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Trademark Appeal Case

特許異議申立てにおける訂正の適否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025700697
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7608037号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第7608037号の請求項1ないし4及び6に係る特許を維持する。
特許第7608037号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7608037号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成30年7月18日の出願であって、令和6年12月20日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、令和7年1月6日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、令和7年7月7日に特許異議申立人 猪狩 充(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年9月10日付けで申立人に審尋がなされ、同年同月26日に申立人より回答書が提出され、同年10月24日付けで取消理由が通知され、同年12月23日に特許権者 エスビー食品株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされるとともに意見書が提出され、令和8年1月7日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年2月12日に申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断

1 請求の趣旨

本件訂正請求の趣旨は、「特許第7608037号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」というものである。

2 訂正の内容等

本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に

「前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%である、」

と記載されているのを、

「前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%であ

り、

更に、糖アルコールを含む、

に訂正する。(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~4及び6についても同様に訂正する。)

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項6に「請求項1から5のいずれか一項に記載の調味組成物。」と記載されているのを、「請求項1から

4

のいずれか一項に記載の調味組成物。」に訂正する。

(4)一群の請求項について

訂正前の請求項1~6について、請求項2~6は請求項1を直接または間接的に引用して特定するものであるから、訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1~6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

訂正事項1に係る請求項1の訂正は、調味組成物について、「更に、糖アルコールを含む」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項5及び本件特許の明細書の【0031】、【0032】、【0050】~【0055】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~4及び6についても同様である。

(2)訂正事項2について

訂正事項2に係る請求項5の訂正は、請求項5を削除するというものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、訂正事項2に係る請求項5の訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

(3)訂正事項3について

訂正事項3に係る請求項6の訂正は、請求項5が削除されたことに伴い、引用先の請求項から請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、訂正事項3に係る請求項6の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

4 独立特許要件について

本件においては、訂正前のすべての請求項1~6に対して特許異議の申立てがされているので、上記訂正事項に係る訂正については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

5 訂正についてのまとめ

以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明

本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明6」という。また、総称して「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】

細分化された植物由来原料と、加工デンプンとを含み、

前記加工デンプンは、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、

25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、

前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり、

前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%であり、

更に、糖アルコールを含む、

調味組成物。

【請求項2】

他の成分との混合前の前記加工デンプンにおいて、

目開き300μmメッシュオンとなる加工デンプンが、全加工デンプンの50重量%以上である、

請求項1に記載の調味組成物。

【請求項3】

前記加工デンプンは、リン酸架橋デンプンである、

請求項1又は2に記載の調味組成物。

【請求項4】

前記加工デンプンとは異なる増粘物質を少なくとも一種含む、

請求項1から3のいずれか一項に記載の調味組成物。

【請求項5】(削除)

【請求項6】

前記植物由来原料は、山葵、生姜、葫、ホースラディッシュ、ウコン、コショウ、唐辛子、山椒、陳皮、柚子、梅、リンゴ、ニラ、バジル、パクチー、青じそ、赤じそ、キャベツ、ネギ、ほうれん草、大根、人参、山芋、オクラ、モロヘイヤ、ユリ根、茗荷、蕪及び胡瓜からなる群から選択される少なくとも一種である、

請求項1から4のいずれか一項に記載の調味組成物。」

第4 特許異議申立理由の要旨

申立人が申し立てた請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

1 申立理由1(甲第2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)

本件特許の請求項1~4及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

2 申立理由2(甲第4号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)

本件特許の請求項1~4及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

3 申立理由3(甲第5号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)

本件特許の請求項1~4及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲第5号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

4 申立理由4(甲第6号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)

本件特許の請求項1~4及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲第6号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

5 申立理由5(甲第7号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)

本件特許の請求項1、3、4及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1及び3~6に係る発明は、甲第7号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

6 申立理由6(甲第8号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)

本件特許の請求項1、3、4及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第8号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1、3及び4~6に係る発明は、甲第8号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

7 申立理由7(甲第9号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)

本件特許の請求項1、3及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第9号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1、3、5及び6に係る発明は、甲第9号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

8 申立理由8(甲第12号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)

本件特許の請求項1及び3~6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第12号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1及び3~6に係る発明は、甲第12号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

9 申立理由9(甲第2号証~甲第12号証を主たる証拠とする進歩性)

本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証~甲第12号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

10 申立理由10(明確性要件)

本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由10の具体的理由は概略以下のとおりである。

(1)本件発明は、加工デンプンを含み、「前記加エデンプンは、水不溶性又は難溶性」(請求項1)である。これについて、本件明細書は、「調味組成物内の水分に溶解しない(又は水分に溶解するとしても、溶解しないと同視し得る程、溶解度が少ない)」(段落0028)と記載し、水不溶性又は難溶性の「条件を満たすものであれば、特に限定されるものではない」(段落0026)として、「アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、オクテニルコハク酸デンプン、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、又はリン酸架橋デンプン」を例示している(段落0026)。実施例において実際に使用された加工デンプンについても「リン酸架橋デンプン」としか記載されていない。

(2)第1に、本件特許明細書は「難溶性」について「水分に溶解するとしても、溶解しないと同視し得る程、溶解度が少ない」としているが、「溶解しないと同視し得る程」がどの程度なのか、「溶解度が少ない」とは何を基準に少ないか多いかを判断するのか、何ら説明も特定もされておらず、不明確である。

(3)第2に、加工デンプンの溶解性が温度の影響を受けることは本件技術分野における技術常識であるところ、本件発明に用いられる加工デンプンは、あらゆる温度等条件下でも「水分に溶解しない」加工デンプンであるのか、特定の温度等条件下において「水分に溶解しない」加工デンプンであるのか、いずれであるかが明確ではない。

具体的には、段落0026に記載の「リン酸架橋デンプン」として、「松谷ハイビスカス」、「SMS707」が挙げられるが、当該加工デンプンは、冷水を加えてかきまぜても溶解しないが、70°Cを超える温度では全体が糊状の透明な液体になり溶解する。このように、同じリン酸架橋デンプンが、冷水では溶解せず温水又は熱水では溶解する場合があることは技術常識である。同様に、「ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン」に該当する「パインエース1」「ファリネックスLCF」、「アセチル化リン酸架橋デンプン」に該当する「WMS」も温度に依存して溶解性が変化する。

そうすると、如何なる温度条件の下で、加工デンプンが「水不溶性又は難溶性」であると判断するのかを特定していない本件特許請求の範囲の記載は不明確である。

11 申立理由11(サポート要件)

本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由11の具体的理由は概略以下のとおりである。

(1)本件発明の解決すべき課題は、(1)「加工デンプンを用いたとしても、例えば、液体組成物に添加された際の分散性の向上を図ると共に、含有される植物由来原料の風味食感(粒感)を維持可能な調味組成物を提供すること」であり、(2)「それに加え、相応の粘性を有することにより、内部での加工デンプンの均一分散を維持できる調味組成物の提供」をすることである(段落0009)。

(2)本件明細書記載の実施例においては、(1)の「液体組成物に添加された際」の分散性が評価されたと認められる(段落0056)。

ア.本件発明は、任意の「細分化された植物由来原料」を「23.8%以上」、最大99.3重量%まで含有してよいことを記載している。

イ.その一方で、本件明細書の実施例は、細分化された植物由来原料を70.90重量%含む試料(生姜原料を用いた実施例8)まで評価を行ったが、更に多くの植物由来原料を含む場合の分散性については検討していない。

ウ.また、生姜原料とは異なる植物由来原料を含む場合、加工デンプンの含有量を0.7重量%から5.6重量%の間に調整したとしても、含有量70.70重量%を大きく下回る場合で「多少分散した(△)」との評価しか得られなかった例が複数ある(実施例12、13,19、20、23、24、27、30、31)。

エ.そうすると、任意の植物由来原料について、加工デンプンの含有量を0.7重量%から5.6重量%の間に調整することで、植物由来原料を23.8重量%以上の任意の量含む場合についても、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できない。

(3)また、本件発明の課題(2)「相応の粘性を有することにより、内部での加工デンプンの均一分散を維持できる調味組成物の提供」については、課題解決手段として調味組成物を「10,000mPa・s以上(B形粘度計ローター回転数1.5rm,25°C)というとろみや粘性を有する」ものとすることを挙げ、その結果「調味組成物内で上記加エデンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供することができる」(段落0011)とされている。

ア.しかしながら、本件明細書には、「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ」たか否かを示す実施例はないし、評価もされていない。実際、本件明細書には、実施例のいずれの組成物についても粘度は記載されていない。したがって、10,000mPa・s以上の粘度を有するものとすることによって、「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供することができる」ことは何ら示されていない。

イ.また、本件明細書は「本実施形態に係る調味組成物の粘度は、全て東機産業株式会社製のB形粘度計TVBl0、ローターNo.M4、ローター回転数1.5rpm、60秒間、25°C条件で測定された粘度を示す。」(甲1段落0034)と記載している。B形粘度計において、粘度に応じて適切な機種、ローター、回転数を設定することは技術常識であるが、特許権者は、本件明細書に記載の発明はすべて、測定上限値が400,000mPa・sであるB形粘度計TVBl0のローターNo.M4を用いて10,000mPa・s以上の任意の粘度を測定したとしている(甲14)。また、TVBl0の取扱説明書(甲16)には「精度の観点から測定上限値の10%以下での測定は、...避けた方が賢明」であるとして、「測定下限値を測定上限値の10%と決め」たこと、「測定下限値以下の時は警告」する旨の記載がある。「ローターNo.M4」を用いて、「回転数1.5rpm」で測定を行う場合、測定上限値の10%である40,000mPa・s以下の粘度は、精度の観点から設定された測定下限値を下回る。すなわち、特許権者は、特許請求の範囲で特定される全範囲にわたって正確に測定できない方法に従って粘度を測定したことになる。そのような粘度の値は信頼性が認められないし、「10,000mPa・s以上」という粘度は測定下限値を大きく下回ることから、発明の課題が解決できることを当業者が認識できる範囲を超えている。

ウ.このことは、特許権者が2022年9月9日に提出した意見書(甲14)において、新たに提出した10の実施例(実施例1,6、8、13、15、20、23、27、30及び34)の粘度のうち、測定値が得られたのは4実施例(実施例8、13、23及び30)しかないことからも裏付けられている。

エ.更に、上記4実施例の粘度の最小値は、24.2Pa・sである(実施例23)。すなわち、10,000mPa・s以上24.2Pa・s未満の粘度を有する調味組成物の実施例は存在しないし、粘度が10,000mPa・s以上であれば「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ」ることについては評価が行われていない。

オ.そうすると、本件明細書の記載に基づいて、「調味組成物の粘度を10,000mPa・s以上」の任意の粘度において、「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供する」という課題を解決できると当業者が認識することはできない。

12 申立理由12(実施可能要件)

本件特許の請求項1~6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

申立理由12の具体的理由は概略以下のとおりである。

(1)本件発明は、任意の「細分化された植物由来原料」を「23.8%以上」、最大99.3重量%まで含有してよいことを記載している。しかしながら、本件明細書記載の実施例は、細分化された植物由来原料を70.90重量%含む試料(生姜原料を用いた実施例8)まで評価を行ったが、更に多くの植物由来原料を含む場合については何ら検討していないし、上記生姜原料とは異なる植物由来原料を含む場合、加工デンプンの含有量を0.7重量%から5.6重量%の間に調整したとしても、植物由来原料によっては、液体組成物に添加された際の分散性(課題(1))が、含有量70.70重量%を大きく下回る場合でも「多少分散した(△)」との評価しか得られなかった例が複数ある。そうすると、当業者であっても、本件特許明細書の記載に基づいて、任意の植物由来原料について、加工デンプンの含有量を0.7重量%から5.6重量%の間に調整することで、植物由来原料を23.8重量%以上の任意の量含む場合についても、どのようにすれば本件発明の課題を解決するものとすることができるのかを理解できない。

(2)また、本件発明の課題(2)「相応の粘性を有することにより、内部での加工デンプンの均一分散を維持できる調味組成物の提供」については、課題解決手段として、本件発明に係る調味組成物を「10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm,25°C)というとろみや粘性を有する」ものとすることを挙げ、その結果「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供することができる」(段落0011)とされている。

ア.しかしながら、本件明細書には、「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ」たか否かを示す実施例はないし、評価もされていない。したがって、当業者であっても、どのようにすれば、10,000mPa・s以上の任意の粘度を有するものであれば、「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供することができる」のか、理解することはできない。

イ.更に、本件明細書には「本実施形態に係る調味組成物の粘度は、全て東機産業株式会社製のB形粘度計TVBl0、ローターNo.M4、ローター回転数1.5rpm、60秒間、25°C条件で測定された粘度を示す。」(甲1段落0034)と記載している。当該測定条件で正確に測定できるのは、40,000mPa・s~400,000mPa・sの範囲の粘度であることから、当業者であっても、測定上限値が400,000mPa・sである方法を用いて、必ずしも400,000mPa・s以下であるとは限らない任意の粘度を、どのように測定すればよいのか理解できないし、測定下限値が40,000mPa・sである測定方法を用いて、測定下限値を大きく下回る10,000mPa・sの粘度を有する調味組成物とするため、どのようにすれば実施できるかを見いだすために、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をすることが必要となる。

13 証拠方法

・甲第1号証:特許第7608037号公報

・甲第2号証:特開2013-39097号公報

・甲第3号証:分析試験成績書、一般財団法人日本食品分析センター、2025年5月27日

・甲第4号証:特開2014-103928号公報

・甲第5号証:特開2014-108085号公報

・甲第6号証:特開2009-207453号公報

・甲第7号証:国際公開第2019/139096号

・甲第8号証:特開2017-99308号公報

・甲第9号証:「トマトパスタソース」、松谷化学工業株式会社、2017年7月6日

・甲第10号証:「パインゴールドVE」、松谷化学工業株式会社、2017年7月6日

・甲第11号証:賀楽二美栄他、「ピュレおよびペーストの食形態の認識調査とその物性」、日摂食嚥下リハ会誌15(3)、304-309頁、2011年

・甲第12号証:特開2003-144062号公報

・甲第13号証:千葉崇他、「食感改良用加工デンプン「テクステイドA」の基本物性とその応用例」,月刊フードケミカル2012年4月号、第28巻、第4号、78-82頁、2012年4月1日

・甲第14号証:特願2018-135336について特許権者が2022年9月9日に提出した意見書

・甲第15号証:東機産業TVB-10形粘度計カタログ、東機産業株式会社

・甲第16号証:東機産業TVB-10形粘度計取扱説明書、東機産業株式会社

・甲第17A号証:甲2、甲4及び甲5再現組成物の調製経緯等、申立人、2025年9月25日

・甲第18A号証:株式会社キタマのコーンアルファYのウェブサイト、インタネット[2025年9月25日検索]<URL:https://www.kitama.co.jp/oishisa-kensaku/product-page.php?id=4301>

・甲第19A号証:特開2002-142705号公報

・甲第17B号証:特開平11-56291号公報

・甲第18B号証:田島 眞、「食品保存の化学-昔からの知恵を現代に生かす-」、化学と教育、第41巻、第2号、89-91頁、1993年

・甲第19B号証:「食品の水分と水分活性」と題するウェブページを印刷した書面、(株)中部衛生検査センター

上記甲第17A号証ないし甲第19A号証は、令和7年9月26日に回答書とともに提出された甲第17号証ないし甲第19号証である。また、上記甲第17B号証ないし甲第19B号証は、令和8年2月12日に意見書とともに提出された甲第17号証ないし甲第19号証である。以下、順に「甲1」~「甲19B」という。

第5 令和7年10月24日付けで通知した取消理由の概要

令和7年10月24日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。

取消理由1(甲第2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)

本件特許の請求項1、2及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1~4及び6に係る発明は、甲2に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

取消理由2(甲第8号証を主たる証拠とする進歩性)

本件特許の請求項1、3、4及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲8に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

第6 当審の判断

当審は、取消理由1及び2並びに申立理由1~12によって、本件発明1~4及び6についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおり。

取消理由1及び2は申立理由1及び6と証拠が重複するため、まとめて判断を示す。

1 取消理由1及び申立理由1(甲2を主たる証拠とする新規性・進歩性)について

(1)甲2の記載事項等

ア 甲2の記載事項

甲2には「具材入り野菜すりつぶし状調味液」に関し、次の記載がある。下線は当審で付したものと、予め付されたものである。

・「【請求項1】

目開き2mmのフルイ上に残る多種類の

具材を、全体に対して30~70%含み、具材を除く液部には少なくとも野菜を含む具材入り野菜すりつぶし状調味液

であって、具材入り野菜すりつぶし状調味液の粘度がボストウィック粘度計による測定値として0~7cmであり、

具材入り野菜すりつぶし状調味液を2倍希釈した場合に希釈前に比べて希釈後の粘度がBH形粘度計の測定値で40~300Pa・s低下する

ことを特徴とする具材入り野菜すりつぶし状調味液。

【請求項2】

前記野菜として、トマト、タマネギ、ニンジンから選ばれる一種又は二種以上を含む

請求項1記載の具材入り野菜すりつぶし状調味液。

【請求項3】

粒子状の冷水膨潤性澱粉が液部に分散している

請求項1又は2に記載の具材入り野菜すりつぶし状調味液。」

・「【0007】

本発明者等は、具材入り調味液の具材の種類や量、液部の状態など種々の条件について鋭意研究を重ねた結果、口に入れると一体感があるが、咀嚼後すぐに一体感がなくなる食感の変化と、更に、その一体感がなくなった後に、複数種類の各具材特有の食感と液部のさらっとした食感がそれぞれ独立して感じることができるようにするならば、従来食したことのない新しいおいしさを楽しむことができることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。」

・「【0010】

以下、本発明の具材入り野菜すりつぶし状調味液を詳述する。なお、

本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する

【0011】

本発明における具材入り野菜すりつぶし状調味液は、目開き2mmのフルイ上に残る具材と、前記具材を除いた液部からなる。本発明における前記具材とは、目開き2mmのフルイ上に残るものをいう。従って、例えば、目開き2mmのフルイを通過する極めて小さな固形物またはペースト状物は、実質的に液部の一部とみなす。

【0012】

本発明の

前記具材としては、例えば、タマネギ、トマト、キュウリ、ナス、ズッキーニ、ニンジン、パプリカ、ダイコン、ネギ、ショウガ、ニンニク、リンゴ、パイナップル、ブドウ、オリーブ、しいたけ、肉類等が挙げられる

。」

・「【0020】

粒子状の冷水膨潤性澱粉とは、冷水(約0~30°Cの水)を加えた時に、冷水を吸収して膨潤し、冷水に分散して粒子状となる澱粉であり

、粒子状となっているかどうかは、冷水に分散させた澱粉を観察することにより確認できる。なお、

前記粒子状の冷水膨潤性澱粉としては、澱粉粒子の外殻膜構造を破壊することなくアルファー化処理した部分アルファー化澱粉やアルファー化処理に加えて架橋処理等を行った澱粉等を挙げることができる。

これらは市販されているので、市販品を用いればよい。前記澱粉粒子としては、まとまり感があるが希釈により流動性が生じてまとまり感がなくなる前記性質に調整しやすいことから、冷水に分散させた際の大きさが0.1~5mmのものを用いることが好ましく、具材入り野菜すりつぶし状調味液に対する配合量としては、乾物換算で好ましくは0.1~15%、より好ましくは0.1~10%である。

【0021】

本発明の具材入り野菜すりつぶし状調味液は、上述した原料の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、調味料に一般的に使用されている原料を適宜配合することができる。このような原料としては、例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油等の油脂、食酢、食塩、砂糖、醤油、味噌、味醂、アミノ酸、核酸系旨味調味料等の各種調味料、クエン酸、リンゴ酸、柑橘果汁等の酸材、香辛料、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、色素、キサンタンガム、タマリンドシードガム、加工澱粉、ゼラチン等の増粘材、卵黄、ホスフォリパーゼA処理卵黄、レシチン、リゾレシチン、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化材等が挙げられる。」

・「【0027】

BH形粘度計による粘度の測定方法

(1)具材入り野菜すりつぶし状調味液の粘度

具材入り野菜すりつぶし状調味液をJISZ8801-2000(日本工業規格)の目開き2mmの標準フルイで濾過し、この濾液を試料とする。ここで、粘度が高く濾過できない試料については、5mmをこえる具材を取り除いたものを試料とする。このように調整した試料についてBH形粘度計で、品温20°C、回転数20rpmの条件で、粘度が0.375Pa・s未満のときローターNo.1、0.375Pa・s以上1.5Pa・s未満のときローターNo.2、1.5Pa・s以上3.75Pa・s未満のときローターNo.3、3.75Pa・s以上7.5Pa・s未満のときローターNo.4、7.5Pa・s以上15Pa・s未満のときローターNo.5、15Pa・s以上のときローターNo.6を使用し、測定開始後ローターが2回転した時の示度により値を求める。なお、更に粘度が高い場合は、回転数:2rpmの条件で、ローター:No.6を使用し2回転した時の示度により値を求める。

【0028】

(2)具材入り野菜すりつぶし状調味液を2倍希釈した場合の粘度

具材入り野菜すりつぶし状調味液に清水を加えて2倍希釈することにより希釈液中に具材を分散させ、この分散物をJISZ8801-2000(日本工業規格)の目開き2mmの標準フルイで濾過し、この濾液を試料とする。このように調整した試料について(1)と同様にしてBH形粘度計で測定する。

【0029】

[実施例1]

トマトをミキサーで粉砕し、常法により鍋で6倍に濃縮するまで煮詰めた。次に、この処理済みトマトと下記配合原料とを合わせて撹拌タンクに投入し、これらを全体が略均一となって一体感がでるまで撹拌混合して具材入り野菜すりつぶし状調味液を調製した。

【0030】

得られた具材入り野菜すりつぶし状調味液は、目開き2mmのフルイ上に残る具材の含有量が具材入り野菜すりつぶし状調味液全体に対して40%であり、具材入り野菜すりつぶし状調味液の粘度がボストウィック粘度計による測定値として1.2cmであった。また、具材入り野菜すりつぶし状調味液を2倍希釈した場合に希釈前後における粘度の差は、BH形粘度計の測定値で129Pa・sであった。

【0031】

得られた具材入り野菜すりつぶし状調味液を喫食したところ、口に入れると一体感があるが、咀嚼後すぐに一体感がなくなり複数種類の各具材特有の食感と液部のさらっとした食感がそれぞれ独立して感じることができ、食感の変化と多様な食感の点から大変好ましいものであった。

【0032】

<具材入り野菜すりつぶし状調味液の配合割合>

大豆油 1部

ズッキーニ(ボイル済み5mmダイスカット品) 40部

トマト(ミキサーで粉砕し6倍濃縮するまで煮詰めたもの)40部

キサンタンガム 0.2部

食塩 2部

冷水膨潤性澱粉(冷水分散時の大きさが0.1~5mm) 0.5部

香辛料 0.1部

清水 残余

(合計) 100部」

「【0049】

[試験例1]

具材入り野菜すりつぶし状調味液の冷水膨潤性澱粉の含有量が、具材入り野菜すりつぶし状調味液に与える影響を調べるために以下の試験を行った。つまり、

冷水膨潤性澱粉の含有量が表1の含有量となるように変えた以外は実施例1と同様にして5種類の具材入り野菜すりつぶし状調味液を調製した。結果を表1に示す。

【0050】

【表1】

47

89

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イ 甲2に記載された発明

上記アの記載、特に試験例1の試験品No.6として調製された具材入り野菜すりつぶし状調味液について整理すると、甲2には次の発明が記載されていると認める。

「大豆油1質量部、ズッキーニ(ボイル済み5mmダイスカット品)40質量部、トマト(ミキサーで粉砕し6倍濃縮するまで煮詰めたもの)40質量部、キサンタンガム0.2質量部、食塩2質量部、冷水膨潤性澱粉(冷水分散時の大きさが0.1~5mm)0.7質量部及び香辛料0.1質量部を含み、残余を清水として合計100質量部とした具材入り野菜すりつぶし状調味液であって、

2倍希釈した場合に、希釈前に比べて希釈後の粘度がBH形粘度計の測定値で155Pa・s低下し、

前記冷水膨潤性澱粉は、冷水(約0~30°Cの水)を加えた時に、冷水を吸収して膨潤し、冷水に分散して粒子状となる澱粉である、

具材入り野菜すりつぶし状調味液。」(以下、「甲2発明」という。)

(2)対比・判断

ア 本件発明1について

(ア)本件発明1と甲2発明との対比

甲2発明の「具材入り野菜すりつぶし状調味液」は、本件発明1の「調味組成物」に相当する。

甲2発明の「ズッキーニ(ボイル済み5mmダイスカット品)」及び「トマト(ミキサーで粉砕し6倍濃縮するまで煮詰めたもの)」は、本件発明1の「細分化された植物由来原料」に相当する。また、甲2発明は合計100質量部のうち「ズッキーニ(ボイル済み5mmダイスカット品)」及び「トマト(ミキサーで粉砕し6倍濃縮するまで煮詰めたもの)」をそれぞれ40質量部含むものであるから、本件発明1の「前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり」との特定事項を満たす。

甲2発明の「冷水膨潤性澱粉」は、「冷水(約0~30°Cの水)を加えた時に、冷水を吸収して膨潤し、冷水に分散して粒子状となる澱粉」であり、「澱粉粒子の外殻膜構造を破壊することなくアルファー化処理した部分アルファー化澱粉やアルファー化処理に加えて架橋処理等を行った澱粉等」(甲2の【0020】)であるから、本件発明1の「加工デンプン」に相当し、「前記加工デンプンは、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり」との特定事項を満たす。また、甲2発明は合計100質量部のうち「冷水膨潤性澱粉」を0.7質量部含むものであるから、本件発明1の「前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%である」との特定事項を満たす。

してみると、両者の間の一致点及び一応の相違点は次のとおりである。

(一致点)

「細分化された植物由来原料と、加工デンプンとを含み、

前記加工デンプンは、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、

前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり、

前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%である、

調味組成物。」

(相違点)

・相違点2-1

調味組成物の粘度について本件発明1は「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、」と特定するのに対し、甲2発明は「2倍希釈した場合に、希釈前に比べて希釈後の粘度がBH形粘度計の測定値で155Pa・s低下」するものである点。

・相違点2-2

調味組成物について本件発明1は「更に、糖アルコールを含む、」と特定するのに対し、甲2発明はそのように特定されていない点。

(イ)相違点についての判断

事案に鑑み、相違点2-2について検討する。

甲2発明は、材料として糖アルコールを用いておらず、相違点2-2は実質的な相違点である。

また、甲2には、甲2発明において糖アルコールを含むものとする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。したがって、甲2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲2発明において相違点2-2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

そして、本件発明1は、「液体組成物に添加されたとしても、分散性の向上と、植物由来原料の粒感の維持を同時に図ることができる。」及び「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供することができる。」(【0011】)という本件発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

(ウ)申立人の主張について

相違点2-2に関し、申立人は、特許異議申立書に添付した「(別紙)申立の理由」(以下、「申立書」という。)及び令和8年2月12日提出の意見書に添付した「(別紙)意見の内容」(以下、「意見書」という。)において、概略以下の点を主張している。

「甲2には「本発明の効果を損なわない範囲で、調味料に一般的に使用されている原料を適宜配合することができる」こと、前記調味料には「砂糖」が含まれることが記載されている(甲2段落0021)。また、糖アルコールは糖類として砂糖に代替して用いられることが本件技術分野における技術常識であるから(要すれば甲7段落0052参照)、当業者であれば、砂糖に代えて糖アルコールを用いることは容易になし得たことである。

そして、本件明細書の発明の詳細な説明を見ても、糖アルコールを添加することによる効果は、当業者であれば予測し得たものであり、顕著な効果を認めることはできない。」(申立書37~38頁)

「甲2には、具材入り野菜すりつぶし状調味液について「調味料に一般的に使用されている原料を適宜配合することができる」(甲2段落【0021】)との記載がある。実際、甲2発明は、「調味料に一般的に使用されている原料」として例示列挙された、キサンタンガム、食塩、香辛料を含んでいる。

甲2は、「調味料に一般的に使用されている原料」として「食塩、砂糖...等の各種調味料」を、具体的には食塩、砂糖を例示列挙しており、全ての実施例及び試験例において食塩を含むものとしている。そうすると、甲2発明は、例示列挙された食塩、砂糖と同様の機能を果たし、技術常識に照らして「各種調味料」に含まれる原料もまた、「調味料に一般的に使用されている原料」として「適宜配合することができる」と解することができる。

食塩及び砂糖が、調味料として塩味又は甘味を付与するとともに、水分活性を下げる機能を有することは、本件技術分野における技術常識である(要すれば、甲17、甲18を参照)。異議申立書において例示した甲7には段落【0051】に、「例えば、本発明の液状調味料がノンオイルタイプのドレッシングである場合には、一般的に、水、糖類、食塩が基本原料となる」と記載し、更に段落【0052】において、基本原料の1つである糖類として、砂糖とともに「ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコール」を列挙している。また、甲12段落【0016】には、以下の記載がある。

「【0016】

本発明の食品には、該加工澱粉以外の食品材料も、それぞれの食品で従来から使用されているものを必要に応じて選択して用いることができる。例えば、砂糖、水飴、グルコース、異性化糖、フラクトース、マルトース、トレハロース、ソルビトール、マルチトール、合成甘味料など種々の甘味料を、甘味を付与するため、及び/又は、味質や水分活性を調節するため、などの所望の目的に合わせて適宜選択して使用することができる。」

すなわち、「塩と砂糖」が塩味又は甘味を付与する調味料であり、「水分活性を下げる」こと(例えば、甲17B及び甲18B)、糖アルコールであるソルビトール、マルチトールが「甘味を付与」する調味料であり、「水分活性を調節する」機能も有すること(例えば甲12、甲17B及び甲18B)は、本件技術分野における技術常識である。

してみれば、甲2段落【0021】の「本発明の具材入り野菜すりつぶし状調味液は、...調味料に一般的に使用されている原料を適宜配合することができる」との記載に接した当業者であれば、「食塩2質量部」含む甲2発明において、「調味料に一般的に使用されている原料」として例示列挙された「食塩、砂糖」と同様に、調味料であり、「水分活性を調節する」機能を有する糖アルコールを、食塩の一部に代えて、あるいは「調味料に一般的に使用されている原料」として含むものとすることは、容易になし得たことである。そして、そうすることにより、予想外に格別顕著な効果が奏されたとはいえない。」(意見書5~7頁)

そこで、検討する。

申立書における主張について検討すると、甲2には、【0021】において調味液に配合しうる材料が列挙されているものの糖アルコールの記載はなく、他の証拠の記載をみても、甲2発明において糖アルコールを含むものとする動機付けとなる記載はない。そうすると、糖アルコールが食品の甘味料として用いられることが本件特許の出願日における技術常識であるとしても、甲2発明において糖アルコールを含むものとすることが当業者にとって容易であるとはいえない。

また、意見書における主張について検討すると、申立人が提示する甲17B及び甲18Bに示されるように、ソルビトール等の糖アルコールが食品の水分活性を低下させる機能を有することも本件特許の出願日における技術常識と認められる。しかしながら、甲2発明の課題は、「従来食したことのない新しいおいしさを楽しむことができる具材入り野菜すりつぶし状調味液であって、口に入れた後の食感の変化と多様な食感を楽しむことができる新規な具材入り野菜すりつぶし状調味液を提供する」(【0006】)ことであって水分活性とは関係がなく、甲2には調味液の水分活性に着目する記載もないから、甲2発明が水分活性を低下させる課題を有するものとはいえない。そうすると、上記技術常識を参酌しても、甲2発明において糖アルコールを含むものとする動機付けがあるとはいえない。

よって、申立人の主張はいずれも採用することができない。

(エ)本件発明1についてのまとめ

以上のとおり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明ではなく、甲2発明並びに甲2及び他の全ての証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2~4及び6について

本件発明2~4及び6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に判断される。

よって、本件発明2~4及び6は甲2発明ではなく、甲2発明並びに甲2及び他の全ての証拠の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)取消理由1及び申立理由1(甲2を主たる証拠とする新規性・進歩性)についてのまとめ

以上のとおり、本件発明1~4及び6は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件発明1~4及び6は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~4及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。

よって、取消理由1及び申立理由1によって本件特許の請求項1~4及び6に係る特許を取り消すことはできない。

2 取消理由2及び申立理由6(甲8を主たる証拠とする新規性・進歩性)について

(1)甲8の記載事項等

ア 甲8の記載事項

甲8には「酸性液状調味料」に関し、次の記載がある。下線は当審で付したものである。

・「【請求項1】

脂質含有量が10%以下、

20°Cにおける粘度が15Pa・s以下である酸性液状調味料において、

ネギ属野菜を含有し、

澱粉粒の体積平均粒子径が3μm以上15μm以下の加工澱粉が分散している、

酸性液状調味料。

【請求項2】

請求項1に記載の酸性液状調味料が、

食用油脂を配合せず、且つ脂質含有量が3%未満である、

酸性液状調味料。」

・「【0018】

<粘度>

酸性液状調味料の粘度は、15Pa・s以下

であり、更に13Pa・s以下、10Pa・s以下、8Pa・s以下、5Pa・s以下、3Pa・s以下がよい。下限値は、特に限定されないが、0Pa・s以上がよく、0.9Pa・s以上が更によく、1Pa・s以上が更によい。

【0019】

<粘度の測定条件>

上記粘度の測定は、BH型粘度計で、品温25°C、回転数:10rpmの条件で粘度が0.7Pa・s未満のときローター:No.1、0.7Pa・s以上2.8Pa・s未満のときローターNo.2、2.8Pa・s以上7.0Pa・s未満のときNo.3、7.0Pa・s以上のときNo.4を使用し、測定開始後ローターが2回転した時の示度により算出した値である。

・「【0024】

<澱粉粒の体積平均粒子径が3μm以上15μm以下の加工澱粉>

本発明の酸性液状調味料には、澱粉粒の体積平均粒子径が3μm以上15μm以下の加工澱粉が分散している。

当該加工澱粉が酸性液状調味料中に分散していることにより、ネギ属野菜のフレッシュな香りを維持し、生のネギ属野菜特有の臭みが抑制することができる。

・・・

【0027】

<加工澱粉の含有量>

加工澱粉の含有量は、酸性液状調味料に対して下限は1%以上、2%以上がよく、上限は8%以下、6%以下が良い。

加工澱粉の含有量を前記範囲とすることで、ネギ属野菜のフレッシュな香りを維持し、生のネギ属野菜特有の臭みが抑制することができる。

・・・

【0029】

<加工澱粉の種類>

加工澱粉とは、食品衛生法で添加物に指定された化学的処理を施された澱粉であって食用として供されるものである。

加工澱粉は、

前記それぞれの体積平均粒子径となれば、特に限定されないが、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸化架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、

リン酸架橋澱粉が挙げられる。

特に、加工澱粉は、調味料中に一定の大きさの澱粉粒として存在する

ことが肝要であるため、加熱膨潤を抑制できる架橋澱粉が好適であり、アセチル化アジピン酸架橋、アセチル化リン酸化架橋、ヒドロキシプロピルリン酸架橋、リン酸架橋等の架橋方法が挙げられ、

特にリン酸架橋

、ヒドロキシプロピルリン酸架橋、アセチル化アジピン酸架橋

がよい。

・「【0038】

[実施例1]

<ノンオイルの酸性液状調味料(タマネギドレッシング)>

下記の配合割合に準じ、全体を均一に混合した後、250mL容量のPET容器に250mL充填し、密栓しノンオイルの酸性液状調味料を製した。

【0039】

<加工澱粉の体積平均粒子径の測定>

加工澱粉の体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置である粒度分布径MT3300EXII(日機装株式会社製)を用いて、段落0026記載の測定条件で測定した。

【0040】

<ノンオイルの酸性液状調味料の配合割合>

アルコール酢(酸度4.5%) 5%

ブドウ酢(酸度4.5%) 3%

体積平均粒子径が7μmの加工澱粉※1 5%

すりおろし生玉ねぎ※2 15%

(固形分配合量1.5%)

すりおろし生生姜※3 0.5%

(固形分配合量0.05%)

砂糖 5%

食塩 4%

コショウ 0.3%

グルタミン酸ナトリウム 0.8%

レモン果汁 0.3%

キサンタンガム 0.5%

清水 残余

----------------------------

合計 100%

※1:体積平均粒子径が7μmの加工澱粉は、原料澱粉が米のリン酸架橋澱粉

※2:すりおろし生玉ねぎの大きさは、60%以上が15μm~1mmである

※3:すりおろし生生姜の大きさは、60%以上が15μm~1mmである

【0041】

得られたノンオイルの酸性液状調味料は、

25°Cにおける粘度が1~5Pa・s、

脂質含有量が0%であった。

なお、粘度の測定条件は段落0019、脂質含有量の測定条件は段落0015の記載従って行った。」

・「【0046】

[実施例6]

<ノンオイルの酸性液状調味料(たまねぎドレッシング)>

ブドウ酢をアルコール酢に置換え、すりおろし玉ねぎの配合量を20%に変更し、4mmダイスの玉ねぎ10%(固形分配合量0.1%)を追加した以外は、実施例1に準じてノンオイルの酸性液状調味料を製した。

イ 甲8に記載された発明

上記アの記載、特に実施例6として調製されたノンオイルの酸性液状調味料について整理すると、甲8には次の発明が記載されていると認める。

「アルコール酢(酸度4.5%)8%、体積平均粒子径が7μmのリン酸架橋澱粉5%、すりおろし生玉ねぎ20%、すりおろし生生姜0.5%、砂糖5%、食塩4%、コショウ0.3%、グルタミン酸ナトリウム0.8%、レモン果汁0.3%、キサンタンガム0.5%及び4mmダイスの玉ねぎ10%を含み、残余を清水として合計100%としたものを、均一に混合して製した、25°Cにおける粘度が1~5Pa・sのノンオイルの酸性液状調味料。」(以下、「甲8発明」という。)

(2)対比・判断

ア 本件発明1について

(ア)本件発明1と甲8発明との対比

甲8発明の「ノンオイルの酸性液状調味料」は、本件発明1の「調味組成物」に相当する。

甲8発明の「すりおろし生玉ねぎ」「すりおろし生生姜」及び「4mmダイスの玉ねぎ」は、本件発明1の「細分化された植物由来原料」に相当する。また、甲8発明は「すりおろし生玉ねぎ」「すりおろし生生姜」及び「4mmダイスの玉ねぎ」を合計で30.5%含み、甲8における「%」は「重量%」を意味することは明らかであるから、「前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり、」との特定事項を満たす。

甲8発明の「体積平均粒子径が7μmのリン酸架橋澱粉」は、「調味料中に一定の大きさの澱粉粒として存在する」(【0029】)ものであり、調味料中に溶解していない状態で含まれるから、本件発明1の「加工デンプン」に相当し、「前記加工デンプンは、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり」との特定事項を満たす。また、甲8発明は「体積平均粒子径が7μmのリン酸架橋澱粉」を5%含むものであるから、本件発明1の「前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%である、」との特定事項を満たす。

してみると、両者の間の一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)

「細分化された植物由来原料と、加工デンプンとを含み、

前記加工デンプンは、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、

前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり、

前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%である、

調味組成物。」

(相違点)

・相違点8-1

調味組成物の粘度について本件発明1は「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、」と特定するのに対し、甲8発明は「25°Cにおける粘度が1~5Pa・s」である点。

・相違点8-2

調味組成物について本件発明1は「更に、糖アルコールを含む、」と特定するのに対し、甲8発明はそのように特定されていない点。

(イ)相違点についての判断

事案に鑑み、相違点8-2について検討する。

甲8発明は、材料として糖アルコールを用いておらず、相違点8-2は実質的な相違点である。

また、甲8には、甲8発明において糖アルコールを含むものとする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。したがって、甲8及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲8発明において相違点8-2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

そして、本件発明1は、「液体組成物に添加されたとしても、分散性の向上と、植物由来原料の粒感の維持を同時に図ることができる。」及び「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供することができる。」という本件発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

(ウ)申立人の主張について

相違点8-2に関し、申立人は、申立書74頁及び意見書10~12頁において、上記1(2)ア(ウ)に記載したのと同様の点を主張しているが、当該主張については上記1(2)ア(ウ)で示した判断と同様に、いずれも採用することができない。

(エ)本件発明1についてのまとめ

以上のとおり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲8発明ではなく、甲8発明並びに甲8及び他の全ての証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2~4及び6について

本件発明2~4及び6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に判断される。

よって、本件発明2~4及び6は甲8発明ではなく、甲8発明並びに甲8及び他の全ての証拠の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)取消理由2及び申立理由6(甲8を主たる証拠とする新規性・進歩性)についてのまとめ

以上のとおり、本件発明1~4及び6は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件発明1~4及び6は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~4及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。

よって、取消理由2及び申立理由6によって本件特許の請求項1~4及び6に係る特許を取り消すことはできない。

3 申立理由2(甲4を主たる証拠とする新規性・進歩性)について

(1)甲4の記載事項等

ア 甲4の記載事項

甲4には「大根おろし入り液状調味料」に関し、次の記載がある。下線は当審で付したものである。

・「【請求項1】

大根おろし20~70%及び増粘材を配合する大根おろし入り液状調味料において、ボストウィック粘度計による粘度が5~20cmであり、かつ、清水で4倍希釈した際の8メッシュオンが、希釈前の大根おろし入り液状調味料全体に対し25~75%である大根おろし入り液状調味料。

【請求項2】

0~30°Cの冷水中で粒子状に膨潤し分散する冷水膨潤性澱粉を配合する請求項1記載の大根おろし入り液状調味料。

【請求項3】

2種類以上の澱粉を配合し、0~30°Cの冷水中で粒子状に膨潤し分散する冷水膨潤性澱粉が合計澱粉配合量の20~80%である請求項1又は2に記載の大根おろし入り液状調味料。」

・「【発明が解決しようとする課題】

【0006】

そこで、本発明の目的は、喫食した際に感じる具材と液状部の風味の一体性と、喫食後口腔内で瞬時に崩れる崩壊性に優れる大根おろし入り液状調味料を提供するものである。」

・「【0010】

以下、本発明の大根おろし入り液状調味料を詳述する。なお、

本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。

・「【0012】

本発明の大根おろし入り液状調味料を構成する液状部は、増粘材を配合し適宜好みの味付けに調整すれば良く、和風の味付けで醤油や昆布だしベース、洋風の味付けでコンソメやトマトベース等と特に限定されない。増粘材とは、当業者が調味料の増粘に用いる多糖類を指し、例えば、キサンタンガム、タマリンドシードガム等のガム類、コムギ、タピオカ、コーン等の澱粉類が挙げられる。

【0013】

[喫食後口腔内で瞬時に崩れる崩壊性]

本発明の大根おろし入り液状調味料は、例えば、山状に盛り付けた大根おろし入り液状調味料に清水を加え希釈すると一気に外観が消失する。この現象は、単に固形部が清水に溶解したわけではなく、大根おろしの繊維質と、0~30°Cの冷水中で粒子状に膨潤し分散する冷水膨潤性澱粉とで形成する立体構造が、清水を加え希釈すると一気に崩壊する性質を有するためと推定される。

【0014】

前述の崩壊現象を定量化すると、清水で4倍希釈した際の8メッシュオン(篩目開き2.36mm)の量が、希釈前の大根おろし入り液状調味料全体に対し、25~75%であり、25~65%が好ましく、25~55%がより好ましい。なお、希釈前の大根おろし入り液状調味料の8メッシュオンは、大根おろし入り液状調味料のボストウィック粘度を5~20cmとなるように増粘しているため、90~100%の高い数値となっている。」

・「【0017】

本発明に用いる0~30°Cの冷水中で粒子状に膨潤し分散する冷水膨潤性澱粉は、冷水に分散させた際の大きさが、長径で0.1~5mmのものを用いることが好ましく、0.1~3mmのものを用いることが好ましい。前記範囲より小さいと、大根おろしの繊維質との立体構造を形成できなくなる場合がある。前記範囲より大きいと、口腔内で瞬時に崩れる崩壊性が得られ難い。また、0~30°Cの冷水中で粒子状に膨潤し分散する冷水膨潤性澱粉の配合量は、大根おろし入り液状調味料全体に対し、乾物換算で、好ましくは0.1~15%、より好ましくは0.1~10%である。前記範囲より少ないと、大根おろしの繊維質との立体構造を形成できなくなる。前記範囲より多いと、口腔内で瞬時に崩れる崩壊性が得られ難い。」

・「【0019】

[喫食した際に感じる具材と液状部の風味の一体性]

一方、本発明の大根おろし入り液状調味料の粘度は、ボストウィック粘度計による測定値で5~20cm、好ましくは5~18cm、より好ましくは5~15cmである。ボストウィック粘度計による測定値は、数値が小さいほど流動性が低くまとまり感があることを意味する。ボストウィック粘度計による大根おろし入り液状調味料の粘度が前記範囲であることにより、口に入れた際に具材入り液状調味料の一体感が感じられる。なお、

ボストウィック粘度計による粘度測定の方法は、ボストウィック粘度計の常法で行えばよく、例えば、KO式ボストウィック粘度計(深谷精機社製)の試料投入部に、品温20°Cの大根おろし入り液状調味料を満杯量(例;110g)充填し、仕切り板をはね上げてから、30秒後の試料流出先端までの距離を測定する。

【0020】

本発明の大根おろし入り液状調味料は、0~30°Cの冷水中で粒子状に膨潤し分散する冷水膨潤性澱粉と、その他の澱粉とを組合せて用いることが好ましい。例えば、大部分の食品用途澱粉が該当する水溶解性澱粉が挙げられ、加工方法の違いにより、α化、リン酸化、酸化、湿熱処理化、架橋エステル化等に分けられる。水溶解性澱粉のうちα化澱粉又は架橋エステル化澱粉が、離水等による一体性の低下を防ぐことができ好ましい。

【0021】

本発明の大根おろし入り液状調味料において、0~30°Cの冷水中で粒子状に膨潤し分散する冷水膨潤性澱粉の配合量は、合計澱粉配合量の20~80%となるように配合することが好ましく、35~80%がより好ましい。0~30°Cの冷水中で粒子状に膨潤し分散する冷水膨潤性澱粉の比率を20%以上とすることで、喫食した際に感じる具材と液状部の風味の一体性が高まる。すなわち、0~30°Cの冷水中で粒子状に膨潤し分散する冷水膨潤性澱粉は、特有の食感を有し、喫食した際に感じる具材と液状部の風味の一体性を減ずることがあるが、その他の澱粉を組合せて配合することで、0~30°Cの冷水中で粒子状に膨潤し分散する冷水膨潤性澱粉特有の食感を感じ難くなり、喫食した際に感じる具材と液状部の風味の一体性をより高めることができ好ましい。

【0022】

本発明の大根おろし入り液状調味料のpHは、特に限定されないが、褐変等の経時変化が起こり難く、本発明で得られる効果が高く保持されることから、pH3.5~5が好ましく、pH3.5~4.2がより好ましい。

【0023】

本発明の大根おろし入り液状調味料は、上述した原料の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、調味料に一般的に使用されている原料を適宜配合することができる。このような原料としては、例えば、キサンタンガム、タマリンドシードガム等のガム類、卵黄、ホスフォリパーゼA処理卵黄、レシチン、リゾレシチン、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化材、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油等の油脂、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、色素、香料等が挙げられる。

【0024】

次に、本発明を実施例、比較例及び試験例に基づき、更に説明する。

【実施例】

【0025】

[実施例1]

清水26%、大根おろし(95°C加熱処理品)30%、醤油10%、グラニュ糖5%、醸造酢(酢酸濃度4%)25%、0~30°Cの冷水中で粒子状に膨潤し分散する冷水膨潤性澱粉(冷水分散時の大きさが0.1~5mm)3%、α化澱粉1%を撹拌混合し、本発明の大根おろし入り液状調味料(pH4)を調製した。

【0026】

得られた大根おろし入り液状調味料は、ボストウィック粘度計による粘度が12cmであり、かつ、清水で4倍希釈した際の8メッシュオンが、希釈前の大根おろし入り液状調味料全体に対し30%であった。官能評価を行ったところ、喫食した際に感じる具材と液状部の風味の一体性と、喫食後口腔内で瞬時に崩れる崩壊性に優れる口に入れると一体感を共に感じることができ大変好ましいものであった。

【0027】

[試験例1]

0~30°Cの冷水中で粒子状に膨潤し分散する冷水膨潤性澱粉及び水溶解性澱粉(α化澱粉)の配合量を変更する以外は、実施例1に準じて、No.1~5を調製した。配合量を表1に示す。

また、得られた大根おろし入り液状調味料について、以下の基準に基づき官能評価を行った。

[評価基準]

一体性

A:喫食した際に感じる具材と液状部の風味の一体性に、とても優れている

B:喫食した際に感じる具材と液状部の風味の一体性に、やや優れている

C:喫食した際に感じる具材と液状部の風味の一体性が得られない

崩壊性

A:口腔内で瞬時に崩れる崩壊性に、とても優れている

B:口腔内で瞬時に崩れる崩壊性に、やや優れている

C:口腔内で瞬時に崩れる崩壊性が得られない

【0028】

[表1]

69

104

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イ 甲4に記載された発明

上記アの記載、特に試験例1のNo.2として調製された大根おろし入り液状調味料について整理すると、甲4には次の発明が記載されていると認める。

「清水26%、大根おろし(95°C加熱処理品)30質量%、醤油10質量%、グラニュ糖5質量%、醸造酢(酢酸濃度4%)25質量%、0~30°Cの冷水中で粒子状に膨潤し分散する冷水膨潤性澱粉(冷水分散時の大きさが0.1~5mm)1質量%、水溶性澱粉(α化澱粉)3質量%を撹拌混合して調製した、品温20°Cでのボストウィック粘度計による粘度の測定値が7cmである、大根おろし入り液状調味料。」(以下、「甲4発明」という。)

(2)対比・判断

ア 本件発明1について

(ア)本件発明1と甲4発明との対比

甲4発明の「大根おろし入り液状調味料」は、本件発明1の「調味組成物」に相当する。

甲4発明の「大根おろし(95°C加熱処理品)」は、本件発明1の「細分化された植物由来原料」に相当する。また、甲4発明は、当該大根おろしを30質量%含むから、本件発明1の「前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり」との特定事項を満たす。

甲4発明の「冷水膨潤性澱粉」は、「0~30°Cの冷水中で粒子状に膨潤し分散する」ものであるから、本件発明1の「加工デンプン」に相当し、「前記加工デンプンは、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり」との特定事項を満たす。また、甲4発明は当該冷水膨潤性澱粉を1質量%含むから、本件発明1の「前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%であり」との特定事項を満たす。

してみると、両者の間の一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)

「細分化された植物由来原料と、加工デンプンとを含み、

前記加工デンプンは、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、

前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり、

前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%である、

調味組成物。」

(相違点)

・相違点4-1

調味組成物の粘度について本件発明1は「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、」と特定するのに対し、甲4発明は「品温20°Cでのボストウィック粘度計による粘度の測定値が7cmである」点。

・相違点4-2

調味組成物について本件発明1は「更に、糖アルコールを含む、」と特定するのに対し、甲4発明はそのように特定されていない点。

(イ)相違点についての判断

相違点4-1について検討する。

B形粘度計とボストウィック粘度計とでは測定原理が異なり、両者の測定値を直接比較・換算できないことが技術常識であるから、甲4発明について「B形粘度計,ローター回転数1.5rpm」の条件で粘度を測定した場合の値は不明であり、相違点4-1は実質的な相違点である。

そして、甲4には、相違点4-1に係る本件発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。したがって、甲4及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲4発明において相違点4-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

そして、本件発明1は、「液体組成物に添加されたとしても、分散性の向上と、植物由来原料の粒感の維持を同時に図ることができる。」及び「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供することができる。」という本件発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

(ウ)申立人の主張について

申立人は申立書において、甲4発明の再現組成物を調製し、一般財団法人日本食品分析センターにおいてB形粘度計、ローターNo.M4、ローター回転数1.5rpm、60秒間、25°Cで測定したところ、その測定値は甲3の分析試験成績書に記載されるとおり28,000及び24,000mPa・sであったことを示し、相違点4-1が相違点とならない旨を主張している(申立書38~46頁)。また、申立人は、上記再現組成物の調製経緯等を説明及び証明するものとして回答書及び甲17A号証を令和7年9月26日に提出している。

当該回答書及び甲17A号証の内容は、概略以下のとおりである。

主張a.甲3の検体が、申立書に記載された甲2、4、及び5の実施例の再現組成物と同一物であることについて

甲2試験品No.6、甲4試験例1No.2、甲5実施例2及び甲5実施例6の再現組成物は、甲2、甲4、甲5の記載に従って、2025年5月14日~16日の間に■会社の研究所において、同社において研究開発を担当している社員によって、申立書に記載の通り調製され、ボストウィック粘度計を用いて粘度を測定し、各再現組成物として満たすべき性質を有するものであることが確認されたうえで保管され、2025年5月20日に一般財団法人日本食品分析センターに、B形粘度計を用いた粘度試験を行うために提出された。

一般財団法人日本食品分析センターに提出された試料と特許異議申立書の申立ての理由に記載された各再現組成物とは同一物である。その経緯は申立人が確認した。

主張b.甲2、4及び5の実施例の再現組成物の調製の経緯について

甲2【0030】の記載等からみて、甲2試験品No.6、甲4試験例1No.2、甲5実施例2及び甲5実施例6は、129Pa・s程度以上の粘度を有する蓋然性が高いことが認められたため、主張aのとおり各実施例の再現組成物が調製され、一般財団法人日本食品分析センターに分析の依頼が行われた。

試料の調製を行った調製者の氏名や所属等の個人情報については、職務上知り得た秘密に該当し、具体的な調製場所についても、当該記載から調製者に係る上記個人情報を知りうるものであることから非開示とする。

主張c.各再現組成物が甲4の実施例の再現といえることについて

(a)甲4再現組成物の冷水膨潤性澱粉について

甲4【0016】~【0017】の記載によれば、甲4における「冷水膨潤性澱粉」とは、(1)「0~30°Cの冷水中で粒子状に膨潤し分散」し、(2)「澱粉粒子の外殻膜構造を破壊することなくアルファー化処理した部分アルファー化澱粉やアルファー化処理に加えて架橋処理等を行った澱粉」であって、(3)「市販されている」ものであり、好ましくは、(4)「冷水に分散させた際の大きさが、長径で0.1~5mmのもの」である。TEXTAID Aは上記の各要件を全て満たすから、甲4の再現組成物を得るにあたり、甲4記載の「冷水膨潤性澱粉」としてTEXTAID Aを選択したことは妥当である。

(b)甲4再現組成物のa化澱粉について

甲4【0020】、【0027】の記載によれば、甲4において冷水膨潤性澱粉と組み合わせて用いられる「その他の澱粉」は、(1)水溶解性澱粉であって、(2)a化澱粉である。「コーンアルファY」は、上記の要件を満たすから、甲4の再現組成物を得るにあたり、「水溶解性澱粉(a化澱粉)」としてコーンアルファYを選択したことは妥当である。

(c)甲4再現組成物の大根おろしの製法について

甲4【0018】~【0020】の記載によれば、大根の粉砕方法については、特に限定されずフードカッター等の粉砕処理装置を用いて粉砕処理したものであってよいと認められ、【0025】には、実施例1の大根おろしについて「大根おろし(95°C加熱処理品)」とのみ記載されているところ、甲4の先行技術文献として挙げられた甲19Aの記載に従い、大根おろしを得た。よって、甲4再現組成物における大根おろしの調製は、甲4の記載及び技術常識に従ったものであり妥当である。

そこで、検討する。上記主張aで示されたとおり、申立人が確認しており、甲17には申立人の押印もあることから、甲3において分析試験の対象とされた検体が、申立ての理由に記載された甲2、4、及び5の各実施例の再現組成物と同一物であることが認められる。しかしながら、各再現組成物の調製の経緯については、上記主張bによれば、調製を行った動機と、調製日が「2025年5月14日~16日の間」であることは示されているものの、調製者及び調製場所については開示されていないし、調製者による認証(署名、押印等)もない。そうすると、上記回答書及び甲17A号証を参酌しても、甲3で分析対象とされたサンプルが、甲4発明の再現組成物として申立書に記載された手順に従い適切に調製された証拠であることの確認ができない。よって、主張cが妥当であるか否かにかかわらず、甲3を、甲4発明の粘度を証明する証拠として採用することはできない。

よって、甲3を根拠として相違点4-1が相違点にならないとする申立人の主張は、採用することができない。

なお、仮に甲3を証拠として採用できたとしても、本件発明1と甲4発明とは相違点4-2においても相違するところ、当該相違点については上記1(2)アと同様に判断され、本件発明1は甲4発明とはいえないし、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(エ)本件発明1についてのまとめ

以上のとおり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲4発明ではなく、甲4発明並びに甲4及び他の全ての証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2~4及び6について

本件発明2~4及び6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に判断される。

よって、本件発明2~4及び6は甲4発明ではなく、甲4発明並びに甲4及び他の全ての証拠の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立理由2(甲4を主たる証拠とする新規性・進歩性)についてのまとめ

以上のとおり、本件発明1~4及び6は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件発明1~4及び6は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~4及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。

よって、申立理由2によって本件特許の請求項1~4及び6に係る特許を取り消すことはできない。

4 申立理由3(甲5を主たる証拠とする新規性・進歩性)について

(1)甲5の記載事項等

ア 甲5の記載事項

甲5には「タマネギ具材入り調味液」に関し、次の記載がある。下線は当審で付したものである。

・「【請求項1】

加熱処理済みのタマネギ具材を含むタマネギ具材入り調味液であって、

具材入り調味液の粘度がボストウィック粘度計による測定値として1~8cm、食塩濃度が0.5~3%であり、

目開き2mmのフルイ上に残るタマネギ具材を具材入り調味液全体に対して30~70%含み、

前記タマネギ具材の5割以上は清水中に沈み、前記清水に沈むタマネギ具材はかたさが1×10

5

~1×10

8

N/m

2

である、タマネギ具材入り調味液。」

・「【発明が解決しようとする課題】

【0005】

そこで、本発明の目的は、タコなどの魚介類又は焼き鳥などの肉類と和えるだけで、新鮮なタマネギの食味によっておいしさがひきたてられた魚介類料理又は肉類料理を簡便に得られる容器詰めタマネギ具材入り調味液であって、大きなタマネギ具材を多量に含むにもかかわらず形状が様々な魚介類又は肉類と和えても和え易い容器詰めタマネギ具材入り調味液を提供するものである。」

・「【0009】

以下、本発明の容器詰めネギ類具材入り調味液を詳述する。なお、

本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。

・「【0012】

<具材入り調味液の粘度>

本発明のタマネギ具材入り調味液は、粘度がボストウィック粘度計による測定値として1~8cm、好ましくは1~7cm、より好ましくは1~5cmである。ボストウィック粘度計による測定値は、数値が小さいほど流動性が低くまとまり感があることを意味する。後述するタマネギ具材の含有量、更に、タマネギ具材の状態を特定状態に調整する必要はあるが、ボストウィック粘度計によるタマネギ具材入り調味液の粘度が前記範囲であることにより、本発明のタマネギ具材入り調味液は、大きなタマネギ具材を多量に含むにもかかわらず形状が様々な魚介類又は肉類と和えても和え易いものとなる。

【0013】

<ボストウィック粘度計による粘度の測定方法>

KO式ボストウィック粘度計の試料投入部に品温20°Cの試料を満杯量充填し、仕切り板をはね上げてから、30秒後の試料流出先端までの距離を測定する。」

・「【0023】

<その他の具材>

本発明の具材としては、前記タマネギ具材の他にも本発明の効果を損なわない範囲で種々の具材を含有することができる。このような具材としては、例えば、トマト、キュウリ、ナス、ズッキーニ、ニンジン、パプリカ、ダイコン、ネギ、ショウガ、ニンニク、リンゴ、パイナップル、ブドウ、オリーブ、しいたけ、肉類、魚介類等が挙げられる。

【0024】

本発明の容器詰めタマネギ具材入り調味液は、上述した原料の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、調味料に一般的に使用されている原料を適宜配合することができる。このような原料としては、例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油等の油脂、食酢、食塩、砂糖、醤油、味噌、味醂、アミノ酸、核酸系旨味調味料等の各種調味料、クエン酸、リンゴ酸、柑橘果汁等の酸材、香辛料、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、色素、キサンタンガム、タマリンドシードガム、加工澱粉、ゼラチン等の増粘材、卵黄、ホスフォリパーゼA処理卵黄、レシチン、リゾレシチン、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化材等が挙げられる。」

・「【実施例】

【0027】

[実施例1]

下記配合原料とを合わせて撹拌タンクに投入し、これらを全体が略均一となって一体感がでるまで撹拌混合した。続いて、得られた原料混合物をニーダーで品温60°Cになるまで加熱した後、5分間保持した後品温15°Cに急速に冷却することによりタマネギ具材入り調味液を調製した。

【0028】

得られた具材入りタマネギ具材入り調味液は、目開き2mmのフルイ上に残る具材の含有量がタマネギ具材入り調味液全体に対して50%であり、タマネギ具材入り調味液の粘度がボストウィック粘度計による測定値として5cmであった。また、前記タマネギ具材の5割以上は清水中に沈み、前記清水に沈むタマネギ具材はかたさが1×10

5

~1×10

8

N/m

2

であった。

【0029】

<具材入りタマネギ具材入り調味液の配合割合>

タマネギ(5mmダイスカット) 50部

食塩 2部

冷水膨潤性澱粉 1部

香辛料 0.1部

清水 残余

(合計) 100部

【0030】

[実施例2]

実施例1において、冷水膨潤性澱粉の配合量を2.5部に増やした以外は同様にしてタマネギ具材入り調味液を調製した。

・「【0036】

[実施例6]

実施例2において、具材の含有量を65部に増やし、冷水膨潤性澱粉の配合量を1.8部に減らした以外は同様にしてタマネギ具材入り調味液を調製した。

・「【0045】

【表1】

61

115

0001437385000003.jpg

【0046】

表1より、具材入り調味液の粘度がボストウィック粘度計による測定値として1~8cm、食塩濃度が0.5~3%であり、目開き2mmのフルイ上に残るタマネギ具材を具材入り調味液全体に対して30~70%含み、前記タマネギ具材の5割以上は清水中に沈み、前記清水に沈むタマネギ具材はかたさが1×10

5

~1×10

8

N/m

2

である、実施例1乃至7のタマネギ具材入り調味液は、数回混ぜるだけで、魚介類又は肉類と、タマネギとが略均一になり和え易いことが理解できる。これに対し、タマネギ具材のかたさが前記範囲よりも小さい比較例1、タマネギ具材の5割以上は清水中に沈まない比較例2、具材含有量が前記範囲より多い比較例3、具材含有量が前記範囲より少ない比較例4のタマネギ具材入り調味液は、数十回丁寧に混ぜても、魚介類又は肉類と、タマネギとが略均一にならず好ましくなかった。」

イ 甲5に記載された発明

上記アの記載、特に実施例2及び実施例6として調製されたタマネギ具材入り調味液について整理すると、甲5には次の発明が記載されていると認める。

「タマネギ(5mmダイスカット)50質量部、食塩2質量部、冷水膨潤性澱粉2.5質量部、香辛料0.1質量部、残余を清水として合計100質量部となる配合原料を合わせて撹拌タンクに投入し、これらを全体が略均一となって一体感がでるまで撹拌混合し、得られた原料混合物をニーダーで品温60°Cになるまで加熱した後、5分間保持した後品温15°Cに急速に冷却することにより調製した、品温20°Cでのボストウィック粘度計による粘度の測定値が1cmである、タマネギ具材入り調味液。」(以下、「甲5実施例2発明」という。)

「タマネギ(5mmダイスカット)65質量部、食塩2質量部、冷水膨潤性澱粉1.8質量部、香辛料0.1質量部、残余を清水として合計100質量部となる配合原料を合わせて撹拌タンクに投入し、これらを全体が略均一となって一体感がでるまで撹拌混合し、得られた原料混合物をニーダーで品温60°Cになるまで加熱した後、5分間保持した後品温15°Cに急速に冷却することにより調製した、品温20°Cでのボストウィック粘度計による粘度の測定値が0.3cmである、タマネギ具材入り調味液。」(以下、「甲5実施例6発明」という。)

(2)対比・判断

ア 本件発明1について

(ア)本件発明1と甲5実施例2発明との対比

甲5実施例2発明の「タマネギ具材入り調味液」は、本件発明1の「調味組成物」に相当する。

甲5実施例2発明の「タマネギ(5mmダイスカット)」は、本件発明1の「細分化された植物由来原料」に相当する。また、甲5実施例2発明は、「タマネギ(5mmダイスカット)」を合計100質量部中に50質量部含むから、本件発明1の「前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり、」との特定事項を満たす。

甲5実施例2発明の「冷水膨潤性澱粉」は、本件発明1の「加工デンプン」に相当する。また、甲5実施例2発明は、「冷水膨潤性澱粉」を2.5質量部含むから、本件発明1の「前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%であり」との特定事項を満たす。

してみると、両者の間の一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)

「細分化された植物由来原料と、加工デンプンとを含み、

前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり、

前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%である、

調味組成物。」

(相違点)

・相違点5-1

加工デンプンについて本件発明1は「粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、」と特定するのに対し、甲5実施例2発明は「冷水膨潤性澱粉」と特定されており、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であるか不明である点。

・相違点5-2

調味組成物の粘度について本件発明1は「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、」と特定するのに対し、甲5実施例2発明は「品温20°Cでのボストウィック粘度計による粘度の測定値が1cmである」点。

・相違点5-3

調味組成物について本件発明1は「更に、糖アルコールを含む、」と特定するのに対し、甲5実施例2発明はそのように特定されていない点。

(イ)相違点についての判断

事案に鑑み、相違点5-2について検討する。

B形粘度計とボストウィック粘度計とでは測定原理が異なり、両者の測定値を直接比較・換算できないことが技術常識であるから、甲5実施例2発明について「B形粘度計,ローター回転数1.5rpm」の条件で粘度を測定した場合の値は不明であり、相違点5-2は実質的な相違点である。

そして、甲5には、甲5実施例2発明において相違点5-2に係る本件発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。したがって、甲5及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲5実施例2発明において相違点5-2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

そして、本件発明1は、「液体組成物に添加されたとしても、分散性の向上と、植物由来原料の粒感の維持を同時に図ることができる。」及び「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供することができる。」という本件発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

また、本件発明1と甲5実施例6発明とを対比した場合も、両者は相違点5-1~相違点5-3と同じ内容の相違点を有し、同様に判断される。

(ウ)申立人の主張について

申立人は申立書において、甲5実施例2発明及び甲5実施例6発明の再現組成物を調製し、一般財団法人日本食品分析センターにおいてB形粘度計、ローターNo.M4、ローター回転数1.5rpm、60秒間、25°Cで測定したところ、その測定値は甲3の分析試験成績書に記載されるとおり、それぞれ18,000~23,000mPa・s及び110,000~150,000mPa・sであったことを示し、相違点5-2が相違点とならない旨を主張している(申立書47~53頁)。また、申立人は、上記再現組成物の調製経緯を説明及び証明するものとして回答書及び甲17A号証を令和7年9月26日に提出している。

当該回答書及び甲17A号証において、上記3(2)ア(ウ)の主張a及び主張bに加え、以下の点を主張している。

主張d.甲5再現組成物について

甲5には、冷水膨潤性澱粉が備えるべき性質について記載がないが、甲5と同じ出願人による甲2及び甲4において、「冷水膨潤性澱粉」という用語が上記3(2)ア(ウ)の主張cのとおり用いられており、甲5出願人は、甲2及び甲4と同様の加工デンプンを実施例において用いた蓋然性が高い。よって、甲5再現組成物を得るにあたり、甲2及び甲4に記載の「冷水膨潤性澱粉」の性質を充たすTEXTAID Aを「冷水膨潤性澱粉」として選択することは妥当である。

そこで、検討する。主張a及び主張bについて検討すると、上記3(2)ア(ウ)で示した判断と同様に、甲3を甲5実施例2発明及び甲5実施例6発明の粘度を証明する証拠として採用できない。さらに、主張dについて検討すると、甲5には原料として用いられた「冷水膨潤性澱粉」がどのようなものであるかについて具体的な記載はなく、甲5と同じ出願人による甲2及び甲4に「冷水膨潤性澱粉」の性質について記載されているからといって、甲5で用いられた冷水膨潤性澱粉がそれらと同じ性質を有するものとはいえず、甲5実施例の再現組成物において「冷水膨潤性澱粉」としてTEXTAID Aを選択することが妥当であるともいえない。よって、申立人の主張は採用することができない。

なお、仮に申立人の上記主張を採用できたとしても、本件発明1と甲5実施例2発明とは相違点5-3においても相違するところ、当該相違点については上記1(2)アと同様に判断され、本件発明1は甲5実施例2発明とはいえないし、甲5実施例2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。本件発明1と甲5実施例6発明とを対比した場合も同様である。

(エ)本件発明1についてのまとめ

以上のとおり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲5に記載された発明ではなく、甲5に記載された発明並びに甲5及び他の全ての証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2~4及び6について

本件発明2~4及び6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に判断される。

よって、本件発明2~4及び6は甲5に記載された発明ではなく、甲5に記載された発明並びに甲5及び他の全ての証拠の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立理由3(甲5を主たる証拠とする新規性・進歩性)についてのまとめ

以上のとおり、本件発明1~4及び6は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件発明1~4及び6は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~4及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。

よって、申立理由3によって本件特許の請求項1~4及び6に係る特許を取り消すことはできない。

5 申立理由4(甲6を主たる証拠とする新規性・進歩性)について

(1)甲6の記載事項等

ア 甲6の記載事項

甲6には「サラダ」に関し、次の記載がある。下線は当審で付したものである。

・「【請求項1】

脱気後の粘度(20°C)が30Pa・s以上であり、製造後少なくとも7日間経過時に、直径50μm以下の気泡を80×10

-12

m

3

当たり15~150個含有する気泡入り酸性水中油型乳化食品で和えてあることを特徴とするサラダ。」

・「【背景技術】

【0002】

マヨネーズ等の酸性水中油型乳化食品は、日常の食生活で広く親しまれている調味料の一種であり、これを用いた代表的な食品としてサラダがある。サラダは、その中の主な食材により、例えば、ゴボウサラダ、ポテトサラダ、マカロニサラダ等に分けられるが、これらのサラダには、きゅうり、玉葱、にんじん、レタス等の野菜が少なくとも配合されている。

【0003】

このようなサラダは、一般的に具材とする食材を酸性水中油型乳化食品で和えることにより製造されるが、スーパーマーケット等で販売される業務用のサラダは、製造後半日、場合によっては数日間冷蔵下で保管される。そのため、製造直後は問題ないものの、冷蔵保管中に、野菜から水分が次第に浸出し、その結果、サラダの外観を損なったり食感が水っぽくなる等の問題を生じた。

【0004】

野菜からの離水を抑える方法としては、例えば、特開昭61-185161号公報(特許文献1)には、野菜と水中油型の乳化食品とを混和させてサラダを製造するに際して、両者の混和段階で粉末ガムを添加することが提案されている。しかしながら、この方法では粉末ガムの均一分散が困難で充分な離水抑制効果が得られない場合があり、より安定した離水抑制効果が得られる方法の開発が望まれている。

【0005】

一方、マヨネーズ等の酸性水中油型乳化食品の食感を軽くする目的で、当該乳化食品中に気泡を含有させることが知られている(特許文献2,3,4)。この気泡入り酸性水中油型乳化食品の製造方法としては、(i)予めミキサー内の雰囲気を窒素ガスにし、その雰囲気下で粗乳化を行うことにより窒素ガスで含泡させた粗乳化物を製造し、次いでその含泡させた粗乳化物を精乳化する方法、(ii)粗乳化物を製造後、CRミキサー(VOTATOR DIVISION CHEMETRON CO.)で圧力をかけて窒素ガスで粗乳化物に含泡させ、次いでその粗乳化物を精乳化する方法、(iii)粗乳化物をコロイドミル等の仕上げ乳化機で精乳化した後、(ii)と同様の方法で精乳化物に窒素ガスで含泡させる方法がある。しかしながら、これらの文献には、気泡入り酸性水中油型乳化食品をサラダに用いた場合に、気泡がサラダの品質保持に与える影響等についてはなんら記載されていない。

【0006】

【特許文献1】特開昭61-185161号公報

【特許文献2】特開平11-32722号公報

【特許文献3】特開2000-210048号公報

【特許文献4】特開2005-333949号公報

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

そこで本発明の目的は、経時的に発現する野菜からの離水が抑えられた保存安定性に優れたサラダを提供するものである。」

・「【0012】

以下、本発明を詳細に説明する。なお、

本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。

また、気泡用ガスの注入量は標準状態での注入量、圧力はゲージ圧を意味する。」

・「【0026】

また、本発明で用いる気泡入り酸性水中油型乳化食品は、その脱気後の粘度(20°C)が30Pa・s以上、好ましくは50Pa・s以上、より好ましくは100Pa・s以上である。この粘度が30Pa・sより低いと、酸性水中油型乳化食品中に安定的に気泡を保持させることが困難となる。そのため、得られる気泡入り酸性水中油型乳化食品は、上述した気泡に関する規定を満たすことが難しくなる。反対に、過度に高粘度であると、微小な気泡を多量に含泡させることが困難となり、やはり上述した気泡に関する規定を満たすことが難しくなる。そのため、脱気後の粘度は500Pa・s以下が好ましい。

【0027】

ここで、

粘度は次のように測定される数値である。気泡入り酸性水中油型乳化食品を密封した雰囲気下に置き、当該雰囲気を吸引して真空状態あるいはそれに近い状態とし、十分に脱気する。得られた脱気物の粘度を、BH型粘度計を用い、回転数:2rpm、ローター:No.6、品温:20°Cの測定条件で測定し、1分後の示度から換算する。

【0028】

一方、本発明の気泡入り酸性水中油型乳化食品において、水相成分は、通常の酸性水中油型乳化食品と同様に、清水等の水相原料に、卵黄、ホスホリパーゼA処理卵黄等の乳化材及び食塩等の調味料を配合し、酸材によりpH3~4.6に調整したものである。水相成分には、通常の酸性水中油型乳化食品と同様に、本発明の効果を損なわない範囲で、キサンタンガム、アラビアガム、化工澱粉、湿熱処理澱粉等の増粘材、アスコルビン酸又はその塩、ビタミンE等の酸化防止剤等の種々の添加材を配合してもよい。」

・「【0046】

本発明のサラダは、上述した気泡入り酸性水中油型乳化食品を用いるものであるが、本発明のサラダには、本発明の効果を損なわない範囲でサラダに一般的に用いられる種々の具材用の食材、添加剤等の原料を適宜選択し配合することができる。例えば、りんご、みかん等の果実類、マカロニ等の麺類、ハム、卵、ツナ等の具材用食材、食塩、砂糖、グルタミン酸ソーダ、醤油、味噌、核酸系旨味調味料、柑橘果汁等の各種調味料、コショウ等の香辛料、キサンタンガム、アラビアガム、化工澱粉、湿熱処理澱粉等の増粘材、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸又はその塩、グリシン、酢酸ナトリウム、卵白リゾチーム、プロタミン、ポリリジン等の静菌剤、アスコルビン酸又はその塩、ビタミンE等の酸化防止剤、色素等が挙げられる。」

・「【0057】

[調製例3]

調製例1と同様の製造ラインを用いて気泡入り酸性水中油型乳化食品を次のように製造した。

【0058】

ミキサーで、下記の配合原料中、全水相原料を撹拌して均一な水相70kgを調製し、次に、得られた水相を撹拌しながら植物油30kgを徐々に注加して酸性水中油型乳化物である粗乳化物を製造した。得られた粗乳化物をポンプにより流量30L/minでコロイドミルに送流しながら、コロイドミルの給液口より1m上流の位置の配管に、窒素(純度99V/V%以上)を注入量30L/min、圧力1.8MPaで注入した。また、絞り弁の調整によりコロイドミルへの押込圧力を1.5MPaに加圧した。コロイドミルでは、回転数3560rpmで連続的に精乳化を施し、気泡入り酸性水中油型乳化食品を製造した。

【0059】

得られた気泡入り酸性水中油型乳化食品は、pH4.1であり、真空ポンプで脱気させた時の粘度が約180Pa・sであった。

また、得られた気泡入り酸性水中油型乳化食品を室温(20°C)で7日間保管し、調製例1と同様に気泡を観察したところ、80×10-12m3あたりの平均の気泡総数は116個であり、そのうち直径50μm以下の気泡は64個であった。

【0060】

<気泡入り酸性水中油型乳化食品の配合割合>

油相 30%

植物油(15°Cで液状)

水相

食酢(酸度5%) 20%

ホスホリパーゼA処理卵黄 8%

(リゾ化率:30%)(*1)

殺菌卵白 8%

冷水膨潤性澱粉 4%

食塩 1.5%

砂糖 1%

辛子粉 0.5%

グルタミン酸ナトリウム 0.3%

清水 残余

-----------------------------

(合計) 100%

(*1)調製例1と同じ」

・「【0084】

[実施例7]

下記の配合の容器詰めポテトサラダを製した。つまり、具材及び調製例3の気泡入り酸性水中油型乳化食品をミキサーで攪拌混合して均一とした。

得られたポテトサラダを樹脂製の成形容器に容器詰めした。

【0085】

<ポテトサラダの配合割合>

気泡入り酸性水中油型乳化食品(調製例3) 30%

じゃがいも(蒸煮、クラッシュ) 48%

きゅうり(生、輪切り) 5%

人参(ブランチング、銀杏切り) 3%

玉葱(生、スライス) 5%

レタス(生、3cm角チップ) 5%

紫キャベツ(生、千切り) 2%

コーン(ボイル) 2%

-------------------------------

合計 100%」

・「【0088】

[実施例9]

下記の配合の容器詰めゴボウサラダを製した。つまり、具材及び調製例3の気泡入り酸性水中油型乳化食品をミキサーで攪拌混合して均一とした。

得られたゴボウサラダを樹脂製の成形容器に容器詰めした。

【0089】

<ゴボウサラダの配合割合>

含気酸性水中油型乳化食品(調製例3) 17%

ゴボウ(ボイル、千切り) 53%

きゅうり(生、千切り) 10%

人参(ブランチング、千切り) 20%

--------------------------------

合計 100%

【0090】

[実施例10]

下記の配合の容器詰め大根サラダを製した。つまり、具材及び調製例3の気泡入り酸性水中油型乳化食品をミキサーで攪拌混合して均一とした。

得られた大根サラダを樹脂製の成形容器に容器詰めした。

【0091】

<大根サラダの配合割合>

含気酸性水中油型乳化食品(調製例3) 20%

大根 (生、千切り) 55%

きゅうり(生、千切り) 10%

ミズナ(生、4cm幅程度にカット) 15%

--------------------------------

合計 100%」

イ 甲6に記載された発明

上記アの記載、特に調製例3の気泡入り酸性水中油型乳化食品について整理すると、甲6には次の発明が記載されていると認める。

「植物油(15°Cで液状)30質量%からなる油相と、食酢(酸度5%)20質量%、ホスホリパーゼA処理卵黄8質量%、殺菌卵白8質量%、冷水膨潤性澱粉4質量%、食塩1.5質量%、砂糖1質量%、辛子粉0.5質量%、グルタミン酸ナトリウム0.3質量%及び残余の清水からなる水相を用いて製造される酸性水中油型乳化食品であって、

ミキサーで全水相原料を撹拌して均一な水相70kgを調製し、得られた水相を撹拌しながら植物油30kgを徐々に注加して酸性水中油型乳化物である粗乳化物を製造し、得られた粗乳化物をポンプにより流量30L/minでコロイドミルに送流しながら、コロイドミルの給液口より1m上流の位置の配管に、窒素を注入量30L/min、圧力1.8MPaで注入し、絞り弁の調整によりコロイドミルへの押込圧力を1.5MPaに加圧し、コロイドミルでは回転数3560rpmで連続的に精乳化を施して製造した、

真空ポンプで脱気させた時の粘度が、約180Pa・s(BH型粘度計を用い、回転数:2rpm、ローター:No.6、品温:20°Cの測定条件)である、気泡入り酸性水中油型乳化食品。」(以下、「甲6発明」という。)

(2)対比・判断

ア 本件発明1について

(ア)本件発明1と甲6発明との対比

甲6発明の「気泡入り酸性水中油型乳化食品」は、調味料としてサラダに和えるためのもの(請求項1、【0002】)であるから、本件発明1の「調味組成物」に相当する。

甲6発明の「冷水膨潤性澱粉」は、本件発明1の「加工デンプン」に相当する。また、甲6発明は、冷水膨潤性澱粉を4質量%含むから、本件発明1の「前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%であり、」との特定事項を満たす。

甲6発明は、品温20°Cでの粘度が約180Pa・sであるから、測定条件による変動を考慮しても、本件発明1の「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり」との特定事項を満たすことは明らかである。

してみると、両者の間の一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)

「加工デンプンを含み、

25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、

前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%である、

調味組成物。」

(相違点)

・相違点6-1

調味組成物について本件発明1は「細分化された植物由来原料」を含み、「前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり、」と特定するのに対し、甲6発明はそのように特定されていない点。

・相違点6-2

加工デンプンについて、本件発明1は「粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、」と特定するのに対し、甲6発明はそのように特定されていない点。

・相違点6-3

調味組成物について本件発明1は「更に、糖アルコールを含む、」と特定するのに対し、甲6発明はそのように特定されていない点。

(イ)相違点についての判断

相違点6-1について検討する。

甲6発明は「細分化された植物由来原料」を使用していないから、相違点6-1は実質的な相違点である。

また、甲6には、甲6発明において細分化された植物由来原料を用いるものとする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。したがって、甲6及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲6発明において相違点6-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

そして、本件発明1は、「液体組成物に添加されたとしても、分散性の向上と、植物由来原料の粒感の維持を同時に図ることができる。」及び「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供することができる。」という本件発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

(ウ)申立人の主張について

申立人は申立書において、甲6に記載された発明として以下の発明を認定し、本件発明1は甲6に記載された発明である旨を主張している(申立書55~61頁)。

「[A6]きゅうり(生、輪切り)、人参(ブランチング、銀杏切り)、紫キャベツ(生、千切り)、大根(生、千切り)等の野菜と、

[B6]冷水膨潤性澱粉を含み、冷水膨潤性澱粉は、冷水に分散して粒子状となる澱粉であり、アルファ化処理に加えて架橋処理等を行った澱粉である、

[C6]20°Cでの粘度が、180Pa・s(BH形粘度計,ローター回転数2rpm)以上であり、

[D6]きゅうり(生、輪切り)、人参(ブランチング、銀杏切り)、紫キャベツ(生、千切り)、大根(生、千切り)等の野菜をサラダ全体に対して70~83重量%含み、

[E6]冷水膨潤性澱粉をサラダ全体に対して0. 68~1.2重量%含む

[F6]サラダ。」(以下、「甲6サラダ発明」という。)

そこで、検討する。仮に、甲6に記載された発明として申立人が主張する甲6サラダ発明を認定できるとした場合、本件発明1と甲6サラダ発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

・相違点6-4

本件発明1は「調味組成物」であるのに対し、甲6サラダ発明は「サラダ」である点。

当該相違点について検討すると、「サラダ」は調味組成物として用いられる食品ではないから、相違点6-4は実質的な相違点である。また、甲6には甲6サラダ発明を調味組成物として用いる動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。

申立人は、甲6サラダ発明の「サラダ」は本件発明1の「調味組成物」に相当する旨を主張しているが、上記検討したとおり、相違点6-4は実質的な相違点であり、甲6サラダ発明において相違点6-4に係る本件発明1の特定事項を満たすものとすることも当業者にとって容易とはいえない。よって、申立人の主張は採用できない。

(エ)本件発明1についてのまとめ

以上のとおり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲6発明ではなく、甲6発明並びに甲6及び他の全ての証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2~4及び6について

本件発明2~4及び6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に判断される。

よって、本件発明2~4及び6は甲6発明ではなく、甲6発明並びに甲6及び他の全ての証拠の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立理由4(甲6を主たる証拠とする新規性・進歩性)についてのまとめ

以上のとおり、本件発明1~4及び6は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件発明1~4及び6は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~4及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。

よって、申立理由4によって本件特許の請求項1~4及び6に係る特許を取り消すことはできない。

6 申立理由5(甲7を主たる証拠とする新規性・進歩性)について

(1)甲7の記載事項等

ア 甲7の記載事項

甲7には「植物性破砕物含有酸性液状調味料」に関し、次の記載がある。下線は当審で付したものである。

・「[請求項1]

植物性破砕物と、ガム類と、冷水膨潤性澱粉と、食酢とを含有する酸性液状調味料であって、(A)20°Cにおける粘度が500mPa・s以上、10000mPa・s以下であり、(B)解離酢酸濃度が0.16質量%以下である、酸性液状調味料。

・「発明が解決しようとする課題

[0008] 本発明の課題は、攪拌・振り混ぜ混合後の泡切れに優れた植物性破砕物含有酸性液状調味料を提供することにある。」

・「[0016]<植物性破砕物>

本発明の液状調味料は、植物性破砕物を含有する。本発明における「植物性破砕物」としては、野菜や果実を切削やすり潰す等の処理により得られる搾汁液やピューレ、ペースト等が挙げられる。また、これらをさらに加熱等の処理により濃縮したものや、熱風乾燥、凍結乾燥、減圧加熱乾燥、マイクロウェーブ乾燥等で乾燥された乾燥野菜等も挙げられる。

[0017] 野菜としては、例えば、トマト、ピーマン、パプリカ、キュウリ、ナス、レッドベルペッパー等の果菜、タマネギ(オニオン)、ショウガ(ジンジャー)、ニンニク(ガーリック)、大根、ニンジン等の根菜、キャベツ、レタス、ほうれん草、白菜、セロリ、小松菜、チンゲン菜、モロヘイヤ、ケール、シソ、ニラ、パセリ等の葉菜、ニンニク、アスパラガス、たけのこ等の茎菜、ブロッコリー、カリフラワー等の花菜等、その他きのこ類等に由来する野菜が挙げられる。これらのうち、トマト、キュウリ、ショウガ、タマネギ、ニンニク(ガーリック)、ニンジン、パプリカ、レッドベルペッパー、ダイコンがより好ましい。野菜はこれらに限定されるものではなく、一種又は二種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することができる。

[0018] 果実としては、例えば、りんご、桃、ぶどう、アセロラ、ブルーベリー、梨、オレンジ、レモン、ゆず、すだち、ライム、みかん、グレープフルーツ、いちご、バナナ、メロン、キウイ、パイナップル、カシス、アプリコット、グアバ、プラム、マンゴー、パパイヤ、ライチ等に由来する果実が挙げられる。これらのうち、オレンジ等の柑橘類の果実がより好ましい。果実はこれらに限定されるものではなく、一種又は二種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することができる。なお、これらの野菜、果実より得られた植物性破砕物を、本発明の液状調味料に一種又は二種以上を任意の組み合わせ、及び比率で配合してもよい。」

・「[0023] また、同様の理由から、本発明の液状調味料には、所定サイズの膨潤状態の植物性破砕物が、一定量含まれていることが好ましい。具体的には、液状調味料全量に対し、100メッシュ篩を通過しない(100メッシュオンの)膨潤状態の植物性破砕物の含有率が、通常0.2質量%以上、中でも0.5質量%以上であることが好ましく、また、通常60質量%以下、中でも50質量%以下であることが好ましい。本含有率が前記範囲未満であると、植物性破砕物自体の色調や風味を十分に感じることができない場合があり、逆に前記範囲を超えると、植物性破砕物自体の風味が過剰となり、調味料全体の風味が阻害される場合がある。」

・「[0030]<ガム類>

本発明の液状調味料は、増粘剤としてガム類を含有する。本発明における「ガム類」とは、例えば、キサンタンガム、グァーガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、タマリンドシードガム、タラガム、トラガントガム、澱粉(下記に別途定義する「冷水膨潤性澱粉」ではない澱粉、加工澱粉を含む)等が挙げられる。中でも、ガム類としてはキサンタンガム、タマリンドシードガム、グァーガムが好ましく、キサンタンガムがより好ましい。ガム類は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。」

・「[0032]<冷水膨潤性澱粉>

本発明の液状調味料は、増粘剤として冷水膨潤性澱粉を含有する。

本発明における「冷水膨潤性澱粉」とは、25°Cの冷水を吸水して膨潤し、質量が2倍以上に増加する澱粉をいう。

冷水膨潤性澱粉を増粘剤として上記ガム類と併用し、かつ液状調味料の粘度及び解離酢酸定数を別掲の通りに調整することで、粘性を有するが泡切れに優れた液状調味料を得ることができる。冷水膨潤性澱粉の例としては、α化澱粉、リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉等の、架橋処理を施した澱粉が挙げられる。冷水膨潤性澱粉は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。

[0033] より具体的に、

「冷水膨潤性澱粉」としては、1質量%水溶液で膨潤させた状態で、4メッシュパス・100メッシュオンする成分が通常80質量%以上、中でも90質量%以上のものを用いるのが好ましい。

下記サイズより小さいと、攪拌混合や振り混ぜた際の泡切れや、調味液中の気泡の保持性の低下の効果が得られにくく、調味液中の気泡が阻害となり植物性破砕物が本来有していた植物由来の風味が口中で発揮されにくくなるばかりか、気泡のブツブツとした食感ばかりが目立ち、植物性破砕物が本来有する植物自体の好ましい食感が感じられにくい。

[0034] 本発明の液状調味料に対する冷水膨潤性澱粉の含有率は、限定されるものではないが、液状調味料全体に対する乾燥状態の冷水膨潤性澱粉の含有率で、通常0.05質量%以上、中でも0.1質量%以上であることが好ましく、また、通常5質量%以下、中でも3質量%以下であることが好ましい。本含有率が前記範囲未満であると、攪拌・振り混ぜ混合後の泡切れの改善効果が十分得られない場合があり、逆に前記範囲を超えると、調味料の風味、食感が損なわれる場合がある。」

・「[0047]<粘度>

本発明の液状調味料は、攪拌混合や振り混ぜたあとの泡立ちや、気泡の保持効果を抑える点から、所定の範囲内の粘度を有することが好ましい。具体的には、液状調味料の20°Cにおける粘度が、通常500mPa・s以上、好ましくは600mPa・s以上、更に好ましくは700mPa・s以上であり、また、通常10000mPa・s以下、好ましくは9500mPa・s以下、更に好ましくは9000mPa・s以下である。液状調味料の20°Cにおける粘度が前記範囲未満であると、液状調味料中の植物性破砕物や、液状調味料自体のタレ落ちを防げなくなる場合がある。逆に前記範囲を超えると攪拌混合や振り混ぜた際の泡切れや、調味液中の気泡の保持性がうまく低下されなくなる場合がある。

[0048] なお、本発明において、液状調味料の20°Cにおける粘度は、当業者に公知の手法を用いて測定することが可能である。斯かる測定法の例としては、市販のB型粘度計(単一円筒形回転粘度計を表し、通称ブルックフィールド形回転粘度計とも称される。例えば東機産業社製の「B-II」)などの各種粘度計による測定が挙げられる。具体的には、20°Cに調整した液状調味料をB型粘度計の測定用容器に適量充填し、容器をB型粘度計にセットし、測定粘度に適合したローターを用いて適当な回転数で粘度を測定することができる。」

・「[0051] 例えば、本発明の液状調味料がノンオイルタイプのドレッシングである場合には、一般的に、水、糖類(高甘味度甘味料を含む)、食塩が基本原料となる。本発明の液状調味料には、このような基本原料に加えて、例えば、香辛料、香辛料抽出物、香味オイル、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、有機酸系調味料、風味原料、旨味調味料、酒類、フレーバーなどの呈味・風味成分、ガム類や冷水膨潤性澱粉以外の粘度調整剤、安定剤、着色料、カルシウム塩等などの添加剤などを用いることができる。これらの成分の含有量は、特に限定はされず、用途に応じて適宜決定することができる。

[0052] 上記糖類としては、例えば、砂糖、麦芽糖、果糖、異性化液糖、ブドウ糖、水あめ、デキストリンやソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコール類等が挙げられる。これらの糖類は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。」

・「[0074]

[実施例1]

増粘剤の含有率及び粘度の検討

(1)試験品の調製

下記の表1に示す配合量に従い、トマトペースト(植物性破砕物)、食塩、砂糖、醸造酢(酸度15%)、及び水を配合すると共に、組み合わせと配合比を変えたキサンタンガム(ガム類)及び冷水膨潤性澱粉を配合し、60°Cで均一になるよう十分に攪拌混合した後、90°Cで5分の殺菌処理を行い、ボトルに充填し、酸性液状調味料の試験品No.1~8を調製した。なお、上記トマトペーストは、全量を100メッシュの篩に載置した際、90質量%以上が100メッシュ篩にオンした。

[0075](2)試験品の評価手順

[粘度の測定]

下記(1)で調製した試験品について、以下の手順により粘度を測定した。即ち、B型粘度計として、東機産業社製の「B-II」を用い、20°Cに調整した試験品をB型粘度計の測定用容器に適量充填し、容器をB型粘度計にセットし、測定粘度に適合したローターを用いて適当な回転数で粘度を測定した。

・「[0083](3)試験品の評価結果

試験品No.1~8の組成、粘度測定結果、膨潤後の冷水膨潤性澱粉及び植物性破砕物の含有率、並びに官能検査結果を下記表1に示す。なお、以降の表を含め、表中「含有率」とは、別途記載ある場合を除き、調味料全体に対する含有率を意味する。

[表1]

97

122

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[0084] 上記表1に示すように、植物性破砕物としてトマトペーストを使用し、食塩、砂糖、醸造酢(酸度15%)、及び冷水膨潤性澱粉を配合した液状調味料において、増粘剤としてキサンタンガム(ガム類)及び冷水膨潤性澱粉を併用し、解離酢酸濃度を0.15質量%以下に調整した場合、粘度が500~10000mPa・sの範囲内にある試験品No.3~6及び8の液状調味料では、攪拌混合後の泡立ちが抑えられるとともに、液中における泡保持性が低下し、泡切れが良くなる傾向が認められた。また、振り混ぜ後の色調も気泡による白っぽい濁りがなく、振り混ぜ前後の色調の変化もほとんどなく、植物性破砕物由来の鮮やかな色が保持されていた。一方、粘度が500mPa・sに満たない試験品No.1の液状調味料、粘度が10000mPa・sを超える試験品No.7の液状調味料、更には増粘剤として冷水膨潤性澱粉を使用していない試験品No.2の液状調味料では、泡切れに劣り、他の評価項目の面でも不十分なものであった。」

イ 甲7に記載された発明

上記アの記載、特に実施例1の試験品No.6として調製された酸性液状調味料について整理すると、甲7には次の発明が記載されていると認める。

「トマトペースト(植物性破砕物)50kg、食塩30kg、砂糖100kg、醸造酢(酸度15%)50kg、キサンタンガム15kg、冷水膨潤性澱粉10kg及び残部の水を配合して計1000kgとし、60°Cで均一になるよう十分に攪拌混合した後、90°Cで5分の殺菌処理を行い、ボトルに充填して調製した、

20°Cに調整した試験品をB型粘度計の測定用容器に適量充填し、容器をB型粘度計にセットし、測定粘度に適合したローターを用いて適当な回転数で測定した粘度が8743mPa・sである、酸性液状調味料。」(以下、「甲7発明」という。)

(2)対比・判断

ア 本件発明1について

(ア)本件発明1と甲7発明との対比

甲7発明の「酸性液状調味料」及び「トマトペースト(植物性破砕物)」は、それぞれ本件発明1の「調味組成物」及び「細分化された植物由来原料」に相当する。

甲7発明の「冷水膨潤性澱粉」は、25°Cの冷水を吸水して膨潤し、質量が2倍以上に増加する澱粉であって、1質量%水溶液で膨潤させた状態で、4メッシュパス・100メッシュオンする成分が通常80質量%以上、中でも90質量%以上のもの([0032]~[0033])であるから、本件発明1の「加工デンプン」に相当し、「前記加工デンプンは、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、」との特定事項を満たす。また、甲7発明は「冷水膨潤性澱粉」を1000kg中に10kg含むから、本件発明1の「前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%であり、」との特定事項を満たす。

してみると、両者の間の一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)

「細分化された植物由来原料と、加工デンプンとを含み、

前記加工デンプンは、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、

前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%である、

調味組成物。」

(相違点)

・相違点7-1

調味組成物の粘度について本件発明1は「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、」と特定するのに対し、甲7発明は「20°Cに調整した試験品をB型粘度計の測定用容器に適量充填し、容器をB型粘度計にセットし、測定粘度に適合したローターを用いて適当な回転数で測定した粘度が8743mPa・sである」点。

・相違点7-2

細分化された植物由来原料について、本件発明1は「前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり、」と特定するのに対し、甲7発明は「トマトペースト(植物性破砕物)」を1000kg中50kg含むものである点。

・相違点7-3

調味組成物について本件発明1は「更に、糖アルコールを含む、」と特定するのに対し、甲7発明はそのように特定されていない点。

(イ)相違点についての判断

相違点7-1について検討する。

相違点7-1が実質的な相違点であることは明らかである。

そして、甲7においては、酸性液状調味料について「20°Cにおける粘度が500mPa・s以上、10000mPa・s以下」(請求項1)であることが必須とされており、一般に測定温度が低い場合には粘度が上昇することを考慮すると、甲7における粘度の上限値は本件発明1で特定される粘度の範囲(25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm))を下回るものと認められる。さらに、甲7には「液状調味料の20°Cにおける粘度が、・・通常10000mPa・s以下、・・更に好ましくは9000mPa・s以下である。」([0047])との記載があり、上限値の10000mPa・sよりもさらに低い粘度が好ましいとされている。そうすると、甲7発明において、酸性液状調味料の粘度を増大させて相違点7-1に係る本件発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けはないから、甲7及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲7発明において相違点7-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

そして、本件発明1は、「液体組成物に添加されたとしても、分散性の向上と、植物由来原料の粒感の維持を同時に図ることができる。」及び「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供することができる。」という本件発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

(ウ)申立人の主張について

上記相違点7-1に関して、申立人は申立書において、以下のように主張している(申立書62~68頁)。

「甲7発明は、液状調味料の粘度を、「B型粘度計として、東機産業社製の「B-II」を用い、2 0°Cに調整した試験品をB型粘度計の測定用容器に適量充填し、容器をB型粘度計にセットし、測定粘度に適合したローターを用いて適当な回転数で粘度を測定し」、「10000mPa・s以下」としたものである(甲7段落0048)。甲7記載の測定条件は、甲1記載の測定条件よりも、測定温度が低い(したがって、一般的に粘度が上昇する方向にある)ものの、「測定粘度に適合したローターを用いて適当な回転数」で測定するとされている。そうすると、20°Cで、適当な回転数で測定された試験品No.6の粘度(8,743mPa・s)、試験品No.7の粘度(11,574mPa・s)について、甲1の測定条件で測定した場合、本件特許発明の「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)」と同等である蓋然性は高い。仮にそうでなくても、測定条件を調整して、20°Cで適当な回転数で測定して10,000mPa・sの粘度を有するとともに、甲1測定条件の下で10,000mPa・s以上の粘度を有する甲7発明品を得ることは当業者であれば適宜なし得たことである。」

そこで、検討する。

申立人は甲7発明である試験品No.6の粘度(8,743mPa・s)が相違点7-1に係る本件発明1の特定事項を満たす蓋然性が高いと主張しているが、その根拠は不明であるし、申立人も指摘しているように測定温度が低い場合には一般的に粘度が上昇する方向にあることを考慮すれば、甲7発明の粘度は相違点7-1に係る本件発明1の特定事項を満たさないと考えられる。そして、上記(イ)で検討したとおり、甲7においては酸性液状調味料の粘度として上限値の10000mPa・sよりもさらに低い粘度が指向されていることから、甲7発明において相違点7-1に係る本件発明1の特定事項を満たすものとすることが動機付けられるとはいえない。

また、仮に甲7の試験品No.7の酸性液状調味料に基づいて甲7に記載された発明を認定したとしても、試験品No.7は、少なくとも植物由来原料の配合量及び糖アルコールを含まない点で本件発明1と相違する。そして、試験品No.7は振り混ぜ後の泡切れの良さ、色調の点で劣る比較例に相当する調味料であり、甲7に接した当業者が試験品No.7を出発点としてその組成を変更し、本件発明1の特定事項を満たすものとすることが動機付けられるとはいえない。

よって、申立人の主張は採用できない。

(エ)本件発明1についてのまとめ

以上のとおり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲7発明ではなく、甲7発明並びに甲7及び他の全ての証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明3、4及び6について

本件発明3、4及び6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に判断される。

よって、本件発明3、4及び6は甲7発明ではなく、甲7発明並びに甲7及び他の全ての証拠の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立理由5(甲7を主たる証拠とする新規性・進歩性)についてのまとめ

以上のとおり、本件発明1、3、4及び6は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件発明1、3、4及び6は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、3、4及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。

よって、申立理由5によって本件特許の請求項1、3、4及び6に係る特許を取り消すことはできない。

7 申立理由7(甲9を主たる証拠とする新規性・進歩性)について

(1)甲9の記載事項等

ア 甲9の記載事項

甲9には「トマトパスタソース」に関し、次の記載がある。

・「

129

113

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イ 甲9に記載された発明

上記アの記載、特に配合1のトマトパスタソースについて整理すると、甲9には次の発明が記載されていると認める。

「ダイストマト35.0部、トマトペースト6.0部、ソテーオニオン2.5部、オリーブオイル2.0部、砂糖1.28部、RSS(レアシュガースィート;希少糖含有シロップ)1.0部、食塩0.8部、コンソメイトチキン1.0部、香辛料0.62部、にんにく0.35部、パインゴールドVE(加工デンプン)1.7部及び合計量が100部となるまでの水を混合し、撹拌・加熱し、冷却し充填して120°C20分レトルトして調製される、トマトパスタソース。」(以下、「甲9発明」という。)

(2)対比・判断

ア 本件発明1について

(ア)本件発明1と甲9発明との対比

甲9発明の「トマトパスタソース」は、本件発明1の「調味組成物」に相当する。

甲9発明の「ダイストマト」及び「ソテーオニオン」は、本件発明1の「細分化された植物由来原料」に相当する。また、甲9発明は、これらの原料を100部中に合計37.5部含み、当該配合量が質量部を意味することは明らかであるから、本件発明1の「前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり、」との特定事項を満たす。

甲9発明の「パインゴールドVE(加工デンプン)」は、本件発明1の「加工デンプン」に相当する。また、甲9発明は合計量100部中に「パインゴールドVE(加工デンプン)」1.7部配合されており、当該配合量が質量部を意味することは明らかであるから、本件発明1の「前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%であり、」との特定事項を満たす。

してみると、両者の間の一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)

「細分化された植物由来原料と、加工デンプンとを含み、

前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり、

前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%である、

調味組成物。」

(相違点)

・相違点9-1

加工デンプンについて、本件発明1は「粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、」と特定するのに対し、甲9発明はそのように特定されていない点。

・相違点9-2

調味組成物の粘度について本件発明1は「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、」と特定するのに対し、甲9発明はそのように特定されていない点。

・相違点9-3

調味組成物について本件発明1は「更に、糖アルコールを含む、」と特定するのに対し、甲9発明はそのように特定されていない点。

(イ)相違点についての判断

事案に鑑み、相違点9-2について検討する。

甲9発明のトマトパスタソースは粘度が不明であり、相違点9-2は実質的な相違点である。

また、甲9には、トマトパスタソースの粘度を調整することを動機付ける記載はなく、他の証拠にもない。よって、甲9及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲9発明において相違点9-2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。甲9発明を甲9に記載されたコントロール又は配合2のトマトパスタソースに基づいて認定した場合も同様である。

そして、本件発明1は、「液体組成物に添加されたとしても、分散性の向上と、植物由来原料の粒感の維持を同時に図ることができる。」及び「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供することができる。」という本件発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

(ウ)申立人の主張について

上記相違点9-2に関して、申立人は申立書において以下のように主張している(申立書76~77頁)。

「甲9には甲9発明の粘度についての記載はない。しかしながら、トマトパスタソースは、一般にトマトピューレ、ミートソースに類する粘度を有するものであるところ、甲11の表3には、トマトピューレ、ミートソースが属する「ピュレ」あるいは「ピュレまたはペースト」の粘度が、B型粘度計を用い、品温20±2°C、回転数12rpmで測定して「1,006~16,534mPa・s」「4,202~11,332mPa・s」であったことが記載されている。温度が低いと一般的に粘度は上昇する方向に、回転数が高いと一般的に粘度が低下する方向にあることに鑑みれば、甲9記載のトマトパスタソースの粘度は、25°CでB型粘度計、ローター回転数1.5rpmで測定した場合、10,000mPa・s以上である蓋然性は高い。」

そこで、検討する。甲11は、「ピュレ」及び「ペースト」についての認識調査のためにトマトピューレ、ミートソースを含む特定の商品群についてその粘度を測定した結果を示すものであって、甲9発明とは異なる食品の測定結果であるから、甲9発明の粘度が甲11に記載された値に一致するものとはいえない。また、本件発明1が「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、」と特定するのに対し、甲11に記載された粘度の値は「1,006~16,534mPa・s」「4,202~11,332mPa・s」と幅広く、仮に、甲9発明の粘度が甲11に記載された値と一致するものとしても、甲9発明が相違点9-2に係る本件発明1の特定事項を満たす蓋然性が高いとまではいえない。

よって、申立人の主張は採用できない。

(エ)本件発明1についてのまとめ

以上のとおり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲9発明ではなく、甲9発明並びに甲9及び他の全ての証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明3及び6について

本件発明3及び6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に判断される。

よって、本件発明3及び6は甲9発明ではなく、甲9発明並びに甲9及び他の全ての証拠の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立理由7(甲9を主たる証拠とする新規性・進歩性)についてのまとめ

以上のとおり、本件発明1、3及び6は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件発明1、3及び6は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、3及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。

よって、申立理由7によって本件特許の請求項1、3及び6に係る特許を取り消すことはできない。

8 申立理由8(甲12を主たる証拠とする新規性・進歩性)について

(1)甲12の記載事項等

ア 甲12の記載事項

甲12には「液状又はゲル状食品」に関し、次の記載がある。下線は当審で付したものである。

・「【請求項1】 液状又はゲル状の食品であって、Bxが7~50であること、二段階で架橋処理したα-化加工澱粉を0.5~7質量%含有すること、及び70~135°Cで加熱処理されていることを特徴とする食品。」

・「【0003】

【発明が解決しようとする課題】上述のような観点から、本発明は、食する前の外観から期待される食感と異なる食感を有する液状食品又はゲル状食品を提供することを目的とするものである。例えば、低粘性の液状食品であって、外観的にはもろもろしているがパルプ質のようなざらつき感がなく、滑らかで喉越しが良いといった外観と食感の違いが楽しめる食品、高粘性の液状食品であって、粘度やボデー感はあるが舌にまとわりつくような糊っぽさがなくて口溶けが良い食品、外観及び最初の口当たりはゲル状食品のようであるが、噛むと即座に崩壊してゲル感が消失する食品等を提供することを目的とするものである。」

・「【0016】本発明の食品には、該加工澱粉以外の食品材料も、それぞれの食品で従来から使用されているものを必要に応じて選択して用いることができる。例えば、砂糖、水飴、グルコース、異性化糖、フラクトース、マルトース、トレハロース、ソルビトール、マルチトール、合成甘味料など種々の甘味料を、甘味を付与するため、及び/又は、味質や水分活性を調節するため、などの所望の目的に合わせて適宜選択して使用することができる。粉飴やデキストリン、それらの還元物なども適宜用いることができる。また、それぞれの使用量は所望により適宜調節される。例えば,高粘性の液状食品にあっては、二段階で架橋処理したα-化加工澱粉がその添加量により増粘効果もあるので、従来から使用されている増粘剤の量を適宜調節して用いる。また、ゲル状食品ではゲル化剤の量を所望により調節して用いる。

【0017】以下に実施例をあげて、本発明をより具体的に説明するが、実施例において、部とあるのは質量部、%は質量%を意味する。また、二段階で架橋処理したα-化加工澱粉は、「パインゴールドVE」(松谷化学工業株式会社製)などの市販品があり、実施例では「パインゴールドVE」(以下「PVE」)を使用した。」

・「【0025】

【実施例7】表6に示す割合(部)で原材料を使用し、パスターソースを製造した。即ち鍋にオリーブオイルを熱し、ニンニクと玉ねぎを炒める。次いでトマト水煮、ブイヨン、ワイン、水を加えて10分煮込み、塩、胡椒を加えて、火を止めて放冷する。加熱により減量した水分を補充し、PVEを添加し、レトルトパウチに詰め、120°Cで20分間レトルト殺菌する。比較例7のパスターソースは、外観上の食感、食した時の食感のいずれもさらさらとした感じがしていた。一方、実施例のパスターソースは外観的にはもろもろしているが、食したところざらつきもなく口溶けも良好であった。

【0026】

【表6】

71

104

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イ 甲12に記載された発明

上記アの記載、特に実施例7として調製されたパスターソースについて整理すると、甲12には次の発明が記載されていると認める。

「鍋にオリーブオイル20質量部を熱し、ニンニクみじん切り3質量部と玉ねぎみじん切り30質量部を炒め、次いでトマト水煮780質量部、固形ブイヨン6質量部、赤ワイン100質量部、水54質量部を加えて10分煮込み、塩6質量部、胡椒1質量部を加えて、火を止めて放冷し、加熱により減量した水分を補充し、PVE(α-化加工澱粉である「パインゴールドVE」)20質量部を添加し、レトルトパウチに詰め、120°Cで20分間レトルト殺菌して製造した、パスターソース。」(以下、「甲12発明」という。)

(2)対比・判断

ア 本件発明1について

(ア)本件発明1と甲12発明との対比

甲12発明の「パスターソース」は、本件発明1の「調味組成物」に相当する。

甲12発明の「ニンニクみじん切り」、「玉ねぎみじん切り」及び「トマト水煮」は、本件発明1の「細分化された植物由来原料」に相当する。また、甲12発明は、これらの原料を合計1020質量部中に813質量部含むから、本件発明1の「前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり、」との特定事項を満たす。

甲12発明の「PVE(α-化加工澱粉である「パインゴールドVE」)」は、本件発明1の「加工デンプン」に相当する。また、甲12発明は、「PVE(α-化加工澱粉である「パインゴールドVE」)」を合計1020質量部中に20質量部含むから、本件発明1の「前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%であり、」」との特定事項を満たす。

してみると、両者の間の一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)

「細分化された植物由来原料と、加工デンプンとを含み、

前記細分化された植物由来原料は、前記調味組成物全量に対して、23.8重量%以上であり、

前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%であり、

調味組成物。」

(相違点)

・相違点12-1

加工デンプンについて、本件発明1は「粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、」と特定するのに対し、甲12発明はそのように特定されていない点。

・相違点12-2

調味組成物の粘度について本件発明1は「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、」と特定するのに対し、甲12発明はそのように特定されていない点。

・相違点12-3

調味組成物について本件発明1は「更に、糖アルコールを含む、」と特定するのに対し、甲12発明はそのように特定されていない点。

(イ)相違点についての判断

事案に鑑み、相違点12-2について検討する。

甲12発明のパスターソースは粘度が不明であり、相違点12-2は実質的な相違点である。

また、甲12には、パスターソースの粘度を調整することを動機付ける記載はなく、他の証拠にもない。よって、甲12及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲12発明において相違点12-2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

そして、本件発明1は、「液体組成物に添加されたとしても、分散性の向上と、植物由来原料の粒感の維持を同時に図ることができる。」及び「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供することができる。」という本件発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。

(ウ)申立人の主張について

上記相違点12-2に関して、申立人は申立書において以下のように主張している(申立書78~81頁)。

「甲12には甲12発明の粘度についての記載はない。しかしながら、パスタソースは、一般にトマトピューレ、ミートソースに類する粘度を有するものであるところ、甲11の表3には、トマトピューレ、ミートソースが属する「ピュレ」あるいは「ピュレまたはペースト」の粘度が、B型粘度計を用い、品温20±2°C、回転数12rpmで測定して「1,006~16,534mPa・s」「4,202~11,332mPa・s」であったことが記載されている。温度が低いと一般的に粘度は上昇する方向に、回転数が高いと一般的に粘度が低下する方向にあることに鑑みれば甲12記載のパスタソースの粘度は、25°CでB型粘度計、ローター回転数1.5rpmで測定した場合、10,000mPa・S以上である蓋然性は高い。」

そこで、検討すると、申立人の主張は、上記6(2)ア(ウ)に記載した相違点9-2に関しての主張と同旨である。そして、当該主張については、上記6(2)ア(ウ)で示した判断と同様に判断される。

よって、申立人の主張は採用できない。

(エ)本件発明1についてのまとめ

以上のとおり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲12発明ではなく、甲12発明並びに甲12及び他の全ての証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明3、4及び6について

本件発明3、4及び6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に判断される。

よって、本件発明3、4及び6は甲12発明ではなく、甲12発明並びに甲12及び他の全ての証拠の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立理由8(甲12を主たる証拠とする新規性・進歩性)についてのまとめ

以上のとおり、本件発明1、3、4及び6は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件発明1、3、4及び6は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、3、4及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。

よって、申立理由8によって本件特許の請求項1、3、4及び6に係る特許を取り消すことはできない。

9 申立理由9(甲2~甲12を主たる証拠とする進歩性)について

申立理由9について、申立人は申立書において、以下のように主張している(申立書82頁)。

「9.理由9:甲2~12を引例とした進歩性欠如(特許法第29条第2項)

甲2から甲12には上記2.から8.の通りの記載があり、本件特許発明1から6は、甲2から甲12の記載に基づいて、当業者であれば容易に発明できたものである。」

上記主張について検討すると、申立人の主張は、本件発明1~4及び6は、甲2、甲4~甲9及び甲12のいずれかに記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張するものと認められる。しかしながら、上記2~8で検討したとおり、本件発明1~4及び6は、甲2、甲4~甲9及び甲12のいずれを主たる証拠とした場合にも、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

よって、申立人の主張は採用できず、申立理由9によって本件特許の請求項1~4及び6に係る特許を取り消すことはできない。

10 申立理由10(明確性要件)について

(1)明確性要件の判断基準

特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

(2)明確性要件の判断

本件特許の請求項1~4及び6の記載は、上記第3のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、本件特許の明細書の記載及び図面とも整合する。

したがって、本件発明1~4及び6に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。

(3)特許異議申立人の主張について

申立人は、本件発明1~4及び6について、上記第4 10(1)~(3)のとおり主張しているので、以下、検討する。

申立人の主張の要点は、本件発明1の「前記加工デンプンは、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、」との特定事項における「難溶性」が、どの程度の溶解度を意味するのか特定されておらず不明確である点(以下、「主張1」という。)、「水不溶性又は難溶性」がどのような温度条件での溶解度に基づき判断されるものであるのか特定されておらず不明確である点(以下、「主張2」という。)にある。

そこで、検討する。

ア 主張1について

「難溶性」との語について、本件明細書には具体的な溶解度の数値的定義は示されていない。しかし、化学分野において「難溶性」との用語は水に溶けにくい性質を表す用語として広く用いられており、例えば未加工のデンプンが水に難溶性であることも周知である。そうすると、本件発明1の「難溶性」との記載について、本件明細書に具体的な溶解度範囲の記載がないとしても、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。

イ 主張2について

「加工デンプン」が「水不溶性又は難溶性」であることについて、本件明細書には以下の記載がある。

「本実施形態に係る加工デンプンは、粒状である。加工デンプンが粒状であることで、上記細分化された植物由来原料と均一に斑なく混合される。従って、調味組成物の(例えば)液体組成物中での分散性向上に大きく寄与する。」(【0023】)

「それに加え、本実施形態に係る加工デンプンは、水不溶性又は難溶性である。この条件を満たすものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、オクテニルコハク酸デンプン、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、又はリン酸架橋デンプンが挙げられる。これらのうちの一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。」(【0026】)

「本実施形態に係る加工デンプンは水不溶性又は難溶性であることから、例えば、調味組成物内の水分に溶解しない(又は水分に溶解するとしても、溶解しないと同視し得る程、溶解度が少ない)。そのため、加工デンプンが、調味組成物内で均一に分散されると共に、植物由来原料との均一混合を維持できる。」(【0028】)

これらの記載から、本件発明1における「水不溶性又は難溶性」の技術的意義は、調味組成物が調製・使用される温度条件下で、水に溶けない(又はほとんど溶けない)ことにあると理解できる。さらに、水に加えた場合に溶けにくく、粒状に分散する澱粉は広く知られており(例えば甲2及び甲4に記載の冷水膨潤性澱粉、甲10に記載のパインゴールドVE等)、当業者であれば、本件明細書の記載に基づき、本件発明1が特定する加工澱粉にどのようなものが含まれるか理解できる。そうすると、本件発明1の「水不溶性又は難溶性」との記載について、本件明細書に温度条件について具体的な記載がないとしても、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。

よって、申立理由10に係る申立人の主張は、いずれも採用できない。

(4)申立理由10(明確性要件)についてのまとめ

以上のとおり、本件特許の請求項1~4及び6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由10によっては取り消すことができない。

11 申立理由11(サポート要件)について

(1)サポート要件の判断基準

特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)特許請求の範囲の記載

特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。

(3)本件発明が解決しようとする課題

本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0009】の記載からみて、本件発明1~4及び6が解決しようとする課題は「加工デンプンを用いたとしても、例えば、液体組成物に添加された際の分散性の向上を図ると共に、含有される植物由来原料の風味・食感(粒感)を維持可能な調味組成物」を提供すること及び「相応の粘性を有することにより、内部での加工デンプンの均一分散を維持できる調味組成物」を提供することにあると認められる(以下、「発明の課題」という。)。

(4)サポート要件の判断

本件特許の発明の詳細な説明の【0010】には、発明の効果について、「本発明に係る調味組成物は、粒状であると共に水不溶性又は難溶性の加工デンプンを含む。そのため、調味組成物が、例えば、液体組成物に添加されたとしても、分散性の向上と、植物由来原料の粒感の維持を同時に図ることができる。また、この調味組成物は、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm,25°C)というとろみや粘性を有するため、調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供することができる。」との記載があり、【0013】~【0022】には植物由来原料について、細分化されており種類及び含有量は特に限定されないことが記載され、【0023】~【0030】には加工デンプンについて、粒状であることにより細分化された植物由来原料と均一に斑なく混合されて調味組成物の液体組成物中での分散性向上に大きく寄与し、水不溶性又は難溶性であることにより調味組成物内で均一に分散されると共に植物由来原料との均一混合を維持でき、含有量は好ましくは0.7重量%から5.6重量%であることにより食感(粒感)を十分に発揮させながら液体組成物中での調味組成物の分散性をより向上させられることが記載され、【0033】~【0034】には増粘物質及び粘度について、増粘物質は所定の粘性を調味組成物に付与するために用いられ、その含有量は調味組成物の粘度が10,000mPa・s以上になるように調整される限りにおいては特に限定されないことが記載されている。

さらに、【0039】~【0069】には、実施例が記載されており、山葵原料を32.00~26.50重量%含有する実施例1~7、生姜原料を70.90~65.40重量%含有する実施例8~14、柚子原料、唐辛子原料及び陳皮・山椒を合計70.20~64.70重量%含有する実施例15~21、パクチー原料を28.90~23.40重量%含有する実施例23~28及び青じそ原料を39.10~33.60重量%含有する実施例29~35の調製及び評価が行われ、いずれの植物由来原料を用いた試料においてもリン酸架橋澱粉を0.7~5.6重量%含有する各実施例において粒感及び分散性の双方に関して良好な評価結果が得られたことが記載されている。

これらの記載に接した当業者であれば、調味組成物において、「細分化された植物由来原料と、加工デンプンとを含み、」「前記加工デンプンは、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、」「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、」「前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%であり、」との特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できると認識できる。

そして、本件発明1~4及び6はいずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項の全てを有し、さらに限定するものであるから、当然発明の課題を解決できると認識できる。

(5)申立人の主張について

申立人は申立書(84~88頁)において、上記第4 11のとおり主張し、さらに意見書(14~18頁)において概略以下の点を主張している。

発明の詳細な説明に記載された実施例のうち、糖アルコールを含む実施例は、細分化された植物由来原料を23.80~38.90重量%含むものであり、細分化された植物由来原料の含有割合が高い実施例(実施例9~13及び実施例16~20)については、糖アルコールを含む態様について実施例として具体的に示されていない。

これに対し、本件発明の課題は、「植物由来原料」の含有割合が高く、それ以外の原料の含有割合が低い場合に、加工デンプンを用いたとしても、液体組成物に添加された際の分散性の向上を図ると共に、含有される植物由来原料の風味・食感(粒感)を維持可能な調味組成物を提供することである。

そうすると、「植物由来原料」の含有割合が高く、それ以外の原料の含有割合が低い場合に、「更に糖アルコールを含む」ものとするため、植物由来原料と加工デンプン以外の成分を糖アルコールと置き換えてもなお、「液体組成物に添加された際の分散性の向上を図ると共に、含有される植物由来原料の風味・食感(粒感)を維持可能な調味組成物を提供する」との課題を解決できることは示されていない。

そこで、申立人の各主張につき、以下、検討する。

ア 第4 11(2)の主張について

申立人の主張の要点は、発明の詳細な説明には、植物由来原料の含有量が70.90重量%を超える実施例が記載されておらず、植物由来原料の種類によっては加工デンプンの含有量を0.7~5.6重量%の間に調整しても分散性の評価が高くない例があることから、任意の植物由来原料を23.8重量%以上の任意の量含む場合について、加工デンプンの含有量を0.7~5.6重量%の間に調整することで、発明の課題を解決できると当業者が認識できない、というものである。

当該主張について検討すると、上記(4)で検討したとおり、発明の詳細な説明には、植物由来原料について種類及び含有量は特に限定されないことが記載(【0013】~【0022】)され、実施例では植物由来原料の含有量が23.40重量%~70.90重量%という広い範囲で粒感及び分散性の評価がなされ、いずれの植物由来原料を用いた試料においてもリン酸架橋澱粉を0.7~5.6重量%含有する実施例において粒感及び分散性の双方に関して良好な評価結果が得られたことが示されており、これらの記載に接した当業者であれば、調味組成物における植物由来原料の種類及び含有量にかかわらず、「細分化された植物由来原料と、加工デンプンとを含み、」「前記加工デンプンは、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、」「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、」「前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%であり、」との特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できると認識できる。

申立人は、植物由来原料の含有量が70.90重量%を超える実施例が記載されていない点を指摘しているが、当該含有量について実施例では23.40重量%~70.90重量%という広い範囲で評価が行われていることから、70.90重量%を超える範囲であっても同様に発明の課題を解決できることを認識できる。

さらに、申立人は、植物由来原料の種類によっては加工デンプンの含有量を0.7~5.6重量%の間に調整しても分散性の評価が高くない(「多少分散した(△)」との評価しか得られなかった)例が存在する点を指摘しているが、各実施例の評価結果をみると、いずれの植物由来原料を用いた試料においても、加工デンプンの含有量を0.7~5.6重量%に調整した実施例は、その範囲外となる実施例よりも粒感及び分散性の評価が相対的に優れている(例えば、生姜原料を用いた実施例8~14において、加工デンプン含有量が5.60重量%の実施例13は粒感及び分散性の評価がともに△であるのに対し、同含有量6.00重量%の実施例14では評価がともに×となっている。)。そうすると、いずれの植物由来原料を用いた場合にも、調味組成物における加工デンプンの含有量を0.7重量%から5.6重量%の間に調整することにより、その範囲を満たさないものに比して粒感及び分散性が良好なものとなり、発明の課題を解決できることを認識できる。

そして、申立人は、植物由来原料の種類及び含有量について、特定の場合に発明の課題を解決できないことを示す証拠を提示するものでもない。

イ 第4 11(3)の主張について

申立人の主張の要点は、本件明細書の記載に基づいて、「調味組成物の粘度を10,000mPa・s以上」の任意の粘度において、「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ、粒感の維持と相まって、良好な食感を提供する」という課題を解決できると当業者が認識できないというものであり、その根拠として申立人は以下の点を指摘している。

(ア)本件明細書には、実施例のいずれの組成物についても粘度は記載されておらず、調味組成物内で加工デンプンを均一に分散させることができたか否かについて評価もされていない。

(イ)本件明細書に記載された粘度の測定条件であるB形粘度計TVBl0、ローターNo.M4、ローター回転数1.5rpmの測定上下限値は、40,000~400,000mPa・sであり、特許請求の範囲の全範囲にわたって正確に測定できないから、そのような粘度の値は信頼性が認められない。

(ウ)特許権者が2022年9月9日に提出した意見書(甲14)によれば、粘度の最小値は、24.2Pa・sである(実施例23)から、10,000mPa・s以上24.2Pa・s未満の粘度を有する調味組成物の実施例は存在しないし、粘度が10,000mPa・s以上であれば「調味組成物内で上記加工デンプンを均一に分散させることができ」ることについては評価が行われていない。

そこで、上記(ア)~(ウ)の各点につき検討する。

(ア)の点につき検討すると、発明の詳細な説明には調味組成物の粘度について検証した実施例は記載されていないものの、「調味組成物の粘度が10,000mPa・s以上となるよう、増粘物質の含有量を調整することで、上記粒状の加工デンプンを調味組成物に均一に分散させることができ、容器中で保管される間も均一分散が維持される。更に、離水を防止することもできる。」(【0034】)との記載がある。さらに、増粘物質を用いて液状組成物に粘性を与えることにより具材の沈殿や分離を抑制できることは技術常識であり、当該技術常識も参酌すれば、当業者は発明の詳細な説明の上記記載に基づいて、調味組成物の粘度を10,000mPa・s以上とすることにより粒状の加工デンプンを調味組成物に均一に分散させることができ、「相応の粘性を有することにより、内部での加工デンプンの均一分散を維持できる調味組成物」を提供するとの課題を解決できることを認識できるといえる。

(イ)の点につき検討すると、調味組成物の粘度について本件発明1には「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、」と特定され、粘度計の型式やローターNo等は特定されていないから、当業者は適宜のB型粘度計とローターを選択して調味組成物の粘度を測定でき、上記【0034】の記載に基づき、当該粘度を10,000mPa・s以上とすることにより発明の課題を解決できることを認識できる。

また、本件特許の実施例で用いられているB形粘度計TVBl0、ローターNo.M4、ローター回転数1.5rpmとの測定条件(以下、「実施例条件」という。)について検討すると、実施例条件の測定上限値は甲15及び甲16によれば400,000mPa・sと認められるが、当該上限値を超える粘度の試料を測定した場合には上限値を超える旨の表示がなされる(甲14の3頁等)のであるから、上限値を超える試料を測定した場合でも、具体的な値は不明なものの少なくとも上限値を超えることは測定可能といえる。また、甲15及び甲16によれば実施例条件の測定範囲は測定上限値の0~100%であって、精度の観点から測定範囲の10%が下限値として推奨されているものの、40,000mPa・s未満の値についても測定自体は可能といえる。そうすると、実施例条件により本件発明1で特定される粘度の全範囲について測定可能であり、その測定値は信頼性が認められないとまではいえない。

(ウ)の点につき検討すると、上記(ア)の点について示した判断と同様に、粘度について具体的に検証した実施例は記載されていないものの、発明の詳細な説明及び技術常識から、当業者は、調味組成物の粘度を10,000mPa・s以上とすることにより粒状の加工デンプンを調味組成物に均一に分散させることができ、「相応の粘性を有することにより、内部での加工デンプンの均一分散を維持できる調味組成物」を提供するとの課題を解決できることを認識できるといえる。

ウ 意見書における主張について

上記(4)で検討したとおり、発明の詳細な説明の記載に接した当業者であれば、調味組成物において、「細分化された植物由来原料と、加工デンプンとを含み、」「前記加工デンプンは、粒状であると共に水不溶性又は難溶性であり、」「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、」「前記加工デンプンの含有量は、前記調味組成物全量に対して、0.7重量%から5.6重量%であり、」との特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できると認識できる。申立人は、細分化された植物由来原料の含有割合が高い実施例について糖アルコールを含む態様が示されていない点を指摘しているが、上述のとおり本件発明において「糖アルコールを含む」ことは発明の課題を解決するために必須の特定事項ではないから、仮に糖アルコールを含む実施例が十分に示されていないとしても、本件発明がサポート要件を満たさないものということはできない。

また、申立人は、「植物由来原料」の含有割合が高い場合に、植物由来原料と加工デンプン以外の成分を糖アルコールに置き換えつつ課題を解決できることが示されていないとの点を指摘しているが、糖アルコールについて本件発明1は「更に、糖アルコールを含む、」ことを特定するにとどまり、その含有量や調味組成物の水分活性を特定しているわけではないから、当業者は、細分化された植物由来原料の含有割合が高い場合でも、「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、」との特定事項を満たす範囲で糖アルコールの含有量を適宜に調整することにより、発明の課題を解決できることを認識できるといえる。

よって、申立理由11に係る申立人の主張は、いずれも採用できない。

(6)申立理由11(サポート要件)についてのまとめ

以上のとおり、本件特許の請求項1~4及び6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由11によっては取り消すことができない。

12 申立理由12(実施可能要件)について

(1)実施可能要件の判断手法

物の発明における実施とは、物の生産、使用等の行為をいうから(特許法2条第3項第1号)、物の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載があれば、実施可能要件を満たすということができる。

(2)本件明細書の記載事項

発明の詳細な説明には、上記11(4)に示した記載に加え、以下の記載がある。

【0031】~【0032】には、糖アルコールは、主に水分活性(Aw)を低下させ調味組成物の劣化や微生物の増殖を抑えるために用いられ、その種類は特に限定されないことが記載され、【0033】~【0034】には、増粘物質は、所定の粘性を調味組成物に付与するために用いられ、その種類は特に限定されず、その含有量も調味組成物の粘度が10,000mPa・s以上になるように調整される限りにおいて特に限定されないことが記載され、【0035】~【0038】には、調味組成物の製造方法として、各成分原料を計量し、これらを混合して容器に充填することで製造できることが記載されている。

さらに、【0039】~【0069】には、実施例として、各種の細分化された植物由来原料、リン酸架橋デンプン(粒状・水不溶の加工デンプン)、ソルビトール(糖アルコール)等を含む各試料の具体的な配合が記載されている。

(3)実施可能要件についての判断

上記(2)の記載を参照することにより、当業者は、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1に係る調味組成物を生産することができ、また、生産した調味組成物を飲食に使用できることを理解できる。

そうすると、発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1を生産し、かつ、本件発明1を使用することができる程度に具体的な記載があるといえる。請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定される本件発明2~4及び6についても同様の記載があるといえる。

よって、本件発明1~4及び6に関する発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合する。

(4)申立人の主張について

申立人は申立書(88~90頁)において、上記第4 12のように主張し、さらに意見書(19~20頁)において概略以下の点を主張している。

訂正後の本件発明は「細分化された植物由来原料の含有割合」が低い実施例にのみに基づいている。「植物由来原料」の含有割合が高く、それ以外の原料の含有割合が低い場合に、「更に糖アルコールを含む」ものとするためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をすることが必要となる。

そこで、申立人の各主張につき、以下、検討する。

ア 第4 12(1)の主張について

上記11(5)アで示した判断と同様に、植物由来原料の含有量について実施例では23.40重量%~70.90重量%という広い範囲で評価が行われていることから、70.90重量%を超える範囲であっても同様に粒感及び分散性が良好な調味組成物が得られることが理解できる。また、各実施例の評価結果をみると、いずれの植物由来原料を用いた試料においても、加工デンプンの含有量を0.7~5.6重量%に調整した実施例は、その範囲外となる実施例よりも粒感及び分散性の評価が優れており、いずれの植物由来原料を用いた場合にも、調味組成物における加工デンプンの含有量を0.7重量%から5.6重量%の間に調整することにより、その範囲を満たさないものに比して粒感又は分散性が良好なものとなることが理解できる。そうすると、当業者は本件発明1~4及び6を生産し、かつ、本件発明1~4及び6を、粒感及び分散性の良好な調味組成物として使用することができるものと理解することができる。

そして、申立人は、植物由来原料の種類及び含有量について、特定の場合に本件発明を実施し得ないことを示す証拠を提示するものでもない。

イ 第4 12(2)の主張について

第4 12(2)アの主張につき検討すると、上記11(5)イで示した判断と同様に、発明の詳細な説明には調味組成物の粘度について検証した実施例は記載されていないものの、【0034】の記載及び技術常識に基づいて、調味組成物の粘度を10,000mPa・s以上とすることにより粒状の加工デンプンを調味組成物に均一に分散させることができ、「相応の粘性を有することにより、内部での加工デンプンの均一分散を維持できる調味組成物」が得られることを理解できる。

第4 12(2)イの主張につき検討すると、上記11(5)イで示した判断と同様に、調味組成物の粘度について本件発明1には粘度計の型式やローターNo等は特定されていないから、当業者は適宜のB型粘度計とローターを選択して調味組成物の粘度を測定できる。さらに当業者は、発明の詳細な説明の【0033】~【0034】の記載に基づき、適宜の増粘物質を用いて粘度を調整でき、粘度が10,000mPa・s以上となる調味組成物が得られることを理解できる。

ウ 意見書における主張について

上記11(5)ウで示した判断と同様に、糖アルコールについて本件発明1は「更に、糖アルコールを含む、」ことを特定するにとどまり、その含有量や調味組成物の水分活性を特定しているわけではないから、当業者は、細分化された植物由来原料の含有割合が高い場合でも、「25°Cでの粘度が、10,000mPa・s以上(B形粘度計,ローター回転数1.5rpm)であり、」との特定事項を満たす範囲で糖アルコールの含有量を適宜に調整することにより、本件発明1~4及び6を実施することができるものと理解することができ、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をすることが必要とはいえない。

よって、申立理由12に係る申立人の主張は、いずれも採用できない。

(5)申立理由12(実施可能要件)についてのまとめ

以上のとおり、本件特許の請求項1~4及び6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由12によっては取り消すことができない。

第7 結語

以上のとおり、本件特許の請求項1~4及び6に係る特許は、取消理由並びに申立書に記載した申立理由及び令和8年2月12日提出の意見書に記載した理由によっては取り消すことはできない。

また、他に本件特許の請求項1~4及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

また、請求項5は本件訂正により削除され、これにより、本件特許の請求項5に係る特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

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