結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第35678号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4125603号商標(以下、「本件商標」という。)は、「サーモゲル」の片仮名文字を横書きしてなり、平成8年8月19日登録出願、第5類「湿布剤,プラスター,包帯」を指定商品として、平成10年3月20日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用した登録第3239310号商標(以下、「引用商標」という。)は、「サーモゲル」の片仮名文字を横書きしてなり、平成6年6月29日に登録出願、指定商品を「化学剤,その他の化学品,土壌改良剤,植物成長調整剤類,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く),高級脂肪酸,原料プラスチック,工業用粉類,植物生育用人工土壌,肥料,試験紙」として、平成8年12月25日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証乃至同第3号証及び参考資料1乃至同4を提出している。
本件商標は、「サーモゲル」の文字を書してなるものであり、他方、引用商標も「サーモゲル」の文字を書してなるものであるから、本件商標と引用商標とは、外観が同一又は類似であり、さらに称呼が同一であるから、同一又は類似の商標というべきである。
次に、本件商標にかかる指定商品中、第5類「湿布剤、プラスター」と引用商標にかかる指定商品中、第1類「土壌改良剤、その他の植物成長調整剤類(設定登録された商品は「土壌改良剤、植物成長調整剤類」以下「土壌改良剤、植物成長調整剤類」とする。)とは、類似の商品である。
「湿布剤」は、湿布に用いる薬剤を指し(参考資料2 第1076頁「湿布」)、「プラスター」は、膏薬を指す(参考資料2 第2125頁)ものと考える。すなわち、「湿布剤、プラスター」は、外皮用の薬剤を指すものと考える。また、これらは、例えば、注射剤、錠剤のように薬剤を剤型から分類した表現である。
一方、「土壌改良剤」及び「植物成長調整剤類」は、第1類の「植物成長製剤類」に含まれるものであり、第5類の薬剤の中の農薬に関連する商品である。また、これらは、薬剤(製剤)を薬効・用途から分類した場合の表現である。
つまり、「湿布剤」及び「プラスター」と「植物成長調整剤類」とは、それぞれ異なる薬剤(製剤)の分類方法に基づく表現であるから、そもそも両者を区別すること自体が困難であり、両者は重複しているといわざるを得ない。
さらに、同一企業が、医薬品と同時に、医薬品の成分と同一成分を有効成分とする農薬を製造し販売するところは多いことからも、「湿布剤」及び「プラスター」と「植物成長調整剤類」とは、出所の混同を引き起こす可能性がある。
したがって、本件商標の「湿布剤」及び「プラスター」と引用商標の「土壌改良剤、植物成長調整剤類」とは、類似の関係にあるから、被請求人の主張は成り立たない。
以上のとおり、本件商標にかかる指定商品中「湿布剤、プラスター」については、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきである。
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。」旨の答弁をし、概略次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証乃至同第2号証及び参考資料1乃至同3を提出している。
請求人の本件商標と引用商標とは同一又は類似の商標であるとの主張については、認める。
しかしながら、以下の点については、否認し争う。
請求人は、審判請求書添付の参考資料1(「商品及び役務の区分」に基づく類似商品・役務審査基準(改訂第7版)第145〜146頁)において、本件商標に係る指定商品中「湿布剤、プラスター」は、第5類「薬剤」に属するものであり、一方、引用商標に係る指定商品中「土壌改良剤、植物成長調整剤類」は、第1類の「植物成長調整剤類」に属するものであるから、両者は、類似の商品というべきであるとしている。
しかしながら、「湿布剤、プラスター」は、薬剤そのものにあたる商品を区分した第5類の「薬剤」に属するものではなく、第5類の「医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯、耳帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液、胸当てパット(以下「医療用油紙、衛生マスク等」という。)」に属するものであり「土壌改良剤、植物成長調整剤類」とは非類似である。
したがって、請求人の主張には事実誤認があって、明らかに失当であり、以下、この理由を詳細に説明する。
(1)湿布剤について
請求人は、請求人提出の参考資料2(広辞苑(第三版)、第1076頁の「湿布」の欄)の記載から、「湿布剤」とは湿布に用いる薬剤を指すものと主張する。
しかしながら、請求人提出の同資料の同記載から、「湿布」は、「・・・略。又、その布。多くの炎症に用いる」のことであって、「薬液」を指すものではない。
「湿布」と「湿布剤」との区別はなく、外用貼付剤の一形態として取り扱っているが、「湿布剤」が「湿布に用いる薬剤そのものを意味する」とは到底解釈されない。
また、取引者・需要者間においても、一般に「湿布剤」と「湿布」とを敢えて分けて判断することは無く、例えば、「湿布する」とは「湿布剤を患部に張り付ける」ことであるとして認識されており、両者は経皮吸収的に湿布効果を与える薬剤を生体内に投与するもの(外用貼付剤の一形態)であると認識されるのであり、決して「湿布剤」がその有効成分である薬剤そのものを指すと認識してはいないのである。
このことは、乙第1号証中「湿布剤の貼り方」の欄において、「湿布」と「湿布剤」とを区別することなく、外用貼付剤の一形態として取り扱っていることからも明らかである。
したがって、取引者・需要者が、商品「湿布剤」をもって、これを湿布剤における有効成分である薬剤そのものを指すと判断し、当該取引者・需要者が「湿布剤」と「湿布に用いる薬剤そのもの(例えば、サリチル酸類、インドメタシン、メントール等の消炎鎮痛剤や清涼剤等)」とが類似していると認識しているとは到底解されないのである。
すなわち、「湿布剤」とは、湿布に用いる薬剤そのものを指すものではなく、例えば、消炎鎮痛剤や清涼剤等を有効成分として、これを経皮吸収的に生体内に貼付剤の一形態としての商品をなすものである。
したがって、「湿布剤」は、第5類の「薬剤」に属するものではなく、第5類の「医療用油紙、衛生マスク等」に属するべきものであり、「土壌改良剤、植物成長調整剤類」(『第1類の植物成長調整剤類』に属する。)とは、他類間非類似商品であり、類似の商品ではなく、請求人の主張は明らかに失当である。
(2)プラスターについて
請求人は、審判請求書添付の参考資料2(広辞苑(第三版)、第2125頁の「プラスター」の欄)の記載から、プラスターとは、膏薬を指すもの、この膏薬とは薬剤である、と主張する。
しかしながら、「プラスター」を「膏薬」という意味で用いた場合、一般に取引者・需要者は、これを外用貼付剤の一形態として認識しているものであって、決して、その有効成分の薬剤そのものを示すものとして認識されていないのである。これは、「物の破損した所を紙や布の小片で、膏薬を貼ったようにつくろうこと。」を「膏薬貼(こうやくばり)」と表現し、普通に使われていることからも明らかである(乙第2号証)。
つまり、一般に、紙や布等の小片に薬剤を塗って外皮に貼付できるようにした商品を「膏薬」と称して、認識しているのである。
したがって、取引者・需要者が、「プラスター」を「膏薬」として認識した場合、これを膏薬における有効成分の薬剤そのものであるとして品質誤認をすることは皆無である。
ところで、医薬業界において「プラスター(plaster)」とは、「ギプス(plaster cast)」或いは「ばんそうこう(stickingplaster)」などの患部を固定化、保持するものであるとして認識される場合もあるが(参考資料3)、このことから当然に、医薬業界において「プラスター(plaster)」は、第5類「薬剤」に属するものではなく、第5類「医療用油紙、衛生マスク等」に属するべきものと判断される。
すなわち、「プラスター」とは、膏薬に用いる薬剤を指すものではなく、一般に「膏薬」として、外用貼付剤の一形態としての商品をなすものであり、又、医業界において、患部を固定化、保持するための「ギプス」或いは「ばんそうこう」等として認識される場合もあるものである。
したがって、「プラスター」は、第5類「薬剤」属するものではなく、第5類「医療用油紙、衛生マスク等」に属するべきものであり、一方、「土壌改良剤、植物成長調整剤類」は、第1類「植物成長調整剤類」に属するものであり、したがって、両者は、非類似商品であり、請求人の主張には、根拠がなく、明らかに失当である。
ところで、商品の類否は、同一の商標を対比される商品に使用した場合に、取引上の経験則上それら商品の取引者・需要者が商品について一般的出所の混同を生ずるおそれがあるか否かによって判断されるべきものであると考えられている(参考資料2)。
そして、「湿布剤、プラスター」は、主に医療業界などで用いられるものであり、一般に、取引者・需要者は、薬局や病院においてこの商品を取引するものである。
一方、「土壌改良剤、植物成長調整剤類」は、主に農業資材取引業界や農業分野で取引されるものであり、一般に、取引者・需要者は農業資材取引店、園芸用品店などにおいて、この商品を取引するものである。
したがって、本件商標に係る指定商品と引用商標に係る指定商品とは、その属する分野が異なり、この商標を付した商品の取引業界も異なるものであるため、商品の取引者・需要者が一般的出所の混同を生ずるおそれはなく、よって、請求人の主張は、明らかに失当である。
(3)結論
以上、詳述した如く、本件商標と引用商標は、「サーモゲル」の文字を書してなるものであり、同一又は類似の商標であるが、本件商標に係る指定商品中「湿布剤、プラスター」と、引用商標に係る指定商品中「土壌改良剤、植物成長調整剤類」とは非類似の商品であり、したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではなく、よって、同法第46条第1項の規定には該当しないのである。
よって、答弁の趣旨の通りの審決を求める。
本件商標と引用商標の類否について判断するに、本件商標と引用商標は、それぞれ前記したとおり、ともに「サーモゲル」の片仮名文字よりなるものであるから、その視覚印象を同じくし、また、これより生ずるとみられる「サーモゲル」の称呼も同一であるから、両商標は、外観、称呼の各点よりして、殆ど同一といえる程、酷似した商標と認められる。
次に、本件商標にかかる指定商品中「湿布剤、プラスター」と引用商標にかかる指定商品「土壌改良剤、植物成長調整剤類」との類否について判断する。
請求人提出の日本薬局方製剤総則23.パップ剤の欄(参考資料3)及び科研製薬医療用医薬品添付文書集1995 15、52及び53頁(参考資料4)によれば、「湿布剤」は「パップ剤」と同義であり、「パップ剤」は日本薬局方で定める医薬品であること、また、同じく請求人提出の日本薬局方製剤総則11.硬膏剤(plasters)の欄(参考資料3)によれば、「プラスター」は、「硬膏剤」をさし、「硬膏剤」は、日本薬局方で定める医薬品であることが認められる。
したがって、「湿布剤」及び「プラスター」は、ともに医薬品であって、商標法施行規則(別表)で定める第5類「薬剤」の範疇に属する商品というべきである。
他方、「土壌改良剤」又は「植物成長調整剤類」は、商標法施行規則(別表)に例示されているとおり、第1類に属する商品であって(この点について、当事者間に争いはない。)、その用途・使用目的等からみて、農薬取締法で、別途その定めがおかれている薬剤、すなわち、農業用薬剤の範疇に属するものと認められる。
さらに、「薬剤」と「農薬用薬剤」との類否関係をみるに、職権により調査した東洋経済新報社発行「1995年 会社四季報」によれば、例えば、武田薬品工業株式会社を始めとする多数の薬品製造会社において、「湿布剤,プラスター」を含む薬剤と「土壌改良剤,植物成長調整剤類」を含む農業用薬剤の両分野の薬剤を製造、販売している事実が認められる。
してみれば、薬剤である「湿布剤,プラスター」と農業用薬剤である「土壌改良剤,植物成長調整剤類」の両商品は、その生産部門を同一にする類似の商品とみるのが相当である。
そして、この点に関し、平成12年7月7日付審尋書をもって、被請求人に対して期間を指定して意見を述べる機会を与えたところ、被請求人は、何ら応答するところがなかった。
そうとすると、本件商標は、請求人の請求に係る引用商標とその外観及び称呼において同一又は類似であって、かつ、本件商標の指定商品中の「湿布剤、プラスター」は、引用商標の指定商品中の「土壌改良剤、植物成長調整剤類類」と類似するものであるから、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものといわざるを得ない。
したがって、本件商標の登録は、結論掲記の商品について、商標法第46条第1項第1号により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
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