Trademark Appeal Case
称呼・観念の類似性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 判定2000−60083(T2000−60083/J6) |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | other |
理由テキスト
1.登録第4288580号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲「1」に表示したとおりの構成よりなり、第33類「ぶどう酒」を指定商品として、平成10年2月5日に登録出願、平成11年8月26日に登録されたものである。
2.被請求人が商品「ぶどう酒」に使用するイ号標章は、別掲「2」に表示したとおりの構成よりなるものである。
3.請求人は、「商品『ぶどう酒』について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する。」との判定を求めると主張し、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第25号証を提出している。
(1)判定請求の必要性
請求人は、本件商標の商標権者であるが、被請求人が商品「ぶどう酒」に添付の標章(以下、「イ号標章」という。)の使用をしていること(甲第1号証)について、平成12年3月14日、被請求人に対し、代理人を通じて前記本件商標の商標権を侵害するもである旨の警告をした(甲第2号証)。
その後、被請求人は、代理人を通じて、平成12年3月24日付けの回答書においてイ号標章は本件商標とは類似しない旨を回答した(甲第3号証)。
しかしながら、被請求人の回答には根拠なく、イ号標章は本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。
(2)イ号標章の説明
被請求人は、平成12年3月頃より、「LUCE」と「DI SOLE」とを二段併記した文字部分と天体の図形とを含むイ号標章を付した商品「ぶどう酒(ワイン)」を輸入販売し(甲第4、5号証)、神奈川県内の「ROSENたいら店」及び「有限会社五十嵐商店」などで販売している(甲第1号証)。
(3)本件商標の説明
1)本件商標を使用した製品ルーチェを製造するルーチェ・デッラ・ヴィータ社の関連会社であるフレスコバルディ社の著名性
請求人の関連会社であるイタリアの法人「ルーチェ・デッラ・ヴィータ」(以下、「ルーチェ社」という。)は、1995年より、ぶどう酒について本件商標の使用を開始し、その後も継続して使用し、現在に至っている。右ルーチェ社は、米国カリフォルニア州の法人であるロバート・モンダヴィ社とイタリアの法人であるフレスコバルディ社とのジョイントベンチャーである。フレスコバルディ社は、ぶどう酒の銘醸地トスカーナで創業以来700年以上の歴史を有し、世界的な名声を誇るイタリアを代表するワイン生産者である(甲第6、7、8号証)。
2)本件商標を使用した製品ルーチェ(以下、「ルーチェ」という。)は、世界的に権威あるワイン雑誌で非常に高い評価を得ている(甲第9号証)、いわゆるヴィンテージワインである(甲第10、11号証)。
ルーチェを紹介するパンフレット等(甲第12、13、14号証)や、本件商標を使用したカードやステッカーも特別に成作されており(甲第15、16、17号証)、価値ある製品であることが認められる。
また、日本でも、1999年9月からメルシャン株式会社が前記ぶどう酒をルーチェ社から正規輸入している(甲第18、19号証)。
3)日本での著名性について
日本においても、ワインの選定・提供等の専門職であるソムリエに向けた雑誌で記事となり(甲第20号証)、雑誌に特集される(甲第21号証)など話題を呼んでおり、インターネット上の取引でも高い評価を得ており(甲第22号証)。
以上により、本件商標は、請求人及び請求人から販売許諾を受けたメルシャン株式会社が使用した結果、遅くとも被請求人に対し前記警告を発した平成12年3月14日頃までには、請求人の業務にかかる商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至ったものである。
(4)イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
本件商標は、「LUCE」の文字と太陽の図形とからなり、本件商標の文字部分から「ルーチェ」又「ルセ」の称呼が生ずる。また、「LUCE」とは「光」を意味する著名なイタリア語であることから、文字と図形とが一体となって、本件商標から「太陽の光」の観念が生ずる。
これに対し、イ号標章は「LUCE」及び「DI SOLE」を二段併記した文字と天体の図形とを含む。イ号標章の文字部分は各行の文字から「ルーチェ」「ルセ」「ディ ソーレ」の称呼が生ずる。また、「SOLE」とは太陽を意味する著名なイタリア語であることから、文字部分から「太陽の光」の観念が生ずる。
図形の下4分の1は太陽の光であることからも、図形部分から「太陽の光」の観念が生ずる。
両標章は、「ルーチェ」、「ルセ」の称呼、「太陽の光」の観念を共通にする類似の商標である。
2つの商標がその外観等において相違していても、観念を共通にするときは互いに類似するものというべきであると判断される(東京高判昭和33年4月17日・甲第23号証)。
そして、本件商標にかかる指定商品中第33類「ぶどう酒」とイ号標章の使用商品「ぶどう酒」とは、いずれも酒類のうち同一の商品である。
本件商標が使用されたワインは、ヴインテージワインとして世界的に著名であるり希望小売価格は1本1万5千円である(甲第19号証)。これに対し、イ号標章が使用されたワインは1本1070円程度で取引されているのでハウスワインである(甲第4号証)。 本件商標は、ハウスマークである。
本件商標が使用されたワインとイ号標章が使用されたワインは、ともに酒屋や百貨店のワインショップで販売され、同一系統の取引者により取り扱われている。
ヴィンテージワインにおいては、多くの場合その普及版が存在する。本件商標が使用されたワインでも、その普及版が存在している(甲第22号証)。一般に、普及版にはヴィンテージ品の普及版であることを消費者わかりやすくするために、ヴインテージ品の名称と類似する名称を付すのが通常である。本件のイ号標章は、冒頭が「LUCE」で始まる文字を含んでおり、本件商標が付されたワインの普及版であるとの誤認が生ずる。
請求人の商標侵害の主張に対し、被請求人はイ号標章は図形と「LUCE DI SOLE」の文字から構成されるところ、図形部分については本件商標とイ号標章の相違は顕著であり、文字部分については、「LUCE DI SOLE」の語が不可分一体となったものであり本件商標とは類似しないと主張している。
しかしながら、図形部分の相違については、図形等の外観が如何に相違していても同一の称呼が生ずるときは、類似の商標とされるのが原則であるり(審決昭和42年10月29日・甲第25号証)ことから、「LUCE」のみの称呼は本件商標と共通することとなる。
その上、「LUCE DI SOLE」は長い標章であることから、冒頭の呼び名で取引されることがたぶんに予想される。
また、被請求人は、「MORSI DI LUCE」が本件商標に先行登録されているにもかかわらず本件商標が登録されたことから、一体の商標中に「LUCE」の文字を含む商標があったとしても、本件商標とは類似しないとの特許庁の判断があったものと考えざるを得ないと主張するが、「MORSI DI LUCE」においては「LUCE」が末尾に位置する点で本件とは異なると考えられる。
更に、被請求人は、本件商標とイ号標章を対比して外観が著しく異なるため両者が相紛れることはないと主張するが、外観がいかに相違していても、同一の称呼が生ずるときは、類似の商標とされるのが原則である(前出・審決昭和42年12月22日)ことから、被請求人の主張には理由がないといえる。
以上のとおり、イ号標章は本件商標と類似する標章であり、その使用商品と指定商品も類似する商品であるから、被請求人が ゙商品「ルーチェディソーレ」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。
4.被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由を次のように述べている。
(1)まず、被請求人がイ号標章を使用した「ぶどう酒」を輸入販売していることは認める。請求人は諸々の資料を提出し、イ号標章を使用した「ぶどう酒」が本件商標権の効力範囲に属するとの主張を展開しているが、効力範囲に属するか否かは、イ号標章が本件商標に類似するか否かに尽きる。この点に関する被請求人の主張は、請求人が提出した甲第3号証で述べたとおりであり、両者は全く類似するものではなく、したがって、イ号標章を使用した「ぶどう酒」は本件商標権の効力範囲に属しないものである。また、請求人は、本件商標が著名であると主張しているが、イタリアでも1995年から使用が開始されたにすぎず、我が国には本件商標を使用したぶどう酒を1999年9月からメルシャンが輸入販売を行ったとされており、その販売数量・宣伝広告の頻度など通常著名性を立証する資料は、2、3の雑誌で取り上げられている以外には殆どない。提出された資料では、本件商標をすべて「ルーチェ」という称呼音で表している。したがって、通常の取引において本件商標は「ルーチェ」と呼ばれているのであって、「ルセ」などとは呼ばれておらず、そのような称呼が本件商標から生じることはない。
(2)請求人は、イ号標章は観念において本件商標に類似すると主張している。しかし、多くの日本人はイタリア語に慣れ親しんでいるものとは考えられないから、商品取引にあたって、本件商標の「LUCE」という言葉から「光」という意味を認識し、かつ、その回りの図形を太陽に見立てて全体から「太陽の光」なる観念が生じる商標であると考える一般的な需要者や取引者はいないであろう。また、商標法における観念類似は、商標を構成する言葉から生じる辞書上における意味合いの同一性の問題ではなく、迅速に行われる取引の過程において直感的に結びつけることができる程度にその意味合いが認識されているか否かの密接性の問題である。
(3)一方、イ号標章は、「LUCE」という言葉だけを本件商標と共通にしているにすぎない。イ号標章を構成する図形部分は本件商標のそれとは全く異なる。通常、アルコール飲料である「ぶどう酒」のような嗜好性の強い商品を、商品に付されているラベルに使用されている商標を構成する文字の一部に同じ文字が含まれているという理由のみで、同じ出所の商品であるとして選択し購買するようなことをしない。商標の類否判断は、特に侵害事件においては、出所の混同が生じるか否かを基準にして行われる。商標の類否については最高裁判所が、「しょうざん」と「氷山」の事件で判断を示して以来、商品取引における実情を考慮して類否を判断するとの判決で統一されている。
(4)上に述べたように、本件商標を著名と判断できる事実はない。すなわち、「LUCE」という文字からなる商標に接する需要者・取引者が、その文字が含まれているイ号標章を本件商標の権利者の商標であると関係ずけるほどに著名であるとはいえない。イ号標章は二段に構成されているが、同書同大まとまりよく構成されており、且つ請求人が提出した甲第4号証及び同第5号証に見られるように「ルーチェ ディ ソーレ」という一連不可分に呼ばれており、決して、単に「ルーチェ」とは略称してはいない。イ号標章が使用された「ぶどう酒」を本件請求人の「ぶどう酒」であると混同して購買することはあり得ない。以上述べたように請求人の主張のいずれにも理由はないものである。
5.当審の判断
本件商標は、別掲「1」に示すとおり図形中に「LUCE」の文字を書してなるのに対し、請求人の提出する甲第1号証に添付されたイ号標章は、別掲「2」に示すとおり各種の図形と各種の文字との組み合わせよりなるから、外観上、両者は明らかに区別し得る差異を有するものである。
ついで、称呼及び観念についてみるに、本件商標は、別掲「1」に示すとおり図形中に「LUCE」の文字を書してなるところ、「LUCE」の文字は、看者の注意を惹くように図形中央部に位置しているばかりでなく、その文字自体は独立しても自他商品の識別標識としての機能を果たしえるものであるから、本件商標に接する看者はその構成中の「LUCE」の文字に着目し、これより生ずる称呼及び観念をもって取引に資する場合も少なくないと判断するのが相当である。
そして、請求人の提出するところの、ルーチェ社がフレスコバルディ社とロバート・モンダヴイ社とのジョイントベンチャー企業であることを説明するパンフレット及び抄訳(甲第6号証)、雑誌「VACATION 平成11年12月号写し」(甲第8号証)、雑誌「Wine Spectator 平成10年12月31日−平成11年1月15日号の写し及び抄訳」(甲第9号証)、雑誌「Winart 99年秋号の写し」(甲第10号証)、本件商標を使用した商品「ルーチェ」のパンフレット(甲第12号証)、本件商標を使用した商品「ルーチェ」のファクトシート及び抄訳(甲第13号証)、本件商標を使用した「ルーチェ」の紹介文等が入ったファイル及び抄訳(甲第14号証)によれば、「LUCE」の文字は「ルーチェ」と呼ばれ、表記していることがみられ、雑誌「WANDS 平成11年11月号写し」(甲第18号証)、メルシャン株式会社主要製品カタログの写し(甲第19号証)、雑誌「VACATION 平成11年12月号写し」(甲第21号証)、リカーマウンテンのホームページをアウトプットとたもの(甲第22号証)にも、本件商標中の「LUCE」の文字は、「ルーチェ」と呼ばれ、表記されていることがみられる。
そして、上記これら各号証によれば、本件商標はその構成中の「LUCE」の文字は「ルーチェ」と呼ばれているものと認められる。
しかして、請求人は「LUCE」の文字は「光」を意味するイタリア語であるから、本件商標は構成中の図形と「LUCE」の文字より「太陽の光」の意味合いが生ずる旨主張するが、その図形と文字とが常に一体不可分に結合しているものとみなければならない特段の理由もないものであり、「LUCE」の文字が「光」を意味するイタリア語であるとしても、本件商標に接する看者、商品ワインの一般的消費者の中にあっては、必ずしもイタリア語に精通している者ばかりであるとはいえないから、「LUCE」の文字より直ちに「光」を認識しえるというより、むしろ、特定の意味合いを看取させない造語として認識するものというのが相当である。
そして、上記の各号証中にあって、甲第22号証には「太陽マークのラベルのようです」の記載がみられるもの、これをもって「太陽の光」の意味合い表したとはいえず、その他の各号証にも「太陽の光」の意味合いを表すような記載もみあたらないから、本件商標より「太陽の光」の意味合いが生ずるものとはいい難いものである。
そうとすれば、本件商標は、その構成中の「LUCE」の文字から「ルーチェ」の称呼を生ずるものであって、特定の意味合いを生じないものである。
これに対し、イ号標章は、別掲「2」に示すとおり各種の図形と各種の文字との組み合わせよりなるところ、左側中央部やや下段に配された上下二段書きの「LUCE」「DI SOLE」の文字部分もそれ自体独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである。
しかして、上下二段書きの「LUCE」「DI SOLE」の文字部分は同一の書体で、まとまりよく一体的に構成されており、「LUCE」の文字のみが独立して認識されるという特段の事情はないものである。
そして、請求人の提出する酒類飲料日報平成12年3月16日号の写し(甲第4号証)には有機ワイン「カヴィロ ルーチェ ディ ソーレ」の記載がみられ、被請求人による商品説明が表示された商品に付されたタグ(甲第5号証)には「カヴィロ」「ルーチェ ディ ソーレ」等の記載がみられ、このタグが商品「ぶどう酒」のビンの首に掛かることからすれば、イ号標章に接する一般消費者は上下二段書きの「LUCE」「DI SOLE」の文字部分の読みを「ルーチェ ディ ソーレ」と表記したものと理解し得るというのが相当である。
また、「ルーチェ ディ ソーレ」の読みも格段冗長というものものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
しかして、請求人は、上下二段書きの「LUCE」「DI SOLE」中の「SOLE」の文字は、「太陽」の意を有するイタリア語であるから、この文字部分からは「太陽の光」の意味合いが生ずる旨主張している。しかしながら、本件商標と同様、イタリア語に精通している者ばかりであるとはいえないから、「LUCE」「DI SOLE」の文字部分より直ちに、「太陽の光」の意味合いを理解させるというよりは、むしろ、これに接する一般的消費者は、この文字部分をして特定の意味合いを看取させない造語として認識するものというのが相当である。
そうとすれば、イ号標章は、その構成中の上下二段書きの「LUCE」「DI SOLE」の文字部分から「ルーチェ ディ ソーレ」の一連の称呼を生ずるものであって、特定の意味合いを生じないものである。
そうしてみると、本件商標とイ号標章とは、前者が「ルーチェ」の称呼を生ずるのに対し、後者は「ルーチェ ディ ソーレ」の称呼の称呼を生ずるものであるから、称呼においては両者は明らかに区別しえるものである。そして、両者は共に特定の意味合いを有しない造語であるから、その観念については比較することができないものである。
そして、請求人は、関連会社のルーチェ・ディラ・ヴィタ(以下、「ヴィータ社」という。)が1995年より本件商標を使用し、日本でも1999年9月からメルシャン株式会社がぶどう酒をルーチェ社より正規輸入しているから、本件商標は著名である旨主張し、甲第6号証ないし同第17号証及び甲第18号証ないし同第22号証を提出しているが、本件商標の使用期間は1995年以降であって、それ程長い期間に亘って使用されたものともみられず、本件商標が世界でどの程度販売され、日本国内でどの程度知られるに至ったかを具体的に把握しえないから、かかる証拠によっては、本件商標は日本国内においていまだ著名に至っているものとはいえないというのが相当である。
そうしてみると、商品「ぶどう酒」について使用する本件商標とイ号標章とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても区別し得るものであり、時と処を異にして観察においても、互いに相紛れるおそれはないものである。
したがって、商品「ぶどう酒」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属さないといわざるをえない。
よって、結論のとおり判定する。
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