Trademark Appeal Case
称呼類似と語頭音の解釈
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年異議第90908号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1.本件商標
本件登録第4249990号商標(以下「本件商標」という。)は、平成9年9月2日に登録出願され、「TO’US」と「トゥアス」の文字を二段に横書きしてなり、第5類、第8類、第10類、第16類、第18類、第21類、第25類、第29類、第30類、第32類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品(役務)を指定商品(指定役務)として、同11年3月12日に設定登録されたものである。
2.登録異議の申立ての理由
本件商標は、平成6年7月12日に登録出願され、別記に示すとおりの構成よりなり、第30類「ココア,チョコレート飲料その他のココア,キャンデー,ビスケットその他の菓子及びパン」を指定商品として、同9年6月20日に設定登録された登録第3324562号商標と類似する商標であり、かつ、本件商標の指定商品中の第30類「菓子及びパン」と引用商標の指定商品は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3.本件商標に対する取消理由
本件登録異議の申立てがあった結果、本件商標の指定商品中の第30類「菓子及びパン」について、商標法第4条第1項第11号に該当するものとして通知した取消理由は、つぎのとおりである。
<取消理由>
本件商標から生ずる「トゥアス」の称呼と引用商標から生ずるものと認められる「トゥナス」の称呼とは、いずれも3音構成からなるものであって、称呼の識別に重要な要素を占める語頭の「トゥ」の音と語尾の「ス」の音を共通にしており、異なるのは。明瞭に聴取し難い中間に位置する「ア」と「ナ」の音の差違にすぎない。そして、これとても、母音(a)を共通にし、しかも、「ナ」の子音は通鼻音であって響きが弱いことから、それぞれを一連に称呼するときは、全体としての語韻語調が極めて近似し、彼此聴き誤るおそれがあるものといわなければならない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼において彼此相紛らわしい類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品中の表記の商品は、引用商標の指定商品と類似するものである。
したがって、本件商標はその指定商品中の表記商品について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
4.商標権者の意見
(1)本件商標について「トゥアス」なる称呼が生じるが、引用商標については、「トゥナス」なる称呼が生じるものではなく、「トナス」あるいは「トーナス」なる称呼が生じるものであると言わざるを得ない。そしてそうであるならば、本件商標の称呼のうち語頭の「トゥ[tu]」の音が引用商標の語頭の「ト[to]」の音と相違し、かつ中間の音も「ア」と「ナ」で相違し、したがって、わずか3音構成の称呼のうち2音もが相違することになるので、本件商標の称呼と引用商標の称呼とは彼此聴き誤るおそれはない。
(2)引用商標は、ローマ字大文字にて「TONUS」と一連に書し、かつ全体的に図案化したものであるが、「TONUS」の文字のうち、語頭の「TO」の文字部分については、一般的な日本人であれば、「トゥ[tu]」なる音ではなく、「ト[to]」もしくは「トー」なる音を発声するのが通常である。
すなわち、「TO」なる文字は、我国のローマ字教育においては一貫して「ト」なる音を表わすものと教えられていることは周知の事実である。
また、我国の著名なブランドネームのうち、「TO」で始まるブランドネームとしては、「TOYOTA」(トヨタ自動車)、「TOSHIBA」(東芝)などがあり、また一時テレビコマーシャルで評判となった「TOSOSIN」(クレジット会社である東京総合信用(株))、さらにはテレビコマーシャルを数多く流している「TOSTEM」(アルミ建材メーカーのトステム(株)なども良く知られているが、これらはいずれも語頭の「TO」の部分が「ト」もしくは「トー」と発声されており、このようなブランドネームで語頭の「TO」の部分を「ト」、「トー」と読まない例は皆無である。
一方英語について検討すれば、語頭が「to」で始まる単語や固有名詞については、「to」の後に母音を形成するa,e,i,o,u,w,yの文字が続く場合を除けば(注:以下の説明でも、「to」の後にa,e,i,o,u,w,yが続く場合は全て除外することとする)、「ト」あるいは「トー」と発音するのが一般的であり、「トゥ[tu]」あるいは「トゥー」と発音するのは例外的な特殊なケースに限られる。
すなわち、添付の乙第1号証(「研究社 新英和大辞典 第5版」1992年、(株)研究社発行;第2220頁〜第2337頁)において、「To」で始まる国名としては、「Togo」(トーゴ)、「Tonga」(トンガ)、「Tobago」(トバゴ;「Torinidad and Tobago」(トリニダードトバゴ)の後段)があり、また著名な地名としては、「Toronto」(トロント)、「Torino」(トリノ)、「Toledo」(トレド)、「Tomsk」(トムスク)があり、そのほか乙第1号証には示されていないが、「Tokyo」(トウキョウ)があり、いずれも例外なく語頭の「To」を「ト」もしくは「トー」と発音するのであって、「トゥ」もしくは「トゥー」と発音する国名、地名は見当らない。
また外国人名として頻繁に使用されている人名あるいは著名な人物名については、乙第1号証に、「Tom」(トム)、「Tommy」(トミー)、「Tomas」(トーマス;トマス)、「Tony」(トニー)、「Toby」(トビー)、「Tonia」(トーニャ;トニア)、「Torricelli」(トリチェリー)などがあり、いずれも例外なく語頭の「To」を「ト」もしくは「トー」と読んでいるのであって、「トゥ」もしくは「トゥー」と読む人名は見当らない。
さらに、英単語については、「to」で始まる英単語は、登録異議申立人(以下「申立人」という。)が例示している「tonight」(トゥナイト)のほか、「today」(トゥデイ)、「tommorow」(トゥモロウ)、「together」(トゥギャザー)を除き、ほとんど全てが語頭の「to」を「ト」もしくは「トー」と読んでいる。その例として、特に日本人になじまれている英単語を、前記乙第1号証から列挙すれば、次の通りである。
「tofee」(トフィー;菓子の一種)、「tollgate」(トルゲート;料金所)、「tomahawk」(トマホーク;斧、ミサイル名としても著名)、「tomato」(トメイト;トマト)、「ton」(トン;重量単位)、「tone」(トーン;音の調子)、「tong」(トング;火ばし)、「tonic」(トニック;強壮剤、ヘアトニック)、「top」(トップ;頂上)、「topaz」(トパーズ;宝石の一種)、「topic」(トピック;話題)、「topless」(トップレス)、「topology」(トポロジー;地勢学)、「topos」(トポス;常套的表現)、「topping」(トッピング;上に載せるもの)、「torch」(トーチ;たいまつ)、「tornado」(トーネイド、トルネイド;竜巻)、「torque」(トーク;トルク)、「torso」(トーソウ;トルソー)、「toss」(トス;投げ上げる)、「total」(トータル;総計)、「totem」(トーテム;トーテムポール)。
このように、語頭が「to」で始まる英単語は(但し、「to」の後にa,e,i,o,u,w,yが続かないもの)は、その語頭の「to」の部分を「ト」もしくは「トー」と読むのが通常であり、その例外は、前述のような「tonight」、「today」、「tommorow」、「together」がある程度である。
ところで「〜の」、「〜に対し」等の意味を表わす前置詞の「to」は一般に「トゥ」もしくは「トゥー」と読むことは中学校から教え込まれている。そして前述の例外である「tonight」、「today」、「tommorow」、「together」は、いずれも語源的には前置詞の「to」と他の言葉とが結合して造語されたものであり、このように語源的に前置詞の「to」が先頭に存在するからこそ、これらの「tonight」等においても語頭の「to」を前置詞の「to」と同様に「トゥ」あるいは「トゥー」と読むものと解される。
一方、上述のように語源的に前置詞の「to」が語頭に存在する例外的な単語以外の英単語では、既に述べたように語頭の「to」を「ト」もしくは「トー」と読むのが原則である。そして、このような原則に反して「トゥ」もしくは「トゥー」と読む例外的な英単語(tonight、today、tommorow、together)は、積極的に ”原則に対する例外として語頭を「トゥ」もしくは「トゥー」と読む”と中学時代からの英語教育によって強力に教え込まれているからこそ、「トゥ」もしくは「トゥー」と読むのであり、それ以外の英単語は、原則に従って語頭の「to」を「ト」もしくは「トー」と読むと教育され、かつそのように実際に読まれているのである。
以上のように、「TO」の文字は、日本のローマ字教育では長年にわたって「ト」と読むと教え込まれており、またテレビコマーシャルで頻繁に流されるブランドネームのうち、「TO」で始まるブランドネームは、「TOYOTA」、「TOSHIBA」、「TOSOSIN」あるいは、「TOSTEM」等で代表されるように語頭の「TO」の部分を「ト」あるいは「トー」と読んでおり、さらに英語についても、国名、地名、人名等の固有名詞は、「To」の後に母音を形成するa,e,i,o,u,w,yが続く場合を除き、ほぼ例外なく語頭の「To」を「ト」もしくは「トー」と読んでいるのであって、「トゥ」もしくは「トゥ一」と読む例は皆無と言える。
さらに、英単語について語頭に「to」を有するもの(但し、「to」の後にa,e,i,o,u,w,yが続く場合を除く)は、語源的に前置詞の「to」を結合することによって形成されたと思われる「tonight」、「today」、「tommorow」、「together」の例外を除いて、日本人に広くなじまれている英単語である「total」、「top」、「tos」、「tone」、「topic」等で代表されるように、語頭の「to」を「ト」もしくは「トー」と読むのが通例であり、「トゥ」もしくは「トゥー」と読む例は、前述の例外の4例を除き、全く見当たらない。
してみれば、引用商標の文字部分「TONUS」の語頭の「TO」も、一般的日本人であれば「ト」もしくは「トー」と読むと解するのが妥当であり、「トゥ」もしくは「トゥー」と読むことは、ほとんどあり得ないと考える。まして、前述のように「to」で始まる英単語において「to」を「トゥ」、「トゥー」と読むのは語源的に見て前置詞「to」が結合したと思われる場合に限られ、かつその場合に日本人でも「トゥ」「トゥー」と発音するのは、例外的な発音としてそのように発音することを中学以来の英語教育で教え込まれた結果によるものであるが、引用商標の「TONUS」は、前置詞「to」を結合した造語とは考えにくく、かつ語頭を「トゥ」もしくは「トゥー」と読むことを英語教育において教え込まれた英単語でもない。ちなみに、「TONUS」なる英単語は、申立人が提出した甲第3号証にも示されているように「筋緊張」を意味する専門用語であるが、その発音記号を見ても、「トーナス」に近い発音をすると思われ、決して「トゥナス」あるいは「トゥーナス」なる発音が生じるものではないと思われる。
以上から、引用商標は「トナス」もしくは「トーナス」なる称呼が生じるものであって、「トゥナス」あるいは「トゥーナス」なる称呼は生じ難いものである。
(3)一方本件商標は、上段に「TO’US」と書し、下段に「トゥアス」の文字を書してなるものであり、申立人の主張通り、「トゥアス」なる称呼が生じるものである。
ここで、本件商標について、上段の「TO’US」の文字部分から「トアス」あるいは「トーアス」なる称呼が生じるとの見方もあるかと思われるが、下段に「トゥアス」の片仮名文字が存在する以上、そのようなおそれは少ないと考える。
また仮に上段の「TO’US」の部分が独立して取出されたところで、次のような理由により「トアス」あるいは「トーアス」と読まれるおそれは極めて少ない。
すなわち、「TO’US」の文字部分は、中間のアポストロフィ「’」によって前段の「TO」と後段の「US」とが区切られており、したがって「TO’US」の文字部分を見た者は、誰しも語頭の「TO」の部分が「US」の部分から分離され得るものと直感的に感じることができる。しかも中間のアポストロフィ「’」は、日本語の単語や文章、あるいは日本語をローマ字化した日本語ローマ字単語、ローマ字文章においては、一般に使用することがない記号であり、一方英語では頻繁に使用している記号であるから、「TO’US」なる文字部分を見た日本人は、その文字部分が、日本語ではなく英語に由来するものであると解するのが通常である。
このように、「TO’US」の文字部分が英語に由来する文字であって語頭の「TO」の部分が「US」の部分から切離されていると直感的に認識される結果、語頭の「TO」は、前置詞「to」を表わしていると直ちに感得することができ、その結果「TO」の文字を前置詞「to」の読み通りに「トゥ」もしくは「トゥー」と発音するのが一般的日本人と言える。また仮に百歩譲って語頭の「TO」が前置詞「to」を表わしていると直ちには感得し得なかったとしても、少なくとも英語表現の一種であると直感的に感じて前置詞「to」を無意識的に連想し、前置詞「to」の読みに従って「トゥ」もしくは「トゥー」と読むものと考える。
なお、本件商標における「TO’US」の文字部分は、アポストロフィ「’」の本来の使用方法からすれば、特に積極的な意味合いが生じないと考えることもできるが、直感的に見れば、「TO」の部分からは前述のように前置詞「to」による「〜へ」、「〜に対し」等の意味を表わし、また「US」の部分からは「we」(我々)の目的格の「我々(に〜)」、「我々(へ〜)」を表わすと読取ることができ、したがって「TO’US」の全体から、英単語的表現として「我々に」あるいは「我々へ」、「我々に対して」等の意味合いを読取ることができる。そしてこのように「TO’US」の文字部分について、「我々に」等の意味を表わす英語的表現であると直感されるからこそ、「TO’US」の文字から「トゥアス」なる称呼が発生すると解されるのである。
(4)以上のように、引用商標「TONUS」の語頭の「TO」からは、一般的な原則に従って「ト」または「トー」なる音が生じ、一方本件商標の英文字部分「TO’US」の語頭の「TO」からは、原則の例外によって前置詞「to」と同様な「トゥ」なる音が生じるものと解するのが妥当である。
してみれば、引用商標の文字部分「TONUS」からは「トナス」もしくは「トーナス」の称呼が発生するのであって、「トゥナス」の称呼が発生するのではなく、一方本件商標からは「トゥアス」の祢呼が生じると言わざるを得ない。
そして引用商標から生じる「トナス」もしくは「トーナス」なる弥呼と、本件商標から生じる「トゥアス」の称呼とを対比すれば、中間の「ナ」と「ア」の音が相違するばかりでなく、語頭の「ト」もしくは「トー」と「トゥ」の音も相違する。このように引用商標の称呼と本件商標の称呼とは、わずか3音という短い音構成のうちの2音もが相違するのであるから、一般的な日本人である聴者をもってして聴取上聞き誤るおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼において彼此相紛らわしい商標と言うには当たらず、両者は類似しないものである。
5.当審の判断
本件商標は、上記した通りの構成よりなるところ、構成中の片仮名文字部分は欧文字部分の称呼を特定したものと無理なく認識し得るものであるから、これよりは、「トゥアス」の称呼を生ずるものと認められる。
他方、引用商標は、別記(1)に示すとおりの構成よりなるところ、構成中の「TONUS」の文字部分については、例えば、申立人の提出した甲第3号証によれば、「tonus」の項に「tonus」の発音記号が別記(2)(「<コンパクト版>小学館英和辞典」 株式会社小学館 昭和55年12月5日)のとおり記載されているものである。
してみれば、引用商標の「TONUS」の欧文字部分に相応して「トゥナスの称呼が生ずるものと判断するのが相当である。
しかして、本件商標から生ずる「トゥアス」の称呼と引用商標から生ずる「トゥナス」の称呼とは、いずれも3音構成からなるものであって、称呼の識別において重要な要素を占める語頭の「トゥ」の音と語尾の「ス」の音を共通にするものである。
そして、異なる音は、明瞭に聴取し難い中間に位置する「ア」と「ナ」の音の差異にすぎない。
該差異音のうち、「ア」の音は、「口を広く開き、舌を低く下げ、その先端を下歯の歯ぐきに触れる程度におき、声帯を振動させて発する母音」であるのに対し、「ナ」の音は、「舌尖を前硬口蓋に接して発する鼻子音(n)と母音との結合した音節」であって、子音「n」よりはむしろ母音「a」が明瞭に発音されるものであって、しかも明瞭に聴取され難い中間に位置することからして、明瞭に聴取され難い音となるから、それぞれ一連に称呼する場合、全体として語調、語感が相近似し、彼此聴き誤るおそれがあるものといわざるを得ない。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、外観及び観念において差異を有するとしても、称呼において類似するものであり、また、本件商標の指定商品中「菓子、パン」と引用商標の指定商品は、同一又は類似する商品である。
したがって、本件商標は、その指定商品中、「菓子、パン」については、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、上記商品については、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものとし、その余の指定商品については、取り消すべき理由がないから、同第4項の規定により登録を維持する。
よって、結論のとおり決定する。
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