結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024890014 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件登録第6268036号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和元年7月8日に登録出願、第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」、第35類「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、同2年6月18日に登録査定、同年7月9日に設定登録されたものである。
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、商標法第4条第1項第10号に該当するとして引用する標章は、請求人がその業務に係る商品「菓子(まんじゅう)」に使用する別掲2のとおりの形状の商品(以下「使用商品」という。)の中央部に焼き印として付したと主張する図形部分(以下「使用標章」という。)である。
請求人は、本件商標は、その指定商品及び指定役務中第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」及び第35類「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「請求に係る指定商品及び指定役務」という。)についての登録を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書において要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、請求に係る指定商品及び指定役務について、商標法第4条第1項第10号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定により、請求に係る指定商品及び指定役務の登録を無効とすべきである。
(1)使用標章の周知性
ア 使用標章の使用実績
(ア)使用商品の使用実績
請求人は、以下のように、数十年にわたって、使用標章を焼印に付した菓子(使用商品)の製造、販売を継続してきた。
a 請求人の店舗での使用
請求人は、1630(寛永7)年に創業した「千鳥屋」の事業を、主として関西圏において行う者である。「千鳥屋」は、長崎に伝わった南蛮菓子の製法を取り入れて白あんまんじゅう「千鳥まんじゅう」を売り出したところ、請求人は、当時からの製法技術を現在に受け継いだ使用商品の製造、販売を継続している(甲1の1)。
請求人は、1973(昭和48)年に兵庫県尼崎市に本店を構え、その後、請求人の店舗は、1981(昭和56)年4月時点で13店舗、年商約7億円(甲1の1)、1983(昭和58)年4月時点で16店舗になり、この頃には、平均的な規模の1店舗で1日10万円近くの売上があり、その半数は使用商品が占めている(甲1の2)。さらにその後、請求人の店舗は、1993(平成5)年2月時点で45店舗(甲1の3)、2010(平成22)年時点で約160店舗にまで増加した(甲1の4)。この点、現時点における請求人の店舗は、首都圏を含めて甲第1号証の5のとおりである。
このように、請求人は、大阪市中央区本町に本店を置くとともに、その他、百貨店や駅前等に多くの店舗構えているところ、これらの店舗において、使用商品を陳列し、使用商品のパンフレットを置いている(甲2)。
b チラシヘの使用
請求人は、使用商品の製造、販売を継続しており、少なくとも1995(平成7)年秋から本件商標の出願時に至るまで、継続的に使用商品を掲載したチラシを頒布している(甲3)。
c ブログやウェブページ等での紹介
使用商品は、上記a及びbのとおり、極めて長期間にわたって継続的に販売が継続された結果、需要者や取引者等において広く知られるようになり、ブログやウェブページなどでも紹介されている(甲4)。
なお、甲第4号証の7ないし甲第4号証の10に掲載の紹介記事は、本件商標の出願日以降のものであるが、同出願日前における使用商品の販売実績等も踏まえたものであるから、本件商標の出願日時点における使用商品の周知性を裏付けるものとして機能する。
(イ)首都圏での使用実績
上記(ア)で述べたとおり、請求人は、関西圏を中心として「千鳥屋」の事業を展開したが、請求人代表者の兄であるA氏(以下「A」という。)は、1964(昭和39)年に東京において「千鳥屋」の事業を行うようになり(甲5)、当初は個人事業により1983(昭和58)年頃まで出店を継続し、2010(平成22)年頃からは個人事業を株式会社化した千鳥屋総本家株式会社(以下「総本家」という。)により、首都圏において、使用標章と同様の商標を付した同様の菓子の製造、販売を継続した。
a 店舗での使用
Aないし総本家は、東京都豊島区駒込に本店を、その他、百貨店、駅前、空港に多く店舗構えており、これらの店舗において、使用商品と同様の菓子を陳列し、使用商品と同一の商品のパンフレットを置いていた(甲6)。
b チラシヘの使用
Aないし総本家は、使用商品と同一の商品の製造、販売を継続しており、少なくとも1986(昭和61)年5月から本件商標の出願日に至るまで、継続的に使用商品と同一の商品を掲載したチラシを頒布している(甲7)。
c 請求人への承継
上記a及びbのとおり、使用標章は、極めて長期間にわたって継続的に販売が継続された結果、首都圏においても、Aないし総本家を示すものとして、需要者や取引者等において広く知られるようになった。しかるに、総本家に係る事業は、民事再生によって、総本家から株式会社千鳥屋総本家(第三者運営に係る別法人)に譲渡され(甲8)、さらにその後、同株式会社千鳥屋総本家から請求人に譲渡された(甲9)。これにより、Aないし総本家が取得していた周知性も、請求人に承継された。
イ 小括
以上のとおり、使用標章は、菓子につき、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の出願日より前に需要者の間に広く認識されていた。
(2)本件商標との対比
ア 商標の同一について
本件商標は使用標章と同一である。補足するに、被請求人は、前記(1)のとおり使用されてきた使用標章を、自己の商標として単独で出願し、登録を得たものである。
イ 請求に係る指定商品及び指定役務との同一ないし類似
前記(1)のとおり、請求人は、使用標章を菓子に使用してきた。しかるに、本件商標の指定商品及び指定役務中第30類「菓子」は、使用標章が使用される商品である菓子と同一であり、第30類「パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」及び第35類「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、使用標章が使用される商品である菓子と類似する。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、使用標章と同一であり、その指定商品及び指定役務中第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」及び第35類「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について、使用標章が使用される商品である菓子と同一ないし類似する。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
(1)本件商標と使用標章との類否
ア 本件商標が商標法第4条第1項第10号に定める商標に該当するといえるためには、使用標章と同一又はこれに類似の商標であることを要する。
この点について、請求人は、使用標章と同一の商標(乙2「商標公報(登録第6619729号)」。以下「別件請求人商標」という。使用標章は、別件請求人商標の色彩を白黒にして表示したものである。)について、本件商標の出願後である2020(令和2)年5月4日に出願したところ(商願2020-051084。ただし、出願人名義は請求人代表者であるB氏。以下「B」という。)、その審査過程において、請求人(B)は、本件商標と類似するとして通知された商標法第4条第1項第11号の拒絶理由に対して、「本願商標(被請求人注:別件請求人商標)は、上記異議決定における別掲2(引用商標(登録第6245289号)の線画を焼印として直径約6cmの饅頭の表面に焼印を施すことによって成形された饅頭の全体を表す商標です。従って、上記異議の決定の認定に従えば、本願商標の饅頭の表面に施された線画の図形と引用No.1(被請求人注:本件商標)の図形を比較した場合、両図形は輪郭を太線で表し、その中に黒丸を有する点において共通するとしても、黒丸の位置、大きさが異なり、かっ、引用No.1は、特定の事物を表したと認識されないものであるのに対して、本願商標は、鳥(千鳥の紋章)を簡略化して描いた図形からなるものであるから、両商標の印象は大きく異なるものです。また、本願商標は直径約6cmの饅頭の表面に施されており、商標全体の構成態様において饅頭の全体像が存在する点で明らかに相違し、それぞれから受ける印象も大きく異なりますから、両商標を対比観察した場合はもとより、時と処を異にして離隔的に観察した場合においても、互いに見誤るおそれはないというべきものであって、本願商標と引用No.1とは、外観上、明らかに区別できるものです。そして、本願商標と引用No.1は、いずれも特定の称呼及び観念は生じないものです。以上によれば、本願商標と引用No.1は、称呼及び観念において比較することができないものであり、外観において見誤るおそれのない明らかに区別できるものでありますから、これらを総合的に勘案すれば、両商標は、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきであります。」(乙3「令和3年10月18日付け意見書」)と述べたうえで商標登録を得たものであり、(別件請求人商標が登録第6245289号商標を焼印として施したものであるかは措くとしても)本件商標と別件請求人商標が類似しないことを前提に請求人の主張は組み立てられていたはずである。ところが、請求人は、これらの前言をすべて翻し、本件審判請求においては、(別件請求人商標を単に白黒表示したにすぎない)使用標章と本件商標とが類似するとして主張を一転させている。
かかる主張は、看過できない自己矛盾が内在するとともに、禁反言の原則にも完全に違背するものであるから、本件の審理からは排除されるべきである。
イ なお、仮に本件商標と使用標章とが類似するとの主張が排除されないのであれば、首都圏におけるAないし総本家に加え、被請求人においても、使用商品と同様の菓子である「千鳥饅頭」を長年にわたって多数販売しており、本件商標は、特に九州地方では被請求人の業務に係る商品又は役務を示すものとして需要者の間に広く認識されているところ、本件審判請求において、請求人が使用標章(及びこれと同一の別件請求人商標)と本件商標とが類似すると自白したことを踏まえ、被請求人においても、別件請求人商標について、無効審判を請求する予定である。
(2)使用標章の周知性は認められないこと
ア 商標法第4条第1項第10号で要求される周知性の程度
使用商品のような菓子は、一般に消費される商品であって、全国的に流通し得るものであり、地域的嗜好特性も格別認め難い商品であるところ、かかる全国的に流通する日常使用の一般的商品について、商標法4条1項10号が規定する「需要者の間に広く認識されている商標」といえるためには、それが未登録の商標でありながら、その使用事実にかんがみ、後に出願される商標を排除し、また、需要者における誤認混同のおそれがないものとして、保護を受けるものであること等を考慮すると、「商標登録出願の時において、全国にわたる主要商圏の同種商品取扱業者の間に相当程度認識されているか、あるいは、狭くとも一県の単位にとどまらず、その隣接数県の相当範囲の地域にわたつて、少なくともその同種商品取扱業者の半ばに達する程度の層に認識されていることを要する」(東京高裁昭和58年6月16日判決・無体裁集15巻2号510頁)。
また、東京高裁平成14年6月11日判決(平成13年(行ケ)第430号)においても、「商標法4条1項10号、15号による周知商標の保護は、登録主義をとる我が国の商標法の下で、例外的に、未登録商標であっても、それが周知である場合には、既登録商標と同様に、これとの間で出所の混同のおそれを生じさせる商標の登録出願を排除することを認めようとするものである。しかも、商標登録出願が排除されると、出願人は、当該出願商標を、我が国のいずこにおいても、登録商標としては使用することができなくなる、という意味において、排除の効力は全国に及ぶものである。これらのことに鑑みると、周知であるといえるためには、特別の事情が認められない限り、全国的にかなり知られているか、全国的でなくとも、数県にまたがる程度の相当に広い範囲で多数の取引者・需要者に知られていることが必要であると解すべきである。」とされている。
イ 使用標章の使用実績について
(ア)この点、請求人によれば、使用商品の販売地域は、全国にわたるものではなく、主として関西圏にとどまるため、前記アの判示に照らし、使用標章について商標法第4条第1項第10号の周知性が認められるためには、本件商標の出願日である2019(令和元)年7月8日時点において既に、使用標章が関西圏内における同種商品取扱業者又は一般消費者の半ばに達する程度の層に認識されていたといえなければならない。
(イ)しかしながら、使用商品は、特に大阪府内及び兵庫県内の店舗において一定の販売実績をあげていたことはうかがえるものの、それにより関西圏内における同種商品取扱業者又は一般消費者の半ばに達する程度の層に認識されていたものとは認められない。
なお、請求人は、その店舗数等の推移につき、1973(昭和48)年に兵庫県尼崎市に本店を構えた後、1981(昭和56)年4月時点で13店舗、1983(昭和58)年4月時点で16店舗、1993(平成5)年2月時点で45店舗、2010(平成22)年時点で約160店舗にまで増加したと主張するが、本件商標の出願日にほど近い2019(令和元)年11月5日表示の請求人のWebサイト(乙4)によれば、請求人の店舗としては、大阪府内12店舗、兵庫県内6店舗、奈良県内1店舗、京都府内1店舗、和歌山県内1店舗の計21店舗しか掲載されておらず(使用商品の取扱いはないと思われる「空港・駅ナカ(みたらし小餅のみ取扱い)」は除く。)、上記主張及びその証拠とされる甲第1号証の1ないし甲第1号証の5の信用性には疑義がある。
(ウ)また、請求人が提出する使用商品のパンフレット(甲2の1ないし甲2の23)、請求人取扱商品又は請求人店舗のチラシ(甲3の1ないし甲3の27)は、いずれもその発行部数が不明であり(なお、使用商品のパンフレットは店舗に備え置かれたものとのことであるため、請求人の店舗を訪問し、かつ、これを手に取って閲覧した者にしか目に触れることはない。)、関西圏内における同種商品取扱業者又は一般消費者の半ばに達する程度の層に認識される程度の宣伝広告がなされた事実はうかがわれない。
ウ 首都圏での使用実績について
(ア)請求人は、使用標章は首都圏においてもAないし総本家の業務に係る商品を示すものとして周知性を有していたところ、総本家の民事再生手続に伴って総本家の事業を譲り受けた株式会社千鳥屋総本家(第三者運営に係る別法人。以下「新総本家」という。)から、さらに請求人が総本家の事業を譲り受けたことによって、総本家の周知性が請求人に承継されたと主張する。
(イ)しかし、総本家の使用実績に関して請求人が提出する資料(甲5ないし甲7の3)は極めて限定的であり、そもそも総本家が周知性を獲得していたとは認められない。
(ウ)また、請求人が主張する総本家の1983(昭和58)年頃までの出店状況(審判請求書末尾記載の「首都圏の千鳥屋の店舗及び販売委託」)については、これを裏付ける証拠が存在しない。
なお、仮にその出店状況が事実であったとしても、総本家は、その後2016(平成28)年5月に同社について民事再生手続が開始されたことからも明らかなとおり、極めて経営が悪化していたのであって、その店舗の多くは、本件商標の出願日までに既に閉店していた。実際、2018(平成30)年12月に請求人が新総本家からの事業譲渡によって承継した店舗は、「巣鴨店」と「ペリエ千葉店」のみである(乙5の別紙1「譲渡対象財産目録」)。
したがって、仮に総本家が過去のどこかの時点では首都圏における周知性を獲得していたのだとしても、本件商標の出願日時点では既に失っていたと言わざるを得ず、いずれにせよ、総本家の周知性が請求人に承継されたとの主張には理由がない。
エ 小括
以上のとおり、使用標章は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして本件商標の出願日より前に需要者の間に広く認識されていたとはいえない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標には、請求人が主張する無効理由が存在しないことは明らかであるから、本件審判の請求は、速やかに棄却されるべきである。
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係については何ら争っておらず、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
以下、本案について判断する。
(1)使用商品について
請求人及び被請求人の提出証拠並びに両者の主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人は、現在の佐賀県に創業した焼き菓子専門店「千鳥屋」(創業当時の屋号は「松月堂」。以下同じ。)を起源とし、昭和48年頃から阪神地域を中心に饅頭「千鳥饅頭」等の商品を販売してきた菓子屋である(甲1の1ないし甲1の3、甲4の6及び甲5)。
イ 請求人は、昭和48年頃に関西に進出し、それ以降、使用標章を焼き印として付した使用商品を、阪神地域を中心に販売し、その後、請求人の店舗は、1981(昭和56)年4月時点で13店舗、年商約7億円(甲1の1)、1983(昭和58)年4月時点で16店舗になり、この頃には、平均的な規模の1店舗で1日10万円近くの売上があり、その半数は使用商品が占めていたこと(甲1の2)、さらにその後、請求人の店舗は、1993(平成5)年2月時点で45店舗(甲1の3)となっていた。
ウ 請求人は、平成10年から平成30年にかけて「千鳥屋名菓撰」や「千鳥屋お歳暮特撰品」などの見出しでパンフレットを作成しており、それには使用標章を付した使用商品が掲載されている(甲2)。
エ 請求人は、平成7年から令和元年にかけて「千鳥屋名菓撰 おもてなしの心」や「千鳥屋冬の和菓子感謝祭」などの見出しでチラシを作成しており、それには使用標章を付した使用商品が掲載されているとともに(甲3の1ないし甲3の21)、1995(平成7)年から1997(平成9)年に作成したチラシには、大阪と兵庫(尼崎市)の2つの本店を含む60店舗以上の系列店舗が掲載されている(甲3の1ないし甲3の3)。
オ 2019(令和元)年11月5日にウェブ上に掲載されていた請求人ウェブサイトの「代表店舗のご案内」のページによれば、請求人の店舗(みたらし小餅のみ取扱いの店舗を除く。)は、大阪府内12店舗、兵庫県内6店舗、奈良県内1店舗、京都府内1店舗、和歌山県内1店舗、その他百貨店5店舗の計26店舗が掲載されている(乙4)。
カ 菓子などを紹介する第三者のブログやウェブページにおいて、請求人を表す「千鳥屋宗家」の記載とともに、使用標章を付した使用商品が掲載されているとともに(甲4の3ないし甲4の6)、その商品の説明として、「お饅頭に可愛い千鳥の焼き印入り」(甲4の3)、「てっぺんに焼き印された鳥のマークが可愛らしいです。」(甲4の4)及び「千鳥焼き印が千鳥饅頭の印」(甲4の6)と掲載されているものがある。
(2)使用商品に付した使用標章の周知性について
ア 商標法第4条第1項第10号は、先使用未登録商標に他の商標登録出願を排除する効力を認めるものであるから、同号にいう「広く認識されている」に該当するといえるための地理的範囲としては、必ずしも全国的に知られている必要まではないが、1都道府県内で知られているだけでは足りず、少なくとも、例えば、関西一円などの数県にわたる相当広い範囲で、取引者・需要者に知られていることを要するというべきである。また、「広く認識されている」といえるための取引者・需要者の範囲としても、同様の趣旨から、すべての取引者・需要者に知られている必要まではないが、相当程度の取引者・需要者に知られていることを要すると解すべきである。
イ 使用商品は、上記(1)のとおり、昭和48年頃から阪神地域を中心に使用標章を付した使用商品の販売を開始し、平成9年頃までには、2つの本店を含む60店舗以上の系列店舗において使用商品が販売されており、遅くとも昭和58年頃には16店舗の平均売上げが10万円近くあって、その半数が使用商品で占めていたことが認められる。
しかしながら、使用商品の売上げについては、昭和58年頃までの売上額しか明らかになっておらず、本件商標の出願時(令和元年7月8日)及び査定時(令和2年7月9日)(以下、まとめて「本件商標の出願時等」ということがある。)における使用商品の製造及び販売数は不明であり、また、昭和58年頃の系列店舗である16店舗における使用商品の売上げが1日平均10万円の半数の5万円ほどの売上げであったことについても、使用商品などの菓子に関心のある需要者は、広く一般の消費者を含むものであることからすると、需要者の数に比してその売上額は決して多いものとはいえない。
ウ 請求人の店舗数についても、証拠より明らかに確認できるものは1997(平成9)年頃の60店舗程度であり、さらに、本件商標の出願日後のものであるが2019(令和元)年11月5日時点における請求人のウェブサイトに掲載の請求人の代表店舗(みたらし小餅のみ取扱いの店舗を除く。)としては、大阪府内12店舗、兵庫県内6店舗、奈良県内1店舗、京都府内1店舗、和歌山県内1店舗、その他百貨店5店舗の計26店舗しか掲載されておらず(乙4)、それらの店舗における本件商標の出願時等における訪問者の数や売上額等も不明であることから、本件商標の出願時等において、使用標章がどの程度の数の需要者の目に触れたのかなどを推し量ることはできない。
エ パンフレットやチラシについては、遅くとも平成10年以降、長年にわたり作成されていることは確認できるものの、その印刷枚数、配布された範囲及び数量等を把握することができる証拠は何ら提示されておらず、その実績を把握することはできない。
また、パンフレットやチラシのほか、第三者の運営するブログやウェブサイト等でも使用商品について紹介されている記事があり、その記事のいくつかにおいて「お饅頭に千鳥の図柄の焼き印」が付されていることについて記述されているものも確認できるが、お饅頭に千鳥の図柄の焼き印がされていることが、使用商品の特徴として広く認識されていることが伺えるような記載はなく、そのことは、請求人作成のパンフレット、チラシなども同様である。
オ その他、使用標章が、単独で、請求人の業務に係る商品や役務を表示するものとして使用されている実情も確認することができない。
カ したがって、上記イないしオの実情とともに、使用商品並びに請求に係る指定商品及び指定役務に係る「菓子」に関する需要者は、一般の消費者であって、阪神地域における一般の消費者は相当な数に及ぶことを考慮すると、使用標章が相当程度の需要者の目に触れ、請求人の商品であることを表すものとして記憶されていたと認めることはできないことから、上記の当事者の主張及び立証からは、本件商標の出願時等において、使用標章の形状のみをもって、それが請求人の業務に係る菓子、あるいは、菓子に関する役務を表示するものであると阪神地域等の関西圏において相当程度の需要者に知られているとは認められない。
(3)Aないし総本家の商品について
請求人及び被請求人の提出証拠並びに両者の主張によれば、以下の事実が認められる。
ア Aないし総本家は、現在の佐賀県に創業した焼き菓子専門店「千鳥屋」を起源とし、昭和39年頃から東京都を中心に饅頭「千鳥饅頭」等の商品を販売してきた菓子屋である(甲5)。
イ Aないし総本家は、平成28年に「千鳥屋宗本家のお菓子」の見出しでパンフレットを作成しており、それには使用標章を付した使用商品と同形状の菓子が掲載されている(甲6)。
ウ Aないし総本家は、1986(昭和61)年に系列店である大塚北口店の開店に関するチラシを作成しており、それには使用標章を付した使用商品と同形状の菓子とともに、千鳥屋駒込本店のほか、巣鴨店、霜降店、十条店、田端店の連絡先が記載されている(甲7の1)。
エ Aないし総本家は、お中元のチラシを作成しており、それには使用標章を付した使用商品と同形状の菓子とともに、千鳥屋東京本店(駒込)のほか、三ノ輪店、西日暮里店の連絡先が記載されている(甲7の2)。
オ Aないし総本家は、2018(平成30)年に系列店であるペリエ千葉店の開店に関するチラシを作成しており、それには使用標章を付した使用商品と同形状の菓子が記載されている(甲7の3)。
カ Aないし総本家が営む和洋菓子の製造販売業に係る事業は、最終的に、平成31年3月31日に請求人に譲渡されており、請求人に譲渡される財産(譲渡対象財産)のうち、協議の上存続する店舗としては、巣鴨店及びペリエ千葉店(賃借店舗)の2店舗とされている(甲8、甲9及び乙5)。
(4)Aないし総本家の商品に付した使用標章の周知性について
ア Aないし総本家は、上記(3)のとおり、昭和39年頃から東京都(駒込)を中心に使用標章を付した使用商品と同形状の菓子の販売を開始し、平成30年頃までには、駒込本店を含む9店舗の系列店舗において使用商品と同形状の菓子が販売されていたことが認められる。
しかしながら、同商品の製造及び販売数は不明であり、証拠より確認できる系列店舗の数も決して多いものとはいえないうえ、総本家についての事業が、最終的に請求人に譲渡された時点(平成30年)で譲渡対象財産となった店舗は巣鴨店及びペリエ千葉店の2店舗のみに減少している。
イ パンフレットやチラシについては、遅くとも昭和61年頃から作成されていることが確認できるものの、その印刷枚数、配布された範囲及び数量等を把握することができる証拠は何ら提示されていないことから、その実績を把握することはできず、また、お饅頭に千鳥の図柄の焼き印がされていることが、Aないし総本家の商品(菓子)の特徴として広く認識されていることが伺えるような記載は認められない。
ウ その他、使用標章が、単独で、Aないし総本家の業務に係る商品や役務を表示するものとして使用されている実情も確認することができない。
エ したがって、上記アないしウの実情とともに、Aないし総本家の商品及び請求に係る指定商品及び指定役務に係る「菓子」に関する需要者は、一般の消費者であって、東京都や首都圏における一般の消費者は相当な数に及ぶことを考慮すると、使用標章が相当程度の需要者の目に触れ、Aないし総本家の商品であることを表すものとして記憶されていたと認めることはできないことから、上記の当事者の主張及び立証からは、本件商標の出願時等において、使用標章の形状のみをもって、それがAないし総本家の業務に係る菓子、あるいは、菓子に関する役務を表示するものであると東京都等の首都圏において相当程度の需要者に知られているとは認められない。
(5)小括
以上のとおり、請求人の使用商品及びAないし総本家の商品の使用によっても、本件商標の出願時等に、阪神地域等の関西圏又は東京都等の首都圏において、使用標章が請求人及びAないし総本家の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであるとは認められない。
上記1のとおり、使用標章は、請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることができないものである。
したがって、他の要件を判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ないから、同号に該当しない。
(1)請求人は、使用商品に付した使用標章の周知性に関し、2010(平成22)年時点で約160店舗にまで系列店舗等が増加したとして「店舗写真説明書」(甲1の4)を提出するともに、現時点(令和5年10月)における請求人の店舗数は「店舗地図」(甲1の5)のとおりであるとし、これらの店舗において、使用商品を陳列し、使用商品のパンフレットを置いていた旨主張する。
しかしながら、請求人の店舗数が約160店舗であることは、請求人の代表者が作成した「店舗写真説明書」(甲1の4)に記載があるのみで、その証拠として添付された店舗の写真もその一部である19店舗に関するものにすぎず、また、現在の店舗についても、地図上に記号がされた資料(甲1の5)が提出されているのみで、これがどのような条件の検索により作成され、その地図上の記号の部分にどのような店舗が存在していることを表したものであるか、その資料から判別することはできない。
また、仮に、本件商標の出願時等においても「店舗地図」(甲1の5)上に記載された記号の数のとおり、阪神地域に約100店舗近く存在し、それらの店舗において、使用商品が陳列され、使用商品のパンフレットが置かれていたとしても、店舗における訪問者の数や売上額も不明であることから、本件商標の出願時等において、使用標章がどの程度の数の需要者の目に触れたのかなどを推し量ることはできず、また、関西圏における一般の消費者は相当な数に及ぶことを考慮すると、使用標章の形状のみをもって、請求人の業務に係る菓子、あるいは、菓子に関する役務を表示するものであると関西圏において、相当程度の需要者に知られていたと認められないことは、上記1で述べたとおりである。
(2)請求人は、Aないし総本家の商品に付した使用標章の周知性に関し、Aないし総本家が、1964(昭和39)年に東京において 「千鳥屋」の事業を行うようになり、 当初は個人事業により1983(昭和58)年頃まで審判請求書末尾記載の「首都圏の千鳥屋の店舗及び販売委託」と題する一覧表(同表には37店舗記載あり。以下「店舗等一覧」という。)のとおり出店を継続するなど、東京都豊島区駒込の本店のほか、百貨店、駅前、空港に多く店舗構えており、これらの店舗において、使用商品と同様の菓子を陳列し、 使用商品と同一の商品のパンフレットを置いていた旨主張する。
しかしながら、上記の店舗等一覧にある開店時期は昭和39年から同58年までと相当前のものであるうえ、その後、請求人が提出した証拠により使用標章を付した使用商品と同形状の菓子が取り扱われていると確認できる店舗は、東京本店、霜降店、巣鴨店、十条店、田端店のみであり(甲7の1及び甲7の2)、また、Aないし総本家の事業が、最終的に請求人に譲渡された時点(平成31年3月31日)において、存続が確認できる店舗は巣鴨店及びペリエ千葉店(賃借店舗)の2店舗のみであることから、店舗等一覧にある37店舗がいつまで系列店として実在していたのか不明である。
また、仮に、Aないし総本家の事業が、最終的に請求人に譲渡された時点において、ある程度の店舗が存続しており、それらの店舗において、使用商品と同様の菓子が陳列され、それらの商品に関するパンフレットが置かれていたとしても、店舗における訪問者の数や売上額も不明であることから、本件商標の出願時等において、使用標章がどの程度の数の需要者の目に触れたのかなどを推し量ることはできず、また、首都圏における一般の消費者は相当な数に及ぶことを考慮すると、使用標章の形状のみをもって、請求人の業務(Aないし総本家の業務)に係る菓子、あるいは、菓子に関する役務を表示するものであると首都圏において、相当程度の需要者に知られていたと認められないことは、上記1で述べたとおりである。
(3)したがって、請求人の前記主張は、いずれも採用することができない。
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
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