結論テキスト
特許第7569285号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、6〕、4、5について訂正することを認める。
特許第7569285号の請求項1~6に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025700423 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7569285号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和3年7月27日に出願され、令和6年10月8日にその特許権の設定登録がなされ、同年10月17日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1~6に係る特許に対して特許異議の申立てがなされたものであり、以後の手続の概要は以下のとおりである。
令和7年 4月15日 :特許異議申立人 柴田隆史(以下、「異議申立人」という。)による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 7月10日付け:取消理由通知
同年 9月 3日 :特許権者による訂正請求書・意見書の提出
同年10月28日 :異議申立人による意見書の提出
同年12月 5日 :異議申立人による意見書に対する手続補正書(方式)の提出
(なお、以下、令和7年12月5日提出の手続補正書(方式)で補正された同年10月28日提出の意見書のことを「意見書」という。)
令和7年9月3日の訂正請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(なお、下線は、本件訂正による訂正箇所を表す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「ジオポリマー組成物の硬化体と、前記硬化体に植設された正負一対の電極と、を備える蓄電体であって、前記ジオポリマー組成物は、ケイ酸アルカリ水溶液を含有していることを特徴とする、蓄電体。」と記載されているのを、
「ジオポリマー組成物の硬化体と、前記硬化体に植設された正負一対の電極と、を備える蓄電体であって、前記ジオポリマー組成物は、ケイ酸アルカリ水溶液を含有して
おり、前記硬化体は、直方体であり、当該直方体の稜線を介して連続する二つの側面に、それぞれ少なくとも一対の前記電極が設けられて
いることを特徴とする、蓄電体。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、6も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に
「前記フライアッシュの含有量と前記高炉スラグの含有量との質量比が1:0.04~0.06であることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の蓄電体。」
と記載されているのを、
「
ジオポリマー組成物の硬化体と、前記硬化体に植設された正負一対の電極と、を備える蓄電体であって、前記ジオポリマー組成物は、ケイ酸アルカリ水溶液を含有するとともに、フライアッシュおよび高炉スラグからなる活性粉体を含有し、
前記フライアッシュの含有量と前記高炉スラグの含有量との質量比が1:0.04~0.06であることを特徴とする
、
蓄電体。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に
「前記硬化体の前記電極が植設された面と対向する面には、前記電極に接続する他の電極を挿入可能な凹部が形成されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の蓄電体。」
と記載されているのを、
「
ジオポリマー組成物の硬化体と、前記硬化体に植設された正負一対の電極と、を備える蓄電体であって、前記ジオポリマー組成物は、ケイ酸アルカリ水溶液を含有し、
前記硬化体の前記電極が植設された面と対向する面には、前記電極に接続する他の電極を挿入可能な凹部が形成されていることを特徴とする
、
蓄電体。」
に訂正する。
(4)別の訂正単位とする求め
訂正後の請求項4、5については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
(1)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が、訂正の対象となる請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1により連動して訂正されるから、一群の請求項である。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「硬化体」の形状について、「直方体」であると限定し、同請求項1の「正負一対の電極」が、「直方体の稜線を介して連続する二つの側面」に設けられていることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
a 訂正前の請求項1に記載された「硬化体」と「正負一対の電極」に関し、本件特許明細書の段落【0009】には、「蓄電体2は、ジオポリマー組成物の硬化体5を主体としており、図2(a)に示すように、ブロック状を呈している。硬化体5には、正負一対の電極6,6が植設されている。本実施形態の蓄電体2は、直方体であり、角(稜線)を介して連続する二つの側面に、それぞれ一対の電極6,6が設けられている。」と記載されている。
また、図2(a)によれば、「硬化体5」が直方体であり、該直方体の角を介して連続する2つの側面に一対の電極6、6が設けられていることが見て取れる。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
b また、訂正事項1は、上記(ア)のとおり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
c したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項2ないし3のいずれかを引用する記載であったものを、請求項3の引用を削除するとともに、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して請求項1および請求項2の記載を引用しないものとして独立形式の請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
a 上記(ア)で述べたように、訂正事項2は、請求項3の引用を削除するとともに、請求項間の引用関係を解消して独立形式の請求項に改めるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
b また、訂正事項2は、上記(ア)のとおり、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
c したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1ないし4のいずれかを引用する記載であったものを、請求項2~4の引用を削除するとともに、請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して請求項1の記載を引用しないものとして独立形式の請求項に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
a 上記(ア)で述べたように、訂正事項3は、請求項2~4の引用を削除するとともに、請求項間の引用関係を解消して独立形式の請求項に改めるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
b また、訂正事項3は、上記(ア)のとおり、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
c したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
エ 独立特許要件について
上記アないしウで述べたように、訂正事項1~訂正事項3は「特許請求の範囲の減縮」を目的とするところ、本件においては、全請求項について特許異議の申立てがされているから、訂正前の請求項1~6に係る訂正事項1~訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合する。
また 、特許権者は、上記1(4)のとおり、訂正後の請求項4、5については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、6〕、4、5について訂正することを認める。
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明6」という。)は、それぞれ、令和7年9月3日提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、下線は訂正箇所を表す。
「【請求項1】
ジオポリマー組成物の硬化体と、前記硬化体に植設された正負一対の電極と、を備える蓄電体であって、
前記ジオポリマー組成物は、ケイ酸アルカリ水溶液を含有して
おり、
前記硬化体は、直方体であり、当該直方体の稜線を介して連続する二つの側面に、それぞれ少なくとも一対の前記電極が設けられて
いることを特徴とする、蓄電体。
【請求項2】
前記ジオポリマー組成物が、フライアッシュおよび高炉スラグからなる活性粉体を含有していることを特徴とする、請求項1に記載の蓄電体。
【請求項3】
前記活性粉体の含有量と前記ケイ酸アルカリ水溶液の含有量との質量比が、1:0.3~0.8であることを特徴とする、請求項2に記載の蓄電体。
【請求項4】
ジオポリマー組成物の硬化体と、前記硬化体に植設された正負一対の電極と、を備える蓄電体であって、
前記ジオポリマー組成物は、ケイ酸アルカリ水溶液を含有するとともに、フライアッシュおよび高炉スラグからなる活性粉体を含有し、
前記フライアッシュの含有量と前記高炉スラグの含有量との質量比が1:0.04~0.06であることを特徴とする
、
蓄電体。
【請求項5】
ジオポリマー組成物の硬化体と、前記硬化体に植設された正負一対の電極と、を備える蓄電体であって、
前記ジオポリマー組成物は、 ケイ酸アルカリ水溶液を含有し、
前記硬化体の前記電極が植設された面と対向する面には、前記電極に接続する他の電極を挿入可能な凹部が形成されていることを特徴とする
、
蓄電体。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の蓄電体が複数連設されていることを特徴とする、蓄電構造物。」
令和7年7月10日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(新規性)
請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由2(進歩性)
請求項2、3、6に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2、3、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)取消理由3(拡大先願)
請求項1に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた引用文献3の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項1に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
記
引用文献1:M.Saafi,A.Gullane,B.Huang,H.Sadeghi,J.Ye,F.Sadeghi、Inherently multifunctional geopolymeric cementitious composite as electrical energy storage and self-sensing structural material、Composite Structures 201、(2018)、p766-778、2018年7月2日(甲第1号証)
引用文献2:一宮一夫、畑中重光、新 大軌、国枝 稔、合田 寛基、原田 耕司、委員会報告 建設分野へのジオポリマー技術の適用に関する研究委員会、コンクリートエ学年次論文集、Vol.39、No.1、2017年(甲第2号証)
引用文献3:特願2021-79988号(特開2022-173927号公報)(甲第5号証)
(1)引用文献1について
ア 引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審において付与した。以下同じ。)。また、翻訳は、異議申立人による訳文に基づくものである。
(ア)「Abstract
In this paper, we demonstrate for the first time that potassium-geopolymeric (KGP) cementitious composites can be tuned to store and deliver energy, and sense themselves without adding any functional additives or physical sensors, thus creating intelligent concrete structures with built-in capacitors for electrical storage and sensors for structural health monitoring. ・・・. With further development and characterization, the KGP cementitious composite can be an integral part of concrete structures in the form of a battery to store and deliver power, and sensors to monitor the structural integrity of urban infrastructure such as bridges, buildings and roads.」(766頁)
(訳:
要旨
論文で、我々は、機能性添加剤や物理的センサーを加えることなく、
カリウムジオポリマー(KGP)
セメント系複合材料を調整することで、エネルギーを貯蔵・供給し、それ自体を感知することができ、その結果、蓄電用キャパシタと構造健全性監視用センサーを内蔵したインテリジェントなコンクリート構造物を作り出すことができることを初めて実証した。・・・KGPセメント系複合材料は、さらなる開発と特性評価が進めば、電力を貯蔵・供給するバッテリーや、橋、建物、道路などの都市インフラの構造的完全性を監視するセンサーの形で、コンクリート構造物の不可欠な一部となる可能性がある。)
(イ)「2. 1.1. KGP capacitors/sensors design, materials, chemicals and fabrication
As shown in Fig. 1a, the capacitors/sensors are KGP cementitious composites equipped with two steel mesh electrodes for sensing and power storage purposes. The KGP matrix was prepared by mixing fly ash into the alkaline activator with an alkaline activator-to-fly ash ratio of 0.60. The alkaline activator consisted of potassium silicate (K
2
SiO
3
) solution with SiO
2
= 26.6%, K
2
O = 30.7% and H
2
O = 42.7%. The manufacturing of the KGP capacitors/sensors is quite simple. The fly ash powder was first added to the alkaline solution and mixed for 1 min with a DAC 150 high centrifugal mixer. Upon mixing, the KGP paste was poured into plastic molds to form the KGP capacitors/sensors with dimensions of 50 mm (W) x 50 mm (L)x 10 mm (T). Subsequently, the two steel mesh electrodes were inserted into each KGP capacitor/sensor and then the samples were vibrated to ensure good contact between the electrodes and the KGP matrix. The distance between the electrodes represents the effective thickness of the KGP capacitors/sensors and was 4 mm and 8 mm for capacitors/sensors 1 and 2,respectively. The fabricated KGP sensors/capacitors were cured at room temperature for 24 h then cured in oven at 50°C for 24 h. The KGP capacitors/sensors were then cooled down in room temperature prior to characterization.」(767頁左欄下から15行ないし右欄6行)
(訳:
2.1.1
KGPキャパシタ
/センサーの設計、材料、化学薬品と製造
Fig.1aに示すように、キャパシタ/センサーは、センシングと電力貯蔵を目的とした
2つのスチールメッシュ電極
を備えたKGPセメント系複合材料である。
KGPマトリックスは、アルカリ活性化剤にフライアッシュを混合し
、アルカリ活性剤とフライアッシュの比率を0.60にし
て調製し
た。
アルカリ活性剤は、ケイ酸カリウム(K
2
SiO
3
)水溶液
で、SiO
2
=26.6%、K
2
O=30.7%、H
2
O=42.7%であった。
KGPキャパシタ
/センサー
の製造
は非常に簡単である。まず
フライアッシュ粉末をアルカリ水溶液に加え
、DAC150高遠心ミキサーで1分間
混合した
。混合
後、KGPペーストをプラスチック型に流し込み、50mm(幅)×50mm(長さ)×10mm(厚さ)のKGPキャパシタ
/センサーを
形成し
た。その後、
2つのスチールメッシュ電極を
各
KGPキャパシタ
/センサー
に挿入し、電極とKGPマトリックスが良好に接触するように試料を振動させ
た。電極間の距離はKGPキャパシタ/センサーの有効厚さを表し、キャパシタ/センサー1および2ではそれぞれ4mm、8mmであった。作製したKGPセンサー/キャパシタは、
室温で24時間硬化させた後、50°Cのオープンで24時間硬化させた
。KGPキャパシタ/センサーは、特性評価に先立ち、室温で冷却された。」
(ウ)「The KGP capacitors show great stability under stress and normalcivil infrastructure operating temperatures. The KGP capacitors could be manufactured in the form of panels and can be an integral part of structures such as buildings and bridges. When interfaced with solar panels, the proposed structural KGP capacitors could store up to 0.33kW/m
2
, enough to power systems such as structural health monitoring sensors, internet of things devices, LED street lights, household appliances, and healthcare tools during power outages.」(776頁左欄1行ないし右欄3行)
(訳:
KGPキャパシタは、負荷のかかった、通常の民間インフラの動作温度下で優れた安定性を示す。
KGPキャパシタはパネルの形で製造でき、ビルや橋などの構造物の不可欠な部分となり得る。
提案された構造用KGPキャパシタは、ソーラーパネルと連動させた場合、最大0.33kW/m
2
の蓄電が可能で、停電時に構造物の健康監視センサー、IoT機器、LED街灯、家庭用電化製品、ヘルスケアツールなどのシステムに電力を供給するのに十分である。)
(エ)「Fig.12
43
102
0001437371000001.jpg
」
イ 引用文献1に記載された上記事項により、次のことがいえる。
(ア)上記ア(イ)によれば、KGPキャパシタが記載されている。
(イ)上記ア(エ)によれば、KGPキャパシタは、正極、負極、及び、KGPマトリックスを含むといえる。また、上記ア(イ)によれば、KGPキャパシタは、2つのスチールメッシュ電極を備えているから、正極及び負極は、スチールメッシュ電極であるといえる。
(ウ)上記ア(イ)によれば、KGPマトリックスは、アルカリ活性化剤にフライアッシュを混合して調製され、アルカリ活性剤はケイ酸カリウム水溶液である。
また、上記ア(イ)によれば、フライアッシュ粉末をアルカリ水溶液に加え混合した後、KGPペーストをプラスチック型に流し込み、50mm(幅)×50mm(長さ)×10mm(厚さ)のKGPキャパシタを形成し、2つのスチールメッシュ電極を各KGPキャパシタに挿入し、電極とKGPマトリックスが良好に接触するように試料を振動させ、その後室温で硬化させた後、50°Cのオープンで24時間硬化させて製造されるKGPキャパシタが記載されている。
ウ よって、上記イによれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「スチールメッシュ電極である正極及び負極と、KGPマトリックスとを含むKGPキャパシタであって、
KGPマトリックスは、アルカリ活性化剤にフライアッシュを混合して調製され、アルカリ活性剤はケイ酸カリウム水溶液であり、
フライアッシュ粉末をアルカリ水溶液に加え混合した後、KGPペーストをプラスチック型に流し込み、50mm(幅)×50mm(長さ)×10mm(厚さ)のKGPキャパシタを形成し、2つのスチールメッシュ電極をKGPキャパシタに挿入し、電極とKGPマトリックスが良好に接触するように試料を振動させ、その後室温で硬化させた後、50°Cのオープンで24時間硬化させて製造される、
KGPキャパシタ。」
(2)引用文献2について
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「1.はじめに
ジオポリマー
は、『セメントクリンカーを使用せず、非晶質のケイ酸アルミニウムを主成分とした原料(活性フィラー)とアルカリ金属のケイ酸塩、炭酸塩、水酸化物水溶液を用いて硬化させたもの』で、一般にはフライアッシュとケイ酸ナトリウムを基本とし、固化促進のために
高炉スラグ微粉末
や水酸化ナトリウムが
添加
されることが多い。」(39頁左欄1~8行)
「・・・近年ではフライアッシュを使用した
ジオポリマー
の弱点である初期強度を改善するために、
高炉水砕スラグが併用
されるようになってきている。
・・・(中略)・・・。
しかし当委員会では、現在のジオポリマー研究の実体をよく表すよう、硬化体を形成する反応生成物の近距離秩序構造を特に考慮せず、出発材料の相違で分類することとし、
ジオポリマー
を『セメントクリンカーを使用せず、非晶質のケイ酸アルミニウムを主成分とした原料(活性フィラー)とアルカリ金属のケイ酸塩、炭酸塩、水酸化物水溶液を用いて硬化させたもの』と定義することとした。」(40頁左欄28~末行)
「(2)フライアッシュと高炉スラグ微粉末を併用して活性フィラーとした場合
上記のように、活性フィラーがメタカオリンやフライアッシュなどのケイ酸アルミニウム系材料の時は、生成物を整理することができる。しかし、近年、強度増進や物資移動抵抗性等のコントロールといった観点から、
高炉水砕スラグ微粉末
などのカルシウム(Ca)源を含む材料
も添加した
ハイブリッド型
ジオポリマー
と称されるものが使用されるようになっている。」(41頁9~17行)
「(2)配合
ジオポリマー
の配(調)合設計手法は、まだ確立されておらず、多くの配(調)合案が提示されている。配(調)合の一例を表-2に示す。表-2は活性フィラーにフライッシュおよび高炉スラグ微粉末を用い、アルカリ溶液には、ナトリウム系の市販のアルカリ溶液を用いた配(調)合である。アルカリ溶液の品質も、フライアッシュおよび高炉スラグ微粉末の仕様も大きく異なることから配(調)は材料毎に検討を行う必要がある。」(42頁左欄下から8~末行)
「
39
86
0001437371000002.jpg
」
(3)引用文献3について
ア 引用文献3の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0011】
1.全固体電池の構造
本発明の実施形態の一つに係る全固体電池100の模式的斜視図を図1に示す。図1に示すように、
全固体電池100は、電解質102、および電解質102に
接触するまたは一部が
挿入された正極104と負極106を含む。
【0012】
電解質102はジオポリマーを含み、
完全にまたは実質的に流動性を示さない全固体電解質である。ここで、
ジオポリマー
と
は、アルカリシリカ溶液とアルミナシリカ粉末によって形成される
非晶質の重縮合体である。このため、電解質102は、酸化ケイ素を含む微粒子、酸化アルミニウムを含む微粒子、および酸化ケイ素と酸化アルミニウムを含む微粒子の少なくとも一つを含む。電解質102はさらに、酸化鉄や酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムなどに例示される、アルカリ金属、第2族金属、または遷移金属の酸化物を含む微粒子を含んでもよい。また、電解質102は、ケイ素-酸素-アルミニウム(Si-O-Al)結合を有し、さらに、ケイ素-酸素-ケイ素(Si-O-Si)結合、ケイ素-酸素-金属-酸素-ケイ素(Si-O-M-O-Si)結合、ケイ素-酸素-金属-酸素-アルミニウム(Si-O-M-O-Al)結合を有してもよい。上述した微粒子は、上記結合によって形成される非晶質無機質によって固定される。ここで、Mは金属であり、リチウムやナトリウム、カリウム、セシウムなどのアルカリ金属、マグネシウムやカルシウムなどの第2族金属、コバルトや銅、鉄などの遷移金属などから選択される。」
「【0015】
電解質102の大きさや形状は任意に選択すればよい。例えば
電解質102は、
図1に示すように
直方体
または立方体
の形状
を有してもよく、図示しないが、円柱状、楕円柱状、球状、半球状、板状(フィルム状)、または棒状などの形状を有してもよい。あるいは、電解質102は、ジオポリマーを有する構造材料の一部であってもよい。すなわち、電解質102は、ジオポリマーを含む橋、ビルなどの建物、道路、トンネル、ダムなどの構造体の一部であってもよい。」
「【0025】
アルカリ溶液としては、ケイ酸アルカリ溶液やアルカリ金属の水酸化物水溶液が例示される。ケイ酸アルカリ溶液としては、所謂水ガラスが例示される。したがって、
ケイ酸アルカリ溶液は、具体的には、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属のケイ酸塩水溶液
が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。アルカリ金属の水酸化物水溶液の濃度は、例えば5質量%以上30質量%以下、または10質量%以上20質量%以下の範囲から選択すればよい。」
「【実施例】
【0035】
以下、添加剤としてカーボンナノチューブを用いて全固体電池100を作製した結果について説明する。
【0036】
1.全固体電池の作製
27質量%の
シリカゲル、
30質量%の
酸化カリウム、および
43質量%の
蒸留水を
室温で
混合し、ケイ酸カリウム溶液を得
た。
シリカゲルとアルミナを主成分とする
、JISの2種に規定される市販の
フライアッシュに
得られた
ケイ酸カリウム溶液を加えて混合し、さらに
市販の
カーボンナノチューブを加えて混合物を得
た。この時、ケイ酸カリウム溶液はフライアッシュに対して60質量%用い、カーボンナノチューブはケイ酸カリウム溶液とフライアッシュの全量に対して0.01質量%用いた。
得られた混合物を50mm×50mm×50mmのプラスチック製角柱容器に注
いだ。
容器内の混合物に正極
104
として
50mm×60mmの
メッシュ状の銅板を、負極
106
として
として50mm×60mmの
メッシュ状のアルミニウム板を挿入し
た。正極104と負極106は、互いの間隔を10mmとし、
混合物の表面から約10mm露出するように設け
た。
その後、50°Cの恒温室内で6時間静置することで混合物を固化し、全固体電池100を得た。
「【図1】
62
72
0001437371000003.jpg
」
イ 上記アから、次のことがいえる。
(ア)段落【0011】によれば、電解質102、および電解質102に挿入された正極104と負極106を含む全固体電池100が記載されている。
また、段落【0012】によれば、電解質102は、アルカリシリカ溶液とアルミナシリカ粉末によって形成されるジオポリマーを含む。
(イ)段落【0036】によれば、実施例として、シリカゲルとアルミナを主成分とするフライアッシュに、シリカゲル、酸化カリウム、および蒸留水を混合して得られたケイ酸カリウム溶液を加えて混合し、さらにカーボンナノチューブを加えて混合物を得て、得られた混合物を50mm×50mm×50mmのプラスチック製角柱容器に注ぎ、容器内の混合物に正極としてメッシュ状の銅板を、負極としてメッシュ状のアルミニウム板を挿入し、混合物の表面から約10mm露出するように設け、その後、50°Cの恒温室内で6時間静置することで混合物を固化して得られる全固体電池100が記載されている。
ウ 上記イによれば、先願明細書等には、実施例に基づく次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。
「アルカリシリカ溶液とアルミナシリカ粉末によって形成されるジオポリマーを含む電解質と、電解質に挿入された正極と負極を含む全固体電池であって、
シリカゲルとアルミナを主成分とするフライアッシュに、シリカゲル、酸化カリウム、および蒸留水を混合して得られたケイ酸カリウム溶液を加えて混合し、さらにカーボンナノチューブを加えて混合物を得て、得られた混合物を50mm×50mm×50mmのプラスチック製角柱容器に注ぎ、容器内の混合物に正極としてメッシュ状の銅板を、負極としてメッシュ状のアルミニウム板を挿入し、混合物の表面から約10mm露出するように設け、その後、50°Cの恒温室内で6時間静置することで混合物を固化して得られる、
全固体電池。」
(1)甲第6号証について
ア 異議申立人による意見書と共に提出された甲第6号証(特許第6658956号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0025】
図1に示すように、
蓄電装置としての二次電池10は、直方体状のケース11を備え
、このケース11内には電極組立体23が収容されている。
ケース11は、有底の直方体状のケース本体12と、矩形平板状の蓋部材13とを有し
、蓋部材13とケース本体12はレーザ溶接によって溶接される。ケース本体12は、矩形状の底壁12aと、底壁12aの対向する一対の短側縁から立設された側壁としての短側壁12bと、底壁12aの対向する一対の長側縁から立設された長側壁12cとを備える。なお、ケース11の内底面12eは、ケース本体12の底壁12aによって構成されている。以下、内底面12eに直交する直線の延びる方向をケース11の深さ方向とする。
ケース本体12は、
電極組立体23を挿入するための
開口部12dを備え
る。ケース本体12と蓋部材13は、何れも金属製(例えば、ステンレスやアルミニウム)であり、
蓋部材13は開口部12dを閉塞する。
ケース本体12の内面は全体に亘って絶縁部材Zによって覆われている。」
「【0036】
図1又は図3に示すように、電極組立体23は、袋状セパレータ21の側端縁21c、及び負極電極24の側端縁24cにより構成された一対の側面38を有する。一対の側面38は、電極組立体23において、底面37に繋がる面のうち、積層方向両端の偏平面44に直交する(交差する)2つの面である。
【0037】
各正極タブ17が重なっている箇所を溶接することによって各正極タブ17が電気的に接続されるとともに、正極タブ17からなるタブ群18に正極導電部材61が接続されている。電極組立体23を積層方向に見て正極導電部材61はクランク状である。正極導電部材61は、正極タブ17からなるタブ群18に接合されたタブ側接続部61aと、タブ側接続部61aよりも電極組立体23のタブ側端面36寄りの端子接続部61bと、タブ側接続部61aと端子接続部61bを繋ぐ連結部61cとを備える。端子接続部61bには、電極組立体23から電気を取り出すための正極端子51が接続されている。
【0038 】
同様に、各負極タブ27が重なっている箇所を溶接することによって各負極タブ27が電気的に接続されるとともに、負極タブ27からなるタブ群18に負極導電部材62が接続されている。電極組立体23を積層方向に見て負極導電部材62はクランク状である。負極導電部材62は、負極タブ27からなるタブ群18に接合されたタブ側接続部62aと、タブ側接続部62aよりも電極組立体23のタブ側端面36寄りの端子接続部62bと、タブ側接続部62aと端子接続部62bを繋ぐ連結部62cとを備える。端子接続部62bには、電極組立体23から電気を取り出すための負極端子52が接続されている。
【0039】
ここで、二次電池10の製造方法について説明する。 まず、上述した電極組立体23を製造する。次に、正極導電部材61の端子接続部61bに正極端子51を溶接する。また、負極導電部材62の端子接続部62bに負極端子52を溶接する。次に、
正極端子51の雄ねじと負極端子52の雄ねじを蓋部材13を貫通させ、正極の雄ねじにナット51aを螺合し、負極の雄ねじにナット52aを螺合
する。すると、
蓋部材13に正極端子51及び負極端子52が締結
される。その結果、蓋部材13と、正極端子51と、負極端子52と、正極導電部材61と、負極導電部材62とが一体化されて蓋端子組立体53が構成される。」
「【図1】
108
72
0001437371000004.jpg
」
「【図3】
58
80
0001437371000005.jpg
」
イ 上記アによれば、甲第6号証には、次の技術(以下、「甲第6号証に記載された技術」という。)が記載されている。
「有底の直方体状のケース本体12と、ケース本体12の開口部12dを閉塞する矩形平板状の蓋部材13とを有する直方体状のケース11を備えた二次電池10において、正極端子51の雄ねじと負極端子52の雄ねじを蓋部材13に貫通させ、正極の雄ねじにナット51aを螺合し、負極の雄ねじにナット52aを螺合し、蓋部材13に正極端子51及び負極端子52を締結する技術。」
(5)甲第7号証について
ア 異議申立人による意見書と共に提出された甲第7号証(台湾実用新案公告M368197号)には、図面とともに以下の事項が記載されている。また、翻訳は、異議申立人が提出した訳文に基づくものである。
「
7
100
0001437371000006.jpg
」(3頁3~5行)
(訳:
【発明の属する技術分野】
本考案は電池に関し、特に、状況に応じて直列または並列に接続する電池芯の個数を増減でき、さらには損傷した電池芯を交換できることにより、使用上の実用性および保守時の利便性を備える電池構造の改良に関する。)
「
21
101
0001437371000007.jpg
」(3頁6~14行)
(訳:
【背景技術】
様々な電気機器に電力を供給し、人力の代替を図ることは、人々に多くの利便性をもたらす。特に、電動モビリティスクーターの開発・生産は、移動に障害のあるユーザーが容易に目的地に到着することを可能にする。さらに、電動モビリティスクーターは電気を使用し、汚染や騒音を発生させないため、その普及が進んでいる。
このような
移動型の電子製品に搭載されるバッテリー
は、通常、電子製品を駆動するのに十分な電圧または電流を供給するために、
複数のバッテリーセルを直列または並列に接続する
必要がある。
しかしながら、従来のバッテリーは、導電性金属材料を用いた高圧冷間圧接によって複数のバッテリーセルを直列または並列に接続している。そのため、一つのバッテリーセルが故障した場合、そのバッテリーセルを個別に交換することができず、修理が不可能なだけでなく、損傷していないバッテリーセルを廃棄することで資源の浪費をも生じさせる。
このように、損傷したバッテリーセルを個別に交換できないこと、そしてそれが修理不可能なこと、そして資源の浪費につながることなど、既存のバッテリーの欠点をどのように改善するかが、本発明が解決しようとする課題である。)
「
43
153
0001437371000008.jpg
」(3頁29行~下から12行)
(訳:
【実施形態】
本考案の技術手段、創作目的および達成される効果を、より完全かつ明確に開示するため、以下に詳細に説明する。併せて提示された図面および部品符号を参照されたい。
第一図および第二図を参照されたい。これらは本考案の電池の立体分解図および立体組立図を示すものである。該
電池は、少なくとも一つの電池芯(1)と、二つの接頭座(2)、(3)とを備える。
そのうち【以下、第三図および第四図も併せて参照されたい】、
該電池芯(1)の二つの面にはそれぞれ第一嵌接部(11)および第二嵌接部(12)が設けられ、さらに第一嵌接部(11)および第二嵌接部(12)上には、それぞれ極性の異なる電極(13)、(14)が設けられており、これにより複数の電池芯(1)を直列に連接して設けることが可能
となっている。一方の接頭座(2)の一面には少なくとも一つの第三嵌接部(21)が設けられ、他方の接頭座(3)の一面には少なくとも一つの第四嵌接部(31)が設けられ、そして第三嵌接部(21)および第四嵌接部(31)上には、それぞれ極性の異なる電極(22)、(32)が設けられている。該一方の接頭座(2)の第三嵌接部(21)は電池芯(1)の第一嵌接部(11)と嵌接し、その電極(22)と電極(13)とが互いに接触する。また、他方の接頭座(3)の第四嵌接部(31)は電池芯(1)の第二嵌接部(12)と嵌接し、電極(32)と電極(14)とが互いに接触する。これによって【さらに第五図および第六図も併せて参照されたい】、状況に応じて、直列または並列に接続する電池芯(1)の個数を増減することができ、さらには、特定の故障した電池芯(1)を交換することも可能となる。
ここで、さらに、前記第一嵌接部(11)、第二嵌接部(12)および第三嵌接部(21)、第四嵌接部(31)は、いずれもダブテイル形状の凸部または凹部を呈し、これにより互いに接続される電池芯(1)間、および電池芯(1)と二つの接頭座(2)、(3)との間に、横方向の位置決め効果が付与される。)
「第一図
57
71
0001437371000009.jpg
」
「第三図
61
63
0001437371000010.jpg
」
イ 上記アによれば、甲第7号証には、次の技術(以下、「甲第7号証に記載された技術」という。)が記載されている。
「少なくとも一つの電池芯(1)と、二つの接頭座(2)、(3)とを備える電池において、該電池芯(1)の二つの面にはそれぞれ第一嵌接部(11)および第二嵌接部(12)が設けられ、さらに第一嵌接部(11)および第二嵌接部(12)上には、それぞれ極性の異なる電極(13)、(14)が設けられており、これにより複数の電池芯(1)を直列に連接して設けることを可能とする技術。」
(1)取消理由1(新規性)について
取消理由1は、本件発明1が引用発明に対して新規性を有するか否かであるところ、異議申立人が主張する申立理由1も同旨である。
ア 本件発明1と引用発明との対比
(ア)上記2(1)ア(ア)によれば、「KGP」とは「カリウムジオポリマー」であって、ジオポリマー組成物といえるから、引用発明の「アルカリ活性化剤にフライアッシュを混合して調製され」る「KGPマトリックス」は、本件発明1の「ジオポリマー組成物」に相当する。
そして、引用発明では、「KGPマトリックス」が「室温で硬化させた後、50°Cのオープンで24時間硬化」されたものは、「KGPマトリックス」の硬化体であるといえる。
そうすると、引用発明における、「KGPマトリックス」の硬化体は、本件発明1の「ジオポリマー組成物の硬化体」に相当する。
(イ)引用発明では「フライアッシュ粉末をアルカリ水溶液に加え混合した後、KGPペーストをプラスチック型に流し込み、KGPキャパシタを形成し、2つのスチールメッシュ電極をKGPキャパシタに挿入し、」「50°Cのオープンで24時間硬化させ」ることから、上記(ア)も踏まえれば、「2つのスチールメッシュ電極である正極と負極」は「KGPマトリックス」の硬化体に「挿入」されて固定されているといえる。
してみると、引用発明における、「KGPマトリックス」の硬化体に「挿入」された「2つのスチールメッシュ電極である正極と負極」は、本件発明1の「硬化体に植設された正負一対の電極」に相当する。
(ウ)引用発明の「KGPキャパシタ」は、「蓄電体」の一種であるから、上記(ア)、(イ)も踏まえれば、引用発明において「KGPマトリックス」の硬化体と、該「KGPマトリックス」の硬化体に「挿入」された「2つの」「スチールメッシュ電極である正極と負極」とを含む「KGPキャパシタ」は、本件発明1の「ジオポリマー組成物の硬化体と、前記硬化体に植設された正負一対の電極と、を備える蓄電体」に相当する。
(エ)引用発明の「KGPマトリックスは、アルカリ活性化剤にフライアッシュを混合して調製され、アルカリ活性剤はケイ酸カリウム水溶液であ」ることから、「KGPマトリックス」は「アルカリ活性剤」である「ケイ酸カリウム水溶液」を含むといえ、本件発明1の「ジオポリマー組成物は、ケイ酸アルカリ水溶液を含有していること」に相当する。
(オ)引用発明では「50mm(幅)×50mm(長さ)×10mm(厚さ)のKGPキャパシタ」が形成されることから、「KGPマトリックス」の「硬化」物は直方体であるといえる。
よって、引用発明における「KGPマトリックス」の硬化体が直方体であることは、本件発明1の「前記硬化体は、直方体であ」ることに相当する。
(カ)上記(ア)~(オ)によれば、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「ジオポリマー組成物の硬化体と、前記硬化体に植設された正負一対の電極と、を備える蓄電体であって、
前記ジオポリマー組成物は、ケイ酸アルカリ水溶液を含有しており、
前記硬化体は、直方体である、蓄電体。」
(相違点1)
本件発明1は、「当該直方体の稜線を介して連続する二つの側面に、それぞれ少なくとも一対の前記電極が設けられている」のに対し、引用発明は「2つのスチールメッシュ電極」が設けられているといえるものの、その配置位置が特定されていない点。
したがって、本件発明1と引用発明とは、上記相違点1を有するものであるから、本件発明1は、引用発明ではない。
イ まとめ
以上のとおり、本件発明1に係る発明は、引用文献1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
(2)取消理由2(進歩性)について
ア 本件発明1について
請求項2、3、6は、請求項1を引用するものであるから、事案に鑑みて本件発明1の進歩性について検討する。
(ア)本件発明1と引用発明との対比
上記(1)ア(カ)のとおり、本件発明1と引用発明とは上記相違点1において相違する。
(イ)相違点に対する判断
a 引用発明において「50mm(幅)×50mm(長さ)×10mm(厚さ)のKGPキャパシタ」が形成され、また、引用文献1(上記2(1)ア(ウ)を参照。)には、「KGPキャパシタはパネルの形で製造でき、ビルや橋などの構造物の不可欠な部分となり得る」との記載がある。
しかしながら、引用文献1には、KGPキャパシタをパネルの形とした場合の2つのスチールメッシュ電極の配置位置について一切記載されていない。
b また、引用文献2(上記2(2)を参照。)には、ジオポリマーに係る技術(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)は記載されているものの、蓄電体に係る記載や示唆は一切ない。
c さらに、甲第6号証に記載された技術(上記2(4)を参照。)及び甲第7号証に記載された技術(上記2(5)を参照)をみても「当該直方体の稜線を介して連続する二つの側面に、それぞれ少なくとも一対の前記電極が設けられている」構成の記載や示唆はない。
d そうすると、仮に、引用発明に、引用文献2に記載された技術、甲第6号証に記載された技術、及び、甲第7号証に記載された技術を適用したとしても、上記相違点1に係る「当該直方体の稜線を介して連続する二つの側面に、それぞれ少なくとも一対の前記電極が設けられている」との構成を導き出すことはできない。
e 以上によれば、引用発明において、上記相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明1は、引用発明、引用文献2に記載された技術、甲第6号証に記載された技術及び甲第7号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2、3、6について
請求項2、3、6は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2、3、6は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アと同様の理由により、本件発明2、3、6は、引用発明、引用文献2に記載された技術、甲第6号証に記載された技術、及び、甲第7号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ まとめ
以上のとおり、本件発明2、3、6は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術、甲第6号証に記載された技術、及び、甲第7号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許の請求項2、3、6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(3)取消理由3(拡大先願)について
ア 本件発明1と先願発明との対比
(ア)先願発明の「ジオポリマー」は「アルカリシリカ溶液とアルミナシリカ粉末によって形成される」ところ、「シリカゲルとアルミナを主成分とするフライアッシュ」は「アルミナシリカ粉末」といえ、「シリカゲル、酸化カリウム、および蒸留水を混合して得られたケイ酸カリウム溶液」は「アルカリシリカ溶液」といえるから、「シリカゲルとアルミナを主成分とするフライアッシュに、シリカゲル、酸化カリウム、および蒸留水を混合して得られたケイ酸カリウム溶液を加えて混合」して得られる「混合物」は、「ジオポリマー組成物といえ、本件発明の「ジオポリマー組成物」に相当する。
そして、先願発明の「混合物」は「固化」されるから、該「混合物」の「固化」物は、本件発明1の「ジオポリマー組成物の硬化体」に相当する。
(イ)先願発明の「正極104」及び「負極106」は、「混合物」に「挿入」され「混合物の表面から約10mm露出するように設け」られているところ、上記(ア)も踏まえれば、本件発明1の「硬化体に植設された正負一対の電極」に相当する。
(ウ)先願発明の「全固体電池」は蓄電体の一種であるから、本件発明1の「蓄電体」といえる。
そうすると、上記(ア)、(イ)も踏まえれば、先願発明において、「シリカゲルとアルミナを主成分とするフライアッシュに、シリカゲル、酸化カリウム、および蒸留水を混合して得られたケイ酸カリウム溶液を加えて混合」して得られる「混合物」の「固化」物と、「混合物の表面から約10mm露出するように設け」られる「正極104」及び「負極106」とを備える「全固体電池」は、本件発明1の「ジオポリマー組成物の硬化体と、前記硬化体に植設された正負一対の電極と、を備える蓄電体」に相当する。
(エ)先願明細書等(段落【0022】を参照。)によれば、先願発明の「蒸留水を混合して得られたケイ酸カリウム溶液」は、「ケイ酸アルカリ水溶液」といえる。
そうすると、先願発明の「混合物」が「蒸留水を混合して得られたケイ酸カリウム溶液」を含むことは、本件発明1の「ジオポリマー組成物は、ケイ酸アルカリ水溶液を含有している」ことに相当する。
(オ)先願発明における「混合物」は「50mm×50mm×50mmのプラスチック製角柱容器に注」がれ「固化」されることから、「混合物」の「固化」物は立方体であるといえる。
そうすると、上記(ア)を踏まえれば、先願発明の「混合物」の「固化」物が立方体であることは、本件発明1の「硬化体は、直方体であ」ることに相当する。
上記(ア)ないし(オ)によれば、本件発明1と先願発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「ジオポリマー組成物の硬化体と、前記硬化体に植設された正負一対の電極と、を備える蓄電体であって、
前記ジオポリマー組成物は、ケイ酸アルカリ水溶液を含有しており、
前記硬化体は、直方体である、蓄電体。」
(相違点1)
本件発明1は「直方体の稜線を介して連続する二つの側面に、 それぞれ少なくとも一対の前記電極が設けられている」のに対し、先願発明の「正極」及び「負極」は「混合物の表面」に設けられているものの、「直方体の稜線を介して連続する二つの側面に、それぞれ少なくとも一対の前記電極が設けられている」とはいえない点。。
したがって、本件発明1と先願発明とは、上記相違点1を有するから、本件発明1と先願発明と同一ではない。
イ まとめ
以上のとおり、本件発明1は、先願明細書等に記載された発明と同一ではないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。
(1)申立理由2(進歩性)
請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証及び甲第4号証に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、4、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由3(拡大先願)
請求項2、3、6に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第5号証の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項2、3、6に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
(3)提出された証拠
甲第1号証(第4の1の「引用文献1」である。)
甲第2号証(第4の1の「引用文献2」である。)
甲第3号証:特開2016-98490号公報
甲第4号証:特開2007-66855号公報
甲第5号証(第4の1の「引用文献3」である。)
(1)甲第1号証
甲第1号証に記載された事項は、上記第4の2(1)アのとおりである。
そして、甲第1号証には、上記第4の2(1)ウで「引用発明」として認定した発明(以下、便宜のため、「甲1発明」という。)が記載されている。
(2)甲第2号証
甲第2号証に記載された事項は、上記第4の2(2)のとおりである。
(3)甲第3号証
甲第3号証(特開2016-98490号公報)には、図面ともに以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、主として鋼桁とコンクリート床版とからなる高架道路におけるコンクリート床版部分を構築又は架け替える際に、幅員方向で隣り合うプレキャストコンクリート版を互いに接合させてコンクリート床版を構築する高架道路用コンクリート床版の構築方法に関する。」
「【0039】
図1は本発明方法により構築された高架道路用PC床版を示し、このPC床版20は、コンクリート床版の道路幅員方向を一次施工部20aと二次施工部20bとに分割して区画し、一次施工部20aに設置した一次施工部用プレキャストコンクリート版23に二次施工部20b用プレキャストコンクリート版43を互いに突き合わせて接合させ、両プレキャストコンクリート版23,43に連続させてPC緊張材33を挿通させ、PC緊張材33を緊張することにより両プレキャストコンクリート版23,43にポストテンション方式によりプレストレスが付与されて構成され、そのPC床版全体が複数の鋼桁21,21...に支持されている。尚、PC緊張材33には、被覆鋼撚線等の外周が樹脂系被覆材によって被覆された被覆線材を使用する。
・・・(中略)・・・。
【0043】
また、一次施工部用プレキャストコンクリート版23には、図3(c)に示すように、長手方向、即ち道路幅方向に貫通した複数のPC緊張材挿通孔26、26...が形成されており、各PC緊張材挿通孔26,26の二次施工部20bとは反対側の端部にPC緊張材端部定着具27が埋設されている。尚、PC緊張材挿通孔26は、樹脂系材料からなるシースを埋設することにより形成されている。」
「【0051】
一方、一次施工部用プレキャストコンクリート版23及び二次施工部用プレキャストコンクリート版43の接合端部には、互いに位置を合わせて複数の雌側ガイド部材53が道路長さ方向に間隔を置いて埋設され、接合端面を成す接合凸部50の頂面又は接合凹部51の底面に開口してガイド穴部54が形成され、一方のガイド穴部54に棒状の雄側ガイド部材55を挿入することで一方のプレキャストコンクリート版43の接合端面からガイドピン部52を突出させた状態とし、それを接合する際に他方のガイド穴部54に挿入することで接合凹部51内に接合凸部50が案内され、両プレキャストコンクリート版23,43が互いに所望の位置に誘導されるようになっている。」
「【0070】
その際、図9に示すように、ガイドピン部52を二次施工部用プレキャストコンクリート版43の接合端面より突出させておき、それを一次施工部用プレキャストコンクリート版23の接合端面に開口したガイド穴部54に挿入することにより、ガイドピン部52のテーパ部55aの外側面がガイド穴部54の内周面に沿ってガイドピン部52の中心軸とガイド穴部54の中心軸とが一致する方向に案内され、それに伴い接合凸部50が接合凹部51内に案内される。」
「【図9】
113
59
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」
(4)甲第4号証
甲第4号証(特開2016-98490号公報)には、図面ともに以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、電源回路の中途に電気的に介挿される一対の接触子と一対の端子とを接続・乖離する電源の安全プラグ装置に関する。」
「【0010】
図1において、符号50は、ハイブリッド自動車や電気自動車等に搭載される電源装置の安全プラグであり、電源回路の中途を電気的に分断する位置に介挿される。電源装置は、例えば、リチウムイオン電池や電気二重層キャパシタ等の蓄電体セル或いは燃料電池セル等の発電体セルを複数個接続してモジュール化し、更に複数組のモジュールを接続してパッケージ化した直流高電圧電源として構成される。」
(5)甲第5号証
甲第5号証の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「甲5先願明細書等」という。)に記載された事項は、上記第4の2(3)アのとおりである。
そして、甲5先願明細書等には、上記第4の2(3)ウで「先願発明」として認定した発明(以下、便宜のため、「甲5先願発明」という。)が記載されている。
(1)申立理由2(進歩性)について
ア 本件発明1について
上記第4の3(2)アのとおり、本件発明1は、引用発明(甲1発明)、引用文献2に記載された技術、甲第6号証に記載された技術及び甲第7号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明4について
(ア)本件発明4と甲1発明との対比
本件発明4と甲1発明とを対比すると、上記第4の3(1)アにおいて検討した点も踏まえれば、本件発明4と甲1発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点2)
ジオポリマー組成物に関し、本件発明4は「フライアッシュおよび高炉スラグからなる活性粉体」を含有し、「前記フライアッシュの含有量と前記高炉スラグの含有量との質量比が1:0.04~0.06である」のに対し、甲1発明は「高炉スラグ」を含有していない点。
(イ)相違点に対する判断
甲第2号証(第4の2(2)、特に「表-2」を参照。)によれば、アルカリ溶液:235kg/m
3
、フライアッシュ:457kg/m
3
、高炉スラグ微粉末:65kg/m
3
を含有するジオポリマーの配合技術(以下、「甲第2号証に記載された技術」という。)が記載されているものの、フライアッシュの含有量と高炉スラグの含有量との質量比は、457:65≒1:0.14であり、上記相違点2に係る「質量比」である「1:0.04~0.06」の範囲には含まれない。
そうすると、仮に、甲1発明に甲第2号証に記載された技術を適用したとしても、上記相違点2に係る「前記フライアッシュの含有量と前記高炉スラグの含有量との質量比が1:0.04~0.06である」との構成を導き出すことはできない。
よって、甲1発明において、上記相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明4は、甲1発明及び甲第2号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明5について
(ア)本件発明5と甲1発明との対比
本件発明5と甲1発明とを対比すると、上記第4の3(1)アにおいて検討した点も踏まえれば、本件発明5と甲1発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点3)
本件発明5は、「前記硬化体の前記電極が植設された面と対向する面には、前記電極に接続する他の電極を挿入可能な凹部が形成されている」のに対し、甲1発明は「凹部」について特定されていない点。
(イ)相違点に対する判断
a 上記第4の3(2)アのとおり、甲第1号証には、KGPキャパシタをパネルの形とした場合の2つのスチールメッシュ電極配置位置について一切記載されていないし、複数のKGPキャパシタを電気的に接続する記載や示唆もない。
b そして、甲第3号証(上記2の(3)を参照。)には、蓄電体に係る記載や示唆は一切なく、甲第4号証(上記2の(4)を参照。)をみても、蓄電体に係る記載や示唆は一切ない。
c そうすると、仮に、甲1発明に、甲第3号証や甲第4号証に記載された事項を適用したとしても、上記相違点3に係る「前記硬化体の前記電極が植設された面と対向する面には、前記電極に接続する他の電極を挿入可能な凹部が形成されている」との構成を導き出すことはできない。
d 以上によれば、甲1発明において、上記相違点3に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明5は、甲1発明、甲第3号証及び甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)異議申立人の主張について
a 異議申立人は、異議申立書において、概略次のように主張する。
二つの電気部品を繋げて電気的接続を確保するための機構として、片方の電気部品が有する突出した電極を、他方の電気部品に貫設されている対応する孔(凹部)に挿入する構造は、本件発明の出願前において公知のものである。例えばコンセントプラグの突出した一対の金属極部分を、コンセントに設けられている二つの差し込み口に挿入して電気的接続を確保する構造もその一例である。
そして、甲第3号証に示すように、プレキャストコンクリート版のようなプロック状の建材を複数連設する際に、一方の建材の接合端面に形成された突出部を、もう一方の建材の接合端面に形成された、突出部に対応する形状の孔部に挿入して複数の建材を連設する構造は、一般的に行われていた公知技術であることが明らかである。
すると、複数の蓄電体を接続するために、蓄電体の電極が設けられている面に対向する面に凹部を設け、別の蓄電体の電極を挿入するように構成することは、本件発明1に公知技術を組み合わせたものにすぎないと言うことができる。(20頁8~21行)
b また、異議申立人は、令和7年10月28日提出の意見書において、概略次のように主張する。
先に提出した甲第1号証には、「ジオポリマー組成物の硬化体と、前記硬化体に植設された正負一対の電極と、を備える蓄電体であって、前記ジオポリマー組成物は、ケイ酸アルカリ水溶液を含有」するもの(取消理由通知書における引用発明1)が開示されている。
また、複数の蓄電体を状況に応じて直列または並列に連結すること、連結したい方向に一対の電極を設けること、電極の設けられている面と対向する面に電極を挿入可能な凹部を形成することは、甲第7号証に開示されているように周知技術である。
よって、本件発明5は、特許法第113条第2号(同法第29条)に該当するので、取り消されるべきものである。(8頁下から2行~9頁8行)
c 異議申立人の上記主張について検討する。
(a)主張(a)について
異議申立人が主張する、「コンセントプラグ」と「コンセント」は、電気装置に電源を供給するための端子構造に過ぎないから、甲第1号証に接した当業者は、このような端子構造を、「KGPキャパシタ」の「2つのスチールメッシュ電極」に採用することを容易に想到し得えない。
よって、上記主張(a)は採用できない。
(b)主張(b)について
甲第7号証(第4の2(5)を参照。)には、移動型の電子製品に搭載されるバッテリーにおいて複数のバッテリーセルを直列または並列に接続することが記載されているところ、技術常識も踏まえれば、当該バッテリーセルと甲1発明の「KGPキャパシタ」とは蓄電体としての構造が全く異なるものであり、さらに、上記第4の2(1)(ウ)によれば、甲第1号証に「KGPキャパシタはパネルの形で製造でき、ビルや橋などの構造物の不可欠な部分となり得る」との記載があることから、両者に係るそれぞれの技術分野も異なるものである。
そして、甲1発明に、甲第7号証に記載された技術をあえて採用する格別な理由もないことから、甲第1号証に接した当業者は、甲1発明に甲第7号証に記載された技術を採用することを容易に想到し得ない。
よって、異議申立人の上記主張(b)は採用できない。
エ まとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基づいて、本件発明5は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証及び甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許の請求項1、4、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(2)申立理由3(拡大先願)について
請求項2、3、6は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2、3、6は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記第4の3(3)と同様の理由により、本件発明2、3、6と甲5先願発明とは同一ではない。
よって、請求項2、3、6に係る発明は、甲第5号証の先願明細書等に記載された発明と同一ではないから、本件特許の請求項2、3、6に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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