結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第35449号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
1.本件商標
本件登録第4051321号商標(以下「本件商標」という。)は、「富山のゆうげ」の文字を横書きしてなり、平成7年11月27日に登録出願、第30類「穀物の加工品」を指定商品として、平成9年8月29日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
2.請求人の引用商標
請求人が本件商標を商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するとして、登録無効の理由に引用する登録第1931096号商標(以下、「引用商標」という。)は、「ゆうげ」の文字を縦書きしてなり、昭和54年12月27日登録出願、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品」を指定商品として昭和62年1月28日に設定登録、その後、平成9年1月30日に商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
3.請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を概略次のように述べるとともに、証拠方法として甲第1号証乃至甲第42号証(注:審判請求理由補充書添付の甲第1号証乃至甲第38号証は、甲第5号証乃至甲第42号証として取り扱う。)(枝番号を含む。)を提出している。
(1)本件商標は、請求人の先願登録に係る引用商標と類似し、指定商品も同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
ア.本件商標中の「富山の」の文字の意義
本件商標は、「富山のゆうげ」の文字を一連に横書きしてなるものであるが、該文字の前半部を構成する「富山の」の文字は、著名な行政区画としての県名又は市名を示す文字に、所在や所属を示す格助詞「の」を付加したものであって、これを識別性を有する商標に冠するときには、その商標を使用する者の営業上の場所が「富山県(市)にあること」を看取させるとともに、これをその具体的商品に使用するときには、該商品の産地又は販売地が「富山県(市)であること」を看取させる文字であって、自他商品の識別機能を具有しないものとみるのが社会通念に照らし相当である。
イ.請求人の著名商標としての「ゆうげ」の文字
請求人は、「即席みそ汁」については、1974年(昭和49年)に、商品「あさげ」を開発し、昭和49年3月期の即席みそ汁部門の売り上げは、前年の4倍の15億円に伸びたが、さらに昭和50年に白みそ使用の「ゆうげ」を、赤だしの「ひるげ」とともに、シリーズ商品として発売し、同年度の売り上げを35億円に伸ばしたものである。「ゆうげ」は、前記「あさげ」と同様に、需要者に親しまれた結果、高級即席みそ汁としての名声を獲得したものである(甲第6号証・同第8号証)。該「ゆうげ」の昭和50年6月より同51年6月までの一年間の日本全国における地区別宣伝費は、約3億6千万円に上った(甲第9号証)。その後、昭和60年に生みそタイプ「ゆうげ」を発売し(甲第7号証・同第10号証)、同62年に新シリーズとしてカップ入りの商品を発売し(甲第11号証)、その間、毎年プレミアムキャンペーン(景品付き販売)を通じて前記商品の広告宣伝を図り(甲第17号証乃至同第19号証)、また、日本食料新聞、日経産業新聞等の新聞や「総合食品」等の雑誌において、「ゆうげ」商標を含む即席みそ汁に関する記事が屡々掲載された(甲第35号証乃至同第39号証)。しかして、以上の事実は、いずれも、本件商標の登録拒否事由(商標法第4条第1項第11号、15号)の判断基準時である登録査定時(平成9年7月18日)以前より生じていたものである。
ウ.「富山の」の文字と「ゆうげ」の文字との結合関係
本件商標は、「富山の」の文字と「ゆうげ」の文字とを結合した「富山のゆうげ」の文字よりなるところ、これを構成する、前半部の「富山の」の文字と後半部の「ゆうげ」の文字とは、観念上一体の語として一般に親しまれているものではないから、「富山の」の文字に続く文字を容易に連想し得るものではなく、これらの文字を常に一体のものとして把握すべき必然性のないものである。そうとすれば、本件商標を構成する前半部の「富山の」と後半部の「ゆうげ」の文字とは、観念上の密接な結合関係を有するものとはいい難く、かつ、その後半部を構成する「ゆうげ」の文字が請求人の著名商標であることを考慮するならば、該文字部分が独立して、自他商品識別の機能を果たす文字部分と把握されるものである。(参考判決、甲第42号証:判示事項2)
したがって、本件商標に接する取引者、需要者は、その全体の構成文字より生ずる称呼のほかに、その後半部を構成する「ゆうげ」の文字に着目し、これより生ずる「ゆうげ」の称呼をもって、取引に当たることも決して少なくないものといわなければならない。結局、本件商標と引用商標とは、「ゆうげ」の称呼を共通にする称呼上類似の商標であるとみるのが相当である。
エ.本件及び引用両商標の指定商品の需要者層の共通性、需要者層の認識
本件商標中には「即席うどんめん、即席そばめん、即席中華そばめん」等の穀物加工品が包含されているところ、これらの加工食品及び引用商標の使用商品中の「即席みそ汁」は、ともに短時間で採食を可能とする点において用途上の共通性を有する商品であって、コンビニエンスストア一・スーパーマーケット等でまとめてこれらの商品を購入する場合に、該商品の需要者は、本件商標中の「ゆうげ」の文字より、前記、即席みそ汁の著名商標「ゆうげ」の文字を容易に想起し、これらの商品が前記「ゆうげ」の姉妹商品又はそのシリーズ商品であるかの如く認識し、理解する場合も少なくないものと推認される。
オ.以上の如く解することは商標類否判断の経験則であって、その先例の一部は甲第4号証の1乃至3の審決例及び同第41号証の判決例に示すとおりである。
以上の理由により、本件商標は、その全体の構成文字に相応する「トヤマノユウゲ」の称呼のほかに、構成中の「ゆうげ」の文字に相応する「ユウゲ」の称呼をも生ずるものであって、「ユウゲ」の称呼を生ずること明らかな引用商標とは称呼上類似する商標であり、かつ、引用商標の指定商品中には、本件商標の指定商品が包含されるものである。
(2)本件商標は、商標中に「ゆうげ」の文字を含んでなるところ、被請求人が、これをその指定商品について使用するときは、請求人が商品「即席みそ汁」について長年使用し、該商品需要者の間に広く認識されている商標「ゆうげ」を容易に想起させ、該商標の地域別シリーズ(同一系列)商標であるかの如き認識を与える結果、あたかも請求人と、経済的、組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかの如き誤認を生じさせるものである。してみれば、本件商標は、商品の出所について混同を生ずる虞のあるものであるから、商標法第4条第1項第15号にも該当する。
ア.「ゆうげ」の文字の著名性
本件商標は、その後半部に「ゆうげ」の文字を含んでなるところ、該「ゆうげ」の文字が請求人の著名商標を構成する具体的事情については、前記(1)のイ.で述べたとおりであるが、さらに以下の事情を追加する。
(a)請求人商品の市場占拠率、販売高
請求人は、商品「即席みそ汁」について「家庭で食べるみそ汁と同じ味に」をコンセプトとする「高級即席みそ汁」という商品ジャンルを開発したが、その市場占拠率(シェア)は、昭和49年に50%を占め(甲第7号証)、1996年には、「あさげ」「ひるげ」「ゆうげ」の3ブランドで約34%(販売額122億円)として業界第1位を堅持した(甲第12号証・同第38号証)。
このうち、「ゆうげ」については、1975年の発売から、1983年まで、毎年約25億円程度の売り上げがあったことが棒グラフにより窺える(甲第6号証・同第16号証)。なお、1994年7月分だけで「あさげ」等のシリーズ商標のセーリングシート代金は約1626万円に上った(甲第40号証)。また、製品別のシェアでは、1996年度の「ゆうげ」のシェアは「あさげ」の13%に次いで第2位の10%を占めた(日経POS情報・甲第14号証)。
(b)「ゆうげ」商標の広告・宣伝
1989年以降、「永谷園みそ汁シリーズ プレミアムキャンペーンが実施され、該カタログ内に生みそタイプみそ汁について、「ゆうげ」商標が掲載されている(甲第17号証乃至同第19号証)。
さらに、「ゆうげ」商標は、各種新聞への広告宣伝又は製品紹介記事(甲第20号証乃至同第30号証、同第32号証乃至同第39号証)を通じて、この種の商品の取引者、需要者間に広く認識されるに至った。
イ.本件商標と引用商標との出所混同についての結論
以上のとおり、「ゆうげ」の文字は、請求人により、1975年以降盛大に商品「即席みそ汁」について使用された結果、著名性を獲得した商標であり、かかる文字を商標中に含む本件商標をその指定商品中の「即席うどんめん、即席そばめん、即席中華そば」等の穀物の加工品に使用するときには、請求人の即席みそ汁に使用されている著名商標「ゆうげ」を容易に想起させるものであり、あたかも、商標の使用地域又は営業所所在地が富山県若しくは富山市にある「ゆうげ」のシリーズ商標であるかの如き印象を与える結果、請求人と経済的、組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く商品の出所について誤認し、混同を生ずるおそれがある。
(3)したがって、本件商標は、前記に掲げる法条による無効理由を有するものであるから、商標法第46条第1項によりこれを無効とすべきものである。
4.被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める旨答弁し、その理由を概略次のように述べた。
(1)本件商標は「富山のゆうげ」であって、この言葉から「富山の夕暮どきの食事」のイメージが富山の地の風土.文化に根ざした夕食の情景と共に思い浮かぶものである。したがって本件商標は、前半の「富山」と後半の「ゆうげ」とは切っても切れない密接な関係を有している言葉として需要者は感受し、本件商標中の「富山」は、単なる産地とか販売地を表示する標章ではなく、「ゆうげ」と一体となって自他商品識別機能を有効に発揮するものである。
よって、本件商標は「富山のゆうげ」と不可分に称呼し観念されるものであって、その一部の「ゆうげ」の部分を分離してこれを要部としてとらえるべきではない。このように引用商標「ゆうげ」は、本件商標と称呼、観念を異にしており、両者の外観も別異である。
(2)請求人が、引用商標を使用して広く認識されている旨の主張の使用実績となっている商品「即席みそしる」と、本件商標の指定商品「穀物の加工品」とは、生産部門や販売部門はもとより原料及び品質などが全く異なっている非類似商品であり、しかも商標についても前述したように請求人の「ゆうげ」と本件商標の「富山のゆうげ」とは非類似商標である。さらに加えて引用商標の性格・種類及び商標の構成を勘案すれば、ハウスマークではなく「即席みそしる」のみに使用されているいわゆるペットマークであり、しかも造語商標のような独創性のある商標ではなく、特定の観念のある既成語であることなどから、混同の生ずるおそれのある範囲は広いものとはいえない。
(3)以上の理由から、本件商標と引用商標とは、市場において相紛れるおそれはなく、しかも請求人の業務に係る商品と混同のおそれのないものであって、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当しない。
5.請求人の審決取消請求訴訟における審決取消理由
請求人は、東京高等裁判所における審決取消請求訴訟(平成12年行ケ第4号)において、「特許庁が、平成10年審判第35449号事件について、平成11年11月9日にした審決は、(1)商標法第4条第1項第11号における、本件商標と引用商標との類否判断を誤った(2)商標法第4条第1項第15号における混同を生ずるおそれの判断を誤ったから取り消されるべきものである。」旨を主張した。
6.東京高等裁判所の判決要旨
東京高等裁判所は、被請求人の主張を認め、審決は、本件商標について、商標法第4条第1項第11号における本件商標と引用商標との類否判断を誤った可能性が十分にあり、仮にそうでないとしても、そのときは、同第15号における混同を生ずるおそれの判断を誤ったものというべきである。そして、審決の上記誤りが審決の結論に影響を及ぼすこと明らかであるとして、特許庁が、平成10年審判第35449号事件について、平成11年11月9日にした審決を取り消した。
7.当審の判断
よって判断するに、本件商標は「富山のゆうげ」の文字を書してなるところ、これを構成する前半部の「富山の」の文字部分は、商品の産地・販売地名を表す部分にすぎないものであるから、自他商品の識別機能を果たす部分は後半部の「ゆうげ」の文字部分にあるものとみるのが相当である。
そうとすれば、本件商標よりは、書された「富山のゆうげ」の文字に相応して「トヤマノユウゲ」の一連の称呼を生ずるほか、「ゆうげ」の文字部分より、単に「ユウゲ」の称呼をも生ずるものとみるのが相当である。
他方、引用商標は「ゆうげ」の各文字を書してなるものであるから、これよりは「ユウゲ」の称呼を生ずること明らかである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、「ユウゲ」の称呼を同じくした類似の商標と認められ、かつ、その指定商品も同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項第1号に該当するものと認め、これを無効とする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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