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Trademark Appeal Case

ワニ図形商標の混同と希釈化

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35528号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4004768号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙に示すとおりの構成よりなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」を指定商品として、平成7年9月27日に登録出願され、同9年5月30日に設定の登録がなされたものである。

2 請求人の引用商標

これに対し、請求人の引用する登録第1438466号商標(以下「引用商標」という。)は、別紙に示すとおりの構成よりなり、第17類「スポーツシャツ、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和46年10月15日に登録出願され、同55年9月29日に設定の登録がなされたものである。

3 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至甲第14号証を提出した。

(1)本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当し、同法第46条第1項により、無効にすべきものである。

(2)商標法第4条第1項第15号に該当する理由。

▲1▼請求人は、全英オープン等で活躍した有名なフランスのテニスプレーヤーであるルネ・ラコステ氏が1933年(昭和8年)に設立した会社であって、当初はテニスシャツ専門に製造・販売していたが、第2次世界大戦後はポロシャツ、その他のシャツやファッション製品を手掛けてきて今日に至っている。中でもそのポロシャツは世界の約90ケ国で販売され、その商標であるワニの図形は日本を含む国際市場で著名性を確立し(甲第8号証)、日本のブランドスコアランキングでは常に上位を占めている(甲第7号証)。

▲2▼本件商標と引用商標とは頭部、口の開き具合等に差異があるものの、両者ともまさしく尾をはねあげたワニの図形であって、両者は構成全体としても酷似するものである。しかも、本件商標の指定商品と引用商標を付して使用しているポロシャツその他の被服類とは同一又は類似する商品であること明らかである。

したがって、本件商標は、請求人がその業務に係る商品「被服類」に使用して広く一般に知られている引用商標と、その構成の軌を同じくするものであり、また表現態様も酷似するものであるから、これを指定商品に使用するときは、取引者、需要者をして、その商品が請求人によって製造販売されている商品の一種であると誤認し、商品の出所について混同を生ずる虞れが多分にあるものと言うのが相当である。

(3)商標法第4条第1項第19号に該当する理由

▲1▼引用商標は、上述した通り、請求人の永年にわたる不断の努力により世界的に著名な標章となっており、日本国内においても、取引者、需要者間で広く認識され強力な顧客吸引力を取得している著名商標である。

▲2▼請求人が使用する引用商標については模倣 商標が頻繁に発生し(甲第3号証乃至第6号証)、しかも模倣商標を付した商品が粗悪な品質で価格も廉価であるため、請求人が商品の品質向上及び商標の信用維持のために永年費やしてきた多大な努力が意味をなさなくなり、一流ブランドとしての信用と請求人の商品に対する信用が著しく毀損されている。

▲3▼本件商標権者はかって引用商標とそっくりな図形商標をポロシャツの胸ポケットに表示して(甲第11及び12号証)販売したことがある。これに対して異議申立人は平成7年9月12日付で商標権侵害及び不正競争法違反を理由として警告状を出し(甲第9号証)、甲第10号証として提出した写のとおりの回答を得た。

しかしながら、その後においても上記侵害商品は都内の安売店において販売されている事実が請求人代理人によって目撃されている。これは極めて悪質な不正競争行為であり、本件商標は引用商標の著名性に便乗して不当の利益を得る目的で出願されたものと言わざるを得ない。

さらに、本件商標をその指定商品に使用する行為は、請求人が多大の努力と費用を費やし永年かけて築いた引用商標のグッドウイルを剽窃することであり、結果として引用商標に化体されたグッドウイルが希釈化されその名声が棄損されることとなるものである。また、国際信義にも反するものである。

4 被請求人の主張

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。

(1)商標法第4条第1項第15号の規定に該当しない理由。

▲1▼本件商標は、権利者の創作による生物らしきものを描いた図形であり、左端に頭部らしき形が、右端に尾らしき形が認められ、「ワニ」に見えなくもないが、全体から受ける印象は、看者によって「ワニ」の他に「トカゲ」「サカナ」「恐竜」等と様々であり、特定の観念を生じさせるものではない。

▲2▼それに対して、引用商標は、「lacoste」の文字の入った「ワニ」のマークとして世界的に広く知られた著名商標であり、特に我が国においては、他の有名ブランドの中でも取り分け伝統のある高級ブランドの一つと認識されており、若者から熟年者に至るまで人気のある熟知された著名ブランドである。

▲3▼本件商標と引用商標とは、向き、口の開き具合、尾の上げ具合等の細部の差異を対比観察するまでもなく、看者に全く異なった印象を与える非類似の商標であり、たとえ、本件商標が引用商標と同じ商品、例えば、ポロシャツ等のワンポイントマークとして刺繍により表示された場合であっても、本件商標における全体的に尖った形であるという印象は失われることがなく、取引者は勿論、一般需要者においても本件商標をラコステの標章と誤認するはずがない。言い換えれば、特定の観念を生じさせない本件商標が付された商品が、ワニマークで有名な「ラコステ」の称呼で取り引きされたり、「ラコステ」社の生産・販売又は取扱いにかかる商品と認識されたりするようなことは社会通念上あり得ない。

▲4▼ このように、本件商標と引用商標とは称呼、観念は勿論、外観においても相紛れることのない非類似の商標であり、時と所を異にして観察された場合においても、本件商標から引用商標を連想するおそれはない。よって、取引者、需要者をして商品の出所について混同を生じさせるおそれは全くない。

(2)商標法第4条第1項第19号の規定に該当しない理由。

▲1▼本件商標と引用商標とは、類似する要素の全くない非類似の商標であり、被請求人が、その独自の商標として本件商標を出願し、その登録を待って使用しようとしていることからして、本件商標は商標法第4条第1項第19号の規定に該当しない。

5 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第15号について

▲1▼本件商標は、別紙に示すとおりの構成よりなり、左端に口を開けた頭部、右端に尾らしき形が認められ、全体として、爬虫類の図形のごとき印象を与えるにすぎず、「ワニ」とも「トカゲ」とも特定できないもであるのに対して、引用商標は、別紙に示すとおりの構成よりなり、右向きで口を開け左端の尾を上にはね上げた態様のワニの図形の胴体に「lacoste」の欧文字を書してなるものである。

してみれば、本件商標と引用商標とは、その構成よりして、外観上明らかに区別しうるものである。

▲2▼さらに、本件商標が、上記認定のごとく「ワニ」とも「トカゲ」とも特定できないものであり、本件商標よりは、特定の称呼、観念を生じないものであるのに対して、引用商標は、上述の態様よりなり、請求人の業務に係る商品であることを表す商標として広く知られているものであるから、これより「ラコステ」、「ラコステノワニ」の称呼、「ラコステの鰐」の観念を生ずるものである。

そうとすれば、本件商標と引用商標とは、称呼、観念においては、比較することができない。

▲3▼したがって、本件商標と引用商標とは、外観・称呼及び観念のいずれよりみても類似しないものであって、かつ、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者がその商品を請求人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如くその出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。

(2)商標法第4条第1項第19号について

本件商標と引用商標とが、非類似の商標であること前記認定の通りであり、また、甲第3号証乃至甲第14号証、乙第1号証及び乙第2号証からは、本件商標を不正の目的をもって使用するものとも認められないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の規定に該当するものでもない。

(3) したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものとはいえないから、本件商標の登録は、同法第46条第1項の規定により無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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