結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第35108号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第3294447号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成6年8月4日登録出願、後掲(1)に示す構成よりなり、第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、平成9年4月25日に設定の登録がされたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求める、と申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁をつぎのように述べ、証拠方法として、甲第1号証乃至甲第12号証を提出した。
(1)本件商標は、商標法第3条第1項第4号並びに同法第4条第1項第8号、第10号、第11号及び第15号に該当するものであるから、その登録は、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。
(2)本件商標の称呼、観念等
本件商標は、商標公報(甲第1号証)にみられるとおり、単純な図形とやや図案化した欧文字からなるが、図形にさしたる特徴もなく、文字部分が要部的にみられる態様のものである。
そして.文字部分は、誰の目にもそれが「FURUKAWA」の文字を表したものと直ちに認識される程度の変形であり、「フルカワ」と称呼されるものであることは疑いないところである。言い換えれば、その図案化の程度は、通常用いられる表現手法によるもので、全体として、特定の文字を表したものとは認められないとか、特定の称呼を生じないというような範疇のものではない。
欧文字の文字綴りの商標にあっては.本件商標におけるように相隣接する2文字をそれぞれの作りを共有させて表すことが普通に行われており、この程度の図案化では、通常の欧文字の城を出ないことは、甲第3号証の1乃至4として提出する審決等でも明確にされているところであり、本件商標の構成にあっても「FURUKAWA」の特徴がなくなるような特異のものでないことは明らかである。
商標は、字体等外観により目に訴えて商品を識別させる作用を営むだけでなく、電報とか口頭による注文の際にはもちろん、通信文による場合にも、その商標を構成するものとみられる文字の普通書体を書き、又はその商標から普通に生じる称呼によって取引きに当たるものである。
したがって、本件商標は、「フルカワ」と称呼され、「古川」「古河」に通じるものとして認識されるものであることは疑いないところである。
商標法第3条第1項第4号等にいう「普通に用いられる方法」は、単に外観的構成が特異であるかどうかという観点からのみ判断される性質のものではなく、それが普通に称呼されるような態様であり、その称呼が本来識別性がないものとされるありふれた氏姓に通ずるような場合には、その態様が「普通に用いられる方法」の域を出ないのであるから、これに該当するものと扱うべきものである。
(3)本件商標が商標法第3条第1項第4号に該当する理由
本件商標が極く単純な図形部分を含むことによって、全体に識別性を有することとなるものとも思われず、文字部分が要部的にみられるものであること及び文字部分がありふれた氏である「古川」「古河」に通じるものであり、これを普通に用いられる程度の態様の欧文字で表したものと認識されるものであることは前述のとおりである。
言い換えれば、本件商標は、「古川」「古河」に通じる「FURUKAWA」の文字のみからなるに等しく、このことは、本件商標が登録第3294448号商標(商公平8−107684)(甲第2号証の公報所載)と連合する商標として登録されていることからも明らかなところである。したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第4号に該当するものである。
(4)本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当する理由
本件商標の構成中の「FURUKAWA」は,「古河」に通じるものであるところ、請求人会社である古河電気工業株式会社は、長年に亘り、その略称として、「古河」「FURUKAWA」を使用しており、また、そのグループ企業の総称的な名称として「古河」「FURUKAWA」は著名である。古河グループの発祥は、広辞苑にも掲載される「古河市平衛」の事業からである(甲第4号証の1,1986版古河グループ概要第2頁参照)。
請求人会社は、1896年の設立にかかり、いわゆる旧財閥系の企業として他の同系列の企業と共に、国内はもとより海外においても古くから「古河」「FURUKAWA」の名で知られている。
請求人会社は、特に商品「電線ケーブル」については、業界のトップクラスに位置する企業であって、現在も全国各地に工場、営業所を持ち、関連企業も含め、通信ネットワーク関連機器の開発、生産にも乗り出している。
また、古河グループの概要は、甲第4号証の1及び2に示すとおりで、社名に「古河」を冠する主だったものだけをあげてみても、請求人会社である古河電気工業株式会社のほか、古河機械金属株式会社、古河林業株式会社、古河電池株式会社、古河産業株式会社、古河総合設備株式会社、古河鋳造株式会社、株式会社古河テクノマテリアル、古河サーキットフォイル株式会社のようにあり、その他、古河電線販売株式会社等これらの関連会社も含めると全国各地に工場、営業所を持ち、広範囲に亘る地域と産業分野において活動しており、「古河」「FURUKAWA」の名は深く浸透している。
また、請求人会社は、甲第5号の1乃至9の各証に示すとおり、古くから技術情報、製品情報等を掲載した100〜200頁に及ぶ「古河電工時報(FURUKAWA ELECTRIC REVIEW)」を発行している。この冊子は、年2回の発行で戦後の再刊後にあってもすでに100号を超えているものであって、中央及び地方の官公署、大学公益団体のほか全国の主要会社に継続して送付しており、その頒布の部数は、現在では、毎号ほぼ4,000部に達する。
このように、商品の販売を中心とする営業活動を通じ、また、関連技術の紹介、製品の紹介等を通じての企業のPRを長年に亘り広い層に対して継続して行っているものであり、したがって、全国的に「古河」「FURUKAWA」といえば、直ちに、請求人会社である古河電気工業株式会社の略称あるいはグループ企業の総称的な名称として認識されるに至っているものであり、これに通じる「FURUKAWA」をそのまま含む本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものであることは明らかである。
(5)本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当する理由
本件商標は、特に商品「電線ケーブル」について周知となっている請求人の「古河」「FURUKAWA」又は「古河電工」「FURUKAWA ELECTRIC」と類似するから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
請求人は、たとえば、甲第6号証の1乃至14に示すように、長年に亘り「古河電工」「FURUKAWA ELECTRIC」あるいは「古河〜(商品名)」「FURUKAWA〜(商品名)」のような商標を使用して電線ケーブルを中心に宣伝広告し、商品を販売し、今日に至っている。
これらの商標を使用しての商品の売り上げは、昭和60年頃を例にとってみても、電線・ケーブルだけでも251,529百万円に達している(甲第4号証,1986版古河グループ概要第10頁参照)。
したがって、すくなくとも電線・ケーブルについては、「古河」「FURUKAWA」又は「古河電工」「FURUKAWA ELECTRIC」の商標は、周知であり、また、「古河電工」「FURUKAWA ELECTRIC」なる商標にあっては、その構成中の「電工」「ELECTRIC」が業種、業態等を示すものとして認識されるから、これらの商標にあっては、「古河」「FURUKAWA」が要部として認識されるものであることは明らかであり、「FURUKAWA」と容易に認識される本件商標と類似することは明白であり、本件商標の指定商品には、請求人の前記商標の使用商品として挙げる電線・ケーブルが含まれていることも明らかであるから、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
(6)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する理由
請求人は、商標の構成をそれぞれ後掲(2)、(3)、(4)に示すものとし、指定商品を旧第11類所属の「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)、電気材料」とし又はこれらを包括的に指定する登録第1180323号商標、登録第1214540号商標及び登録第1455879号商標(以下、「引用各商標」という。)について登録を得ている(甲第7号証乃至甲第12号証)。
引用各商標は、「フルカワデンキコウギョウカブシキカイシャ」とか「フルカワデンキコウギョウ」のように一連に称呼されるほか、それぞれその構成中の後半の「電気工業」、「ELECTRIC COMPANY」及び「電工」が業種業態を表し、また、会社を表す「株式会社」「LIMITED」が省略され、単に「フルカワ」と称呼されることがあるものである。
他方、本件商標は、前記構成から「フルカワ」と称呼されるものであることは再三述べるとおりである。
そこで、本件商標と引用各商標を比較すると、共に「フルカワ」の称呼を生ずるものであるから、称呼上類似するものであることは明らかであり、また、指定商品も同一又は類似のものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(7)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由
「古河」「FURUKAWA」が請求人会社である古河電気工業株式会社の略称として、及びそのグループ企業の総称的な名称として著名であることは前述のとおりである。
そこで、本件商標を被請求人がその指定商品について使用すると、取引者又は需要者は、あたかもそれが請求人会社又はそのグループ企業と関連があるものの取扱いに係るものであるかのように誤認し、商品の出所について混同を生ずる虞が多分にあるものというべきである。
したがって、仮に、本件商標が商標法第4条第1項第10号又は第11号に該当しないものとしても、本件商標は同項第15号に該当するものである。
(8)被請求人の答弁に対する弁駁
(ア)被請求人は、本件商標のFの文字部分が楕円図形との組み合わせであり、この部分だけが別個に商標登録されている程のものであるから、本件商標は、ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ではないと主張される。
しかし、本件商標にあっては、その「F」の文字部分を分離して観察されるような構成をとっているものではないから、「F」の文字自体は、その楕円図形といわれるものと一体として把握されることにはならず、取引きの経験則からいっても、後に続く文字との関係で「FURUKAWA」と一連に表したものと見るのが普通である。一連に把握した場合の「F」の文字部分の楕円図形と称するものは、詳述するまでもなく、全体との関連では、見た目にもさしたる特徴になっているものではない。
被請求人は、文字綴りの部分が特殊である旨説明しているが、特種性を強調して商標法第3条第1項第4号の適用を免れるには、自ずから限度があるものというべきである。レタリングの手法も時代によって異なり、本件商標の構成程度のものが、特種とされる時代ではない。
(イ)「古河」「FURUKAWA」の名が周知著名であることは、甲各号証等において示すとおりである。特に、本件商標の指定商品分野においてはそうである。請求人が古河グループに言及したことに対し、被請求人は、グループに法人格がないこと等を上げられている。もちろん、グループに属する各企業個々の略称として周知著名であることをいうものであり、多くの他の企業あるいは企業グループが同様な状態をかたち作っている。
(ウ)請求人は、「古河電工」「THR FURUKAWA ELECTRIC COMPANY LIMITED」などの登録商標を保有し、長年、本件商標の指定商品分野の商品について、これを使用している。そして、これがまさに、前述のように「フルカワ」と略称されて業界とか一般需要者に通用している。したがって、「フルカワ」と称呼されて取引きに資することになる本件商標の使用が、請求人会社の保有に係る商標と類似し、または、少なくとも、請求人会社の使用に係る商標との関係において、商品の出所について混同させ、又はその虞をもたらすことになることは明白である。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由をつぎのように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。
(1)本件商標の識別力について
本件商標は、図形と図案化した文字の組合わせからなり、文字の部分は「FURUKAWA」と判読することができる。「FURUKAWA」は、ありふれた氏または地名「古川」または「古河」をアルファベットで表したものであるから、普通に用いられる方法で表示しても商標登録は受けられないのは当然である。
しかし、本件商標は、「FURUKAWA」の文字が図案化されている。すなわち、「U」と「R」、「U」と「K」の各隣接2文字が、つくりの一部(縦棒)を共有し、互いに結合したように表されている。また、「A」の文字の横棒を省略し、あたかも「V」の文字を倒立させたような格好になっている。
さらに、最初の文字「F」が楕円図形と重なり合っていて、重なり部分で楕円図形は一部が欠損しており、その欠損部は「F」の文字に立体感を与えるような形状となっている。
このように、本件商標は、ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ではなく、商標法第3条第1項第4号の規定に該当しない。
被請求人は、本件商標の構成の一部、すなわち、「F」の文字と楕円図形の組合わせを別件で商標出願したが、これは、乙第1号証にも示すように、本件商標の連合商標として公告され、商標第3274023号として登録されている。すなわち、本件商標は、「F」の文字と図形の部分だけで充分に識別力を有しており、「フルカワ」の称呼が生じるから識別力がないという請求人の主張は誤りである。
(2)「古河」または「FURUKAWA」の周知、著名性について
請求人は、自己の会社「古河電気工業株式会社」の略称として「古河」または「FURUKAWA」の表示を長年にわたって使用し、その結果、それらは請求人の会社を指すものとして、あるいは、グループ企業の総称として周知著名になっていると主張している。
しかし、被請求人はもとより、世間一般にはそのような認識はない。甲第4号証の1および2(古河グループ概要)を見ても、そのような略称が使用されている箇所はない。「古河」の文字を頭につけたグループ会社が幾つかあることは理解できるが、だからといって「古河」が周知著名であることにはならない。
また、甲第5号証の1〜9の「古河電工技報」を見ても、「古河」または「FURUKAWA」の略称が使用されている箇所はない。このような雑誌を長年にわたって発行したからといって、「古河」または「FURUKAWA」が周知著名になることはない。
このように、「古河」または「FURUKAWA」の表示に著名性はなく、本件商標は商標法第4条第1項第8号の規定に該当しない。なお、本号の規定は、人格権の保護を目的とするものであり、古河グループのような人格のないものは保護の対象にならない。
さらに、「古河」または「FURUKAWA」が周知でないので、商品の混同を招くことはなく、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定にも該当しない。
なお、請求人は、長年にわたり「古河+商品名」または「FURUKAWA+商品名」の形の商標を用いており、少なくとも電線、ケーブルに関しては、「古河」または「FURUKAWA」の商標は周知になっていると主張している。
そこで、甲第6号証の1〜14の商品カタログを検証してみると、そのような表示はわずかに、甲第6号証の1(「FURUKAWA MI CABLE」)、甲第6号証の3(「古河熱収縮形端末材料」)、甲第6号証の6(「古河の化学物半導体」)、甲第6号証の8(「古河熱収縮形端末材料」)、甲第6号証の12(「FURUKAWA’S FITEL PRODUCTS」)等を発見できるだけである。
しかも、甲第6号証の内、それ以外のものは、同じ電線、ケーブルのカタログでありなから「古河(FURUKAWA)+商品名」の表示が一切載っていない。「古河(FURUKAWA)」はありふれた氏ないし地名であり、もともと自他商品の識別力が弱く、長期にわたって大量に使用しないかぎり、周知になることはない。このようなカタログに見られる程度の散発的な使用では到底周知になりえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定にも該当しない。
(3)「古河電工」と本件商標の類似性について
「古河電気工業株式会社」や「古河電工」等の商標が登録済みであることは承知している。また、それらの商標が使用によって周知になっているかも知れない。しかし、それらの商標と本件商標が類似するとの主張は到底容認できない。
請求人は、商標「古河電工」は、「電工」の部分が業種、業態を表しているだけで、要部は「古河」であり、商標「古河電工」と本件商標はいずれも「フルカワ」の称呼が生じるので互いに類似すると説明している。これは明らかな誤りであり、「古河」はありふれた氏を表すものであり、一般には要部にはなり得ないのであり、これが「電工」と結合して全体として識別力を発揮しているものと理解すべきである。すなわち、「古河電気工業株式会社」、「古河電エ」の商標から「フルカワ」の称呼は生じないのである。
このように、本件商標は請求人の商標と類似しないので、商標法第4条第1項第10条および同第11号の規定に該当しない。
以上の通り、請求人の主張は根拠がないものである。
本件商標は、その構成後掲(1)に示すとおり、左端位置にその内部右側面にほぼ90度角の切欠き部を有しかつ上端頂部をやや右側に傾斜させた黒塗りの楕円図形を描き、同図切欠き部位置に冒頭の「F」の字形を一部重ねるように「FURUKAWA」の文字綴りと思しき各欧文字をその一部をやゝ変形させ或いは隣り合う文字の軸線(ステム)を重ねる如く表現してなるものである。
しかして、構成中の欧文字綴りの部分はそれ自体視覚上分離して看取し得るばかりでなく、これら図形と文字とを常に不可分一体のものとして把握しなければならないような意味上の関連性はなく、また、そうすべきような特段の事情も見出せないから、かかる場合、本件商標に接する取引者・需要者は親しみ易く称呼し易い文字部分、すなわち、各文字の配列又はそれぞれの字形の特徴よりして全体として「フルカワ」と読まれる欧文字綴りの部分に着目し、その称呼をもって取引に資する場合も決して少なくないといわなければならない。そして、本件商標の指定商品は、電線及びケーブル,配電・制御用の機械器具を含む各種電気機械器具、電気通信機械器具及び電子応用機械器具等であること前記のとおりである。
請求人は、本件商標の登録無効の理由の一つとして商標法第4条第1項第15号該当を述べているので、この点について以下検討する。しかして、同法条に規定する「出所混同のおそれ」の有無については、商標自体とその指定商品の分野における需要者一般の注意力の程度、当該他人に係る商標の著名性及びその事業規模等諸般の事情を総合判断の上、取引の実情に照らし具体的に「そのおそれ」の有無を判断すべきものと解される。
これを本件についてみるに、請求人主張の全趣旨とその提出に係る甲各号証をみるに、以下の各点を認めることができる。
(1)請求人提出に係る甲第4号証の1及び同2は、1986年版及び1997年版の「古河グループ概要」と題するいわゆる当該同族企業グループに関する解説書ないしは案内書とみられる印刷物と認められる。これら印刷物によれば、請求人会社「古河電気工業株式会社」は、いわゆる経済界又は産業界において、「古河(フルカワ)グループ」と呼ばれる企業グループ傘下の一企業体であること。旧財閥系企業とも称される古河グループの発祥は「古河市平衛」(創始者)とされ、その事業体としての生い立ち・発展過程は大正から昭和初期にかけて事業基盤を築いた「古河鉱業株式会社」(現在の「古河機械金属株式会社」,英文表示:「FURUKAWA CO.,LTD.」)にあり、同社が各産業分野において拡大・発展したことが上記企業グループ傘下の各企業を生み出す原動力となったこと。請求人会社は上記古河機械金属株式会社、古河電池株式会社等とともに同企業グループの中核をなす会社であって、電線・ケーブル、伸銅品、軽金属品その他関連製品等幅広い分野において事業を展開するとともに、全国各地に支社、支店、事業所及び研究所を置くなど広範な事業活動を展開する国内有数の事業規模を保有する事業者であること。因みに、請求人会社に係る製品売上げの実績は、電線・ケーブルだけで、昭和59年度が251,529百万円,平成7年度が287,392百万円であって、当該商品市場において相当程度のシェアを占めること。
(2)請求人提出に係る甲第5号証の1乃至同9は、請求人会社に係る技術情報、その製造に係る各種製品情報等を毎号100頁から200頁以上に亘り詳細な解説を英文解説も取り混ぜて掲載してなる「古河電工時報」、「FURUKAWA ELECTRIC REVIEW」なるタイトルの印刷物であって、いわば同社に係る折々の製品事情をその紹介を兼ねて逐次内外向けに報知する事業報告書と認められる。
そして、同報告書中には、「古河電工」、「FURUKAWA ELECTRIC」の事業主体を示す文字のほか、「古河MIケーブル」「古河低インピーダンスケーブル」、「古河CATVシステム」、「古河の光ファイバーケーブル」、「Furukawa Low Impeadance Cable」、「FURUKAWA XLPE CABLE」、「Furukawa’s High Density・・・」等の如く、当該製品に「古河」又は「FURUKAWA」の標章を随所に使用し、さらに、当該製品(「BSアンテナ」、「光合分波器」等)に直接「FURUKAWA」の文字を付して使用していること。
同報告書は1947年以来年2回の割合で継続発行されていて、1992年6月時点で通巻90号を数えること。また、この種冊子の性格、掲載各製品に関する技術の先進性・専門性及び請求人会社の事業規模等から推測するに、毎号相当程度の部数が刊行され関連事業団体、官公署関係、学術分野ほか全国の主要会社に向けて一定数量のものが定時的かつ継続的に頒布されていたであろうこと。
(3)同じく甲第6号証の1乃至同14は、請求人会社に係る各製品に関しその構造・特長及び仕様等を図解入りで詳細に解説してなる製品カタログであって、これらカタログ中には前記報告書同様、「古河MIケーブル」、「FURUKAWA MI CABLE」、「古河熱収縮形端末材料」、「FURUKAWA HEAT SHRINKABLE ・・・」、「Main Features of the FURUKAWA」、「古河の化合物半導体」、「古河の高品質GaAsウェーハ」、「古河熱収縮形接続材料」、「古河ロードヒーティングシステム」、「古河ならではの・・・ラインアップ」、「FURUKAWA’S FITEL PRODUCTS」等の如く、当該製品に「古河」又は「FURUKAWA」の標章を随所に使用し、又は当該製品(「温水式床暖房コントローラ」、「屋内配線事故点探査器」等)に直接「FURUKAWA」の文字を付して使用していること。
これら商品カタログは請求人会社の事業規模及びその技術内容よりして、わが国の関連事業者向けに相当量の数量のものが反復頒布されたであろうこと。また、それらの中には英文解説を併用したもの又は英文版のものもあり、需要者は国内に限らず諸外国向けにも供されたであろうこと。
さらに、その製品紹介に係る具体的商品は、例えば、「Mineral Insulated Cable」、「Submarine Cable 」、「(各種ケーブル用)熱収縮形端末材料又は同接続材料」、「その他の端末付属材料」、「各種の電気接続部品等の各種電気設備機器」を始め、「電子・光応用診断・計測・監視機器」、「ロードヒーティング(融雪)システム」、「磁気対策型電気床暖房システム」、「温水式床暖房システム」等の各種産業用又は生活関連設備機器と多様な商品分野に亘っていること。
以上の(1)乃至(3)の各点よりして、「古河」(フルカワ)、「FURUKAWA」(又は「Furukawa」)の各文字(標章)は、いわゆる旧財閥時代の変遷を経て、現在「古河グループ」と称される企業グループ、すなわち、請求人会社を含む「古河」(フルカワ)関連各企業の多くが共にその会社名称に冠し、その事業を表彰する代表的出所標識としてわが国の機械産業・金属産業分野及び各種設備関連機器分野において、その呼称名(「フルカワ」、「furukawa」)と共に広く知られたいわゆる周知表示であって、また、該標章は、請求人会社によりその取り扱いに係る電線・電纜(ケーブル)等の各種電気設備機器ほか電子・光応用診断・計測・監視機器等の各種産業用機器等の出所識別の標識(商標)として継続使用された結果、その呼称名(「フルカワ」、「furukawa」)と相俟ってこの種商品を取り扱う当業者ないしは取引者、需要者間において、本件商標の出願時である平成6年8月当時はもとより現在においても引き続き広く認識せられた商標と認められる。
一方、本件商標は、その構成中の欧文字綴りの部分が「フルカワ」と読まれること被請求人もこれを認めるところであり、かつ、本件商標に接する取引者・需要者が該文字部分に着目し、それより生ずる称呼をもって取引に資する場合が少なからずあること前記認定のとおりである。そして、その指定商品は、電線及びケーブル,配電・制御用の機械器具を含む各種電気機械器具、電気通信機械器具及び電子応用機械器具等であって、請求人会社の取り扱いに係る前記各商品と同一又は同種若しくはその原材料及び生産者等からみて相互に密接な関連を有する商品といえるものである。
そうすると、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者・需要者は、前記各事情よりして、「古河」(フルカワ)関連各企業に係る代表的出所標識又は請求人会社に係る各種商品を表示するものとしてその呼称名(「フルカワ」、「furukawa」)と共に広く認識せられた周知表示又は商標を容易に想起し、当該商品が請求人会社又は同人と事業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれが少なからずあるといわなければならない。
この点に関し、被請求人は、「古河」、「FURUKAWA」の各文字(標章)が請求人会社の略称として又はその取り扱いに係る商品の出所表示として世間一般に認識されている事実はなく、提出の甲各号証をみてもその使用は僅かに散見する程度であって周知・著名性は立証されないから、商品の混同を招くことはない旨主張するが、請求人提出の事業報告書(甲第5号証)及び製品カタログ(甲第6号証)をみるに、「古河」、「FURUKAWA」標章の使用事例は優に20箇所以上あり、取り扱い商品全般に亘って相当程度の使用頻度を窺わせるものであるから、その主張は妥当でなく、採用することができない。
また、これら標章は請求人会社を含む企業グループ全体を表彰する代表的出所標識と目されるものであって周知表示といえるものであること前記のとおりであるから、これら表示が世間一般に認識されていないとするのは妥当でなく、さらに、企業グループ自体に人格がない故の理由をもって直ちに他人に係る業務の存在及び混同惹起の可能性を否定する根拠とはなし得ないから、その主張は妥当でなく、採用の限りでない。このほか、被請求人の主張を認めるに足りる証拠はない。
してみれば、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものといわざるを得ないから、その登録は同法条の規定に違反してされたものというべく、同法第46条第1項により、これを無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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