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Trademark Appeal Case

立体商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023010435
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

理 由

1 手続の経緯

本願は、令和4年6月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和4年11月24日付け:拒絶理由通知書

令和5年1月25日 :意見書の提出

令和5年3月16日付け :拒絶査定

令和5年6月22日 :審判請求書、手続補正書の提出

令和7年5月13日付け :証拠調べ通知書

令和7年6月24日 :意見書の提出

2 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの立体的形状よりなるところ、第8類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として立体商標として登録出願され、その後、本願商標の指定商品は、上記1の手続補正により、第8類「乳児用及び子供用の食卓用フォーク」(以下「補正後指定商品」という。)に補正された。

3 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、願書に記載のとおりの立体的形状よりなるところ、指定商品の業界においては、商品の美感や機能を発揮させるため、様々な形状の乳児用及び子供用の食卓用フォーク及びフォークが取引されている実情が見受けられるため、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の美感や機能を発揮するために採用し得る立体的形状を表したものと認識するにとどまり、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示したものというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、同条第2項には該当しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

4 当審における証拠調べ通知

当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲2の事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、上記1のとおり、証拠調べ通知書によって通知し、相当の期間を指定してこれに対する意見を求めた。

5 証拠調べ通知に対する請求人の意見(要旨)

(1)本願商標の形状は、フォークヘッドの形状と、柄のくびれ及び厚みとによって特徴づけられ、引用するフォークを含む他のフォークとは識別でき、単なる商品の品質・形状を普通に用いられる方法で表示するものではない。

(2)使用期間、使用地域、販売実績及び市場占有率を考慮すれば、本願商標の商品形状は、需要者(特に乳児及び子供を持つ親)が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものである。

6 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号について

立体商標における商品の形状について商標法は、商標登録を受けようとする商標が、立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても、所定の要件を満たす限り、登録を受けることができる旨規定する(商標法第2条第1項、同法第5条第2項参照)。

しかしながら、以下の理由により、立体商標における商品等の形状は、通常、自他商品の識別機能を果たし得ず、商標法第3条第1項第3号に該当するものと解される。

ア 商品等の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美観をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品等の製造者、供給者の観点からすれば、商品等の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美観を際だたせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。そうすると、商品の形状は、多くの場合に、商品等の機能又は美観に資することを目的として採用されるものであり、そのような目的のために採用されると認められる形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、同号に該当すると解するのが相当である。

イ また、商品等の具体的形状は、商品等の機能又は美観に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品等について、機能又は美観上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状として、同号に該当するものというべきである。けだし、商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状は、同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から適切でないからである。

ウ さらに、需要者において予測し得ないような斬新な形状の商品等であったとしても、当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。けだし、商品等が同種の商品等に見られない独特の形状を有する場合に、商品等の機能の観点からは発明ないし考案として、商品等の美観の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有する点を踏まえると、商品等の形状について、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反するからである。

(以上、知的財産高等裁判所、平成19年6月27日判決同18年(行ケ)第10555号、平成20年5月29日判決同19年(行ケ)第10215号及び平成23年6月29日判決同22年(行ケ)第10253号参照。)

(2)本願商標の商標法第3条第1項第3号の該当性について

本願商標は、別掲1のとおり、立体商標であり、全体的に厚みのある太い柄で、柄にくびれ部分を有しており、フォークヘッドの指は4本で、各指に凹凸が形成されている立体的形状からなるものである。

そして、補正後指定商品の業界において、別掲2のとおり、全体的に厚みのある太い柄になっていたり、柄にくびれ部分を有している等、握りやすい形状になっていたり、フォークヘッドの指は4本であったり、各指に凹凸が形成されている等の形状を有しているフォーク(乳幼児用・子供用のものを含む。)が取引されている事実が見受けられるものである。

上記実情を踏まえて本願商標の立体的形状を考察すると、当該立体的形状は、補正後指定商品に採用し得る形状の一形態を表したものと容易に認識されるものであり、これに接する取引者、需要者が、その商品の機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであるというべきであって、商品の機能又は美感に資することを目的とするために採用されたものといえる。

そうすると、本願商標を補正後指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その商品に採用し得る形状の一形態を表したものとして理解するにとどまり、自他商品を識別するための標識としては認識し得ないものと判断するのが相当であるから、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(3)商標法第3条第2項について

商標法第3条第2項を適用して商標登録を認めたときは、存続期間の更新が繰り返されることにより、事実上、半永久的に当該形状を商標として使用し、当該形状に係る商品を独占販売することを認める結果となるのであるから、同項を適用する場合には、当該形状について、このような結果を許容するに足りる十分な自他商品識別力が、その商標としての使用により獲得されたことが認められる必要がある。

そして、立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは、当該商標の形状の斬新性、当該形状に類似した他の商品の存否、当該商標の使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品の販売数量、広告宣伝のされた期間・地域及び規模等の諸事情を総合考慮し、立体的形状が需要者の目につき易く、強い印象を与えるものであったかなどを総合勘案した上で、立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断するのが相当である。

(以上、知的財産高等裁判所、令和6年1月30日判決同5年(行ケ)第10076号、令和6年3月28日判決同5年(行ケ)第10119号及び令和6年12月25日判決同年(行ケ)第10058号参照。)

(4)本願商標の商標法第3条第2項の該当性について

請求人は、上記1の意見書及び審判請求書において、本願商標は、商標法第3条第2項に該当するに至っている旨主張し、証拠方法として、原審において甲1号証ないし甲20号証(令和5年1月25日差出手続補足書)、当審において甲1号証ないし甲21号証(同年6月26日差出手続補足書)を提出しているところ、当該証拠は重複しているから、当審において提出された証拠を採用する。また、原審において提出された甲13号証ないし甲15号証は、当審において提出された甲19号証ないし甲21号証、原審において提出された甲16号証ないし甲19号証は、当審において提出された甲14号証ないし甲17号証、原審において提出された甲20号証は、当審において提出された甲13号証と読み替えるものとする(枝番を含む。以下、甲各号証の表記に当たっては、「甲○号証」を「甲○」のように省略し、枝番を有する証拠において、特に必要がない限り枝番の記載は省略する。)。

上記証拠及び請求人の主張を参照し、以下、本願商標の使用による自他商品の識別性(本願商標の商標法第3条第2項該当性)について検討する。

ア 本願商標の使用態様

請求人の提出したフォークに関する記載によれば、その形状は本願商標と一致しているように見受けられる(甲5~甲7、甲14~甲17、甲19~甲21)。しかしながら、フォークの柄には「EDISON」又は「EDISOnmama」の記載(刻印)があり(甲7。職権調査による請求人のホームページの記載。https://edisonmama.com/lp/forkandspoon/)、かつ、販売される際にはパッケージされた状態でブランド名「EDISON」又は「EDISOnmama」の文字とともに使用されている(甲5、甲19)。

イ 使用期間、販売数量及び使用地域

審判請求書の記載によれば、2011年から2022年末までに合計約491万本が販売され、使用地域については、全国に展開している赤ちゃん用品を扱っている店舗やインターネットを通じて販売している(甲5~甲12)。また、本願商標の商品形状を有するフォーク(以下「本件商品」という。)は、様々な色彩の商品が、アマゾンジャパン合同会社、株式会社ヨドバシカメラ、楽天グループ株式会社のECサイト上の令和4年10月7日ないし令和5年6月2日の売れ筋ランキングにおいて、1位ないし47位に入っている(請求人の主張、甲5~甲7)。

ウ 市場占有率

審判請求書の記載によれば、請求人は、本件商品の販売総数と出生数(幼児又は子供1人に対して1本のフォークが購入される前提)とから計算される年ごとの市場占有率が、2016年は約43%、2017年は約49%、2018年は約54%、2019年は約55%、2020年は約60%、2021年は約76%、2022年は約70%であるとしている。

エ 広告宣伝の方法・期間・地域及び規模等

(ア)雑誌

ひよこクラブ4月号(発売日:2022年3月15日発行)に他の商品「箸」に併せて広告掲載、発行部数は42,000部であった(請求人の主張、甲17)。

(イ)テレビ

テレビ東京系列の放送会社6社(TXNネットワークと呼ばれ、全国視聴可能世帯の約70パーセントをカバー)において、2014年4月2日-2015年3月25日に放映していたアニメ番組名「ディスクウォーズ・アベンジャーズ」(毎週水曜18:30-19:00)のコマーシャル枠(3分30秒)の1枠(30秒)でテレビコマーシャルを放映していた(請求人の主張、甲13)。

(ウ)展示会

出願人は、2011年から2022年にかけて、東京インターナショナル・ギフト・ショー、東京おもちゃショー、たまひよファミリーパーク等の展示会に出願人が取り扱っている商品を展示していた(甲18)。

オ 請求人以外の者による本願商標と同一又は類似する標章の使用の有無

別掲2のとおり、本件商品に類似する立体的形状が、請求人以外の者が取り扱う商品の立体的形状として、普通に使用されている。

カ 需要者の認識

請求人の提出した証拠によれば、本件商品は各種ウェブサイトにおいて紹介されており(甲14~甲16)、また、「TO BUY」のおすすめランキング(更新日:2021/9/16)で3位(甲19)、「MAMADAYS総選挙2020」で優秀賞を獲得していた(甲20)が、本件商品に関する一般需要者の認識度を示したアンケート調査等に関する証拠は提出されていない。

キ 判断

使用期間、販売数量について、請求人の主張を裏付ける資料は、請求人の作成した審判請求書の記載のみであり、各種ECサイトの売れ筋ランキングについては、限定的な期間のものであり、また、請求人は、市場占有率について、本件商品の販売総数と出生数(幼児又は子供1人に対して1本のフォークが購入される前提)とから計算しているが、保育園や学校等で購入したり、家庭用、外出用など1人につき数本買っている場合もあるため、客観的に評価できる証拠とはいえない。

そして、雑誌、テレビについては、それぞれ1媒体のみ、「TO BUY」のおすすめランキング、「MAMADAYS総選挙2020」についても、それぞれ1件のみであり、展示会においても、出展社数の規模も大きい中にあって(少なくとも数百~数千規模)、数ある商品の一として、本件商品も取り扱われていたというだけでは、本願商標が商品の出所を表示する商標として需要者の間に広く認識されていたとまでは認めることができない。

さらに、本件商品には、フォークの柄に「EDISON」又は「EDISOnmama」の記載(刻印)があり、かつ、パッケージされた状態で常にブランド名「EDISON」又は「EDISOnmama」の文字とともに使用されていることよりすれば、需要者は、本願商標の立体的形状のみに着目したというより、「EDISON」又は「EDISOnmama」の文字を含めて、同業他社の商品とを区別しているといえるものであり、本願商標の立体的形状が需要者の目につき易く、強い印象を与えるものであったというに足る事情は見いだせないから、本願商標とともに表示されている文字商標等の影響を排除し、本願商標のみに着目するとはいえない。

また、本願商標の識別性の有無や認識の程度を判断するための資料、例えば、一般需要者の認識度を示したアンケート調査等の証拠の提出もない。

そうすると、請求人の主張及び同人が提出した証拠を参照しても、請求人が本願商標を補正後指定商品に使用した結果、本願商標の立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているということはできず、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。

(5)請求人の主張について

ア 請求人は、本願商標は、フォークヘッドと柄との接続箇所から少し離れた箇所で、正面及び側面から見て狭くなったくびれ部分を有している点、くびれ部分から後端までの柄は、フォークヘッドの腹側が緩やかな凸形状であり、フォークヘッドの背側が大きく膨らんだ凸形状になっている点、フォークヘッドの指は4本であり、各指にU字状の凹みが形成されている点等、特徴的な形状を有していることから、引用するフォークを含む他のフォークとは識別でき、単なる商品の品質・形状を普通に用いられる方法で表示するものではない旨主張する。

しかしながら、仮に請求人の主張する上記形状の全てを兼ね備える商品が他に存在しなかったとしても、補正後指定商品の業界において、全体的に厚みのある太い柄になっていたり、柄にくびれ部分を有している等、握りやすい形状になっていたり、フォークヘッドの指は4本であったり、各指に凹凸が形成されている等の形状を有しているフォーク(乳幼児用・子供用のものを含む。)が取引されている事実を併せて鑑みれば、本願商標を補正後指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の機能又は美感に資する目的として採用された立体的形状を表したものと認識するにとどまるというべきである。

イ 請求人は、実用新案権(実用新案登録第3158497号(甲2))を有していることも理由として、本願商標は特徴あるフォークヘッドである旨主張する。

しかしながら、当該実用新案登録が存在したことをもって、本願商標の立体的形状が特徴的であって、自他商品識別力を有するものであるという理由にはならず、また、請求人商品の形状は、当該実用新案登録により一定保護期間が与えられていたと考えられ、本願商標の立体的形状について商標制度によって実用新案権による保護期間の経過後の期間を含む独占使用を認めることは、その保護期間を事実上延長することにつながることから、公益上の見地からみて適切ではなく、独占適応性を欠くものである。

ウ 請求人は、使用期間、使用地域、販売実績及び市場占有率を考慮すれば、本願商標の商品形状は、需要者(特に乳児及び子供を持つ親)が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものである旨主張する。

しかしながら、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものとはいえないことは、上記(4)のとおりである。

エ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。

(6)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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