結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成8年審判第14453号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
1.本件商標
本件登録第2608814号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲第一商標に示すとおり、「LEE BI−WAY」の欧文字と「リー ビー ウェイ」の片仮名文字を上下二段に横書きしてなり、平成3年10月25日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、同5年12月24日に設定登録、現に有効に存続するものである。
2.請求の趣旨及び請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第44号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)請求の理由
a)請求人は、主力商品ジーンズ(ジーパン)を軸としてティーシャツ、ジャケット、シャツ及び帽子等の製造・販売を主たる業務とする米国法人である。請求人は、これらの商品について、別掲第三商標に示すとおりの「Lee」の文字から構成される商標(以下、「引用商標A」という。)及び右文字を図案化した別掲第四商標に示す商標(以下、「引用商標B」という。)並びに別掲第五商標に示す標章(以下、「引用商標C」という。)を使用している。(なお、請求人は、商標登録第754296号及び同第1059991号を所有している。)
引用商標A及びBを付した請求人の製造に係る前記商品は、昭和45年以来日本国に広範に輸入・販売されて来た。さらに、引用商標A及びBを付した前記商品は、昭和47年以来請求人のライセンスのもとに、輸入品と並行して日本国内で製造・販売されて来た。その結果、引用商標A及びBは、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の出願日前から現在に至るまで、我が国の需要者・取引者の間で広く認識されるに至っている。
例えば、矢野経済研究所が昭和53年に日本全国のジーンズ取扱店のうち有力100店を抽出して行なった市場調査では、引用商標A及びBの知名度はトップの「ビッグジョン」と同じ指数を示して注目されている。また、同じく、東京・横浜に勤務・通学する15才以上の消費者600人を対象とした調査では、引用商標A及びBの知名度は、数あるジーンズのブランド中5位で、68.3%の回答者が知っており、所有率も25%に達して5位にランクされ、その著しい躍進が特筆されている。この様に、引用商標A及びBは、請求人の商品が我が国に上陸してから10年も経ないうちに需要者の間に広く認識されるに至ったものである。
その後も、引用商標A及びBは、「リーバイス」及び「ラングラー」と並び称される米国製ジーンズの3大ブランドのひとつとして、益々その著名性を高めてきたのである。こうした引用商標A及びBの著名性に立脚して、引用商標Cも、また、日本国の取引者・需要者間で広く認識されている。
b)この度、別掲第二商標に示す商標(以下、「本件使用商標」という。)を付したティーシャツが製造・販売されていることが判明した(甲第30号証乃至甲第33号証)。請求人が調査したところ、上記ティーシャツは、本件商標の権利者「リービーウェイ カンパニ」(平成9年6月23日移転登録)に移転される前の権利者「河野 詔」(以下、「前商標権者」という。)が代表取締役社長を務める「株式会社メンズハウスロード」(以下、「メンズハウス社」という。)が、前商標権者からの使用許諾のもとに、製造・販売していることが判明した。
c)よって、請求人は、上記会社に対し、本件使用商標の使用を中止すべき旨を要求したところ、前商標権者から請求人に対し直接電話連絡が為された。前商標権者は、その電話の中で、本件使用商標は、前商標権者の許諾のもとに上記会社がティーシャツに付したものであること、本件使用商標の使用を直ちに中止すること及び穏便な解決を希望することを述べた。請求人は、前商標権者に対し、書面による回答を要求し、前商標権者もそれを承諾していたところ、請求人は、平成8年10月に上記会社は解散した旨の通知を得た。これに対し、請求人から当該清算人に対し書状を送付したところ、当該清算人からは甲第37号証のような内容の返答を得ている状況である。
d)本件使用商標の構成のうち、最も看者の眼を惹く要部である「Lee」の文字は、引用商標A及びBに酷似している。更に、本件使用商標に使用されている「SINCE 1889」「KANSAS」等の文字及び記号は、何れも、引用商標Cに表示されているものである。従って、本件使用商標は、その要部において引用商標A及びBに類似し、全体として引用商標Cに類似するものである。その結果、「Lee」標章の著名性に基づいて、本件使用商標を付したティーシャツは、請求人の業務に係るティーシャツと出所の混同を生ずるに至ったのである。
而して、本件使用商標が本件商標に類似していることは言うまでもない。
また、本件使用商標の使用に係る商品「ティーシャツ」が本件商標の指定商品に含まれていることは明らかである。
従って、本件商標は商標法53条1項の規定によりその登録を取り消されるべきものである。
(2)請求人の弁駁
a)請求人は、前商標権者が平成9年1月20日付で提出した答弁書に対して、平成9年7月14日に本件の審理の猶予を希求する上申書を提出した。しかしながら、請求人は、その後、平成9年9月17日に本件に関する審判手続続行通知を受領したので、本書面を提出するものである。
b)前商標権者がメンズハウス社の代表取締役の地位にあったことは、同社の商業登記簿謄本並びに信用交換所総合事業部発行の「全国繊維企業要覧1998vol31」に照らして明白である。
更に、本件使用商標を付したティーシャツの繊維製品品質表示者番号は「C−GH 856」であるところ(甲第40号証)、右品質表示者番号を付した商品の製造者が、メンズハウス社であることは、日本繊維新聞社発行の「繊維製品品質表示者番号便覧’96年版」により明らかである(甲第41号証)。
従って、本件使用商標が、本件商標の前商標権者の使用許諾のもとに、メンズハウス社により商品「ティーシャツ」について使用されていたことは、明白である。
なお、被請求人は答弁書の中で、本件商標については「株式会社セント・ローラン」に対して専用使用権が設定されているから、前商標権者としては自らが代表者を務めるメンズハウス社といえども、その使用権を許諾できない旨を主張している。確かに、形の上では、そのような登録がなされていることは事実である。しかしながら、その登録は、商標権の存続期間満了時まで、しかも、対価は「無償」という極めて異例なものであり、この専用使用権の登録は、本件のような取消審判に形の上で対抗できるようにする目的をもって、かつ、その目的のみのためになされているものであることが明らかである。このことは、請求人が、平成9年7月14日に上申書とともに提出した前商標権者の放棄書について、専用使用権者から何らの異議もなくその承諾書が提出されていることからも明白なところである。この承諾書が提出されているという事実は、いずれにしても、「株式会社セント・ローラン」がメンズハウス社による本件商標の使用を認容していた事実を如実に物語るものに他ならない。
ちなみに付言すると、請求人がメンズハウス社に対して送付した甲第34号証の警告状に対し、同社の代表者でもある前商標権者から請求人に直接電話連絡がなされ、その電話のなかで前商標権者は、メンズハウス社による本件使用商標の使用は、正当な権限の下に本件商標を使用するものであって請求人の権利を侵害するものではない旨を述べている。このことからも、メンズハウス社が商標権者及び専用使用権者からの許諾の下に本件使用商標を使用していたものであることは、明白である。さらに、本件においては、専用使用権者から何らの異議も提出されておらず、逆に上述のような承諾書が提出されているのであって、専用使用権者自身も、メンズハウス社による本件使用商標の使用を許諾していたものであることが明らかである。
被請求人は、答弁書において、甲第30号証乃至甲第33号証の商品がメンズハウス社のものであること及び同社が前商標権者の許諾の下に本件使用商標を使用していたものであることを否認しているようであるが、請求人が平成8年9月18日にメンズハウス社に警告状を送付した際に、被請求人代理人は、請求人に対して直接電話を入れ、電話にて、メンズハウス社に対して上記商品の製造販売を直ちに中止するようアドバイスするので穏便な処理をお願いする旨申し入れている。被請求人代理人は、本件商標の出願登録手続をすべて担当しており、メンズハウス社が前商標権者らの許諾の下に、本件使用商標を使用していたことを熟知しながら、答弁書におけるような主張をなすことは、極めて遺憾という他ない。
請求人は、平成8年11月21日に提出した手続補正書の中で、その時点までの経緯について述べたところであるが、ここに、その後の経緯について述べることとする。
請求人は、メンズハウス社の清算人と称する者から平成8年10月16日付の手紙により同社は解散した旨の連絡を受け、また、 同清算人から同社は甲第30号証乃至甲第33号証の商品を既に製造販売していない旨の通知を受けた。
請求人は、事態をしばらく静観することとしていたところ、平成9年5月に至り、メンズハウス社が「LEEHR」という商標を登録し、これを「LeeHR」という形で使用している事実を発見した。そこで、請求人は前商標権者に対して、再度警告状を送付した。と同時に、請求人がメンズハウス社の登記簿謄本を調査したところ、同社の解散登記は全く見せかけだけのものであり、同社は実は上記解散登記をなして、その登記簿謄本を請求人に送付した直後に、同社の会社継続決議をなし、会社継続登記をなして営業を営んでいることが判明した。
請求人からの上記警告状に対し、前商標権者は平成9年5月19日に請求人代理人の事務所に出頭し、それまでのいきさつを説明するとともに、本件商標及び上記「LEEHR」商標をいずれも請求人に無償で譲渡することにより本件を解決してもらいたい旨の申し入れをなした。請求人はこれに対し、これらの商標の譲渡ではなく、放棄をしてもらいたい旨を申し入れ、前商標権者はこれを快諾した。
請求人は、前商標権者に対し、平成9年5月27日付の書簡とともに、これらの商標権の放棄書及び関係書類のフォームを送付した。その後、請求人から前商標権者に対して何度か電話で催促した結果、平成9年7月に前商標権者から受領した放棄書、承諾書、委任状等が、請求人が同年同月14日付の上申書とともに提出した書類である。
請求人は、平成9年9月8日付の審判手続続行通知を受けたため、登録原簿を調査した結果、本件商標は、平成9年4月24日に他に移転がなされ同年6月23日に、その旨の登録がなされていることを知った。
請求人は、前商標権者のたび重なる虚像の陳述と欺瞞行為に対して、ただただ唖然とするばかりである。前商標権者のこのような欺瞞に満ちた行為は、とうてい許されるべきものではない。
3.答弁の趣旨及び被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を次のように述べた。
(1)第1回答弁
請求人は、メンズハウス社が、前商標権者の使用許諾のもとに本件使用商標を使用していると主張している。
しかし、甲第30号証乃至甲第33号証の商品がメンズハウス社のものである旨の立証は全くなされていない。
しかも、本件商標については、商標登録原簿からも明かなように、平成7年7月10日に別の法人である「株式会社セント・ローラン」に対して専用使用権が設定されている。この専用使用権の範囲は「全部」に及んでおり、前商標権者が代表者を務めるメンズハウス社といえども、本件商標を使用することができないものである。
即ち、請求人が、本件使用商標の使用を中止すべき旨の要求をした段階において、既にメンズハウス社は、少なくとも通常使用権者ではない。また、請求人は、本件使用商標を付したティーシャツを通常使用権者であるメンズハウス社が製造・販売していると主張しているが、前商標権者と同社とが、実際通常使用権を設定していたのか、また、同社が通常使用権者である時期に使用していたかの立証も全くなされていない。
請求人の主張する前商標権者との電話連絡については、請求人の主張のみであり、その立証は全くなされておらず、また甲第35号証及び甲第37号証の証拠についても、実際に使用していたか否か、あるいは通常使用権が設定されていたか否か等の事情を完全に掌握していない清算人のものにすぎない。しかも、これらの時期をみても、既に、専用使用権が設定された後であり、清算人は、専用使用権が設定されいる等の事情もよく把握していないと考えられる。
以上述べたように、本件商標については、請求人の主張した通常使用権者と前商標権者との間に通常使用権の設定があったのか、また、通常使用権者とされたメンズハウス社が実際に使用していたのか、さらに、いかなる時期に使用していたか等の立証がなされていない。また、専用使用権者が本件使用商標を使用しているわけでもない。
このため、請求人の請求は、商標法第53条第1項の要件を満たすものとは認められないので、答弁の趣旨の通りの審決を希求する次第である。
(2)第2回答弁
a)請求人は、本件使用商標を付したティーシャツ(甲第30号証乃至甲第33号証)は、繊維製品品質表示者番号「C−GH 856」から、メンズハウス社のものであり、本件商標の前商標権者の使用許諾のもとに、同社が使用していたことは明白であると主張している。
しかし、甲第40号証には、洗濯等の説明書きと繊維製品品質表示者番号等が付されているのみで、使用されている商品が何なのか、あるいは、この商品に本件使用商標が果して付されているのか等は全く不明である。
したがって、甲第30号証乃至甲第33号証のティーシャツがメンズハウス社のものであるとの立証は依然として全くなされていないものである。なお、本件商標を模倣した商品自体も出回っており(繊維製品品質表示者番号は公開され、第三者が便覧を入手可能であることから、模倣が可能である。)、甲第30号証乃至甲第33号証のティーシャツがメンズハウス社のものであるとの特定は依然としてされていない。
b)次に、請求人は、本件商標についての「株式会社セント・ローラン」に対する専用使用権の登録は、取消審判に形の上で対抗できる目的をもって、かつ、その目的のみのためになされたものであると主張している。
しかし、本件商標についての専用使用権の設定は、平成7年7月10日に行われており、あくまで平成8年8月22日の請求人の取消審判請求以前に行われたものである。したがって、取消審判に形の上で対抗する目的で設定したとする請求人の主張こそ根拠のない一方的な主張にすぎない。
また、請求人は専用使用権の内容が存続期間満了時までで、対価も無償であることから、このような登録は極めて異例の登録であることを強調している。
しかし、期間については、権利者による本件商標の更新の際に、専用使用権変更登録申請が必要であることから、その時点で見直しが可能であり、存続期間満了時までの設定は通常行われているものである。対価についても、営業上の関係を強化したり、金銭以外の営業的メリット等が生じることから、通常行われているものであり、請求人主張のように何等異例のものではなく、このような例は数多くある。
c)また、請求人は、前商標権者及び被請求人代理人は、電話にてメンズハウス社が、本件商標を使用していたことを認めていることを主張している。
この点については、全面的に争いたい。しかし、全く証拠もなく、しかも争ったとしても、結局言った、言わないの水掛け論になるものであることから無意味なことである。
d)最後に、請求人は、前商標権者が、本件商標及び「LEEHR」の商標を請求人に無償で譲渡することを快諾し、放棄書を提出していることを主張している。
確かに、前商標権者は、放棄書に捺印したものであるとのことである。しかし、本件商標は、放棄書に捺印する前に、被請求人である現権利者に既に移転されており、原権利者である被請求人は、この放棄書自体無効であると考える。
以上述べたように、請求人の主張事実は何れも妥当なものではなく、認められるべきものではない。
4.当審の判断
(1)引用商標の著名性
本件審判請求の理由及び甲第2号証乃至同第29号証を総合してみるに、以下の事実が認められる。
a)請求人は、1889年、ワークウェア(労働着)を含む食品・雑貨の総合卸商として、米国カンサス州サリナで創業、その後、ワークウェアの製造を開始し、1911年には、「Lee」のオーヴァーオールやワークジャケットが、カウボーイなど過酷な環境の中での労働者に適した丈夫な衣料として、全米で人気を博し、ワークウェアー・ブランドとしての「Lee」標章の基盤ができあがった。そして、1917年には、請求人の製造する作業着が陸軍のユニホームとして採用された。さらに、1963年、「リー・ヨーロッパ」を設立。1964年と1970年、米国の輸出拡大プログラムに貢献したことで大統領から賞を贈られた。
「Lee」のジーンズには、1936年から現在まで一貫して、「Lee」標章(引用商標B)とその右上部に小さく「R(マル)」「M.R」の記号を焼印した本物の牛革のレザーラベルが付されていて、そのジーンズは、信頼性が高く丈夫で機能的であるとの評判を得ている。そして、「Lee」は、アメリカのジーンズ3大ブランドの一つとなっている。
b)我が国では、請求人の許諾の下に、昭和45年から、「株式会社堀越商会」「Lee Japan Co.,Ltd.」「株式会社エドウィン」等の企業により、「Lee」のジーンズ、ジャケット等が輸入販売又は製造販売されている。
また、昭和55年から同63年にかけて発行された雑誌「 MEN’S CLUB」(株式会社婦人画報社発行)、雑誌「POPEYE」(株式会社マガジンハウス発行)、雑誌「メンズノンノ」(株式会社集英社発行)等には、「Lee」の文字を顕著に表示したジーンズ、ジャケットなどのワークウェア の宣伝・広告が掲載されているほか、「アメリカ製品の本」(株式会社ワールドフォトプレス、昭和56年5月25日発行)、「FINEBOYS別冊・保存版 JEANS解体新書(All about Jeans)」(日の出出版株式会社、昭和63年7月30日発行)にも、「Lee」のジーンズ、ジャケット等の紹介記事が掲載されている。
上記の宣伝広告や紹介記事が掲載されている甲第2号証乃至同第23号証によれば、「引用商標B」の「Lee」を基本として、ジーンズのヒップポケットの刺繍やボタン、ジッパー等の刻印には「引用商標A」の「Lee」が使用され、さらに、「引用商標C」も、昭和62年には宣伝・広告に使用されていることが認められる。
c)繊維総合マーケティング情報誌「ヤノニュース」別冊の「’79JEANSマニュアル」(株式会社矢野経済研究所、昭和53年12月20日発行)における「Lee」ブランドの知名度(全国のジーンズ取扱店の中から有力100店舗を抽出した調査)は、昭和52年及び同53年のいずれも、第1位の「ビッグジョン」に次いで第2位にランクされている。また、ジーンズの消費者調査(東京・横浜の600人)においても、昭和53年の「Lee」ブランドの知名率は、68.3%となっている(甲第24号証)。
d)以上の事実からみれば、「Lee」標章(引用商標A乃至C)は、遅くとも本件商標の登録出願時の平成3年には、ジーンズ、ジャケットを中心とする被服を表示する商標として、取引者・需要者の間に広く認識されていたものということができる。そして、「Lee」標章の著名性は、現在も継続していると認められるものである。
(2)本件商標と本件使用商標との比較
本件商標は、別掲第一商標に示すとおり、「LEE BIーWAY」の欧文字と「リー ビー ウェイ」の片仮名文字を上下二段に横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して、「リービーウェイ」の称呼を生ずるものであること明らかである。
他方、本件使用商標は、別掲第二商標に示すとおり、太字の「Lee BiーWay」の欧文字及びその上下に「SINCE 1889」「R(マル)」「M.R.」と「KANSAS」の欧文字及び記号を付記的に小さく細字で表示した構成よりなるものであるところ、その構成からみれば、「Lee BiーWay」の欧文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たすと認められるものであるから、これより「リービーウェイ」の称呼を生ずる。
してみれば、本件商標と本件使用商標とは、それぞれ生ずる称呼「リービーウェイ」を同じくする類似の商標といわなければならない。
(3)本件使用商標の使用時期及びその使用者並びに本件商標の通常使用権者について
請求人提出の甲第34号証乃至同第39号証、甲第42号証乃至同第44号証及び平成9年7月14日付差出の審判事件上申書によれば、以下の事実が認められる。
a)「メンズハウス社は、『Lee Bi−Way』のブランドを付したティーシャツを製造・販売しているが、このブランドと請求人の『Lee』とは極めて類似している。そして、『Lee Bi−Way』と『SINCE 1889』『KANSAS』の文字との使用と相まって、両者の各商品間における誤認混同を生ずるおそれが極めて大である。メンズハウス社が、このような文字を付したティーシャツを製造販売する行為は、請求人の登録第1059991号商標、同第754296号商標等の商標権を侵害するものである。」(平成8年9月18日付)及び、「違法行為は同社の解散によっても何等解消されるものではない。請求人が警告状で要求した内容を直ちに報告されたい。」(平成8年11月13日付)旨のメンズハウス社に宛てた請求人の2回の警告書に対して、同社(清算人 西脇龍雄)は、「弊社業績不調につき本日の株主総会で解散した。」(平成8年10月16日付)及び「問題にされている商品は既に製造販売していない。」(平成8年11月19日付)旨の回答書を請求人に提出した。
b)「メンズハウス社が『Lee Bi−Way』のブランドを付したティーシャツを製造・販売している件に関して、請求人は、何らかの法的措置を講ずる。」(平成9年5月9日付)及び、本件商標の権利放棄を要求する(平成9年5月27日付)旨の前商標権者に宛てた請求人の書面に対して、前商標権者は、平成9年12月31日を以て本件商標権を放棄する内容の「商標権の放棄書」及び本件商標権を放棄することについての専用使用権者の「承諾書」を、平成9年7月、請求人に提出した。
c)以上の事実を総合すれば、請求人が第1回目の警告状を発した平成8年9月18日前の平成8年前半には、メンズハウス社によって、本件使用商標が商品「Tシャツ」(甲第30号証乃至同第33号証)に使用されていたものと推認できる。
また、前記b)の請求人の書面に対して、前商標権者が「商標権の放棄書」及び専用使用権者(株式会社セント・ローラン)の「承諾書」を提出したこと、メンズハウス社の代表取締役が前商標権者、監査役が専用使用権者の代表者と同一人の関係にあることを併せ考慮すれば、メンズハウス社は、前商標権者又は専用使用権者に使用許諾を得ていたもの、即ち、本件商標の通常使用権者として、本件使用商標を商品「Tシャツ」に使用していたとみるのが自然である。
したがって、本件使用商標は、本件商標の通常使用権者「メンズハウス社」により、引用商標の著名性獲得後の平成8年前半頃に商品「Tシャツ」について使用されていたものというべきである。
(4)出所の混同について
本件使用商標は、別掲第二商標に示すとおり、太字の「Lee BiーWay」の欧文字及びその上下に「SINCE 1889」「R(マル)」「M.R.」と「KANSAS」の欧文字及び記号を付記的に小さく細字で表示した構成よりなるものであるところ、その構成からみれば、「Lee BiーWay」の欧文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たすと認められるものである。そして、該「Lee BiーWay」の文字は、前半の「Lee」の文字部分が後半の「BiーWay」の文字部分に比較してやや太字で表されていること、両文字間に半文字程度の間隔があること、後半の「BiーWay」の文字が前半の「Lee」の「L」よりやや小さく表されていること等を総合してみれば、これに接する取引者・需要者は、前半部の「Lee」の文字のみに注意を惹かれる場合も決して少なくないといい得るものである。
さらに、請求人が使用する引用商標Cと本件使用商標を比較するに、引用商標Cは、別掲第五商標に示すとおりであるところ、「Lee」の文字の上下に付記的に小さく表示された「SINCE 1889」「R(マル)」[M.R.」と「KANSAS−USA」の文字が、「請求人の創業年が1889年であること」「登録商標であること」「請求人の創業地が米国カンサス州であること」をそれぞれ意味すると認めらものである。そして、これと同様に、本件使用商標は、「Lee BiーWay」の文字の上下に付記的に小さく「SINCE 1889」「R(マル)」「M.R.」と「KANSAS」の文字及び記号が表示されていて、引用商標Cと酷似した構成態様のものとなっている。
そうとすると、前記(1)のとおり、引用商標A乃至Cが、本件使用商標の「Tシャツ」への使用時には、既に、ジーンズ、ジャケットを中心とする被服を表示するものとして、取引者・需要者の間に、広く認識されていたものであるから、本件商標の通常使用権者と認められる「メンズハウス社」が、上記構成態様よりなる本件使用商標を本件商標の指定商品中の「Tシャツ」に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、その前半部の「Lee」の文字のみを捉え、著名標章の「Lee」を連想、想起し、その商品が請求人又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあったものと判断するのが相当である。
したがって、通常使用権者(メンズハウス社)における、本件使用商標の使用は、「他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをした」といわなければならない。
なお、前記(3)の事実からみれば、前商標権者は、通常使用権者(メンズハウス社)が本件使用商標を使用していたことを知っていたというべきであるから、商標法第53条第1項但し書きの「当該商標権者がその事実を知らなかった場合において、相当の注意をしていたときは、この限りでない。」に該当するものということはできない。
(5)以上のとおり、本件商標に係る通常使用権者が、指定商品中「Tシャツ」について、登録商標(本件商標)に類似する商標(本件使用商標)を使用するものであって、他人(請求人)の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたと認められるから、本件商標の登録は、商標法第53条第1項の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。