とは、少なくとも相違点15-2において相違し、上記(ア)b、cで説示したのと同様の理由により、本件発明3~13は、甲15に記載された発明ではなく、また、甲15に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は申立書の87~90、92~94頁において、上記相違点15-2につき、概略以下の主張をしている。
a 甲15では、原料の澱粉質系材料の平均粒子径について言及されておらず、このことは、原料の澱粉質系材料の平均粒子径については、技術常識を適用可能であることを意味する。甲2~甲7の記載によれば、本件特許の出願時において、原料の澱粉の平均粒子径として3μm以上25μm以下という数値範囲は一般的に周知の技術的事項と言わざるを得ず、甲15における原料の澱粉質系材料の長径の平均値である平均粒子径は、3μm以上25μm以下である蓋然性が高い。
b 甲15の【0035】には、ポリオレフィン系樹脂と原料の澱粉材料との相溶性をより向上させるために相溶化剤を含んでもよいことが記載され、両者の相溶性の向上は成分の分散性及び樹脂の均一性を向上させることに他ならない。してみると、本件特許の出願時において、甲15における原料の澱粉質系材料として、成分の分散性及び樹脂の均一性を向上させる目的で、甲2~甲7に記載の事項を参照して、長径の平均値である平均粒子径が3μm以上25μm以下の澱粉質系材料を原料とすることは想到容易である。
c 甲15には、「澱粉用可塑剤」に該当する成分について記載されていない。また、甲15の実施例では、「澱粉用可塑剤」に該当する成分は一切使用されていない。すなわち、澱粉用可塑剤の含有量を上述の「澱粉を実質的に可塑化させない量」である5重量%以下とすることは、甲15に記載されている。従って、本件発明2は、甲15に記載された発明であるか、又は、甲15に記載された発明に甲2~甲7に記載の事項を組み合わせて想到容易である。
まず、上記申立人の主張aについて検討する。
上記(ア)bで説示したとおり、甲15には「澱粉(コーンスターチ)」の澱粉粒の平均粒子径について記載されていない。
また、仮に、平均粒子径について言及されていないことが、技術常識を適用可能であることを意味するとしても、上記(1)イ(ウ)で説示したとおり、甲2~甲7で示されている澱粉粒の平均粒子径の範囲は、互いに異なり、かつ、3μmよりも小さい場合や25μmよりも大きい場合も含まれており、甲2~甲7の記載は、3μm以上25μm以下という数値範囲が一般的に周知の技術的事項であることの根拠にはならず、原料の澱粉の平均粒子径として3μm以上25μm以下という数値範囲であることが技術常識であるとは認められない。
そうすると、甲2~甲7の記載を参酌したとしても、甲15発明の「澱粉(コーンスターチ)」の澱粉粒の平均粒子径が3μm以上25μm以下であるとは認められない。
次に、上記申立人の主張bについて検討する。
仮に、甲15の【0035】のポリオレフィン系樹脂と原料の澱粉材料との相溶性をより向上させるために相溶化剤を含んでもよいことについての記載が、甲15発明において成分の分散性及び樹脂の均一性を向上させることを目的として相溶化剤を用いていることを示しているとしても、上記(3)イ(ウ)で説示したとおり、甲2~甲7には、相溶化剤を組成物中に含有させることに加えて、澱粉粒の平均粒子径を調整することも、それによって成分の分散性及び樹脂の均一性の向上が得られることも記載されていない。
そうすると、甲2~甲7の記載を参酌したとしても、甲15発明において、「澱粉(コーンスターチ)」の澱粉粒の平均粒子径を調整する動機付けがない。
さらに、上記申立人の主張cについて検討する。
本件明細書【0048】の記載から、可塑剤が全く使われていないか、わずかにしか使われていない場合には、デンプンが実質的に可塑化されないことがあると認められるとしても、甲15では、そもそも原料として用いられた「澱粉(コーンスターチ)」の澱粉粒の平均粒子径が不明であるから、そのことが澱粉粒の平均粒子径が3μm以上25μm以下である根拠にはならない。
そうすると、甲15発明において、本件明細書【0048】の記載を参酌したとしても、「澱粉(コーンスターチ)」が実質的に可塑化されるかどうかに関わらず、甲15発明の「澱粉(コーンスターチ)」の澱粉粒の平均粒子径が3μm以上25μm以下であるとは認められない。
また、甲15発明において、「澱粉(コーンスターチ)」が実質的に可塑化されないようにすることが当業者にとって容易に想到し得る事項であるとしても、それによって澱粉粒の平均粒子径が3μm以上25μm以下になるとは認められないから、甲15発明の「澱粉(コーンスターチ)」の澱粉粒の平均粒子径を3μm以上25μm以下に調整することが、当業者にとって容易に想到し得る事項であるとは認められない。
したがって、上記申立人の主張は採用できない。
ウ 申立理由4についてのまとめ
以上より、本件発明2~13は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由4によっては、本件発明2~13に係る特許を取り消すことはできない。
(5)申立理由5(サポート要件)について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
イ 検討
(ア)本件明細書には、本件発明の課題について、「澱粉高配合のストランドは脆くなりやすく、例えば、押出機から吐出されたストランドを安定的に得ることが難しい。」(【0005】)、及び「本発明は、安定的にストランドを得ることができる澱粉含有樹脂組成物、及び澱粉含有樹脂組成物の製造方法、並びに本発明の澱粉含有樹脂組成物を含むペレット、本発明の澱粉含有樹脂組成物を含むフレーク、樹脂成形物、ペレット又はフレークの製造方法、及び樹脂成形物の製造方法の提供を目的とする。」(【0006】)と記載されている。
(イ)そうすると、本件発明は、「安定的にストランドを得ること」を課題とするものである。そして、本件明細書【0025】の「ここで、澱粉高配合のストランドは脆くなりやすく、例えば、ストランド化に際してストランドが破断してしまうおそれがあるため、安定的にストランドを得ることが難しい。」との記載によれば、「安定的にストランドを得ること」とは、澱粉高配合の樹脂組成物において安定的にストランドを得るべく、脆くなりにくくすることを意味していると解釈できる。
(ウ)そして、当該課題を解決する手段について、本件明細書には、
「前記目的を達成するために、本発明の澱粉含有樹脂組成物は、
澱粉、熱可塑性樹脂、及び相容化剤を含み、
前記澱粉含有樹脂組成物全体の重量を100重量%として、
前記澱粉の含有量が、55~85重量%であり、
前記熱可塑性樹脂の含有量が、10~44.5重量%であり、
前記相容化剤の含有量が、0.5~5重量%であり、
前記相容化剤は、前記相容化剤(b)とJIS K 6922-1に準拠したメルトフローレートが70g/10minである高圧重合法低密度ポリエチレン(a)とを「a/b=8/2」の重量比で混合した混合物の、JIS K 7210に準拠した温度170°C及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが、25g/10min以上である相容化剤である。」(【0007】)、
「(製造性)
前述のとおり、既存技術では製造時に押出機から排出されるストランドが脆く、安定的な連続製造が行えないことが課題であった。製造性は、実施例に記載される二軸押出機において、押出機から4kg/hで吐出されたストランドを水冷し、ペレタイザーでペレット化した際、ストランドがペレタイザーへ導入されてから切れるまでの時間で評価した。評価基準は以下のとおりである。」(【0080】)、
「製造性 評価基準
◎:8分以上経過してもストランドが切れなかった。
〇:4分以上、8分未満経過してもストランドが切れなかった。
×:4分未満にストランドが切れた。」(【0081】)、
「表3(表3-1、表3-2)のとおり、相容化剤の種類によらず、樹脂混合物のメルトフローレートが25g/10min以上となる相容化剤を使用した実施例(試験区1-1、1-2、1-4~1-6)は、澱粉含量が70重量%と高含有であるが製造性が良好であった。一方で、樹脂混合物のメルトフローレートが25g/10min未満である相容化剤を使用した比較例1(試験区1-3)は、製造性が不良となった。」(【0101】)、
「表4のとおり、熱可塑性樹脂を変更した場合であっても、樹脂混合物のメルトフローレートが25g/10min以上となる相容化剤を使用した実施例(試験区2-1、2-2、2-4、2-5)は、製造性が良好であった。一方で、樹脂混合物のメルトフローレートが25g/10min未満である相容化剤を使用した比較例1(試験区2-3、2-6)は、製造性が不良となった。」(【0102】)、
「表5のとおり、樹脂混合物のメルトフローレートが25g/10min以上となる相容化剤の含量を1重量%とした場合であっても、製造性が良好であった(試験区3-1)。一方で、樹脂混合物のメルトフローレートが25g/10min未満である相容化剤は、含量を5重量%添加しても製造性が不良となった(試験区3-2)。」(【0103】)、
「表6のとおり、澱粉含量が75重量%と高含有であっても製造性は良好であった(試験区4-1)。澱粉含量が60重量%であっても同様に、製造性は良好であった(試験区4-2)。また、様々な澱粉を使用した場合であっても、製造性は良好であった(試験区4-3、4-4、4-5)。さらに、澱粉中に多少の水分が含有されている場合であっても、澱粉粒が可塑化しないため、製造性には影響がなかった(試験区4-6)。」(【0104】)
と記載されている。
(エ)また、本件明細書【0087】【表2】には、本件MFRが40g/10min以上であるA~C、E~Gの6種類の相容化剤と、本件MFRが21g/10minである相容化剤Dが示されている。
(オ)そうすると、澱粉含有樹脂組成物において、澱粉、熱可塑性樹脂、及び相容化剤を特定の量で含み、かつ、相容化剤として、本件MFRが「40g/10min以上」であるものを用いることにより、本件発明の課題が解決されることが理解できる。
(カ)そして、本件発明2、及び本件発明2を直接又は間接的に引用する本件発明3~13は、上記(エ)で示した発明特定事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できるものといえる。
(キ)したがって、本件発明2~13は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
ウ 申立人の主張について
申立人は、申立書95~97頁において、概略以下の主張を行っている。
・主張A(熱可塑性樹脂の観点)
成形性を向上させる(換言すると、ストランドを安定的に押し出す)ためには、熱可塑性樹脂自体のMFR、分子量分布、他樹脂と複合化する場合における他樹脂との相溶性等の特性が重要であるところ、本件特許の実施例において、「熱可塑性樹脂」は、MFR=30~60のPP(ポリプロピレン)、MFR=42のPE(ポリエチレン)しか使用されていない。実施例以外のMFRを有する熱可塑性樹脂や他の種類の熱可塑性樹脂を採用した場合にも、本件特許の「安定的にストランドを得る」という課題が解決できるとはいえない。
・主張B(相溶化剤の観点)
熱可塑性樹脂に対して、適切な相溶化剤の官能基や分子量等を選択することが重要であるところ、本件明細書の実施例では、相容化剤として、本件MFRが21~124g/10minのマレイン酸変性ポリプロピレン(相容化剤A~F)と、本件MFRが57g/10minのエチレンーグリシジルメタクリレート系共重合体(相容化剤G)しか使用されておらず、実施例以外の本件MFRを有する相容化剤や、他の種類の化合物からなる相容化剤を採用した場合にも、本件特許の「安定的にストランドを得る」という課題が解決できるとはいえない。
そこで、上記申立人の主張について検討する。
(ア)主張A(熱可塑性樹脂の観点)について
本件発明は、上記イ(オ)で示した発明特定事項により、本件発明の課題が解決されるものであり、本件明細書では、【0086】【表1】に記載された4種類の樹脂について、上記イ(オ)で示した発明特定事項を有する実施例の製造性が良好であったことが実証されている。してみれば、「熱可塑性樹脂」の種類又はMFRが特定されていない場合においても、上記イ(オ)で示した発明特定事項を満たすことにより、澱粉含有樹脂組成物を脆くなりにくくすることができ、本件発明の課題が解決できることを、当業者は認識できるといえる。
(イ)主張B(相溶化剤の観点)について
本件発明は、上記イ(オ)で示した発明特定事項により、本件発明の課題が解決されるものであり、本件明細書では、【0087】【表2】に記載された7種類の相容化剤(A~G)について、そのうち相容化剤A~C、E~Gの6種類は本件MFRが40g/10min以上であるため上記イ(オ)で示した発明特定事項を満たし、残りの相容化剤Dは本件MFRが21g/10minであるため上記イ(オ)で示した発明特定事項を満たさないことが示されるとともに、前者を用いた実施例の製造性は「◎」又は「○」であったのに対して、後者を用いた比較例の製造性は「×」であったことが示されている。してみれば、相容化剤の種類が特定されていない場合においても、上記イ(オ)で示した発明特定事項を満たすことにより、澱粉含有樹脂組成物を脆くなりにくくすることができ、本件発明の課題が解決できることを、当業者は認識できるといえる。
また、申立人は、実施例で試験したもの以外の相容化剤及び熱可塑性樹脂を用いた場合に、本件発明の課題が解決し得ないことを具体的に立証しておらず、上記申立人の主張は採用できない。
エ 申立理由5のまとめ
以上より、本件特許の請求項2~13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由5によっては取り消すことはできない。
上記第5のとおり、本件発明2~13に係る特許は、当審において通知した取消理由通知及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件発明2~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、訂正により削除された請求項1に係る特許についての特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8において準用する同法第135条の規定により、却下する。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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