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Trademark Appeal Case

地名商標の識別性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35386号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第4107013号の指定商品中「茶」についての登録を無効とする。
その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4107013号商標(以下「本件商標」という。)は、平成8年3月26日に登録出願され、「武夷山」の漢字を左横書きしてなり、第30類「コーヒー及びココア、コーヒー豆、茶、菓子及びパン」を指定商品として、同10年1月30日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。

2 請求人の主張

請求人は、「本件商標については、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担する。」との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証乃至同第4号証(枝番号を含む。)を提出している。

(1)「武夷山」は、中国福建省に位置する山の名前であり、ウーロン茶の中でも高級な部類に属する「武夷岩茶」を産出する産地名である。これを立証するため、「中国茶の魅力」と「中国 銘茶紀行」という2冊の書籍の抜粋写しを提出する。これらにより「武夷山」がウーロン茶の産地であることが理解される。なお、コカコーラ社が「煌(ファン)」という商標で販売しているウーロン茶に「武夷岩茶」という表示が見られる。「武夷岩茶」とは、武夷山の岩石の間に生息する茶樹から産出するウーロン茶をいう。すなわち、本件商標「武夷山」はウーロン茶については産地表示である。また、ウーロン茶以外の商品に「武夷山」が使用されると、該土地で産出されたものであるかの如き誤認を与えたり、武夷山で製造されるウーロン茶が混入されているかの如き誤認を引き起こし、ひいては品質の誤認を生じせしめる可能性がある。

(2)答弁に対する弁駁について

被請求人の言わんとするところは、「武夷山」は、烏龍茶の産地として日本人が直ちに理解し、認識するような地名ではないから、請求人の主張には理由がない、というものである。しかし、日本人が直ちに理解し、認識するような地名であるか否かは、商標法第3条第1項第3号の問題ではない。同第3条第1項第3号は、商標を使用する者が、いわゆる顕著性のない標章を自由に使用できるように保証する規定である。したがって、日本人一般が直ちに理解し、認識するという要件は本号の解釈には不要である。本件においては、烏龍茶を製造し販売する業者が、「武夷山」を、烏龍茶を産出する産地名であるという認識を有しているか否かをもって判断することで充分である。

3 被請求人の答弁

被請求人は、「本件審判は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」と答弁し、その理由に対する答弁を次のように述べている。

(1)請求人は、本件商標「武夷山」に対し、「中国福建省に位置する山の名前であり、ウーロン茶の中でも高級な部類に属する『武夷岩茶』を産出する産地名である。」旨主張し、商品ウーロン茶については商品の産地表示であり、ウーロン茶以外の商品については品質の誤認を生ずる旨を指摘している。

(2)審判請求書に添付された甲第2号証の1及び2の資料を検討するに、「福建省(と言ってもわが国の人になじみが薄いかも知れないが・・・甲第2号証の2)崇安県に『武夷山』なる山が存在し、烏龍茶が産されている」ことが記載されている。しかるに、「ウーロン茶類は、一般的に『北路烏龍茶』と『南路烏龍茶』に大きく分けられ、武夷の茶(「武夷山の茶」ではない)が、『本山岩茶』『正山岩茶』と呼ばれている。」そして、「建陽、水吉、政和、建欧、南平などで産する青茶類もまた、北路茶に包含されている。」「南路烏龍茶は、安渓青茶がその代表であり、有名な鉄観音茶は安渓産茶の代表名茶であって、『南岩』と呼ばれることもある。」等の記述がなされている。

(3)甲第2号証の2「わが国の人になじみが薄いかもしれないが」と記載された名称・位置を知る者が、日本人にどの程度存するのかでさえ疑問であり、その「崇安県」なる地域もこのような文献を読まないと、知り得ない地名であると考えられる。また、「武夷山」なる名称も、「山の名前」との推測は働くとしても、ただそれだけの認識にしか過ぎないものと考えられる。

特に、上記した「北路烏龍茶」の産地と指摘される「建陽」「水吉」「政和」「建欧」「南平」に至っては、地名か時代名称か全く意味不明なものである。また、「武夷」に関しても、「武夷岩茶」と指称されているようであり、「本山岩茶」「正山岩茶」を始め、学問的に探求した者以外知り得ない名称である。

(4)このような名称を日本人が直ちに理解・認識し、鳥龍茶の産地名と考慮することは全く考えられず、何処に存する山であるか、不明なまま、中国に存する名山の一つと思料する程度であって、産地と考慮することは勿論のこと、商品の品質の誤認を生ずる程、知られているとは全く考えられない。

(5)被請求人は、請求人の弁駁に対し何等答弁していない。

4 当審の判断

よって判断するに、本件商標は、「武夷山」の文字を書してなるところである。

ところで、「武夷山」とは、請求人の提出に係る(1)甲第2号証の1の「中国茶の魅力」(一九九〇年五月二五日 株式会社柴田書店 発行)によれば、「産地を訪ねて」の「武夷」の項に、「中国のウーロン茶の最高品には、・・・中でも、大変有名なのが、福建省武夷山のお茶である。」、同じく、その「武夷岩茶」の項に、「・・・中国茶の中でも、特に福建省武夷山の岩茶は、歴史的にも大変有名である。・・・」とそれぞれ記載されているものである。また、(2)甲第2号証の2の「中国名茶紀行<新潮選書>」(一九九一年四月一五日 株式会社新潮社発行)によれば、「四 皇帝の茶−福建省の建安北苑と武夷山」の「元代、武夷山の帝室用茶園」の項に「・・・、これに代って武夷山が茶の産地として登場してくる。・・・」と記載され、そして、(3)甲第3号証の1の「週刊宝石」(1997年7月10日 光文社発行)には、「今から400年前の明末、清初鳥龍茶は福建省武夷山で誕生した」及び「・・・その▲ビン▼江の最上流部にあるのが鳥龍茶発祥の地、武夷山である。・・・」とそれぞれ記載されているところである。

上記の(1)〜(3)の証拠によれば、茶を取り扱う業界においては、「武夷山」の語を鳥龍茶の産地を表示するものとして使用しているのが実情である。

そうとすれば、「武夷山」の文字よりなる本件商標を、その指定商品中、「鳥龍茶」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、上記実情から、該商品が単に「武夷山を産地としてなる鳥龍茶」であること、すなわち、商品の品質(産地)を表したものにすぎないと理解するに止まり、また、これをその指定商品中、上記商品以外の「茶」について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。

したがって、本件商標は、その指定商品中、「茶」については、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、同法第46条第1項の規定に基づいてその登録を無効とすべきものである。

しかしながら、本件商標の指定商品中の「茶」以外の指定商品については、前記法条を適応するに足りる証拠の提示がないから、その余の商品について、これを無効にすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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