Trademark Appeal Case
著名商標「VOGUE」と結合商標
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年異議第92021号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4165935号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成7年11月13日に登録出願され、後掲に示すとおり「VICTORIA VOGUE」の欧文字を表してなり、第21類「パフ,化粧用スポンジ,クレンジングパッド,化粧用綿棒及びその他の化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」を指定商品として、平成10年7月10日に設定の登録がされたものである。
2 登録異議の申立ての理由
本件登録異議申立人(以下、「申立人」という。)は、異議申立ての理由を次のように述べ、甲第1号証乃至甲第68号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)昭和36年10月23日に登録出願され、「VOGUE」の文字を横書きしてなり、第26類「印刷物、ただし、この商標が特定の著作物の表題(題号)として使用される場合を除く」を指定商品として、昭和39年10月9日に設定登録された登録第655209号商標(以下、「引用商標」という。)(後掲参照)は、申立人の業務に係る「ファッション雑誌」を表示する商標として、本件商標の登録出願時前には広く需要者間に認識され、著名になっているところ、本件商標は、その構成中に「VOGUE」の文字を含むものであるから、本件商標をその指定商品について使用した場合、申立人又は申立人と何らかの関連を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について誤認、混同を生じさせるおそれがある。
(2)引用商標は、ザ・コンド・ナスト・パブリケーションズ・インコーポレーテッド(以下、「コンド・ナスト社」という。)並びにアドバンス・マガジン・パブリッシャーズ・インコーポレーテッド(以下、「アドバンス社」という。)の所有を経て、現在、申立人が所有するものである。
コンド・ナスト社は、1909年(明治42年)に「VOGUE」誌の発行を引き継いで以来、今日に至るまでのほぼ一世紀にも及ぶ永年月に亘って、継続して「VOGUE」誌を発行している世界的に名の知られた出版社である。コンド・ナスト社は、数々の名編集長を輩出し、「VOGUE」誌を世界的な著名な高級ファッション誌に育て上げるとともに、わが国においては、昭和36年10月23日に引用商標を出願し、昭和39年10月9日に商標登録を受けた当初の商標権者である。
アドバンス社は、1988(昭和63)年9月30日に、コンド・ナスト社及び他二社を吸収合併し、引用商標をはじめとしてコンド・ナスト社が所有する多くの商標権を一般承継したものである。但し、コンド・ナスト社は消滅したわけはでなく、アドバンス社の一部門として現在も存続しており、「VOGUE」誌は、引き続きコンド・ナスト社の名前で発行されている。
従って、「VOGUE」誌は、現在においても、依然としてコンド・ナスト社が発行する雑誌であるという事実は何等変わるものではない。申立人は、アドバンス社の関連会社であって、1997(平成9)年6月9日に、アドバンス社から引用商標ほか「VOGUE」関連商標を多数譲り受け、それらの商標権を管理している。
(3)引用商標を題号とする「VOGUE」誌は、1892年(明治29年)にアメリカで創刊されて以来、現在に至るまで世界各国において継続的に使用された結果、商品「服飾雑誌」に関し世界的な著名商標として世界各国において認識され、「VOGUE」といえば世界的名声と権威を有するファッション雑誌を指すに至っている。また、「VOGUE」誌は、アメリカ版、フランス版をはじめとして、現在実に10カ国において、各国版が発行されており、名実共に全世界的ファッション雑誌であり、近々我が国においても、「VOGUE」日本版が発行される予定である。
引用商標は、既に22件の防護標章が登録されており(とりわけ、防護第11号の指定商品(旧第21類)の中には、本件商標の指定商品である「パフ,化粧用スポンジ,クレンジングパッド,化粧用綿棒及び化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」が含まれている。)、この間の一連のいわゆる「VOGUE」関連判決に照らし、引用商標の著名性については、裁判所における顕著な事実であると思料される。
引用商標「VOGUE」誌に関しては、各種の新聞、雑誌、事典及び用語辞典などにおいて取り上げられ、評されている。
以上により、「VOGUE」商標(引用商標)がわが国において、著名性を有していることは最早疑う余地のないものである。
(4)本件商標は、「VICTORIA VOGUE」の欧文字を横書きしてなる構成であり、その構成中に著名商標「VOGUE」の文字を顕著に有するものである。
従って、取引者・需要者の注意が集中する本件商標の「VOGUE」の部分から「ヴォーグ」の称呼が生ずると共に、世界的に著名なファッション雑誌「VOGUE」誌が想起されることは明らかである。
本件商標と引用商標の指定商品についてみると、本件商標の指定商品は、「パフ,化粧用スポンジ,クレンジングパッド,化粧用綿棒及び化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」であるのに対して、引用商標の指定商品は「印刷物 ただし、この商標が特定の著作物の表題(題号)として使用される場合を除く」であって、本件商標の指定商品である「化粧用具」は、ファッション商品そのものであり、ファッション雑誌「VOGUE」とは密接な関係を有するものである。即ち、本件商標の指定商品である「化粧用具」の購買者層は、ファッションに関心のある女性層が中心であり、「ファッション雑誌」の購買者層とクロスオーバーするものである。したがって、本件商標に係る商品の需要者は、世界第一のファッション雑誌である「VOGUE」誌の著名性を十分に認識していると考えるのが妥当である。
そうであれば、「VOGUE」の文字を含む本件商標をその指定商品に使用した場合、それに接する取引者、需要者は、「VOGUE」の文字に着目し、該商品があたかも世界的に著名なファッション雑誌「VOGUE」の発行主体又はこれと何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあることは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は取り消されるべきである。
3 本件商標の取消理由
登録異議の申立があった結果、平成11年4月6日付取消理由通知書をもって、商標権者に対し期間を指定して意見を述べる機会を与えつつ示した本件商標の登録の取消理由は、次のとおりである。
記
本件商標は、「VICTORIA VOGUE」の文字を書してなり、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品とするものであるところ、登録異議申立人 コンド・ナスト・アジア・パシフィック・インコーポレイテッド(以下、「申立人」という。)の提出に係る甲各号証によれば、申立人の使用に係る「VOGUE」の商標は、申立人の業務に係るファッション雑誌の題号として本件商標の商標登録出願前から取引者・需要者の間において広く知られていたものであることが認められる。
しかして、「VICTORIA」と「VOGUE」の文字との組合せよりなる本件商標からは、全体として特定の意味合いを表現し得る語義的一体性も認められない。
そして、本件商標の指定商品はいずれもファッション関連の商品であり、申立人の業務に係る雑誌の掲載内容とも密接な関連を有する商品といえるものである。
そうとすれば、商標権者が本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者・需要者は、著名な雑誌の商標である「VOGUE」の文字に注意を惹かれ、申立人又は申立人と何等かの関連を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。
4 商標権者の意見
上記取消理由の通知に対し、平成11年8月23日付意見書をもって述べる商標権者の意見は次のとおりである。
(1)本件商標は、その構成する語の有する意味のみを考慮した場合には、全体として特定の意味合いを生ずるとは考えられない可能性があることは商標権者においても認めるところであるが、本件商標「VICTORIA VOGUE」は、本件商標権者たる「ヴィクトリア ヴォーグ インコーポレーテッド」を指称する所謂ハウスマークとして機能する商標であり、本件商標の一体性を判断するに際しては、この点は十分に考慮されて然るべきと思料する。因みに、本件商標権者はアメリカ合衆国ペンシルヴァニアに所在する化粧用具の製造を主たる業務とする会社であり、1934年(昭和9年)に化粧用パフの製造を開始して以来、様々な企業努力の末、今日では化粧用具の分野において世界でもトップクラスの企業に成長し、その売上高も年々増加の一途をたどっている会社であるが、このような会社を指称するハウスマークにあっては、それを構成する一部の文字に注意を惹かれることはなく、「VICTORIA VOGUE」という全体を以てのみ認識されると考えられるものである。
(2)申立人は、「VOGUE」の文字を含む商標がファッション雑誌「VOGUE」を想起・観念させることから、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるとされた事例を挙げているが、いずれも、ハウスマークではない商標、いわゆる、ペットマークとして使用される「VOGUE」の文字を含む商標についてのもの、又は、指定商品が共通するところから混同を生ずるおそれがあるとされた事例であって、これらの各事件は本件とは事案を異にすると考えられるべきものである。
本件商標は、商標権者を指称する商標として機能するハウスマークであり、アメリカ合衆国において第21類「化粧用具」を指定商品として登録されている状況にある。一方、引用商標に対応する商標「VOGUE」も登録されている。このように、アメリカ合衆国においては、本件商標に対応する商標と引用商標に対応する商標とが併存して登録されている状況にあり、このことはそれぞれの登録に係る商品を考慮した上で、両商標が混同を生ずる程類似するものではないと判断されたからであると考えられるところであり、両商標がその本国として位置づけられるアメリカ合衆国において併存して登録されている状況は、本件商標が引用商標と商品の出所について混同を生ずるおそれがあるか否かの判断に際して、最も尊重されなければならない事実であると思われる。
また、アメリカ合衆国以外に、イスラエルやパナマにおいても両商標は併存している。さらに、台湾においては、本件商標に対応する商標「VICTORIA VOGUE」に対して、「VOGUE」商標と混同を生ずるおそれがある旨の異議申立がなされたが、その登録は維持されている状況にある。これらを鑑みると、申立人の引用商標が印刷物について著名であるとしても、本件商標は申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはないと考えるのが相当と思料する。
特に、世界一市場化した今日において、ある権利者のハウスマークは全世界において登録され、使用できて初めて商標としての機能を果たし、それにより世界的流通秩序の維持が図られることをも考慮すると、本件商標権者のハウスマークたる「VICTORIA VOGUE」は、申立人の業務に係る商品と混同を生ずるとして、その登録がわが国においてのみ認められないとするのは妥当ではなく、本件商標の登録は維持されて然るべきと思料する。
(3)著名商標にはその所有者の努力により形成された多大な業務上の信用が化体しているため、十分に保護されなければならないが、それはひとえに世界的な商品流通秩序維持の観点からであり、商品流通秩序を阻害することのない商標についてまでその登録を阻止できるとするのは、著名商標に対する過度な保護といわざるを得ない。
従って、引用商標に対するフリーライド的要素は全くなく、しかも商品流通秩序を阻害することのない本件商標について、引用商標と混同を生ずるおそれがあることを理由にその登録が取り消されるとするのは妥当ではなく、寧ろ世界的な商品流通秩序維持の観点からは、前述の諸外国と同様わが国における本件商標についての登録は維持されて然るべきと思料する。
本件商標は、全体として本件商標権者の「ハウスマーク」として機能する商標であり、本件商標がその指定商品に使用されたとしても、需要者・取引者をして「VOGUE」誌を想起・観念させることはないと考えられるものである。
従って、本件商標は申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標ではなく、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
5 当審の判断
本件商標についてした上記取消理由は妥当であって、その認定の誤りを述べる商標権者の意見は、次の理由によりいずれも採用することができない。
(1)商標権者は、本件商標は商標権者たる「ヴィクトリア ヴォーグ インコーポレーテッド」を指称する所謂ハウスマークとして機能する商標であるから、常に一体のものとして把握されるべきである旨述べている。
しかしながら、本件商標が全体として特定の事物、事柄を表現するものとして親しまれた熟語的意味合いの語とはいえないことさきの取消理由に示したとおりであって、「VICTORIA」と「VOGUE」との両文字間の語義的一体性は認められない。
そして、商標権者の主張にも拘わらず、本件商標がその指定商品について使用され、商標権者のいわゆる代表的出所標識として機能を果たすというべき「ハウスマーク」としてわが国の取引者、需要者間において周知され、認識されているというような事情はなく、また、該事実を客観的に認め得る証左は見出せない。
したがって、本件商標のハウスマークとしての機能及びその一体性は証明されないから、この点を述べる商標権者の意見は妥当でなく、採用の限りでない。
(2)商標権者は、本件商標・引用商標共に米国において第21類「化粧用具」を指定商品として登録されており、また、他の諸外国においても併存登録されているから、この状況は本件審理において十分考慮すべきである旨述べている。
しかしながら、諸外国とわが国とでは商標保護に関する事情は自ずと異なり、法制上も相違するから、本件商標・引用商標が各国において併存するからといって直ちにわが国において各国同様に取り扱うことはできない。すなわち、本件商標の登録の適否は、専らわが国商標法のもとにおいて判断されるべきものであって、わが国の需要者一般の注意力・認識の程度等を基準に取引の実情に照らし具体的に判断すべきものと解するのが相当である。
したがって、本件審理において諸外国の併存事情に拘束されるべき理由はないから、この点を述べる商標権者の意見は妥当でなく、採用の限りでない。
(3)商標権者は、本件商標には引用商標に対するフリーライド的要素は全くなく商品流通秩序を阻害することはないから、これを取り消すことは著名商標に対する過度な保護である旨述べている。
しかしながら、その主張は主観論にすぎず、また、たとえ本件商標について引用商標へのフリーライドの意思が存在しないものとしても、それら事情に拘わりなく、本件においては需要者の認識を基準に混同惹起の可能性等の判断が求められること前記(2)と同様であって、かかる事情を考慮すべき余地はない。
したがって、フリーライドでない故に流通秩序を阻害しないということはできないから、この点を述べる商標権者の意見は妥当でなく、採用の限りでない。
その他、商標権者の主張を認めるに足りる証左はない。
(4)以上のとおり、本件商標は、これをその指定商品について使用した場合、取引者・需要者は他人(申立人会社ないしはその関連事業者)の業務に係る商品であるかの如く商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ないから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものというべく、その登録は、商標法第43条の3第2項により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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