結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成7年審判第17318号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
1.本件登録第3010964号商標(以下「本件商標」という。)は、「ホテルゴーフルリッツ」の片仮名文字を横書きしてなり、第42類「宿泊施設の提供,日本料理を主とする飲食物の提供,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」を指定商品として、平成4年8月5日登録出願、同6年11月30日に設定登録されたものである。
2.請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第225号証(なお、甲第62号証は欠号)を提出している。
(1)商標法第4条第1項第8号に関する主張。
▲1▼「RITZ」「リッツ」の著名性について。
請求人は、フランス国パリ所在の世界的に著名な「RITZ HOTEL(リッツホテル)」を経営する英国法人である。
「RITZ HOTEL(リッツホテル)」は1898年に、「ホテル王」と称されたセザール・リッツにより設立され、設立当初から今日に至るまで、世界の超一流ホテルとして不動の地位にあり、確固たる名声を獲得し続けてきた。
そして、「RITZ」「リッツ」が、請求人の略称及び上記ホテルの略称として、わが国で周知、著名なものであることは、特許庁及び裁判所においても顕著な事実である(甲第1号証ないし同第7号証、同第9号証、同第61号証)。
パリのリッツホテルは、建物及びその内装等の豪華さやきめ細かいサービス等により、高い評価を受け、世界の王侯貴族、大富豪、有力政治家、著名作家、有名映画俳優、有名デザイナー等世界的な著名人が宿泊利用したホテルであり、また、昭和天皇も昭和46年秋にヨーローッパ各国を歴訪された折り、同ホテルに宿泊されている。
また、同ホテルは「昼下がりの情事」、「巴里のアメリカ人」及び「雨の朝巴里に死す」の映画の舞台となり、その他にも著名な映画の舞台として、あるいはその背景の一部として、しばしば使用されている。
同ホテルにおいては、現在カルティエ、シャネル等世界的に著名なデザイナーによる宝石、衣類等の高級品を販売する店舗が多数設置されている。
また、同ホテルは、日本人の利用率も高く、多数の日本人が同ホテルのショッピングアーケードを訪れている。
このように、同ホテルは、多くの世界的な著名人に利用され、かつ、マスコミにも高い評価とともにしばしば紹介されている。
英和辞典でも「RITZ」を引けば「RITZ HOTEL」ないしは「CEZAR RITZ」のことが掲載されている(甲第10号証ないし同第18号証)し、「RITZ HOTEL(リッツホテル)」は、わが国で発行されている世界のホテル案内の類において、その紹介ないし記載のないものは皆無であり、しかも、同ホテルは殆ど例外なく格別に質の高い高級ホテルとして紹介されている。わが国の旅行会社のパンフレットをみても、同ホテルに宿泊することや同ホテルでの料理教室を一つの目玉としてツアーを構成しているものがあるほどである(甲第22号証ないし同第29号証、同第95号証、同第96号証、同第130号証ないし同第201号証、同第211号証ないし同第224号証)。
請求人は、わが国及び海外において、商品商標及びホテルに関する役務商標についての登録を多数取得しており(甲第21号証、同第32号証ないし同第60号証)、これらの管理に多額の費用をかけている(甲第106号証ないし同第112号証及び同第126号等)。
さらに、昭和61年に「インペリアル・エンタープライズ株式会社」(以下「インペリアル・エンタープライズ」という。)が請求人からライセンスを受けて「リッツ プロダクト(ユーケー)リミテッド」の商品を輸入販売し、その後、1992年7月に「内野株式会社」が引き継ぎ、1993年2月18日には正式にライセンス契約を締結し、同社はタオル製品関係のみを有名百貨店を通じて販売しているが、その売上高は僅かな間に順調に推移している(甲第97号証ないし同第105号証及び同第124号証)。
世界には「RITZ」を含む名称のホテルは、パリのリッツホテル以外にも存在するが、これらのリッツホテルはいずれもセザール・リッツに帰着する。
即ち、セザール・リッツは、1897年11月24日に世界中に高級かつ豪華なホテル網を確立する目的で「ザ リッツ ホテルズ ディベロップメント コムパニー リミテッド」(以下「リッツ ホテルズ ディベロップメント」という。)を設立した。同社は、ロンドンに、1898年7月15日カールトンホテルを開業し、1902年6月リッツホテルを建設した。カールトンホテルは名声を得たので、セザール・リッツはカールトンの名称とリッツの名称を一緒に利用することを考え、1907年、ニューヨークに「RITZ」を冠した「ザリッツ・カールトン レストラン アンドホテル カンパニー」を設立し、同年ニューヨーク及びマドリッドにリッツホテルを建設した。
リッツカールトンホテルは、急速に世界的評判となり、著名人、各国の国王や女王、劇作家などによりしばしば利用されたほか、ブロードウェイのミュージカルの演劇場所としても全米に知られるに至ったが、1988年、米国法人の「ダブリュ ビ− ジョンソン プロパティーズインコーポレーテッド」(以下「ダブリュ ビー ジョンソン」という。)がカールトンを買収し、「RITZ(リッツ)」の標章につき、請求人から使用許諾を得て今日に至っている(甲第113号証ないし同第123号証、同第127号証及び同第128号証、同第203号証及び同第204号証)。
また、甲第129号証より、いかにリッツカールトンが「Ritz」「Ritz Carton」を保護してきたか、また相手方がどのように対応してきたかがわかる。
なお、リッツカールトンは、大阪の西梅田で1997年にホテルの開業を予定している(甲第63号証ないし同第85号証)。
上記ロンドン、マドリッドのリッツホテルは現存するが、その他、ブタペスト、カイロにもセザール・リッツはリッツホテルの設立に直接関与して建設していた(甲第202号証等)。
なお、リスボンのリッツホテルは、セザール・リッツの息子のチャールズ リッツが名称の使用を許諾した。
また、1955年にナビスコ社と請求人との間にライセンス契約が成立し、請求人は、ナビスコ社のクラッカーに「Ritz」「リッツ」を使用することを承認している。
さらに、リージェンシーホテルが「RITZ CAFE」を商標登録出願したため、請求人の抗議により、同ホテルは「RITZ」を使用する場所、方法、態様につき請求人の厳格な制限の要求を了解したので、1998年10月18日に使用契約をした(甲第125号証)。
このように、通常の営業者、特にホテルの関係者は、「RITZ(リッツ)」の名称の採用について、請求人の了解を得ることを当然のことと認識している。
そして、「RITZ」「リッツ」といえば、本件商標出願日前より、わが国において、請求人の略称あるいは同人が経営するパリの「RITZ HOTEL(リッツホテル)」の略称として、周知、著名なものとなっていた。
▲2▼被請求人による「RITZ」商標の登録の正当性について。
被請求人は、神戸市中央区港島中町6番1号において、名称を「HOTEL GAUFRES RITZ」 「ホテル ゴーフル リッツ」(以下「被請求人ホテル」という。)とするホテル営業を行っている。
請求人は、被請求人に対して、「RITZ」「リッツ」の使用差止等請求を平成4年12月22日付けで神戸地方裁判所に提起(平成4年(ワ)2156号)している。
上記訴訟において、被請求人は、バルセロナのリッツホテルと提携関係にある旨主張している。
ところで、バルセロナのリッツホテルは、請求人から「RITZ(リッツ)」の使用許諾を受けたマドリッドのリッツホテルから「RITZ」の名称の使用を許諾されたものであるが、請求人は、マドリッドの「RITZ」が他社に対して「RITZ(リッツ)」の使用許諾をすることを認めていないから、バルセロナのリッツホテルは被請求人に対し「RITZ」「リッツ」の使用を許諾できる立場になく、バルセロナのリッツホテルと被請求人とが業務提携をしたとしても、被請求人に「RITZ」「リッツ」の名称の使用の許可を与えたことにならない(甲第31号証)。
即ち、甲第31号証は、請求人のスペインにおける代理人からバルセロナのリッツホテルを所有する「INMOBILIARIA SARASATE,S.A.」(以下「SARASATE」という。)の代理人宛てに送付された質問状並びにこれに対するバルセロナのリッツホテルからの返答及びこれら書簡が正式の手続によって送付されたことを公証する公証人の証明書である。その返答の中で、「SARASATE」は、同社が日本において「RITZ」「リッツ」に関するいかなる権利をも有していないこと、被請求人に対し「RITZ」「リッツ」の使用に関していかなる権限も与えていないこと、及び「SARASATE」に所属する「GRUPO FUSA」と被請求人との提携協定には「RITZ」「リッツ」の表示の使用に関しては全く触れられていないことを明らかにしている。したがって、被請求人は、全く独自に「リッツ」を採択したものであり、その登録につき、正当な権限を有しないものである。
▲3▼本件商標は、その構成中に、本件商標出願日前よりわが国において周知、著名な請求人および同人が経営するパリの「RITZ HOTEL(リッツホテル)」の略称である「リッツ」を含むものであり、かつ、被請求人は、「リッツ」の登録に関し、請求人から承諾を得ていない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第10号に関する主張。
▲1▼「RITZ」「リッツ」は、請求人の商標として、宿泊施設の提供について本件商標出願日以前から、わが国の需要者間に広く認識されている商標であった。
▲2▼一方、本件商標は、これを称呼した場合、全体で8音構成からなるから、その称呼は冗長である。しかも、「リ」は促音を伴っているから強く発音される。その結果、本件商標を称呼した場合、「ゴーフル」と「リッツ」の間に一呼吸置かれて発音され、「リッツ」が強調されるから、「リッツ」が聴者の印象に残りる。
そうとすると、本願商標は、「リッツ」の称呼が生じるというべきであるから、請求人の周知、著名な商標「RITZ」「リッツ」と称呼上類似する商標であって、その指定役務中に「宿泊施設の提供」を含むものである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するというべきである。
(3)商標法第4条第1項第15号に関する主張。
前述したとおり、「RITZ」「リッツ」は、請求人が経営するパリのリッツホテルを表示するものとして本件商標出願日前より、わが国をはじめ世界的に周知、著名なものとなっており、請求人は、他人に「RITZ」の使用を許諾するに際し、その使用につき、厳重に管理している(甲第86号証ないし同第89号証)。
そして、本件商標は、その構成中に「リッツ」の文字を含むことは明らかであり、その指定役務も、請求人の役務と同一か極めて近似するものであるから、被請求人がその指定役務について使用した場合、これに接する需要者、取引者は、該役務が請求人、あるいは同人と提携関係にあるものによって提供されたものであるかの如く、役務の出所について、誤認混同を生じる。
(4)答弁に対する弁駁
▲1▼請求人は「RITZ」「リツツ」が、同人の経営するパリの「RITZ HOTEL(リッツホテル)」を表示するものとして、わが国で周知、著名であることを証明するために、フランス大使館作成の証明書を提出する(甲第225号証)。
▲2▼被請求人は、「RITZ」が慣用表示である故、請求人がこれを使用しても、わが国の需要者は請求人ホテルの著名な略称とは認識し得ない旨主張する。
被請求人は、「RITZ」が慣用表示であることの理由として、まず「RITZ」あるいはこれを含むホテルが世界の各都市に存在することを挙げているが、世界中の「RITZ」を含むホテルの中で最も有名なものは請求人ホテルである。また、「RITZ」を含むホテルの多くが、セザール・リッツの関与の下に設立されたものや、「RITZ」の使用について、請求人から許諾を得ているものである。
そして、請求人の「RITZ」「リッツ」が著名となり、顧客吸引力を有するに至って、これを利用しようと模倣する者に対し、請求人は、訴訟の提起、あるいは使用の中止の要請をしているが、全世界から模倣を排除することは事実上不可能である。
被請求人は、「RITZ」の有する顧客吸引力に着目して同人ホテルの名称中に「RITZ」を採用したのであるから、これ自体「RITZ」が慣用表示でないことを自認している。また、被請求人は、「RITZ」の使用許諾の権限がバルセロナのリッツであると誤認し、バルセロナのリッツと契約して自己のホテルの名称中に「RITZ」を採用したのであるが、これは、被請求人自身「RITZ」の使用には何らかの許諾が必要であると判断したものであり、「RITZ」が慣用表示である旨の主張は、到底採用されるべきものではない。
▲3▼被請求人は、本件商標のほかに出願した「GAUFRE RITZ/ゴ−フルリッツ」について、請求人が異議申立てをしたにもかかわらず、これらの商標は登録された旨主張するが、請求人はこれらの商標に対しても、登録無効審判を請求している。また、上記登録商標は、商品商標であるのに対し、本件は、請求人の業務に係る宿泊施設の提供等を指定役務とするものであるから、上記商品商標とは性質を異にするものである。
商品商標が登録されたことをもって、本件における請求人の主張に理由がないことの根拠とはなり得ないものである。
▲4▼被請求人は、甲号証のいくつかが本件商標出願日後の作成、もしくは作成日不明であるから、これらの証拠は採用し得ない旨主張する。
しかしながら、これらの証拠が出願日後の作成であるといっても、これらの証拠及び他の証拠から判断すれば、請求人の「RITZ HOTEL」は、昭和50年代後半遅くとも昭和60年代の初めには、わが国において広く知られていたことは疑いない。したがって、提出された一部の証拠が出願日以降の作成であることのみをもって、当該証拠が採用されない理由とはならない。
▲5▼被請求人は、請求人ホテルにつき、「パリの」「パリ」等の表示より同人ホテルであることが分かる旨主張するが、パリのリッツホテルといった場合、「パリ」は単に所在地を表すものにすぎず、「ホテル」は営業の表示にすぎないものであるから、「リッツ」が自己と他者とを区別するものである。そして、一般に「RITZ」「リッツ」といえば、需要者は、請求人経営のパリのリッツホテルと認識するというべきである。
▲6▼被請求人は、乙第5号証により、「RITZ」は商標として、指標力がない旨主張する。
しかしながら、上記証拠は全体としてパリのリッツホテルの周知性を裏付けるものである。被請求人が抜粋した部分は、その中のごく一部であって、請求人は単なる「あげ足取り」をしているにすぎない。被請求人が当該証拠の存在を理由に、「RITZ」が慣用表示であるというのであれば、同書籍全体を、翻訳を添えて本件審判に提出すべきである。
▲7▼乙第6号証に示すように、米国の「リッツ カールトン ホテル カンパニー インコーポレーテッド」、「リッツ カールトン ホテルカンパニー リミテッド」及び「リッツ カールトン マネージメント コーポレーション」は、1946年にマイアミの「リッツ カールトン ホテル」に対し、リッツカールトンの名称の使用差止訴訟を提起し、勝訴した。右判決において、リッツカールトンの名称が、全米におけるセカンダリーミーニングを認められ、その結果、被告ホテルの名称が使用差止を命じられたもので、リッツまたはリッツカールトンが何ら慣用表示ではない。
▲8▼被請求人は、米国における用語辞典中「ritz」は「見栄、虚栄」等の意味がある故、慣用表示である旨主張するが、これらはセザール・リッツが設立した「RITZ」が豪華なホテルであることに由来するものであって、パリのリッツホテルが世界的に周知性を獲得していることを証明するものであるから、慣用表示であることを示すものではない。
▲9▼被請求人は、パリのリッツホテルのほかにバルセロナ、マドリッド、リスボン、タイペイ等にリッツホテルが存在する旨を主張するが、前記したとおり、マドリッド、リスボンのリッツホテルは、セザール・リッツがその設立に関与したものであり、バルセロナのリッツはマドリツドのリッツホテルによりリッツの使用が許可されたものである。
タイペイのリッツホテルは、請求人とは関係はないが、乙第33号証によれば、同ホテルは、至るところにおいてパリのリッツホテルのイメージを強調しており、たとえ請求人の他に高級ホテルであるリッツホテルが存在するとしても、パリのリッツホテルの著名性を否定することはできない。
▲10▼被請求人は、請求人の所有する登録商標中、役務に関するものは僅かである旨主張するが、ホテル業務に関する分類は、そもそもニース協定の分類で第42類に限定されているから、商品の内容に応じて複数の分類に分かれる商品商標の登録とは異なるのは当然である。
▲11▼被請求人は、英国においては商標「RITZ」は、「The Ritz Hotel(London)Limited」が所有しているから、請求人は商標登録を受けられない旨主張するが、これらのリッツホテルもセザール・リッツの計画の下に建設されたものであり、請求人は上記会社による登録を認めているのであって、請求人が「RITZ」について登録を有していないことは何ら、「RITZ」が慣用表示であることを理由付けるものではない。
▲12▼被請求人は「インペリアル・エンタープライズ」及び「内野株式会社」による商品販売についての証拠が本件商標出願日後のものであることから、これらは無効理由とはかかわりがない旨主張する。
しかしながら、一般にホテルのブランド商品は、そのホテルが有名でない限り売れないので、わが国での販売開始時には、すでにそのホテルは著名なものとなっている。仮に、上記証拠が出願日以後に頒布されたものであっても、請求人ホテルが出願日前著名でなかったという理由とはならない。
▲13▼被請求人は、請求人とリッツカールトンとの契約は、リッツなる名称を相互に都合よく利用する為の確認契約に過ぎない旨主張するが、請求人とリッツカールトンの間はライセンス契約であり、契約が終了すれば、リッツカールトンは「RITZ」を使用できないのである。
かかる事実は、請求人が「RITZ」について正当な権利者であり、第三者が勝手に、請求人に無断で「RITZ」を使用することができず、またホテル業界ではそのように認識されている。バルセロナのリッツもそのように解したから、被請求人と業務提携した際に、被請求人ホテルに「RITZ」を使用することにつき、殊更、契約書に一条を設けているのである。したがって、上記被請求人の主張はなんら理由のないものである。
また、「ダブリュ ビー ジョンソン」が第42類に「RITZ−CARLTON」の出願をしたことに対し、請求人は異議申立てを行ったが、これは、同社が契約上わが国で当該商標の出願を禁止されているにもかかわらず出願をしたからである。
▲14▼被請求人は、パリのリッツホテルの現在の経営主体はアラブの石油資本である旨主張するが、請求人ホテルの著名性とホテルの経営主体とは、全く関係のなことである。
モニク リッツ夫人が夫の死後その役務を継承したことは事実であるが、乙第101号証は儀礼的な祝賀の詞を述べたにすぎず、問題は、請求人ホテルの名称「リッツ」を被請求人が無断で使用、登録できるかということであって、被請求人は、バルセロナのリッツホテルと業務提携していたとしても、「リッツ」の名称の使用を許諾されていない。
3.被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第293号証を提出している。
(1)▲1▼請求人は、「RITZ」「リッツ」は請求人の略称及び同人ホテルの略称として、我が国で周知、著名なものである旨主張するが、わが国において、「RITZ」を名称の要部とする高級ホテルは、ロンドンリッツ、パリリッツ、マドリッドリッツ、バルセロナリッツ、リッツタイペイ等が直ちに想起され、「リッツ」と表示しても、需要者は、いずれのホテルを指称しているのか特定し得ない。請求人ホテルはパリリッツと、都市名を付して、はじめて他のホテルとの識別が可能となるのである。
したがって、「RITZ」「リッツ」の表示は、ホテルにおいては慣用表示であり、請求人ホテルの著名な略称とは認識し得ない。
▲2▼請求人は、「RITZ」「リッツ」の周知、著名性は、特許庁及び裁判所において顕著な事実である旨主張するが、商標「GAUFRE RITZ/ゴ−フルリッツ」は、商標「RITZ」あるいは請求人の営業表示「RITZ」「リッツ」との関係において、特許庁では、商標法第4条第1項第8号、同第11号、同第15号、同第16号に該当しない旨認定しているのが殆どである(乙第1号証ないし同第3号証)。
ところで、甲第1号証、同第2号証、同第7号証、甲第9号証あるいは同第61号証では、請求人ホテルグループあるいは請求人リッツグループが存在する如く認定しているが、被請求人の調査によれば、上記グループは存在しないこと及びセザール・リッツが関与していない「RITZ」を含む名称のホテルが多数存在することが判明した(乙第4号証、同第87号証ないし同第96号証)。
▲3▼請求人は、同人ホテルは日本人の利用率が最も高い旨主張するが、その根拠となっているのは、パリリッツのセールスマネージャーの分析によるものであり、客観性がない。
▲4▼請求人は、英和辞典でも「RITZ」は、「RITZ HOTEL」ないし「CEZAR RITZ」と掲載されている旨主張するが、甲第10号証では「the Ritz hotels」として、複数のホテルが存在することを前提としており、「the Ritz」をリッツホテルとしている箇所も、これが直ちに請求人ホテルを示しているとは限らない。他の英和、英英辞典についても同じことがいえる。
▲5▼請求人は、辞典以外の各種刊行物にも「RITZ HOTEL」は種々の形で紹介されている旨主張し、証拠を提出したが、その証拠中、甲第130号証、同第141号証ないし同第143号証、同第152号証、同第154号証、同第165号証、同第166号証、同第187号証、同第211号証ないし同第217号証、同第224号証は本件商標出願後のものであり、甲第29号証、同第132号証ないし同第140号証、同第199号証ないし同第201号証は本件商標出願前のものであるのか不明である。
また、提出された証拠中には、リッツカールトン、ロンドンリッツ、マドリッドリッツ、バルセロナリッツ、サボイに関するものも含まれている。
そして、上記証拠からは、「パリ」「パリの」「PARIS」の表示より、請求人ホテルに関する記事、説明であることが認識し得たのである。
▲6▼乙第5号証は、請求人ホテルの店舗内で販売されている書籍であることから、請求人側の立場に立って記載されたものと思われるが、請求人が「Ritz」の慣用化を自認しているに等しいものである。
▲7▼乙第6号証によれば、リッツカールトンというホテルの名称は、米国においてセカンダリーミーニングとして財産上の権利を認められたが、「リッツ」のみではセカンダリーミーニングは、認められないことを意味している。判決後、リッツカールトンはリッツプラザホテルに名称を変更して請求人ホテルと混同されることなく営業活動をしている(乙第27号証)。
▲8▼米国における「Ritz」の慣用表示性を用語辞典でみると、「虚飾、見栄」といった意味で一般的に使用されている(乙第7号証ないし同第20号証)。また、「・・Ritzhotels・・」「・・1uxury hotels・・」等(乙第8号証、同第10号証ないし同第12号証、同第14号証、同第15号証、同第17号証)と記載されており、複数のホテルが存在することを前提としてしているところから、辞書類からも、「RITZ」では請求人ホテルを指称するものでないことは明らかである。
また、請求人の所在地であるロンドン市において、「リッツ」を付加して称する営業者が多数存在する(乙第21号証)。
▲9▼わが国において、主要なホテルとしては、バルセロナリッツ、リッツタイペイが必ず掲載されており(乙第22号証及び同第23号証)、マドリッドリッツを「HOTEL RITZ」と(乙第24号証)、また、マドリッドリッツ、バルセロナリッツ、リスボンリッツを単に「リッツ」と表示しているものがある(乙第25号証)。このことからも「RITZ」は請求人ホテルを指称するとはいい得ない。
さらに、請求人ホテルとは営業主体の異なる「リッツ」の表示を付したホテルが世界各国に多数存在しており(乙第28号証及び同第29号証)、これらのホテルが「リッツ」と称して営業している(乙第30号証ないし同第33号証、同乙第43号証ないし同第86号証)。
▲10▼ホテル営業以外の業務にも「RITZ」「リッツ」が使用されている(乙第34号証ないし同第42号証)。
▲11▼このように、「RITZ」「リッツ」は、ホテルのみならず各企業の名称に冠して付され、慣用表示となっているものであるから、何人の業務に係る表示であるのか識別できない。
▲12▼請求人は、商品商標及びホテルに関する役務商標の登録を多数取得している旨主張するが、その殆どは商品商標に関するものであり、ホテルに関する役務商標は、甲第32号証、同第34号証、同第36号証、同第38号証、同第53号証、同第58号証だけであり、むしろ、英国においては、請求人は、ホテルに関する商標「RITZ」の登録を受けることができないのである(乙第97号証)。
▲13▼請求人は、ライセンス契約により、タオル製品を百貨店を通じて販売し、その売上高は順調に推移している旨主張するが、その事実を証明する証拠の殆どは、本件商標出願後のものであり、無効理由とは関わりない。
▲14▼請求人は、1983年米国法人「ダブリュ ビー ジョンソン」がリッツカールトンを買収し、「RITZ」「リッツ」の標章につき、請求人から使用許諾を得ている旨主張するが、それまで適法にリッツカールトンは使用されてきたのであり、1983年になぜ請求人から使用許諾を得なければならないのか理解できない。
前記営業表示使用差止等請求事件における準備書面(乙第98号証)で、請求人は、「英国原告と米国原告の関係はライセンス契約であるが、・・契約が終了したとき米国原告が単なる『カールトン』ホテルになることは予定されていない。1983年に、米国原告はボストンのリッツ・カールトンホテル並びに米国における全リッツ・カールトンの名称にかかる権利を取得しており、ライセンス契約の実体は右のとおり、確認にすぎないからである。」と言明している。
請求人はライセンス契約というが、その実体はリッツなる名称を相互に都合よく利用する為の確認契約を単にライセンス契約と称しているにすぎないのであり、請求人は「リッツ」を使用許諾する権限などないのである。
また、請求人は、前記契約をした「ダブリュ ビー ジョンソン」の子会社である「ザ リッツカールトン ホテル カンパニー」が商標「RITZ−CARLTON」を出願し、公告されたところ、これに対して、登録異議申立てをしており(乙第99号証及び同第100号証)、請求人の行動は不可解である。
なお、甲第129号証は、裁判所で裁判当事者が合意したことを示しているだけであり、「リッツ」に関する独占権が認定されたわけではない。
▲15▼請求人は、ロンドン、マドリッドのリッツホテルは現存するが、その他、ブタペスト、カイロにもセザール・リッツはリッツホテルの設立に関与していた旨主張し、さらに、リスボンのリッツホテルは、チャールズリッツが名称の使用を認めている旨主張するが、セザール・リッツはこれらのホテルを所有していたわけではなく、セザール・リッツ生存時から既に各地にリッツの名称を冠するホテルが別個独立の経営主体によって運営され、存在していた。現在、パリリッツの経営主体はアラブの石油資本が支配しており、現在の経営主体とセザール・リッツ個人の問題は混同されるべきでない。また、チャールズ リッツが名称の使用を許諾したというが、チャールズ リッツに使用許諾し得る権限があったのか疑問である。
被請求人は、チャールズ リッツの妻モニック リッツから1995年9月付手紙(乙第101号証)をもらっている。この手紙において、モニック リッツは被請求人ホテルの名称に対して、何ら反対の意は表明していない。
▲16▼請求人は、ナビスコ社に関して、ライセンス契約により、ナビスコ社のクラッカーに「RITZ」「リッツ」の使用を承認してた旨主張するが、その証左はなく、ライセンス契約といえども実体は確認契約であるやもしれない。
▲17▼以上のとおり、「RITZ」「リッツ」なる表示あるいはこれを冠する表示は、ホテル名、企業名にみられ、慣用表示であり、この表示から特定の営業主体、営業者名は想起し得ない。また、世界中で、この表示を独占できる者はいない。
したがって、「RITZ」「リッツ」は、商標法第4条第1項第8号に定める他人を特定するに足る著名な略称ではなく、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当するものでない。
(2)▲1▼本件商標は、ホテルに使用する商標として周知著名となっている。
被請求人は、会社案内(乙第102号)のとおり、明治30年12月に創業し、商標「ゴーフル」「レスポワール」が付された和洋菓子の製造販売を中心に、喫茶・レストラン経営、結婚式場・宴会場・劇場の経営、ホテル事業などを事業内容とする会社である。
▲2▼被請求人は、同人のホテル開業前に、同人のホテルに関してバルセロナリッツと業務提携をした。その契約は被請求人とバルセロナリッツの所有者である「GRUPO HOTELS HUSA S.A.」との間で締結された。
「GRUPO HOTELS HUSA S.A.」は、「GRUPO HUSA」を形成しており、被請求人ホテルも紹介されている(乙第103号証ないし同第105号証)。
▲3▼請求人は、バルセロナのリッツホテルは「RITZ」「リッツ」の名称の使用を被請求人に許諾できる立場にないから、バルセロナのリッツホテルと被請求人とが業務提携をしても、「RITZ」「リッツ」の名称を被請求人に使用許諾したことにはならない旨主張するが、わが国には商標権者は存在しないから、バルセロナリッツのみならず、「RITZ」「リッツ」の名称の使用を許諾できる立場ある者は存在しない。
たとえ、バルセロナリッツが「RITZ」「リッツ」なる商標をわが国で所有していても、これとは類似しない本件商標の使用に許可を与えることはできないはずである。
また、フサ(HUSA)は、日本における商標権者を知り得ないから、本件商標の日本での使用については全て無関係であることを宣明したにすぎないのである。
▲4▼被請求人ホテルは、その開業に先立ち、バルセロナリッツとの業務提携に関する記事及び広告が掲載された(乙第106号証ないし同第115号証)。
そして、その後も、新聞、雑誌等の記事及び広告あるいはラジオ、テレビの放送による広告等により被請求人ホテルは需要者間に浸透していった(乙第116号証ないし同第262号証)。
また、被請求人ホテルは、グレードの高いホテルであり(乙第263号証ないし同第267号証)、同ホテル主催のもと各種講演を開催し、会場を提供してきている(乙第268号証ないし同第284号証)。
さらに、被請求人ホテルは、近時の刊行物にも継続して紹介されている(乙第285号証ないし同第291号証)。
かくして、本件商標は、被請求人ホテルの名称として、わが国では周知著名であり、少なくとも阪神間においては著名な商標といえるものである。
その著名性は、本件商標全体に対して帯有しているものである。したがって、これをいずれかで分離することはできないから、他人の名称「リッツ」とは全く関連づけられないものである。
▲5▼請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する旨主張するが、「リッツ」はホテル名、企業名として慣用表示であり、特定の営業主体を表す指示力がない。また、本件商標は「リッツ」と類似性がない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
▲6▼また、「リッツ」と我が国で周知著名な本件商標とは、役務に混同が生じないから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
なお、乙第292号証及び同第293号証によれば、「パリリッツ」の認知度は極めて低いものであり、また、「ホテルゴーフルリッツ」の知名度は神戸市において高い、としている。
(3)以上、詳述したように、本件商標は商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号に該当するものではない。
4.よって判断する。
(1)甲第10号証ないし同第18号証、同第21号証ないし同第26号証、同第28号証、同第30号証、同第91号証ないし同第105号証、同第131号証、同第145号証、同第146号証、同第155号証、同第160号証、同第162号証、同第172号証、同第175号証、同第185号証、同第197号証、同第205号証ないし同第209号証によれば、以下のことが認められる。
▲1▼請求人は、英国法人であり、同人が所有するパリのバンドーム広場に所在のリッツホテルは、1898年、セザール・リッツにより設立され、設立当初から今日に至るまで、豪華さと優雅さを備えた部屋や施設、きめ細かいサービス等により、世界の一流ホテルの一つとして高い評価を得てきた。
その宿泊利用者には、世界の王侯貴族、政治家、著名作家、映画俳優、著名デザイナー等世界的著名人が名を連ねており、また、同ホテルは、「昼下がりの情事」、「パリのアメリカ人」、「雨の朝巴里に死す」などの映画の舞台としても利用された。
同ホテルは、1980年から1988の間、大規模な改修と料理学校、水泳プール、ヘルスクラブ等の増設を行い、セザール・リッツが作り上げた豪華さ、優雅さとともに近代的な宿泊施設をも兼ね備えたホテルとして、宿泊利用者等へのサービスの充実を図った。
▲2▼わが国においても、同ホテルは、世界的に一流なホテルの一つとして、「リッツ」と略称されて旅行案内書、雑誌、新聞等において、本件商標の登録出願日前より多数紹介されており、同ホテルに宿泊するツアーコース、あるいは、同ホテル内の料理学校の講習等についても紹介されていた。
また、「90年世界のホテルランキング」において第4位に位置するものとして紹介された。
▲3▼請求人は、「インペリアル・インタープライズ」を通じて、本件商標の登録出願日前と認められる昭和61年頃より 「Ritz」「RITZ PARIS」の商標を使用した食器類、パスポートケース等の袋物、小物、スポーツウエア、時計等各種商品を通信販売していた。
▲4▼日本で発行された英和辞典類によれば、「ritz」の語は、「見せびらかし、見え」等を意味する語として記載されているが、セザール・リッツが創設したリッツホテルの名前に由来する旨の記載も認められ、また、「Ritz」、もしくは「ritz」の語に「The」を付すと、「リッツホテル」となる旨の記載も認められる。さらに、雑誌等におけるリッツホテルの紹介において、「以来百年、“デラックス”と同義語ともなったリッツの名は・・」、「セザール・リッツが〈エレガンス〉の代名詞ともなった〈リッツ〉という言葉をつくりあげて以来、・・」などの記載が認められる。
上記▲1▼ないし▲4▼の事実よりすれば、「RITZ」「リッツ」の表示は、請求人の経営に係るパリのリッツホテルを指称するものとして、本件商標の登録出願日前には、わが国のホテル業界の間は勿論のこと、一般の需要者の間にも広く認識されていたということができる。
(2)被請求人は、上記(1)に関して、「RITZ(リッツ)」の名称を冠するホテルは、請求人以外に世界各国に多数存在し、また、ホテル業以外にも「RITZ(リッツ)」の営業表示は多数存在するから、該表示は慣用化されており、地名等と結合して識別力を有する旨主張する。
しかしながら、請求理由及び甲第21号証、同第31号証、同第197号証を総合すると、セザール・リッツがその設立に関与した「リッツホテルズ ディベロップメント」は、その後、ロンドン、カイロ、マドリッド、ブダペスト、リスボンにリッツホテルを、ニューヨーク、モントリオール、ボストンにリッツカールトンホテルを開業し、各ホテル経営のため、それぞれ別個の会社を設けたが、ロンドンのリッツホテルは、1976年に「トラガーハウス インベストメンツ」に買収され、1994年以降、香港の「マンダリン オリエンタル ホテルグループ」に取得されたこと、マドリッドのリッツホテルは、「トラストハウスフォルテ」に買収されたこと、ニューヨーク、モントリオールのリッツカールトンホテルは、「リッツカールトン コーポレーション」に取得されたこと、カイロ、ブタペストのリッツホテルは閉鎖されたこと等が認められ、さらに、請求人とロンドンのリッツホテルとは、その所有者、経営者を異にするが、1985年に合弁事業契約に基づき会社を設立し、「RITZ」の表示に化体された名声とグッドウィルを維持する関係にあること、請求人は、1988年「リッツカールトン コーポレーション」の親会社である「ダブリュ ビー ジヨンソン」と「RITZ」の名称の使用に関するライセンス契約をしたこと、マドリッドのリッツホテルに関して、セザール・リッツは、1909年「リッツホテルズ ディベロップメント」に対して、「RITZ」の名称の使用を許諾したこと、請求人は、1955年リスボンのリッツホテルの経営者に対して、「RITZ」の名称の使用を許諾するとともに他の第三者に対する再使用権を付与することを禁止したこと、バルセロナのリッツホテルは、マドリッドのリッツホテルより「RITZ」の名称の使用を許諾されたこと等が認められる。
してみると、ロンドン、マドリッド、リスボン、バルセロナのリッツホテル、モントリオール及び米国などにおける「ダブリュ ビー ジョンソン」の所有に係るリッツカールトンホテルは、いずれもセザール・リッツに淵源するものであり、セザール・リッツが築き上げた「RITZ」の名称に化体された名声と信用を表彰するものとして該「RITZ」の表示を使用しているものと認められ、これらの各ホテルが相互に資本的、あるいは組織的に関係を有するものでないとしても、それぞれが全く別個に設立され、独自に「RITZ」の表示を採択したというものではなく、セザール・リッツに淵源を有するという点において、利害関係にあるものということができる。
そして、他に請求人と関係を有しない「RITZ」の名称を含むホテルが存在していたとしても、前記(1)で認定したとおり、「RITZ」「リッツ」の表示は、伝統と格式等において世界的に一流のホテルとしての、パリのリッツホテルを表示するものとして、本件商標の登録出願日にはすでに、わが国の取引者、需要者の間に広く認識されていたというべきであり、かつ、「RITZ」の表示の顧客吸引力を利用した第三者による模倣使用をもって「RITZ」の表示が慣用化されていたものとすることはできない。したがって、被請求人のこの点に関する主張は採用できない。
また、被請求人は、「GAUFRE RITZ/ゴ−フルリッツ」の各文字よりなる商標登録出願に対してなされた請求人の異議申立ては、特許庁では理由がないとの決定がなされたものであるから、「RITZ(リッツ)」はパリのリッツホテルを表示するものとして著名ではない旨を主張する。
しかしながら、乙第1号証ないし同第3号証は、商品に使用する商標に関する異議決定であるのに対して、本件は、請求人が営業するホテル業と直接関係を有する宿泊施設の提供をその指定役務中に含む本件商標に対する登録無効請求であるから、乙第1号証ないし同第3号証の異議決定と本件とは同等に扱うべきものではなく、上記異議決定に左右されるものではない。したがって、この点に関する被請求人の主張は採用できない。
さらに、被請求人は、「ritz]の語は「虚飾、見栄」といった意味で一般に使用されているものであり、また、例えば、「・・Ritz hotels」等のように複数のホテルが存在することを前提としているから、「RITZ」はパリのリッツホテルを指称するものではない旨主張する。
しかしながら、前記(1)の認定事実よりすれば、日本で発行された英和辞典類によれば、「ritz」の語は、「見せびらかし、見え」等を意味する語として記載されているとともに、セザール・リッツが創設したリッツホテルの名前に由来する旨の記載も多数認められるところであり、雑誌等におけるリッツホテルの紹介においても、セザール・リッツが作り上げた語である旨の記載が認められる。仮に、「見せびらかし、見え」等を意味する一般用語であるとしても、これがホテル業界等において、慣用化されているものであるとする証拠は、乙号証を総合しても見出し得ないから、この点に関する被請求人の主張も採用できない。
また、甲第31号証によれば、バルセロナのリッツホテルは、被請求人に対して、「RITZ」「リッツ」の名称を使用許諾する立場にないことが明らかである。
してみると、本件商標は、その構成中に請求人の経営するホテルを表示するためのものとして、著名な「リッツ」の文字を有してなるものであるから、これをその指定役務について使用した場合は、これに接する取引者、需要者は、該役務が請求人もしくはこれと何らかの関係を有する者の営業に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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