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Trademark Appeal Case

棋戦名称の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2022003790
審判種別記載はありません。
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

結 論
原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。

理由テキスト

理 由

1 手続の経緯

本願は、令和元年9月30日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

なお、請求人は、証拠方法として甲第1号証ないし甲第46号証を提出した。

以下、証拠の表記に当たっては、「甲第1号証」を「甲1」のように省略して記載する。

令和3年 2月 5日付け:拒絶理由通知書

令和3年 3月22日 :意見書、手続補正書の提出

令和3年 3月26日 :手続補足書の提出(甲1~甲14)

令和3年12月13日付け:拒絶査定

令和4年 3月14日 :審判請求書の提出

令和4年 5月 2日 :手続補正書の提出

令和4年 5月10日 :手続補足書の提出(甲15~甲34)

令和5年 5月31日付け:審尋

令和5年 7月18日 :回答書の提出

令和6年 8月 6日 :手続補足書の提出(甲35)

令和6年 8月 7日付け:審尋

令和6年 9月24日 :回答書の提出

令和6年 9月25日 :手続補足書の提出(甲36)

令和7年 1月10日 :手続補足書の提出(甲37)

令和7年 1月28日付け:審尋

令和7年 3月17日 :回答書の提出

令和7年 4月 4日 :手続補正書の提出

令和7年 8月19日 :回答書の提出

令和7年 8月22日 :手続補足書の提出(甲38~甲46)

2 本願商標

本願商標は、「名人戦」の文字を標準文字で表してなり、第35類及び第41類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として登録出願されたものであって、その後、指定役務については、上記1の当審における手続補正書により、最終的に、第41類「将棋の棋戦の企画・運営又は開催」に補正されたものである。

3 原査定の拒絶の理由(要旨)

原査定は、「「名人戦」の文字は、様々な競技の大会等の名称として使用されており、現在においては大会の名称の一つ程の意味合いで一般に浸透しているといえる。そして、そのような大会等に関する電子出版物や書籍、放送番組等が一般的に制作・提供されていることを考慮すると、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「名人戦という名称の大会等に関する役務」であることを認識するにとどまるものであるから、本願商標は、単に役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と判断するのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、本願商標を、この商標登録出願に係る指定役務中、第35類の小売等役務に使用した場合、これに接する需要者は、その取扱商品が、「名人戦に関する商品」であることを認識するにすぎず、本願商標は、単に小売等役務の取扱商品の品質を表示したものと理解させるにとどまり、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。また、本願商標が出願人の業務に係る役務について使用された結果、識別力を獲得したものと認めることはできないから、本願商標は商標法第3条第2項の要件を具備するものとは認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

4 当審における審尋(要旨)

(1)当審において、令和5年5月31日付け審尋(以下「審尋1」という。)により、別掲2のとおりの事実を提示した上で本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当する旨、同項第6号に該当する旨及び同条第2項の要件を具備しない旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、これに対する回答を求めた。

(2)当審において、令和6年8月7日付け審尋(以下「審尋2」という。)により、別掲3のとおりの事実を提示した上で本願商標が未だ商標法第3条第1項第3号に該当する旨、同項第6号に該当する旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、これに対する回答を求めた。

(3)当審において、令和7年1月28日付け審尋(以下「審尋3」という。)により、本願商標が、未だ商標法第3条第1項第3号及び同項第6号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備しないとの暫定的見解及び本願の指定役務の補正案を示し、相当の期間を指定して、これに対する回答を求めた。

5 審尋に対する請求人の回答(要旨)

(1)請求人は、上記4(1)の審尋1に対する令和5年7月18日受付の回答書において、要旨以下のとおりの意見を述べた。

ア 「名人戦」は、請求人である公益社団法人日本将棋連盟(以下「請求人」又は「日本将棋連盟」という。)が共同主催者である新聞社と契約して実施する「棋戦」と称される事業である。そして、「名人戦」は、将棋の8つのタイトル戦のうちの一つであり、江戸時代から終身制で引き継がれてきた「名人」の地位を実力制へと移行した第1期1935年(昭和10年)~1937年(昭和12年)以来、90年近くにわたって請求人の役務として実施され、請求人がその運営に関わらなかったことも、請求人無くして開催された事実も、一度もない。

イ 将棋の業界において、棋戦への参加資格を持つ者は「棋士」(対局を職業とする者)の資格を有する者である。棋士の資格を有する者は、全て請求人に所属していることから、将棋の棋戦は、請求人及びそれに所属する棋士のみが、業として実施することができる役務である。

ウ 共同主催者や協賛社等によって「名人戦」の標章が使用されている事実はあるが、これは、請求人に所属する棋士が対局を行うことを通じて共同主催者や協賛社のPRに努めてきた結果であり、また、当該使用は、契約により、請求人から使用権者に対して、その使用を許諾したものである。

エ 「○○○名人戦」等のアマチュア大会が開催されているとしても、それは本願指定役務の需要者・取引者たる将棋愛好者の間において「名人戦」が「請求人及びそれに所属する棋士によって実施されるタイトル戦」として広く認識されていることによるものである。

(2)請求人は、上記4(2)の審尋2に対する令和6年9月24日受付の回答書において、要旨以下のとおりの意見を述べた。

ア 審尋2にて、「名人戦」の主催者として、請求人のほかに挙げられている朝日新聞社及び毎日新聞社から、請求人が本願商標の登録を得ることについて同意を得ている(甲35、甲36)。

イ 本願の指定役務について、使用役務が同一であると認められる役務に限定する意思があるので、補正方法について補正指示を希望する。

(3)請求人は、上記4(3)の審尋3に対する令和7年3月17日受付の回答書及び同年8月19日受付の回答書において、要旨以下のとおりの意見を述べた。

ア 本願商標の指定役務を第41類「将棋の棋戦の企画・運営又は開催」に減縮する補正を行った。

イ 本願商標について、請求人以外の共同主催者等による使用の事実があるとしても、将棋の棋戦という性質上、「名人戦」は、請求人に所属する棋士が対局(対戦)を行うことで実施・成立するものであり、必ず請求人の管理の下において実施されるものであって、請求人の業務に係る役務「将棋の棋戦の企画・運営又は開催」を表示するものとして長年使用されてきたものである。請求人がこれまで長きにわたり本願商標を使用してきた証拠を追加で提出する。

6 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第6号該当性について

本願は、その指定役務について、上記2のとおり補正された結果、商標法第3条第1項第6号に該当するとした指定役務は削除された。

したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定の拒絶の理由は、解消した。

(2)商標法第3条第1項第3号該当性について

本願商標は、「名人戦」の文字を標準文字で表してなるところ、別掲2及び当審における職権調査によれば、該文字は、請求人が主催する将棋の棋戦の名称であって、「八大タイトル戦の一つ」等と称されるように、将棋の8つあるタイトル戦の一つとして、かつ、棋戦の内容を表示するものとして認識されるものである。

してみれば、本願商標を補正後の指定役務に使用しても、これに接する需要者に、「名人戦という名称の将棋の棋戦の企画・運営又は開催」であること、すなわち、役務の質(内容)を表示したものとして認識させるにすぎないものというのが相当である。

加えて、前記のとおり、本願商標は、標準文字で表してなるものであるから、その態様上顕著な特徴は認められない。

したがって、本願商標は、役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(3)商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて

請求人は、本願商標は、商標法第3条第2項に規定する要件を具備しており、登録されるべき商標である旨を主張し、原審において甲1~甲14を、当審において甲15~甲46を提出しているところ、甲1~甲14については、当審において援用するものである。

そこで、請求人提出の証拠の内容に照らし、本願商標が、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているか否か(本願商標の商標法第3条第2項該当性)について、以下検討する。

以下、請求人の主張の全趣旨、同人が提出した各証拠及び当審における職権調査によれば、次のとおりである。

ア 本願商標と使用商標の同一性について

本願商標は、「名人戦」の文字を標準文字で表してなるところ、請求人提出の資料に掲載されている「名人戦」の文字(以下「使用商標」という場合がある。)は、多くが商標としての同一性を損なわない態様で使用されているものと認められる(甲1~甲11、甲13、甲15~甲30、甲33、甲34)。

イ 指定役務と使用役務の同一性について

請求人提出の各証拠及び当審における職権調査によれば、当審における補正後の指定役務である、第41類「将棋の棋戦の企画・運営又は開催」について、「名人戦」の文字が使用されていることが確認できる。

したがって、本願商標の指定役務と使用されている役務(使用役務)は同一であると認められる。

ウ 使用開始時期について

「名人戦」は、江戸時代である1612年から400年以上実施されてきた名人の制度(甲2、甲4、甲16~甲19、甲34)について、1935年(昭和10年)に世襲制から実力制に移行し、同年から1937年(昭和12年)にかけて第1期名人戦が行われ(甲1~甲4、甲15~甲19、甲28、甲30、甲33、甲34)、現在に至るまで実施されていることから、「名人戦」の文字は、少なくとも第1期名人戦が開始された1935年(昭和10年)から現在に至るまで使用されていると認められる。

エ 使用時期について

「名人戦」の挑戦者となるためには、順位戦と呼ばれるリーグ戦でA級まで勝ち上がり、かつ優勝しなければならないものである(甲18)。

そして、名人を決定する七番勝負は、毎年4月~6月頃にかけて行われるほか、順位戦を含めると年間を通して実施されており(甲16、甲17)、また名人戦と順位戦がセットで紹介されたり、順位戦の実施において名人戦にも言及されたりする(甲4~甲9、甲11、甲17、甲18、甲23、甲24、甲29)ことからすれば、「名人戦」の文字は、年間を通して使用されているといえる。

オ 使用地域について

請求人提出の資料によれば、名人を決定する七番勝負が、東京都文京区・港区、山形県天童市、神奈川県箱根町・湯河原町、山梨県甲府市、愛知県名古屋市・蒲郡市、長野県高山村、石川県小松市、奈良県奈良市、岡山県倉敷市、山口県萩市、福岡県福岡市・飯塚市で行われていることが確認できる(甲9、甲26~甲28、甲30、甲33、甲34)こと、名人戦の開催場所が特定されておらず年によって場所が変わることなどからすれば、「名人戦」の文字は、ほぼ全国で使用されているといえる。

カ 棋戦等に関する請求人の関与(取引の実情等)について

(ア)請求人の設立経緯及び目的等

請求人提出の各証拠及び当審における職権調査によれば、請求人である「日本将棋連盟」は、大正13年に「東京将棋連盟」を結成し、昭和24年7月29日「社団法人日本将棋連盟」を経て、平成23年4月1日に現在の「公益社団法人日本将棋連盟」となった。また、請求人の定款(甲32)によると、その目的を「将棋の普及発展と技術向上を図り、我が国の文化の向上、伝承に資するとともに、将棋を通じて諸外国との交流親善を図り、もって伝統文化の向上発展に寄与することを目的とする。」(3条)としており、さらに、「前条の目的を達成するため、次の事業を行う。」(4条柱書き)とし、「棋戦を主催し対局棋譜の提供及び棋戦の解説講評等を行い、将棋の普及啓発を推進する」(同条(1))としている。

加えて、請求人の正会員は、日本将棋連盟の目的に賛同し入会した者で日本将棋の伝統を存続し、普及発展を図るため棋力が一定の水準に達したことを理事会で確認した棋士(四段)、女流棋士(日本将棋連盟所属、タイトル獲得者又は女流四段以上)とされている(同5条)。

(イ)指定役務の性質について

補正後の指定役務に関する将棋の棋戦は、請求人に係る公益事業として内閣府に認められた「棋士による公式戦」である(別掲4、甲32、甲44)ところ、棋戦には、請求人と契約を結ぶ共同主催者が存在し、棋戦に係る役務という性質上、当該役務は、請求人に所属する棋士(対局を職業とする者)が対局(対戦)を行うことで実施・成立するものであり、必ず請求人の管理の下において実施されるものであって、請求人の業務に係る役務「将棋の棋戦の企画・運営又は開催」を表示するものとして長年使用されてきたものであると認められる。

キ 広告宣伝等について

将棋に関する書籍や雑誌等においては、有名プロ棋士の対局に焦点を置いた記事等が圧倒的に多く取り上げられているところ、その中でも、将棋大会の名称(以下「棋戦名」という。)と有名プロ棋士との関わりや、請求人が関わった棋戦名についての新聞、雑誌記事等においても棋戦名と関連付けて有名プロ棋士の対戦結果等を内容とした記事が多く見受けられる。

上記、有名棋士の活躍等が多くのメディアに取り上げられる中、棋戦名もまた多くのメディアに露出していることがうかがえる。その他にも請求人に係るウェブサイト、SNSに加え、複数の雑誌、新聞等において、継続して全国的に広く棋戦名が使用されている。

また、請求人は、自己の公式ウェブサイトや「名人戦・順位戦中継サイト」等のウェブサイトにおいて「名人戦」について広告を行っている(甲4~甲10)ほか、「名人戦」に関する記事を掲載した書籍や「名人戦」の文字が文中に登場する書籍を作成している(甲2、甲17、甲20)。

さらに、別掲5のとおり、「名人戦」の開催地においては、一般向けの関連イベントも同時開催され、チラシやポスターの作成及び頒布などが行われている事情をうかがい知ることができるところ、当該チラシやポスター中には、主催者として請求人の名称の記載も見受けられることから、一般向けにも「名人戦」の宣伝広告のための各種活動が見受けられる。

ク 請求人以外の者による同一又は類似の標章の使用の有無について

職権によって調査するも、請求人以外の者が、請求人の関与なしに「名人戦」の文字からなる商標を、当審での補正後の本願指定役務に使用している事実は発見できない。

ケ その他

請求人提出の各証拠、別掲2に掲げる事例及び当審における職権調査からすれば、本願商標は、将棋の八大タイトルの一つであり、かつ、将棋界で最も歴史のあるタイトル戦として一般に知られ、全国紙をはじめ多くのメディアにおいて、「名人戦」に関する記事が紹介されていることや、インターネット等による中継が行われている事実が確認できる。

コ 小括

上記ア~ケを総合して考察すれば、請求人は、本願商標と同一視できる使用商標を1935年(昭和10年)から現在まで約90年にわたり継続して使用役務について使用しているものであり、近年では、年間を通してほぼ全国で使用し、請求人に係るウェブサイト、SNSに加え、複数の雑誌、新聞、書籍等において、継続して使用商標を表示した形で、使用役務が宣伝広告されている。

そして、「名人戦」の対局の中継やその結果は、別掲6のとおり、テレビの報道、新聞、インターネット等で全国に放送・伝達され、特に近時は、請求人に所属する有名棋士の活躍とともに、「名人戦」の文字も多くのメディアに取り上げられている事実が認められる。

そうすると、本願商標は、請求人又はメディアによる広告宣伝や有名棋士の活躍等に起因して、需要者への浸透度は相当程度高いものといえ、将棋を愛好する者を含め広く一般の需要者にも、請求人の業務に係る役務として、広く認識されているとみるべきものである。

加えて、請求人は、定款に基づく事業目的及び棋戦運営の実績等から、本願商標に係る棋戦の主催者として中心的かつ不可欠な役割を担っており、その事業内容も補正後の指定役務と極めて密接に関係しているものである。

してみれば、本願商標は、使用役務について、請求人によって、長年にわたり、継続的に使用をされた結果、需要者が、請求人の業務に係る役務であることを認識するに至ったものというのが相当である。

したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものというべきである。

(4)まとめ

以上、検討したところによれば、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものの、同条第2項の要件を具備するものであり、商標登録を受けることができるものであるから、原査定は取消しを免れない。

その他、本願について拒絶の理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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