Trademark Appeal Case
商標法改正の遡及適用
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成9年異議第90791号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | other |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4041214号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙に示すとおり「Powerworm」の欧文字を横書きしてなり、平成5年11月19日に登録出願され、商品の区分第28類「擬餌」を指定商品として、同9年8月8日に設定登録されたものである。
2 本件商標の取消理由
登録異議の申立てがあった結果、平成10年7月21日付取消理由通知書において、商標権者に対して示した、本件商標の取消理由はつぎのとおりである。
〈取消理由(要旨)〉
本件商標は、「Powerworm」の文字よりなり、「擬餌」を指定商品とするものである。
ところで、アメリカ合衆国在の「バークレイ インコーポレーテッド」(以下「申立人」という。)は1989年より魚の好む強いにおいと味の飼養刺激剤を含む軟質プラスチック材の「擬餌」に「POWER WORM」の商標を特異な宣伝・広告などにより使用した結果、同商標は、本件商標の登録出願時までには、アメリカ合衆国の需要者間に広く認識され、著名になっていたと認められる。本件商標は、申立人の使用するこの著名な商標と綴り字を同一にするものである。また、商標権者は、1993年7月頃米国ラスベガスで開催された同国釣り具製造組合主催の見本市に同会社社員2名を送り、申立人より「POWER WORM」の「擬餌」について説明を受けていること、その後、申立人が宣伝・広告に用いた説明図に酷似した説明図とともに「POWER WORM」、「パワーワーム」の商標を商品カタログに掲載するなどして指定商品の宣伝・広告を行っていることよりすれば、本件商標と申立人の前記商標との綴り字が偶然一致したとは到底認められず、本件商標を不正の日的で使用するものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものと認める。
3 商標権者の意見
上記の取消理由通知に対して商標権者は、意見書において本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当せず、その登録を維持すべきである旨主張し、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第42号証を提出している。
商標法第4条第1項第19号の規定は、平成8年法律第68号で制定されたものであり、施行日は平成9年4月1日である。そして、この施行日は本件商標の出願日(平成5年11月18日)よりも遅いものである。したがって、新たに制定された法律がその制定前の事実にさかのぼって適用されることがないという法律不遡及の原則に基づき、本件商標には同号の規定は適用されないものである。
また、申立人の「POWERWORM」の商標が、米国において著名であると、何を根拠に判断したのかが全く明示されてない。例えば、申立人が提出した甲号証中、第何号証を根拠に著名であると判断されたのか、又は貴審判部の独自の調査に基づいて判断したのかが全く不明であり、何等具体的根拠が示されておらず、商標権者には取消理由通知に対し意見の述べようがないものである。
そこで、申立人が平成9年12月24日付で提出した「商標登録異議申立書」及び平成10年3月23日付で提出した「手続補正書」に対し、以下のとおり反論する。
(1)周知性について
▲1▼スポーツ用品小売業者向けに米国で発行されている「THE SPORTING GOODS DEALER」1991年6月号の抄写(甲第4号証)では、全米小売業者によるスポーツ用品製造業者ランキング等について述べられており、ここでは申立人の名前が製造業者名として取り上げられているが、「POWERWORM」の商標とは全く無関係であり、「POWERWORM」の商標の周知著名性を立証するものではない。
▲2▼申立人の代表者「トム・ベデル」(以下、「申立人代表者」という。)が署名した宣誓供述書(甲第3号証)は、その内容が申立人代表者の一方的な主張にすぎず、その根拠は伝聞証拠と社内資料等からなり、客観的事実は不明であるから証拠能力を有しないものである。
ア 申立人代表者は、「この製品は、多大な費用をかけて開発され、独自の飼養刺激剤を有する軟質プラスチック材が、ルアーを成形するのに使用されるプラスチック全体に均一に分散されていることを特徴とする。申立人が使用する有用材質は、POWER WORM餌の断面図を有し、上記の均一分布によって、その断面図にはシェーディングがでる」と主張し、また「1989年以来、米国および海外の主導的スポーツフィッシング雑誌に、「POWER BAITとPOWER WORM製品の広告を掲載し続けている」と主張するが、その根拠である甲第3号証の1の1ないし4は、雑誌に掲載された広告のようであるが、雑誌の表紙及び奥付が不添付であるから、雑誌名や発行日を示す客観的事実は不明である。
イ 申立人代表者は、「1988年から1995年の期間にわたって、申立人は、1,000万ドルを越える『POWER WORM』の売り上げ高のための広告に1,000万ドル以上を費やした。『POWER BAIT』ブランドのルアー売り上げ高は、同じ期間で、1億250万ドルを越えている。1989年から1992年の広告の推測“到達度”は購読予約数に基づくと、3億5100万世帯数であった。われわれは、日本国内の受取人による予約者の正確な数も追跡している」と主張しているが、その根拠である甲第3号証の3の1ないし7には、上記売上高、広告費等を示す資料は何等提示されていないものである。
商標権者の調査によれば、1993年当時「POWER WORM」の商標は、北米以外には宣伝・広告されておらず、されていたとしても極僅かであり、北米以外では無名である。さらに、北米においても「POWER WORM」の商標が周知著名と言える程のものであったのか大いに疑問であり、現実にその立証は全くなされていないものである。
ウ 甲第3号証の3の1ないし5は、「FISHING TACKLE RE TAILER」誌の販売実績リストのようであるが、時期、期間等が不明であり、例えば、第1頁の中段部分に「DATE:2/10/98」と、第2頁ないし第5頁の左上端部分に「DATE:2/05/98」という日付が記載されており、さらに、B.A.S.S.inc社のリスト(甲第3号証の3の6及び7)には、本件商標の登録出願日である1993年11月18日以前に購入したものが8名しか存在しないものであり、また、上記雑誌には「POWER WORM」の商標が掲載されていたのかどうかが不明である。
エ 申立人代表者は、「人工フィッシングルアーのマーケットは、製造業者が多数であることを特徴としている。どの傘下にも属さないある雑誌が、1997年11月に行った、同ルアーのマーケット調査では、軟質プラスチックルアーの米国における人工ルアーのマーケットが8,000万ドルであることが、報告されている。さらに、申立人が最大のマーケットシュアを有し、その売り上げ高は2位である競合他社の150%以上となっていることも、報告されている。」と主張しているが、その根拠となる資料を全く提出しておらず、その客観的事実は不明である。
▲3▼ 申立人は、アメリカスポーツフイッシング協会の会長の証明書(甲第7号語)を提出してるが、その内容は一方的な主張にすぎず、その根拠や客観的事実は全く不明であり、証拠能力を有しないものである。
(2)不正の目的について
本件商標「Powerworm」は、商標権者の創作に係る商標であることは、以下の点で明らかである。
▲1▼ 申立人が使用する「POWER WORM」の構成中、「WORM」の文字部分は、単に「プラスチックワームの総称」で、即ち「プラスチック製のルアー」を意味するにすぎず、「WORM」の文字単独では何等の自他商品識別力を有しないものである(例えば、昭和58年度版の「海・川 釣りエサ百科」の釣り用語事典:乙第2号証)。また、当然のことながら「WORM」又は「ワーム」の文字は、釣り具業界において「プラスチックワームの総称」として一般的に使用されている(例えば、ダイワ精工株式会社発行の1993年度ダイワ釣用品総合タログ:乙第1号証)。
したがって、上記「POWER WORM」の構成中、自他商品識別力を有するのは「POWER」の文字部分である。
▲2▼ そして、商標権者は、この「POWER」または「パワー」につて、申立人の米国における登録商標(甲第2号証)の出願日である1989年9月5日前から、本件商標の出願日まで、さらに、それ以後現在まで、一連の「パワーシリーズ」として、その対象魚、釣り餌の素材名、釣り方等に分けて種々の形態を創作の上、多数の商標を出願し登録している。
このことは、商標権者の所有に係る下記の登録例「1」ないし同「47」に示す商標を見れば明らかであり、本件商標「Powerworm」が突然に出現したものではなく、「パワーシリーズ」の一連の創作過程において出現したことが明らかである。
以上のとおり「パワー」又は「POWER」及びこれに関連する商標は、商標権者が多大の努力と経費負担に基づいて取得してきた商標である。そして、上記「パワー」又は「POWER」シリーズの商標は、申立人の米国における登録商標(甲第2号証)より遥かに早く出願を開始しているものである。
そして、この「パワー」又は「POWER」シリーズの一環としての「POWER」の文字に、商品「擬餌」として何等の顕著性もない普通名称である「WORM」の文字を付したものが本件商標である。
▲3▼ 本件商標に対する取消理由において、「商標権者は、1993年7月頃ラスベガスで開催された同国釣り具製造組合主催の見本市に同会社社員2名を送り、申立人より『POWER WORM』の『擬餌』について説明を受けている」との指摘及び申立人のほぼ同様な主張には全く承服できないものである。確かに、提出された名刺(甲第3号証の7)は、商標権者の社員である「KYOICHI KITAZUME」及び「OSAMU ASHINA」両名の名刺である。
しかし、商標権者の調査によると、両名のうち「KYOICHI KITAZUME」は米国に出張した事実がなく、上記主張は明らかに誤りである。しかも、このレポートは申立人の社員が作成した社内資料であり、何等客観的根拠を有しないものである。
また、仮に商標権者の社員が見本市に「社員2名を送り、申立人より「POWER WORM」の「擬餌」について説明を受けているとしても、説明を受けることと「本件商標を不正の日的で使用する」事にどのような相当因果関係があるのか。商品の見本市において商品の説明を受けることは当然の事であって、この説明を受けることが、全て「不正の日的」であるとするなら、商品の見本市は開催不能となるし、見本市に行くこと自身が商標法第4条第1項第19号に該当するものとなる。
▲4▼ 商標権者の宣伝・広告に係る、商品「擬餌」について商標「POWER WORM」を使用した商品カタログの掲載が、申立人の宣伝・広告に用いた説明図に酷似した説明図を用いているとの指摘及び主張は全く根拠がない。ワームの中に集魚成分を入れている事を図で消費者に説明する場合、切り口の断面図をイラストとして使用する事は極めて当たり前のことであり、決して特別な方法ではない。釣具のリール、竿、自動車等々、製品を断面にして中の性能をアピールする広告方法は極めて一般的である(例えば、ダイワ精工株式会社発行の1993年度ダイワ釣用品総合カタログ:乙第1号証)。
また、商標権者の製品である擬餌に魚が食いつく図については、日本のみならず、米国の釣り雑誌にも一般的に使用する方法の一つであり、この図が特異なものとは言えないものである。
▲5▼ 日本の釣り道具のマーケット調査結果のレポート(甲第3号証の5)については、現地視察や見本市開催から約4年も経過後に作成したもので、明らかな間違いが多数存在する。例えば、商標権者の主力製品は加工餌であり生餌ではない。
また、1994年1月、申立人の社員が東京で開催された見本市の中の商標権者のブースを訪れると、そこでは「POWERBAIT」シリーズのサブブランドである「POWERWORM」の名の下に、申立人の商品と酷似した軟質プラスチック製擬餌が申立人と同様の展示方法によって出品されていたと主張しているが、出品方法は商標権者の創作に係るものであり、申立人の当時の出品方法を商標権者は不知である。
したがって、当時の申立人の展示方法と商標権者の出品方法が同じであったとする具体的資料の提示が無い限り、両者の検証は不可能である。
▲6▼ 商標権者の製品が申立人と極似した軟質プラスチックとあるが、ソフトルアーは多数のメーカーが数多くの製品を販売しており、一般人が見た場合どれをとっても似たものが多いのが実状であり、それ故、当時の製品が商標権者の製品と極似したとは言えないと思慮する(例えば、ダイワ精工株式会社発行の1993年度ダイワ釣用品総合カタログ:乙第1号証)。
4 当審の判断
本件商標について商標法第4条第1項第19号違反を理由とする先の取消理由は妥当なものであって、法適用の誤り及び事実認定の誤りを述べる商標権者の主張は、以下の各点よりして、いずれも採用することができない。
(1)商標法第4条第1項第19号の適用について
商標法第4条第1項第19号の規定は、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)により、商標の不登録事由に追加されたものであるが、同改正法は、商標制度利用者の利便性向上を基本目的としていることもあり、原則として即日改正法の規定を適用することとしている。ただし、商標権者等の既得権の保護等につき必要がある場合、個別の事項ごとに経過処置等を設けることとしている。しかしながら、本規定の適用については、その経過処置等がとられておらず、改正法施行前の登録出願について該規定を適用することは適法なものと解されるから、この点について法適用の誤りを述べる商標権者の主張は採用することができない。
(2)申立人商標の周知性について
▲1▼ 申立人の提出にかかる各種雑誌広告及び新聞記事(甲第10号証)をみるに、その中の「BASMASTER」を題号とする雑誌の、1989年(平成1年)9・10月号、同11月号、1990年2月号、同3月号、同4月号、同9・10月号、同11月号、1991年2月号、同5月号、同9・10月号、同11月号、1992年1月号、同2月号、同7・8月号、1993年1月号、同3月号及び同5月号の当該抜粋記事には、申立人会社を表彰する「Berkley」標章、及び「POWER BAIT」商標とともに、或いは単独で「Power Worm」又は「Power Worms」の各欧文字よりなる商標(以下、「申立人商標」という。)の付された「軟質プラスチック製ルアー」について宣伝・広告していた事実を認めることができる。
そして、甲第2号証によれば、申立人は、米国登録商標として「POWER WORMS」商標をフィッシングタックルについてすでに1990(平成2年)年に取得していることが認められる。
そうとすると、申立人は、その製造・販売に係る商品「擬餌」について、本件商標と同一又は類似する商標を当時よりすでに使用していた点を認めることができる。
▲2▼ 雑誌「BASMASTER」は、題号の下段に「B.A.S.S」、「BASS ANGLERS SPORTSMAN SOCIETY」の各文字及び「開口したバス(魚)が飛び跳ねた図形」を組合わせて全体を盾形状に表した標章(以下、「盾形標章」という。)が表示されてなり、これよりは、バス釣りをする人達の「B.A.S.S」と称する団体及び当該標章を容易に認識させるものである。そして、盾形標章は商標権者の提出に係る商品カタログ(甲第8号証)の対談記事中(第12頁)にも、エコギア・チーフアドバイザー田辺哲夫氏のプロフィールとして「・・・1993年B.A.S.S.ケンタッキーインビテーショナルで大会史上初の外国人参加者優勝の快挙を日本人アングラーとして達成した。世界のプロバスアングラーの頂点に立った男が・・・」なる記載及び大会優勝盾の写真とともに掲載されているように、該団体及び同団体を表彰する盾形標章は、米国は勿論のことわが国の当業者間においても相当程度知られたものであり、同時にその監修・発行に係る前記雑誌のバス釣り業界における主導的地位を充分推認させるものである。
してみれば、該雑誌「BASSMASTER」は、バス釣りをする人達の団体「B.A.S.S」の会員向けに主として刊行・頒布されるバス釣りに関する専門誌であり、バス釣りの愛好家及び軟質プラスチック製ルアー及び関連釣具を専門に取扱う事業者間にあっては、継続的に購読されていたものと推認し得るところであって、これに、申立人を表彰する「Berkley」標章、及び「POWER BAIT」商標とともに、或いは単独で申立人商標が商品「軟質プラスチック製ルアー」について反復掲載され、上記「▲1▼」で認定した時期において頻繁に宣伝広告された訳であるから、本件商標の出願時である平成5年(1993年)11月当時においてすでに申立人商標は、米国の主としてバス釣り人達、並びに当業者間に、申立人の製造販売に係る商品「軟質プラスチック製ルアー」を表示するものとして周知であったといわなければならない。
▲3▼ 前記「▲2▼」と同様、申立人商標は、1998年(平成10年)2月号に至るまで該雑誌に掲載されていることよりして、現在においても申立人の製造販売に係る商品「軟質プラスチック製ルアー」を示すものとして周知なものと認められる。さらに、同様な宣伝広告は、「SPORTS AFIELD」を題号とする雑誌(1990年2月号、同5月号)等にも掲載されており、加えて、商号の略称又は当該事業を表彰する「Berkley」(標章)は、前記以外の甲各号証に一様に掲載されている事実が認められ、例えば、「THE SPORTING G00DS DEALER」を題号とする雑誌(1991年6月号:甲第4号証)等によれば、申立人は、米国における有数なアウトドア用品メーカーであって、その知名度はスポーツ用品における「Nike」(ナイキ)と並び称される程であることが認められる。そして、申立人が軟質プラスチック製ルアーにおいて米国最大のシェアをもち、「POWERBAIT」ブランドを申立人の基軸製品とし、また、その系列商品として軟質プラスチック製ルアーについて「POWER WORMS」ブランドの販売を企画し、該製品を申立人の広範な販売ルートにより市場の流通に供していたであろうことは、甲第3号証(宣誓供述書)その他の書証より充分推認し得るところである。
以上の点よりして、申立人が米国登録商標として所有し、かつ、軟質プラスチック製ルアーについて使用する申立人商標の周知性を否定する商標権者の主張は採用することができない。
(2)不正の目的について
▲1▼ 申立人は、前述したように、軟質プラスチック製ルアーを含む釣具製品の米国における有数な製造販売会社と認められる。一方、商標権者は、主力製品を加工釣り餌とする日本における著名な製造販売会社である。
ところで、一般に企業が製品を研究開発、あるいは製造販売する場合には、同業他社の製品を調査することは至極当然のことであり、釣具製品といえど今日の米国と我が国の通商及び商品流通事情を考慮すれば、内外国の企業を問わず、製品及び市場等の調査をするのが普通である。
してみると、申立人が提出した宣誓供述書(甲第3号証)並びに商標権者が意見書において述べているところの、1993年7月頃ラスベガスで開催された釣具製造組合主催の見本市において商標権者の社員「OSAMU ASHINA」氏の出席は商標権者も、これを否定していないから、これら客観的状況よりして、少なくとも、この者を含む2名の者が、該見本市に出向き、申立人のブースを訪れたことは明白な事実と認められる。
そうとすると、この時点において、商標権者は申立人商標の存在を見知った可能性が極めて大であって、本件商標の登録出願の契機となったことを充分推測させるものである。すなわち、申立人代表者の宣誓供述書(甲第3号証)において、同人が商標権者の関係者が前記見本市を訪れ、申立人会社担当者と名刺交換し、「Power Worm(擬餌)」の特性、そのパッケージ及び展示方法に強い関心を示した旨述べる内容と付合するものであって、かかる一致は単に見本市の一事に限らず、宣誓供述書全体の信悪性を高めこそすれ、低めるものとすることはできない。
▲2▼ 上記「(1)」で述べたように、申立人は、申立人商標とともに商標「POWERBAIT」も併用している関係上、同商標のわが国における登録の状況等についてみるに、商標を「POWERBAIT」、商品の区分第28類「擬餌」を指定商品とし、本件商標権者の所有に係る商標登録第3263344号及び同商標、商品の区分第31類「加工釣り餌・活き餌・その他の釣り餌」を指定商品とし、同権利者の所有に係る第3202469号が存在し、かつ、両商標登録原簿をみるに、無効審判(平10−35189、同10−35188)の予告登録、同請求の取下げ登録とともに申立人を専用使用権者とする専用使用権の設定登録の事実が認められる。
そして、該両商標登録に係る商標の出願日は共に「平成5年(1993年)12月6日」であることが認められる。
してみると、上記のとおり、本件商標の出願日は、「平成5年(1993年)11月19日」、該「POWERBAIT」商標の出願日は、「平成5年(1993年)12月6日」であって、両者とも該見本市の開催時期(1993年7月)直後に各々登録出願されたものであるから、これら商標登録出願の時期よりしても、偶然の一致とはいい難く、むしろ、前記見本市との相互関連性は極めて密接であったといわなければならない。
▲3▼ 商標権者は、自己所有の登録商標あるいは本件出願商標等を掲げ「パワー」又は「POWER」シリーズの商標については、申立人の引用する米国登録商標(1989年9月5日出願:甲第2号証)より遥かに早く登録出願を開始しており、本件商標は、このシリーズの一環としての「POWER」の文字に、商品「擬餌」として何等の顕著性もない普通名称である「WORM」を付した独自の創作に係るものである旨述べているが、出願人の提出に係る商標公報(乙第3号証ないし同第30号証)をみるに、商標の構成中に「POWER」の欧文字を有してなるものは、篭字風に「POWER」、「TOWER」、「SYSTEM」の欧文字を三段併記してなる商標(商公昭61−43104号:乙第3号証)及び「POWEROIL」の文字を書してなり、本件商標と登録出願日(平成5年(1993年)11月19日)を同じくする商標(商公平8−41784号:同第30号証)のみであり、他の登録商標は「パワー」の片仮名文字をその構成文字とするものであり、そのほか提出された商標公報(乙第31号証ないし同第39号証)も、商標の構成中に「POWER」の欧文字を有してなるものは、すべて本件商標の登録出願日以降の登録出願に係るものである。
よって、商標権者の主張をもって、本件商標がその創作に係る商標と判断することはできないから、これを理由に、本件商標が不正の目的をもって使用するものでないということはできない。
▲4▼ 以上の点よりして、商標権者は、少なくとも本件商標の登録出願時、米国において、申立人が「軟質プラスチック製ルアー」について使用し周知せられた申立人商標の存在を知り得ていたものであり、かつ、本件商標の存在は、申立人商標に係る商品のわが国における独自の販売活動を不可能とさせる直接的要因となるから、商標権者による本件商標の権利取得は、申立人がわが国において商標登録を保有していないことを奇貨として、登録出願に及んだことを推認するのに十分であって、商取引における商慣行ないしは信義則に反し、不正の目的をもって使用するものといわざるを得ない。
(3)結論
以上によれば、先の取消理由について、その法適用の誤り及び事実認定の誤りを述べる商標権者の主張はいずれも採用することができない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものといわざるを得ないから、商標法第43条の3第2項により、取消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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