Trademark Appeal Case
ソフトシンセの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成9年異議第90721号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | other |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4050694号商標(以下、「本件商標」という。)は、別紙に示す構成よりなり、平成7年12月26日に登録出願、第15類「ミュージックシンセサイザー,MIDI用シンセサイザー用プログラムを記憶させた電子回路,シンセサイザー機能を持ったMIDI用音源装置,これらの付属品」を指定商品として、平成9年8月29日に設定の登録がされたものである。
2 本件商標に対する取消理由
本件登録異議の申立てがあった結果、本件商標を商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものとして商標権者に対して通知した取消理由は、つぎのとおりである。
〈取消理由〉
本件商標は、「Soft Synthesizer」の欧文字を横書きし、同文字中の大文字「S」の2字肩口に、小さく縞状に四角形図形を重ねるように表してなるものである。しかして、該構成中の縞状の四角形図形は装飾的・付記的なものとして看取されるに止まり、それ自体は自他商品の識別標識として機能する部分とみることはできない。
ところで、本件商標の指定商品とする電子楽器等を取り扱う業界においては、コンピュータから受け取った演奏情報を鳴らすための音源モジュールがなくても、コンピュータ本体のみで複数の音色が演奏できるソフトウエア乃至同ソフトウエアを組み込んだ電子楽器を「ソフトウエア・シンセサイザー」(SOFTWEAR SYNTHESIZER)と称していることが認められ、また、この語を略して、「ソフトシンセサイザ(ー)」、「ソフトウエア・シンセ」又は「ソフトシンセ」等と称して、取引上普通に使用している事実が認められる。
そうすると、本件商標をその指定商品中の「シンセサイザー用ソフトウエアを記憶させた電子回路、同電子回路を組み込んだシンセサイザ・MIDI用音源装置」について使用するときは、単に商品の用途、品質及び機能を表示するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を有しないものであるから、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、これを前記機能を備えた商品以外の商品について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。
3 商標権者の意見
上記2の取消理由通知に対して、商標権者は、要旨つぎのように意見を述べ、証拠として商標権者の取扱いに係る製品案内(平成7年10,12月発行の「YAMAHA NEWS RELEASE」)、新聞・雑誌記事(平成7,8年発行)及び商標権者に係るインターネットホームページ掲載情報(1998.7.1付)を提出している。
(1)本件商標は、全体として特定の意味合いを看取し得ない一種の造語とも言えるものであって、該文字(「Soft Synthesizer」が具体的商品の用途、品質及び機能を直接表示してはおらず、かつ、このような一般的用途用法はこの種業界においても皆無であり、単に抽象的概念を表現するに止まるものである。したがって、本件商標は、「S」の2字肩口の縞状の四角形図形と相俟って特殊な態様からなる文字商標として受け取られるから、自他商品の識別機能を具備するものである。
(2)「Soft Synthesizer」、「ソフトシンセサイザ」の文字がこの種商品の需要者取引者間に用途、品質及び機能表示として世上一般に普通に使用されてはいない。この点、申立人提出の証拠資料に、「ソフトシンセ」、「ソフトシンセサイザ(ー)」、「ソフトウエアシンセ」なる記載があることは認められるが、証拠としては少なく、これのみをもって商品の用途、品質及び機能を直接表示するというよりは、商標的使用とも言えるものであって、これをもって「シンセサイザー用ソフトウエアを記憶させた電子回路、同電子回路を組み込んだシンセサイザ・MIDI用音源装置」につき、本件商標がその用途、品質及び機能を直接表示しているとは即断できないから、「普通に使用されている」ことの証明にはならない。また、このように3種類の表現が存在すること自体が「音源を持たなくてもコンピュータ本体のみで音楽を鳴らせるソフトウエア」を指す用語が定着していないことを如実に物語っている。
(3)本件商標(「Soft Synthesizer」)は、商標権者(「ヤマハ株式会社」)が1995年10月にパソコンを利用してカラオケが楽しめるアプリケーションソフトウエア「歌楽」の発売を発表したときに使用を開始した商標であり、申立人が提出した各証拠物件は、これ以後のものである。この点、提出に係る製品案内(「YAMAHA NEWS RELEASE」)及び当時の新聞・雑誌記事より明らかであり、また、商標権者に係るインターネットホームページにもその旨掲載されている。
以上の(1)乃至(3)の理由により、本件商標は自他商品の識別機能を具備するものであるから、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の規定には該当しない。
4 当審の判断
本件商標は、その構成別紙に示すとおり、「Soft Synthesizer」の欧文字を横書きし、同文字中の大文字「S」の2字肩口にそれぞれ小さく縞状の四角形図形を同大文字に重ねるように表してなるものである。そして、その指定商品を第15類「ミュージックシンセサイザー,MIDI用シンセサイザー用プログラムを記憶させた電子回路,シンセサイザー機能を持ったMIDI用音源装置,これらの付属品」とするものである。
ところで、本件商標にあって、二つの縞状の四角形図形は装飾的・付記的なものとして看取されるに止まり、それ自体が単独に自他商品の識別標識として機能し得る部分とはいい難いものであるから、本件商標は、専ら「Soft Synthesizer」の欧文字部分をもって、取引に資されるものといわなければならない。そして、「Soft Synthesizer」の文字は、電子楽器又は電子音楽用具に必須の電子媒体である「ソフトウエア」(「Softwear」)の略語と認められる「Soft」の文字(語)と電子楽器それ自体を表す「Synthesizer」の各文字(語)との結合よりなるものと容易に理解されるといえるものである。
しかして、本件商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとの理由により、その登録を取り消すべきものとした先の取消理由(上記2)は妥当なものであって、これについて述べる商標権者の意見は、以下の理由により、採用することができない。
(1)商標権者は、本件商標は全体として特定の意味合いを看取し得ない一種の造語であり、具体的商品の用途、品質及び機能を直接表示するものでなく、また、このような一般的用途用法はこの種業界においても皆無である旨述べているが、異議申立人提出の甲第5号証乃至甲第12号証及び資料(電子音楽に関わる「Computer Music Magazine」,「DTMマガジン」,「PCmusic」,「ミュージックトレード」,「Keyboard magazine」等の各種雑誌記事)によれば、▲1▼近時、パソコン(パーソナルコンピュータ)の高性能化・高速化により、音源モジュールがなくても、コンピュータのCPUパワーによって、サウンドを鳴らすことが可能となり、単にソウトウエアを購入しインストールするだけで、音源モジュールと同等のサウンドを作れるようになったこと、▲2▼本件商標の登録時(平成9年8月)前より、すでに商標権者を含む数社のメーカーがこの電子音楽機器の開発・製造を手がけていたこと、▲3▼本件商標の登録査定時、この電子音楽機器は、一般に、「ソフトウエア・シンセサイザ(ー)」(SOFTWEAR SYNTHESIZER)と呼称され、或いはその略語又は略記として「ソフトシンセサイザ(ー)」、「ソフトウエア・シンセ」又は「ソフトシンセ」等と呼称されていたこと等の事実は、先の取消理由において認定したとおり、平成8,9年当時の電子楽器業界の実情を示すものといえるから、この実情を無視し或いは申立人提出の書証の存在を軽視して述べる商標権者の主張は妥当でなく、採用することができない。
(2)商標権者は、本件商標は商標権者自らが独自に命名し最初に使用した名称である旨述べているが、本件商標からは、電子楽器又は電子音楽用具に必須の電子媒体である「ソフトウエア」(「Softwear」)の略語と認められる「Soft」の文字(語)と電子楽器それ自体を表す「Synthesizer」の各文字(語)との結合よりなるものと容易に理解されるものであること前記のとおりである。そして、前記事情に照らしてみるに、「ソフトウエア・シンセサイザ(ー)」(SOFTWEAR SYNTHESIZER)、「ソフトシンセサイザ(ー)」又は「ソフトウエア・シンセ」ないしは「ソフトシンセ」等の用語は、従来の音源モジュールを用いることなく、ソフトウエア方式によりパソコン自体から音楽を鳴らすことを可能にした機種のものを指す点において、該製品の技術特性を端的に示す電子楽器用語の一つというべきものであって、該技術を搭載した電子楽器又はその技術特性を示すものとして当業者間において通用していたものというべきであるから、かかる用語が特定事業者の取り扱いに係る特定商品の商標(自他商品の識別標識)として機能していたとみるのは困難であって、その使用をもって直ちに本件商標が登録要件を備えたものということはできない。その他、本件商標の独創性又は先使用に関して述べる商標権者の主張は、客観性を欠くものであって採用の限りでない。
(3)上記(1)、(2)に述べたとおり、本件商標は、「シンセサイザー用ソフトウエアを記憶させた電子回路、同電子回路を組み込んだシンセサイザ・MIDI用音源装置」の用途、品質又は機能を表示するものであって、商品の出所を示す識別標識とは認識し得ないものであり、かつ、これを指定商品中の前記機能を備えた商品以外の商品について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
以上によれば、本件商標の登録は、前記各法条の規定に違反してされたものといわざるを得ないから、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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