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Trademark Appeal Case

進歩性判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2026700232
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7742134号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7742134号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和3年12月28日の出願であって、令和7年9月10日にその特許権の設定登録がされ、同年同月19日に特許掲載公報が発行されたものである。その後、本件特許の請求項1~7に係る特許に対し、令和8年3月18日に特許異議申立人 吉岡 英樹(以下、「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明

本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明7」といい、併せて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】

融点が200°C以上の熱可塑性樹脂からなる繊維と、メルトブロー不織布全重量に対して0.1重量%以上20重量%以下の添加剤とを含むメルトブロー不織布であって、平均繊維径が0.1μm以上、1.5μm以下であり、繊維径の標準偏差の平均繊維径に対する比である繊維径変動率が0.45以上、1.3以下であり、

前記熱可塑性樹脂がポリアミド及びポリエステルからなる群より選択される少なくとも1種を含み、

前記添加剤が、溶融状態にある前記熱可塑性樹脂のポリマー鎖間の分子間力を緩和するための添加剤であり、基本骨格に炭素原子と水素原子とを含む有機化合物であり、かつヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシ基、ホルミル基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、これらのいずれかの誘導体、又はこれらの2つ以上の組み合わせを含む化合物であるメルトブロー不織布。

【請求項2】

以下の式(1)の値が0.1以上である請求項1に記載のメルトブロー不織布。

メルトブロー不織布のMD強度[N]/目付[g/m

2

] ≧ 0.1 (1)

式中、MD強度は、不織布の流れ方向に長さ200mm、それと垂直の方向に50mmの大きさで切り取った不織布の両端を100mm間隔のチャックで挟み、速度300mm/分で引っ張った時の最大強度である。

【請求項3】

以下の式(2)の値が0.2以上である請求項1に記載のメルトブロー不織布。

メルトブロー不織布のMD伸度[%]/目付[g/m

2

]/平均繊維径[μm] ≧ 0.2 (2)

式中、MD伸度は、不織布の流れ方向に長さ200mm、それと垂直の方向に50mmの大きさで切り取った不織布の両端を100mm間隔のチャックで挟み、速度300mm/分で引っ張った時の最大伸度である。

【請求項4】

前記添加剤は、含窒素環を一分子内に複数有する重合体化合物である請求項1~3のいずれかに記載のメルトブロー不織布。

【請求項5】

前記添加剤は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル骨格を分子内に有するヒンダードアミン系光安定剤を含む請求項4に記載のメルトブロー不織布。

【請求項6】

前記添加剤は、フルオレン骨格を有する化合物である請求項1~3のいずれかに記載のメルトブロー不織布。

【請求項7】

請求項1~6のいずれかに記載のメルトブロー不織布を備えるフィルタ。」

第3 申立理由の概要

1 異議申立人の提出した証拠

異議申立人は、次の甲第1号証~甲第9号証(以下、「甲1」~「甲9」という。)を証拠として提出している。

甲第1号証(甲1):特開2007-23391号公報

甲第2号証(甲2):特開2021-195670号公報

甲第3号証(甲3):特開2020-190057号公報

甲第4号証(甲4):特開2008-214789号公報

甲第5号証(甲5):特開2011-6810号公報

甲第6号証(甲6):特開2019-119946号公報

甲第7号証(甲7):特開2021-19196号公報

甲第8号証(甲8):国際公開第2020/202899号

甲第9号証(甲9):「エンプラ用流動性向上剤 OGSOL MF-11」のカタログ、大阪ガスケミカル株式会社、2017年10月

2 特許異議の申立理由

異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由は、以下のとおりである。

(1) 申立理由1(進歩性)

ア 本件発明1は、甲1、甲2及び甲3のいずれかに記載された発明、甲1~甲5に記載された事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件発明2は、甲1、甲2及び甲3のいずれかに記載された発明、甲6~甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 本件発明3は、甲1、甲2及び甲3のいずれかに記載された発明、甲6、甲7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件発明4、5は、甲1、甲2及び甲3のいずれかに記載された発明、甲4、甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 本件発明6は、甲1、甲2及び甲3のいずれかに記載された発明、甲9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ 本件発明7は、甲1、甲2及び甲3のいずれかに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

キ したがって、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2) 申立理由2(サポート要件)

本件発明1~7は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(3) 申立理由3(明確性要件)

本件発明1~7は、明確でないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第4 甲1~甲9の記載及び甲1に記載された発明

1 甲1について

(1) 甲1の記載

甲1には、次の記載がある(下線は当審において加筆した。以下同じ。)。

「【特許請求の範囲】

【請求項1】

熱可塑性ポリマーからなり、平均繊維径が50~800nm、繊維径変動率が55%以上であることを特徴とする不織布。

【請求項2】

5g/m

2

相当圧力損失が0.5~10Pa、かつQF値が0.26Pa

-1

以上であることを特徴とする請求項1に記載の不織布。

【請求項3】

目付が1~15g/m

2

であることを特徴とする請求項1または2に記載の不織布。

【請求項4】

前記熱可塑性ポリマーがポリアミドまたはポリオレフィンのいずれかであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の不織布。

【請求項5】

易溶解性ポリマーが海成分、熱可塑性ポリマーが島成分の海島構造を形成する繊維から構成される不織布の易溶解性ポリマー成分を溶剤により溶出することにより請求項1~4のいずれかに記載の不織布を得ることを特徴とする不織布の製造方法。

【請求項6】

前記易溶解性ポリマーがポリ乳酸であることを特徴とする請求項5に記載の不織布の製造方法。

【請求項7】

メルトブロー法により製造されることを特徴とする、請求項5または6に記載の不織布の製造方法。」

「【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、極細繊維からなる不織布に関する。特にエアフィルターとして高捕集かつ低圧力損失を発揮する、高性能の不織布に関する。」

「【発明が解決しようとする課題】

【0012】

本発明の目的は、極細繊維から構成され、かつ繊維径変動率の高い不織布を提供し、圧力損失が低いうえに捕集性能に優れる不織布、特にエアフィルターに好適に用いることができる不織布を提供することにある。」

「【発明を実施するための最良の形態】

【0016】

本発明の不織布は、熱可塑性ポリマーからなり、平均繊維径が50~800nm、繊維径変動率が55%以上であることを特徴とする不織布である。

【0017】

本発明でいう熱可塑性ポリマーとは、ポリアミドやポリオレフィン、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。熱可塑性ポリマーの融点は165°C以上であると、繊維の耐熱性が良好であり好ましい。例えば、ポリプロピレン(PP)は165°C、ポリエチレンテレフタレートは255°C、ナイロン6(N6)は220°Cである。本発明で使用される熱可塑性ポリマーは、耐アルカリ性、エレクトレット性の点から、ポリアミドまたはポリオレフィンのいずれかであることが好ましい。また、熱可塑性ポリマーに、耐候剤、酸化防止剤等の添加物を含有させていても良い。またポリマーの性質を損なわない範囲で他の成分が共重合されていても良い。

【0018】

本発明の不織布を構成する繊維は、50~800nmの平均繊維径を有する。より好ましくは60~750nm、さらに好ましくは70~700nmである。一般に繊維径を小さくするほど、捕集性能は高くなるが、平均繊維径が50nmより小さくなると不織布の強度が弱くなり、工程通過性に問題を生じる。他方、平均繊維径が800nmより大きくなると、極細化によりもたらされる前述の好ましい効果が十分でなくなる。

【0019】

また、繊維径変動率は繊維径の標準偏差を平均繊維径で除した百分率で表されるが、この繊維径変動率が55%以上であることが好ましく、より好ましくは58%以上、さらに好ましくは60%以上である。繊維径変動率がより小さいということは、不織布を構成する繊維径のバラツキが小さいということであり、繊維径変動率が55%未満であると、太い繊維と細い繊維が同時に存在することによる「低圧力損失」かつ「高捕集」への効果が減少するため、好ましくない。

【0020】

なお、本発明における平均繊維径および繊維径変動率は次の方法で求めた値をいう。すなわち、不織布の任意の場所から、1cm×1cmの測定サンプルを30個採取し、走査型電子顕微鏡で倍率を80000倍に調節して、採取したサンプルから繊維表面写真を各1枚ずつ、計30枚を撮影する。写真の中の繊維直径がはっきり確認できるものについてすべて測定して、平均した値を平均繊維径とする。また、繊維径の標準偏差を平均繊維径で除したものが繊維径変動率である。

【0021】

本発明の不織布を得る方法としては、特に限定されるものではないが、メルトブロー法により、易溶解性ポリマーが海成分、熱可塑性ポリマーが島成分の海島構造を形成する繊維から構成される不織布を得た後、該不織布の易溶解性ポリマー成分を溶剤により溶出することにより、本発明の不織布を得ることができる。その際、海島繊維を構成するポリマー種および構成比率の最適化や、ポリマー吐出量、ノズル温度、エア圧力といった紡糸条件の調整により、平均繊維径および繊維径変動率が上記の範囲を満たす不織布を得ることができる。

・・・

【0026】

ポリ乳酸としては、ポリ(D-乳酸)と、ポリ(L-乳酸)と、D-乳酸とL-乳酸の共重合体、あるいはこれらのブレンド体が好ましく採用されるものである。ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、紡糸性を良くする観点からは5万以上であることが好ましく、10万以上であることがより好ましい。また、繊維の細径化を容易にする観点からは20万以下であることが好ましく、15万以下であることがより好ましい。

本発明において易溶解性ポリマーと共に海島繊維を構成する熱可塑性ポリマーは、耐アルカリ性からポリアミド、エレクトレット性の点からポリオレフィンのいずれかであることが好ましい。ポリアミドの場合、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6-10、ナイロン12やこれらの共重合体を単独または混合して用いることができる。また、ポリオレフィンの場合、ポリエチレン、ポリプロピレンやこれらの共重合体を単独または混合して用いることができる。なかでも、ナイロン6またはポリプロピレンはポリ乳酸と融点差が少なく、親和性も高く複合紡糸した場合の紡糸性がよいため、より好ましく使用される。

・・・

【0028】

また、耐候性を向上させ、エレクトレット性能を良くする観点から、本発明の不織布にヒンダードアミン系化合物およびトリアジン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種が含まれていることが好ましい。

【0029】

ヒンダードアミン系化合物としては、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)](チバガイギー製、キマソープ944LD)、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物(チバガイギー製、チヌビン622LD)、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(チバガイギー製、チヌビン144)などが挙げられる。

【0030】

また、トリアジン系添加剤としては、前述のポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)](チバガイギー製、キマソープ944LD)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-((ヘキシル)オキシ)-フェノール(チバガイギー製、チヌビン1577FF)などを挙げることができる。これらのなかでも特にヒンダードアミン系化合物が好ましい。

ヒンダードアミン系化合物又はトリアジン系化合物の含有量は、特に限定されないが、0.5~5重量%の範囲であることが好ましく、0.7~3重量%の範囲であることがより好ましい。

【0031】

さらに、上記化合物の他に、熱安定剤、耐候剤、重合禁止剤等の一般にエレクトレット加工品の不織布シートに使用されている通常の添加剤を添加してもよい。

【0032】

本発明の不織布の製造方法は特に限定されるものではないが、繊維径のバラツキの大きい極細繊維を得るという点から、以下の方法が好ましく採用されるものである。

【0033】

すなわち、本発明の不織布は、メルトブロー法による紡糸段階を経て製造されることが好ましく、該法により易溶解性ポリマーが海成分、熱可塑性ポリマーが島成分の海島構造を形成する繊維から構成される不織布を得た後、該不織布の易溶解性ポリマー成分を溶剤により溶出することにより、本発明の不織布を得ることができる。繊維径バラツキの大きな極細繊維から構成される不織布を得るためには、海島繊維を構成するポリマー種および構成比率の最適化や、ポリマー吐出量、ノズル温度、エア圧力といった紡糸条件の調整による海島繊維の平均繊維径の最適化が重要であり、以下に詳細について説明する。

・・・

【0045】

本発明の不織布は、濾材として用いることができる。該濾材は、エアフィルター全般、なかでも空調用フィルター、空気清浄機用フィルター、自動車キャビンフィルターの高性能用途に好適であるが、その応用範囲はこれらに限られるものではない。」

「【実施例】

【0046】

以下、実施例を挙げてより具体的に本発明を説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において使用する特性値は、次の測定法により測定したものである。

・・・

【0048】

(2)平均繊維径、繊維径変動率

不織布の任意の場所から、1cm×1cmの測定サンプルを30個採取し、走査型電子顕微鏡で倍率を80000倍に調節して、採取したサンプルから繊維表面写真を各1枚ずつ、計30枚を撮影した。写真の中の繊維直径がはっきり確認できるものについてすべて測定し、平均した値を平均繊維径とした。

繊維径の標準偏差を平均繊維径で除したものを繊維径変動率とした。

・・・

【0051】

(4)5g/m

2

相当圧力損失

以下の式により、前記(3)項で求めた圧力損失を5g/m

2

相当圧力損失に換算して求めた。

5g/m

2

相当圧力損失(Pa)=実目付の圧力損失(Pa)×5(g/m

2

)/実目付(g/m

2

)

(5)QF値

以下の式によりQF値を算出した。

QF値(Pa

-1

)=-[ln(1-[捕集効率(%)]/100)]/[圧力損失(Pa)]

実施例1

溶融粘度500Pa・s(230°C、剪断速度121.6sec

-1

)、融点170°Cの

ポリ乳酸と、

溶融粘度300Pa・s(230°C、剪断速度121.6sec

-1

)、

融点220°Cのナイロン6を、2軸押出混練機でブレンド比6/4の割合で230°Cで混練し、ポリマーアロイチップを得た。

【0052】

このチップを使用し、

直径が0.4mmの吐出孔を有する口金(孔ピッチ:1mm、孔数:151ホール、幅:150mm)を用いて、

メルトブロー法により、

ポリマー吐出量32g/分、ノズル温度230°C、エア圧力0.05MPaの条件で噴射し、捕集コンベア速度を調整することによって

目付が7.5g/m

2

の不織布を得た。

【0053】

次いでこの不織布をアルカリ処理しポリ乳酸成分を溶出させ、目付が3g/m

2

の不織布を得た

後、特性値を測定し、表1に示した。

【0054】

実施例2

溶融粘度350Pa・s(230°C、剪断速度121.6sec

-1

)、融点170°Cのポリ乳酸と、溶融粘度300Pa・s(230°C、剪断速度121.6sec-1)、融点165°Cのポリプロピレン(トリアジン系化合物であるキマソーブ944(チバガイギー製)を1重量%添加したもの)を、2軸押出混練機でブレンド比8/2の割合で230°Cで混練し、ポリマーアロイチップを得た。

【0055】

このチップを使用し、実施例1と同じ口金を用いて、メルトブロー法により、ポリマー吐出量32g/分、ノズル温度230°C、エア圧力0.20MPaの条件で噴射し、捕集コンベア速度を調整することによって目付が15g/m

2

の不織布を得た。

【0056】

次いで

この不織布をアルカリ処理しポリ乳酸成分を溶出させ、目付が3g/m

2

の不織布を得た後、特性値を測定し、表1に示した。

【0057】

実施例3

実施例2で得られた不織布に、コロナ荷電法により25kV/cmの印加電圧でエレクトレット処理を実施した後、特性値を測定し、表1に示した。

・・・

【0060】

比較例2

実施例1で使用したポリ乳酸とポリプロピレンを、ブレンド比割合を4/6とする以外は実施例1と同様にしてブレンドポリマーチップを得た。

【0061】

このチップを使用し、捕集コンベア速度を調整する以外は、実施例1と同様にして、メルトブロー法により目付が5g/m

2

の不織布を得た。

【0062】

次いでこの不織布をアルカリ処理しポリ乳酸成分を溶出させ、目付が3g/m

2

の不織布を得た後、特性値を測定し、表1に示した。

・・・

【0064】

【表1】

54

153

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(2) 甲1発明

ア 上記(1)の【0051】~【0053】によれば、甲1には、実施例1として、以下の事項が記載されているといえる。

「ポリ乳酸と、融点220°Cのナイロン6を、2軸押出混練機でブレンド比6/4の割合で混練してポリマーアロイチップを形成し、このポリマーアロイチップを使用し、メルトブロー法により目付が7.5g/m

2

の不織布を形成し、この不織布をアルカリ処理しポリ乳酸成分を溶出させることにより形成された、目付が3g/m

2

の不織布。」

イ 上記(1)の【0048】に「

繊維径の標準偏差を平均繊維径で除したものを繊維径変動率

とした。」と記載され、【0056】に「この不織布をアルカリ処理しポリ乳酸成分を溶出させ、目付が3g/m

2

の不織布を得た後、特性値を測定し、表1に示した。」と記載されている。

また、【0064】【表1】に、実施例1の不織布の

平均繊維径は510(nm)

で、

繊維径変動率は71(%)

と記載されている。

そうすると、甲1には、上記アの実施例1の不織布が、平均繊維径は510(nm)、繊維径の標準偏差を平均繊維径で除したものである繊維径変動率は71(%)であることが記載されているといえる。

ウ 以上によれば、甲1には、実施例1として以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

「ポリ乳酸と、融点220°Cのナイロン6を、2軸押出混練機でブレンド比6/4の割合で混練してポリマーアロイチップを形成し、このポリマーアロイチップを使用し、メルトブロー法により目付が7.5g/m

2

の不織布を形成し、この不織布をアルカリ処理しポリ乳酸成分を溶出させることにより形成された、目付が3g/m

2

の不織布であって、

平均繊維径は510(nm)、繊維径の標準偏差を平均繊維径で除したものである繊維径変動率は71(%)である、

不織布。」

2 甲2~9について

(1) 甲2の記載

甲2には、次の記載がある。

「【特許請求の範囲】

【請求項1】

熱可塑性樹脂と、ヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物のうちの少なくとも1種と、を含有する繊維を含み、

前記繊維の繊維径の変動係数が1.0以下である繊維不織布。

【請求項2】

前記繊維の平均繊維径が0.5μm~10μmである請求項1に記載の繊維不織布。

【請求項3】

前記ヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物のうちの少なくとも1種の含有率が、繊維不織布全量に対して0.01質量%~7.0質量%である請求項1又は請求項2に記載の繊維不織布。

【請求項4】

前記熱可塑性樹脂が、プロピレン系重合体を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の繊維不織布。

【請求項5】

前記プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR:ASTM D-1238、230°C、荷重2160g)が、50g/10分~5000g/10分である請求項4に記載の繊維不織布。

【請求項6】

帯電されている請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の繊維不織布。

【請求項7】

請求項6に記載の繊維不織布を含むフィルタ。

【請求項8】

メルトブローン法により、熱可塑性樹脂と、ヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物のうちの少なくとも1種と、を含む溶融した樹脂組成物を紡糸口金から加熱ガスとともに吐出し、前記加熱ガスにより前記樹脂組成物を延伸して、繊維状物とする工程を含み、

前記加熱ガスの流量を150Nm

3

/時/m~1000Nm

3

/時/mとし、

前記加熱ガスの温度をTa(°C)、前記溶融した樹脂組成物の温度をTp(°C)、前記熱可塑性樹脂の結晶化温度をTc(°C)、前記熱可塑性樹脂の融点をTm(°C)としたとき、前記加熱ガスの吐出は、下記式(1)及び(2)を満たすように行う繊維不織布の製造方法。

式(1) Tc<Ta≦Tm+150

式(2) 50≦Tp-Ta≦190

【請求項9】

吐出された前記樹脂組成物に、30°C以下の冷却ガスを吹き付ける工程を含まない請求項8に記載の繊維不織布の製造方法。

【請求項10】

前記加熱ガスの吐出は、下記式(1)’をさらに満たすように行う請求項8又は請求項9に記載の繊維不織布の製造方法。

式(1)’ Tm-30≦Ta≦Tm+150

【請求項11】

前記加熱ガスの流量を250Nm

3

/時/m~850Nm

3

/時/mとする請求項8~請求項10のいずれか1項に記載の繊維不織布の製造方法。

【請求項12】

メルトブローン法により、熱可塑性樹脂と、ヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物のうちの少なくとも1種と、を含む溶融した樹脂組成物を紡糸口金から加熱ガスとともに吐出し、機械方向の両面から供給される冷却ガスで前記樹脂組成物を冷却しつつ、前記加熱ガスにより前記樹脂組成物を延伸して、繊維状物とする工程を含む繊維不織布の製造方法。

【請求項13】

前記冷却ガスの流量が1000Nm

3

/時/m~20000Nm

3

/時/mである請求項12に記載の繊維不織布の製造方法。

【請求項14】

前記冷却ガスの温度が30°C以下である請求項12又は請求項13に記載の繊維不織布の製造方法。

【請求項15】

前記熱可塑性樹脂が、プロピレン系重合体を含む請求項8~請求項14のいずれか1項に記載の繊維不織布の製造方法。

【請求項16】

前記ヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物のうちの少なくとも1種の含有率が、繊維不織布全量に対して0.01質量%~7.0質量%である請求項8~請求項15のいずれか1項に記載の繊維不織布の製造方法。

【請求項17】

請求項8~請求項16のいずれか1項に記載の繊維不織布の製造方法により繊維不織布を製造する工程と、

製造された前記繊維不織布に、帯電加工をする工程と、

を含むエレクトレット繊維不織布の製造方法。」

「【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、繊維不織布、フィルタ、繊維不織布の製造方法及びエレクトレット繊維不織布の製造方法に関する。」

「【発明の効果】

【0008】

本開示によれば、濾過性能に優れたフィルタを製造可能な、ヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物の少なくとも一方を含む繊維不織布及びこの繊維不織布を含むフィルタを提供することができる。

さらに、本開示によれば、濾過性能に優れたフィルタを製造可能な、ヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物の少なくとも一方を含む繊維不織布の製造方法及びエレクトレット繊維不織布の製造方法を提供することができる。」

「【発明を実施するための形態】

【0010】

本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。

本開示において段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。

本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。

本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。

【0011】

[繊維不織布]

本開示の繊維不織布は、熱可塑性樹脂と、ヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物のうちの少なくとも1種と、を含有する繊維を含み、前記繊維の繊維径の変動係数が1.0以下である。これにより、本開示の繊維不織布をフィルタに用いたときに粉塵の捕集効率と圧力損失とのバランスを好適に確保することができ、濾過性能に優れたフィルタを製造可能である。

【0012】

本開示の繊維不織布を構成する繊維の平均繊維径は、繊維不織布をフィルタに用いたときの粉塵の捕集効率と圧力損失とのバランスの観点から、0.5μm~10μmであることが好ましく、0.7μm~8.0μmであることがより好ましく、1.0μm~7.0μmであることがさらに好ましい。

【0013】

繊維不織布を構成する繊維の平均繊維径の測定は、繊維不織布の電子顕微鏡写真(倍率1000倍)から、任意の100本の繊維を選択し、選択した繊維の直径を測定し、その算術平均値を求めればよい。

【0014】

本開示の繊維不織布を構成する繊維の繊維径の変動係数(CV値)は、1.0以下であり、0.90以下であることが好ましく、0.85以下であることがより好ましい。CV値は、0以上であれば特に限定されず、例えば、0.30以上であってもよい。CV値は、上記平均繊維径の測定結果の標準偏差(Dp)を、平均繊維径(Da)で除すことにより算出することができる(下記式参照)。

CV値=標準偏差(Dp)/平均繊維径(Da)

・・・

【0018】

本開示の繊維不織布は、例えば、ガスフィルタ(エアフィルタ)、液体フィルタ等のフィルタとして好ましく用いられうる。本開示の繊維不織布は、前述のCV値、すなわち、繊維径のばらつきが少ないため、繊維間に比較的大きい孔(欠損部位)が形成されにくい。これにより、本開示の繊維不織布は、濾過性能に優れる高性能フィルタに好適に用いられる。

・・・

【0020】

本開示の繊維不織布に含まれる繊維は、熱可塑性樹脂を含有する。熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマーなどが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種からなるものであってもよく、2種以上の混合物であってもよい。

・・・

【0028】

本開示の繊維不織布に含まれる繊維は、ヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物のうちの少なくとも1種を含有する。繊維は、例えば、ヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物のうちの少なくとも1種が熱可塑性樹脂に添加され、次いで練り込まれた樹脂組成物を用いて形成されたものであってもよい。

【0029】

ヒンダードアミン系化合物としては、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)]、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)等が挙げられる。

【0030】

また、トリアジン系化合物としては、前述のポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)]、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-((ヘキシル)オキシ)-フェノール等が挙げられる。

【0031】

本開示の繊維不織布では、ヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物のうちの少なくとも1種の含有率が、繊維不織布全量に対して、0.01質量%~7.0質量%であることが好ましく、0.05質量%~6.0質量%であることがより好ましい。前述の含有率が0.01質量%以上であると、帯電されている繊維不織布を製造しやすく、前述の含有率が7.0質量%以下であると、前述のCV値を低く調整しやすい。

【0032】

本開示の繊維不織布では、ヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物のうちの少なくとも1種の含有率が、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01質量部~7.0質量部であることが好ましく、0.05質量部~6.0質量部であることがより好ましい。

【0033】

本開示の繊維不織布を構成する繊維は、必要に応じて、通常用いられる添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等の種々公知の添加剤が挙げられる。

・・・

【0040】

メルトブローン法とは、溶融した樹脂組成物を、紡糸口金から繊維状に吐出させるときに、溶融状態の吐出物(吐出された樹脂組成物)の両側から加熱ガスを当てるとともに、加熱ガスを随伴させることで吐出物の径を小さくする方法である。具体的には、例えば、原料となる樹脂組成物(例えば、プロピレン単独重合体にヒンダードアミン系化合物及びトリアジン系化合物のうちの少なくとも1種が添加された樹脂組成物)を、押出機などを用いて溶融する。溶融した樹脂組成物は、押出機の先端に接続された紡糸口金に導入され、紡糸口金の紡糸ノズルから、繊維状に吐出される。繊維状に吐出された樹脂組成物に、紡糸口金のガスノズルから噴出される加熱ガスが当てられて、当該加熱ガスにより樹脂組成物が延伸されることにより、当該樹脂組成物が細化される。

本開示の繊維不織布の製造方法1では、前述の本開示の繊維不織布の項目にて説明した樹脂組成物を用いることが好ましく、熱可塑性樹脂としてプロピレン系重合体を含む樹脂組成物を用いることがより好ましい。

・・・

【0050】

加熱ガスの種類は特に限定されず、例えば、空気(エア)、炭酸ガス、窒素ガスなどの溶融した樹脂組成物に対して不活性なガスが挙げられる。これらの中でも、経済性の観点から空気(エア)が好ましい。」

「【実施例】

【0083】

以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。

【0084】

[実施例1]

図1に示される製造装置を用いて、繊維不織布を作製した。具体的には、

溶融

したプロピレン単独重合体(結晶化温度Tc:130°C、融点Tm:160°C、MFR:1000g/10分)100質量部に対してヒンダードアミン系化合物である商品名Chimassorb 944を0.1質量部添加したプロピレン単独重合体組成物をダイに供給し、設定温度:270°Cのダイ(溶融したプロピレン単独重合体の温度Tp)から、紡糸ノズル1つあたりの吐出量:0.2g/分、小孔間距離:1.0mmで、紡糸ノズルの両側から吹き出す加熱エア(温度Ta:180°C、流量:300Nm

3

/時/m)とともに吐出した。ダイの紡糸ノズルの直径は、0.38mmであった。そして、繊維状のプロピレン単独重合体を、目付量が15g/m

2

となるようにコレクター上に捕集し、繊維不織布を得た。なお、プロピレン単独重合体の結晶化温度(Tc)及び融点(Tm)は、前述の方法で測定した値を採用した。

【0085】

得られた繊維不織布を、純水にイソプロピルアルコールを30質量%溶解した混合溶液に10秒間浸漬し、水切り後、80°Cで20分間熱風乾燥することで、繊維不織布を帯電させた。

【0086】

[実施例2]

実施例1にてプロピレン単独重合体100質量部に対するヒンダードアミン系化合物の添加量、ダイの紡糸ノズルの直径、ダイの温度及び加熱エアの温度を表1に示される通りに変更した以外は実施例1と同様にして繊維不織布を得て、帯電させた。

・・・

【0091】

[比較例2]

実施例2にてダイの温度、加熱エアの温度及び加熱エアの流量を表1に示される通りに変更した以外は実施例2と同様にして繊維不織布を得て、帯電させた。

・・・

【0096】

得られた繊維不織布の物性(目付量、平均繊維径、CV値、捕集効率、圧力損失及びQ値)を、以下方法で測定した。

【0097】

(1)目付(g/m

2

)

縦方向50cm×横方向50cmの試料を3個採取して、各試料の重量をそれぞれ測定した。得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、小数点以下第一位を四捨五入して、目付量(g/m

2

)とした。

【0098】

(2)繊維不織布の繊維の平均繊維径(μm)、変動係数(CV値)

電子顕微鏡(日立製作所製S-3500N)を用いて、倍率1000倍の繊維不織布の写真を撮影した。繊維不織布を構成する繊維のうち、任意の繊維100本を選び、選択した繊維の幅(直径)を測定した。測定結果の平均を、平均繊維径とした。

【0099】

また、この測定結果の標準偏差(Dp)を平均繊維径(Da)で除して、繊維径の変動係数(CV値)とした。

CV値=標準偏差(Dp)/平均繊維径(Da)

・・・

【0103】

実施例1~5及び比較例1~6の繊維不織布の作製条件及び繊維不織布の評価結果を表1に示す。

【0104】

【表1】

41

153

0001437437000002.jpg

(2) 甲3の記載

甲3には、次の記載がある。

「【特許請求の範囲】

【請求項1】

平均繊維径が0.1μm以上0.5μm未満であり、かつ、繊維径のCV値が20%以上65%未満であるポリアミド系樹脂繊維から構成され、かつ、目付量が10g/m

2

以上であることを特徴とする不織布。

・・・

【請求項16】

請求項1~13のいずれか1項に記載の不織布又は請求項14若しくは15に記載の積層体を含む液体フィルター。

【請求項17】

請求項1~13のいずれか1項に記載の不織布又は請求項14若しくは15に記載の積層体を含む気体フィルター。」

「【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、不織布、該不織布の積層体、及びそれらを含むフィルターに関する。より詳しくは、本発明は、平均繊維径が極細であり且つ繊維径分布が均一であることにより、高捕集効率と低流量圧損とを両立したバランスの良いフィルター性能を有するポリアミド系樹脂繊維から構成される不織布に関する。」

「【発明の効果】

【0017】

本発明に係る不織布は、平均繊維径が極細であり且つ繊維径分布が均一である為、高捕集効率と低流量圧損とを両立したフィルター性能バランスが良好であるポリアミド系樹脂繊維から構成される不織布である。かかる不織布又はその積層体は、フィルター濾材として好適に利用可能である。」

「【発明を実施するための形態】

【0019】

以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。

本実施形態に係る不織布は、平均繊維径が0.1μm以上0.5μm未満であり、かつ、繊維径のCV値が20%以上65%未満であるポリアミド系樹脂繊維から構成され、かつ、目付量が10g/m

2

以上であることを特徴とする。

本実施形態に係る不織布は、ポリアミド系樹脂繊維から構成される。ポリアミド系樹脂繊維を用いることで、吸着効果が発現するため、本実施形態に係る不織布はフィルター用途においては捕集効率が向上する。更に、ポリアミド系樹脂は親水性が良好であるため、本実施形態に係る不織布は、液体フィルター用途においては低流量圧損となる。ポリアミド系樹脂としては、具体的にはナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等、これらの混合物等を例示することができる。本実施形態に係る不織布を構成するポリアミド系樹脂繊維は、30重量%以下の割合でポリアミド系樹脂以外の成分を含んでも構わない。

【0020】

本実施形態に係る不織布では、平均繊維径が0.1μm以上0.5μm未満であり、0.1μm以上0.3μm未満がより好ましい。平均繊維径が0.5μm未満であれば、従来の繊維では得られなかった以下の(1)と(2)の物理学的な性質が表れる:

(1)空気の抵抗が非常に小さくなる。

空気や液体の流れは物体に近づくほど遅くなり、これがフィルターの空気抵抗になるが、ナノサイズの物質では「スリップフロー効果」という現象が生まれ、流速がほとんど遅くならない。このためナノファイバーでフィルターを作ると、目の細かいフィルターを作っても、空気の通りがスムーズであるというメリットが生まれる。

(2)比表面積が大きくなる。

ナノファイバーは、比表面積が非常に大きく、繊維表面にたくさんの異物を吸着することができる為、浄化装置の性能をアップできる。また、繊維表面で起こる化学反応や電気反応の効率も高まる為、例えば燃料電池用途においては効率アップにもつながる。

【0021】

本実施形態に係る不織布では、繊維径のCV値が20%以上65%未満であり、20%以上60%未満であることが好ましい。尚、CV値とは、変動性の有用な尺度であり、平均繊維径からの標準偏差を平均繊維径で割り、得られた値に100を掛けることによって求める。CV値が65%未満であれば繊維径分布が均一であり、フィルター捕集効率の向上に繋がる。

・・・

【0038】

本実施形態に係る不織布は、孔径の均一性に優れることから、液体用や気体用のフィルターやセパレータ材として好んで使用することができる。また、フィルター材に使用できる形態としては限定されず、プリーツ形状やデプス形状であってもよい。

【0039】

以下、本実施形態に係る不織布の製造方法の一例を詳細に説明する。

メルトブローン法による延伸中の熱可塑性樹脂のせん断速度X(s

-1

)は、紡糸条件によって異なるが、学術雑誌AIChE Journal 第36巻(1990)第2号第175~186頁に記載されている計算方法を用いて、紡糸条件(ノズル径、単孔吐出量、紡糸ガス温度、紡糸ガス圧力、ポリマー物性)から見積もることができる。かかる計算方法を用いて検討した結果、本発明者らは、延伸中の熱可塑性樹脂のせん断速度X(s

-1

)が10

8.2

<X<10

10

となる条件で紡糸を行うことにより、糸同士の融着やポリマー球の発生が抑制可能であり、更に繊維が極細且つ均一であるメルトブローン不織布が得られることを見出した。X≦10

8.2

となる条件で紡糸を行うと、糸長方向で糸径斑が大きくなり本実施形態のメルトブローン不織布の特徴である極細糸が得られない。他方、X≧10

10

となる条件で紡糸を行うと、延伸中の熱可塑性樹脂に働くせん断応力が強過ぎて延伸切れが起こり、ポリマー球が多発する。10

8.2

<X<10

10

の範囲であれば、糸長方向の糸径斑が著しく改善され、繊維が極細化且つ均一化する。加えて、延伸切れに起因するポリマー球の発生が極めて少ない理想的な極細糸が得られる。

・・・

【0047】

得られる不織布を構成する繊維の繊維径のCV値を65%未満とする為には、紡口ノズル直下の空気流れを整流して吐出直後の繊維の結晶化を促進することが好ましい。

また、本実施形態に係る不織布の分散性及び均一性を向上させる為には、ディスタンスの空気流れを整流して繊維同士の絡み合いを抑制することが好ましい。」

「【実施例】

【0049】

以下の実施例、比較例により本発明を具体的に説明する。実施例等では以下の測定方法、装置等を使用した。尚、以下に示す測定において、所定の不織布のサイズが確保できない場合は、サイズを適宜変更してもよい。

【0050】

<平均繊維径、CV値>

装置型式:JSM-6510 日本電子株式会社製を用いた。

得られた不織布を10cm×10cmにカットし、上下60°Cの鉄板に0.30MPaの圧力で90秒間プレスした後、不織布を白金にて蒸着した。そして上記のSEMを用いて、加速電圧15kV、ワーキングディスタンス21mmの条件にて撮影した。撮影倍率は、平均繊維径が0.5μm未満の糸は10000倍、平均繊維径が0.5μm以上1.5μm未満の糸は6000倍、1.5μm以上の糸は4000倍とした。それぞれの撮影倍率での撮影視野は、10000倍では12.7μm×9.3μm、6000倍では21.1μm×15.9μm、4000倍では31.7μm×23.9μmであった。ランダムに繊維100本以上を撮影し、全ての繊維径を測長することで平均繊維径(数平均繊維径)を求めた。この際に、糸長方向で融着している繊維同士は測定から省いた。ここで、Dn:数平均繊維径の求め方を記す。

繊維径Diの繊維がNi本存在するとき、Dnは以下の式(3):

【図1】

9

153

0001437437000003.jpg

{式中、Xi=繊維径Diの存在比率=Ni/ΣNiである。}、で計算した。

上記の平均繊維径を求める際に算出された標準偏差を平均繊維径で割り、得られた値に100を掛けることによってCV値(%)を算出する。

・・・

【0059】

[実施例1]

日本ダイニスコ株式会社製のメルトインデクサーを使用し、ASTM D1238に準拠して測定した結果、メルトフローレートが1700g/10minであるナイロン6樹脂を使用した。本樹脂を押出機で溶融し、ノズル径0.20mの紡口ノズルから単孔吐出量0.03g/minで押し出した。上記のナイロン6樹脂を押し出す際に、紡糸ガスは紡糸ガス温度370°C、紡糸ガス圧力0.10MPaの条件に設定し、ディスタンスの空気流れを整流してナイロン6樹脂を牽引細化することで連続長繊維からなるメルトブローン繊維を作製した。

得られたメルトブローン不織

の各種物性を以下の表1に示す。尚、目付は30g/m

2

、Dmaxは4.02μm、Daveは2.15μm、Dminは1.31μmであった。得られた不織布は、従来のメルトブローン法では得ることのできない極細繊維によって構成され、孔径が極小且つ均一であり、且つ親水性が良好であるメルトブローン不織布であった。

【0060】

[実施例2]

メルトフローレートが1500g/10minであるナイロン6樹脂を押出機で溶融し、ノズル径0.25mmの紡口ノズルから単孔吐出量0.06g/minで押し出した。上記のナイロン6樹脂を押し出す際に、紡糸ガスは紡糸ガス温度350°C、紡糸ガス圧力0.15MPaの条件に設定し、ディスタンスの空気流れを整流してナイロン6樹脂を牽引細化することで連続長繊維からなるメルトブローン繊維を作製した。

得られたメルトブローン不織布の各種物性を以下の表1に示す。目付は30g/m

2

、Dmaxは6.12μm、Daveは3.18μm、Dminは1.93μmであった。得られた不織布は、従来のメルトブローン法では得ることのできない極細繊維によって構成され、孔径が極小且つ均一であり、且つ親水性が良好であるメルトブローン不織布であった。

【0061】

[実施例3]

メルトフローレートが1600g/10minであるナイロン6樹脂を押出機で溶融し、ノズル径0.25mmの紡口ノズルから単孔吐出量0.03g/minで押し出した。上記のナイロン6樹脂を押し出す際に、紡糸ガスは紡糸ガス温度380°C、紡糸ガス圧力0.20MPaの条件に設定し、ディスタンスの空気流れを整流してナイロン6樹脂を牽引細化することで連続長繊維からなるメルトブローン繊維を作製した。

得られたメルトブローン不織布の各種物性を以下の表1に示す。目付は20g/m

2

、Dmaxは5.37μm、Daveは2.75μm、Dminは1.62μmであった。得られた不織布は、従来のメルトブローン法では得ることのできない極細繊維によって構成され、孔径が極小且つ均一であり、且つ親水性が良好であるメルトブローン不織布であった。

・・・

【0065】

【表1】

38

153

0001437437000004.jpg

(3) 甲4の記載

甲4には、次の記載がある。

「【特許請求の範囲】

【請求項1】

飽和水蒸気または過熱水蒸気を用いて、非導電性繊維シートをエレクトレット化することを特徴とするエレクトレット繊維シートの製造方法。

【請求項2】

前記飽和水蒸気または過熱水蒸気を、ノズルより噴出させて非導電性繊維シートに吹き付けることにより、非導電性繊維シートをエレクトレット化することを特徴とする請求項1に記載のエレクトレット繊維シートの製造方法。

【請求項3】

ノズルから、前記飽和水蒸気または過熱水蒸気を非導電性繊維シートに吹き付けて、該飽和水蒸気または過熱水蒸気が非導電性繊維シート内を透過する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のエレクトレット繊維シートの製造方法。

【請求項4】

前記飽和水蒸気または過熱水蒸気は、0.3mm径のオリフィスより噴出させて非導電性繊維シートに吹き付ける際に、該オリフィスの手前における圧力が0.1~0.4MPaであり、かつ温度が150°C以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のエレクトレット繊維シートの製造方法。

【請求項5】

前記非導電性繊維シートは、メルトブロー不織布であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のエレクトレット繊維シートの製造方法。

【請求項6】

前記非導電性繊維シートは、ヒンダードアミン系安定剤、トリアジン系添加剤又は脂肪酸アマイド系添加剤から選択される少なくとも1種の添加剤を含有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のエレクトレット繊維シートの製造方法。」

「【発明を実施するための最良の形態】

【0011】

本発明は、飽和水蒸気または過熱水蒸気を用いて、非導電性繊維シートをエレクトレット化することを特徴とするエレクトレット繊維シートの製造方法に係る。

以下に、本発明を詳細に説明する。

【0012】

1.非導電性繊維シート

本発明において用いられる非導電性繊維シートは、非導電性を有する材料であれば、特に限定されない。例えば、合成繊維あるいは天然繊維の織物、編み物、不織布などの繊維シートを挙げることができる。これらの中でも、特に合成繊維シートが好ましい。

また、エアフィルターやマスクフィルターの場合には、合成繊維不織布が好ましく、中でも高性能フィルター用には、メルトブロー不織布を使用することが好ましい。

【0013】

また、上記非導電性繊維シートの素材は、非導電性を有する材料であれば、特に限定されるものではない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、フッ素系樹脂、ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられる。好ましくはポリオレフィン、特にポリプロピレンが好ましい。

【0014】

さらに、本発明で用いられる非導電性繊維シートには、エレクトレット性能を良くする観点から、ヒンダードアミン系化合物、トリアジン系化合物、又は脂肪酸アマイド系化合物のうち少なくとも1種の添加剤を配合することが好ましい。このような添加剤を配合することにより、非導電性繊維シートの帯電性を向上させることが可能となる。特にヒンダードアミン系安定剤が好ましい。

本発明では、例えば、ヒンダードアミン系化合物が単独で含まれていてもよいし、ヒンダードアミン系化合物が2種類以上含まれていてもよいし、トリアジン系化合物が2種類以上含まれていてもよいし、脂肪酸アマイド系化合物が2種類以上含まれていてもよい。また、ヒンダードアミン系化合物とトリアジン系化合物と脂肪酸アマイド系化合物が混在していてもよい。

【0015】

ヒンダードアミン系化合物としては、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、キマソープ944LD)、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、チヌビン622LD)、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、チヌビン144)などが挙げられる。

【0016】

また、トリアジン系化合物としては、前述のポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ))(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、キマソープ944LD)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン -2-イル)-5-((ヘキシル)オキシ)-フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、チヌビン1577FF)などを挙げることができる。

【0017】

さらに、本発明において、非導電性繊維シートに配合して用いる脂肪酸アマイド系化合物は、エレクトレット化帯電率を向上させる機能を有する化合物である。本発明で用いることのできる脂肪酸アマイド系化合物としては、脂肪酸、不飽和脂肪酸のモノアマイド類、ビスアマイド類が挙げられ、例えば、ステアリン酸アマイド、バルミチン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、ミリスチン酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸アマイド、カプリル酸アマイド、カプリン酸アマイド、リノール酸アマイド、リノレン酸アマイド、リジノールサンアマイド、パルミトレイン酸アマイド、ラウリン酸アマイド、アラキド酸アマイド、アラキジン酸アマイド、エイコセン酸アマイド、ブライジン酸アマイド、エライジン酸アマイド、N-ステアリルエルカ酸アマイド、N-(2-ハイドロキシメチル)・ステアリン酸アマイド、N-(2-ハイドロキシエチル)ラウリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスエルカ酸アマイド、オクタメチレンビスエルカ酸アマイド等を挙げることができる。

【0018】

本発明において、非導電性繊維シートに配合する上記の添加剤の配合量は、非導電性繊維シートに対して0.05~5重量%、好ましくは0.5~3重量%である。配合量が0.05重量%未満では、繊維の電荷の維持効果が小さく、一方、5重量%を超えると、効果の飽和とともに、例えば、配合物が不織布化工程で分解し、製品の着発色、臭気、揮発成分の生成などの副作用が起きやすくなり、好ましくない。」

「【実施例】

【0023】

本発明を以下の実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。

【0024】

[実施例1~5]

ヒンダードアミン(登録商標:CHIMASSORB 944FD、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を樹脂全体の1.0mass%含むポリプロピレンからなるメルトブロー不織布(目付20g/m

2

、厚み0.21mm、通気度:50cc/cm

2

/sec.)に、三菱レイヨン・エンジニアリング(株)のスチームジェット加工装置を使用して、表1の諸条件で、水蒸気を吹き付けてエレクトレット加工を行った。

尚、水蒸気圧力は、オリフィスの手前の圧力を、ラインスピードは、該メルトブロー不織布を挟んだコンベアーネットのスピードを、サクション圧力は、サクションボックス内の圧力を、測定したものである。」

(4) 甲5の記載

甲5には、次の記載がある。

「【特許請求の範囲】

【請求項1】

ポリエステル系またはポリオレフィン系短繊維より形成される不織布に、水溶化した含窒素環状構造を含む光安定剤を下記の(I)~(III)のいずれかの方法により添着し、次いで、エレクトレット処理を施すことを特徴とするエアフィルタ用帯電不織布の製造方法。

(I):短繊維原綿を開繊・紡出して形成されるウエブの繊維間を機械的交絡及び/又は熱融着の方法で固定して不織布を形成する工程中に、該光安定剤を含浸、スプレー又はコーティングにより添着する方法。

(II):繊維の紡糸工程おいて、使用する油剤中に水溶化した該光安定剤を配合して、紡糸された繊維表面に添着させ、不織布用短繊維原綿に供する方法。

(III):後工程にて、該光安定剤を不織布に含浸、スプレー又はコーティングにより添着する方法。

【請求項2】

前記含窒素環状構造を含む光安定剤は、(i)ヒンダードアミン系化合物、(ii)トリアジン系化合物及び(iii)ベンゾトリアゾール系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ用帯電不織布の製造方法。

・・・

【請求項7】

エアフィルタ用支持体及び/又はエアフィルタ用濾材として用いられることを特徴とする請求項6に記載のエアフィルタ用帯電不織布。

【請求項8】

請求項7に記載の支持体として用いられるエアフィルタ用帯電不織布(A)に、エレクトレット処理を施した、ポリオレフィンを素材とする連続繊維からなる不織布(B)をエアフィルタ用濾材として積層または貼合することを特徴とするエアフィルタ。

【請求項9】

不織布(B)は、平均繊維径が0.5~20μmの連続繊維からなるポリプロピレン製メルトブロー法不織布または平均繊維径が10~30μmの連続繊維からなるポリプロピレン製スパンボンド法不織布から選ばれる不織布であることを特徴とする請求項8に記載のエアフィルタ。」

「【発明を実施するための形態】

【0018】

本発明のエアフィルタ用帯電不織布は、ポリエステル系短繊維やポリプロピレン系短繊維から構成される不織布(A)の繊維外表面に、水溶化した特定の光安定剤を添着し、エレクトレット処理を施してなるものである。

以下、項目毎に詳細に説明する。

・・・

【0023】

2.含窒素環状構造を含む光安定剤

本発明に係る含窒素環状構造を含む光安定剤は、具体的には、(i)ヒンダードアミン系化合物、(ii)トリアジン系化合物及び(iii)ベンゾトリアゾール系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である。光安定剤として、一種を用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよく、適宜選択される。

【0024】

本発明に係る含窒素環状構造を含む光安定剤は、通常、ポリマーの耐光安定性付与の添加剤として、一般に用いられているが、通常、常温での形態は固形(粉末または顆粒)であって、水に不溶であり、そのままでは、不織布を構成する繊維表面に均一に添着及び/又は被覆されない。従って、これら化合物を繊維表面に添着(被覆)するためには、液状化する必要があり、作業環境面からは、望ましくは有機溶媒を使用せずに、水溶化又はエマルジョン化することが望ましい。

このように水溶化又はエマルジョン化すれば、不織布製造工程や原綿紡糸工程などに、特段の改造を要せず、既存の設備を転用できるという利点を有する。

【0025】

本発明において、水溶化またはエマルジョン化した光安定剤の各種化合物を繊維表面に添着する量としては、繊維成分100重量部あたり、0.05~5重量部である。好ましくは0.1~3重量部である。添着量が0.05重量部未満では、エレクトレット処理の帯電効果の持続性を発揮せず、一方、5重量部を超えて添着しても、それに見合うだけの効果の向上が得られず、経済的にも不利となる。

【0026】

(i)ヒンダードアミン系化合物(HALS)

本発明に係る分子量が2000以上の高分子量タイプのヒンダードアミン系化合物(HALS)としては、例えば、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)](分子量:2000~3100、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、キマソーブ944LD)、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物(分子量:3100~4000、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、チヌビン622LD)、N,N’,N”,N”’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン(分子量:2286、90%)と上記チヌビン622LD(10%)との混合物(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、キマソーブ119FL)、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(分子量:2600~3400、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、キマソーブ2020FDL)などが挙げられる。これら以外にも、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、チヌビン111FDL(ブレンド品)も挙げられる。

また、本発明に係る分子量が2000未満の低分子量タイプのヒンダードアミン系化合物としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル){[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル}ブチルマロネート(外観:粉末、分子量:685、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、チヌビン144)、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステルと1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(外観:液体、分子量:737、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、チヌビン123)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(外観:粉末、分子量:481、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、チヌビン770)などが挙げられる。

【0027】

また、ヒンダードアミン系化合物であって、トリアジン基を含む高分子タイプの化合物、例えば、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)](分子量:2000~3100、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、キマソーブ944LD)、N,N’,N”,N”’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン(分子量:2286、90%)と上記チヌビン622LD(10%)との混合物(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、キマソーブ119FL)、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(分子量:2600~3400、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、キマソーブ2020FDL)などが、耐熱性、低揮発性などの点から、好ましく用いられる。

【0028】

(ii)トリアジン系化合物

本発明に係るトリアジン系化合物には、例えば、2-(4,6ジフェニルエーテル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、(分子量:425、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、チヌビン1577FF)、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソオクチルオキシフェニル)-s-トリアジン(分子量:510、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、チヌビン411L)などが挙げられ、これら以外にも、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、チヌビン400(分子量:647、ヒドロキシフェニルトリアジン系)も挙げられる。

【0029】

(iii)ベンゾトリアゾール系化合物

また、本発明に係るベンゾトリアゾール系化合物は、例えば、低揮散性で比較的融点の高いものとして、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2イル)4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(分子量:447、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、チヌビン234)、2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール(分子量:358、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、チヌビン327)、2-(2H-ベンゾ)トリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ベンチルフェノール(分子量:351、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、チヌビン328)、2,2‘-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール](分子量:659、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、チヌビン360)などが挙げられる。」

(5) 甲6の記載

甲6には、次の記載がある。

「【特許請求の範囲】

【請求項1】

耐熱性樹脂からなる耐熱性メルトブロー不織布薄膜であって、

厚みが50μm以下であり、

目付が5~100g/m

2

であり、

平均繊維径が0.5~15μmであり、

ガーレー透気度が1~40s/φ10/300ccであり、

熱収縮率が、150°Cで1時間の加熱条件下における熱処理後において、MD方向およびCD方向を、それぞれ寸法変化率で表わして、いずれかが1.2%以下である

ことを特徴とする耐熱性メルトブロー不織布薄膜。

【請求項2】

前記耐熱性樹脂が、融点200°C以上の熱可塑性樹脂である請求項1に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜。」

「【発明を実施するための最良の形態】

【0017】

以下、本発明について、詳細に説明する。

A.第1の発明

1.耐熱性メルトブロー不織布薄膜

第1の発明は、耐熱性樹脂からなる耐熱性メルトブロー不織布薄膜を提供するものであり、かかる耐熱性メルトブロー不織布薄膜は、少なくとも次の物性値を有するものである。

すなわち、

・厚みが50μm以下であり、

・目付が5~100g/m

2

であり、

・平均繊維径が0.5~15μmであり、

・ガーレー透気度が1~40s/φ10/300ccであり、

・熱収縮率が、150°Cで1時間の加熱条件下における熱処理後においても、MD方向およびCD方向を、それぞれ寸法変化率で表していずれかが1.2%以下である。

さらに、前記の通り、厚みが50μm以下に薄膜化されたにも拘らず電解液吸液性能および電解液保液性能に優れたものであり、具体的には後述の実施例および表1で示す通り、電解液吸液速度15秒以下、電解液保液率250%以上に達するものも製造が可能である。

また、本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜の開孔度は、SEMで観察された不織布を構成する繊維の隙間の存在により十分維持されたものである。

【0018】

2.耐熱性メルトブロー不織布薄膜の構成成分

本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜の構成成分は、耐熱性樹脂を含有する成分であり、2種以上の耐熱性樹脂の混合体のものでもよく、メルトブロー不織布原反の成分に由来する。具体例としては、次の通りである。

【0019】

本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布原反の原料樹脂としては、高温安定性を維持する観点から耐熱性樹脂が選択される。

耐熱性樹脂としては、融点200°C以上の熱可塑性合成樹脂が好適であり、具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアリーレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリフタルアミド、ポリオレフィン等を挙げることができる。

【0020】

前記ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略すことがある。)、ポリブチレンイソフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリ(1,6-ヘキサメチレンテレフタレート、ポリ(エチレン-2,6-ナフタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンメチレンテレフタレート)等が挙げられる。これらは単独重合体でもよく、または、共重合体、またはこれらの混合物でもよい。これらのポリエステルの中では、特にポリブチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートとポリブチレンイソフタレートとの混合物等が本発明に関する耐熱性メルトブロー不織布薄膜の原料樹脂として好ましく、これらを用いることにより、メルトブロー紡糸性を向上し、不織布の引張強度を増大させることができる。また、ポリブチレンテレフタレートの数平均分子量は、5,000~20,000のものが好ましく用いられる。さらに、IV値0.6~0.9のものが好適である。

【0021】

前記ポリアミド(以下、PAと略すことがある。)としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6-66共重合体、ナイロン12、ナイロン6-12共重合体、ナイロン46等が挙げられる。メルトブロー不織布では、なるべく低い分子量のものが紡糸性がよく、細い繊維が得られるので好ましく、例えば、10,000~25,000の数平均分子量のPAが好ましい。

・・・

【0024】

3.耐熱性メルトブロー不織布薄膜の構造

本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜は、単層の不織布層からなる不織布加工体または少なくとも二層の不織布層が積層され貼り合せられてなる不織布加工体である。特に、少なくとも二層以上の不織布層が積層され貼り合せられてなる不織布加工体が、単層に比較して下記の如く特色を有する効果を奏する点から用途に応じて採用することが好ましい。かかる耐熱性メルトブロー不織布薄膜としては、(A)同一物性の不織布層が貼り合せられてなるものと、(B)物性のうち、少なくとも繊維径の異なる繊維を有する不織布層が貼り合せられてなるものを挙げることができる。

・・・

【0027】

前記細繊維としては、具体的には、平均繊維径0.5~10μm、好ましくは1~5μm、さらに好ましくは、1.5~4μmのものであり、一方、前記太繊維としては具体的には、平均繊維径1~15μm、好ましくは、1.5~10μm、さらに好ましくは、2~5μmであり、これらの平均繊維径が互いに重複することがない細繊維と太繊維を有する不織布層の組合せが好ましい。

【0028】

4.耐熱性メルトブロー不織布薄膜の物性

次に、本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜が具備すべき物性値について、説明する。

尚、かかる物性値は、耐熱性メルトブロー不織布薄膜が、二層以上の物性値の異なる不織布層から構成されるものである場合は、かかる不織布層全部の平均値である。

【0029】

(1)平均繊維径

本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜を構成する不織布層の繊維の平均繊維径は、0.5~15μm、好ましくは1.0~10μm、さらに好ましくは1.5~8μmである。平均繊維径が0.5μm未満では、引張強度が弱くなるばかりではなく、電池用セパレータとして使用した場合は、電池の内部抵抗が大きくなりすぎるという難点が生ずる。一方、平均繊維径が15μmを超えると、電池用セパレータに用いた際には、内部短絡の危険性が高まるおそれが生ずる。

・・・

【0033】

(5)引張強度

本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜の引張強度は、2~50N/25mm幅であり、好ましくは5~40N/25mm幅である。引張強度が2N/25mm幅未満であれば、電池のアセンブリ時に切れが生じ易くなる。一方、引張強度が50N/25mm幅を超えると、極端に伸度が低下し、アセンブルの際に自由度の低下から不具合が生じやすくなるおそれがある。

【0034】

(6)引張伸度

本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜の引張伸度は、1~100%であり、好ましくは5~80%である。引張伸度が1%未満であれば、アセンブリ時に切れが生じ易くなる。一方、引張伸度が100%以上であると、ネッキングが起こりやすく、安定してアセンブルすることができにくくなるおそれが生ずる。」

「【実施例】

【0055】

以下、本発明について実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は、これらの実施例等により限定されるものではない。

なお、実施例および比較例中に記載の各物性値は、それぞれ下記の方法により測定して求めたものである。

1.各種物性値測定方法

【0056】

(1)目付:試料長さ方向から、100mm×100mmの試験片を採取し、水分平衡状態の重さを測定し、1m当たりの目付重量に換算して求めた。

・・・

【0060】

(5)引張強度、引張伸度:JIS L1085「不織布しん地試験方法」の「引張強さ及び伸び率」に準拠し、サンプル幅25mm、つかみ間隔100mm、引張速度300mm/分にて測定した。

【0061】

(6)平均繊維径:試験片の任意な5箇所について電子顕微鏡で5枚の写真撮影を行い、1枚の写真につき20本の繊維の直径を測定し、これら5枚の写真について行い、合計100本の繊維径を平均して求めた。

・・・

【0067】

実施例1

前記ポリブチレンテレフタレート(PBT)を原料樹脂としてメルトブロー法により製造された下記の物性を有するメルトブロー不織布原反単層品

PBTメルトブロー不織布原反(単層品)

目付(g/m

2

): 20

厚み(μm): 175

通気度(cc/cm

2

/s): 38.7

引張強度(N/25mm幅): 9.6

引張伸度(%): 15.8

平均繊維径(μm): 1.8

を、カレンダ加工温度150°Cにそれぞれ加熱された金属ロール/金属ロール(形式:直立2本形)の間に挟持し、加圧条件は、ロール圧をロールの線圧として130N/mmに設定して高温カレンダ加工処理に供した。尚、金属ロール間には、高温カレンダ加工処理後の不織布薄膜中間体の厚みが約50~70μmのレベルとなるように調整されたクリアランスを設けた。

【0068】

前記の如く、金属ロール/金属ロールによる高温カレンダ加工処理により得られたメルトブロー不織布薄膜中間体を、弾性ロールと、カレンダ加工温度100°Cに加熱された金属ロールの間にロール同士がピンチされた状態において挟持し、加圧条件のうちロール圧を線圧として30N/mmに設定した特殊カレンダ加工処理に供し、次の物性を有するPBT耐熱性メルトブロー不織布薄膜(単層品)を得た。

【0069】

PBTメルトブロー不織布薄膜(単層品)

目 付(g/m

2

): 20

厚 み(μm): 35

ガーレー透気度(s/φ10/300cc): 12.4

引張強度(N/25mm幅): 11.3

引張伸度(%): 22.9

外 観(透明斑の形成によるフィルム化): なし

電解液吸液速度(秒): 11.15

電解液保液率(%): 286

熱収縮率(%):120°Cのオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率 MD:0.5

CD:0.5

150°Cのオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率 MD:1.0

CD:0.5

(6) 甲7の記載

甲7には、次の記載がある。

「【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、電気二重層キャパシタ用セパレータ(以下、「セパレータ」ということがある。)およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、耐熱性樹脂を原料としてメルトブロー法により製造された不織布(以下、「メルトブロー不織布」ということがある。)複数枚を貼り合わせて薄膜化してなるメルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータおよびその製造方法に関するものである。」

「【発明を実施するための最良の形態】

【0012】

以下、本発明について、詳細に説明する。

A.第1の発明

1.メルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータ:

第1の発明によれば、耐熱性樹脂を構成材料とするメルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータが提供される。かかるメルトブロー不織布薄膜積層体は、少なくとも次の物性値を有するものである。

すなわち、

・厚みが50μm以下であり、

・目付が5~100g/m2であり、

・平均繊維径が0.5~15μmであり、

・ガーレー透気度が1~40s/φ10/300ccであり、

・熱収縮率が、150°Cで1時間の加熱条件下における熱処理後においても、MD方向およびCD方向のいずれかの形状の収縮変化を、それぞれ寸法変化率で表して1.2%以下である。

さらに、前記の通り、厚みが50μm以下に薄膜化されたにも拘らず、電解液吸液性能および電解液保液性能に優れたものであり、具体的には後述の実施例および表1で示す通り、電解液吸液速度15秒以下、電解液保液率280%以上に達するものも実現可能である。

また、本発明に係る電気二重層キャパシタを構成するメルトブロー不織布薄膜の開孔度は、SEMで観察されたメルトブロー不織布薄膜積層体を構成する繊維の隙間に存在する細孔の存在により十分維持されたものである。

・・・

【0013】

2.メルトブロー不織布薄膜積層体の構造:

(1)特性

本発明に係るメルトブロー不織布薄膜積層体は、少なくとも二層の不織布層が積層され貼り合せられてなる不織布積層加工体である。特に、少なくとも二層以上の不織布層が積層され貼り合せられてなる不織布積層加工体が、単層に比較して下記の如く特色を有する効果を奏する点から用途に応じて採用することが好ましい。かかるメルトブロー不織布薄膜積層体としては、(A)同一物性の不織布層が貼り合せられてなるものと、(B)物性のうち、少なくとも平均繊維径の異なる繊維を有する不織布層が貼り合せられてなるものを挙げることができる。

・・・

【0016】

前記細繊維としては、具体的には、平均繊維径0.5~10μm、好ましくは1~5μm、さらに好ましくは、1.5~4μmのものであり、一方、前記太繊維としては具体的には、平均繊維径1~15μm、好ましくは、1.5~10μm、さらに好ましくは、2~5μmであり、これらの平均繊維径が互いに重複することがない細繊維と太繊維を有する不織布層の組合せが好ましい。

・・・

【0024】

3.メルトブロー不織布薄膜積層体の構成材質

本発明に係るメルトブロー不織布薄膜積層体の構成材質は、耐熱性樹脂を含有する成分であり、2種以上の耐熱性樹脂の混合体のものでもよく、メルトブロー不織布原反の成分に由来する。具体例としては、次の通りである。

【0025】

本発明に係るメルトブロー不織布原反の原料樹脂としては、高温安定性を維持する観点から耐熱性樹脂が選択される。

耐熱性樹脂としては、融点200°C以上の熱可塑性合成樹脂が好適であり、具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアリーレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリフタルアミド、ポリオレフィン等を挙げることができる。

【0026】

前記ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略すことがある。)、ポリブチレンイソフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリ(1,6-ヘキサメチレンテレフタレート、ポリ(エチレン-2,6-ナフタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンメチレンテレフタレート)等が挙げられる。これらは単独重合体でもよく、または、共重合体、またはこれらの混合物でもよい。これらのポリエステルの中では、特にポリブチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートとポリブチレンイソフタレートとの混合物等が本発明に関するメルトブロー不織布薄膜積層体の原料樹脂として好ましく、これらを用いることにより、メルトブロー紡糸性を向上し、メルトブロー不織布薄膜積層体の引張強度を増大させることができる。また、ポリブチレンテレフタレートの数平均分子量は、5,000~20,000のものが好ましく用いられる。さらに、IV値0.6~0.9のものが好適である。

【0027】

前記ポリアミド(以下、PAと略すことがある。)としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6-66共重合体、ナイロン12、ナイロン6-12共重合体、ナイロン46等が挙げられる。メルトブロー不織布では、なるべく低い分子量のものが紡糸性がよく、細い繊維が得られるので好ましく、例えば、10,000~25,000の数平均分子量のPAが好ましい。

・・・

【0030】

4.メルトブロー不織布薄膜積層体の物性

次に、本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体が具備すべき物性値について、説明する。

尚、かかる物性値は、メルトブロー不織布薄膜積層体が、二層以上の物性値の異なる不織布層薄膜から構成されるものである場合は、かかる不織布薄膜層全部の平均値である。

【0031】

(1)平均繊維径

本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の各不織布層の繊維の平均繊維径は、0.5~15μm、好ましくは1.0~10μm、さらに好ましくは1.5~8μmである。平均繊維径が0.5μm未満では、引張強度が弱くなるばかりではなく、セパレータとしては、電気二重層キャパシタの内部抵抗が大きくなりすぎるという難点が生ずる。一方、平均繊維径が15μmを超えると、セパレータとしては、内部短絡の危険性が高まるおそれが生ずる。

・・・

【0035】

(5)引張強度

本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の引張強度は、2~50N/25mm幅であり、好ましくは5~40N/25mm幅である。引張強度が2N/25mm幅未満であれば、電池のアセンブリ時に切れが生じ易くなる。一方、引張強度が50N/25mm幅を超えると、極端に伸度が低下し、アセンブリの際に自由度の低下から不具合が生じやすくなるおそれがある。

【0036】

(6)引張伸度

本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の引張伸度は、1~100%であり、好ましくは5~80%である。引張伸度が1%未満であれば、アセンブリ時に切れが生じ易くなる。一方、引張伸度が100%以上であると、ネッキングが起こりやすく、安定してアセンブリすることができにくくなるおそれが生ずる。」

「【実施例】

【0057】

以下、本発明について実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は、これらの実施例等により限定されるものではない。

なお、実施例および比較例中に記載のメルトブロー不織布原反およびメルトブロー不織布薄膜積層体の各物性値は、それぞれ下記の方法により測定して求めたものである。

1.各種物性値測定方法

【0058】

(1)目付:試料の長さ方向から、100mm×100mmの試験片を採取し、水分平衡状態の重さを測定し、1m2当たりの目付重量に換算して求めた。

・・・

【0062】

(5)引張強度、引張伸度:JIS L1085「不織布しん地試験方法」の「引張強さ及び伸び率」に準拠し、サンプル幅25mm、つかみ間隔100mm、引張速度300mm/分にて測定した。

【0063】

(6)平均繊維径:試験片の任意な5箇所について電子顕微鏡で5枚の写真撮影を行い、1枚の写真につき20本の繊維の直径を測定し、これら5枚の写真について行い、合計100本の繊維径を平均して求めた。

・・・

【0069】

実施例1

本明細書段落[0042]に記載のメルトブロー法により、原料樹脂として前記ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」ということがある。)を使用し、PBTメルトブロー不織布原反(A)および(B)をそれぞれ製造した。具体的には、原料樹脂を290°Cの押出機温度で溶融し、300°Cに設定したダイに送り込み、ダイノズルから吐出させると同時に、310°Cの高温エアブローガスにより延伸して微細繊維化し、ノズルから離れた位置に設置したコレクタに捕集した。ノズル口径、吐出量等は、溶融温度、ダイ温度と共に所望の不織布原反が得られるように適宜選択した。

前記製造方法により製造された下記の平均繊維径1.8μmの繊維を有するPBTメルトブロー不織布原反(A)と、平均繊維径1.8μmの繊維を有するPBTメルトブロー不織布原反(B)の二種類のメルトブロー不織布原反を用意した。

PBTメルトブロー不織布原反(A)

目付(g/m2): 8

厚み(μm): 86

通気度(cc/cm2/s): 113.4

引張強度(N/25mm幅): 4.7

引張伸度(%): 32.8

平均繊維径(μm): 1.8

PBTメルトブロー不織布原反(B)

目付(g/m2): 12

厚み(μm): 103

通気度(cc/cm2/s): 70.6

引張強度(N/25mm幅): 5.5

引張伸度(%): 37.3

平均繊維径(μm): 1.8

前記のメルトブロー不織布原反(A)とメルトブロー不織布原反(B)とを重ね合わせて、150°Cにそれぞれ加熱された二個の金属ロール/金属ロールの間に挟持し、加圧条件のうち、ロール圧をロールの線圧として130N/mmの圧力条件下で第一カレンダ加工処理に供した。金属ロール間には、第一カレンダ加工処理後のカレンダ加工処理中間体の厚みが約50~70μmのレベルとなるように調整されたクリアランスを設けた。金属ロールの材質としてはスチールを用いた。

【0070】

前記の第一カレンダ加工処理により不織布原反(A)と不織布原反(B)の各層の界面に存在する繊維の一部が熱融着することにより得られた二層の密着層を有するカレンダ加工処理中間体を、弾性ロールと、100°Cに加熱された金属ロールとの間に挟持し、ロール圧をロールの線圧として30N/mmの圧力条件下でさらに第二カレンダ加工処理に供し、二種の不織布原反(A)と不織布原反(B)の各薄膜からなる積層体のメルトブロー不織布薄膜積層体を得た。

弾性ロールとしては、ショアD硬度;80を有するポリアミド系合成樹脂製のものを用いた。得られたPBTメルトブロー不織布薄膜積層体(二層品(1))の物性は、次の通りである。

PBT/PBTメルトブロー不織布薄膜二層積層体(二層品1)

目付(g/m2): 20

厚み(μm): 33

ガーレー透気度(s/φ10/300cc): 13.6

通気度T(cc/cm2/s): 5.10

引張強度(N/25mm幅): 13.8

引張伸度(%): 22.5

平均繊維径(μm): 2.6

外観(透明斑の形成によるフィルム化): なし

電解液吸液速度(秒): 9.72

電解液保液率(%): 365

熱収縮率(%):

(120°Cのオーブンにて

1時間加熱後の寸法変化率) MD:0.5

CD:0.5

(150°Cのオーブンにて

1時間加熱後の寸法変化率) MD:1.2

CD:0.5

細孔径分布

(1)最大細孔径(μm) 12.27

(2)最小細孔径(μm) 2.285

(3)平均細孔径(μm) 6.673

(4)最大細孔径/平均細孔径 1.84

(5)最大細孔径/最小細孔径 5.37

(6)細孔径3~7μmの範囲を

占める細孔の割合(%): 70

前記の結果に示す通り、構成繊維の平均繊維径が同一の二層の不織布を積層し貼り合せることにより、厚み33μmの薄膜でありながら、ガーレー透気度が13.6s/φ10/300ccであり、高い開孔度を維持し、繊維の潰れを抑制し、フィルムの透明班の形成も抑制することができた。また、高温条件下における熱収縮率についても120°Cに設定したオーブンで1時間加熱後、MD、CD方向共にそれぞれ寸法変化率0.5%であり、150°Cに設定したオーブンで1時間加熱後も寸法変化率は、MD方向1.2%、CD方向0.5%であり、良好な結果が得られた。また、電解液吸液速度については、9秒72であり、電解液保液率についても365%という顕著な効果を奏し、電気二重層キャパシタ用セパレータとして極めて高い優位性が示された。

かかる特性を実現させた不織布積層体の孔径分布は、図1のグラフで示すように、著しく制御されていることが示された。」

(7) 甲8の記載

甲8には、次の記載がある。

「発明が解決しようとする課題

[0006] 本発明は、繊維径が太くても、均一性が高く、嵩高で、かつ耐圧縮性の良好な新たなメルトブロー不織布を提供することを課題とする。」

「発明を実施するための形態

[0014] 本発明は、複数の突出部を有する、液体フィルター用のメルトブロー不織布であって、不織布の厚みBに対する該突出部の最大高さAの比率A/Bが10~30であり、地合指数が150~450である、メルトブロー不織布を提供する。

・・・

[0026] 本発明における液体フィルター用のメルトブロー不織布を構成するポリマーは、メルトブロー可能な熱可塑性樹脂であれば、特に限定されない。メルトブロー不織布を構成するポリマーとしては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等、好ましくはポリプロピレン等)、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。二種以上の熱可塑性樹脂を組み合わせて使用する場合、その配合比は限定されない。本発明において、ある樹脂を主体に構成されたメルトブロー不織布とは、当該樹脂を主成分として含むメルトブロー不織布といいかえることもできる。また、本発明において、ある樹脂を主体に構成されたメルトブロー不織布とは、主要な原料として樹脂を用いて得られたメルトブロー不織布を意味し、当該樹脂のみを用いて得られたメルトブロー不織布だけでなく、例えば、当該熱可塑性樹脂を原料の50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上等の割合で用いて得られたメルトブロー不織布も含まれる。本発明におけるメルトブロー不織布においては、ポリオレフィン、ポリエステルが好ましく、ポリオレフィンが特に好ましい。

・・・

[0030] 本発明において原料としてポリエステルを用いる実施形態において、ポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が好ましい。

[0031] 本発明において原料としてポリアミドを用いる実施形態において、ポリアミドとしては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド3(ナイロン3)(登録商標)、ポリアミド4(ナイロン4)(登録商標)、ポリアミド6(ナイロン6)(登録商標)、ポリアミド6-6(ナイロン6-6)(登録商標)、ポリアミド12(ナイロン12)(登録商標)等が挙げられる。

[0032] 本発明において、上記樹脂には、本発明の効果が得られる範囲において、結晶核剤、艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、親水剤、光安定剤等を添加してもよい。」

「実施例

[0058] 本実施例において、各パラメータは下記のように測定、算出した:

(1)平均繊維径:平均繊維径は、メルトブロー不織布の電子顕微鏡写真から任意の10か所について各10本ずつ、直径0.1μmオーダーまで繊維径を測定し、それらを平均して求めた。

(2)平均目付:100mm×100mmの10枚のメルトブロー不織布試験片に対して、温度23°C及び湿度50%における水分平衡状態の質量(g)を測定し、平均することにより求めた。

(3)突出部の最大高さA(厚みA):100mm×100mmのメルトブロー不織布試験片に対して、直径2.5cm、荷重7g/cm

2

の測定子を付けたリニアゲージにより試験片の重心に当たる中央部分の厚みを測定し、10枚の測定値を平均することにより求めた。

(4)厚みB:メルトブロー不織布をカットした断面のSEM写真を撮影し、不織布繊維が充填されている部分を任意で10か所選定し、0.001mmオーダーまでそれらの厚みを測定し、それらを平均して求めた。

(5)充填率:充填率(%)=[平均目付(g/m

2

)/突出部の最大高さA(m)/樹脂比重(g/m

3

)]×100の式により求めた。

(6)通気度T:100mm×100mmのメルトブロー不織布試験片を3枚積層し、JIS L1096に従ってフラジール型試験機により測定した。

(7)引張強度:幅50mmの短冊状メルトブロー不織布試験片に対して、製造時の長手方向の引張破断強度をJIS L 1085に従って測定した。

(8)下面高さC:メルトブロー不織布をカットした断面のSEM写真を撮影し、不織布が突出したことにより作られる空間構造部分を任意で10か所選定し、0.001mmオーダーまでそれらの最大下面高さを測定し、それらを平均して求めた。

(9)地合指数:200mm×200mmの3枚のメルトブロー不織布試験片に対して、地合計(野村商事製FMT-M III)を用いて測定し、平均することにより求めた。

(10)耐圧縮性:カレンダーロールのクリアランスを突出部の最大高さAの20%に設定し、100mm×100mmのサンプルを室温にて速度2m/minでカレンダーし、厚みA′と通気度T′を測定した。 A′/AおよびT′/Tの値を耐圧縮性とした。

(11)厚みA′:カレンダー機で加圧した直後のメルトブロー不織布試験片に対して、直径2.5cm、荷重7g/cm

2

の測定子を付けたリニアゲージにより試験片の重心に当たる中央部分の厚みを測定することにより求めた。

(12)通気度T′:カレンダー機で加圧した直後のメルトブロー不織布試験片に対して、3枚積層した中央部分をJIS L1096に従ってフラジール型試験機により測定した。

(13)繊維径変動率(CV値):CV値=(繊維径の標準偏差/平均繊維径)とした。

・・・

[0060] 実施例1

メルトブロー製造装置の原料ホッパーにMFR40のホモポリプロピレン樹脂(重量平均分子量1.7×10

5

。以下の実施例、比較例でも同じ)を投入し、溶融混練温度を330°Cとした。ダイとコレクタの間隔150mmで、290°Cの加熱圧縮空気25Nm

3

/分と共に、ノズルより樹脂を大気中に吐出し、冷却用の20°Cのクエンチエア17m

3

/分を当てたのち、吸引量60m

3

/分のコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を適当に調節して、平均繊維径21.0μm、平均目付45g/m

2

、突出部の最大高さA 2.02mm、不織布の厚みB 0.09mm、厚みの比A/Bが22.4、地合指数320のメルトブロー不織布を得た。耐圧縮性は厚みの比A′/Aが0.89および通気度の比T′/Tが0.98であった。

[0061] 実施例2

メルトブロー製造装置の原料ホッパーにMFR40のホモポリプロピレン樹脂を投入し、溶融混練温度を390°Cとした。ダイとコレクタの間隔200mmで、290°Cの加熱圧縮空気25Nm

3

/分と共に、ノズルより樹脂を大気中に吐出し、冷却用の20°Cのクエンチエア17m

3

/分を当てたのち、吸引量60m

3

/分のコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を適当に調節して、平均繊維径33.6μm、平均目付45g/m

2

、突出部の最大高さA 2.10mm、不織布の厚みB 0.09mm、厚みの比A/Bが23.3、地合指数370のメルトブロー不織布を得た。耐圧縮性は厚みの比A′/Aが0.85および通気度の比T′/Tが0.99であった。

[0062] 実施例3

メルトブロー製造装置の原料ホッパーにMFR40のホモポリプロピレン樹脂を投入し、溶融混練温度を330°Cとした。ダイとコレクタの間隔200mmで、290°Cの加熱圧縮空気25Nm

3

/分と共に、ノズルより樹脂を大気中に吐出し、冷却用の20°Cのクエンチエア17m

3

/分を当てたのち、吸引量60m

3

/分のコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を適当に調節して、平均繊維径22.6μm、平均目付45g/m

2

、突出部の最大高さA 2.09mm、不織布の厚みB 0.12mm、厚みの比A/Bが17.4、地合指数350のメルトブロー不織布を得た。耐圧縮性は厚みの比A′/Aが0.86および通気度の比T′/Tが0.99であった。

[0063] 実施例4

メルトブロー製造装置の原料ホッパーにMFR40のホモポリプロピレン樹脂を投入し、溶融混練温度を310°Cとした。ダイとコレクタの間隔150mmで、290°Cの加熱圧縮空気25Nm

3

/分と共に、ノズルより樹脂を大気中に吐出し、冷却用のクエンチエアは使用せず、吸引量60m

3

/分のコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を適当に調節して、平均繊維径36.0μm、平均目付45g/m

2

、突出部の最大高さA 2.10mm、不織布の厚みB 0.12mm、厚みの比A/Bが17.5、地合指数390のメルトブロー不織布を得た。耐圧縮性は厚みの比A′/Aが0.86および通気度の比T′/Tが0.99であった。

[0064] 実施例5

メルトブロー製造装置の原料ホッパーにMFR40のホモポリプロピレン樹脂を投入し、溶融混練温度を370°Cとした。ダイとコレクタの間隔150mmで、290°Cの加熱圧縮空気25Nm

3

/分と共に、特許文献2の実施例1で用いたノズルより樹脂を大気中に吐出し、冷却用の20°Cのクエンチエア17m

3

/分を当てたのち、吸引量60m

3

/分のコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を適当に調節して、平均繊維径14.6μm、平均目付45g/m

2

、突出部の最大高さA 1.61mm、不織布の厚みB 0.09mm、厚みの比A/Bが17.9、地合指数420のメルトブロー不織布を得た。耐圧縮性は厚みの比A′/Aが0.80および通気度の比T′/Tが0.96であった。

[0065] 実施例6

メルトブロー製造装置の原料ホッパーにMFR40のホモポリプロピレン樹脂を投入し、溶融混練温度を370°Cとした。ダイとコレクタの間隔150mmで、290°Cの加熱圧縮空気25Nm

3

/分と共に、特許文献2の実施例1で用いたノズルより樹脂を大気中に吐出し、冷却用の20°Cのクエンチエア17m

3

/分を当てたのち、吸引量60m

3

/分のコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を適当に調節して、平均繊維径16.1μm、平均目付60g/m

2

、突出部の最大高さA 1.74mm、不織布の厚みB 0.15mm、厚みの比A/Bが11.6、地合指数385のメルトブロー不織布を得た。耐圧縮性は厚みの比A′/Aが0.80および通気度の比T′/Tが0.97であった。

・・・

[0072]

[表1]

86

153

0001437437000005.jpg

(8) 甲9の記載

甲9には、次の記載がある。

212

153

0001437437000006.jpg

214

153

0001437437000007.jpg

214

153

0001437437000008.jpg

212

153

0001437437000009.jpg

第5 申立理由1(進歩性)について

1 甲1発明に対する進歩性

(1) 本件発明1

ア 本件発明1と甲1発明との対比

(ア) 甲1発明の「融点220°Cのナイロン6」は、本件発明1の「融点が200°C以上の熱可塑性樹脂」に相当する。

また、甲1発明の「目付が3g/m

2

の不織布」を構成する繊維は、「融点220°Cのナイロン6」を原料とするものであるから、本件発明1の「融点が200°C以上の熱可塑性樹脂からなる繊維」に相当する。

(イ) 甲1発明の「平均繊維径」の値である「510(nm)」は、μmに換算すると0.51μmであるから、本件発明1の「平均繊維径」の範囲である「0.1μm以上、1.5μm以下」の範囲内の値である。

(ウ) 甲1発明の「繊維径の標準偏差を平均繊維径で除したものである繊維径変動率」を、比に換算したものが、本件発明1の「繊維径の標準偏差の平均繊維径に対する比である繊維径変動率」に相当する。

そして、甲1発明の「繊維径の標準偏差を平均繊維径で除したものである繊維径変動率」としての値である「71(%)」を比に換算した値である0.71は、本件発明1の「繊維径の標準偏差の平均繊維径に対する比である繊維径変動率」の範囲である「0.45以上、1.3以下」の範囲内の値である。

(エ) 甲1発明の「ナイロン6」は、甲1の【0026】の「ポリアミドの場合、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6-10、ナイロン12やこれらの共重合体を単独または混合して用いることができる。」との記載によれば、ポリアミドである。

一方、本件発明1の「ポリアミド」について、本件の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0024】には「ポリアミドとしては、ポリアミド3(ナイロン3、登録商標)、ポリアミド4(ナイロン4、登録商標)、ポリアミド6(ナイロン6、登録商標)、ポリアミド6-6 (ナイロン6-6、登録商標)等が挙げられる。」と記載されているから、本件発明1の「ポリアミド」は、ナイロン6を含むものである。

そうすると、甲1発明の「ナイロン6」は、本件発明1の「前記熱可塑性樹脂が」が含む「ポリアミド及びポリエステルからなる群より選択される少なくとも1種」に相当する。

(オ) 甲1発明の「メルトブロー法により」「形成された」「不織布」と、本件発明1の「メルトブロー不織布」とは、「メルトブロー不織布」といえる点で共通する。

(カ) 以上によれば、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点、相違点を有する。

[一致点]

「融点が200°C以上の熱可塑性樹脂からなる繊維を含むメルトブロー不織布であって、平均繊維径が0.1μm以上、1.5μm以下であり、繊維径の標準偏差の平均繊維径に対する比である繊維径変動率が0.45以上、1.3以下であり、

前記熱可塑性樹脂がポリアミド及びポリエステルからなる群より選択される少なくとも1種を含む、

メルトブロー不織布。」

[相違点]

[相違点1]

本件発明1は、「メルトブロー不織布全重量に対して0.1重量%以上20重量%以下の添加剤」を含み、「前記添加剤が、溶融状態にある前記熱可塑性樹脂のポリマー鎖間の分子間力を緩和するための添加剤であり、基本骨格に炭素原子と水素原子とを含む有機化合物であり、かつヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシ基、ホルミル基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、これらのいずれかの誘導体、又はこれらの2つ以上の組み合わせを含む化合物である」のに対して、甲1発明は、対応する添加剤を含んでいない点。

イ 相違点1についての判断

相違点1に係る「添加剤」は「溶融状態にある前記熱可塑性樹脂のポリマー鎖間の分子間力を緩和するための添加剤」であるところ、当該添加剤は、甲1~甲8(上記第4の1、2(1)~(7)参照。)をみても、記載も示唆もされていない。

また、甲9(上記第4の2(8)参照。)には、ポリアミド樹脂にMF-11を添加すると、分子間水素結合の緩和が生じ、樹脂本来の物性を損なわずに流動性を向上できるため、樹脂の成形加工性改善に有用である旨記載されているものの、メルトブロー不織布についての記載はなく、甲1発明に甲9に記載された事項を適用する動機付けはない。

そうすると、甲1発明に、甲1~甲9に記載された事項を適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成には至らない。

一方、本件発明1は、本件明細書の【0031】に「そこで、本実施形態の添加剤を熱可塑性樹脂に添加したところ、ショット数を抑制しつつ細繊維化が可能となった。」と記載されているように、本件発明1の添加剤を熱可塑性樹脂に添加することによって、本件明細書の【0019】に記載された「平均繊維径が小さく、かつショットが低減された、融点が200°C以上の熱可塑性樹脂を原料とするメルトブロー不織布が提供される」という格別の効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、甲1発明、甲1~甲9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 異議申立人の主張について

(ア) 異議申立人は、異議申立書の第53頁第20行~第21行において、甲1に実施例1及び比較例2として記載された発明は、本件発明1の構成を実質的にすべて満たしているといえる旨主張する。

しかしながら、上記ア(カ)のとおり、本件発明1と、甲1に実施例1として記載された甲1発明は、相違点1を有している。

また、甲1の比較例2について、甲1の【0060】には「実施例1で使用したポリ乳酸とポリプロピレンを、ブレンド比割合を4/6とする以外は実施例1と同様にしてブレンドポリマーチップを得た。」と記載されているから、甲1の比較例2も、相違点1に係る本件発明1の構成を備えるものではない。

したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。

(イ) 異議申立人は、異議申立書の第53頁第20行~第24行において、甲1に実施例1及び比較例2として記載された発明に、甲1の【0028】~【0030】の記載から、メルトブロー不織布の耐候性を向上させるため、本件発明1の添加剤を特定量含有させることは、当業者にとって容易に想到し得た旨主張する。

そこで検討するに、甲1の【0028】には「また、耐候性を向上させ、エレクトレット性能を良くする観点から、本発明の不織布にヒンダードアミン系化合物およびトリアジン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種が含まれていることが好ましい。」と記載されており、【0029】には「ヒンダードアミン系化合物」として、「ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)](チバガイギー製、キマソープ944LD)」等の化合物が例示されており、【0030】には「トリアジン系添加剤」として、「前述のポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)](チバガイギー製、キマソープ944LD)」等の化合物が例示されている。

しかしながら、これらの記載をみても、【0028】に記載された「ヒンダードアミン系化合物およびトリアジン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種」である【0029】及び【0030】に例示された化合物が、「溶融状態にある前記熱可塑性樹脂のポリマー鎖間の分子間力を緩和するための添加剤」に相当することは記載も示唆されていない。

したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。

(2) 本件発明2~7

上記第2のとおり、本件発明2~7は、本件発明1の全ての構成を有するものであり、いずれも上記相違点1に係る本件発明1の構成を有している。

そうすると、本件発明2~7と甲1発明を対比すると、少なくとも、上記相違点1(上記(1)ア(カ)参照。)の構成で相違するから、本件発明1について判断したことと同様の理由により、本件発明2~7も、甲1発明、甲1~甲9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3) 小括

以上によれば、本件発明1~7は、甲1発明、及び甲1~甲9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 甲2、甲3に記載された発明に対する進歩性

上記1(1)イのとおり、相違点1に係る「添加剤」は、甲1~甲8をみても、記載も示唆もされていない。

また、上記1(1)イのとおり、甲9には、メルトブロー不織布についての記載はなく、甲2、甲3に記載された発明に甲9に記載された事項を適用する動機付けはない。

したがって、本件発明1、及び、本件発明1の全ての構成を有するものである本件発明2~7は、甲2、甲3に記載された発明、甲1~甲9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 申立理由1(進歩性)についてのまとめ

以上によれば、異議申立人の主張する申立理由1(進歩性)はいずれも理由がない。

第6 申立理由2(サポート要件)について

1 サポート要件の判断基準

特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

2 発明の詳細な説明の記載

本件明細書の発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。

(1) 「【発明が解決しようとする課題】

【0007】

本発明が解決すべき課題は、

融点が200°C以上の高融点の熱可塑性樹脂を原料とするメルトブロー不織布であって、平均繊維径が小さく、かつショットが低減されたメルトブロー不織布を提供すること

にある。」

(2) 「【発明を実施するための形態】

【0021】

本発明の実施形態を以下に説明する。

【0022】

本発明の実施形態のメルトブロー不織布は、

融点が200°C以上の熱可塑性樹脂からなる繊維と、メルトブロー不織布全重量に対して0.1重量%以上20重量%以下の添加剤とを含むメルトブロー不織布であって、平均繊維径が0.1μm以上、1.5μm以下

(1.0μm以下)

であり、繊維径の標準偏差の平均繊維径に対する比(繊維径の標準偏差/平均繊維径)である繊維径変動率が0.45以上(0.65以上)1.3以下であ

る。

【0023】

本発明の実施形態のメルトブロー不織布には、融点が200°C以上の熱可塑性樹脂を用いている。このため、本発明の実施形態のメルトブロー不織布は耐熱性に優れている。

融点が200°C以上の熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、

ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、

ポリエチレン

やポリプロピレン以外のポリオレフィン

などが挙げられ

る。

・・・

【0029】

一実施形態の

添加剤は、溶融状態にある前記熱可塑性樹脂のポリマー鎖間の分子間力を緩和するための添加剤であ

る。つまり、メルトブロー不織布の製造に際しては、熱可塑性樹脂を溶融し、溶融ポリマーを極細繊維状に吐出するが、本実施形態では、溶融状態にある前記熱可塑性樹脂に添加剤を共存させることで、添加剤が有する極性原子又は官能基の働きにより、溶融状態にある熱可塑性樹脂のポリマー鎖間で化学的相互作用により引力が働いている箇所に介入し、ポリマー鎖間の分子間力を緩和する。ポリマー鎖間の分子間力には、典型的には水素結合が含まれるが、その他に双極子相互作用、ファンデルワールス力、ロンドン分散力など熱可塑性樹脂のポリマー鎖間で親和的に働く相互作用であればこれに限定されない。

【0030】

ポリアミドやポリエステルなどの熱可塑性樹脂は、高極性の熱可塑性樹脂であり、従来、ポリプロピレンと同様の製造条件で紐状化することはできなかった。つまり、ノズルの孔径を小さくする、溶融混練温度を上げる、繊維を延伸するために吹き出す高温高速のエア量を上げることで、若干細繊維化することは可能であるが、それ以上の過酷な製造条件では糸切れが起こりショッ卜が増えるため、平均繊維径が1.5μm以下、特には1μm以下の繊維を安定的に紡糸することができなかった。本発明者らは、高極性高分子の細繊維化が困難である理由は、熱可塑性樹脂のポリマー鎖同士での分子間力が強く働いているためと考えた(例えば、ポリアミドでは水素結合、 PBTでは芳香環のπスタッキングなど)。ポリマー鎖間の分子間力の緩和を主因とする粘度低下でなければ、ショットの発生を抑えた状態で細繊維化できないが、これまでの結果から、これらのポリマー鎖間の相互作用は加熱やノズル孔径の調整では効果的に低減できないと考えられる。

【0031】

そこで、

本実施形態の添加剤を熱可塑性樹脂に添加したところ、ショット数を抑制しつつ細繊維化が可能となった。

本出願人は、本発明が特定の仮説や理論によって束縛されることを望むものではないが、本実施形態の添加剤の添加により、高極性の熱可塑性樹脂のポリマー鎖間の相互作用が緩和されることにより、吐出される溶融ポリマーが円滑に細繊維化されたと推測する。

・・・

【0033】

一実施形態では、上記添加剤は、基本骨格に炭素原子と水素原子とを含む有機化合物であり、かつ酸素原子及び/又は窒素原子を含んでおり、双極子相互作用及び/又は水素結合に寄与できる分子構造を一つ以上含む化合物である。例えば、

上記

一つ以上の

添加剤は、基本骨格に炭素原子と水素原子とを含む有機化合物であり、かつヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシ基、ホルミル基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、これらのいずれかの誘導体、又はこれらの2つ以上の組み合わせおよびその誘導体を含む化合物が好ましい

。そのような添加剤の好ましい例としては、脂肪酸アミド又はアルキレン脂肪酸アミドが挙げられる。脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。アルキレン脂肪酸アミドとしては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。」

(3) 「【0076】

以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。

【実施例】

【0077】

1.メルトブロー不織布の製造

(1)ポリアミド樹脂を原料とするメルトブロー不織布の製造

実施例1

メルトブロー製造装置の原料ホッパーに、相対粘度3.0の6-ナイロン樹脂を95%と添加剤1を5%混合した材料を投入し、溶融混練温度を325°Cとした。ダイとコレクタの間隔370mmで、340°Cの加熱圧縮空気10Nm

3

/min/mと共に、ノズル径0.3mmのノズルより樹脂を大気中に吐出し、吸引量400Nm

3

/min/mのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を適当に調節して、目付51g/m

2

、厚み0.54mm、通気度39cm

3

/cm

2

/s、平均繊維径1.03μmのメルトブロー不織布を得た。

【0078】

実施例2

メルトブロー製造装置の原料ホッパーに、相対粘度3.0の6-ナイロン樹脂を97%と添加剤2を3%混合した材料を投入した以外は実施例1と同様に操作し、目付51g/m

2

、厚み0.52mm、通気度40cm

3

/cm

2

/s、平均繊維径1.39μmのメルトブロー不織布を得た。

【0079】

実施例3

メルトブロー製造装置の原料ホッパーに、相対粘度3.0の6-ナイロン樹脂を95%と添加剤3を5%混合した材料を投入した以外は実施例1と同様に操作し、目付50g/m

2

、厚み0.52mm、通気度38cm

3

/cm

2

/s、平均繊維径0.59μmのメルトブロー不織布を得た。

・・・

【0082】

表1中の添加剤の略語の化合物は以下に示す通りである。

添加剤1 Chimassorb(登録商標)944FDL BASFジャパン株式会社

添加剤2 Chimassorb(登録商標)2020FDL BASFジャパン株式会社

添加剤3 添加剤1とTinuvin(登録商標)622SF BASFジャパン株式会社)の混合物

添加剤4 OGSOL MF11 フルオレン系樹脂改質剤 大阪ガスケミカル株式会社

添加剤5 ライトアマイドWH-510K エチレンビスステアリルアミドに類似の脂肪酸アミド系化合物 共栄社化学株式会社

【0083】

【化3】

46

105

0001437437000010.jpg

【0084】

【化4】

47

109

0001437437000011.jpg

【0085】

【化5】

36

110

0001437437000012.jpg

【0086】

比較例1

表1に示すように、添加剤を添加しない以外は実施例1と同じ条件でメルトブロー不織布を作製し、目付50g/m

2

、厚み0.49mm、通気度48cm

3

/cm

2

/s、平均繊維径3.70μmのメルトブロー不織布を得た。

・・・

【0089】

(2)PBTを原料とするメルトブロー不織布の製造

実施例6

メルトブロー製造装置の原料ホッパーに、MFR100のポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂を97%と添加剤4を3%混合した材料を投入し、溶融混練温度を280°Cとした。ダイとコレクタの間隔130mmで、305°Cの加熱圧縮空気13Nm

3

/min/mと共に、ノズル径0.2mmのノズルより樹脂を大気中に吐出し、吸引量400Nm

3

/min/mのコレクタ上に繊維状の樹脂を連続的に捕集させ、コレクタの回転速度を適当に調節して、目付30g/m

2

、厚み0.28mm、通気度12cm

3

/cm

2

/s、平均繊維径0.66μmのメルトブロー不織布を得た。

【0090】

実施例7

メルトブロー製造装置の原料ホッパーに、MFR100のポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂を97%と添加剤5を3%混合した材料を投入した以外は実施例6と同様に操作し、目付11g/m

2

、厚み0.11mm、通気度38cm

3

/cm

2

/s、平均繊維径0.61μmのメルトブロー不織布を得た。

【0091】

比較例4

表1に示すように、添加剤を添加しない以外は実施例6と同じ条件でメルトブロー不織布を作製し、目付30g/m

2

、厚み0.32mm、通気度24cm

3

/cm

2

/s、平均繊維径1.82μmのメルトブロー不織布を得た。

・・・

【0102】

3.結果

表1から、ポリアミド不織布の実施例1~5と比較例1から、添加剤1~4を使用した上で製造条件を整えることにより、ショットを低減し、不織布の外観と物性を良好に維持したまま細繊維化できることがわかる。図2(A)は実施例5の不織布中の繊維の2000倍の倍率の顕微鏡写真であり、図2(B)は比較例1の不織布中の繊維の2000倍の倍率の顕微鏡写真である。

【0103】

また、比較例2から、添加剤を使用せず、従来技術である粘度が低い原料樹脂を用いた場合は、製造条件を調整しても平均繊維径が1.5μm以下にならず、ショットも低減できないことがわかる。

・・・

【0105】

ポリブチレンテレフタレート不織布も同様で、実施例6~7と比較例4から、添加剤4~5を使用した上で製造条件を整えることにより、ショットを低減し、不織布の外観と物性を良好に維持したまま細繊維化できることがわかる。

・・・

【0107】

添加剤と製造条件を適切に選ぶことで、高融点の高極性高分子であっても、平均繊維径が0.1μm以上、1.5μm以下、かつ繊維径変動率が0.45以上、1.3以下である不織布が標準的なメルトブロー製造装置で可能であることを確認した。また、エレクトロスピニングなどのウェブと異なり、基材が無くとも取り扱い可能な強度があることを確認した。

【0108】

【表1】

58

153

0001437437000013.jpg

3 検討

(1) 本件課題

上記2(1)の発明の詳細な説明の【0007】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、「融点が200°C以上の高融点の熱可塑性樹脂を原料とするメルトブロー不織布であって、平均繊維径が小さく、かつショットが低減されたメルトブロー不織布を提供すること」(以下、「本件課題」という。)である。

(2) 発明の詳細な説明に記載された発明

上記2(2)によれば、発明の詳細な説明には、発明を実施するための形態として次の発明が記載されている。

「 融点が200°C以上の熱可塑性樹脂からなる繊維と、メルトブロー不織布全重量に対して0.1重量%以上20重量%以下の添加剤とを含むメルトブロー不織布であって、平均繊維径が0.1μm以上、1.5μm以下(1.0μm以下)であり、繊維径の標準偏差の平均繊維径に対する比(繊維径の標準偏差/平均繊維径)である繊維径変動率が0.45以上(0.65以上)1.3以下であり(【0022】)、

融点が200°C以上の熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンやポリプロピレン以外のポリオレフィンなどが挙げられ(【0023】)、

添加剤は、溶融状態にある前記熱可塑性樹脂のポリマー鎖間の分子間力を緩和するための添加剤であり(【0029】)、

上記添加剤は、基本骨格に炭素原子と水素原子とを含む有機化合物であり、かつヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシ基、ホルミル基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、これらのいずれかの誘導体、又はこれらの2つ以上の組み合わせおよびその誘導体を含む化合物が好ましい(0033】)、

メルトブロー不織布(【0022】)。」

(3) 判断

本件発明1と上記(2)の発明の詳細な説明に記載された発明とを対比すると、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

また、上記2(2)の【0029】の「一実施形態の添加剤は、溶融状態にある前記熱可塑性樹脂のポリマー鎖間の分子間力を緩和するための添加剤である。」との記載、及び、【0031】の「そこで、本実施形態の添加剤を熱可塑性樹脂に添加したところ、ショット数を抑制しつつ細繊維化が可能となった。」との記載によれば、本件発明1は、上記(1)の本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

そして、このことは、上記2(3)の実施例の記載により、裏付けられているといえる。

そうすると、本件発明1及び本件発明1の構成をすべて備える本件発明2~7は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

4 異議申立人の主張

異議申立人は、異議申立書の第67頁第1行~第7行において、本件発明1~7は、広汎な熱可塑性樹脂と、広汎な添加剤の組み合わせを使用した態様を包含するものであって、そのような広汎な態様についてまで、前記課題を解決できることは認識できない旨主張する。

しかしながら、異議申立人の主張は、上記1のサポート要件の判断基準とは無関係の主張である。

そして、本件発明1~7が発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえることは、上記3のとおりである。

したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。

5 申立理由2(サポート要件)についてのまとめ

以上によれば、申立理由2(サポート要件)は理由がない。

第7 申立理由3(明確性要件)について

1 明確性要件の判断基準

特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

2 検討

(1) 異議申立人は、異議申立書の第67頁第18行~第68頁第2行において、分子間力を緩和することが可能な添加剤は、熱可塑性樹脂の種類や分子間力の種類により異なることが技術常識であるから、「基本骨格に炭素原子と水素原子とを含む有機化合物であり、かつヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシ基、ホルミル基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、これらのいずれかの誘導体、又はこれらの2つ以上の組み合わせを含む化合物」という広汎な化合物のすべてが上記のポリマー鎖間の分子間力を緩和する作用を有しているのかは実験により確認しなければ不明であり、本件明細書には「基本骨格に炭素原子と水素原子とを含む有機化合物」という以上の説明もないから、記載が不明確である旨主張する。

(2) しかしながら、本件発明1は、「融点が200°C以上の熱可塑性樹脂からなる繊維と、メルトブロー不織布全重量に対して0.1重量%以上20重量%以下の添加剤とを含むメルトブロー不織布であって、」「前記添加剤が、溶融状態にある前記熱可塑性樹脂のポリマー鎖間の分子間力を緩和するための添加剤であ」るというものであるから、本件発明1~7において、添加剤が、溶融状態にある熱可塑性樹脂のポリマー鎖間の分子間力を緩和するためのものであることは、明確である。

そして、本件発明1~7の添加剤が、異議申立人の主張するように、広汎な範囲のものであったとしても、実験によりポリマー鎖間の分子間力を緩和する作用を有していることを確認することができるのであれば、そのことからも本件発明1~7は明確である。

そうすると、本件特許の特許請求の範囲の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。

したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。

3 申立理由3(明確性要件)についてのまとめ

以上によれば、申立理由3(明確性要件)は理由がない。

第8 むすび

以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び異議申立人の提出した証拠によっては、本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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