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Trademark Appeal Case

特許要件の充足性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2026700310
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7754359号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7754359号の請求項1~3に係る特許(以下「本件特許1」~「本件特許3」といい、併せて「本件特許」という。)についての出願は、令和7年3月28日に出願した特願2025-55701号の一部を、令和7年4月7日に新たに出願したものであって、令和7年10月6日にその特許権が設定登録され、令和7年10月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和8年4月10日に特許異議申立人金田 綾香(以下、「異議申立人」という。)により、請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明

本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明3」といい、まとめて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】

表面に絶縁被膜を有する軟磁性粒子を含有する、磁性粉末であって、

前記軟磁性粒子のうち、レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子を平均円形度及び平均包絡度の測定対象としたときに、前記測定対象の軟磁性粒子の平均円形度が0.23以上であり、前記測定対象の軟磁性粒子の平均包絡度が0.50以上である、磁性粉末。

【請求項2】

前記測定対象の軟磁性粒子の平均円形度の標準偏差が0.20以下である、請求項1に記載の磁性粉末。

【請求項3】

前記測定対象の軟磁性粒子の平均包絡度の標準偏差が0.20以下である、請求項1に記載の磁性粉末。」

第3 申立理由の概要

1 特許異議の申立理由

異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由は、次のとおりである。

(1)申立理由1(拡大先願)

本件発明1~3は、本件特許の出願の出願日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた甲第1号証の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである(同法第184条の13参照)。

(2)申立理由2(新規性)

本件発明1~3は、甲第2号証、甲第3号証、又は、甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(3)申立理由3(進歩性)

本件発明1~3は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、甲第3号証に記載された発明に基いて、甲第4号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(4)申立理由4(サポート要件)

本件発明1~3は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件の請求項1~3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 異議申立人の提出した証拠

異議申立人が提出した証拠は次のとおりである。

甲第1号証:PCT/JP2024/039313号(特願2025-521398号、国際公開第2025/258098号)

甲第2号証:特開2009-200325号公報

甲第3号証:特開2013-155414号公報

甲第4号証:圧粉磁心のリサイクル原料の特性調査、阿部 智大、福田 亮介、田村 佳樹、Abstracts of Autumn Meeting of Japan Society of Powder and Powder Metallurgy,2024、2024年

甲第4号証の1:Event List Meeting of Japan Society of Powder and Powder Metallurgy、

取得日:2026年3月19日、<https://pub.confit.atlas.jp/en/conference/jspmfunkyo/events>

第4 異議申立人が提出した証拠の記載

1 甲第1号証

(1)甲第1号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書、請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の記載がある。(なお、下線は当審において付与した。以下同じ。)。

「[0011] (1)本開示の

軟磁性粉末は、絶縁膜を有する複数の軟磁性粒子を含む

。前記絶縁膜は、リン酸塩、シリカまたはマグネシアを含む絶縁層を有し、前記絶縁膜の表面に複数のひび割れ部を有する。

[0012] 本開示の軟磁性粉末は、絶縁膜の表面に複数のひび割れ部を有するリサイクル粉末である。ただし、一般名称として「軟磁性粉末」の用語を用いる場合もあり、その場合は「リサイクル粉末」と区別して記載する。本開示の軟磁性粉末は、使用済みの圧粉磁心を粉砕して得られる。圧粉磁心は、

軟磁性粒子の表面に絶縁膜を有する軟磁性粉末

を圧縮成形したものである。圧粉磁心は粉砕することにより粉末に戻すことができることが確認できた。この場合、絶縁膜にひび割れが発生することがあることが判明した。このひび割れは、圧粉磁心の製造工程での軟磁性粉末の圧縮成形などの製造履歴と、使用済みの圧粉磁心を粉砕したときの衝撃などによって発生するものと考えられる。リサイクル粉末と新品の軟磁性粉末とは、絶縁膜のひび割れの有無によって区別することができる。以下、本開示において、圧粉磁心の原料として一度も使用されていない

新品の軟磁性粉末を「新品粉末」と呼び、使用済み圧粉磁心を粉砕して得られた「リサイクル粉末」と区別する。

上記の製造履歴は、新品粉末を原料に使用した圧粉磁心の製造履歴およびリサイクル粉末を原料に使用した圧粉磁心の製造履歴の両方を含む。」

「[0020] (4)上記(1)から(3)のいずれかの軟磁性粉末は、前記軟磁性粒子の平均円形度が0.35以上0.5以下であってもよい。

[0021] 圧粉磁心を粉砕したリサイクル粉末は、新品粉末よりも、軟磁性粒子の円形度が小さい。軟磁性粒子の円形度が小さくなる理由は、圧粉磁心として一旦圧縮成形された際の成形圧力によって軟磁性粒子が塑性変形するからである。軟磁性粒子の平均円形度が0.35以上0.5以下である軟磁性粉末は、リサイクル粉末であると考えられる。」

「[0067] <軟磁性粉末>

図1および図2を参照して、実施形態に係る軟磁性粉末1を説明する。

軟磁性粉末

1

は、

図2に示すように、

絶縁膜

3

を有する

複数の

軟磁性粒子

2を

含む

粉末である。軟磁性粉末1の特徴の1つは、図2に示すように、絶縁膜3の表面に複数のひび割れ部3cを有する点にある。軟磁性粉末1は、使用済みの圧粉磁心を粉砕して得られた、いわゆるリサイクル粉末である。軟磁性粉末1は、圧粉磁心の原料として使用される。」

「[0071] 〔絶縁膜〕

絶縁膜3は、軟磁性粒子2の表面を覆う。絶縁膜3は、圧粉磁心において、隣り合う軟磁性粒子2の間を電気的に絶縁する。

軟磁性粒子

2

の表面に絶縁膜

3

を有する

ことで、圧粉磁心の電気抵抗を高めることができ、圧粉磁心の渦電流損失を低減できる。絶縁膜3は、例えば、リン酸塩、ケイ素の酸化物またはマグネシウムの酸化物によって形成されている。リン酸塩は、例えば、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガンまたはリン酸カルシウムである。ケイ素の酸化物は、一酸化ケイ素(SiO)またはシリカ(SiO

2

)である。マグネシウムの酸化物は、マグネシア(MgO)である。」

「[0143] 試験例1で説明した

試料No.1について、新品粉末とリサイクル粉末におけるそれぞれの軟磁性粒子の平均円形度

とアスペクト比

を調べた。

新品粉末とリサイクル粉末とをそれぞれ原料に使用した圧粉磁心を製造した。圧粉磁心は、試験例2と同様にして製造した。圧粉磁心の断面をSEMによって観察した。SEMの倍率は100倍である。図20は、試料No.1の新品粉末を使用した圧粉磁心の断面を拡大して模式的に示したものである。図21は、試料No.1のリサイクル粉末を使用した圧粉磁心の断面を拡大して模式的に示したものである。図20および図21において、黒塗りの部分は空隙である。それぞれの圧粉磁心の断面のSEMによる観察像を画像解析して、軟磁性粒子2の円形度とアスペクト比を測定した。画像解析には、画像解析ソフトウェア「ImageJ」を使用した。平均円形度は、次のようにして求めた。円形度は、面積S、周囲長Lであるとき、4πS/L

2

として求められる。

20以上の軟磁性粒子2

について、ImageJを用いて、それぞれの面積と周囲長を求め、それぞれ

の円形度を算出した。平均円形度は、円形度の平均値を求めることにより得られる。

平均アスペクト比は、ImageJを用いて、軟磁性粒子2の形状を楕円近似し、その楕円の長径と短径を求めた。20以上の軟磁性粒子2について、長径を短径で割って、それぞれのアスペクト比を算出した。平均アスペクト比は、アスペクト比の平均値を求めることにより得られる。試料No.1の

新品粉末における平均円形度は0.528であり、

アスペクト比は2.138であった。

試料No.1のリサイクル粉末における平均円形度は0.480であり

、アスペクト比は2.423であった。」

(2)上記(1)から、次のことがいえる。

ア 段落[0011]、[0012]、[0067]、[0071]によれば、先願明細書等には、表面に絶縁膜を有する軟磁性粒子を含む軟磁性粉末が記載されている。

イ 段落[0012]によれば、軟磁性粉末は、新品の軟磁性粉末である新品粉末、又は、使用済み圧粉磁心を粉砕して得られたリサイクル粉末である。

ウ 段落[0143]によれば、試料No.1である新品粉末とリサイクル粉末について、20以上の軟磁性粒子2の円形度を算出し、その平均値を求め得られた平均円形度が、新品粉末は0.528であり、リサイクル粉末は0.480である。

(3)上記(2)によれば、先願明細書等には、試料No.1に基づく次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。

「表面に絶縁膜を有する軟磁性粒子を含む軟磁性粉末であって、

軟磁性粉末は、新品の軟磁性粉末である新品粉末、又は、使用済み圧粉磁心を粉砕して得られたリサイクル粉末であり、

新品粉末とリサイクル粉末について、20以上の軟磁性粒子2の円形度を算出し、その平均値を求め得られた平均円形度が、新品粉末は0.528であり、リサイクル粉末は0.480である、軟磁性粉末。」

2 甲第2号証

(1)甲第2号証には、次の記載がある。

「【0001】

本発明は、鉄粉や鉄基合金粉末(以下、これらを総称して

鉄基粉末

と呼ぶことがある)

等の軟磁性鉄基粉末

を圧粉成形し、電磁気部品用の圧粉磁心を製造する際に用いる圧粉磁心用鉄基粉末に関するものである。」

「【0013】

上記課題を解決することのできた本発明に係る圧粉磁心用

鉄基粉末

は、

下記で定義される

円形度が0.75以上の粉末を個数分率で50%以上(100%を含む)含み、

円形度が0.65以下の粉末が個数分率で15%以下(0%を含む)であると共に、円相当径の平均値が50μm以上である点に要旨を有する。

円形度

は、粉末投影像の輪郭の長さBに対する粉末の投影面積と同じ面積を有する円の周長Aの比(A/B)を意味する

【0014】

前記

鉄基粉末は、目開き425μmの篩aを通過するが、目開き45μmの篩bを通過しないものである

ことが好ましい。前記

鉄基粉末は、

通常、

表面に絶縁皮膜が形成されており

、該絶縁皮膜は、無機化成皮膜および/または樹脂皮膜であればよい。また、前記絶縁皮膜は、無機化成皮膜の表面に、更に樹脂皮膜が形成されているものであってもよい。」

「【0024】

本発明では、鉄基粉末の円形度を平均値で規定するのではなく、個数分率によって形状分布として規定することが重要である。

例えば、複数の鉄基粉末の円形度を測定し、鉄基粉末の保磁力を低減する観点から円形度の範囲を規定したとしても、後述する実施例から明らかなように、円形度が0.65以下の鉄基粉末が多く含まれていると、圧粉磁心の保磁力が低下することが判明したからである。即ち、円形度が小さく、偏平した鉄基粉末を用いて圧粉磁心を形成すると、鉄基粉末自体の保磁力が圧粉磁心の保磁力に影響を及ぼし、圧粉磁心の保磁力が低下しないことが明らかになったのである。」

「【0034】

上記鉄基粉末の粒子径は、粒子内の結晶粒径を大きくして保磁力を低減するために、できるだけ大きい方が好ましいが、本発明では、目開き425μmの篩aを用いて篩い分けしたときに、篩aを通過する鉄基粉末を用いるのがよい。粒子径が大きくなり過ぎると、鉄基粉末を金型へ充填するときに金型の細部への充填性が悪くなったり、圧縮率が低下して圧粉磁心内に空隙が生じ、圧粉磁心の強度が小さくなるからである。」

(2)上記(1)から、次のことがいえる。

ア 段落【0001】、【0014】によれば、甲第2号証には、表面に絶縁皮膜が形成された軟磁性鉄基粉末が記載されているといえる。

イ 段落【0013】、【0014】によれば、軟磁性鉄基粉末は、円形度が0.75以上の粉末を個数分率で50%以上(100%を含む)含み、目開き425μmの篩aを通過するが、目開き45μmの篩bを通過しないものであり、円形度は、粉末投影像の輪郭の長さBに対する粉末の投影面積と同じ面積を有する円の周長Aの比(A/B)を意味する。

(3)上記(2)によれば、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。

「表面に絶縁皮膜が形成された軟磁性鉄基粉末であって、

円形度が0.75以上の粉末を個数分率で50%以上(100%を含む)含み、目開き425μmの篩aを通過するが、目開き45μmの篩bを通過しないものであり、

円形度は、粉末投影像の輪郭の長さBに対する粉末の投影面積と同じ面積を有する円の周長Aの比(A/B)を意味する、軟磁性鉄基粉末。」

3 甲第3号証

(1)甲第3号証には、次の記載がある。

「【0018】

そこで本発明者らは、上記混合粉末の粒度分布と、熱処理前後における成形体の寸法変化率との関係について更に検討した。その結果、

軟磁性鉄基粉末の表面に絶縁性皮膜を有する粉末と、潤滑剤とを含む混合粉末

について、該

混合粉末全体の質量に対して、粒子径が106μm以下の混合粉末の質量が95%以上であり、且つ粒子径が45μm以下の混合粉末の質量が40%以下(0%を含まない)であ

れば、熱処理時における成形体の膨張を防止でき、熱処理前後における成形体の寸法変化を無くすことができるか、或いは成形体を収縮させられることが分かった。即ち、本発明では、熱処理によって潤滑剤が揮発する現象に着目し、揮発した潤滑剤を速やかに成形体の外へ排出すれば、成形体の膨張を抑えられることが明らかになった。」

「【実施例】

・・・(中略)・・・。

【0050】

軟磁性鉄基粉末として、純鉄粉(神戸製鋼所製「アトメル(登録商標)300NH」)を

10種類準備し、夫々について、日本粉末冶金工業会の「金属粉のふるい分析試験方法 JPMA P 02-1992」に基づいて、目開き75μmの篩を用いて篩分けを行い、篩を通過した粉末を

用いた

。」

(2)上記(1)から、次のことがいえる。

ア 段落【0018】によれば、甲第3号証には、軟磁性鉄基粉末の表面に絶縁性皮膜を有する粉末と、潤滑剤とを含む混合粉末であって、混合粉末全体の質量に対して、粒子径が106μm以下の混合粉末の質量が95%以上であり、且つ粒子径が45μm以下の混合粉末の質量が40%以下(0%を含まない)である混合粉末が記載されているといえる。

イ 段落【0050】によれば、実施例における軟磁性鉄基粉末として、純鉄粉(神戸製鋼所製「アトメル(登録商標)300NH」)を用いたことが記載されている。

(3)上記(2)によれば、甲第3号証には、実施例に基づく次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。

「軟磁性鉄基粉末の表面に絶縁性皮膜を有する粉末と、潤滑剤とを含む混合粉末であって、

混合粉末全体の質量に対して、粒子径が106μm以下の混合粉末の質量が95%以上であり、且つ粒子径が45μm以下の混合粉末の質量が40%以下(0%を含まない)であり、

軟磁性鉄基粉末として、純鉄粉(神戸製鋼所製「アトメル(登録商標)300NH」)を用いた、混合粉末。」

4 甲第4号証

(1)甲第4号証には、次の記載がある。

「1.【緒言】

サーキュラーエコノミー社会の実現に向け、圧粉磁心の水平リサイクルを検討している。リサイクルする為には圧粉磁心の粉砕が必要となるが、粉砕方法・機構によって粉砕後の粉末形状や粒度などに差異が生じリサイクル原料特性が変化する事が予想される。本調査では2種類の異なる粉砕方法において粉砕後のリサイクル粉末の外観および特性を比較した。

2.【試験方法】

○試験体作製・粉砕方法

絶縁性被膜を塗布した軟磁性粉末を

883MPaで

試験体形状に成形し、

窒素雰囲気にて

熱処理を所定時間行い、バージン材を得

た。

これを所定の粉砕方法で粉砕し

リサイクル原料とした

粉砕方法として

ジョークラッシャーを用いた圧壊による粉砕、

回転ミキサーを用いたせん断による粉砕

の2種類を

使用

した。粉砕後、43メッシュの金属ふるいを使用して

粉砕粉が400μm以下となる様に粗大粒子を取り除いた。

得られたリサイクル原料を素材作製時と同様の条件にて成形・熱処理を行い、Φ35×25×5mmのトロイダル試験体を作製した。

○評価方法

粉砕後の粉末形状の観察はSEMを用いて行った。熱処理体の圧環強度は万能試験機(エー・アンド・デイ製)を用いて測定した。B-H特性は直流磁化特性試験装置(メトロン技研製)を用いて10,000A/mまで測定した。鉄損はB-Hアナライザー(岩崎通信機製)を用いて1kHzまで測定した。また鉄損は周波数に比例するヒステリシス損と周波数の2乗に比例する渦電流損の和となることから、鉄損の周波数特性から各々を分離・算出し、バージン材と比較を行った。

3.【結果】

Fig.1に

粉砕後粉末

のSEM像を示す。(a)がジョークラッシャー粉砕粉、(b)が

ミキサー粉砕粉

である。(a)、(b)を比較すると(b)には粒子表面に回転刃のせん断により生じたと見られる平滑面が確認された。熱処理体圧環強度はジョークラッシャー粉砕粉が7.2MPa、ミキサー粉砕粉が6.9MPaと粉砕機により差異は生じなかった。熱処理後のバージン試験体の圧環強度は29.7MPaであり、リサイクル原料を使用して作製した試験体はバージン原料の25%程度の強度である事が分かった。Fig.2に鉄損測定値と渦電流損失の結果を示す。磁束密度B=1.0Tにおける400Hzでの測定値はジョークラッシャーが33.5W/kg、ミキサーが61.4W/kgと粉砕機により差異が見られた。バージン試験体は、29.0W/kgであった。鉄損分離を行うと、渦電流損失はジョークラッシャーが6.6W/kgに対し、ミキサーは34.5W/kgと5倍以上の渦電流損失になることが分かった。これは

ミキサー粉砕中に回転刃によって粉末表面とともに絶縁被覆が除去された

事が原因と考えられる。」

(2)上記(1)から、次のことがいえる。

ア 「2.【試験方法】」及び「3.【結果】」の欄によれば、甲第4号証には、絶縁性被膜を塗布した軟磁性粉末を試験体形状に成形し、熱処理を所定時間行い得られたバージン材を回転ミキサーを用いたせん断による粉砕方法で粉砕し、リサイクル原料としたミキサー粉砕粉が記載されているといえる。

イ 「3.【結果】」の欄によれば、ミキサー粉砕粉は、ミキサー粉砕中に回転刃によって粉末表面とともに絶縁被覆が除去されている。

(3)上記(2)によれば、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。

「絶縁性被膜を塗布した軟磁性粉末を試験体形状に成形し、熱処理を所定時間行い得られたバージン材を回転ミキサーを用いたせん断による粉砕方法で粉砕し、リサイクル原料としたミキサー粉砕粉であって、

ミキサー粉砕中に回転刃によって粉末表面とともに絶縁被覆が除去されている、ミキサー粉砕粉。」

第5 申立理由に対する当審の判断

1 申立理由1(拡大先願)について

(1)本件発明1について

ア 対比

(ア)先願発明の「表面に絶縁膜を有する軟磁性粒子を含む軟磁性粉末」は、本件発明1の「表面に絶縁被膜を有する軟磁性粒子を含有する、磁性粉末」に相当する。

(イ)先願発明の「新品粉末」の「平均円形度」である「0.528」及び「リサイクル粉末」の「平均円形度」でる「0.480」は、本件発明1の「軟磁性粒子の平均円形度」である「0.23以上」の範囲に含まれる。

そうすると、先願発明と本件発明1とは、「軟磁性粒子の平均円形度が0.23以上であ」る点で共通する。

(ウ)上記(ア)、(イ)によれば、本件発明1と先願発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)

「表面に絶縁被膜を有する軟磁性粒子を含有する、磁性粉末であって、

軟磁性粒子の平均円形度が0.23以上である、磁性粉末。」

(相違点1)

平均円形度に関し、本件発明1は平均円形度の「測定対象」が「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子」であるのに対し、先願発明の測定対象は、「20以上の軟磁性粒子」である点。

(相違点2)

本件発明1は、「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子を平均包絡度の測定対象とし」、「測定対象の軟磁性粒子の平均包絡度が0.50以上である」のに対し、先願発明は平均包絡度について記載されていない点。

したがって、本件発明1と先願発明とは上記相違点1及び相違点2を有するから、本件発明1と先願発明と同一ではない。

イ 異議申立人の主張について

(ア)異議申立人は、異議申立書において、本件発明1は粒子径の基準を「レーザー回折粒度分布法」で規定しているが、粒子の大きさを評価する指標として、「等価円直径」を、本件発明1における「直径」に相当するものとして用い、甲1の図20及び図21から得られた全粒子データの中から、測定値の信頼性に影響を与えうる微細な粒子を解析対象から除外し、さらに、最も大きい粒子を解析対象から除外し、信頼性を確保した上で、甲1の図20(新品粉末)及び図21(リサイクル粉末)を解析したところ、甲1発明における測定対象データに係る平均円形度は、新品粉末(図20)の平均円形度:0.537、リサイクル粉末(図21)の平均円形度:0.528であり、これらの値は、いずれも本件発明1における「平均円形度が0.23以上」という数値を明らかに満たしている旨主張する(12頁1行~13頁2行)。

(イ)異議申立人の上記主張について検討すると、異議申立人は、粒子の大きさを評価する指標として「等価円直径」を用い、「微細な粒子」を解析対象から除外した旨主張するが、当該「微細な粒子」が、「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径」未満の直径を有する粒子であると解すべき理由はなく、これを裏付ける証拠も提出されていない。

そうすると、異議申立人の主張は、前提を欠き採用できない。

ウ 小括

よって、本件発明1と先願発明とは上記相違点1及び相違点2を有するから、本件発明1と先願発明と同一ではない。

(2)本件発明2、3について

上記第2のとおり、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(1)と同様の理由により、本件発明2、3は先願発明と同一ではない。

(3)申立理由1のまとめ

以上から、本件発明1~3は、甲第1号証の先願明細書等に記載された発明と同一ではないから、本件特許1~3は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

したがって、異議申立人の主張する申立理由1には理由がない。

2 申立理由2(新規性)について

(1)甲第2号証を主引例とした新規性について

ア 本件発明1について

(ア)対比

甲第2号証(上記第4の2(1)の段落【0034】を参照。)に「上記鉄基粉末の

粒子径

は、

粒子

内の結晶粒径を大きくして保磁力を低減するために、できるだけ大きい方が好ましいが、本発明では、目開き425μmの篩aを用いて篩い分けしたときに、篩aを通過する鉄基粉末を用いるのがよい。」と記載されている(下線は当審において付与。)ことから、甲2発明の「軟磁性鉄基粉末」は、「表面に絶縁被膜が形成された」軟磁性粒子を含むといえる。

したがって、甲2発明の「表面に絶縁皮膜が形成された軟磁性鉄基粉末」は、本件発明1の「表面に絶縁被膜を有する軟磁性粒子を含有する、磁性粉末」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)

「表面に絶縁被膜を有する軟磁性粒子を含有する、磁性粉末。」

(相違点3)

本件発明1は「軟磁性粒子のうち、レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子を平均円形度及び平均包絡度の測定対象としたときに、前記測定対象の軟磁性粒子の平均円形度が0.23以上であり、前記測定対象の軟磁性粒子の平均包絡度が0.50以上である」のに対し、甲2発明はその旨特定されていない点。

よって、本件発明1と甲2発明とは上記相違点3を有するから、本件発明1は甲2発明ではない。

(イ)異議申立人の主張について

a 異議申立人は、異議申立書において、甲2が排除する「目開き45μmの篩bを通過しないもの」は、本件発明1が除外する「サイズの小さい粒子群」(D10以下の粒子)と実質的に同一の粒子群を指すものと解釈できる。また、甲2発明が目指す鉄基粉末が、実質的に「平均円形度が0.75以上」の特性を持つことを示しているところ、本件発明1の円形度定義(以下、「Ca」)と甲2の円形度定義(以下、「Cb」)の両定義は数学的にCa=Cb

2

の関係で換算可能であり、甲2の円形度0.75は、Ca=(0.75)

2

=0.5625となり、本件発明1の要件「0.23以上」を十分に満たす。そして、本件発明1は粒子の「断面」を、甲2は粒子の「投影面」を測定対象としている点で相違するものの、甲2が理想とする粒子では、「断面」と「投影面」との形状差はごく僅かであるから、測定方法の相違は実質的な差異を生むものではない旨主張する(22頁下から10行~24頁2行)。

(当審注:「目開き45μmの篩bを通過しないもの」は、「目開き45μmの篩bを通過するもの」の誤記と認める。)

b 異議申立人の上記主張について検討すると、異議申立人は、「目開き45μmの篩bを通過するもの」は、本件発明1が除外する「サイズの小さい粒子群」(D10以下の粒子)と実質的に同一の粒子群を指すものと解釈できる旨主張するが、「目開き45μmの篩bを通過するもの」が、本件発明1の「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径」未満の直径を有する粒子であると解すべき理由はなく、これを裏付ける証拠も提出されていない。

そうすると、異議申立人の主張は、前提を欠き採用できない。

(ウ)小括

したがって、本件発明1と甲2発明とは相違点3を有するから、本件発明1は、甲2発明ではない。

イ 本件発明2、3について

上記第2のとおり、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アと同様の理由により、本件発明2、3は甲2発明ではない。

(2)甲第3号証を主引例とした新規性について

ア 本件発明1について

(ア)対比

甲3発明において、「粒子径が106μm以下の混合粉末の質量が95%以上であり、且つ粒子径が45μm以下の混合粉末の質量が40%以下」との構成からすれば、「軟磁性鉄基粉末の表面に絶縁性皮膜を有する粉末」は、「表面に絶縁性皮膜を有する」軟磁性粒子を含むといえる。

したがって、甲3発明の「軟磁性鉄基粉末の表面に絶縁性皮膜を有する粉末」は、本件発明1の「表面に絶縁被膜を有する軟磁性粒子を含有する、磁性粉末」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)

「表面に絶縁被膜を有する軟磁性粒子を含有する、磁性粉末。」

(相違点4)

本件発明1は「軟磁性粒子のうち、レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子を平均円形度及び平均包絡度の測定対象としたときに、前記測定対象の軟磁性粒子の平均円形度が0.23以上であり、前記測定対象の軟磁性粒子の平均包絡度が0.50以上である」のに対し、甲3発明はその旨特定されていない点。

よって、本件発明1と甲3発明とは上記相違点4を有するから、本件発明1は甲3発明ではない。

(イ)異議申立人の主張について

a 異議申立人は、異議申立書において、甲第3号証の段落【0050】に、実施例として市販の純鉄粉(神戸製鋼所製「アトメル(登録商標)300NH」)を準備したことが開示され、また、同【0037】、【0040】には、りん酸系化成皮膜の厚みは1~250nm程度が好ましく、シリコーン樹脂皮膜の厚みは1~200nmが好ましく、りん酸系化成皮膜と上記シリコーン樹脂皮膜との合計厚みは250nm以下とすることが好ましいと記載されている。他方、本件特許の明細書の【0054】及び【0055】には、神戸製鋼所製「300NH」を原料とした磁性粉末2及び3について、その平均円形度がそれぞれ0.25及び0.32であることが【表1】に示されており、同【0016】は、絶縁被膜の膜厚は、1nm以上300nm以下であるとされている。この事実は、甲第3号証の実施例に記載された発明が、本件発明1に規定される平均円形度の数値を、その材料の性質として内在的に有していることを意味する旨主張する(31頁10~27行)。

b 異議申立人の上記主張について検討すると、本件特許明細書の段落【0054】及び【0055】によれば、神戸製鋼所製「300NH」を用いた磁性粉末は「磁性粉末2」及び「磁性粉末3」の2つのみであり、また、該「磁性粉末2」及び「磁性粉末3」を得るための、純鉄粉末に処理液を混合して混合粉を得て、所定温度で所定時間加熱により乾燥させ、乾燥後の混合粉を解砕する処理工程も平均円形度に影響することは容易に予測し得ることである。

そして、神戸製鋼所製「300NH」を用いた軟磁性鉄基粉末であれば、レーザー回折粒度分布法で測定される磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粉末の平均円形度が必ず0.23以上となることを裏付ける証拠は提出されていない。

そうすると、甲3発明の軟磁性鉄基粉末において、測定対象の平均円形度が0.23以上となるとは必ずしもいえない。

よって、異議申立人の上記主張は採用できない。

(ウ)小括

したがって、本件発明1と甲3発明とは相違点4を有するから、本件発明1は、甲3発明ではない。

イ 本件発明2、3について

上記第2のとおり、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アと同様の理由により、本件発明2、3は甲3発明ではない。

(3)甲第4号証を主引例とした新規性について

ア 本件発明1について

(ア)対比

甲第4号証(上記第4の4(1)の「2.【試験方法】」を参照。)には、「粉砕粉が400μm以下となる様に粗大

粒子

を取り除いた」ことが記載されている(下線は当審において付与。)ことから、甲4発明の「軟磁性粉末」を用いた「ミキサー粉砕粉」は軟磁性粒子を含むといえる。

したがって、甲4発明の「粉末表面とともに絶縁被覆が除去されている」「ミキサー粉砕粉」と本件発明1の「表面に絶縁被膜を有する軟磁性粒子を含有する、磁性粉末」とは、「軟磁性粒子を含有する、磁性粉末」である点で共通する。

そうすると、本件発明1と甲4発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)

「軟磁性粒子を含有する、磁性粉末。」

(相違点5)

軟磁性粒子に関し、本件発明1は「表面に絶縁被膜を有する」のに対し、甲4発明の「ミキサー粉砕粉」は「絶縁被覆が除去されている」点。

(相違点6)

本件発明1は「軟磁性粒子のうち、レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子を平均円形度及び平均包絡度の測定対象としたときに、前記測定対象の軟磁性粒子の平均円形度が0.23以上であり、前記測定対象の軟磁性粒子の平均包絡度が0.50以上である」のに対し、甲4発明はその旨特定されていない点。

よって、本件発明1と甲4発明とは相違点5及び相違点6を有するから、本件発明1は甲4発明ではない。

(イ)異議申立人の主張について

a 異議申立人は、異議申立書において、粒子の大きさを評価する指標として、「等価円直径」を本件発明1における「直径」に相当するものとして用い、甲第4号証の図1(b)から得られた全粒子データの中から、測定値の信頼性に影響を与えうる微細な粒子を解析対象から除外して、甲第4号証の図1(b)(ミキサー粉砕粉)を解析した結果、甲第4号証に記載された発明における測定対象データに係る平均円形度は、0.755であり、本件発明1の「平均円形度が0.23以上」という数値を明らかに満たしている旨主張する。(39頁下から4行~40頁下から6行)

b 異議申立人の上記主張について検討する。

異議申立人は、甲第4号証の図1(b)(ミキサー粉砕粉)を解析した結果、測定対象データに係る平均円形度が0.755であった旨主張するが、甲4発明の「ミキサー粉砕粉」は「絶縁被覆が除去されている」ことから、本件発明1の「測定対象」である「表面に絶縁被膜を有する軟磁性粒子」には当たらない。

よって、異議申立人の上記主張は、前提を欠き採用できない。

(ウ)小括

したがって、本件発明1と甲4発明とは相違点5及び相違点6を有するから、本件発明1は、甲4発明ではない。

イ 本件発明2、3について

上記第2のとおり、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アと同様の理由により、本件発明2、3は甲4発明ではない。

(4)申立理由2のまとめ

以上から、本件発明1~3は、甲第2号証、甲第3号証、又は、甲第4号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件特許1~3は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。

したがって、異議申立人の主張する申立理由2には理由がない。

3 申立理由3(進歩性)について

(1)甲第2号証に基づく進歩性について

ア 本件発明1について

(ア)対比

本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、上記2(1)ア(ア)のとおりである。

(イ)相違点に対する判断

a 甲第2号証(上記第4の2(1)の段落【0024】参照。)には、「本発明では、鉄基粉末の

円形度を平均値で規定するのではなく

、個数分率によって形状分布として規定することが重要である。」と記載されており(下線は当審において付与。)、「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子」の「平均円形度」を所定範囲に設定することは記載されておらず、このように「平均円形度」を設定することが技術常識であるともいえない。

そうすると、相違点3に係る「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子を平均円形度」「の測定対象としたときに、前記測定対象の軟磁性粒子の平均円形度」を「0.23以上」とすることは当業者が容易に想到し得ないことである。

b また、甲第2号証には、「平均包絡度」について記載されておらず、「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子」の「平均包絡度」を所定範囲に設定することが技術常識であるともいえないから、相違点3に係る「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子を」「平均包絡度」「の測定対象としたときに」、「前記測定対象の軟磁性粒子の平均包絡度」を「0.50以上」とする構成を導き出すことはできない。

c したがって、甲2発明において、上記相違点3に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)異議申立人の主張について

a 異議申立人は、異議申立書において、両発明における円形度の定義は数学的に相互換算可能であり、また測定対象(断面か投影面か)の差異も、甲2が対象とする球状粒子においては実質的な差を生じず、円形度を異なるものの周知の定義や測定方法で評価することは、当業者が適宜選択しうる設計事項に過ぎない。また、「円形度≦包絡度」という数学的関係は、当業者が利用しうる技術常識であり、甲2発明の思想に従い円形度を1に近づける設計的最適化を行えば、必然的に包絡度もまた1に近づくため、甲2発明に、包絡度を0.50以上とする構成を付加することは、当業者が当然に予測しうる結果を得るための設計変更に過ぎない旨主張する(29頁8~18行)。

b 異議申立人の上記主張について検討すると、上記(イ)aのとおり、「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子を平均円形度」「の測定対象としたときに、前記測定対象の軟磁性粒子の平均円形度」を「0.23以上」とすることは当業者が容易に想到し得ず、また、上記(イ)bとおり、甲2発明において、「軟磁性粒子」において「測定対象の軟磁性粒子の平均包絡度」を「0.50以上」とする構成を導き出すことはできない。

よって、異議申立人の上記主張は採用できない。

(エ)小括

以上によれば、甲2発明において、上記相違点3に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2、3について

上記第2のとおり、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アと同様の理由により、本件発明2、3は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲第3号証に基づく進歩性について

ア 本件発明1について

(ア)対比

本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、上記2(2)ア(ア)のとおりである。

(イ)相違点に対する判断

甲第3号証には、「平均円形度」及び「平均包絡度」を設定することは記載されておらず、「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子」の「平均円形度」及び「平均包絡度」を所定範囲に設定することが技術常識であるともいえないから、相違点4に係る「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子を平均円形度及び平均包絡度の測定対象としたときに」、「測定対象の軟磁性粒子の平均円形度」を「0.23以上」とし、「測定対象の軟磁性粒子の平均包絡度」を「0.50以上」とする構成を導き出すことはできない。

したがって、甲3発明において、上記相違点4に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明1は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)異議申立人の主張について

a 異議申立人は、異議申立書において、粒子の形状をより球状(円形度・包絡度が高い状態)に近づけることが、成形時の充填性を高め、歪みの導入を抑制し、ひいてはヒステリシス損を低減する上で有効であることは、本件出願当時における周知の技術常識であったことから、甲3発明が示す粒度分布の調整という思想に、粒子形状を最適化するという技術常識を組み合わせることは、当業者にとって容易になし得たことである。また、本件発明1が規定するパラメータの数値範囲は、甲3発明の実施例で実際に使用されている市販品(神戸製鋼所製「300NH」)が内在的に有する特性値そのものであり、当業者が行う通常の実験・最適化の範囲を何ら超えるものではない旨主張する(37頁12~24行)。

b 異議申立人の上記主張について検討すると、異議申立人は、円形度・包絡度が高い状態に近づけることが、成形時の充填性を高め、歪みの導入を抑制し、ヒステリシス損を低減する上で有効であることは、本件出願当時における周知の技術常識と主張するものの、異議申立人が提出した甲第2号証~甲第4号証のいずれにも、「平均円形度」及び「平均包絡度」を高い状態に近づける記載や示唆はなく、まして、「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子」の「平均円形度」及び「平均包絡度」を所定範囲に設定することは記載されていない。

また、甲3発明の軟磁性鉄基粉末において、測定対象の平均円形度が0.23以上となるとは必ずしもいえないことは、上記2(2)ア(イ)bのとおりである。

したがって、異議申立人の主張は、前提を欠き採用できない。

(エ)小括

以上によれば、甲3発明において、上記相違点4に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明1は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2、3について

上記第2のとおり、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アと同様の理由により、本件発明2、3は、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)甲第4号証に基づく進歩性について

ア 本件発明1について

(ア)対比

本件発明1と甲4発明との一致点及び相違点は、上記2(3)ア(ア)のとおりである。

(イ)相違点に対する判断

a 相違点5について

甲第4号証には、圧粉磁心の粉砕方法・機構によって粉砕後の粉末形状や粒度などに差異が生じリサイクル原料特性が変化する事が予想されるところ、バージン材を、ジョークラッシャーを用いた圧壊による粉砕、回転ミキサーを用いたせん断による粉砕の2種類の粉砕方法で粉砕し、得られたリサイクル原料を用いてトロイダル試験体を作製し、粉砕後の粉末形状を観察し、所定の特性を評価したことが記載されているものの、甲4発明における「ミキサー粉砕粉」の表面に「絶縁被膜」を形成することは記載されておらず、該「ミキサー粉砕粉」に「絶縁被膜」を形成する理由もない。

よって、甲4発明において「ミキサー粉砕粉」の表面に「絶縁被膜」を形成することは、当業者が容易に想到し得ないことである。

b 相違点6について

甲第4号証には、「平均円形度」及び「平均包絡度」を設定することは記載されておらず、「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子」の「平均円形度」及び「平均包絡度」を所定範囲に設定することが技術常識であるともいえないから、相違点6に係る「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子を平均円形度及び平均包絡度の測定対象としたときに」、「測定対象の軟磁性粒子の平均円形度」を「0.23以上」とし、「測定対象の軟磁性粒子の平均包絡度」を「0.50以上」とする構成を導き出すことはできない。

c 小括

したがって、甲4発明において、上記相違点5及び相違点6に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明1は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)異議申立人の主張について

a 異議申立人は、異議申立書において、甲第4号証は、粉砕方法が粒子形状に影響を与え、磁気特性(特に渦電流損失)を劣化させるという、本件発明1と共通する技術的課題を当業者に提示するものであり、甲第4号証に接した当業者が、鉄損の増大を抑制する最適な粒子形状を見出すべく研究開発を進めることは、自然な発想であり、強い動機付けを得るものといえる。その際、粒子形状を定量的に評価する指標として、当該技術分野において周知の「平均円形度」や「平均包絡度」を採用することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。

また、本件発明1が規定するパラメータの数値範囲は、甲第4号証の「ミキサー粉砕粉」を、本件発明に則って評価して得られる数値(例えば、平均円形度:0.755、平均包絡度:0.897)を包含していることから、当業者が甲第4号証の示した課題を解決するために「ミキサー粉砕粉」のような特性を持つ粉末を基準とし、あるいはそれを避ける方向で実験・最適化を行う過程で、本件発明1の数値範囲に到達することは容易になし得たことである旨主張する(46頁下から3行~47頁17行)。

b 異議申立人の上記主張について検討すると、異議申立人は、粒子形状を評価する指標として、周知の「平均円形度」や「平均包絡度」を採用することは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない旨主張するが、異議申立人が提出した甲第2号証~甲第4号証のいずれにも、粒子形状を評価する指標として「平均円形度」及び「平均包絡度」を採用する記載や示唆はなく、まして、「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子」の「平均円形度」及び「平均包絡度」を所定範囲に設定することは記載されていない。

また、上記2(3)ア(イ)bのとおり、甲4発明の「ミキサー粉砕粉」は「絶縁被覆が除去されている」ことから、本件発明1の「測定対象」である「表面に絶縁被膜を有する軟磁性粒子」には当たらない。

したがって、異議申立人の主張は、前提を欠き採用できない。

(エ)小括

以上によれば、甲4発明において、上記相違点5及び相違点6に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明1は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2、3について

上記第2のとおり、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アと同様の理由により、本件発明2、3は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)甲第2号証及び甲第4号証に基づく進歩性について

ア 本件発明1について

(ア)対比

本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、上記2(1)ア(ア)のとおりである。

(イ)相違点に対する判断

上記(1)ア(イ)、及び、(3)ア(イ)のとおり、甲第2号証及び甲第4号証のいずれにも、「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子」の「平均円形度」及び「平均包絡度」を所定の範囲に設定することは記載されていないことから、甲2発明に甲4発明を適用したとしても、相違点3に係る「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子を平均円形度及び平均包絡度の測定対象としたときに」、「測定対象の軟磁性粒子の平均円形度」を「0.23以上」とし、「測定対象の軟磁性粒子の平均包絡度」を「0.50以上」とする構成を導き出すことはできない。

したがって、甲2発明において、上記相違点3に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明1は、甲2発明及び甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)異議申立人の主張について

a 異議申立人は、異議申立書において、当業者が甲2発明の技術思想を、「リサイクル」の特性改善に適用することを検討するにあたり、甲4発明の記載を参酌すれば、「リサイクル時の粉砕工程が粒子表面の絶縁被膜を損傷させ、渦電流損失を著しく増大させる」という課題を認識し、当業者は、甲2発明「円形度」の制御に加え、渦電流損失を抑制するための更なる手段として「粒子表面の凹凸・損傷の度合い」をも管理する必要があるとの示唆を得る。

そして、この「粒子表面の凹凸」を定量的に評価するための指標として、当該技術分野において周知のパラメータである「包絡度」を採用することは、課題解決のための手段を選択するにあたり、当業者がその通常の創作能力を発揮して当然になし得ることである旨主張する。(49頁下から9行~50頁9行)

b 異議申立人の上記主張について検討すると、上記(イ)のとおり、甲2発明に甲4発明を適用したとしても、「レーザー回折粒度分布法で測定される前記磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子を平均円形度及び平均包絡度の測定対象としたときに」、「測定対象の軟磁性粒子の平均円形度」を「0.23以上」とし、「測定対象の軟磁性粒子の平均包絡度」を「0.50以上」とする構成を導き出すことはできない。

したがって、異議申立人の主張は、採用できない。

(エ)小括

以上によれば、甲2発明において、上記相違点3に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明1は、甲2発明及び甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2、3について

上記第2のとおり、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アと同様の理由により、本件発明2、3は、甲2発明及び甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)申立理由3のまとめ

以上から、本件発明1~3は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、甲第3号証に記載された発明に基いて、甲第4号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許1~3は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

したがって、異議申立人の主張する申立理由3には理由がない。

4 申立理由4(サポート要件)について

(1)サポート要件の判断基準

特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁、平成17年(行ケ)10042号判決参照)。以下に検討する。

(2)当審の判断

本件明細書の段落【0005】の記載によれば、本件発明の課題は、リサイクルによる圧粉磁心の鉄損の増大を抑制することが可能な磁性粉末を提供することである。

そして、本件明細書には、磁性粉末について、「絶縁被膜を有する軟磁性粒子を含有」し(段落【0011】)、「軟磁性粒子のうち、レーザー回折粒度分布法で測定される磁性粉末の個数基準の粒度分布における10%累積粒子径以上の直径を有する軟磁性粒子を平均円形度及び平均包絡度の測定対象としたときに、測定対象の軟磁性粒子の平均円形度が0.20以上」、「測定対象の軟磁性粒子の平均包絡度が0.45以上」とし、さらに、リサイクルによる圧粉磁心の鉄損の増大を更に抑制するために、該「平均円形度」を「0.23以上」とし(段落【0032】)、該「平均包絡度」を「0.5以上」とする(段落【0035】)が記載されている。

そして、このような構成を採用することによって、圧粉磁心を粉砕し、得られる粉末に圧力をかけて再び成形する際に、粒子同士の衝突による粒子の絶縁被膜の損傷を低減することができ、その結果、絶縁被膜の損傷に起因する渦電流損を低減することができ、リサイクルによる圧粉磁心の鉄損の増大を抑制することができる(段落【0006】)、という効果を奏することで、発明の課題が解決されることが理解できる。

そうすると、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

したがって、本件発明は、サポート要件を満たしている。

(3)異議申立人の主張について

ア 異議申立人は、異議申立書において、(i)本件発明において、平均円形度及び平均包絡度の上限値の限定がなされていないが、本件明細書において製造方法が示され、かつ効果が確認されているのは、平均円形度が0.54以下、平均包絡度が0.91以下の範囲にとどまるため、これらを超えた広範な数値範囲については、当業者が課題を解決できると認識できる程度の具体的な開示が発明の詳細な説明になされていない(51頁17~24行)、(ii)本件明細書における課題は、圧粉磁心をリサイクルする工程を経ることによって初めて顕在化する固有の課題であるにもかかわらず、当該固有の課題が生じ得ない「将来のリサイクルを全く予定しない磁性粉末」までも包含するように広く規定することは、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものと言わざるを得ない、旨主張する。(52頁下から3行~53頁4行)

イ 上記(i)について検討すると、本件明細書の段落【0006】に「軟磁性粒子の平均円形度が高く(球状に近い形状であり)、かつ、平均包絡度が高い(粒子表面の凹凸度合い(表面の粗さ)が小さい)と、リサイクルによる圧粉磁心の鉄損の増大を抑制できることを見出した。平均円形度及び平均包絡度が高い軟磁性粒子を用いた圧粉磁心では、圧粉磁心を粉砕し、得られる粉末に圧力をかけて再び成形する際に、粒子同士の衝突による粒子の絶縁被膜の損傷を低減することができ、その結果、絶縁被膜の損傷に起因する渦電流損を低減することができ、リサイクルによる圧粉磁心の鉄損の増大を抑制することができる」との記載から、平均円形度が0.54を超え、平均包絡度が0.91を超える数値範囲であっても、リサイクルによる圧粉磁心の鉄損の増大を抑制できることは当業者であれば容易に予測し得ることである。そして、平均円形度が0.54を超え、平均包絡度が0.91を超える数値範囲であると、リサイクルによる圧粉磁心の鉄損の増大を抑制できないことを裏付ける証拠は提出されていない。

よって、異議申立人の上記主張(i)は採用できない。

ウ また、上記(ii)について検討すると、上記(2)のとおり、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるところ、特許請求の範囲を特定の用途に限定する理由もない。

よって、異議申立人の上記主張(ii)は採用できない。

(4)申立理由4のまとめ

以上によれば、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものであって、本件特許は、特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

したがって、異議申立人の主張する申立理由4は理由がない。

第6 むすび

以上の次第であるから、特許異議の申立ての理由及び異議申立人の提出した証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。

また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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