sokuhyo

Trademark Appeal Case

図形の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900101
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6903310号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

1 本件商標

本件登録第6903310号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和6年6月21日に登録出願、第25類「履物」及び第35類「履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品及び指定役務として、同7年1月28日に登録査定、同年3月4日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下のとおりであって、その商標権は現に有効に存続している。以下、これらをまとめて「引用商標」という。

(1)登録第3195571号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成5年8月25日登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同8年9月30日に設定登録されたものである。

(2)登録第5069508号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成18年6月6日登録出願、別掲4のとおりの第18類、第25類及び第28類に属する商品を指定商品として、同19年8月10日に設定登録されたものである。

3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第25類「履物」(以下「申立てに係る商品」という。)について、商標法第4条第1項第11号の規定に該当するにもかかわらず商標登録されたものであるから、その登録は、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。

以下、証拠の記載に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。

(1)商標法第4条第1項第11号について

ア 商品の抵触について

本件商標は第25類「履物」を指定している。

一方、引用商標もその指定商品に「履物」及びこれに類似する商品を含む

このように、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は抵触するものである。

イ 商標の抵触について

本件商標は別掲1のとおりの態様からなる。すなわち、菱形図形を左右に併置した点を構成上の基本的な要素とし、各菱形図形の中央を白抜きしてなる。

これに対して引用商標は別掲2及び別掲3の態様からなる。

引用商標1も引用商標2の図形部分も共に、菱形図形を左右に併置した点を構成上の基本的な要素とし、菱形図形の輪郭は白地と黒線の二重の輪郭により表してなる。

なお、引用商標2は文字「errea」を含むものであるが、裁判所は「複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、原則として許されないが、他方、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも、許されるものである」と判示する(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。

この点、引用商標2は、図形部分と文字部分で段が異なることから明瞭に分離されており、これが「分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合している」ものでないことは明らかである。よって、引用商標2から図形部分のみを分離・抽出し類否判断に臨むことは「許される」というべきである。

そして、本件商標と引用商標1及び引用商標2の図形部分は、共に「菱形図形を左右に併置した点を構成上の基本的な要素」とする点で共通する。この構成上の基本的な要素は本件商標及び各引用商標に接する取引者、需要者が最初に認識しうる基本的な特徴である。こうした基本的な特徴が共通である商標に接する取引者、需要者はそこから同じ印象を得てこれを記憶し、取引に資するものであるから、時と処を異にして商標に接した場合、相互に相紛れるおそれがあるといわざるを得ない。

こうした構成上の基本的な要素を共通にする図形については、図形商標の類否判断において裁判所は「(特定の観念や称呼を生じないような)商標同士の間に商標法4条1項11号にいう類似に該当する関係があるか否かの判断は、それぞれの商標の構成全体の有する外観上の印象が互いに相紛らわしいか否かによってするほかない。取引者・需要者が、図柄によって構成される商標について、必ずしも、図柄の細部まで正確に観察し、記憶し、想起して、これによって商品の出所を識別するとは限らず、商標全体の主たる印象によって商品の出所を識別する場合が少なくないことは、日常の経験に照らして明らかであり、また、商標の使用は種々の態様において行われ、大きさ、向き、その上に商標を示すもの(紙、板、布、金属など)等において多様であり得ることも当裁判所に顕著である。」として「外観上、最も看者に強い印象を与えるのは、大リングと小リングが相互に一部重なるように配置されている点であって、一見したとき最初に認識し得る基本的な特徴であり、外観上、次に看者に強い印象を与えるのは、大リングが楕円形で、楕円の長径の一端におけるリングの肉厚が最大とされているが商標全体における最も大きな部分を占め、前記の基本的な特徴に次ぐ主要な特徴といい得るものであるから、看者は、一般に、両商標の上記一致点について強い印象を受け、これを記憶し、想起するものと認めることができる。」と判断している(東京高平成12年(行ケ)147号 甲第4号証)。

これを本件について当てはめるに、本件商標と引用商標の図形部分について最初に認識し得る基本的な特徴とは「菱形図形を左右に併置した点」に他ならず、そうとすれば看者は、両商標の上記一致点について強い印象を受け、これを記憶し、想起する以上、両商標は外観的に彼此相紛らわしいものと評すべきである。

さらに、商標の類否判断は、商標が使用される商品の主たる需要者層その他商品の取引の実情を考慮し、需要者の通常有する注意力を基準として判断しなければならない。ここでいう「取引の実情」に引用商標の周知・著名性も含まれることは、たとえば東京高等裁判所平成13年(行ケ)第277号において「商標の類否の判断において当該指定商品の取引の実情を参酌すべきことは当然であって、引用商標の周知性も、このような取引の一事情に当たるから、これを参酌すべきものというべきである。」と明示されているとおり、経験則のみならず判決によっても認められるところである(甲5の6頁)。

そして、引用商標の周知・著名性は、具体的な取引状況の下では、出所の混同のおそれを増幅させるものとなる。この点は、判決において以下のように説示される。「引用商標は、本件商標の登録査定時において、既に、本件指定商品中の「歯磨き」につき、原告の商品を表示するものとして、その取引者、需要者間に周知であり、このことは、「歯磨き」について、商品出所の混同のおそれを増幅させるという事情である上、他の指定商品についても、商品出所の混同のおそれを増幅させる可能性のある事情ということができるから、このような取引の実情を参酌するならば、両商標に係る商品出所の混同のおそれは、一層増幅させられるものである。」(甲5の5頁)。

この点、引用商標の商標権者は1988年創業のイタリア生まれのサッカー、バレーボールを中心としたスポーツブランドでプロスポーツチームのユニフォームなど幅広く手掛けているブランドであり、現に世界中の有名プロスポーツチームにユニフォームを提供している(甲6~甲9)。そうしたユニフォームでは左肩や首元等の目立つ位置に引用商標1や引用商標2が付されており、そのユニフォームを着たチーム、選手の活躍と共に世界中の取引者に印象付けられている。もちろん、申立人の商品はわが国でも流通しており、人気を博している(甲10)。

このように引用商標はその取引者、需要者間に周知であり、このことは「履物」について、商品出所の混同のおそれを増幅させる可能性のある事情ということができるから、このような取引の実情を参酌するならば、両商標に係る商品出所の混同のおそれは、一層増幅させられるものである。

そうとすれば、本件商標と引用商標の図形部分はその外観において相紛れるおそれがある類似商標とするのが相当である。

4 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第11号該当性について

ア 本件商標

本件商標は、別掲1のとおりの構成からなり、縦長の太線で表された菱形状の図形を左右対称に2つ並置させた図形からなるものであり、我が国において特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され親しまれているというべき事情は認められないため、特定の称呼及び観念は生じない。

イ 引用商標

(ア)引用商標1

引用商標1は、別掲2のとおりの構成からなり、外周に輪郭線を有する菱形状図形の一部を二つ重ね合わせて構成された黒塗り多角形図形からなり、我が国において特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され親しまれているというべき事情は認められないため、特定の称呼及び観念は生じない。

(イ)引用商標2

引用商標2は、別掲3のとおりの構成からなり、上記(ア)のとおりの引用商標1と同一の図形(以下「図形部分」という。)の下に、「errea」の欧文字(以下「文字部分」という。)を配してなるところ、上部の図形部分と下部の文字部分とは、大きさなどが異なっており、重なることなく配置されていることからすると、それぞれが視覚上、分離して看取、把握されるものである。

そして、図形部分は、我が国において特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているという事情は認められないものであるから、これよりは直ちに特定の称呼及び観念は生じず、また、文字部分は、辞書等に載録された既成語ではなく、我が国において特定の意味合いを有する語として親しまれているという事情も見いだせず、特定の意味合いが生じない造語と認められるものである。

そうすると、図形部分と文字部分とは、これらを常に一体のものとみるべき観念上のつながりも見いだせないことからすれば、図形部分と文字部分とでは、それぞれ独立して、自他商品の識別標識としての機能を果たすものというべきである。

したがって、引用商標2は、上段の図形部分からは、特定の称呼及び観念を生じないものであり、下段の文字部分からは、「エレア」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。

ウ 本件商標と引用商標との類否

(ア)本件商標と引用商標1との類否

本件商標と引用商標1とは、それぞれ、上記ア及びイ(ア)のとおりの構成からなるところ、その主要な構成要素が、前者が太線で表された2つの菱形状図形であるのに対して、後者が、外周に輪郭線を有する黒塗り多角形図形であることから、その印象において顕著な差異を有する。

したがって、両商標は外観上、明確に区別し得るものである。

そして、本件商標及び引用商標1は、ともに特定の称呼及び観念は生じない。

そうすると、本件商標と引用商標1とは、称呼及び観念において比較できないとしても、外観において明確に区別でき、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

(イ)本件商標と引用商標2との類否

本件商標と引用商標2は、それぞれ、上記ア及びイ(イ)のとおりの構成からなるところ、本件商標と引用商標2の図形部分との比較においては、上記(ア)と同様に、その印象において顕著な差異を有するものであるから、本件商標と引用商標2の図形部分とは、称呼及び観念においては比較できないとしても、外観において明確に区別できるものである。

そうすると、本件商標と引用商標2は、外観、観念及び称呼等によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

エ 小括

したがって、本件商標の申立てに係る商品が引用商標の指定商品と同一又は類似であるとしても、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

(2)申立人の主張について

申立人は、引用商標はその取引者、需要者間に周知であり、このことは「履物」について、商品出所の混同のおそれを増幅させる可能性のある事情ということができるから、このような取引の実情を参酌するならば、両商標に係る商品出所の混同のおそれは、一層増幅させられるものである旨主張する。

しかしながら、申立人がプロスポーツチームにユニフォームを提供し(甲6~甲9。いずれも欧文字表記)、我が国でも流通している(甲10)事実は認められるものの、引用商標を使用した申立人の業務に係る商品の売上高、市場シェア、広告宣伝の回数や費用等、その周知性を判断するための証拠は提出されていない。

そうすると、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者にどの程度認識されているかを評価することができないから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることができず、両商標に係る商品出所の混同のおそれが一層増幅させられるという事情は認められない。

したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。

(3)むすび

以上のとおり、本件商標は、申立てに係る商品について、商標法第4条第1項第11号に該当するとはいえず、他にその登録が同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。