Trademark Appeal Case
著名商標の不正利用
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年異議第91425号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4290958号商標(以下、本件商標という。)は、平成10年7月1日に登録出願され、「PROLONG FORMULA ONE」の欧文字を書してなり、商品の区分第4類に属する商標原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成11年7月2日設定登録されているものである。
2 登録異議申立人(以下、「申立人」という。)の異議理由
本件商標は、国際的に著名な自動車レース又はそのレースに使用される専用車両の名称である「FORMULA ONE」の文字を含むものであり、かつ、その商標としての採択・使用に際して、大会主催者らの何らの承諾を得ることなく、出願・登録されたものであって、上記の世界的な自動車レースの信用を不当に利用しようとするものであるから、商標法第4条第1項第7号及び同第19号の規定に該当し、かつ、他人の業務に係る商品と出所の混同を起こさせるおそれがあるものであるから、商標法第4条第1項第15号の規定にも該当し、同法第43条の3の規定によりその登録を取り消されるべきものである。
(1)商標法第4条第1項第7号に関する主張
「FORMULA ONE」(フォーミユラーワン)は、世界各国で行われているモータースポーツの頂点に立つ自動車レースであり、1950年5月にスタートして以来、現在まで約40年にわたって継続的に開催されてきた(甲第2号証の1,2、甲第5号証、甲第9号証)。このレースは、規格に従ったフオーミュラーワンマシーンによって争われる自動車レースであり、年間10数戦のレースが世界各地で行われ、その決勝成績に応じて与えられる得点の合計でドライバー世界チャンピオン及びコンストラクター世界チャンピオン(車のメーカー)が決められる。日本でも鈴鹿サーキットを舞台に毎年開催されている(甲第2号証、同第3号証、同第4号証、同第9号証)。なお、このレースは甲第2号証の1及び2に示されているように「FORMULA ONE」と表現されたり、また、甲第3号証に示されるように「Formula 1」や「F1」と、簡潔に表現され、「エフワン」とも称され、世界的に親しまれているものである。
この「FORMULA ONE」に、日本からは、ホンダ、ヤマハ、ブリヂストン等がエンジン、タイヤの供給を通じて参加している(同第4号証等)。また、日本人ドライバーとしては、中島悟、鈴木亜久里、片山右京らが知られている(同第5号証、同第9号証)。なお、このレースの模様は、わが国においては、株式会社フジテレビジョンを通じて放送されており、また、このレースに関する雑誌・書籍は枚挙にいとまがない。その一例として、上記中第2号証乃至同第5号証を参照されたい。さらに、本レースに関するビデオも多数販売されており、また、この名称「FORMULA ONE」、「Formula 1」、「F1」を使用した鞄、帽子、ステッカー、シャツ等の商品化事業も活発に行われている(同第10号証等)。申立人の一人であるフォーミュラーワンライセンシングビーブイ(旧名称 ギスライセンシングベスローテンフェンノートシヤップ)は、Formula Oneに関する商標についての商品化事業を行う権限を、このレースの主催者である国際自動車連盟(Federation Internationale de Automobile 以下、「FIA」と称す)より付与されている(甲第9号証)。甲第10号証は、上記第9号証の宣誓供述書に添付された証拠物件中、とくにFormula Oneマークについての世界的な商業的利用を具体的に示す証拠である。ところで、この「Formula One」(フォーミユラーワン)を統括するのは、世界各国の自動車連盟の連合体である上述の国際自動車連盟 (FIA)である(同第2号証、同第5号証、同第9号証等)。また、本件の共同異議申立人の一人「Formula One Administration Limited(フオーミユラー ワン アドミニストレーシヨン リミテッド)」は、フォ一ミュラーワンに関する事業権をFIAより授権されており、さらに、本件共同申立人の「フォーミユラー ワン ライセンシング ビーブイ」に対して、フォーミュラーワンに関する種々の商標を世界的に出願し登録・管理する権限が与えられており、多数の出願中の商標及び登録商標がこの法人によって所有されている。なお、我が国における登録商標の一例は甲第6号証に示すとおりである。「Formula One」、「フォーミユラー ワン」の著名性については、特許庁においても顕著な事実であるが、この自動車レースの世界的著名性を立証し、かつ、上述のFIA共同申立人の関係及びその役割等を詳細に説明するため申立人のイギリスにおける代理人である事務弁護士事務所「Townleys Soliciors」の事務弁護士ニコラス ダンカン コーチマンの宣誓供述書を提出する(甲第9号証)。この宣誓供述書の原本には、同書の中に示されているように、証拠物件(NDC1からNDC16)が添付されているが、上述のとおり、NDC12から NDC16までは、甲第10号証として添付したが、残りのものについては、要求があれば提出する。
以上、詳述したとおり、「Formula One/フォーミュラーワン」の文字は、本件商標の出願日(平成10年7月1日)の40年以上前から開催されている世界的に著名な自動車レースを意味するものとして、各種メディアを通してわが国においても広く紹介され、著名なものとなっている。しかして、本件商標は、このレース名称と全く同ーの「FORMULA ONE」の文字を含むものである。本件商標は、「PROLONG FORMULA ONE」の横ー連の英文字からなるものであり、語頭の「PROLONG」は「延長する」の意味をもつ英語であるが、後半部の「FORMULA ONE」とは必ずしも意味上のつながりが認められるものではない。とくに、本件商標権者は、「プロロング・スーパー・ルブリカンツ・インコーポレイテッド」であり、この「PROLONG」の文字は、上記商標権者の略称と容易に解されるものである。加えて、その全体的称呼「プロロング フォーミュラー ワン」は必ずしも常に一連のものと認識されるほど短く簡潔なものではない。以上の点からみて、本件商標からは、「プロロング」及び「フォーミュラーワン」の分離した称呼・観念が容易に生じるというべきである。したがって、本件商標に接する需要者・取引者は、本件商標が含む「FORMULA ONE」の文字より、国際的に著名な自動車レース「FORMULA ONE/フォーミュラーワン」を直ちに連想するというべきである。加えて、本件商標権者は、この商標を採択・使用するにあたって、その統括団体であるFIAの承諾を何ら得ているものではない。また、FORMULA ONEに関する商標等の使用・登録を含む事業権の管理を授権されている本件申立人の許諾を得ているものでもない。したがって、本件商標権者が、本件商標を使用・登録する行為は、「FORMULA ONE」(フォーミュラーワン)のもつ顧客吸引力を不当に利用する行為であって、正当な商慣習に反し、かつ、国際信義に反する行為でもある。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当することは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第19号に関する主張
上述のとおり、「FORMULA ONE/フォーミュラーワン」は、世界的に著名な国際自動車レースの名称として、わが国において広く親しまれており、商標的にみれば、「国際的自動車レースの開催」についての著名なサービスマークとして機能している。このような状況において、上記著名名称・商標と全く同一の文字を含む本件商標を本来の権利者に無断で登録・出願する行為は、「FORMULA ONE(フォーミュラーワン)のもつ顧客吸引力を不当に利用しようとするものであり、商標法第4条第1項第19号にいう「不正の目的」を有するものであることが客観的に明らかというべきである。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号にも該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第15号に関する主張
以上のとおり、「FORMULA ONE/フォーミュラーワン」の名称は、国際的に著名な自動車レースを示す名称として、現実に使用され、各種雑誌等においても紹介され(例えば、甲第2号証)、本件商標出願日の平成10年(1998年)7月1日以前より、わが国においても著名となっている。また、上述のとおり、この「FORMULA ONE」の文字は、「F1」乃至「FORMULA 1」と簡略に表されることもあるが、これらは商標として、種々の商品について、F1関連商品として、商品化ビジネスに利用され、日本を含む世界中において、多数の使用許諾契約が結ばれている(甲第9号証(とくに同号証の39一47までにその詳細が説明されている)、第10号証)。とくに、「家庭用テレビゲーム」は、最も成功している許諾商品のひとつであり、「FORMULA ONE」、「F1」、「FORMULA 1」の名称を付し、これをモチーフにした多数のものが国際的に相当の量の商品が正当に使用許諾の下で、販売されてきている。我が国においては、この商品について、本件申立人の許諾の下、株式会社フジテレビジョンを通じて、使用許諾がなされはじめ、この「FORMULA ONE」(フォーミユラーワン)を内容とする家庭用等のコンピュータゲームの製造販売についての再許諾が、我が国の多くの製造業者に許された。甲第7号証は、(株)フジテレビジョン事業局によって作成された契約ソフトのタイトル及び価格、許諾期間(とくに本件商標出願日前のもの)、許諾を受けたメーカーの一覧表である。同第8号証は、それらゲームソフトのパッケージの一例である。これらのパッケージにも明瞭に「FORMULA ONE」の文字が示されている。以上のとおり、本件商標権者により、著名名称・著名商標である「FORMULA ONE」と全く同一の文字を含む本件商標がその指定商品に使用されれば、その商品は、あたかも「FORMULA ONE(フォーミュラーワン)」の主催者又はそれより許諾された関連企業の提供に係る商品であるかのように商品の出所について誤認・混同が生じることは明らかである。とくに、本件商標は、その指定商品に「カー用品」である「ガソリン」等を含むものである。よって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同が生ずるおそれがある商標にほかならず、商標法第4条第1項第15号にも該当するものである。
(4)なお、異議申立人は、「FORMULA 1」の文字を含む商標「AREXONS−THE FORMULA 1 IN CARCARE」(登録第4037941号)についても本件異議申立と同様の理由により、異議申立てをおこなった(平成9年異議第90690号)。これに対して、上記登録を取り消す旨の決定がなされた(甲第11号証)。この取消決定の理由によれば、上記登録商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号及び同第19号に該当すると認定されている(同号証)。また、「TACTICS FORMULA‐1/夕クテイクス フォーミュラーワン」の文字よりなる商標に対しても(登録第4183848号)異議申立を行った(平成10年異議第92284号、第12号証)。これについても取消決定が出されたが、「FORMULA−1/フォーミュラーワン」の著名性を認めると共に、上記商標は商標法第4条第1項第15号に該当すると認定している(同第12号証)。さらに、「F1」の文字を含む「F1速報」(登録第4176848号)に対しても、本件と同一理由により、異議申立を行ったが、すでに取消決定がなされた(甲第13号証)。よって、上記の取消決定の先例に照らしても、この国際的自動車レースの名称と同一の「FORMULA ONE」の文字からなる本件商標は、同様に取り消されるべきである。
(5)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第19号及び同第15号の規定に該当するものであるから、その登録は、商標法第43条の3の規定により取り消されるべきものである。
3 当審の取り消し理由
本件商標は、その構成中に「FIA(国際自動車連盟)」が主催し国際的に著名な自動車レース「FORMULA ONE」の名称と同じ「FORMULA ONE」の文字を有してなるものである。そして、本件商標権者は、本件商標を登録するに当たり、これらのレースを統括する団体「FIA(国際自動車連盟)」の承諾を得ていない。してみれば、本件商標をその指定商品について使用するときは、恰も前記「FIA(国際自動車連盟)」又はこれと関係のある者の製造販売に係る商品であるかの如くその商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれがある。また、上記文字を含む商標を「FIA(国際自動車連盟)」の承諾もなく我が国において出願し、権利を取得しようとする行為は国際信義に反するものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条1項第15号及び同第7号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項により、取り消すべきものである。
4 上記3の当審の取消理由に対して商標権者は何ら意見を述べていない。
5 当審の判断
平成12年3月29日付けで取り消し理由を通知し、期間を指定し意見書を提出する機会を与えたが、商標権者からは何の応答もなかった。そして、上記の取り消し理由は妥当なものと認められるから、本件商標登録は、この取り消し理由によって、取り消すものとする。
よって、結論のとおり決定する。
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