Trademark Appeal Case
著名商標の要部抽出と混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年異議第90450号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | other |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4070598号商標(以下、「本件商標」という。)は、別紙Aに表示したとおりの構成よりなり、平成8年4月12日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット、帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」を指定商品として、平成9年10月17日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由の概要
本件商標は、他人の著名な商号の略称である「BALLY」の文字を含む商標である。
また、本件商標は別紙Bに表示した引用各商標に類似する商標である。また、「BALLY」が申立人及びその関連会社の扱う各種商品を表示する商標として取引者・需要者の間に広く認識されている著名な商標であるから、本件商標をその指定商品に使用するときは、申立人の業務に係る商品とその出所について混同を生ずるおそれがある。さらに、本件商標は、申立人の著名商標にただ乗りするものであり、国際信義上穏当でなく、不正の利益を得る目的をもって使用をするものである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであり、登録を取り消されるべきである。
3 本件商標に対する取消理由
本件登録異議の申立てがあった結果、本件商標を商標法第4条第1項第第15号に該当するものとして商標権者に対して通知した取消理由は、つぎのとおりである。
〈取消理由〉
本件商標は、「F・N・D BALLY」の文字よりなるものであるところ、その構成よりみて「F・N・D」と「BALLY」の両文字よりなるものと看取し得るものであって、これらの文字間には常に一体のものとしてのみ認識しなければならない格別の事由が存するものとは判断し得ないものである。
ところで、申立人が提出した証拠を総合すれば、スイス在の申立人「バリー シューファブリケン アクチェンゲゼルシャフト」が商品「靴」等のファッション関連商品について使用する「BALLY」の文字からなる商標は、本件商標の出願時には、我が国において広く知られ著名性を獲得していたものと判断するのが相当である。
以上の事情に加え、本件商標の指定商品が「靴」を始めとするファッション関連の商品である点、及び「BALLY」の語が特定の意味のもとに親しまれている一般的な語ともいい得ない点を併せ考えれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する者は、該構成中の「BALLY」の文字部分に着目し、その商品が申立人又は申立人と関連を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第第15号に該当する。
4 商標権者の意見
上記3の取消理由通知に対して、商標権者は、要旨つぎのように意見を述べ、証拠として乙第1号証ないし同第50号証を提出した。
(1)本件商標は「F・N・D」と「BALLY」を別のものとして認識しなければならない格別の事由はない。
本件商標「F・N・D BALLY」は、「FとN」の聞及び「NとD」の間に夫々「・」を設けているとはいえ、同大同型の文字で一連に綴ってあるので、いわゆる一体不可分のものであり、かつ、殊更「F・N・D」と「BALLY」を分離して認識しなければならない特段の理由はない。
ちなみに「△△BALLY/△△バリー」の様にその構成上「BALLY/バリー」の文字ないしは称呼を含み、かつ「△△」と「BALLY(バリー)」を本件取消理由と同じように分離可能とされるものは、「WILLIAM BARRY」「ミスターバリー」「dennet barry」「DANA・BARI/ダナ・バリ」「WOOD BURY」「SENT BARRY」「YORK BARRY/ヨークバリー」「VIA VALLIE」等枚挙にいとまがない。
商標権者は、先登録例が存在するから、自己の本件商標も登録されたものと確信している訳ではないが、先登録例は物差しとしてこれ以上明解かつ確かなものはなく、これら先登録例を頼りにすること当然である。
これらの事実からしても、本件商標が商標法第4条第1項第15号の規定に該当しないこと明らかである。
(2)また、欧米のブランドはデザイナーなり、創業者の名前を用いることにより、そのキャラクター、ポリシーがはっきりしているものが数多く存在することを否定するものではないが、それだけに本物としてのデザイン、材質等、他とは一線を画しているものが多い。
しかしながら、今日のように、成熟した市場の中においては「本物」と「そうでない物」とは自ずと区別・識別が可能である。何故なら、今日は、交通機関が著しく発達し、かつ、情報が国境を越えて国際化したため、「本物」を見極める目は消費者に充分に備ったと云える。と同時に、技術が高度で平準化したため、本物以外のものでも一定のコンセプトのものであれば充分に消費者の要求に耐えるものが提供可能となった。
この様な市場環境、消費指向の中にあって、物造りをする者は、一定のコンセプトのもとに目標とする商品を品質的或いはデザイン的に超えたものを提供するに当たり、商標的イメージも商品イメージに近いものを選択することは否定できないところである。需要者、消費者は、このような市場環境の中で充分に教育されており、たとえ、「BALLY/バリー」をその構成の一部分とする商標であっても、「それとはちがう」ことを意識・認識した上で購買するものであり、出所の混同なり、品質の誤認は生じ得ない。
(3)本件出願時に我が国において広く知られ著名性を獲得しているのは「バリー」と称呼される「BALLY」のみである。
申立人は自己の商標「BALLY/バリー」の著名性について「世界中で最も長い歴史と伝統を持つ企業のブランドとして著名である」旨主張するが、仮りに該商標が著名であったとしても「BALLY/バリー」そのものが著名であるのであって,「△△BALLY」、「△△バリー」にまでその著名性が及ぶものでは毛頭ない。著名であればあるほど、そのものずばりが目立つのであって、「バリー」の称呼を含むものとは明確に識別されるべきである。
仮に「BALLY/バリー」が「バリー シューファブリケン アクチェンゲゼルシャフト」の略称であるとしても、それ以上のものでないことは上記のとおりである。
なお、我が国において、「Ba11y Group」なるものが存在することすら知られていないので、「△△BALLY」を関連企業のものと誤認・混同することはあり得ない。
よって、本件の取消理由通知は不当なものであり、本件商標の登録は、維持されるべきである。
5 当審の判断
本件商標について商標法第4条第1項第15号違反を理由とする先の取消理由は妥当なものであること以下のとおりである。
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出に係る甲各号証中、特に、甲第23号証ないし同第46号証及び甲第74号証ないし同第85号証によれば、申立人である「バリー シューファブリケン アクチェンゲゼルシャフト」は、今から約150年前の1851年にスイス国で製靴工場を設立したことに始まり、現在では世界各国に工場や販売組織を持ち、世界でも長い歴史と伝統をもつ高級靴のメーカーである。
そして、申立人は、靴等のファッション関連商品について「BALLY」の文字からなる商標を使用し、新聞、雑誌などの広告媒体を通じて広告、宣伝した結果、日本で発行された「世界の一流品大図鑑」等に頻繁に紹介されるなど、本件商標の登録出願時には、上記商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、既に取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていると認められるものである。
(2)商標権者は、本件商標は「F・N・D」と「BALLY」に分離して認識されることのない一体不可分のものである。「BALLY/バリー」の文字ないし称呼を含む例は枚挙にいとまがない旨述べている。
しかしながら、本件商標は、別紙のとおりの構成よりなるものであって、前半部の「F・N・D」にはそれぞれの文字間に中黒「・」が配されており、一連に書されている後半部の「BALLY」と構成が異なるばかりでなく、文字間隔も異なることより、視覚上「F・N・D」と「BALLY」に分離して看取されるものである。そのうえ、後半部の「BALLY」の文字は、上記著名な「BALLY」商標と同一の綴り字からなるものであるのに加え、本件商標の指定商品は、靴等を含むファッション関連商品又はこれに類する商品といえるから、これらを総合勘案すれぱ、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接する者は、本件商標中の「BALLY」の文字部分に注意を惹かれ、本件商標より直ちに上記著名な「BALLY」商標を想起し、本件商標の付された商品が登録異議申立人又は同人と何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同するおそれがあるものと認められること先の取消理由のとおりである。
商標権者が、「BALLY/バリー」の文字ないし称呼を含む例は枚挙にいとまがないとして挙げた事例のなかで、本件商標と同じく「BALLY」の文字を含むものは、乙第8号証の商標と同第18号証の商標の2件である。乙第8号証の商標は、出願公告後、異議申立ての結果、その出願は拒絶ざれている。また、乙第18号証の商標は申立人の所有に係るものであり、商標権者の挙げる事例は、本件の判断に影響を及ぼすものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、他の申立ての理由について論及するまでもなく、商標法第43条の3第2項の規定により、登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。