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Trademark Appeal Case

特許請求項の訂正範囲

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025700378
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7560248号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4〕、3、〔5~7〕、8、9、10について訂正することを認める。
特許第7560248号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7560248号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、2019年(平成31年) 2月 1日(優先権主張 平成30年 2月 9日)を国際出願日とする出願(特願2019-570720号。以下「本願」という。)であって、令和 6年 9月24日にその特許権の設定登録がなされ、同年10月 2日にその特許掲載公報が発行されたものである。

その後、令和 7年 4月 2日に、請求項1~7(全請求項)に係る特許に対し、特許異議申立人である山田 芳男(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。

本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。

令和 7年 4月 2日 :特許異議の申立て

9月22日付け:取消理由通知

11月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の

提出

12月26日付け:訂正請求があった旨の通知

令和 8年 2月 4日 :申立人による意見書の提出

第2 訂正請求について

1 請求の趣旨

令和 7年11月20日になされた訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)の請求の趣旨は、特許第7560248号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める、というものである。

2 訂正の内容

本件訂正請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、「・・・」は記載の省略を表す。また、訂正箇所には、当合議体が下線を付した。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に、

「接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定してなる電極室枠であって、

前記接着剤層に含まれる接着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤である電極室枠。」

と記載されているのを、

「接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定してなる電極室枠であって、

前記ガスケットが、ゴムから構成されており、

前記接着剤層に含まれる接着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤である電極室枠。」

に訂正する。

(請求項1の記載を引用する請求項2、4も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項3に、

「・・・請求項1又は2に記載の電極室枠。」

とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、

「接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定してなる電極室枠であって、

前記接着剤層に含まれる接着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含

み、

前記接着剤層又は粘着剤層に含まれる接着剤又は粘着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、その他の反応系接着剤(ただし、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤を除く)、変成シリコーン系接着剤、シリル化ウレタン系接着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤から選択される少なくとも1種であ

る電

極室枠。」

に訂正する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3に、

「・・・請求項1又は2に記載の電極室枠。」

とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、

「接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定してなる電極室枠であって、

前記接着剤層に含まれる接着剤が、

ガスケットを劣化させない接着剤であって、

有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、

ガスケットを劣化させない粘着剤であって、

有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含

み、

前記接着剤層又は粘着剤層に含まれる接着剤又は粘着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、その他の反応系接着剤(ただし、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤を除く)、変成シリコーン系接着剤、シリル化ウレタン系接着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤から選択される少なくとも1種であ

る電

極室枠。」

と記載し、新たに請求項8とする。

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4に

「請求項1~3のいずれかに記載の電極室枠により構成される電極室を具備する電解槽。」

と記載されているのを、

「請求項1

又は2

に記載の電極室枠により構成される電極室を具備する電解槽。」

に訂正する。

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項4に

「請求項1~3のいずれかに記載の電極室枠により構成される電極室を具備する電解槽。」

とあるうち、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、

極室枠により構成される電極室を具備する電解槽

であって、

前記電極室枠が、

接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定してなる電極室枠であ

前記接着剤層に含まれる接着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含

み、

前記接着剤層又は粘着剤層に含まれる接着剤又は粘着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、その他の反応系接着剤(ただし、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤を除く)、変成シリコーン系接着剤、シリル化ウレタン系接着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤から選択される少なくとも1種である

電解槽

。」

と記載し、新たに請求項9とする。

(6)訂正事項6

特許請求の範囲の請求項4に

「請求項1~3のいずれかに記載の電極室枠により構成される電極室を具備する電解槽。」

とあるうち、請求項2を引用する請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、

極室枠により構成される電極室を具備する電解槽

であって、

前記電極室枠が、

接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定してなる電極室枠であ

前記接着剤層に含まれる接着剤が、

ガスケットを劣化させない接着剤であって、

有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、

ガスケットを劣化させない粘着剤であって、

有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含

み、

前記接着剤層又は粘着剤層に含まれる接着剤又は粘着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、その他の反応系接着剤(ただし、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤を除く)、変成シリコーン系接着剤、シリル化ウレタン系接着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤から選択される少なくとも1種である

電解槽

。」

と記載し、新たに請求項10とする。

(7)訂正事項7

特許請求の範囲の請求項5において

「ガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定する工程(仮固定工程)を含む電極室枠又は電解槽の製造方法であって、

前記仮固定工程が、ガスケット及び/又は電極室枠フランジ面に接着剤、又は粘着剤を塗布する工程(塗布工程)を含み、

前記接着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤である製造方法。」

と記載されているのを、

「ガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定する工程(仮固定工程)を含む電極室枠又は電解槽の製造方法であって、

前記仮固定工程が、ガスケット及び/又は電極室枠フランジ面に接着剤、又は粘着剤を塗布する工程(塗布工程)を含み、

前記ガスケットが、ゴムから構成されており、

前記接着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤である製造方法。」

に訂正する。

(請求項5の記載を引用する請求項6、7も同様に訂正する。)

3 訂正の適否についての当審における判断

(1)訂正事項1に係る訂正について

ア 訂正の目的の適否について

訂正事項1に係る訂正は、請求項1における発明特定事項である「ガスケット」について、「ガスケットが、ゴムから構成されており」とその材料を限定して特定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

イ 新規事項の追加の有無について

本願の願書に添付した明細書の段落【0015】には、「ガスケットの材料は、特に限定されず、種々の材料で構成できるが、シール性が高い弾力性のある材料であることが好ましい。」との記載があり、ガスケットの材料が、例えば、シール性が高い弾力性のある材料であれば、特に限定されないことが記載されていると認められる。

そして、段落【0016】には、ガスケットの材料の具体例として、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDMゴム)、エチレン・プロピレンゴム(EPMゴム)等のゴムと多孔質PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が記載されており、この記載から、シール性が高い弾力性のある材料としての「ゴム」が把握できる。

そうすると、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について

上記アのとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2に係る訂正について

ア 訂正の目的の適否について

(ア)訂正事項2における、請求項3に、「・・・少なくとも1種である請求項1又は2に記載の電極室枠。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改める訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものである。

(イ)上記(ア)の訂正をするに当たり、引用する請求項1に記載の「前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤である電極室枠。」における、「含む粘着剤である」を「含み、」とする訂正は、請求項1と請求項3との繋がりを整える訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。

イ 新規事項の追加の有無について

上記アのとおり、訂正事項2に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について

上記アのとおり、訂正事項2に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3に係る訂正について

ア 訂正の目的の適否について

(ア)訂正事項3における、請求項3に、「・・・少なくとも1種である請求項1又は2に記載の電極室枠。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、新たな請求項8とする訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものである。

(イ)上記(ア)の訂正をするに当たり、引用する請求項2の「前記接着剤層又は粘着剤層に含まれる接着剤又は粘着剤が、ガスケットを劣化させない接着剤又はガスケットを劣化させない粘着剤である」との記載を、「前記接着剤層に含まれる接着剤が、ガスケットを劣化させない接着剤である」と、「前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、ガスケットを劣化させない粘着剤である」とに分けた上で、末尾の「である」を「であって」とし、請求項2が引用する請求項1の「前記接着剤層に含まれる接着剤が、」との記載を、上記請求項2の「前記接着剤層に含まれる接着剤が、ガスケットを劣化させない接着剤であって、」と訂正し、請求項2が引用する請求項1の「前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、」との記載を、上記請求項2の「前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、ガスケットを劣化させない粘着剤であって、」と訂正することは、請求項1と請求項2の記載の重複をなくし、両者の繋がりを整える訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。

(ウ)上記(ア)の訂正をするに当たり、請求項2が引用する請求項1に記載の「前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤である電極室枠。」における、「含む粘着剤である」を「含み、」とする訂正は、請求項1と請求項3との繋がりを整える訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。

イ 新規事項の追加の有無について

上記アのとおり、訂正事項3に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について

上記アのとおり、訂正事項3に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4に係る訂正について

ア 訂正の目的の適否について

訂正事項4に係る訂正は、請求項4が引用する請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

イ 新規事項の追加の有無について

上記アのとおり、訂正事項4に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について

上記アのとおり、訂正事項4に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項5に係る訂正について

ア 訂正の目的の適否について

(ア)訂正事項5における、請求項4に、「請求項1~3のいずれかに記載の電極室枠により構成される電極室を具備する電解槽。」とあるうち、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、新たな請求項9とする訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものである。

(イ)上記(ア)の訂正をするに当たり、請求項4の「電極室枠により構成される電極室を具備する電解槽。」における、「電解槽。」を「電解槽であって、」と訂正し、引用する請求項3の末尾の「電解室枠。」を「電解槽。」と訂正し、請求項3が引用する請求項1の冒頭に「前記電解室が、」を追記する訂正は、訂正後の請求項9における、「電解室枠」と「電解槽」との関係を整える訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。

(ウ)上記(ア)の訂正をするに当たり、請求項3が引用する請求項1に記載の「仮固定してなる電極室枠であり、」を「仮固定してなる電極室枠であって、」と訂正し、「前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤である電極室枠。」における、「含む粘着剤である」を「含み、」とする訂正は、請求項1と請求項3との繋がりを整える訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。

イ 新規事項の追加の有無について

上記アのとおり、訂正事項5に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について

上記アのとおり、訂正事項5に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項6に係る訂正について

ア 訂正の目的の適否について

(ア)訂正事項6における、請求項4に、「請求項1~3のいずれかに記載の電極室枠により構成される電極室を具備する電解槽。」とあるうち、請求項2を引用する請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、新たな請求項10とする訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものである。

(イ)上記(ア)の訂正をするに当たり、請求項4の「電極室枠により構成される電極室を具備する電解槽。」における、「電解槽。」を「電解槽であって、」と訂正し、引用する請求項3の末尾の「電解室枠。」を「電解槽。」と訂正し、請求項3が間接的に引用する請求項1の冒頭に「前記電解室が、」を追記する訂正は、訂正後の請求項10における、「電解室枠」と「電解槽」との関係を整える訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。

(ウ)上記(ア)の訂正をするに当たり、請求項3が引用する請求項2の「前記接着剤層又は粘着剤層に含まれる接着剤又は粘着剤が、ガスケットを劣化させない接着剤又はガスケットを劣化させない粘着剤である」との記載を、「前記接着剤層に含まれる接着剤が、ガスケットを劣化させない接着剤である」と、「前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、ガスケットを劣化させない粘着剤である」とに分けた上で、末尾の「である」を「であって」とし、請求項2が引用する請求項1の「前記接着剤層に含まれる接着剤が、」との記載を、上記請求項2の「前記接着剤層に含まれる接着剤が、ガスケットを劣化させない接着剤であって、」と訂正し、請求項2が引用する請求項1の「前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、」との記載を、上記請求項2の「前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、ガスケットを劣化させない粘着剤であって、」と訂正することは、請求項1と請求項2の記載の重複をなくし、両者の繋がりを整える訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。

(エ)上記(ア)の訂正をするに当たり、請求項3が間接的に引用する請求項1に記載の「仮固定してなる電極室枠であり、」を「仮固定してなる電極室枠であって、」と訂正し、「前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤である電極室枠。」における、「含む粘着剤である」を「含み、」とする訂正は、請求項1と請求項3との繋がりを整える訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。

イ 新規事項の追加の有無について

上記アのとおり、訂正事項6に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について

上記アのとおり、訂正事項6に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(7)訂正事項7に係る訂正について

ア 訂正の目的の適否について

訂正事項7に係る訂正は、請求項5における発明特定事項である「ガスケット」について、「ガスケットが、ゴムから構成されており」とその材料を限定して特定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

イ 新規事項の追加の有無について

本願の願書に添付した明細書の段落【0015】には、「ガスケットの材料は、特に限定されず、種々の材料で構成できるが、シール性が高い弾力性のある材料であることが好ましい。」との記載があり、ガスケットの材料が、例えば、シール性が高い弾力性のある材料であれば、特に限定されないことが記載されていると認められる。

そして、段落【0016】には、ガスケットの材料の具体例として、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDMゴム)、エチレン・プロピレンゴム(EPMゴム)等のゴムと多孔質PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が記載されており、この記載から、シール性が高い弾力性のある材料としての「ゴム」が把握できる。

そうすると、訂正事項7に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について

上記アのとおり、訂正事項7に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(8)独立特許要件について

本件においては、本件訂正前の全請求項(請求項1~7)について特許異議の申立てがされているので、本件訂正前の請求項1~7に対応する、訂正事項1~7に係る訂正後の請求項1~10に係る発明については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

4 一群の請求項について

本件訂正前の請求項2~4は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~4は一群の請求項である。

本件訂正前の請求項6、7は、請求項5の記載を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項7によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項5~7は一群の請求項である。

そして、本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

5 別の訂正単位とする求めについて

特許権者は、訂正後の請求項3、8~10についての訂正が認められる場合には、これらの請求項については、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。

6 まとめ

以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

また、本件訂正後の請求項3及び8~10に係る訂正事項2、3、5、6は、上記3のとおり、いずれも認められるところ、特許権者による別の訂正単位とする求めを踏まえ、訂正後の請求項〔1、2、4〕、3、〔5~7〕、8、9、10について訂正することを認める。

第3 本件発明

本件訂正は、上記第2で検討したとおり適法なものであるから、本件特許の請求項1~10に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項1~10に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」といい、これらを総称して「本件発明」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。

「【請求項1】

接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定してなる電極室枠であって、

前記ガスケットが、ゴムから構成されており、

前記接着剤層に含まれる接着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤である電極室枠。

【請求項2】

前記接着剤層又は粘着剤層に含まれる接着剤又は粘着剤が、ガスケットを劣化させない接着剤又はガスケットを劣化させない粘着剤である請求項1に記載の電極室枠。

【請求項3】

接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定してなる電極室枠であって、

前記接着剤層に含まれる接着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含み、

前記接着剤層又は粘着剤層に含まれる接着剤又は粘着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、その他の反応系接着剤(ただし、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤を除く)、変成シリコーン系接着剤、シリル化ウレタン系接着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤から選択される少なくとも1種である電極室枠。

【請求項4】

請求項1又は2に記載の電極室枠により構成される電極室を具備する電解槽。

【請求項5】

ガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定する工程(仮固定工程)を含む電極室枠又は電解槽の製造方法であって、

前記仮固定工程が、ガスケット及び/又は電極室枠フランジ面に接着剤、又は粘着剤を塗布する工程(塗布工程)を含み、

前記ガスケットが、ゴムから構成されており、

前記接着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤である製造方法。

【請求項6】

前記仮固定工程が、前記塗布工程と、ガスケット及び電極室枠フランジ面を前記接着剤又は粘着剤を介して接触させる工程とを含む請求項5に記載の電極室枠又は電解槽の製造方法。

【請求項7】

更に、ガスケットをアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、及び水から選択される溶剤で洗浄する工程(洗浄工程)を含み、該洗浄工程が前記仮固定工程の前に行われる請求項5又は6に記載の電極室枠又は電解槽の製造方法。

【請求項8】

接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定してなる電極室枠であって、

前記接着剤層に含まれる接着剤が、ガスケットを劣化させない接着剤であって、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、ガスケットを劣化させない粘着剤であって、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含み、

前記接着剤層又は粘着剤層に含まれる接着剤又は粘着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、その他の反応系接着剤(ただし、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤を除く)、変成シリコーン系接着剤、シリル化ウレタン系接着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤から選択される少なくとも1種である電極室枠。

【請求項9】

電極室枠により構成される電極室を具備する電解槽であって、

前記電極室枠が、接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定してなる電極室枠であり、

前記接着剤層に含まれる接着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含み、

前記接着剤層又は粘着剤層に含まれる接着剤又は粘着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、その他の反応系接着剤(ただし、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤を除く)、変成シリコーン系接着剤、シリル化ウレタン系接着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤から選択される少なくとも1種である電解槽。

【請求項10】

電極室枠により構成される電極室を具備する電解槽であって、

前記電極室枠が、接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定してなる電極室枠であり、

前記接着剤層に含まれる接着剤が、ガスケットを劣化させない接着剤であって、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、ガスケットを劣化させない粘着剤であって、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含み、

前記接着剤層又は粘着剤層に含まれる接着剤又は粘着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、その他の反応系接着剤(ただし、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤を除く)、変成シリコーン系接着剤、シリル化ウレタン系接着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤から選択される少なくとも1種である電解槽。」

第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要

1 特許異議の申立ての理由の概要

申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証~甲第11号証を提出し、以下の理由により、本件特許の本件訂正前の請求項1~7に係る特許は取り消されるべきものであると主張している。

(1)申立理由1(新規性)

本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)申立理由2-1(進歩性)

本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~7号証に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)申立理由2-2(進歩性)

本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(4)申立理由2-3(進歩性)

本件訂正前の請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第8~11号証に記載された技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(5)申立理由2-4(進歩性)

本件訂正前の請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(6)申立理由2-5(進歩性)

本件訂正前の請求項7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(7)申立理由3(実施可能要件)

本件明細書には、接着剤層又は粘着剤層に含まれる、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む」接着剤又は粘着剤のうち、どれが「ガスケットを劣化させない」接着剤又は粘着剤であるのか記載されていない。

よって、本件訂正前の請求項2に係る発明について、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(8)申立理由4(サポート要件)

本件明細書の発明の詳細な説明には、本件訂正前の請求項2に係る発明の「ガスケットを劣化させない接着剤」及び「ガスケットを劣化させない粘着剤」とは、どのような接着剤又は粘着剤であるのか、具体的な説明がない。

よって、本件訂正前の請求項2に係る発明について、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(9)申立理由5-1(明確性)

本件明細書の段落【0020】の記載を参酌しても、ガスケットの劣化が、具体的に何が生じることをいうのかが不明であるから、本件訂正前の請求項2に係る発明の、「ガスケットを劣化させない接着剤」及び「ガスケットを劣化させない粘着剤」との記載は不明確である。

よって、本件訂正前の請求項2に係る発明について、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(10)申立理由5-2(明確性)

本件訂正前の請求項3に係る発明において、「アクリル系接着剤」と「アクリル樹脂系接着剤」の違いが不明確である。

よって、本件訂正前の請求項3に係る発明について、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(11)申立人が特許異議申立書に添付した証拠方法

甲第1号証:特表昭61-501638号公報

甲第2号証:特開平6-108280号公報

甲第3号証:特開2008-49094号公報

甲第4号証:特開2009-218168号公報

甲第5号証:特開2016-212443号公報

甲第6号証:特開2017-26979号公報

甲第7号証:特開2017-76564号公報

甲第8号証:特開2012-180537号公報

甲第9号証:特開2005-26104号公報

甲第10号証:特開2016-165281号公報

甲第11号証:特開平7-213612号公報

(12)当合議体の職権探知により発見した証拠方法

参考文献1:特開2011-148937号公報

2 取消理由の概要

(1)令和 7年 9月22日付けで通知した取消理由の概要

ア 取消理由1(新規性)

(ア)本件訂正前の請求項1、2、4~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 取消理由2(進歩性)

(ア)本件訂正前の請求項1、2、4~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(イ)本件訂正前の請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第8~11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

第5 当合議体の判断

以下に述べるように、特許異議申立書に記載した申立理由及び当審において通知した取消理由によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。

1 甲号証の記載事項(下線は強調のため当合議体が付した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)

(1)甲第1号証の記載事項(一部の文字を小書き文字に置き換えた。)

ア 「1. 第1の枠、第2の枠、および陽極と陰極を間隔をおいて配置するためにこれらの枠の間に介在させた分離装置を備える電解槽組立体において;少なくとも第1または第2の枠と分離装置との間に予め圧縮した且つ永久変形したシールを使用して成る電解槽組立体。」(請求の範囲)

イ 「6. 下記の(a)~(f)工程から成ることを特徴とする電解槽のシール方法:

(a) 少なくとも第1の枠と第2の枠との間にシート部材を介在させ、

(b) 少なくとも第1または第2の枠とシート部材との間に永久的に変形しうる材料で作ったシールを介在させ、

(c) 第1と第2の枠、シート部材、およびシールを圧縮して該シールを永久的に変形させ、

(d) 圧縮力を解放してシート部材を除き、

(e) 該シートを分離装置に置き換え、そして

(f) 第1と第2の枠、予め圧縮した該シールおよび分離装置を十分に圧縮して液体および気体を洩らないシールを形成する。」(請求の範囲)

ウ 「第1図を参照して、そこには一対の隣接するフィルタープレス型の枠(11,12)が示してある。この場合、説明のためのみの制約として、

第1の枠(11)は陽極であり、第2の枠(12)は陰極である。代表的には陽極枠と陰極枠は単一枠構造体であって、陽極と陰極は構造体の向き合った面に取付けられていて、この構造体を介して電気的に接続されている。

この電解槽組立体は代表的にはフィルタプレス型電解槽ユニットから成り、単極または2極でありうる。ここでは本発明を2極電極フィルタプレス型電解槽について説明する。陽極および陰極の枠(12)の間に分離装置(13)および予め圧縮したシール(14)が介在する。予め圧縮したシールは分離装置(13)と枠(11,12)のいづれか1つとの間に介在させることもできる。更に、図には1つだけの予め圧縮したシール(14)が示してあるけれども、本発明は分離装置(13)の両側に予め圧縮したシール(14)を使用する場合も包含する。」(第3ページ左上欄第1~16行)

エ 「再び第1図を参照して、

電解槽枠(11,12)

はそれぞれ周辺の横方向の面(15,16)を含む。」(第3ページ右上欄第4~5行)

オ 「

分離装置は代表的には横方向の面に完全に即ちその全表面にわたって接触している

シール(14)は陽極枠または陰極枠(11,12)の横方向の面(15または16)の全体とそれぞれ一線に並ぶことができる

。」(第3ページ右上欄第16~20行)

カ 「枠(11,12)は電極液および電解生成物による腐食に耐性のある任意の材料で作ることができる。たとえば、

陽極室に含まれる陽極液に接触する陽極枠

は鉄、鋼、ニッケル、チタン、またはこれらの金属の合金のような金属で作ることができる。陰極室の陰極液に接触する陰極枠は鉄、鋼、ステンレス鋼、またはこれらの金属の合金で作ることができる。同様に、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリテトラフロロエチレン、弗化エチレンプロピレン、および塩素含有酸基材ポリエステルのようなプラスチック材料を陽極枠および陰極枠のために使用することもできる。(第3ページ左下欄第7~17行)

キ 「本発明の主たる特徴は

ガスケット(14)の材料が非弾性または永久変形性のものである

ということである。

ガスケット(14)は

好ましくはフロロカーボンポリマー材料、更に好ましくは

ポリテトラフロロエチレン(PTFE)で製造される

。好ましくは、ダブリュー・エル・ゴア・アンド・アソシエーツ・インコーポレーテッド(米国メリーランド州エレクトン)からGORE・TEX(R)(当合議体注:(R)は、Rマーク。以下同様。)として市販されている多孔質拡張PTFE材料から製造したガスケットが使用される。

第1図のガスケット(14)は、電解槽組立体に圧縮力を加える前に、従来技術で知られているセメントまたはエポキシのような接着剤によって枠部材(12)の横方向の面(16)に取付けることができる。

使用するセメントまたはエポキシも電解環境に対して不活性であるべきである。」(第3ページ右下欄下から第7行~第4ページ左上欄第2~7行)

ク 「実施例 1

0.61×0.61mの1対の模型(当合議体注:「膜型」の誤記と認める。)平板型電解槽枠を使用して

GORE-TEX(R)材料のガスケットを使用した。GORE-TEX(R)の12.7×4.76mmの厚さのロープを電解槽枠の1つの平らな横方向の面にニカワ付けした

このロープをその端部において折り重ねてシールを与えた

。他方の電解槽枠にはガスケットを取付けなかった。これら2つの電解槽枠を0.61×0.61mの油圧締付機に設置した。電解槽質の周辺を越えてのびる約0.25mmの厚さのクラフト紙シートをこれらの電解槽枠間に設置した。これらの電解槽枠間のガスケットを約1380KPaの圧力でまず約1.6mmの厚さに圧縮した。次いでこれらの電解槽枠を開放してクラフト紙を除いた。次にNafion(R)膜No.324をガスケットと電解槽枠との間に設置した。次いで膜付きの電解槽枠を再び一緒に締め付けた。85~93°Cの温度の熱水を34~103KPaの内部電解槽圧力で電解槽中を循環させた。締付機の油圧上記の内圧に比例して増大させてガスケットを2413KPaの一定圧力に保った。試験を約140時間行なった。洩れは観察されなかった。次いで

電解槽

をシャット・ダウンして開放し、検査した。膜はガスケット区域上で粘着しておらず薄くもなっていなかった。」(第4ページ左下欄第20行~右下欄第16行)

ケ 「図1

74

77

0001437370000001.jpg

(2)甲第2号証の記載事項

ア 「【請求項1】陽極室枠と陰極室枠との間にイオン交換膜を挾持してなる電解槽であって、イオン交換膜側の全面をフッ素樹脂フィルムで被覆されたガスケットが陽極室枠および陰極室枠のそれぞれの接合面に取り付けられており、且つ陽極室枠側と陰極室枠側の少なくとも一方のフッ素樹脂フィルムとイオン交換膜との間に硬化性フッ素樹脂を介在させてなる電解槽。」

イ 「【0007】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記した問題、即ち、陽極室枠と陰極室枠との接合部分からの液漏れがなく、挾持したイオン交換膜を破損せず、さらに、ガスケットとイオン交換膜との接着を防止し、イオン交換膜を再使用可能にすることである。」

ウ 「【0013】

ガスケット8および9は、陽極室枠1と陰極室枠2の接合部のシール性を良くするためにゴム弾性を有する材質から選ぶことが好ましい

。一般には、

エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、クロロプレンゴム、ネオプレンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、軟質ポリ塩化ビニル等の材質が好適に使用される

。ガスケットの厚みは、電解槽の大きさ、締付圧、ガスケットの材質等によって異なるために一概に限定することができないが、0.5~10mmの範囲が一般的である。

【0014】上記したガスケット8および9はイオン交換膜5側の全面がフッ素樹脂フィルム6および7で被覆されている。フッ素樹脂フィルム6および7でガスケットのイオン交換膜5側の全面を被覆することにより、イオン交換膜との間に滑り性を保ち、電解槽の締付時にガスケットの圧縮によるイオン交換膜の破損を防止することができる。ガスケットの他の面を上記のフッ素樹脂フィルムで被覆してもよいが、陽極室側においては、ガスケットの陽極室枠の接合面側を上記のフッ素樹脂フィルムで被覆することは、陽極室枠の接合面とフッ素樹脂フィルムとの間隙で、いわゆる隙間腐食が生じるために好ましくない。

【0015】フッ素樹脂フィルム6および7の材質は、イオン交換膜との間で滑り性を有し、次亜塩素酸ソーダに対して耐食性のあるものが好適に使用される。例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等を好適に使用できる。また、フッ素樹脂フィルム6および7の厚みは特に制限されないが、一般には0.01~0.1mmの範囲から選ぶことが好ましい。そして、

上記のイオン交換膜5側の全面をフッ素樹脂フィルム6および7で被覆されたガスケット8および9は、それぞれ陽極室枠1と陰極室枠2の接合面3および4に任意に方法、例えば、接着剤による接着等の方法により取り付けられている

。」

エ 「【0023】実施例

図1に示した陽極室枠と陰極室枠の接合構造の電解槽を使用した。

陽極室枠1と陰極室枠2の接合面3および4に、幅30mm×厚み3mmのエチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケット6および7を張付け、ガスケットのイオン交換膜側の表面全面に、幅60mm×厚み0.08mmのポリテトラフルオロエチレンのフィルム8および9を貼付けた

。さらに、陽極室枠側のポリテトラフルオロエチレンのフィルムの上に、幅10mm×厚み1mmの

常温硬化性フッ素樹脂10

(未硬化時の粘度55万cps、硬化後の硬度50)

を塗布し、常温で硬化させ

その上に陽イオン交換膜を積層したのち

陽極室枠と陰極室枠とを接合した

【0024】この電解槽を使用して48か月間、連続して食塩電解を行ったところ、陽極室枠と陰極室枠の接合部分からの液漏れはなかった。また、電解槽を解体したところ、イオン交換膜の陽極室枠と陰極室枠により挾持された部分に破損はみられず、さらに、イオン交換膜を破損することなくガスケットから容易に剥離させることができ、再度電解槽に装着して使用することができた。」

オ 「図1

99

97

0001437370000002.jpg

(3)甲第3号証の記載事項

ア 「【0003】

しかしながら、

有機溶剤は、引火点が低く事故を起こす危険性があり、また、人体にも有害である等、取扱上の問題があるため、近年では、有機溶剤を含まない接着剤の使用が提唱されている

。ところが、接着剤に含まれる有機溶剤は、ラバーを膨潤、軟化させ、ボールにスピードと回転を与える機能を増加させるという効果がある。つまり、卓球用ラバーに関しては、有機溶剤を含む接着剤を含まないものに替える際、ラバーを膨潤、軟化させる機能も併せて考慮する必要がある。そこで、ラバーを膨潤、軟化させる機能を持たない非有機溶剤系接着剤に、ラバーを膨潤させる機能を備えた膨潤剤(接着補助剤)を併せて用いる接着方法が提案されている。そして、そのような接着方法として、例えば、特開2006-51328号公報には、植物油又は鉱物油を主成分とする接着補助剤を使用した方法が開示されている。この接着補助剤によれば、浸透させたラバーを膨潤、軟化させることができる。また、接着補助剤を浸透させたラバーは、酢酸ビニルを主成分とする接着剤でラケットに接着することができる。」

イ 「【0007】

本発明にかかる膨潤剤によれば、ラバーを膨潤、軟化させるために必要な量をラバーに塗布した後、乾くまでに要する時間が、従来の接着補助剤よりも短くなる。また、本発明にかかる膨潤剤が浸透したラバーは、水性接着剤により、ラケットへ接着することができる。

水性接着剤としては、好ましくはクロロプレンゴム系ラテックス、天然ゴム系ラテックス、アクリル樹脂系エマルジョン、ウレタン樹脂系エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンを主成分とするものである

。この中でも、特に、ウレタン樹脂系エマルジョンを用いた場合、ラバーとラケットの接着力は、競技を行うには十分でかつ使用後にラバーを剥がす際にはラケット接着面のスポンジがラケットに残らない程度のものとなり、ラケットに張り付いたスポンジの残骸を剥離する作業をなくすことができるという効果も得られる。」

(4)甲第4号証の記載事項

ア 「【0005】

上述のシリコーンゴムに代表されるゴム弾性体は、一般に難接着材料であり、特に異種材料と接着しにくい材料である。このため、ゴム弾性体に樹脂製のキートップを接着する場合、予め、ゴム状弾性体の接着領域にプラズマ処理等の表面活性化処理、さらにはその処理面にプライマー処理を施す必要があった。しかし、かかる処理を施すと、加工工程が多くなるばかりではなく、過剰なプライマー処理によってプライマー成分または

希釈溶剤がゴム状弾性体を膨潤させてしまうおそれもある

。そのため、プライマー処理は、薄型化に不利な上に、外観状も好ましくない結果を招くおそれがある。」

イ 「【0028】

接着剤層4Aは、ゴム状弾性体2Aの表面側に形成される珪素酸化物層2A4とキートップ3Aの底面側とを貼り合わせるための接着剤によって構成される層である。その接着剤は、ゴム状弾性体2Aおよびキートップ3Aの材質、接着力、耐熱性および剥離力等を考慮して適宜選択される。この接着剤は、たとえば、光硬化型、溶剤希釈型あるいは熱反応型のいずれかの接着剤であれば良いが、光硬化型の接着剤であることが好ましい。

光硬化型の接着剤は、無溶剤であるため、ゴム状弾性体2Aおよびキートップ3Aへの溶媒の膨潤による体積変化や変形が小さいからである

。また、光硬化型の接着剤は、高温暴露の必要がないため取扱いが容易であり、かつゴム状弾性体2Aおよびキートップ3Aにダメージを与えにくい。さらに、光硬化型の接着剤は、所定の光線を照射するだけであるから短時間で接着剤としての機能を確保することができる。本実施形態では、紫外線硬化型の接着剤を用いている。」

(5)甲第5号証の記載事項

ア 「【0022】

本発明において、直線偏光板と位相差フィルムとを積層するために用いられる接着剤層を構成する接着剤としては、硬化前の状態において常圧下100°Cで10分間加熱した時の揮発分が8重量%未満である硬化型接着剤が用いられ、好ましくは、接着性に優れ、かつ熱または活性エネルギー線の照射によって硬化する熱硬化型または活性エネルギー線硬化型接着剤が用いられる。かかる硬化型接着剤としては、一般的には、沸点が150°C以上の化合物を含むものが好適に用いられる。

硬化型接着剤としては、有機溶剤を含まない、いわゆる無溶剤型の接着剤が好ましい

。尚、本発明において常圧とは大気圧(0.101MPa)を意味する。」

イ 「【0024】

本発明で用いられる

熱硬化型接着剤としては、

常温以上で硬化する接着剤が含まれ、具体的には、

エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、(メタ)アクリレート系接着剤、エン/チオール系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリエステル系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ナイロン系接着剤、変性オレフィン系接着剤などが挙げられる。

本発明で用いられる

活性エネルギー線硬化型接着剤としては、(メタ)アクリレート系接着剤、エン/チオール系接着剤、エポキシ系接着剤、オキセタン系接着剤、エポキシ/オキセタン系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤などの光ラジカル重合反応を利用する接着剤や、エポキシ系、ビニルエーテル系、オキセタン系などの光カチオン重合反応を利用する接着剤などが挙げられる

本発明の光学フィルム積層体を製造するためには、生産性が高く、透明性・耐候性も良好という理由で、活性エネルギー線硬化型の(メタ)アクリレート系接着剤が好ましい。」

(6)甲第6号証の記載事項

ア 「【0152】

感圧式の粘着剤としては、従来公知のものを採用することができ、例えば、アクリル系樹脂を基材樹脂とする粘着剤(アクリル系粘着剤)、ゴム系樹脂を基材樹脂とする粘着剤(ゴム系粘着剤)、ウレタン系樹脂を基材樹脂とする粘着剤(ウレタン系粘着剤)、シリコーン系樹脂を基材樹脂とする粘着剤(シリコーン系粘着剤)、ポリビニルエーテル系樹脂を基材樹脂とする粘着剤(ポリビニルエーテル系粘着剤)などが挙げられる。これらの中でも、透明性、耐候性、耐熱性などに優れるアクリル系樹脂を基材樹脂とする粘着剤であるアクリル系粘着剤が好ましい。」

イ 「【0154】

アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステルをモノマーとして重合してなる樹脂を基材樹脂とするものが挙げられる。かかる基材樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよいし、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルを共重合させたものを用いてもよい。さらに、これらの基材樹脂には、極性モノマーが共重合されていてもよい。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を有するモノマーなどが挙げられる。」

ウ 「【0157】

ウレタン系粘着剤としては、例えば、少なくともポリオールを含む活性水素成分と、ポリイソシアネート系架橋剤とを、3級アミン系化合物、有機金属化合物等の触媒を用いて反応させて得られるポリウレタン系樹脂を基材樹脂とするものが挙げられる。また、ポリウレタン系樹脂を、さらにポリイソシアネート系架橋剤と反応させて得られる二液硬化型ウレタン系粘着剤も好ましく用いられる。ポリオールとポリイソシアネート系架橋剤との組み合わせにおいては、架橋密度のコントロールがしやすいために、該ポリウレタン系樹脂を含んでなる粘着剤の粘着力の調節が容易である。また、架橋密度の経時変化も少ないために、粘着力の経時変化も少ない。

【0158】

シリコーン系粘着剤としては、シリコーンガムとシリコーンレジンとの重合物により構成されるものなどを使用することができ、白金触媒硬化型のものであってもよいし、過酸化物硬化系のものであってもよい。」

エ 「【0163】

活性エネルギー線硬化型の接着剤は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有している。

活性エネルギー線硬化型接着剤としては、有機溶剤を含まない、いわゆる無溶剤型の接着剤が好ましい

(メタ)アクリレート系接着剤、エン/チオール系接着剤、エポキシ系接着剤、オキセタン系接着剤、エポキシ/オキセタン系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤などの光ラジカル重合反応を利用する接着剤

や、

エポキシ系、ビニルエーテル系、オキセタン系などの光カチオン重合反応を利用する接着剤などが挙げられる

【0164】

熱硬化型の接着剤は、加熱により硬化する性質を有している。

熱硬化型接着剤としては、有機溶剤を含まない、いわゆる無溶剤型の接着剤が好ましい

。熱硬化型の接着剤としては、常温以上で硬化する接着剤が含まれ、具体的には、

エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、(メタ)アクリレート系接着剤、エン/チオール系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリエステル系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ナイロン系接着剤、変性オレフィン系接着剤などが挙げられる

【0165】

また、他の接着剤としては、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤などを用いた水系接着剤などが挙げられる。中でもポリビニルアルコール系樹脂水溶液が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるビニルアルコール系共重合体、さらにはそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体などがある。水系接着剤には、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物などが添加剤として添加されてもよい。」

オ 「【0168】

水系接着剤から粘着層を形成する方法としては、調光部材の一方の面に水系接着剤を塗布し、次いで、乾燥等により該水系接着剤から水分を低減する、好ましくは除去する方法などが挙げられる。また、水系接着剤を塗布する方法としては、上述の粘着層を形成する材料を塗布する方法と同じ方法などが挙げられる。」

(7)甲第7号証の記載事項

ア 「【0128】

感圧式の粘着剤としては、従来公知のものを採用することができ、例えば、アクリル系樹脂を基材樹脂とする粘着剤(アクリル系粘着剤)、ゴム系樹脂を基材樹脂とする粘着剤(ゴム系粘着剤)、ウレタン系樹脂を基材樹脂とする粘着剤(ウレタン系粘着剤)、シリコーン系樹脂を基材樹脂とする粘着剤(シリコーン系粘着剤)、ポリビニルエーテル系樹脂を基材樹脂とする粘着剤(ポリビニルエーテル系粘着剤)などが挙げられる。これらの中でも、透明性、耐候性、耐熱性などに優れるアクリル系樹脂を基材樹脂とする粘着剤であるアクリル系粘着剤が好ましい。」

イ 「【0130】

アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステルをモノマーとして重合してなる樹脂を基材樹脂とするものが挙げられる。かかる基材樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよいし、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルを共重合させたものを用いてもよい。さらに、これらの基材樹脂には、極性モノマーが共重合されていてもよい。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を有するモノマーなどが挙げられる。」

ウ 「【0133】

ウレタン系粘着剤としては、例えば、少なくともポリオールを含む活性水素成分と、ポリイソシアネート系架橋剤とを、3級アミン系化合物、有機金属化合物等の触媒を用いて反応させて得られるポリウレタン系樹脂を基材樹脂とするものが挙げられる。また、ポリウレタン系樹脂を、さらにポリイソシアネート系架橋剤と反応させて得られる二液硬化型ウレタン系粘着剤も好ましく用いられる。ポリオールとポリイソシアネート系架橋剤との組み合わせにおいては、架橋密度のコントロールがしやすいために、該ポリウレタン系樹脂を含んでなる粘着剤の粘着力の調節が容易である。また、架橋密度の経時変化も少ないために、粘着力の経時変化も少ない。

【0134】

シリコーン系粘着剤としては、シリコーンガムとシリコーンレジンとの重合物により構成されるものなどを使用することができ、白金触媒硬化型のものであってもよいし、過酸化物硬化系のものであってもよい。」

エ 「【0139】

活性エネルギー線硬化型の接着剤は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有している。

活性エネルギー線硬化型接着剤としては、有機溶剤を含まない、いわゆる無溶剤型の接着剤が好ましい

(メタ)アクリレート系接着剤、エン/チオール系接着剤、エポキシ系接着剤、オキセタン系接着剤、エポキシ/オキセタン系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤などの光ラジカル重合反応を利用する接着剤や、エポキシ系、ビニルエーテル系、オキセタン系などの光カチオン重合反応を利用する接着剤などが挙げられる

【0140】

熱硬化型の接着剤は、加熱により硬化する性質を有している。

熱硬化型接着剤としては、有機溶剤を含まない、いわゆる無溶剤型の接着剤が好ましい

。熱硬化型の接着剤としては、常温以上で硬化する接着剤が含まれ、具体的には、

エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、(メタ)アクリレート系接着剤、エン/チオール系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリエステル系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ナイロン系接着剤、変性オレフィン系接着剤などが挙げられる

【0141】

また、他の接着剤としては、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤などを用いた水系接着剤などが挙げられる。中でもポリビニルアルコール系樹脂水溶液が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるビニルアルコール系共重合体、さらにはそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体などがある。水系接着剤には、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物などが添加剤として添加されてもよい。」

オ 「【0144】

水系接着剤から粘着層を形成する方法としては、

調光部材の一方の面に水系接着剤を塗布し、次いで、

乾燥等により該水系接着剤から水分を低減する、好ましくは除去する方法などが挙げられる

。また、水系接着剤を塗布する方法としては、上述の粘着層を形成する材料を塗布する方法と同じ方法などが挙げられる。」

(8)甲第8号証の記載事項

ア 「【0004】

上記のように

少なくとも陽極、イオン交換膜及び陰極を備えた電解槽の製造工程にあっては、イオン交換膜の組込み時、電解槽の構成部材に対して、不純物をほとんど含まない水(一般的に純水)を用いて水洗を行うのが通常である

。この水洗の目的は、電極や電解槽ユニットセルに付着した塵等を洗い流す目的と、イオン交換膜の電極側部材への密着性を向上させるための湿潤目的との両方である。しかしながら、このようにして製造された電解槽にあっては、電解槽の起動直後において、良好な電解性能を得ることができない場合があった。」

(9)甲第9号証の記載事項

ア 「【0031】

このようなイオン種および有機物の溶出量が少ないガスケットを作成する方法として、ガスケット単体、または接着もしくは直接成形によりセパレータと一体とした後に、洗浄によりイオン種および有機物を抽出する方法がある

。イオンのような電荷をもった化学種は、水のように双極子モーメントが比較的大きく、電子供与性や電子受容性が大きい溶媒分子との親和性が高く、溶媒和イオンを生成しやすいことから、洗浄に用いる溶媒としては純水が最も適している。洗浄で用いられる純水は、ガスケットからのイオン抽出速度を速くし、ガスケットの二次汚染を防止する点から、電気伝導度が1μS/cm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μS/cm以下の

超純水を用いることで、より高い洗浄効果が期待できる

。」

イ 「【0035】

もう一つの溶出物質である有機物については、有機物が酢酸などの有機酸類を除いて一般的には双極子モーメントが小さな中性分子であるため、抽出には一般的に有機溶媒が適当である。

しかしながら、ほとんどの有機溶媒はガスケットの構成材料である高分子化合物を溶解する性質を持つため、ガスケットの洗浄液としては不適当である。したがって、有機物の抽出においてもイオン種の場合と同様に、純水あるいは水溶液系の溶媒を洗浄液として使用する

。燃料電池の運転時に溶出する有機物のなかでも、例えば有機酸などは水に対する溶解度が高いため、洗浄液として純水あるいは水溶液系の溶媒を用いても、必要な洗浄効果を得ることができる。ガスケットに対する洗浄液の量は多いほど良いが、ガスケットが完全に没した状態となるに足るだけの量が最低限必要である。また、洗浄時の洗浄液温度につては、前述した溶出試験における純水の場合と同様の理由で、80°C以上とすることで燃料電池運転時に溶出する成分を抽出することが可能となる。また、超音波洗浄機を用いてガスケット中の遊離成分に衝撃を与え、溶出を促進させることも有効であり、洗浄時間を短縮することが可能である。」

(10)甲第10号証の記載事項

ア 「【0026】

図4A~Bは、空気マニホールド120の微小流体プレート100への配置及び密閉を示す。マニホールド120は、微小流体プレート100にわたって配置されるように構成された環状オレフィン共重合体の本体を備えることができ、複数のチャネル122をさらに備えことができ、これらを使用して微小流体プレート100に気体若しくは液体を供給し又は負圧を与えることができる。チャネル122のそれぞれはチューブ30に連通しており、これは上記のように好適な空気制御装置(例えば図1の空気制御装置40など)と連通した10本のラインチューブを備えることができる。

マニホールド120は、軟質ガスケット132をさらに備え、これはまず例えば70%エタノールで洗浄し、次いで乾燥状態にまでブロットする必要がある

。その後、図4Bの実施形態に示すように、プレート100を平坦表面上に配置し、そしてマニホールド120をウェル上に位置合わせして設置する。いったん所定の位置に設置したら、負圧をチャネル122の少なくとも一方に供給し(チューブ30のガスラインのうちの1つを介して)、それによって真空を微小流体プレート100と空気マニホールド120との間に生じさせる。真空が生じたら、オペレータ(又は自動化機器)がプレート100に対してマニホールド120を数秒間にわたって押してガスケット132の均一な接触を確保することができる。ウェルと側壁105とプレート100とマニホールド120との間の空間が真空になったときに適切な封止が形成される。適切な封止が形成されると、真空を適切な負圧(例えば、-8.2PSI)によって維持して実験の過程を通して確実な密閉及び真空を維持しなければならない。所定の実施形態では、空気マニホールド120は、EMDミリポア社から市販されているCellASIC(商標)ONIXのためのF84マニホールドとすることができる。」

(11)甲第11号証の記載事項

ア 「【0044】

ガスケット4の本体は、熱可塑性エラストマーを射出成形したり、生ゴムを加硫プレス成形したりして製造することができる

熱可塑性エラストマーとしては、ポリウレタン系、ポリエチレン系、SBS系、SEBS系、EP系のもの等が使用でき、加硫ゴムとしては、ブチルゴム、SBR、EPR、NBR、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム等が使用できる

【0045】また、親水性ポリマーからなる被覆層10は、次のようにして形成したものである。

まず、上記のようにして成形したガスケット本体を、メチルエチルケトンに20秒浸漬して表面を洗浄する

。次に、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの10重量%メチルエチルケトン溶液を外周面に刷毛塗りして、未反応のイソシアネート基を形成する。更に、分子量2万のポリエチレングリコールを5重量%含有するジクロロメタン溶液を刷毛塗りして、未反応のイソシアネート基にポリエチレングリコールを結合させる。最後に、水中に6時間浸漬して水処理を行う。」

(12)参考文献1の記載事項

ア 「【請求項1】

エポキシ樹脂100質量部に対して、硬化剤としてジシアンジアミド粉体を2~8質量部含み、

ケトン系溶剤をさらに含むことを特徴とする溶剤型エポキシ接着剤。

・・・」

イ 「【0012】

・・・本発明はこのような観点からなされたものであり、その目的は、

溶剤型の1液性エポキシ接着剤

であって、無溶剤型に近い接着力を発揮するものを提供することにある。また、このような接着剤を使用した接着方法を提供することにある。」

2 取消理由1、申立理由1(新規性)、

取消理由2、申立理由2-1、2-3、2-4(進歩性)について

(1)甲第1号証に記載された発明

上記1(1)の甲第1号証の記載によれば、特に、上記1(1)クの実施例1の記載に着目すると、甲第1号証には、以下の3つの発明(以下「甲1発明1」~「甲1発明3」という。)が記載されていると認められる。

<甲1発明1>

GORE-TEX(R)の12.7×4.76mmの厚さのロープを電解槽枠の1つの平らな横方向の面にニカワ付けし、このロープをその端部において折り重ねてシールを与えた電解槽枠。

<甲1発明2>

甲1発明1の電解槽枠と、他方の電解槽枠とを備える電解槽。

<甲1発明3>

GORE-TEX(R)の12.7×4.76mmの厚さのロープを電解槽枠の1つの平らな横方向の面にニカワ付けし、このロープをその端部において折り重ねてシールを与えた電解槽枠の製造方法。

(2)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲1発明1とを対比する。

(ア)甲1発明1の「GORE-TEX(R)の12.7×4.76mmの厚さのロープ」は、「シール」を与えるものであって、上記1(1)クの「GORE-TEX(R)材料のガスケットを使用した。」との記載によれば、「ガスケット」として使用されるものであるから、本件発明1の「ゴムから構成されて」いる「ガスケット」と「ガスケット」である点で共通する。

(イ)上記1(1)エの「電解槽枠(11,12)」との記載、上記1(1)ウの「第1の枠(11)は陽極であり、第2の枠(12)は陰極である。代表的には陽極枠と陰極枠は単一枠構造体であって、陽極と陰極は構造体の向き合った面に取付けられていて、この構造体を介して電気的に接続されている。」との記載によれば、上記1(1)ケの図1の符号11で示される「電解槽枠」は、「陽極枠」(電極枠)でもあり、上記1(1)カの「陽極室に含まれる陽極液に接触する陽極枠」との記載によれば、「陽極枠」は、「陽極室の枠」であると解されるから、上記「電解槽枠」は、「陽極室の枠」(電極室の枠)であるといえる。

そうすると、甲1発明1における、「電解槽枠」は、本件発明1における、「電極室枠」に相当する。

(ウ)甲1発明1の「電解槽枠の1つの平らな横方向の面」は、ガスケットとしてのロープがニカワ付けされる面である。また、「ニカワ」が「接着剤」であることは技術常識であるから、甲1発明1のガスケットとしての「ロープ」は、接着剤の層(ニカワの層)を介して、「電解槽枠の1つの平らな横方向の面」に固定されるものといえる。

そうすると、上記(ア)、(イ)を踏まえると、甲1発明1における、「ニカワ」により、「GORE-TEX(R)の12.7×4.76mmの厚さのロープを」、「電解槽枠の1つの平らな横方向の面」に固定してなる「電解槽枠」と、本件発明1における、「接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定してなる電極室枠」とは、「接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠」の「面に」「固定してなる電極室枠」である点で共通する。

(エ)以上によれば、本件発明1と甲1発明1とは、

「接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠の面に固定してなる電極室枠。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1-1>

ガスケットが固定される面について、本件発明1は、「フランジ面」であるのに対し、甲1発明1は、「1つの平らな横方向の面」である点。

<相違点1-2>

固定について、本件発明1は、「仮固定」であるのに対し、甲1発明1は、「ニカワ付け」による固定であるものの、「仮固定」であるのか不明である点。

<相違点1-3>

ガスケットについて、本件発明1は、「ゴムから構成されて」いるのに対し、甲1発明1は、「GORE-TEX(R)」を使用している点。

<相違点1-4>

本件発明1は、「前記接着剤層に含まれる接着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤である」のに対し、甲1発明1は、「ニカワ」が、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤」であるのか不明である点。

イ 判断

(ア)事案に鑑み、相違点1-3について検討する。

a 相違点1-3が実質的な相違点であるかについて

「GORE-TEX(R)」は、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)で製造されたもの(上記1(1)キ)であって、ゴムから構成されたものではないから、相違点1-3は実質的な相違点である。

b 相違点1-3の容易想到性について

甲第1号証には、ガスケットを、非弾性または永久変形性のもの、好ましくは、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)を含むフロロカーボンポリマー材料で製造することは記載されている(上記1(1)キ)ものの、弾性材料であるゴムで製造することは記載されていないから、甲1発明1の電解槽枠において、ガスケットをゴムから構成することが動機付けられるとはいえない。また、甲第1号証においては、ガスケットの材料が非弾性または永久変形性のものであることは本発明の主たる特徴である(上記1(1)キ)とされているから、甲1発明1の電解槽枠において、ガスケットを弾性材料であるゴムから構成することは、むしろ阻害されているともいえる。そして、このことは、甲第3~7号証に、無溶剤型の接着剤が記載されていても変わるものではない。

そうすると、甲1発明1の電解槽枠において、相違点1-3に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。

c 小括

以上のとおり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1であるとはいえない。また、本件発明1は、甲1発明1及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ まとめ

したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明2について

本件発明2は、本件特許の請求項1の記載を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2についても同様に、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明4について

ア 対比・判断

本件発明4と甲1発明2とを対比する。

(ア)上記(2)、(3)における検討を踏まえると、本件発明4における、「請求項1又は2に記載の電極室枠」と、甲1発明2における、「甲1発明1の電解槽枠」とは、少なくとも、上記(2)ア(エ)の相違点1-3と同様の点で相違する。

そして、相違点1-3と同様の相違点についての判断は、上記(2)イ(ア)において検討した相違点1-3についての判断と同様である。

(イ)よって、本件発明4は、甲1発明2であるとはいえない。また、本件発明4は、甲1発明2及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ まとめ

したがって、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)本件発明5について

ア 対比

本件発明5と甲1発明3とを対比する。

(ア)上記(2)アの「本件発明1について」の検討を踏まえると、甲1発明3が、「GORE-TEX(R)の12.7×4.76mmの厚さのロープを」、「電解槽枠の1つの平らな横方向の面」に固定する工程を含むことは明らかであり、また、ニカワ付けに際し、ニカワを塗布する工程を含むことも自明である。

(イ)そうすると、本件発明5と甲1発明3とは、上記(2)ア(エ)の相違点1-1~相違点1-4と同様の点で相違し、その余の点で一致する。

イ 判断

上記相違点1-3と同様の相違点についての判断は、上記(2)イ(ア)で述べた相違点1-3についての判断と同様である。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は、甲1発明3であるとはいえない。また、本件発明5は、甲1発明3及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ まとめ

したがって、本件発明5は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6)本件発明6について

本件発明6は、本件特許の請求項5の記載を引用するものであり、本件発明5の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(5)で述べたとおり、本件発明5が、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明6についても同様に、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(7)本件発明7について

ア 甲第8~11号証には、上記1(8)~(11)に摘記したとおり、以下の技術的事項が記載されている。

(ア)「少なくとも陽極、イオン交換膜及び陰極を備えた電解槽の製造工程にあっては、イオン交換膜の組込み時、電解槽の構成部材に対して、不純物をほとんど含まない水(一般的に純水)を用いて水洗を行うのが通常である。」(上記1(8)アの段落【0004】)

(イ)「洗浄で用いられる純水は、ガスケットからのイオン抽出速度を速くし、ガスケットの二次汚染を防止する点から、電気伝導度が1μS/cm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μS/cm以下の超純水を用いることで、より高い洗浄効果が期待できる。」(上記1(9)アの段落【0031】)

(ウ)「マニホールド120は、軟質ガスケット132をさらに備え、これはまず例えば70%エタノールで洗浄し、次いで乾燥状態にまでブロットする必要がある。」(上記1(10)アの段落【0026】)

(エ)「上記のようにして成形したガスケット本体を、メチルエチルケトンに20秒浸漬して表面を洗浄する。」(上記1(11)アの段落【0045】)

イ ここで、本件発明7は、本件特許の請求項5の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明5の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(5)で述べたとおり、本件発明5が、甲第1号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、上記アの甲第8~11号証に記載の技術常識を考慮しても、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第8~11号証に記載された技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(8)本件発明3について

ア 対比

本件発明3と甲1発明1とを対比する。

(ア)甲1発明1における、「GORE-TEX(R)の12.7×4.76mmの厚さのロープ」は、「シール」を与えるものであって、上記1(1)クの「GORE-TEX(R)材料のガスケットを使用した。」との記載によれば、「ガスケット」として使用されるものであるから、本件発明3における、「ガスケット」に相当する。

(イ)上記1(1)エの「電解槽枠(11,12)」との記載、上記1(1)ウの「第1の枠(11)は陽極であり、第2の枠(12)は陰極である。代表的には陽極枠と陰極枠は単一枠構造体であって、陽極と陰極は構造体の向き合った面に取付けられていて、この構造体を介して電気的に接続されている。」との記載によれば、上記1(1)ケの図1の符号11で示される「電解槽枠」は、「陽極枠」(電極枠)でもあり、上記1(1)カの「陽極室に含まれる陽極液に接触する陽極枠」との記載によれば、「陽極枠」は、「陽極室の枠」であると解されるから、上記「電解槽枠」は、「陽極室の枠」(電極室の枠)であるといえる。

そうすると、甲1発明1における、「電解槽枠」は、本件発明3における、「電極室枠」に相当する。

(ウ)甲1発明1の「電解槽枠の1つの平らな横方向の面」は、ガスケットとしてのロープがニカワ付けされる面である。また、「ニカワ」が「接着剤」であることは技術常識であるから、甲1発明1のガスケットとしての「ロープ」は、接着剤の層(ニカワの層)を介して、「電解槽枠の1つの平らな横方向の面」に固定されるものといえる。

そうすると、上記(ア)、(イ)を踏まえると、甲1発明1における、「ニカワ」により、「GORE-TEX(R)の12.7×4.76mmの厚さのロープを」、「電解槽枠の1つの平らな横方向の面」に固定してなる「電解槽枠」と、本件発明3における、「接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定してなる電極室枠」とは、「接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠」の「面に」「固定してなる電極室枠」である点で共通する。

(エ)以上によれば、本件発明3と甲1発明1とは、

「接着剤層、又は粘着剤層を具備することによりガスケットを電極室枠の面に固定してなる電極室枠。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1-5>

ガスケットが固定される面について、本件発明3は、「フランジ面」であるのに対し、甲1発明1は、「1つの平らな横方向の面」である点。

<相違点1-6>

固定について、本件発明3は、「仮固定」であるのに対し、甲1発明1は、「ニカワ付け」による固定であるものの、「仮固定」であるのか不明である点。

<相違点1-7>

接着剤層、又は粘着剤層について、本件発明3は、「前記接着剤層に含まれる接着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含み、

前記接着剤層又は粘着剤層に含まれる接着剤又は粘着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、その他の反応系接着剤(ただし、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤を除く)、変成シリコーン系接着剤、シリル化ウレタン系接着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤から選択される少なくとも1種である」のに対し、甲1発明1は、接着剤が「ニカワ」である点。

イ 判断

(ア)事案に鑑み、相違点1-7について検討する。

a 相違点1-7が実質的な相違点であるかについて

(a)ニカワは、技術常識に照らして、水に溶けやすく、有機溶剤に溶けにくいから(浦上化成株式会社ウェブページ「にかわ(膠)について」(https://www.urakami.com/nikawa/))、甲1発明1の「ニカワ」は、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤」であると認められる。

(b)一方、「ニカワ」は、ゼラチン(タンパク質)を主成分とするものである(上記(a)のウェブページ)から、「エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、その他の反応系接着剤(ただし、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤を除く)、変成シリコーン系接着剤、シリル化ウレタン系接着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤から選択される少なくとも1種である」とはいえない。

(c)よって、相違点1-7は実質的な相違点である。

b 相違点1-7の容易想到性について

(a)甲第1号証には、「ガスケット(14)は、電解槽組立体に圧縮力を加える前に、従来技術で知られているセメントまたはエポキシのような接着剤によって枠部材(12)の横方向の面(16)に取付けることができる」ことが記載されている(上記1(1)キ)から、甲1発明1において、接着剤としての「ニカワ」を「エポキシ」に変更することについて、一応の動機付けがあるといえる。

(b)しかしながら、甲第1号証には、接着剤としての「エポキシ」として、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む」もの、すなわち、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む」「エポキシ樹脂系接着剤」について何ら記載されていないから、甲1発明1において、接着剤としての「ニカワ」を「エポキシ」に変更することについて、一応の動機付けがあるとしても、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む」「エポキシ樹脂系接着剤」に変更することが動機付けられるとはいえない。

また、甲第1号証には、相違点1-7に係る各種の接着剤(エポキシ樹脂系接着剤を除く)及び粘着剤について何ら記載されていないから、甲1発明1において、接着剤としての「ニカワ」を、相違点1-7に係る各種の接着剤(エポキシ樹脂系接着剤を除く)及び粘着剤に変更することが動機付けられるとはいえない。

さらに、甲第3~7号証には、無溶剤型の接着剤について記載されているものの、これらの接着剤は、甲1発明1とは異なる技術分野で用いられるものであり、また、甲第1号証には、接着剤として「セメント」、「エポキシ」、「ニカワ」が記載されるだけであるから、甲1発明1において、接着剤としての「ニカワ」を、甲第3~7号証に記載の無溶剤型の接着剤に変更することが動機付けられるとはいえない。

そうすると、甲1発明1の電解槽枠において、相違点1-7に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。

c 申立人の主張について

(a)申立人は、令和 8年 2月 4日提出の意見書の第11ページ第13~18行において、甲第1号証に記載される「エポキシ」が無溶剤型の接着剤である旨を主張しているが、エポキシ樹脂系接着剤は、無溶剤型に限られない(上記1(12)ア、イ)から、甲第1号証に記載される「エポキシ」が無溶剤型の接着剤であるとは必ずしもいえない。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

(b)申立人は、上記(a)の意見書の第11ページ第19行~第12ページ第12行において、甲第1号証に記載の「セメント」、「エポキシ」又は「ニカワ」に代えて、甲第3、5~7号証に記載の接着剤を用いることは当業者が容易に想到し得ることである旨を主張しているが、上記b(b)で述べたとおり、甲1発明1において、接着剤としての「ニカワ」に代えて、甲第3、5~7号証に記載の接着剤を用いることが動機付けられるとはいえない。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

d 小括

以上のとおり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明1であるとはいえない。また、本件発明3は、甲1発明1及び甲第3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ まとめ

したがって、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(9)本件発明8について

ア 対比・判断

(ア)本件発明8に係る「電極室枠」は、本件発明3に係る「電極室枠」における、「接着剤層に含まれる接着剤」を、「ガスケットを劣化させない接着剤」であるものに限定し、「粘着剤層に含まれる粘着剤」を、「ガスケットを劣化させない粘着剤」であるものに限定するものであると認められる。

(イ)本件発明8と甲1発明1とを対比すると、上記(8)の「本件発明3について」の検討を踏まえると、本件発明8と甲1発明1とは、少なくとも、上記(8)ア(エ)の相違点1-7と同様の点で相違する。

そして、相違点1-7と同様の相違点についての判断は、上記(8)イ(ア)において検討した相違点1-7についての判断と同様である。

(ウ)よって、本件発明8は、甲1発明1であるとはいえない。また、本件発明8は、甲1発明1及び甲第3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ まとめ

したがって、本件発明8は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(10)本件発明9について

ア 対比・判断

(ア)本件発明9に係る「電解槽」は、本件発明3に係る「電極室枠」により構成される電極室を具備する電解槽であると認められる。

(イ)本件発明9と甲1発明2とを対比すると、上記(8)の「本件発明3について」の検討を踏まえると、本件発明9に係る「電解槽」が備える「本件発明3に係る電極室枠」と、甲1発明2の「電解槽」が備える「甲1発明1の電解槽枠」とは、少なくとも、上記(8)ア(エ)の相違点1-7と同様の点で相違する。

そして、相違点1-7と同様の相違点についての判断は、上記(8)イ(ア)において検討した相違点1-7についての判断と同様である。

(ウ)よって、本件発明9は、甲1発明2であるとはいえない。また、本件発明9は、甲1発明2及び甲第3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ まとめ

したがって、本件発明9は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(11)本件発明10について

ア 対比・判断

(ア)本件発明10に係る「電解槽」は、本件発明8に係る「電極室枠」により構成される電極室を具備する電解槽であると認められる。

(イ)本件発明10と甲1発明2とを対比すると、上記(9)の「本件発明8について」の検討を踏まえると、本件発明10に係る「電解槽」が備える「本件発明8に係る電極室枠」と、甲1発明2の「電解槽」が備える「甲1発明1の電解槽枠」とは、少なくとも、上記(8)ア(エ)の相違点1-7と同様の点で相違する。

そして、相違点1-7と同様の相違点についての判断は、上記(8)イ(ア)において検討した相違点1-7についての判断と同様である。

(ウ)よって、本件発明10は、甲1発明2であるとはいえない。また、本件発明10は、甲1発明2及び甲第3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ まとめ

したがって、本件発明10は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(12)まとめ

以上のとおり、本件発明1~6、8~10は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

また、本件発明1、2、4~6は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、本件発明1~6、8~10は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

さらに、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第8~11号証に記載された技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、甲第1号証に記載された発明及び甲第3~11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、取消理由1、申立理由1(新規性)、取消理由2、申立理由2-1、2-3、2-4(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。

3 申立理由2-2、2-5(進歩性)について

(1)甲第2号証に記載された発明

上記1(2)の甲第2号証の記載によれば、特に、上記1(2)エの実施例の記載に着目すると、甲第2号証には、以下の3つの発明(以下「甲2発明1」~「甲2発明3」という。)が記載されていると認められる。

<甲2発明1>

陰極室枠の接合面に、幅30mm×厚み3mmのエチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケットを張付け、ガスケットのイオン交換膜側の表面全面に、幅60mm×厚み0.08mmのポリテトラフルオロエチレンのフィルムを貼付けた陰極室枠。

<甲2発明2>

甲2発明1の陰極室枠と、陽極室枠とを備える電解槽。

<甲2発明3>

陰極室枠の接合面に、幅30mm×厚み3mmのエチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケットを張付け、ガスケットのイオン交換膜側の表面全面に、幅60mm×厚み0.08mmのポリテトラフルオロエチレンのフィルムを貼付ける陰極室枠の製造方法。

(2)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と甲2発明1とを対比する。

(ア)甲2発明1における、「エチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケット」は、本件発明1の「ゴムから構成されて」いる「ガスケット」に相当する。

(イ)甲2発明1における、「陰極室枠」は、本件発明1における、「電極室枠」に相当する。

(ウ)甲2発明1の「エチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケット」は、陰極室枠の「接合面」に張付けられているから、甲2発明1の「エチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケット」が、陰極室枠の「接合面」に固定されていることは明らかである。

(エ)上記(イ)、(ウ)を踏まえると、甲2発明1における、「エチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケット」を陰極室枠の「接合面」に固定してなる「陰極室枠」と、本件発明1における、「ガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定してなる電極室枠」とは、「ガスケットを電極室枠」の「面に」「固定してなる電極室枠」である点で共通する。

(オ)以上によれば、本件発明1と甲2発明1とは、

「ガスケットを電極室枠の面に固定してなる電極室枠であって、

前記ガスケットが、ゴムから構成されている、電極室枠。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2-1>

ガスケットを電極室枠の面に固定する態様について、本件発明1は、「接着剤層、又は粘着剤層を具備することにより」固定しているのに対し、甲2発明1は、「張付け」により固定している点。

<相違点2-2>

ガスケットが固定される面について、本件発明1は、「フランジ面」であるのに対し、甲2発明1は、「接合面」である点。

<相違点2-3>

固定について、本件発明1は、「仮固定」であるのに対し、甲2発明1は、「張付け」による固定であるものの、「仮固定」であるのか不明である点。

<相違点2-4>

本件発明1は、「前記接着剤層に含まれる接着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤である」のに対し、甲2発明1は、「張付け」にこれらの接着剤又は粘着剤が用いられているのか不明である点。

イ 判断

(ア)事案に鑑み、まず、相違点2-3について検討する。

a 相違点2-3が実質的な相違点であるかについて

本件明細書の段落【0013】には、「仮固定」について、「本願において、仮固定とは、電解槽を組立・整備作業中にガスケットが反りや波状の変形等の過度な変形を起こすことなく、電極室枠フランジ面の規定位置にガスケットを配置した後、電解槽を組み立て終わるまでにガスケットの位置が変動しないように配置することを指しており、単に電極室枠に載せたガスケットが滑り落ちないように仮留めを行う行為とは区別をして使用する。また、仮固定では電解槽の操業期間中に固定能力が維持されている必要は無く、電解槽の操業中や、次回の電解槽解体時に電極室枠フランジ面からガスケットが簡単に剥がれる程度であってよい。」と記載されている。

一方、甲2発明1の「張付け」について、甲第2号証には、「イオン交換膜5側の全面をフッ素樹脂フィルム6および7で被覆されたガスケット8および9は、それぞれ陽極室枠1と陰極室枠2の接合面3および4に任意に方法、例えば、接着剤による接着等の方法により取り付けられている。」(段落【0015】)、「陽極室枠と陰極室枠とを接合した。」(段落【0023】)との記載はあるが、当該記載から、甲2発明1の「張付け」が、「電解槽を組み立て終わるまでにガスケットの位置が変動しないように配置すること」を意味するとはいえない。

よって、相違点2-3は実質的な相違点である。

b 相違点2-3の容易想到性について

甲第2号証には、本件発明1の「仮固定」について何ら記載されていないから、甲2発明1の陰極室枠において、エチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケットを接合面に仮固定することが動機付けられるとはいえない。

そうすると、甲2発明1の陰極室枠において、相違点2-3に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。

(イ)次に、相違点2-1、2-4についてまとめて検討する。

(上記相違点2-3が実質的な相違点ではないと仮定して予備的に検討する。)

a 上記(ア)aに摘記したとおり、甲第2号証には、甲2発明1の「張付け」について、「接着剤による接着等の方法」を用いることが記載されているから、「張付け」により、エチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケットを接合面に固定する際に、接着剤を用いることに、一応の動機付けがあるといえる(相違点2-1)。

b 一方、甲第2号証には、上記aの「接着剤」について、相違点2-4に係る特定の接着剤を用いることが何ら記載されていないから、甲2発明1の「張付け」の際に、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤」を用いることが動機付けられるとはいえない。

また、甲第2号証には、相違点2-4に係る特定の粘着剤について何ら記載されていないから、甲2発明1の「張付け」の際に、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤」を用いることが動機付けられるとはいえない。

さらに、甲第1号証には、接着剤として「ニカワ」、「セメント」及び「エポキシ」が記載され、甲第3~7号証には、無溶剤型の接着剤が記載されているものの、甲第3~7号証に記載の接着剤は、甲2発明1とは異なる技術分野で用いられるものであり、また、甲第1号証に記載のガスケットは、GORE-TEX(R)等のポリテトラフロロエチレン(PTFE)で製造されたものであって、甲2発明1のエチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケットとは材質が異なるものであるから、いずれにしろ、甲2発明1の「張付け」の際に、甲第1、3~7号証に記載の接着剤を用いることが動機付けられるとはいえない。

そうすると、甲2発明1の陰極室枠において、相違点2-4に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。

c(a)申立人は、令和 8年 2月 4日提出の意見書の第2ページ第18行~第4ページ第12行において、甲第1号証に記載される「セメント」及び「エポキシ」は、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤」であり、甲第1号証に記載の電解槽組立体と、甲第2号証に記載の電解槽とは、同一の技術分野に属するから、甲第2号証に記載の電解槽において、ガスケットを陽極室枠又は陰極室枠に取り付ける際に、甲第1号証に記載の「セメント」、「エポキシ」又は「ニカワ」を用いることは、当業者が容易に想到し得ることである旨を主張する。

しかしながら、上記bで述べたとおり、甲第2号証には、上記aの「接着剤」について、相違点2-4に係る特定の接着剤を用いることが何ら記載されておらず、また、甲第1号証に記載のガスケットは、甲2発明1のガスケットとは材質が異なるものであるから、甲2発明1の「張付け」の際に、甲第1号証に記載の「セメント」、「エポキシ」又は「ニカワ」を用いることが動機付けられるとはいえない。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

(b)申立人は、上記(a)の第4ページ第13~最下行において、甲第2号証に記載の、ゴムから構成されているガスケットを接着する接着剤において、ガスケットの膨潤、軟化を防ぐために、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤」として、甲第3号証に記載の水性接着剤(クロロプレンゴム系ラテックス、天然ゴム系ラテックス、アクリル樹脂系エマルジョン、ウレタン樹脂系エマルジョン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン)を用いることは、当業者が容易に想到し得ることである旨を主張する。

しかしながら、上記bで述べたとおり、甲第2号証には、上記aの「接着剤」について、相違点2-4に係る特定の接着剤を用いることが何ら記載されておらず、また、甲第3号証に記載の接着剤は、甲2発明1とは異なる技術分野で用いられるものであるから、甲2発明1の「張付け」の際に、甲第3号証に記載の水性接着剤を用いることが動機付けられるとはいえない。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

(c)申立人は、上記(a)の意見書の第5ページ第1~22行において、甲第2号証に記載の、ゴムから構成されているガスケットを接着する接着剤において、ガスケットの膨潤、軟化を防ぐために、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤」として、甲第4号証に記載の光硬化型の接着剤を用いることは、当業者が容易に想到し得ることである旨を主張する。

しかしながら、上記bで述べたとおり、甲第2号証には、上記aの「接着剤」について、相違点2-4に係る特定の接着剤を用いることが何ら記載されておらず、また、甲第4号証に記載の接着剤は、甲2発明1とは異なる技術分野で用いられるものであるから、甲2発明1の「張付け」の際に、甲第4号証に記載の光硬化型の接着剤を用いることが動機付けられるとはいえない。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

(d)申立人は、上記(a)の意見書の第5ページ第23行~第6ページ下から第4行において、甲第2号証に記載の、ゴムから構成されているガスケットを接着する接着剤において、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤」として、甲第5号証に記載の熱硬化型接着剤(エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、(メタ)アクリレート系接着剤、エン/チオール系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリエステル系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ナイロン系接着剤、変性オレフィン系接着剤)または活性エネルギー線硬化型接着剤((メタ)アクリレート系接着剤、エン/チオール系接着剤、エポキシ系接着剤、オキセタン系接着剤、エポキシ/オキセタン系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤などの光ラジカル重合反応を利用する接着剤、エポキシ系、ビニルエーテル系、オキセタン系などの光カチオン重合反応を利用する接着剤)を用いることは、当業者が容易に想到し得ることである旨を主張する。

しかしながら、上記bで述べたとおり、甲第2号証には、上記aの「接着剤」について、相違点2-4に係る特定の接着剤を用いることが何ら記載されておらず、また、甲第5号証に記載の接着剤は、甲2発明1とは異なる技術分野で用いられるものであるから、甲2発明1の「張付け」の際に、甲第5号証に記載の熱硬化型接着剤又は活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることが動機付けられるとはいえない。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

(e)申立人は、上記(a)の意見書の第6ページ下から第5行~第8ページ第17行において、甲第2号証に記載の、ゴムから構成されているガスケットを接着する接着剤において、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤」として、甲第6号証に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤((メタ)アクリレート系接着剤、エン/チオール系接着剤、エポキシ系接着剤、オキセタン系接着剤、エポキシ/オキセタン系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤などの光ラジカル重合反応を利用する接着剤や、エポキシ系、ビニルエーテル系、オキセタン系などの光カチオン重合反応を利用する接着剤)または熱硬化型接着剤(エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、(メタ)アクリレート系接着剤、エン/チオール系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリエステル系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ナイロン系接着剤、変性オレフィン系接着剤)、および水系接着剤から形成される粘着層を用いることは、当業者が容易に想到し得ることである旨を主張する。

しかしながら、上記bで述べたとおり、甲第2号証には、上記aの「接着剤」について、相違点2-4に係る特定の接着剤を用いることが何ら記載されておらず、また、甲第6号証に記載の接着剤は、甲2発明1とは異なる技術分野で用いられるものであるから、甲2発明1の「張付け」の際に、甲第6号証に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤又は水系接着剤を用いることが動機付けられるとはいえない。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

(f)申立人は、上記(a)の意見書の第8ページ第18行~第10ページ第1行において、甲第2号証に記載の「接着剤」として、甲第7号証に記載の活性エネルギ一線硬化型接着剤((メタ)アクリレート系接着剤、エン/チオール系接着剤、エポキシ系接着剤、オキセタン系接着剤、エポキシ/オキセタン系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤などの光ラジカル重合反応を利用する接着剤や、エポキシ系、ビニルエーテル系、オキセタン系などの光カチオン重合反応を利用する接着剤)、熱硬化型接着剤(エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、(メタ)アクリレート系接着剤、エン/チオール系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリエステル系接着剤、不飽和ポリエステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ナイロン系接着剤、変性オレフィン系接着剤)、水系接着剤から得られる粘着層を用いることは、当業者が容易に想到し得ることである旨を主張する。

しかしながら、上記bで述べたとおり、甲第2号証には、上記aの「接着剤」について、相違点2-4に係る特定の接着剤を用いることが何ら記載されておらず、また、甲第7号証に記載の接着剤は、甲2発明1とは異なる技術分野で用いられるものであるから、甲2発明1の「張付け」の際に、甲第7号証に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤又は水系接着剤を用いることが動機付けられるとはいえない。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

d 小括

以上のとおり、相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明1及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ まとめ

したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明2について

本件発明2は、本件特許の請求項1の記載を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2についても同様に、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明4について

ア 対比・判断

本件発明4と甲2発明2とを対比する。

(ア)上記(2)、(3)における検討を踏まえると、本件発明4における、「請求項1又は2に記載の電極室枠」と、甲2発明2における、「甲2発明1の陰極室枠」とは、少なくとも、上記(2)ア(オ)の相違点2-3、2-4と同様の点で相違する。

そして、相違点2-3と同様の相違点についての判断は、上記(2)イ(ア)において検討した相違点2-3についての判断と同様である。仮に、相違点2-3と同様の相違点が実質的な相違点ではないとしても、上記(2)イ(イ)で述べたのと同様に、甲2発明2における、「甲2発明1の陰極室枠」において、相違点2-4と同様の相違点に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。

(イ)よって、本件発明4は、甲2発明2及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ まとめ

したがって、本件発明4は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)本件発明5について

ア 対比

本件発明5と甲2発明3とを対比する。

(ア)上記(2)アの「本件発明1について」の検討を踏まえると、甲2発明3が、「エチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケットを」、「陰極室枠の接合面」に固定する工程を含むことは明らかである。

(イ)そうすると、本件発明5と甲2発明3とは、

「ガスケットを電極室枠の面に固定する工程(固定工程)を含む電極室枠又は電解槽の製造方法であって、

前記ガスケットが、ゴムから構成されている、製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2-5>

ガスケットが固定される面について、本件発明5は、「フランジ面」であるのに対し、甲2発明3は、「接合面」である点。

<相違点2-6>

固定について、本件発明5は、「仮固定」であるのに対し、甲2発明3は、「張付け」による固定であるものの、「仮固定」であるのか不明である点。

<相違点2-7>

本件発明5は、仮固定工程が、ガスケット及び/又は電極室枠フランジ面に接着剤、又は粘着剤を塗布する工程(塗布工程)を含」むのに対し、甲2発明3は、「陰極室枠の接合面に」「エチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケットを張付け」ているものの、「接着剤、又は粘着剤を塗布する工程(塗布工程)を含」むのか不明である点。

<相違点2-8>

本件発明5は、「前記接着剤層に含まれる接着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤である」のに対し、甲2発明3は、「張付け」にこれらの接着剤又は粘着剤が用いられているのか不明である点。

イ 判断

相違点2-6は、上記(2)ア(オ)の相違点2-3と同様の相違点であるから、相違点2-6についての判断は、上記(2)イ(ア)の相違点2-3についての判断と同様である。仮に、相違点2-6が実質的な相違点ではないとしても、甲2発明3の陰極室枠の製造方法において、相違点2-8に係る特定事項を備えようとすることが、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえないことは、上記(2)イ(イ)の相違点2-4についての判断で述べたのと同様である。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は、甲2発明3及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ まとめ

したがって、本件発明5は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6)本件発明6について

本件発明6は、本件特許の請求項5の記載を引用するものであり、本件発明5の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(5)で述べたとおり、本件発明5が、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明6についても同様に、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(7)本件発明7について

ア 甲第8~11号証には、上記2(7)アに摘記したとおりの技術的事項が記載されている。

イ ここで、本件発明7は、本件特許の請求項5の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明5の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(5)で述べたとおり、本件発明5が、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、上記アの甲第8~11号証に記載の技術常識を考慮しても、本件発明7は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~11号証に記載された技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(8)本件発明3について

ア 対比

本件発明3と甲2発明1とを対比する。

(ア)甲2発明1における、「エチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケット」は、本件発明3の「ガスケット」に相当する。

(イ)甲2発明1における、「陰極室枠」は、本件発明3における、「電極室枠」に相当する。

(ウ)甲2発明1の「エチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケット」は、陰極室枠の「接合面」に張付けられているから、甲2発明1の「エチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケット」が、陰極室枠の「接合面」に固定されていることは明らかである。

(エ)上記(イ)、(ウ)を踏まえると、甲2発明1における、「エチレン-プロピレン-ジエンゴムのガスケット」を陰極室枠の「接合面」に固定してなる「陰極室枠」と、本件発明3における、「ガスケットを電極室枠フランジ面に仮固定してなる電極室枠」とは、「ガスケットを電極室枠」の「面に」「固定してなる電極室枠」である点で共通する。

(オ)以上によれば、本件発明3と甲2発明1とは、

「ガスケットを電極室枠の面に固定してなる電極室枠。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2-9>

ガスケットを電極室枠の面に固定する態様について、本件発明3は、「接着剤層、又は粘着剤層を具備することにより」固定しているのに対し、甲2発明1は、「張付け」により固定している点。

<相違点2-10>

ガスケットが固定される面について、本件発明3は、「フランジ面」であるのに対し、甲2発明1は、「接合面」である点。

<相違点2-11>

固定について、本件発明3は、「仮固定」であるのに対し、甲2発明1は、「張付け」による固定であるものの、「仮固定」であるのか不明である点。

<相違点2-12>

本件発明3は、「前記接着剤層に含まれる接着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤であり、前記粘着剤層に含まれる粘着剤が、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含み、

前記接着剤層又は粘着剤層に含まれる接着剤又は粘着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、その他の反応系接着剤(ただし、エポキシ樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、アクリル樹脂系接着剤を除く)、変成シリコーン系接着剤、シリル化ウレタン系接着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤から選択される少なくとも1種である」のに対し、甲2発明1は、「張付け」にこれらの接着剤又は粘着剤が用いられているのか不明である点。

イ 判断

相違点2-11は、上記(2)ア(オ)の相違点2-3と同様の相違点であるから、相違点2-11についての判断は、上記(2)イ(ア)の相違点2-3についての判断と同様である。仮に、相違点2-11が実質的な相違点ではないとしても、甲2発明1の陰極室枠において、相違点2-12に係る特定事項を備えようとすることが、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえないことは、上記(2)イ(イ)の相違点2-4についての判断で述べたとおりである。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲2発明1及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ まとめ

したがって、本件発明3は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(9)本件発明8について

ア 対比・判断

(ア)本件発明8に係る「電極室枠」は、本件発明3に係る「電極室枠」における、「接着剤層に含まれる接着剤」を、「ガスケットを劣化させない接着剤」であるものに限定し、「粘着剤層に含まれる粘着剤」を、「ガスケットを劣化させない粘着剤」であるものに限定するものであると認められる。

(イ)本件発明8と甲2発明1とを対比すると、上記(8)の「本件発明3について」の検討を踏まえると、本件発明8と甲2発明1とは、少なくとも、上記(8)ア(オ)の相違点2-11、2-12と同様の点で相違する。

そして、相違点2-11と同様の相違点についての判断は、上記(8)イにおいて検討した相違点2-11についての判断と同様である。仮に、相違点2-11と同様の相違点が実質的な相違点ではないとしても、甲2発明1の陰極室枠において、相違点2-12と同様の相違点に係る特定事項を備えようとすることが、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえないことは、上記(8)イの相違点2-12についての判断で述べたとおりである。

(ウ)よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は、甲2発明1及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ まとめ

したがって、本件発明8は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(10)本件発明9について

ア 対比・判断

(ア)本件発明9に係る「電解槽」は、本件発明3に係る「電極室枠」により構成される電極室を具備する電解槽であると認められる。

(イ)本件発明9と甲2発明2とを対比すると、上記(8)の「本件発明3について」の検討を踏まえると、本件発明9に係る「電解槽」が備える「本件発明3に係る電極室枠」と、甲2発明2の「電解槽」が備える「甲2発明1の陰極室枠」とは、少なくとも、上記(8)ア(オ)の相違点2-11、2-12と同様の点で相違する。

そして、相違点2-11と同様の相違点についての判断は、上記(8)イにおいて検討した相違点2-11についての判断と同様である。仮に、相違点2-11と同様の相違点が実質的な相違点ではないとしても、甲2発明1の陰極室枠において、相違点2-12と同様の相違点に係る特定事項を備えようとすることが、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえないことは、上記(8)イの相違点2-12についての判断で述べたとおりである。

(ウ)よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は、甲2発明2及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ まとめ

したがって、本件発明9は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(11)本件発明10について

ア 対比・判断

(ア)本件発明10に係る「電解槽」は、本件発明8に係る「電極室枠」により構成される電極室を具備する電解槽であると認められる。

(イ)本件発明10と甲2発明2とを対比すると、上記(9)の「本件発明8について」の検討を踏まえると、本件発明10に係る「電解槽」が備える「本件発明8に係る電極室枠」と、甲2発明2の「電解槽」が備える「甲2発明1の陰極室枠」とは、少なくとも、上記(8)ア(オ)の相違点2-11、2-12と同様の点で相違する。

そして、相違点2-11と同様の相違点についての判断は、上記(8)イにおいて検討した相違点2-11についての判断と同様である。仮に、相違点2-11と同様の相違点が実質的な相違点ではないとしても、甲2発明1の陰極室枠において、相違点2-12と同様の相違点に係る特定事項を備えようとすることが、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえないことは、上記(8)イの相違点2-12についての判断で述べたとおりである。

(ウ)よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明10は、甲2発明2及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ まとめ

したがって、本件発明10は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(12)まとめ

以上のとおり、本件発明1~6、8~10は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

また、本件発明7は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3~11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、申立理由2-2、2-5(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。

4 申立理由3(実施可能要件)について

(1)本件発明2、8、10について

ア 本件明細書の段落【0007】には、ガスケットの劣化について、「接着剤に含まれる有機溶剤により、ガスケットが変質・劣化することで電解槽の液漏れやガスケット破断を引き起こす事象が発生している」ことが記載されている。また、段落【0020】には、「有機溶剤により、引張強さ低下等のガスケット物性が変化すると操業中にガスケットが破断したり、圧縮歪み変形によりシール性が低下することで電解槽から電解液が液漏れしたり」することも記載されている。

そうすると、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤」又は「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤」であれば、「ガスケットを劣化させない接着剤」又は「ガスケットを劣化させない粘着剤」であることが理解できる。

そして、本件明細書の段落【0040】~【0049】の実施例には、有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤又は粘着剤を用いると、ガスケットの変形等が起こらなかったことが示されているから、本件明細書には、「接着剤層又は粘着剤層に含まれる接着剤又は粘着剤が、ガスケットを劣化させない接着剤又はガスケットを劣化させない粘着剤である」ことが特定された本件発明2の電解室枠、これと同様の事項が特定された本件発明8の電解室枠及び本件発明10の電解槽を生産ないし使用することが記載されていると認められる。

よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明2、8、10について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

イ 申立人は、本件明細書には、接着剤層又は粘着剤層に含まれる、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む」接着剤又は粘着剤のうち、どれが「ガスケットを劣化させない」接着剤又は粘着剤であるのか記載されていない旨を主張するが、上記アで述べたとおり、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤」又は「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤」であれば、「ガスケットを劣化させない接着剤」又は「ガスケットを劣化させない粘着剤」であることが理解できる。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

(2)まとめ

以上のとおり、本件発明2、8、10について、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合する。

したがって、申立理由3(実施可能要件)よっては、本件特許の請求項2、8、10に係る特許を取り消すことはできない。

5 申立理由4(サポート要件)について

(1)本件発明2、8、10について

ア 上記4(1)アで述べたとおり、本件明細書の段落【0007】、【0020】の記載を参酌すれば、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤」又は「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤」であれば、「ガスケットを劣化させない接着剤」又は「ガスケットを劣化させない粘着剤」であることが理解できる。

よって、本件発明2、8、10について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである。

イ 申立人は、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件訂正前の請求項2に係る発明の「ガスケットを劣化させない接着剤」及び「ガスケットを劣化させない粘着剤」とは、どのような接着剤又は粘着剤であるのか、具体的な説明がない旨を主張するが、上記アで述べたとおり、本件明細書の段落【0007】、【0020】には、「ガスケットを劣化させない接着剤」及び「ガスケットを劣化させない粘着剤」がどのような接着剤又は粘着剤であるのかについて説明されている。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

(2)まとめ

以上のとおり、本件発明2、8、10について、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合する。

したがって、申立理由4(サポート要件)よっては、本件特許の請求項2、8、10に係る特許を取り消すことはできない。

6 申立理由5-1、5-2(明確性)について

(1)申立理由5-1について

ア 本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりのものであるところ、請求項2、8、10の記載に不明確なところはなく、その意味は明確であるから、本件発明2、8、10について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。

イ 申立人は、本件明細書の段落【0020】の記載を参酌しても、ガスケットの劣化が、具体的に何が生じることをいうのかが不明であるから、本件訂正前の請求項2に係る発明の、「ガスケットを劣化させない接着剤」及び「ガスケットを劣化させない粘着剤」との記載は不明確である旨を主張するが、上記4(1)アで述べたとおり、本件明細書の段落【0007】、【0020】の記載を参酌すれば、「ガスケットを劣化させない接着剤」及び「ガスケットを劣化させない粘着剤」が、「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む接着剤」及び「有機溶剤を含まない或いは有機溶剤を5質量%以下の量で含む粘着剤」であることが理解できる。そして、ガスケットの劣化の具体的な内容については、上記4(1)アで述べたとおりである。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

(2)申立理由5-2について

ア 本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりのものであるところ、請求項3、8~10の記載に不明確なところはなく、その意味は明確であるから、本件発明3、8~10について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。

イ 申立人は、本件訂正前の請求項3に係る発明の、「アクリル系接着剤」と「アクリル樹脂系接着剤」の違いが不明確である旨を主張するが、「アクリル系接着剤」と「アクリル樹脂系接着剤」のそれぞれの意味は明確であるから、仮に、両者に重複する領域があったとしても、それによって、本件発明3、8~10における「接着剤」が不明確となるとはいえない。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

(3)まとめ

以上のとおり、本件発明2、3、8~10について、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合する。

したがって、申立理由5-1、5-2(明確性)よっては、本件特許の請求項2、3、8~10に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由及び当審において通知した取消理由によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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