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Trademark Appeal Case

周知商号と同一商標の登録

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900201
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6951026号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6951026号商標(以下「本件商標」という。)は、「ハウセルジャパン」の文字を標準文字で表してなり、令和6年12月20日に登録出願、第35類「ゴム製の管継ぎ手・ゴム製のガスケット・ゴム製のパッキング・ゴム製のオーリングの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、令和7年7月14日に登録査定され、同月24日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する商標は、以下の1ないし5のとおりの商標であり、いずれも、申立人が「ゴム製・樹脂製又は金属製の管継ぎ手、ガスケット、パッキング、オーリング等をはじめとした各種シーリング部材の卸売」について使用し、我が国の需要者の間に広く認識されていると主張するものである。

1 別掲1の構成からなる商標(以下「引用商標1」という。)

2 別掲2の構成からなる商標(以下「引用商標2」という。)

3 「ハウセルジャパン」の文字からなる商標(以下「引用商標3」という。)

4 「株式会社ハウセルジャパン」の文字からなる商標(以下「引用商標4」という。)

5 「HAUSERU JAPAN」の文字からなる商標(以下「引用商標5」という。)

なお、以下、引用商標1ないし引用商標5をまとめていうときは、「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するものではなく、同法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。)を提出した。

なお、証拠を表示する場合は、以下、「甲第1号証」を「甲1」のように省略して記載し、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略して記載する。

1 申立人及び引用商標について

申立人は、その商号を「株式会社ハウセルジャパン」とし、主に、自動車や半導体製造装置等の部品となる、ゴム製・樹脂製・金属製等の素材からなる管継ぎ手、ガスケット、パッキング、オーリング等をはじめとした各種シーリング部材の卸売に係る役務を主な事業とする企業であり、平成元年4月28日に申立人が設立されて以来現在に至るまで、上記各種シーリング部材の卸売に係る役務の事業を継続して行っている(甲4の1、甲5の1、甲5の2、甲5の5、甲5の6~5の9、甲7)。

また、令和5年8月決算期及び令和6年8月決算期における売上高はそれぞれ順に42億円、23.9億円(甲5の5)に上り、令和7年8月決算期における売上高については、申立人において集計したところ約35億円であり(甲7)、上記事業における申立人の顧客取引先の数は、令和7年8月決算期(令和6年9月~令和7年8月)における取引実績としては、大手企業及び上場企業を含む約35事業者に上っている(甲5の1-10、甲5の2、甲5の5、甲7)。

さらに、帝国データバンクの提供する申立人会社情報によれば、申立人は、令和5年8月決算期及び令和6年8月決算期の実績において、「生ゴム製品卸売」という業種カテゴリにおいて、全国855社中91位の売上高があり、広く「生ゴム製品卸売」の業種において上位にランクインしている(甲5の5)。

そして、申立人コーポレートサイト(甲5の1)、会社案内パンフレット(甲5の2)、ノベルティグッズ(甲5の3、甲5の4)などには、申立人名称(商号)に相当する「株式会社ハウセルジャパン」並びに申立人の略称に当たる「ハウセルジャパン」のアルファベット表記である「HAUSERU JAPAN」の文字要素を含む引用商標が表示されており、申立人が、本件商標の出願日前から現在に至るまで、上記の宣伝広告媒体を利用して、上記事業(各種シーリング部材の卸売)に係る営業活動を行ってきたことが把握できる。

また、本件商標権者は、平成元年4月28日に申立人を設立した創業者であり、同申立人会社の設立以来、令和6年2月29日に至るまで、申立人の代表取締役及び取締役の地位にあった者である(甲4の1)。そして、本件商標権者は、令和6年2月29日に同役職を辞任した後においては、令和6年3月1日から令和7年9月現在に至るまで、申立人顧問の職に就いている者であり、その職務内容は、主に申立人取引先への製品の拡販及びそれに付随するアドバイスを主とするものである(甲4の2、甲4の4、甲4の5)。

さらに、本件商標権者の妻も、上記申立人会社の設立以来、令和6年2月29日に至るまで申立人の取締役の地位にあった者であり、本件商標権者同様に、令和6年2月29日に同役職を辞任した後において、令和6年3月1日から令和7年9月現在に至るまで、申立人顧問の役職にある者であり、その職務内容も、本件商標権者の上記職務内容と同様である(甲4の1、甲4の3、甲4の4、甲4の6)。

なお、本件商標権者及びその妻は、申立人現代表取締役の実父及び実母であり、 申立人は、本件商標権者及びその妻が令和6年2月29日付でそれぞれ上記役員の職を退くに当たり、両者に対し退職金を支給することを決定し(甲4の4)、令和6年9月20日に、当該退職金全額の支払いを完了した(甲4の17)。

申立人は、本件商標権者及びその妻が申立人の顧問の職に就いた令和6年3月1日から令和7年9月現在まで、両氏に顧問料を毎月支払っており(甲4の5、甲4の6)、令和6年12月8日に、申立人代表者は、本件商標権者から、上記顧問料の額では本件商標権者及びその妻の生活費を賄えない、老後の生活資金に困窮するなどといった個人的な理由を挙げた顧問料引き上げの要請を内容とする申し出を受けた(甲4の15)。

そして、申立人現代表取締役は、令和6年12月10日に、本件商標権者に顧問料の引き上げには応じられない旨をその理由と共に伝えるとともに、さらに同年12月19日に、上記顧問料引き上げに関する申し出について、申立人社内会議の場で、改めて協議を行った上で、申立人代表者から、本件商標権者に対し、その顧問職の職責について、会社として注意を行った(甲4の15)。

その後、申立人から本件商標権者に対し上記顧問契約に係る契約違反の改善に関する要請及び注意がなされた令和6年12月19日直後に、申立人及び現申立役員を含む関係者に対し何ら告知することなく、本件商標権者は、申立人の商号略称に相当する「ハウセルジャパン」(本件商標)及びこれのアルファベット表記である「HAUSERU JAPAN」について上記商標登録出願を行い、設定登録を受けた。

そして、令和7年8月18日に、申立人代表取締役並びに本件商標権者の三者を交えた社内会議の場で、上記申立人代表取締役は、本件商標権者から、口頭で、『創業者である所以をもって、「ハウセルジャパン」及び「HAUSERU JAPAN」の商標登録を行った。』、『創業者にはその権利があり、現経営者の同意は不要であると認識している。』、『株式会社ハウセルジャパン(申立人)には、各商標の使用料として見合うだけの金銭あるいは商品券を支払ってもらいたい。』等と言う申し入れを受け、申立人は、当該申し入れを受けたことによりはじめて、本件商標権者が申立人に同意を得ることもなく無断で本件商標を含む上記2件の商標登録出願を行い、それぞれについて登録を受けていたことを知った(甲4の17)。

なお、申立人代表取締役は、会議を打ち切り、本登録異議申立てに至った。

2 商標法第4条第1項第7号について

上記によれば、そもそも、日々の生活費や老後の生活資金の捻出などに夫婦ともに困っていた本件商標権者が、申立人商号の略称に相当する本件商標につき商標登録がされていないことを把握した上で、申立人に告知することなく無断で、本件商標につき上記商標登録出願を行い、商標登録を受けた後、申立人に対し、現に、本件商標の使用料の名目で金銭等の支払いを求めている事実があるから、本件商標権者による本件出願の目的が、本件商標権者が申立人との金銭的な交渉において本件商標の登録の事実を自己の有利な交渉材料として利用し、不当な利益を得ることにあることは、論じるまでもなく明らかである。

また、これらの経緯を勘案すると、申立人に顧問料引き上げを拒否などされ、これに腹を立てた本件商標権者が、何とか申立人から金銭の支払いを受けるために、申立人に対し申立人使用の商標(申立人略称)につき使用料の名目で金銭等の支払いを求めることを企て、これを目的として本件出願を行ったことが強く推認される。そして、上述のとおり、本件商標権者は、実際に、本件商標につき設定登録がなされた後、申立人に対し本件商標の使用料の名目で金銭等の支払いを求めるに至ったものである(甲4の17)。

さらに付け加えると、上述のとおり、本件商標権者は、申立人の顧問の職に現に就いている者でもある。そうすると、申立人から当該顧問業務を受託した事務処理者である本件商標権者が、本件商標が未登録であったことを奇貨として、自己の利益を図る目的で本件商標登録出願を行い、設定登録後に申立人に対し金銭等の支払いを求める行為は、顧問の任務に背くものであり、極めて悪質の行為といえ、本件商標は、その出願経緯に照らし、著しく社会的妥当性を欠くものであり、本来であればその登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合に該当するものといえる。

以上のとおり、本件商標は、本件出願の目的ないし経緯に照らし、商標法第4条第1項第7号所定の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものである。

3 商標法第3条第1項柱書について

本件商標は、本件商標権者が、専ら、申立人との金銭的な交渉において本件商標の登録の事実を自己の有利な交渉材料として利用し、不当な利益を得る目的で、本件商標登録出願を行い、商標登録を受けたものであることから、その登録査定時において、本件商標権者において本件商標を使用する意思が無いことは明らかである。

加えて、本件商標を保有する本件商標権者は、申立人との契約上、本件商標権者は、申立人と同種の事業を営む場合等には、事前に、申立人に申請し、その書面による承諾を受けなければ、当該同種の事業を営むことができないことになっていることからすれば、本件商標は、その登録査定時において、本件商標権者において指定役務に係る業務につきその予定がなく、商標を使用する意思が無いものであったといえるものであるから、商標法第3条第1項柱書における「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に該当しないものであったといえる。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の規定に違反して登録されたものである。

4 商標法第4条第1項第10号について

本件商標と引用商標とは、「ハウセルジャパン」の称呼を共通にするものであるから、同一又は類似のものであるといえる。

そもそも、「株式会社ハウセルジャパン」は、申立人の商号に相当するものであるところ、会社の種別を意味する「株式会社」の文字を除いた「ハウセルジャパン」の文字部分(つまり申立人略称)が、需要者や取引者の注意を惹く要部であると評価できるものであるから、本件商標が、「ハウセルジャパン」又は「HAUSERU JAPAN」の文字を構成要素として含む引用商標と同一又は類似のものであることは明らかである。

また、本件商標に係る指定役務(上記小売等役務)は、申立人が提供する上記卸売役務と同一又は類似のものであることは明らかである。

さらに、上述のとおり、取引先事業者の数も約35事業者に上っており、申立人は、令和5年8月決算期及び令和6年8月決算期の実績として、「生ゴム製品卸売」という業種のカテゴリにおいて、売上高ランキングは全国855社中91位につけていることからすれば、本件商標の出願時である令和6年12月20日及び登録査定時である令和7年7月14日の時点において、申立人の商号は、大手メーカーをはじめとした事業者複数に広く認知されていた。

そして、申立人は、本件出願日前から現在にいたる長年にわたって、上記事業に係る各種シーリング部材の卸売の役務の提供に当たり、宣伝広告媒体として、引用商標が表示されている申立人コーポレートサイト(甲5の1)、会社案内パンフレット(甲5の2)及びノベルティグッズ(甲5の3、甲5の4)を利用又は配布して営業活動を行っている。

そうとすれば、本件商標の出願時及び登録査定時において、引用商標は、申立人における上記の各種シーリング部材の卸売役務の出所を表すものとして、半導体メーカーや自動車メーカー等の製造業者等の需要者多数の間で広く認識されていた。

なお、申立人が卸売商品として取り扱う上記各種シーリング部材需要者層は、大勢多数を構成する一般消費者ではなく、比較的数が少ない専門事業者であるという事情も考慮されるべきであって、これを踏まえると、引用商標の周知性は肯定されるべきである。

以上によれば、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る上記役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であって、その役務又はこれに類似する役務について使用をするものといえる。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。

5 商標法第4条第1項第19号について

本件商標が、申立人の業務に係る上記役務を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されている引用商標と同一又は類似の商標であることは、上記で述べたとおりである。

さらに、上記で述べたとおり、本件商標には、過去に申立人の代表取締役及び取締役を務めていた者であって現顧問の職に就く本件商標権者が、本件商標につき未登録であったことを奇貨として、申立人との金銭的な交渉において、本件商標の登録の事実をもって自己の有利な交渉材料として利用し、不当な利益を得ることを目的に本件商標登録出願及び登録がなされた経緯があるのであるから、本件商標には、不正の目的をもって使用するものといえる。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項19号でいう「他人の業務に係る役務を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的)をもって使用をするもの」に該当する。

第4 当審の判断

1 引用商標の周知著名性について

(1)申立人の提出した各甲号証及び主張によれば、以下の事実が認められる。

申立人は、平成元年に設立された、生ゴム・ゴム製品卸売業や、板ガラス卸売業を営む会社である(甲4の1、甲5の5)。

帝国データバンクのインターネットサイトによれば、申立人に係る、令和5年8月決算期及び同6年8月決算期における売上高は、それぞれ42億円及び23.9億円であり、申立人は、「生ゴム・ゴム製品卸売」の業種において、売上高ランキングの全国855社中、91位に位置している(甲5の5)。

また、申立人は、申立人の業務に係る役務について記載されている申立人のホームページやパンフレット、申立人が顧客に配布しているとするノベルティグッズ等に、引用商標を表示している(甲5の1ないし甲5の4)。

(2)上記(1)によれば、申立人は、平成元年の設立以降、生ゴム及びゴム製品の卸売等の役務を提供しており、引用商標を使用して、申立人の業務に係る役務についての広告宣伝を行っていることはうかがえる。

しかしながら、申立人の売上高や業界におけるランキングが上記(1)のとおり示されているとしても、提出された証拠によっては、申立人に係る引用商標を使用した役務について、同業他社と比較して、具体的にどの程度のシェアを占めているのかが明らかでなく、また、引用商標を使用した役務に係る広告宣伝の方法、範囲、回数を客観的に把握できる証拠の提出もない。

そうすると、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、我が国及び外国において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者に広く認識されているものとは認められない。

2 商標法第4条第1項第10号該当性について

上記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く知られていたと認めることはできないから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第19号該当性について

上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間で広く認識されていたものとは認められないものである。

そうすると、本件商標は、本件商標権者が引用商標の名声を毀損させることを認識し、あるいは、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものとはいえない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第7号該当性について

(1)商標法第4条第1項第7号の裁判例

商標法第4条第1項第7号に該当する商標とは、「商標法第4条第1項第7号でいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(ア)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(イ)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会的公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(ウ)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(エ)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(オ)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。」(平成17年(行ケ)第10349号判決。)とされている。

そして、当事者間における権利取得が争点である商標の商標法第4条第1項第7号の適用について、「商標法は、出願人からされた商標登録出願について、当該商標について特定の権利利益を有する者との関係ごとに、類型を分けて、商標登録を受けることができない要件を、法4条各号で個別的具体的に定めているから、このことに照らすならば、当該出願が商標登録を受けるべきでない者からされたか否かについては、特段の事情がない限り当該各号の該当性の有無によって判断されるべきであるといえる。」(平成19年(行ケ)第10391号判決)とされている。

さらに、「当該出願人が本来商標登録を受けるべき者であるか否かを判断するに際して、先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨などからすれば、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである。そして、特段の事情があるか否かの判断に当たっては、出願人と、本来商標登録を受けるべきと主張する者との関係を検討して、例えば、本来商標登録を受けるべきであると主張する者が、自らすみやかに出願することが可能であったにもかかわらず、出願を怠っていたような場合や、契約等によって他者からの登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず、適切な措置を怠っていたような場合は、出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、そのような場合にまで「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない。」(平成19年(行ケ)第10391号判決)とされている。

(2)上記判示に照らし、本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性を判断すると、以下のとおりである。

ア 本件商標は、上記第1のとおり、「ハウセルジャパン」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字等からなるものではない。

イ そして、本件商標は、これをその指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものともいえず、さらに、他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されているものではないし、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。

ウ 申立人は、申立人から当該顧問業務を受託した本件商標権者が、本件商標が未登録であったことを奇貨として、自己の利益を図る目的で本件商標登録出願を行い、その出願経緯に照らし、社会的妥当性を欠くものである旨主張する。

しかしながら、申立人の現代表取締役は、本件商標権者が代表取締役を辞任した、本件商標の登録出願日前である令和6年2月29日において、株式会社ハウセルジャパンの代表取締役に就任していた(甲4の1、甲4の4)ところ、本件商標の登録出願日前に、引用商標を登録出願する機会は十分にあったというべきであって、自ら登録出願しなかった責めを本件商標権者に求めるべき事情を見いだすこともできない。

そうすると、本件のような場合においては、あくまでも、当事者間の私的な問題として解決すべきであるから、本件商標は、商標法の先願登録主義を上回るような、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあるということはできない。

エ なお、申立人は、金銭的要求の主張及び証拠を提出しているが、それを客観的に立証する証拠の提出はなく、ほかに出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると認めるに足りる具体的事実も見いだせない。

オ その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる証拠の提出はない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

5 商標法第3条第1項柱書の要件を具備しているかについて

商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標、あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(知財高裁平成24年(行ケ)第10019号同年5月31日判決)。

そうすると、本件商標権者が、本件商標の登録査定時において、本件商標を自己の業務に係る指定役務に現に使用していなくても、将来においてその使用をする意思があれば、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しているといえる。

なお、申立人は、本件商標権者は、申立人との契約上、本件商標権者は、申立人と同種の事業を営む場合等には、事前に、申立人に申請し、その書面による承諾を受けなければ、当該同種の事業を営むことができないことになっているため、本件商標を使用する意思が無いことは明らかである旨主張する。

しかしながら、申立人の当該主張及び同人の提出に係る証拠によっては、本件商標権者が、その登録査定時において、将来にわたって、本件商標をその指定役務について使用する意思がなかったとまではいい難く、他にこれを認めるに足りる事情も見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。

6 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものではなく、かつ、同法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第19号のいずれにも該当するものでないから、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものとはいえず、ほかに同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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